JP2008189853A - 光硬化性樹脂組成物及び塗装物 - Google Patents

光硬化性樹脂組成物及び塗装物 Download PDF

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Abstract

【課題】低照射量での紫外線等の照射により優れた硬化性を示し、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性等の塗膜性能に優れた光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)
Figure 2008189853

(式中、R1〜R18は水素原子等を示す)で表される脂環式ジエポキシ化合物(A)10〜90重量%と、(A)以外のエポキシ化合物(B1)及びオキセタン化合物(B2)等から選択された少なくとも1種の化合物(B)90〜10重量%とからなる硬化性化合物(C)100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(D)0.01〜20重量部を配合した光硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は紫外線等の活性エネルギー線照射によって優れた硬化性を示し、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性などの塗膜性能に優れた塗膜を形成することのできる光硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物、該組成物を被塗装物表面に塗布し、硬化させて得られる塗装金属缶、塗装金属板、塗装樹脂フィルム等の塗装物に関する。
従来、光硬化性樹脂組成物としては、エポキシ基やビニル基を有するカチオン重合性化合物及び紫外線照射によりカチオンを発生するカチオン重合開始剤を含有するカチオン重合型塗料、ラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性化合物及び紫外線照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合型塗料などが知られている(例えば、特開2003−231860号公報)。
しかしながら、ラジカル重合型塗料は、硬化速度が比較的速いという特徴がある反面、素材への密着性が不十分であり、また酸素による硬化阻害があるため、表面の硬化性に劣り、特に薄膜(2〜8μ)での使用に際しては窒素封入などの設備が必要であるという問題点がある。一方、カチオン重合型塗料は、ラジカル重合型塗料と比較して、素材への密着性が良好であり、また窒素封入などの設備も必要としないなどの利点がある反面、硬化速度が遅いことや塗膜性能、特に塗膜外観、耐熱性、寸法安定性が不十分であるという問題点がある。
特開2003−231860号公報
本発明の目的は、窒素封入などの設備を必要とせず、かつ低照射量での紫外線等の照射により優れた硬化性を示し、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性などの塗膜性能に優れた塗膜を形成することのできる光硬化性樹脂組成物、及び該組成物の硬化物、該組成物を被塗装物表面に塗布し、硬化して得られる塗装物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の脂環式ジエポキシ化合物を含む硬化性化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物に紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、速い速度で硬化すると共に、塗膜外観、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性等に優れた塗膜を形成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)
Figure 2008189853
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である脂環式ジエポキシ化合物(A)10〜90重量%と、分子中に脂環エポキシ基又はグリシジル基を有する、前記脂環式ジエポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(B1)、オキセタン化合物(B2)、ビニルエーテル化合物(B3)、エポキシ基及び水酸基のうち少なくとも何れかの基を1つ以上有するアクリル系共重合体(B4)及び2〜6官能ポリオール化合物(B5)から選択された少なくとも1種の化合物(B)90〜10重量%とからなる硬化性化合物(C)[(A)と(B)との合計は100重量%]100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(D)0.01〜20重量部を配合した光硬化性樹脂組成物を提供する。
この光硬化性樹脂組成物は、さらに、レベリング剤を、硬化性化合物(C)100重量部に対して0.01〜10重量部含有していてもよい。
本発明は、また、下記式(2)
Figure 2008189853
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる脂環式ジエポキシ化合物(A′)10〜90重量%と、分子中に脂環エポキシ基又はグリシジル基を有する、前記脂環式ジエポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(B1)、オキセタン化合物(B2)、ビニルエーテル化合物(B3)、エポキシ基及び水酸基のうち少なくとも何れかの基を1つ以上有するアクリル系共重合体(B4)及び2〜6官能ポリオール化合物(B5)から選択された少なくとも1種の化合物(B)90〜10重量%とからなる硬化性化合物(C′)[(A′)と(B)との合計は100重量%]100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(D)0.01〜20重量部を配合した光硬化性樹脂組成物を提供する。
この光硬化性樹脂組成物は、さらに、レベリング剤を、硬化性化合物(C′)100重量部に対して0.01〜10重量部含有していてもよい。
上記の各光硬化性樹脂組成物は、例えば、自動車クリア塗料、プラスチックフィルム用トップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、金属材料保護用コート剤、カラーフィルター保護膜形成用コート剤等として使用できる。
本発明は、さらに、上記の各光硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物を提供する。
本発明は、さらにまた、上記の光硬化性樹脂組成物を被塗装物表面に塗布し、活性エネルギー線を照射して得られる塗装物を提供する。塗装物として、塗装金属缶、塗装金属板、塗装樹脂フィルムなどが挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、低照射量での紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させることができ、その硬化物である塗膜は、塗膜外観、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性などの塗膜性能に優れている。そのため、自動車クリア塗料、プラスチックフィルム用トップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、カラーフィルター保護膜形成用コート剤などとして好適に使用できる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によってカチオン重合を起こして硬化することが可能な組成物である。以下にこの組成物における各成分について説明する。
[脂環式ジエポキシ化合物(A)及び(A′)]
本発明における脂環式ジエポキシ化合物(A)は、前記式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、不純物として含まれている該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である。
式(1)中、R1〜R18におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が含まれる。「酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基」における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5程度のアルキル基);ビニル、アリル基等のアルケニル基(例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5程度のアルケニル基);エチニル基等のアルキニル基(例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5程度のアルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロアルケニル基;橋架け環式基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。酸素原子を有する炭化水素基としては、例えば、前記炭化水素基の炭素鎖中に酸素原子が介在している基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシアルキル基等)などが挙げられる。ハロゲン原子を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロフェニル基等の前記炭化水素基の有する水素原子の1又は2以上がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子)により置換された基が挙げられる。「置換基を有していてもよいアルコキシ基」におけるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ基等の炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)程度のアルコキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の置換基としては、例えば、前記ハロゲン原子などが挙げられる。
式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物のなかでも、R1〜R18がすべて水素原子である3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルが特に好ましい。
3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体とは、沸点等の物性が近似しているため、一般的なガスクロマトグラフィーの装置では分離できないことが多い。そのため、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の定量分析は、より分離能が高いキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより行うのが望ましい。3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物及びその異性体のガスクロマトグラフィーによる定量分析は下記の測定条件で行うことができる。なお、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の構造は、例えば、NMR、GC−MS、GC−IR等によって確認することができる。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で10分保持
