JP2008130736A - 電子部品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 積層体の積層方向に複数の導体パターンを接続してなるコイルで形成したインダクタを含む電子部品であって、コイルを形成する全ての導体パターンを非磁性体層に直接して形成し、導体パターンの周囲には、その厚みと略等しい厚みの第1磁性体、非磁性体層に直接に配置し、導体パターンの端部は、非磁性体層に設けたビアホールを介して他の導体パターンと接続し、コイルの上下には第2磁性体層を配した。
【選択図】 図1
Description
DC−DCコンバータは、スイッチング素子、制御回路を含む半導体集積回路(能動素子)とインダクタ、コンデンサなどの受動素子を、接続線路が形成されたプリント基板等の上にディスクリート回路として構成するのが一般的であるが、電子機器の小型化に伴い、受動素子の小型化、低背化や、受動素子と能動素子との複合化が求められている。
積層インダクタや多層基板等の電子部品の一般的な構造を図5の斜視図に示す。電子部品は、磁性体(フェライト)10と内部導体(導体パターン)20とをシート積層法、印刷法などにより一体成形した後,同時焼成し、得られた焼成体表面に外部端子用ペーストを印刷または転写し、焼き付けて外部端子50として製造される、所謂モノリシック構造を有する。このような電子部品は機械的強度に優れ、かつ小型化に適した構造ではあるが、一方で構造に起因する幾つかの課題があった。以下積層インダクタを例にとって説明する。
またその内部においては、内部導体20に流れる励磁電流により磁束φaが形成されるとともに、周囲が磁性体に囲まれた内部導体20aの周囲には漏れ磁束φbが生じ、絶縁体層15に隣接する内部導体20bの周囲には漏れ磁束φcが生じる。図6に示した従来構造のインダクタでは、内部導体20の周囲に生じる漏れ磁束φbは相互に打ち消し合う。ところが、図7示した従来構造のインダクタでは、内部導体20aと内部導体20bとの間で漏れ磁束が相殺されず、その分、インダクタンス値は高くなる。しかしながら大きな励磁電流となれば、内部導体20間の磁性体10が局部的に磁気飽和しインダクタンス値が低下する。このように前記積層インダクタは、励磁電流によってもインダクタンス値が大きく変動し直流重畳特性に劣るものであった。
なお、このようなインダクタンス値の変化は非線形特性(スイング特性)と呼ばれており、積極的に利用される場合がある。しかしながら、非磁性絶縁体層の厚みがばらつきやすい構造では、非線形特性を制御するのは実質的に困難である。
このような課題を解決するため、例えば特許文献2には、上下に重畳する部分の内部導体間を低透磁率の電気絶縁体30として、漏洩磁束を低減した積層インダクタが開示されている(図8参照)。電気絶縁体30としては、透磁率の低い磁性体、誘電体、あるいはセラミックが例示されている。しかしながら、電気絶縁体30の選択によっては、磁性体10との線膨張係数差により内部応力が生じ、後述する磁性体の磁歪効果によって透磁率が変化したり、内部クラックが発生したりするといった問題があった。
このような課題を解決するため、例えば特許文献3や特許文献4では、磁性体10と内部導体20との間に応力緩和材35や空隙を介在させることが開示されている(図9参照)。また、特許文献5には磁性体と内部導体との間に応力緩和材を配置し、その熱膨張率を磁性体と内部導体の各熱膨張率の間とすることが開示されている。しかしなが、このような構造では積層インダクタの機械的強度の低下を招くことがあった。
本発明の電子部品では、コイルを形成する導体パターンのうち、隣接する導体パターン間の間隙には非磁性体層のみが配置されている。前記非磁性体層は、コイルを形成する導体パターンに比べて、その厚みは1/8〜1/2程度であり、またコイルを形成する全ての導体パターンに直接して形成されているため、それぞれの導体パターン間での漏洩磁束が低減し、インダクタンス値の低下を防ぐことが出来る。
また、コイルの内側領域も、あるいはコイルの内側及び外側の領域も導体パターン間に位置する非磁性体層が配置されており、反磁界によって励磁電流に対して容易に磁気飽和しない開磁路構造となる。このため、低励磁電流から高励磁電流において安定したインダクタンス値を得ることが出来る。
第1磁性体層と第2磁性体層に用いるフェライト材料の選定は、インダクタとして要求される諸特性により適宜選択される。このため、第1、第2磁性体層は、それぞれ同じフェライト材料を用いて構成しても良いし、異なるフェライト材料を用いて構成しても良い。異なるフェライト材料とは、同系のフェライト材料であって、組成量が異なる場合や、平均結晶粒径等が異なる場合も含む。
前記セラミクスは、通常第1磁性体層と第2磁性体層を構成するフェライト材料の焼結温度は焼結しないが、Biを含有させることで焼結が促進されるため、第1、第2磁性体層及び内部電極と一体焼結することが出来る。
