JP2008297348A - グラフト変性ポリビニルアセタールの製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 生産性に優れ、耐溶剤性の良好なグラフト化ポリビニルアセタールの製法を提供すること。
【解決手段】エチレン性不飽和単量体をビニルアルコール系重合体の1〜25重量%水溶液中で、ビニルアルコール系重合体にグラフト重合し、次いで酸触媒およびアルデヒドの存在下にアセタール化することを特徴とするグラフト変性ポリビニルアセタールの製法。
【選択図】 なし
Description
ところで近年、ポリビニルアセタール樹脂の高機能化についての検討がなされている。例えば特許文献1には、アルキル(メタ)アクリレート単量体がグラフト重合されたグラフト変性ポリビニルアセタールからなる、セラミックグリーンシート成形用バインダーが開示されている。このバインダーはグラフト変性を行っていないポリビニルアセタールからなるバインダーと比較して、熱分解性に優れていることがわかっており、グラフト重合を行うことによってポリビニルアセタールが高機能化された一例である。
また、特許文献1に記載の方法を用いてグラフト変性ポリビニルアセタールの合成を行う場合において、反応後のグラフト変性ポリビニルアセタールの精製が容易である粉体のグラフト変性ポリビニルアセタールを得ようとすると、ポリビニルアセタールへのエチレン性不飽和単量体のグラフト重合反応は、水中懸濁重合法で行うことが好ましい。ところが、ポリビニルアセタールへのエチレン性不飽和単量体のグラフト重合反応を水中懸濁重合法で行うと、反応は終始不均一反応系(固体のポリビニルアセタールと、液体または水に溶解した状態のエチレン性不飽和単量体との反応)で行われるため、グラフト重合反応が効率的に進行しないといった問題点があった。
また、本発明の方法では、グラフト重合反応を水に溶解したポリビニルアルコールとエチレン性不飽和単量体(液体)の間で行うため、グラフト重合初期〜中期(もしくは終了まで)の反応が均一系となり、グラフト重合反応を効率的に進行させることができる。また本方法で得られるグラフト変性ポリビニルアセタールは、反応後の洗浄が容易な粉体の形状で得られる。
グラフト重合開始剤の使用量はエチレン性不飽和単量体に対し0.001〜5重量%が好適であり、さらに好適には0.01〜1重量%である。グラフト重合開始剤の添加方法は特に限定されず、グラフト重合反応開始時に一括添加してもよいし、2回以上に分割して添加してもよく、また連続的に添加してもよい。
具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トランス−2−ヘキサン酸などのα、β−不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのα、β−不飽和カルボン酸塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−スルホキシプロピルカリウム塩、(メタ)アクリル酸3−トリストリメチルシロキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2−トリメチルシロキシエチル、クロトン酸メチル、アコニット酸メチル、けい皮酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸メチル、トランス−2−ヘキサン酸メチル、2−カルボキシエチルメタクリレートなどのα、β−不飽和カルボン酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、クロトンアミドなどのα、β−不飽和カルボン酸アミド;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物;無水(メタ)アクリル酸、無水クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα、β−不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸クロリド、クロトン酸クロリド、フマル酸クロリドなどのα、β−不飽和カルボン酸クロリド;イソプロピリデンアセトン、ジイソプロピリデンアセトン、2−シクロヘキセン−1−オン、2−シクロペンテン−1−オン、3−デセン−2−オン、3−メチル−3−ブテン−2−オン、メチルビニルケトン、3−ノネン−2−オン、3−オクテン−2−オンなどのα、β−不飽和ケトン;スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−フルオロスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、4−ヨードスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アミノスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−シアノメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−ニトロスチレン、4−スチレンスルホン酸ナトリウム、4−スチレンスルホン酸クロリド、4−ビニルフェニルボラン酸、α−メチルスチレン、トランス−β−メチルスチレン、2−メチル−1−フェニルプロペン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、β−ブロモスチレン、けい皮アルコール、けい皮クロリド、けい皮ブロミド、β−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−イソプロペニルナフタレン、1−ビニルイミダゾールなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。