スプリット比:100
サンプル:1μl(エポキシ化合物:アセトン=1:40)
脂環式ジエポキシ化合物(A)では、不純物として含まれている3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物(主化合物)とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下(好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下)である。このような脂環式ジエポキシ化合物は、前記異性体の含有量が20%を超えるものと比較して、紫外線等を照射したときの硬化速度が著しく速く、しかも硬化後の硬化物(塗膜等)のガラス転移温度が大幅に高くなり、耐熱性、硬度、寸法安定性等の物性が著しく向上する。また、他の脂環式エポキシ化合物と比較して、耐熱性、硬度、寸法安定性のほか、金属やプラスチックの表面に対する密着性の点でも著しく優れている。
このような脂環式ジエポキシ化合物(A)は、例えば、前記式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体(二重結合の位置の異なる異性体)の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満(例えば19.5%以下、好ましくは15%以下)の脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより製造できる。なお、この製造法により得られる脂環式ジエポキシ化合物を「脂環式ジエポキシ化合物(A′)」と称する。式(2)中、R1〜R18は前記に同じである。
ここで原料として用いられる異性体含有量の少ない式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物は、例えば、下記式(3)
Figure 2008189853
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は前記に同じ)
で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる。
より詳細には、例えば、前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、(i)有機溶媒中、反応条件下において液状又は反応液に溶解する脱水触媒の存在下、20Torr(2.67kPa)を超える圧力下で130〜200℃の温度に加熱し、副生する水を留去しながら脱水反応を行う工程と、(ii)前記工程(i)に続いて、反応混合液を200Torr(26.7kPa)以下の圧力下で100〜220℃の温度に加熱して、生成した式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる工程とを経ることにより製造することができる。この方法について、以下に説明する。
式(3)で表される化合物の代表的な例として、4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル(水添ビフェノール)が挙げられる。
前記工程(i)で使用する有機溶媒としては、反応条件下で不活性な溶媒であれば特に限定されないが、25℃において液体であって、沸点が120〜200℃程度のものが好ましい。好ましい有機溶媒の代表的な例として、例えば、キシレン、クメン、プソイドクメンなどの芳香族炭化水素;ドデカン、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられる。有機溶媒として、副生水を簡易に分離除去するため、水と共沸し且つ水と分液可能な有機溶媒を用いてもよい。ケトンやエステル等の酸の存在下で反応する溶媒は沸点が上記範囲であっても好ましくない。また、アルコールは脱水反応を起こす可能性があるため好ましくない。
有機溶媒の使用量は、操作性や反応速度等を考慮して適宜選択できるが、通常、基質である4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物100重量部に対して、50〜1000重量部程度であり、好ましくは80〜800重量部程度、さらに好ましくは100〜500重量部程度である。
工程(i)で用いる脱水触媒としては、脱水活性を有し、反応条件下において液状のもの又は反応液に溶解するもの(後述する使用量で完全に溶解するもの)であれば特に限定されないが、反応溶媒に対して活性が無いか又はできるだけ低いものが好ましい。反応条件下において液状である脱水触媒は反応液中に微分散するものが好ましい。脱水触媒としては、通常、リン酸や硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類などの酸、又はそれらの塩、特に前記酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が使用される。脱水触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
酸の有機塩基による中和塩を使用する場合、酸と有機塩基とを反応させて得られる反応混合物から中和塩(完全中和塩又は部分中和塩)を単離精製して用いることもできるが、酸と有機塩基とを反応させて得られる反応混合物(完全中和塩及び/又は部分中和塩を含んでいる)をそのまま使用することもできる。後者の場合、この反応混合物中には遊離の酸が含まれていてもよい。また、後者の場合、酸と有機塩基との混合割合は、例えば、酸1当量に対して、有機塩基が0.01〜1当量程度、好ましくは0.05〜0.5当量程度、さらに好ましくは0.1〜0.47当量程度である。特に、硫酸と有機塩基との反応混合物を使用する場合、硫酸と有機塩基との混合割合は、硫酸1モルに対して、有機塩基が好ましくは0.02〜2モル、さらに好ましくは0.1〜1.0モル、特に好ましくは0.2〜0.95モル程度である。また、酸の有機塩基による中和塩を使用する場合、酸と有機塩基とを別々に添加して、系内で中和塩を形成してもよい。
前記有機塩基としては塩基性を示す有機化合物であればよく、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ベンジルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類(特に、第3級アミン類);ピリジン、コリジン、キノリン、イミダゾールなどの含窒素芳香族複素環化合物;グアニジン類;ヒドラジン類などが挙げられる。これらの中でも、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類(特に、環状アミン類)、グアニジン類、ヒドラジン類が好ましく、特に、DBU、DBN、トリエチレンジアミン、トリエチルアミンが好ましい。また、有機塩基としては、pKa11以上のものが好ましく、また沸点が150℃以上のものが好ましい。
脱水触媒として硫酸水素カリウム等の硫酸のアルカリ金属塩を用いると、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによる面積の割合として20%未満のものが得られない。なお、脱水触媒として硫酸水素アンモニウムを用いた場合には、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として19%程度のものが得られる。
したがって、脱水触媒としては、スルホン酸類(p−トルエンスルホン酸等)、リン酸、硫酸、スルホン酸類(p−トルエンスルホン酸等)の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、リン酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が好ましい。なかでも、スルホン酸類(特に、p−トルエンスルホン酸)、該スルホン酸類の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が好ましく、特に、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩(とりわけ部分中和塩)が好ましい。
脱水触媒の使用量は、原料である式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.5モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.2モルである。
前記工程(i)と工程(ii)とでは圧力が異なる。工程(i)の反応液中には、未反応の4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物、該4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物におけるヒドロキシル基が結合した2つのシクロヘキサン環のうち1つのみが分子内脱水してシクロヘキセン環に変化した反応中間体、目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物、副生水、脱水触媒、及び反応溶媒が共存している。この工程(i)においては副生水を留出させるが、このとき前記反応中間体を留出させることは以下の点から望ましくない。すなわち、(1)前記反応中間体は、さらに分子内脱水することにより目的化合物に変換できるため、これを留出させると目的化合物の収率の低下を招く、(2)前記反応中間体は一般に昇華性の固体であるため、蒸留塔を使用する場合には、副生水の留出経路に固体が析出することによって該留出経路が閉塞して反応器内部の圧力上昇を招き、反応容器の破裂、破損、反応液の飛散等のトラブルの原因となる。したがって、工程(i)では、前記反応中間体が留出しないように、20Torr(2.67kPa)を超える圧力下で、副生水を留去しながら脱水反応を行う。圧力は、好ましくは20Torrより高く常圧以下(2.67kPaより高く0.1MPa以下)、より好ましくは100Torrより高く常圧以下(13.3kPaより高く0.1MPa以下)、さらに好ましくは200Torrより高く常圧以下(26.7kPaより高く0.1MPa以下)であり、操作性の点からは、特に常圧が好ましい。工程(i)における温度(反応温度)は130〜200℃であり、好ましくは140〜195℃、さらに好ましくは150〜195℃である。温度が高すぎると副反応が起こり収率が低下する。また温度が低すぎると反応速度が遅くなる。反応時間は、例えば3L程度の合成スケールであれば、1〜10時間、好ましくは2〜6時間程度である。
一方、工程(ii)では、副生水を留出させた後の反応混合液から目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる。なお、工程(i)で得られた反応混合液は、そのまま工程(ii)に供してもよいが、必要に応じて、前記反応混合液に対して抽出、水洗、液性調整等の適宜な処理を施した後に工程(ii)に供してもよい。また、反応に用いた有機溶媒の沸点が目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の沸点より低い場合には、通常、該有機溶媒を留去した後にビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる。