複合シートは段差のない平坦なものが好ましいが、導体パターンの端縁部と第1磁性体のペーストが重なり合う場合に、重なり部で第1磁性体の盛り上りが生じたりする。また導体パターンが第1磁性体に対して盛り上がる場合もある。このような場合には複合シートの平滑性が損ねられ、積層の際に、空気を巻き込んでデラミネーションを誘発したり、圧力が均一に作用せず積層ずれを引き起こしたりする。そこで、更に複合シートを形成する工程の後、複合シートをプレスして平坦化しても良い。なお第1磁性体のペーストは導体パターンの周囲に導体パターンの端縁部と第1磁性体のペーストが重なり合わないように形成しても良い。また印刷後の導体パターンの断面形状は、中央部が厚く端縁部近傍ほど薄くなる傾向にある。そこで、予め導体パターンを印刷形成したセラミックグリーンシートをプレスして、前記導体パターンを平坦化しても良い。
図1は、本発明の一実施例に係る電子部品(積層インダクタ)の断面図である。図2(a)〜(f)は電子部品を構成するための複合シートの断面図である。図3は電子部品を構成する複合シートの積層順を説明するための斜視図である。尚、ここでは導体パターン等については、その記載を省略している。また図6は電子部品(積層インダクタ)の斜視図である。本実施例の積層インダクタは、積層体の側面側に非磁性体層40が現れる以外は、一般的な積層インダクタの外観とほぼ同一である。
第1の複合シートは、磁性体シート10aに導体パターン20を印刷形成するとともに(図2(a))、更に前記導体パターン20の周囲にその厚みと略等しい厚みの磁性体10bが磁性体シート10aと導体パターン20に直接して印刷形成されている(図2(b))。第2の複合シートは、非磁性体シート40に導体パターン20を印刷形成するとともに(図2(c))、更に前記導体パターン20の周囲にその厚みと略等しい厚みの磁性体10bが非磁性体シート40と導体パターン20に直接して印刷形成されている(図2(d))。
第1、第2の複合シートにおいて、磁性体シート10aあるいは非磁性体シート40に、先に導体パターン20を印刷形成しても良いし、磁性体10bを先に印刷形成しても良い。
図2(e)は、第2の複合シートの導体パターン20部分を拡大した図である。導体パターン20を先に印刷形成する場合には、磁性体10bが導体パターン20の縁部に被る状態となる。また、図2(f)は磁性体10bを先に印刷形成する場合について示している。この複合シートでは、磁性体10bを印刷形成した後、導体パターン20を開口部に印刷形成することで、導体パターン20が磁性体10bの縁部を覆う状態となる。
支持体となるキャリアフィルム上に形成された磁性体シート10aを、前記キャリアフィルム(図示せず)とともに所定の形状に切断し、これをプレートに配置するとともにキャリアフィルム側を吸着保持する。次に他の磁性体シート10aをキャリアフィルムが上になるようにして重ねて圧着し、キャリアフィルムを剥離する。これを所定回数繰り返して第2磁性体層となる部分を形成した。更に複数の電極パターンが形成された第2の複合シート150bを重ねて圧着し、キャリアフィルムを剥離することを所定回数繰り返した後、第1の複合シート150aを圧着しキャリアフィルムを剥離して、導体パターン間に非磁性体層が形成されたコイル部を形成した。前記導体パターン20は、その端部が非磁性体層40や磁性体シート10aに設けられたビアホールを介して他の導体パターン20と接続して周回するコイルとなる。この上に別の磁性体シート10aを圧着して、コイルとなる部分の上下に第2磁性体層を形成した積層体とした。
前記積層体を一定の間隔をもって切断して、対向する側面に導体パターンの端部を露出させた個片の積層体とした。これを850℃〜950℃で2〜6時間焼結した後、バレル研磨し、コイルの両端が現れた積層体の側面にAgペーストを焼き付けて外部端子50と形成した。導体パターンや外部端子を構成する導体材料は、抵抗率が小さく、低廉のものが好ましいが、Agの他に、Pt,Pd,Au,Cu,Niの1種以上を含有する合金等から選択しても良い。
ここでFeをFe2O3換算で47〜50.5mol%含有させるのは、透磁率を低下させずに、高い飽和磁束密度Bsを得るためである。47mol%未満であると所望の透磁率、飽和磁束密度が得られず、50.5mol%より多いとFe2+の増加によって抵抗値が低下するという問題が生じる。
ZnをZnO換算で19〜30mol%含有させるのは高い飽和磁束密度を得るためである。19mol%未満であると所望の磁束密度が得られず、30mol%より多いとキュリー温度が低下し実用温度範囲を下回るという問題が生じる。