グラフト変性ポリビニルアセタールを主成分とする粉体塗料に用いる、グラフト変性ポリビニルアセタール樹脂粉体の平均1次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、粉体を1000倍の倍率で3箇所(3枚)撮影して得られた写真から判定可能な1次粒子径を測定(写真1枚につき50点以上)し、その平均値を求めることで算出できる。なお、1次粒子径の測定は、長径を対象にして行った。
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた2リットルガラス製容器に、イオン交換水1350g、ビニルアルコール系重合体PVA−1(重合度300、けん化度88モル%)110gを仕込み、120Rpmで攪拌しながら、95℃、60分で完全に溶解した(ビニルアルコール系重合体の濃度7.5重量%)。さらにエチレン性不飽和単量体としてメタクリル酸20g、10%酒石酸ナトリウム水溶液2g、微粉状硫化第一鉄0.001gを添加し(グラフト重合前PVA水溶液)、溶液を60℃まで冷却した。その際、窒素バブリングを十分に行い、反応容器内を窒素雰囲気にした。続いて溶液を60℃に保ちながら、0.5重量%過酸化水素水16gを30分かけて添加してグラフト重合反応を行い、グラフト変性ビニルアルコール系重合体の懸濁水溶液を得た(グラフト重合後PVA水溶液)。この水溶液を120Rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、n−ブチルアルデヒド64gと20%の塩酸90mLを添加し、アセタール化反応を100分行った。その後、60分かけて50℃まで昇温し、120分保持後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和を行い、再洗浄、乾燥して、グラフト変性ポリビニルアセタール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1の、主鎖エチレンパートを基準にして計算したアセタール化度は68モル%、ビニルエステル基含有量は11モル%であり、ビニルアルコール基含有量は21モル%であった。また、PVB−1の平均1次粒子径は2.3μmであり、平均2次粒子径は88μmであり、PVB−1の含水量は1.5重量%であった。
まずグラフト重合前PVA水溶液、およびグラフト重合後PVA水溶液における不揮発成分の含有量を次のように求めた。
グラフト重合前PVA水溶液(またはグラフト重合後PVA水溶液)を2g量り取り(乾燥前重量)、5mmHg、80℃で10時間乾燥した(乾燥後重量)。グラフト重合前PVA水溶液、グラフト重合後PVA水溶液の不揮発成分含有量を下記計算式により求めた。
(グラフト重合前PVA水溶液の不揮発成分含有量)=(グラフト重合前PVA水溶液の乾燥後重量)/(グラフト重合前PVA水溶液の乾燥前重量)
(グラフト重合後PVA水溶液の不揮発成分含有量)=(グラフト重合後PVA水溶液の乾燥後重量)/(グラフト重合後PVA水溶液の乾燥前重量)
(グラフトPVA側鎖含有率)=[(グラフト重合後PVA水溶液の不揮発成分含有量)−(グラフト重合前PVA水溶液の不揮発成分含有量)]/(グラフト重合前PVA水溶液の不揮発成分含有量)×100
以上の計算によって求めたグラフトPVA側鎖含有率と、グラフト変性ポリビニルアセタールのアセタール化度、ビニルエステル基含有量、ビニルアルコール基含有量(後述する方法により算出)から、グラフト変性ポリビニルアセタールのグラフト側鎖含有率を算出した。
JIS K6728に記載の方法に基づき算出した。
(ポリビニルアセタールのビニルアルコール基含有量)
JIS K6728に記載の方法に基づき算出した。
7.6gのPVB−1を10cm×10cm×0.8mmの型枠内で、230℃、10分間熱プレスし、熱処理フィルム−1を得た。
(耐エタノール試験)
熱処理フィルム−1を2cm×10cm×0.8mm切りとり(試験前PVBフィルム)、50℃に保った100gのエタノール中に浸漬し、そのままの温度で2時間静置した。残存しているフィルムを取り出してろ紙で表面のエタノールをふき取り(試験後PVBフィルム)、105℃、3時間乾燥した(乾燥後PVBフィルム)。以下の式でフィルム残存率、フィルム膨潤度を計算し、PVB−1の耐エタノール性を評価した。
(フィルム残存率)=[(乾燥後PVBフィルム重量)/(試験前PVBフィルム重量)]×100