この工程(ii)では、前記反応中間体はほとんど存在しないので圧力を低くしても留出経路の閉塞等の問題は起こらず、また圧力が高いと目的化合物の留出に時間を要するため、200Torr(26.7kPa)以下の圧力で操作する。工程(ii)の圧力は、工程(i)の圧力より低くするのが好ましい。例えば、工程(i)の圧力と工程(ii)の圧力の差(前者−後者)は、例えば100Torr以上(13.3kPa以上)、好ましくは200Torr以上(26.7kPa以上)、さらに好ましくは500Torr以上(66.7kPa以上)である。工程(ii)の圧力は、好ましくは3〜200Torr(0.40〜26.7kPa)、より好ましくは3〜100Torr(0.40〜13.3kPa)、さらに好ましくは3〜20Torr(0.40〜2.67kPa)程度である。工程(ii)の温度は100〜220℃であり、好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜150℃未満程度である。温度が高すぎると副反応が起こりやすくなりビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の回収率が低下する。また温度が低すぎると留出速度が遅くなる。
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物などを留出させるため、例えば反応器等に蒸留装置を付随させる場合には、該蒸留装置として、充填塔、オールダーショウ型蒸留装置など一般に使用されている蒸留装置で還流比の取れるものであれば特に限定されることなく使用できる。
工程(ii)で留出したビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物は、必要に応じてさらに精製することができる。精製法としては、微量の水を含む場合は比重差を利用して分離することも可能であるが、一般には蒸留による精製が好ましい。
このような方法によれば、原料の4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を有機溶媒中、反応条件下において液状又は反応液に溶解する脱水触媒の存在下、特定の反応条件で副生水を留去しつつ反応させた後、生成したビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を特定の条件で留出させるので、比較的低い温度で且つ比較的短時間で反応を行うことができ、異性化等の副反応を抑制できるとともに、反応中間体の留出によるロス・昇華による閉塞等を防止できるため、不純物含量の少ない高純度のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を簡易に且つ高い収率で効率よく得ることができる。すなわち、式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満(例えば19.5%以下、好ましくは15%以下)の脂環式ジエン化合物を得ることができる。
なお、従来のビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの製造方法(例えば、特開2000−169399号公報、特開2005−97274号公報参照)では、異性化反応が進行しやすく、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体との比率は80:20を超えない。副生した異性体は沸点や溶媒溶解性等の物性が目的化合物と近似しているので、一旦生成すると分離が極めて困難となる。このような副生物を多量に含む環状オレフィン化合物を、エポキシ化して硬化性樹脂として使用すると、硬化の際に反応性が低い上、耐熱性等の物性に優れる硬化物(塗膜)が得られない。なお、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体とは、沸点等の物性が極めて近似しているため、一般的なガスクロマトグラフィーの装置では分離できず、これまでの文献ではビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の収率及び純度が高めに記載されている。ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の分析は、分離能が高いキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより行うのが望ましい。
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物及びその異性体のガスクロマトグラフィーによる定量分析は下記の測定条件で行うことができる。なお、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の構造は、例えば、NMR、GC−MS、GC−IR等によって確認することができる。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ60m、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:2.6ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):60℃で5分保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:100
サンプル:1μl
式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物(脂環式ジエン化合物)の二重結合のエポキシ化に使用できるエポキシ化剤としては、水分を実質的に含まない脂肪族過カルボン酸を使用することが好ましい。これは、水分の存在下でエポキシ化反応を行うと、エポキシ基の開環反応が進み、エポキシ化合物の収率が低下するためである。このため、脂肪族過カルボン酸は実質的に水分を含まないものを使用するのが好ましく、具体的には脂肪族過カルボン酸中に含まれる水分としては、0.8重量%以下、好ましくは0.6重量%以下である。実質的に水分を含まない脂肪族過カルボン酸としては、アセトアルデヒド等の空気酸化により製造される過酢酸等を使用できる。例えば、過酢酸についてはドイツ公開特許公報1418465号や特開昭54−3006号公報に記載された方法により製造される。この方法によれば、過酸化水素から脂肪族過カルボン酸を合成し、溶媒により抽出して脂肪族過カルボン酸を製造する場合に比べて、連続して大量に高濃度の脂肪族過カルボン酸を合成できるために、実質的に安価に得ることができる。
脂肪族過カルボン酸類としては、過ギ酸、過酢酸、過イソ酪酸、過トリフルオロ酢酸等を用いることができる。このうち、特に過酢酸は工業的に安価に入手可能で、かつ安定度も高く、好ましいエポキシ化剤である。エポキシ化剤である脂肪族過カルボン酸の量に厳密な制限はなく、それぞれの場合における最適量は、使用する個々のエポキシ化剤、得られる式(1)で表される脂環式ジエポキシ化合物において所望されるエポキシ化度等のごとき可変要因によって決まる。通常、エポキシ化剤は二重結合に対して等モルかそれ以上加えるのが好ましい。ただし、経済性、及び次に述べる副反応の問題から2倍モルを超えることは通常不利であり、過酢酸の場合1〜1.5倍モルが好ましい。
エポキシ化反応は、装置や原料物性に応じて不活性溶媒使用の有無や反応温度を調節して行なう。不活性溶媒は、原料である式(2)で表される脂環式ジエン化合物の粘度の低下、エポキシ化剤の希釈による安定化などの目的で使用することができ、過酢酸の場合であれば芳香族化合物、エステル類などを用いることができる。特に好ましい溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル、酢酸メチルである。
用いるエポキシ化剤の反応性によって使用できる反応温度域は定まる。一般的には、0℃以上、100℃以下である。好ましいエポキシ化剤である過酢酸についていえば20〜70℃が好ましい。20℃以下では反応が遅く、70℃では過酢酸の分解が起きる。式(2)で表される脂環式ジエン化合物中の二重結合に対するエポキシ化剤の仕込みモル比は通常、2.0〜1.0、好ましくは、1.5〜1.05である。エポキシ化剤の仕込みモル比が1.0未満では、一方の二重結合がエポキシ化されていない化合物の生成比率が高くなったり、出発原料である式(2)で表される脂環式ジエン化合物が残存する場合があるので好ましくない。また、2.0を超える量のエポキシ化剤を使用するのは不経済である。
反応混合物の特別な操作は必要なく、例えば混合物を1〜5時間撹拌すればよい。得られた反応混合物からの式(1)で表される脂環式ジエポキシ化合物の単離は適当な方法、例えば貧溶媒で沈殿させる方法、反応混合物を熱水中に撹拌の下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、直接脱溶媒法などで行うことができる。しかしながら、通常は、溶剤等を分離するだけで良く、一方の二重結合がエポキシ化されていない化合物や前記したような1個または2個のエポキシ基が開環した化合物等を分離することなく、式(1)で表される脂環式ジエポキシ化合物を含む混合物として、本発明の光硬化性樹脂組成物の成分(A)又は(A′)として使用することができる。
上記のように、反応混合物中の樹脂成分は、主として式(1)で表される脂環式ジエポキシ化合物、一方の二重結合がエポキシ化されていない化合物、1個または2個のエポキシ基が開環した化合物からなり、式(1)で表される脂環式エポキシ化合物を20重量%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上含有する。式(1)で表される脂環式エポキシ化合物の含有量が20重量%未満では、本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させた場合、硬化物の機械的物性や密着性等が低下する。
[化合物(B)]
本発明の光硬化性樹脂組成物では、前記成分(A)[又は(A′)]とともに、分子中に脂環エポキシ基又はグリシジル基を有する、前記脂環式ジエポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(B1)、オキセタン化合物(B2)、ビニルエーテル化合物(B3)、エポキシ基及び水酸基のうち少なくとも何れかの基を1つ以上有するアクリル系重合体(B4)及び2〜6官能ポリオール化合物(B5)から選択された少なくとも1種の化合物(B)を含んでいる。
エポキシ化合物(B1)としては、分子中に脂環エポキシ基又はグリシジル基を1個以上(好ましくは1〜2個)有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。なお、「脂環エポキシ基」とは環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含んでエポキシ基(オキシラン環)が形成されている基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル基など)を意味する。
脂環エポキシ基を1個以上有する化合物の具体例としては、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、下記式(4)又は(5)で表される化合物等を挙げることができる。なお、式(4)中のmは1〜30の整数を示す。これらの化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2008189853
上記の中でも、特に好適な化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、上記式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物が挙げられる。
グリシジル基を1個以上有する化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ化合物(B1)は、市場でも入手することが可能で、例えば、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」、「エポリードGT401」、「エポリードPB3600」、「エポリードPB4700」、「EHPE3150」、「エポリードGT301」、「セロキサイド3000」[以上、ダイセル化学工業(株)製]や、「ERL−4221」、「UVR−6128」、「UVR−6105」[以上、ダウケミカル(株)製]などが例示される。
オキセタン化合物(B2)としては、分子内にオキセタン環を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等が挙げられる。これらの化合物は、市場でも入手することが可能で、例えば、東亞合成(株)製「OXT−101、121、211、221、212、610」、宇部興産(株)製「OXE」などが例示される。
ビニルエーテル化合物(B3)は、分子内にビニルエーテル基を1以上(例えば1〜4個)持つものであれば特に制限はない。市販されているビニルエーテル化合物(B3)としては、例えば、n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどが挙げられる。これらは、日本カーバイド工業(株)、丸善石油化学(株)、メルク社などから入手することができる。
エポキシ基及び水酸基のうち少なくとも何れかの基を1つ以上有するアクリル系共重合体(B4)(以下、「エポキシ基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体(B4)」、又は単にアクリル系重合体(B4)」と称することがある)は、分子中にエポキシ基及び/又は水酸基を少なくとも1個有するアクリル系共重合体であれば特に限定されない。
エポキシ基及び/又は水酸基含有アクリル系共重合体(B4)は、エポキシ基含有モノマー及び水酸基含有モノマーのうち少なくとも一方のモノマーと、必要に応じて該モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとを共重合させることにより得られる。エポキシ基含有モノマーとしては、エポキシ基を含有する重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく使用することができるが、代表例として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。これらのうち、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好適に使用される。水酸基含有モノマーとしては、水酸基を含有する重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく使用できるが、代表例として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜8個のヒドロキシアルキルエステルなどが挙げられる。
上記エポキシ基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーと共重合可能な他のモノマーは、得られるアクリル系共重合体(B4)の目的とする性能などに応じて適宜使用されるモノマーであり、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−,i−又はt−ブチルアクリレート、n−,i−もしくはt−ブチルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の如きアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミドもしくはメタクリルアミド又はこれらの誘導体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピバレート、ベオバモノマー(シェル化学社製、分岐脂肪酸のビニルエステル)、サイラプレーンFM0711、同FM0721、同FM0725(以上、いずれもチッソ社製、末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサンマクロモノマー)などのその他のビニル単量体を挙げることができる。共重合可能な他のモノマーとしては、上記の中でも、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24(特に、炭素数1〜12の)アルキル又はシクロアルキルエステルが好ましい。なお、アクリル系共重合体(B4)の重合において、他のモノマーとして、サイラプレーンFM0721などのポリジメチルシロキサンマクロモノマーを使用することにより、得られる塗膜のレベリング性や、レトルト処理後における塗膜の滑性を向上させることができる。
アクリル系共重合体(B4)は、上記エポキシ基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマー、及び必要に応じて共重合可能な他のモノマーからなるモノマー成分を、例えばラジカル重合開始剤の存在下または不存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などのそれ自体既知の重合方法にて重合することにより得ることができる。アクリル系共重合体(B4)を溶液重合で合成する際には、溶媒として、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物などのラジカル重合性が低くカチオン重合可能な化合物(以下、「エポキシ化合物等」と称することがある)を用いるのが好ましい。モノマーはトルエン等の有機溶媒に溶解して重合系内に添加してもよい。溶媒としてエポキシ化合物等を用いた場合、重合により得られるアクリル系共重合体と前記エポキシ化合物等との混合物(トルエン等の有機溶媒を用いた場合には、該有機溶媒を留去して得られる濃縮物)をそのまま、本発明の光硬化性樹脂組成物の調製に用いることができる。この場合、アクリル系共重合体とエポキシ化合物等(合計量)との割合(重量比)は、特に制限はないが、例えば10/90〜50/50程度が好ましい。前記割合が小さすぎると、アクリル系共重合体の配合による強度改善効果が低くなりやすく、逆に前記割合が大きすぎると組成物の粘度が高くなって作業性が悪化しやすい。
アクリル系共重合体(B4)は、数平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは1500〜30,000の範囲内にあることが好適である。
アクリル系共重合体(B4)の重合における各モノマー成分の配合割合は、モノマー成分合計量100重量部に対し、以下の範囲内にあることが好適である。
エポキシ基含有モノマー:3〜45重量部(好ましくは5〜40重量部)
水酸基含有モノマー:3〜45重量部(好ましくは5〜40重量部)
他のモノマー:94〜10重量部(好ましくは90〜20重量部)
アクリル系共重合体(B4)においてエポキシ基及び水酸基の濃度(合計濃度)は、0.1〜7当量/kg、好ましく2〜5当量/kgの範囲内にあることが好ましい。
2〜6官能ポリオール化合物(B5)は、分子中に水酸基を2〜6個有する重合体である。このようなポリオール化合物としては、ポリエステルポリール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び分子中にエステル結合、エーテル結合、カーボネート結合を2種類以上含有するポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、エステル骨格を分子内に有し、2個以上の末端水酸基を有する液状オリゴマーであり通常のポリエステルポリオールを製造する方法と同じく脱水エステル化反応、エステル交換反応、ラクトンの開環重合およびこられを組み合わせた方法などにより合成される。
ポリエステルポリオールの合成で用いられるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールや後述するポリエテールポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
カルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトララコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。ラクトン類としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールの市販品としては、例えば、「プラクセルシリーズ;205U、L205AL、L208AL、L212AL、L220AL、L230AL、220ED、220EC、220EB、303、305、308、312、L312AL、320、L320AL、410、410D、P3403、E227、DC2009、DC2016、DC2209」(以上、ダイセル化学工業(株)製)、「クラポール」((株)クラレ製)などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールまたはこれらの共重合体が挙げられる。ポリエーテルの製造方法としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテルの開環重合により製造される。