(フィルム膨潤度)=[(試験後PVBフィルム重量)/(乾燥後PVBフィルム重量)]×100
PVB−1を60メッシュ(目開き250μm)の金網を用いてふるい、250μm以上の粒子を取り除き、粉体塗料−1とした。
(粉体塗料を用いた基材の塗装)
0.8mm(厚)×50mm×100mmのステンレス板(SAS304)の表面を洗剤を用いて洗浄して脱脂した後、イオン交換水で十分に洗浄して基材とした。この基材に対して、以下の方法により粉体塗料−1を用い、流動浸漬法により塗装を行った。
多孔板および円筒状の塗装室(流動室)(高さ50cm、直径30cm)を備えた容器に粉体塗料−1を入れ、空気を多孔板を通して塗装室に吹き込むことで、粉体塗料−1を流動させた。前記ステンレス板からなる基材を予熱し(温度230℃、10分間)、これを粉体塗料−1の流動層中に懸垂し、10秒経過した後取り出し、230℃の温度条件で10分間加熱して塗装物を得た。
(塗装物の耐溶剤性評価)
エタノールを含浸させたガーゼで塗装物表面を5回ふき取り、そのときの塗膜の状態を目視により確認した。
○:塗膜表面に変化が見られない。
×:塗膜表面の白化や溶解が見られる。
実施例1の方法において、PVB−1の代わりにPVB−2を用いて熱処理フィルム−2を作成し、耐エタノール試験により評価した。またPVB−1の代わりにPVB−2を用いて粉体塗料−2を得て、これを使用して塗装物を作成し、耐溶剤性を評価した。評価結果を表1に示す。
実施例1の方法において、PVB−1の代わりにPVB−3を用いて熱処理フィルム−3を作成し、耐エタノール試験により評価した。またPVB−1の代わりにPVB−3を用いて粉体塗料−3を得て、これを使用して塗装物を作成し、耐溶剤性を評価した。評価結果を表1に示す。
(グラフト変性を行っていないポリビニルアセタールの調製、評価)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた3リットルガラス製容器に、イオン交換水2160g、PVA−1(重合度300、けん化度88モル%)179gを仕込み(PVA濃度7.5重量%)、120Rpmで攪拌しながら、95℃、60分で完全に溶解した。この水溶液を120Rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、n−ブチルアルデヒド106gと20%の塩酸140mLを添加し、アセタール化反応を100分行った。その後、60分かけて50℃まで昇温し、120分保持後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、再洗浄し、乾燥して、グラフト変性を行っていないポリビニルアセタール(PVB−4)を得た。得られたPVB−4の主鎖エチレンパートを基準にして計算したアセタール化度は68モル%、ビニルエステル基含有量は11モル%であり、ビニルアルコール基含有量は21モル%であった。また、PVB−4の平均1次粒子径は2.0μmであり、平均2次粒子径は96μmであり、PVB−4の含水量は1.6重量%であった。
実施例1の方法において、PVB−1の代わりにPVB−4を用いて熱処理フィルム−4を作成し、耐エタノール試験により評価した。またPVB−1の代わりにPVB−4を用いて粉体塗料−4を得て、これを使用して塗装物を作成し、耐溶剤性を評価した。評価結果を表1に示す。
Claims (7)
- エチレン性不飽和単量体をビニルアルコール系重合体の1〜25重量%水溶液中で、ビニルアルコール系重合体にグラフト重合反応し、次いで酸触媒およびアルデヒドの存在下にアセタール化することを特徴とするグラフト変性ポリビニルアセタールの製法。
- エチレン性不飽和単量体が、α、β−不飽和カルボン酸、α、β−不飽和カルボン酸塩、α、β−不飽和カルボン酸エステル、α、β−不飽和カルボン酸アミド、マレイミド化合物、α、β−不飽和カルボン酸無水物、α、β−不飽和カルボン酸クロリド、α、β−不飽和ケトンおよびビニル芳香族化合物から選ばれる化合物である、請求項1記載のグラフト変性ポリビニルアセタールの製法。
- アルデヒドが、n−ブチルアルデヒドである請求項1または2記載のグラフト変性ポリビニルアセタールの製法。
- グラフト変性ポリビニルアセタールの主鎖のエチレンパートを基準にしたアセタール化度が40〜85モル%、ビニルエステル基含有量が0.1〜30モル%、ビニルアルコール基含有量が10〜50モル%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラフト変性ポリビニルアセタールの製法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製法によって得られたグラフト変性ポリビニルアセタール。
- エチレン性不飽和単量体が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製法によって得られたグラフト変性ポリビニルアセタール。
- 請求項5または6記載のグラフト変性ポリビニルアセタールを主成分とする粉体塗料。
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