ポリエーテルポリオールの市販品としては、例えば、「P−400、P−700、P−1000、P−2000、P−3000、G−300、G−400、G−700、G−1500、G−3000、G−4000、EDP−450、EDP−550、DG−500、DG−575、SP−600,SP−690SC−800,SC−1000,SC−1001、クオドロール」(以上、旭電化工業(株)製)、「ポリエチレングリコール 200、400、600、1000、1500、2000、4000、6000」(以上、日本油脂(株)製)、「ビスオール 2EN−6、4EN、10EN、2P 、2PN、3PN」(以上、東邦化学工業(株)製)、「Poly−G 420P、720PG、1020P、2020P、3020P、630PG、1030PG、1530PG、2530PG、3030PG、4030PG、5030PG、210PG、212PG、448PG、412PG、439PG、216PG、X−213、X−301、X−302、X−303、400P、415P、419P、423P、443P、427P、441P、442P、610PG、357SA、465SA、480SA、530SA、X−71−531、X−71−532、375S、531S、RF−64,RF−66」 (以上、旭硝子(株)製)、「PEG 200、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 1000、PEG 1500、PEG 1540、PEG 2000、PEG 4000S、PEG 4000N、PEG 6000S、PEG 6000P、サンニックス GP−200、GE−250、TP−700、TE−700、EP−400、HE−400、HE−560、HE−600、RA−530、RX−401、RX−300、RX−403、RX−500、HR−460A、サンニックストリオール GP−250、GP−400、GP−600、GP−1000、TP−400、サンニックスポリオール RP−410A、HR−450P、HS−209 サンニックスヘキサトリオール SP−750」(以上、三洋化成工業(株)製)などが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、カーボネート骨格を分子内に有し、2個以上の末端水酸基を有する液状オリゴマーはカーボネートポリオールであり、通常のカーボネートポリオールを製造する方法と同じくホスゲン法、またはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネートまたはジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応(特開昭62−187725、特開平2−175721、特開平2−49025号、特開平3−220233、特開平3−252420公報等)などで合成される。
ジアルキルカーボネートと共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールグリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールオクタン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。また、エステルグリコール(三菱瓦斯化学(株)製)や前述したポリエステルポリオール、ポリエテールポリオールを用いることもできる。
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、「UH−CARB50、UH−CARB100、UH−CARB300、UH−CARB90(1/3)、UH−CARB90(1/1)、UC−CARB100」(以上、宇部興産(株)製)、「プラクセル CD 205、CD 210、CD 220、CD 205PL、CD 205HL、CD 210PL、CD 210HL、CD 220PL、CD 220HL、CD 220EC、CD 221T」(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、脂環式ジエポキシ化合物(A)[又は(A′)]と化合物(B)との配合比は、硬化塗膜の性能やコストなどを考慮して選択できる。
脂環式ジエポキシ化合物(A)[又は(A′)]と化合物(B)との配合比は、通常、前者/後者(重量比)=10/90〜90/10であるが、好ましくは、前者/後者(重量比)=30/70〜90/10、特に好ましくは、前者/後者(重量比)=40/60〜88/12である。前者の量が多いほど、硬化速度、硬化物(塗膜)の耐熱性、硬度、金属やプラスチックとの密着性、寸法安定性は向上するが、多すぎると、耐屈曲性や耐衝撃性が低下しやすく、またコストも高くなりやすい。
[光カチオン重合開始剤(D)]
本発明において使用される光カチオン重合開始剤(D)は、紫外線等の活性エネルギー線照射によってカチオンを発生して脂環式ジエポキシ化合物(A)[又は(A′)]および化合物(B)の重合を開始させる化合物であり、例えば、下記式(I)〜(XV)で示されるヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩及びその他のカチオン重合開始剤を挙げることができる。
Ar2+・X- (I)
(式中、Arはアリール基、例えばフェニル基を表わし、X-はPF6 -、SbF6 -又はAsF6 -を表わす)
Ar3+・X- (II)
(式中、Ar及びX-は上記と同じ意味を有する)
Figure 2008189853
(式中、R19は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わし、rは0〜3の整数を表わし、X-は上記と同じ意味を有する)
Figure 2008189853
[式中、Y-はPF6 -、SbF6 -、AsF6 -又はSbF5(OH)を表わす]
Figure 2008189853
(式中、X-は上記と同じ意味を有する)
Figure 2008189853
(式中、X-は上記と同じ意味を有する)
Figure 2008189853
(式中、X-は上記と同じ意味を有する)
Figure 2008189853
(式中、R20は炭素数7〜15のアラルキル基又は炭素数3〜9のアルケニル基を表わし、R21は炭素数1〜7の炭化水素基又はヒドロキシフェニル基を表わし、R22は酸素原子又は硫黄原子を含有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表わし、X-は上記の意味を有する)
Figure 2008189853
(式中、R23及びR24はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わす)
Figure 2008189853
(式中、R23及びR24は上記と同じ意味を有する)
Figure 2008189853
光カチオン重合開始剤(D)としては市販品を使用することもでき、市販品としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、米国サートマー社製)、イルガキュア264(チバガイギー社製)、CIT−1682[日本曹達(株)製]などを挙げることができる。
以上に述べた光カチオン重合開始剤のうち、毒性、汎用性等の観点から、ヘキサフルオロフォスフェートアニオン(PF6 -)を有する化合物が好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、光カチオン重合開始剤(D)の含有量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)又は(A′)10〜90重量%と化合物(B)90〜10重量%とからなる硬化性化合物(C)又は(C′)[(A)又は(A′)と(B)との合計は100重量%]100重量部に対して、0.01〜20重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。光カチオン重合開始剤(D)の使用量が0.01重量部未満では、硬化性が悪くなりやすく、20重量部を超えて使用すると、硬化物における物性が低下しやすくなる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、被膜形成性樹脂成分である上記(A)[又は(A′)]、(B)、及び必須の(D)成分以外に、必要に応じて、レベリング剤;増感剤;硬化を著しく阻害しない量の着色顔料、体質顔料などの顔料類、染料;ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、成分(A)[又は(A′)]および(C1)以外のエポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂などの改質樹脂;有機樹脂微粒子;溶剤などを配合することができる。
上記レベリング剤は、得られる塗膜の潤滑性を向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、アクリル系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックスなどのワックス類を挙げることができる。
上記脂肪酸エステルワックスの原料となるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ジ又はそれ以上のポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらのうち、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物が好ましく、中でもポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好適である。
上記脂肪酸エステルワックスのもう一方の原料となる脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸を挙げることができ、炭素原子数6〜32の脂肪酸であることが好ましい。好適な脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などの飽和脂肪酸;カプロレイン酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リカン酸、リシノール酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができる。
脂肪酸エステルワックスとしては、上記ポリオール化合物の水酸基の数の少なくとも1/3が脂肪酸でエステル化されたものが好ましい。
シリコン系ワックスとしては、例えば、BYK−300、BYK−320、BYK−330[以上、BYKChemie(ビックケミー)社製]、シルウェットL−77、シルウェットL−720、シルウェットL−7602[以上、日本ユニカー(株)製]、ペインタッド29、ペインタッド32、ペインタッドM[以上、ダウコーニング社製]、信越シリコーンKF−96[信越化学社製]等が挙げられる。
フッ素系ワックスとしては、例えば、シャムロックワックスSST−1MG、シャムロックワックスSST−3、シャムロックワックスフルオロスリップ231[以上、シャムロックケミカルズ社製]、POLYFLUO(ポリフルオ)120、同150、同400[マイクロパウダーズ社]、FC−4430、FC−4432[以上、住友スリーエム(株)社製]等が挙げられる。
アクリル系ワックスとしては、例えば、BYK−350、BYK−355、BYK−361N、BYK−358N[以上、BYKChemie(ビックケミー)社製]等が挙げられる。
ポリオレフインワックスとしては、例えば、シャムロックワックスS−394、シャムロックワックスS−395[以上、シャムロックケミカルズ社製]、ヘキストワックスPE−520、ヘキストワックスPE−521[以上、ヘキスト社製]、三井ハイワックス[三井化学工業社製]等が挙げられ、さらに、動物系ワックスとしては、例えば、ラノリン、蜜ろう等が挙げられ、植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、蜜ろう等が挙げられる。
レベリング剤は単独で又は2種もしくはそれ以上を組合わせて使用することができる。レベリング剤の配合量は、上記の硬化性化合物(C)[又は(C′)]100重量部に対して、通常10重量部以下(例えば、0.01〜10重量部)、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。
前記増感剤は、紫外線等による硬化性をさらに向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビンなどを挙げることができる。この増感剤の配合量は、上記の硬化性化合物(C)[又は(C′)]100重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは3重量部以下の範囲内で使用される。
また、改質樹脂を配合する場合には、該改質樹脂は、上記の硬化性化合物(C)[又は(C′)]100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、特に5〜20重量部の範囲内で使用することが好ましい。改質樹脂としては、中でも、エポキシ化ポリブタジエン樹脂が塗膜の密着性等の改良に特に効果的である。
前記有機樹脂微粒子としては、粒子径が50〜500nmの範囲内の有機樹脂微粒子が好ましく、例えば内部が3次元架橋したアクリル樹脂微粒子などを挙げることができる。有機樹脂微粒子としては、有機重合体を粉砕して微粒子化したもの;乳化剤の存在下に水中でエマルジョン重合して得られる重合体微粒子を乾燥、粉砕したもの;高分子安定剤の存在下に有機溶剤中でディスパージョン重合して得られる重合体微粒子を乾燥、粉砕したものなどを挙げることができる。本発明の光硬化性樹脂組成物に有機樹脂微粒子を配合することによって塗膜の密着性を改良することができる。有機樹脂微粒子を配合する場合には、該有機樹脂微粒子の配合量は、上記の硬化性化合物(C)[又は(C′)]100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、特に1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
[光硬化性樹脂組成物の製造]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、以上に述べた各成分を混合し、均一な塗料組成物となるように撹拌することにより調製することができる。例えば、各成分を混合し、必要に応じて加温(例えば50℃程度)し、ディソルバーなどの撹拌機にて均一になるまで、例えば10分間程度撹拌することにより調製することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線に対して硬化性を有しており、ブリキ、アルミニウム、ティンフリースチール、鉄、亜鉛、銅、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛と他の金属との合金メッキ鋼板などの金属缶に成型加工される金属板(この金属板には燐酸亜鉛処理やクロメート処理などの化成処理が施されていてもよい)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、PMMAなどのアクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂[「ゼオネックス」(日本ゼオン(株)製)、「アートン」(JSR(株)製)、「アペル」(三井化学(株)製))などの樹脂フィルム等で構成される被塗装物に塗装し、紫外線等を照射することによって硬化塗膜を形成することができる。塗装膜厚は、用途によって適宜選択することができるが、通常、乾燥塗膜厚として2〜20μm程度、好ましくは2〜8μm程度の範囲内とすることができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、例えば、ロールコート塗装、スプレー塗装、ハケ塗り、バーコート塗装、ローラー塗り、シルクスクリーン印刷などの塗装法によって塗装することができる。塗膜が溶剤を含有する場合には、塗装後、加熱などにより溶剤を除去した後、塗膜は紫外線等の照射によって硬化されるが、照射条件は塗装された光硬化性樹脂組成物(塗料組成物)の種類や膜厚等に応じて適宜変えることができる。照射する紫外線の波長としては、通常、200〜600nmの範囲内が適当であり、光カチオン重合開始剤の種類等に応じて、感度の高い波長を有する照射源を適宜選択して使用することができる。
紫外線の照射源としては、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光などを挙げることができる。塗膜への照射条件は、通常、線量が10〜1,000mJ/cm2、特に50〜500mJ/cm2となる範囲内が適している。なお、活性エネルギー線として、紫外線のほか、例えば、可視光、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などを用いることもできる。
また、紫外線等の活性エネルギー線照射後、必要に応じて塗膜を加熱してもよい。加熱によって塗膜中の未反応物の低減および活性エネルギー線照射による塗膜の硬化性や成型加工によって発生した塗膜の歪みの緩和を行なうことができる。この加熱によって塗膜の硬度や密着性の向上を行なうことができる場合がある。上記加熱は、通常、150〜250℃の雰囲気温度で1〜30分間の条件で行なうことができる。
このようにして、塗装金属缶、塗装金属板、塗装樹脂フィルム等の塗装物を得ることができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、脂環式ジエポキシ化合物(A)[又は(A′)]及び化合物(B)を被膜形成性樹脂成分として含有するので、光カチオン重合開始剤(D)の存在下で、窒素封入などの設備を必要とすることなく、低照射量の紫外線等の照射によっても効率よくカチオン重合により硬化させることができる。また硬化後は、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性などの塗膜性能に優れ、特に塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。従って、本発明の光硬化性樹脂組成物は金属・樹脂フィルム外面用の塗料として特に好適であり、自動車クリア塗料、プラスチックフィルム用トップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、金属材料保護用コート剤又はカラーフィルター保護膜形成用コート剤などとして利用できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[物性等の測定方法及び評価方法]
(1)ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン及びその異性体のガスクロマトグラフィー(GC分析)
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ60m、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:2.6ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):60℃で5分保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:100
サンプル:1μl
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体との比は次のようにして求めた。すなわち、上記条件でGC分析を行い、保持時間20.97分付近に出る最大ピーク(ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン)の面積と、その直前に現れる20.91分付近のピーク(異性体)の面積に基づいて、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンに対する異性体の含有比を求めた。すなわち、異性体比率(%)は、異性体面積÷(異性体面積+ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン面積)×100で算出される。
(2)3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル及びその異性体のガスクロマトグラフィー(GC分析)
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で10分保持
スプリット比:100
サンプル:1μl(エポキシ化合物:アセトン=1:40)
3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体との比は次のようにして求めた。すなわち、上記条件でGC分析を行い、保持時間19.8分から20.0分付近に出る最大ピーク2本[3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル(2本のピークは立体異性体の存在による)]の合計面積と、その直前に現れる19.1分から19.5分付近のピーク3本(異性体)の合計面積に基づいて、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルに対する異性体の含有比を求めた。すなわち、異性体比率(%)は、異性体合計面積÷(異性体合計面積+3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル合計面積)×100で算出される。
(3)3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル及びその異性体のGC−MS分析
測定装置:ヒューレットパッカード社製、HP6890(GC部)、5973(MS 部)
カラム:HP−5MS、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.25mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で18分保持
注入口温度:250℃
MSDトランスファーライン温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:0.7ml/分(コンスタントフロー)
スプリット比:スプリットレス
サンプル注入量:1.0μl
測定モード:EI
イオン源温度:230℃
四重極温度:106℃
MS範囲:m/z=25〜400
サンプル調製:サンプル0.1gをアセトン3.0gに溶解
合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物をGC−MS分析に付した。その結果(ガスクロマトグラムと各成分のMSスペクトル)を図5〜14に示す。保持時間17.73分、17.91分、18.13分のピークが3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルの異性体のピークであり、18.48分、18.69分のピークが3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルのピークである。上記GC分析の場合と分析条件が若干異なるので各ピークの保持時間は異なるが、出現する順序は同じである。図5はガスクロマトグラムと保持時間17.73分のピークのMSスペクトルであり、図6はその拡大図である。図7はガスクロマトグラムと保持時間17.91分のピークのMSスペクトルであり、図8はその拡大図である。図9はガスクロマトグラムと保持時間18.13分のピークのMSスペクトルであり、図10はその拡大図である。図11はガスクロマトグラムと保持時間18.48分のピークのMSスペクトルであり、図12はその拡大図である。図13はガスクロマトグラムと保持時間18.69分のピークのMSスペクトルであり、図14はその拡大図である。MSスペクトルによれば、上記何れの成分もm/z=194の分子イオンピークを有している。
(4)硬化性
表1に従い調製した実施例1〜3、比較例1〜5の硬化性組成物をアプリケーターを用いてアルミ標準試験板上にそれぞれ乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−401GX」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量280mJ/cm2)して硬化させた直後のベタツキの程度を3段階で判断した。
○:ベタツキがまったく認められない。
△:ややベタツキが認められる。
×:明らかにベタツキが認められる。
(5)紫外線硬化物のガラス転移温度(Tg)
表1に従い調製した実施例1〜3、比較例1〜5の硬化性組成物をアプリケーターを用いて鋼板上にそれぞれ20μmの厚みに塗布した。UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−401GX」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量500mJ/cm2)して硬化させた後、80℃で1時間ポストキュアすることで試験片を作製した。4mmφの円筒型エッジを装着した剛体振り子型粘弾性測定器((株)エー・アンド・ディー製「RPT3000」)を用いて、30℃から300℃まで測定を行い、複数観測された対数減衰率のピークのうち、最も低温側の対数減衰率のピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(6)鉛筆硬度
表1に従い調製した実施例1〜3、比較例1〜5の硬化性組成物をアプリケーターを用いてアルミ標準試験板上にそれぞれ乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−401GX」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量280mJ/cm2)して硬化させた後、150℃で3分間ポストキュアすることで試験片を作製した。得られた試験塗装板の塗膜に、JIS K5400 8.4.2(1990)に規定する鉛筆引っかき試験を行った。評価はやぶれ法で行った。
(7)密着性
表1に従い調製した実施例1〜3、比較例1〜5の硬化性組成物をアプリケーターを用いてアルミ標準試験板上にそれぞれ乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−401GX」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量280mJ/cm2)して硬化させた後、150℃で3分間ポストキュアすることで試験片を作製した。得られた試験塗装板の塗膜に、JIS K5400 8.5.2(1990)碁盤目テープ法に準じて、試験塗装板の塗装面に1.5mm×1.5mmのマス目を100個作成し、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、急激に剥がした後のマス目の状態を以下の基準によって評価した。
10点:切り傷1本ごとが、細かくて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の一目一目にはがれがない。
8点:切り傷の交点にわずかなはがれがあって、正方形の一目一目にはがれがなく、欠損部の面積は全正方形面積の5%以内。
6点:切り傷の両側と交点とにはがれがあって、欠損部の面積は全正方形面積の5〜15%。
4点:切り傷によるはがれの幅が広く、欠損部の面積は全正方形面積の15〜35%。
2点:切り傷によるはがれの幅は4点よりも広く、欠損部の面積は全正方形面積の35〜65%。
0点:はがれの面積は、全正方形面積の65%以上。
(8)寸法安定性
表1に従い調製した実施例1〜3、比較例1〜5の硬化性組成物をアプリケーターを用いてPETフィルム上にそれぞれ乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−401GX」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量280mJ/cm2)して硬化させた後、目視にて硬化収縮の程度を判断した。
○:フィルムが全くカールしなかった。
△:一部にわずかにカールが認められた。
×:全体に大きくカールが認められた。
合成例1(異性体比率9%)
95重量%硫酸70g(0.68モル)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)55g(0.36モル)を撹拌混合して脱水触媒を調製した。
撹拌機、温度計、および脱水管を備え且つ保温された留出配管を具備した3リットルのフラスコに、下記式(3a)
Figure 2008189853
で表される水添ビフェノール(=4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル)1000g(5.05モル)、上記で調製した脱水触媒125g(硫酸として0.68モル)、プソイドクメン1500gを入れ、フラスコを加熱した。内温が115℃を超えたあたりから水の生成が確認された。さらに昇温を続けてプソイドクメンの沸点まで温度を上げ(内温162〜170℃)、常圧で脱水反応を行った。副生した水は留出させ、脱水管により系外に排出した。なお、脱水触媒は反応条件下において液体であり反応液中に微分散していた。3時間経過後、ほぼ理論量の水(180g)が留出したため反応終了とした。反応終了液を10段のオールダーショウ型の蒸留塔を用い、プソイドクメンを留去した後、内部圧力10Torr(1.33kPa)、内温137〜140℃にて蒸留し、731gのビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを得た。GC分析の結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中にはその異性体が含まれており(GC−MS分析により確認)、下記式(2a)
Figure 2008189853
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体の含有比は91:9であった(図4参照)。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物270gを得た。このときの収率は93%であった。粘度(25℃)を測定したところ、84mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は15.0重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、下記式(1a)
Figure 2008189853
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物中には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は9%であった(図1参照)。なお、異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(2262+1715+5702)÷(2262+1715+5702 +28514+74587)×100=9%
合成例2(異性体比率14%)
撹拌機、温度計、および脱水管を備え且つ保温された留出配管を具備した3リットルのフラスコに、水添ビフェノール840g(4.24モル)、リン酸170g(1.73モル)、ウンデカン2350gを入れ、フラスコを加熱した。内温が110℃を超えたあたりから水の生成が確認された。さらに昇温を続けてウンデカンの沸点まで温度を上げ(内温189〜194℃)、常圧で脱水反応を行った。副生した水は留出させ、脱水管により系外に排出した。なお、p−トルエンスルホン酸は反応条件下において反応液に完全に溶解していた。5時間半経過後、ほぼ理論量の水(150g)が留出したため反応終了とした。反応終了液を10段のオールダーショウ型の蒸留塔を用い、ウンデカンを留去した後、内部圧力10Torr(1.33kPa)、内温138〜141℃にて蒸留し、474.2gのビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを得た。GC分析の結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中には異性体が含まれており、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンと異性体の含有比は87:13であった。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物261gを得た。このときの収率は90%であった。粘度(25℃)を測定したところ、75mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は15.0重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物中には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は14%であった(図2参照)。異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(2821+2108+6988)÷(2821+2108+6988 +20792+54602)×100=14%
比較合成例1
撹拌機、20段の蒸留塔、温度計を備えている10リットルの四つ口フラスコに、水添ビフェノール6kgと硫酸水素カリウム620gを加えた。続いて、フラスコを180℃に加熱し、水添ビフェノールを融解後、撹拌を開始した。蒸留塔の塔頂より副生水を留出させながら反応を続け、3時間経過後、反応系内を10Torr(1.33kPa)に減圧し、水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを蒸留塔の最上段より連続的に系外に留出させた。系外に留去させた水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンはデカンターで二層に分離させ、上層液のみを取り出した。その後、4時間かけて反応温度を220℃まで上げ、水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留去が無くなった時点で反応終了とした。ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留出粗液の収量は4507gであった。上記ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留出粗液4500gを撹拌機、20段の蒸留塔、温度計を備えている5リットルの四つ口フラスコに入れ、オイルバスで180℃に昇温した。その後、反応系内を10Torr(1.33kPa)に減圧し、水を留去してから蒸留塔の最上段の温度を145℃に維持し、還流比1で5時間かけてビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを蒸留精製し、無色透明の液体を得た。収量は4353gであった。前記液体についてGC分析を行った結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中には異性体が含まれており、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンと異性体の含有比は80:20であった。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物267gを得た。このときの収率は92%であった。粘度(25℃)を測定したところ、63mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は14.9重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は21%であった(図3参照)。異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(5404+3923+13067)÷(5404+3923+130 67+23563+60859)×100=21%
製造例1[アクリル系共重合体1の製造]
撹拌機及び冷却器を備えたフラスコに、「セロキサイド2021P」[ダイセル化学工業(株)製、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート]1800重量部を仕込み、撹拌しながら95℃まで加温した。ついで同温度に保持しながら、この中に、グリシジルメタクリレート100重量部、メタクリル酸n−ブチル150重量部、メタクリル酸メチル200重量部、アクリル酸n−ブチル200重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5重量部及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル50重量部を予めトルエンに混合溶解した混合物を4時間かけて滴下し、重合を行った後、減圧蒸留によりトルエンを除去してアクリル系共重合体1を得た。得られたアクリル系共重合体1の数平均分子量は約2500であった。
製造例2[アクリル系共重合体2の製造]
撹拌機及び冷却器を備えたフラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート[商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業(株)製]1800重量部を仕込み、撹拌しながら95℃まで加温した。ついで同温度に保持しながら、この中に、エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート[商品名「サイクロマーM−100」、ダイセル化学工業(株)製]150重量部、メタクリル酸n−ブチル200重量部、メタクリル酸メチル150重量部、アクリル酸n−ブチル100重量部及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル50重量部を予めトルエンに混合溶解した混合物を4時間かけて滴下し、重合を行った後、減圧蒸留によりトルエンを除去してアクリル系共重合体2を得た。得られたアクリル系共重合体2の数平均分子量は約4500であった。
実施例1〜8、比較例1〜5
表1、表2に記載されている配合比で光硬化性樹脂組成物を調製して、上記各物性を測定した。各成分の配合は、シンキー社製の「泡取り練り太郎」を用いて室温下、20分撹拌しながら混合することにより行なった。結果を表1、表2に示す。
なお、表中の略号は以下の通りである。
合成例1:合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物
合成例2:合成例2で得られた脂環式ジエポキシ化合物
比較合成例1:比較合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物
CEL−2021P:ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド2021P」(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
CEL−2081:ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド2081」(イプシロン−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
OXE:宇部興産(株)製(3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン)
PCL308:ダイセル化学工業(株)製「PCL308」(3官能ポリエステルポリオール)
VE:日本カーバイド(株)製(シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル)
アクリル系共重合体1:製造例1で得られたアクリル系共重合体(アクリル系共重合体と3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとの混合物)
アクリル系共重合体2:製造例2で得られたアクリル系共重合体(アクリル系共重合体と3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとの混合物)
UVACURE1590:ダイセル・サイテック(株)製「UVACURE-1590」(スルホニウム塩系の光カチオン重合開始剤)
CHIVACURE1176:ダブルボンドケミカル(株)製「CHIVACURE1176」(スルホニウム塩系の光カチオン重合開始剤)
BYK−361N:BYKChemie(ビックケミー)社製「BYK−361N」(アクリル系レベリング剤)
表1及び表2に示されるように、実施例の光硬化性樹脂組成物は低照射量での紫外線照射により優れた硬化性を示し、耐熱性、密着性、硬度、寸法安定性などの塗膜性能に優れた塗膜を形成できる。
Figure 2008189853
Figure 2008189853
合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。 合成例2で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。 比較合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。 合成例1において得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエンのGC分析のチャートである。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間17.73分のピークのMSスペクトル(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間17.73分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間17.91分のピークのMSスペクトル(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間17.91分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.13分のピークのMSスペクトル(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.13分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.48分のピークのMSスペクトル(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.48分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.69分のピークのMSスペクトル(下図)である。 合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.69分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。

Claims (8)

  1. 下記式(1)
    Figure 2008189853
    (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
    で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である脂環式ジエポキシ化合物(A)10〜90重量%と、分子中に脂環エポキシ基又はグリシジル基を有する、前記脂環式ジエポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(B1)、オキセタン化合物(B2)、ビニルエーテル化合物(B3)、エポキシ基及び水酸基のうち少なくとも何れかの基を1つ以上有するアクリル系共重合体(B4)及び2〜6官能ポリオール化合物(B5)から選択された少なくとも1種の化合物(B)90〜10重量%とからなる硬化性化合物(C)[(A)と(B)との合計は100重量%]100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(D)0.01〜20重量部を配合した光硬化性樹脂組成物。
  2. さらに、レベリング剤を、硬化性化合物(C)100重量部に対して0.01〜10重量部含有する請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
  3. 下記式(2)
    Figure 2008189853
    (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
    で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる脂環式ジエポキシ化合物(A′)10〜90重量%と、分子中に脂環エポキシ基又はグリシジル基を有する、前記脂環式ジエポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物(B1)、オキセタン化合物(B2)、ビニルエーテル化合物(B3)、エポキシ基及び水酸基のうち少なくとも何れかの基を1つ以上有するアクリル系共重合体(B4)及び2〜6官能ポリオール化合物(B5)から選択された少なくとも1種の化合物(B)90〜10重量%とからなる硬化性化合物(C′)[(A′)と(B)との合計は100重量%]100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(D)0.01〜20重量部を配合した光硬化性樹脂組成物。
  4. さらに、レベリング剤を、硬化性化合物(C′)100重量部に対して0.01〜10重量部含有する請求項3記載の光硬化性樹脂組成物。
  5. 自動車クリア塗料、プラスチックフィルム用トップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、金属材料保護用コート剤又はカラーフィルター保護膜形成用コート剤として用いられる請求項1〜4の何れかの項に記載の光硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れかの項に記載の光硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
  7. 請求項1〜5の何れかの項に記載の光硬化性樹脂組成物を被塗装物表面に塗布し、活性エネルギー線を照射して得られる塗装物。
  8. 塗装金属缶、塗装金属板又は塗装樹脂フィルムである請求項7記載の塗装物。
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