副成分としてNbをNb2O5換算で0.01〜1.0wt%含有すれば結晶粒径を制御する効果を得る。TaをTa2O5換算で0.01〜1.0wt%含有することで、抵抗率を向上することが出来る。TiをTiO換算で0.01〜2.0wt%含有することで、抵抗率を向上することが出来る。VをV2O5換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、低温焼結を促進するためである。BiをBi2O3換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、低温焼結を促進するとともに、抵抗率を向上させるためである。CoをCo3O4換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、高周波損失を低減するためである。SnをSnO2換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、ヒステリシス損失を低減するためである。CaをCaO換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、粒成長を抑制するためである。SiをSiO2換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、粒成長を抑制するためである。Snは結晶粒内に固溶し格子定数を変化させることで、磁歪特性を改善し、応力に対する磁気特性の変化を低減する。また、Si、V、Biは粒界に存在して結晶粒の引張り応力を与える。この場合も磁歪特性を改善することが出来る。
また素原料中に不可避的に含まれるNa,S,Cl,P、W,B等の不可避不純物は、極力低減するのが好ましいが、工業的に供される素原料中に含む程度は、その含有を許容し、0.05wt%以下であるのが好ましい。
また、直流抵抗を低減するように導体パターンを厚く形成しても、第1磁性体層によって圧着時に生じやすい層間剥離(デラミネーション)を防ぐことが出来る。
また、非磁性体用のグリーンシートにAgペーストを印刷し、コイルを形成する導体パターンを形成した。乾燥後、前記導体パターンの周囲に第1磁性体層用のフェライトペーストを印刷し、乾燥させて厚みが30μmの第2の複合シートを作成した。前記第2の複合シートには電気的接続を行なうビアホールが形成されている。
得られた第2磁性体層用のフェライトグリーンシート(厚み60μm)を下層として、これを6層重ね、更に第2の複合シートを7層重ねた。更にその上に第2の複合シートを1層重ね、その上に第2磁性体層用のフェライトグリーンシート(厚み60μm)を6層重ねた。これを圧着して積層体を形成した。得られた積層体を所定の大きさ(例えば焼結後寸法が3.2mm×1.6mm×1.0mm)に切断し、これを脱バインダー後、大気中で900℃×3時間焼成した。
導体パターンが露出している側面に、Agを主成分とした導電性ペーストを塗布し、約600℃で焼き付けを行い、外部端子を形成して7.5ターンのコイルを内蔵した積層インダクタを作成した。外観や内部構造は、コイルの巻数が異なるものの、図1や図3に示した構造と実質的に同一である。
また任意に10ケ抜き取りSEMにてコイル周辺の断面観察を行なった。クラック等の発生は無く、構造的な欠陥を生じたものは無かった。
10a、10b 磁性体層
20 導体パターン
40 非磁性体層
50 外部端子
100 電子部品(積層型インダクタ)
Claims (8)
- 積層体の積層方向に複数の導体パターンを接続してなるコイルで形成されたインダクタを含む電子部品であって、
コイルを形成する全ての導体パターンは非磁性体層に直接して形成され、前記導体パターンの周囲には、その厚みと略等しい厚みの第1磁性体層が、前記非磁性体層に直接して配置され、前記導体パターンの端部は、非磁性体層に設けられたビアホールを介して他の導体パターンと接続し、前記コイルの上下には第2磁性体層を有することを特徴とする電子部品。 - コイルを形成する導体パターンのうち、隣接する導体パターン間の間隙には非磁性体層のみが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
- 前記第1磁性体層と前記第2磁性体層は、Mg−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Li−Zn系フェライトから選択される軟磁性材料を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品。
- 前記第1磁性体層及び/又は前記非磁性体層は、Biを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品。
- 前記非磁性体層は、ケイ酸ジルコニウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコニウムを主成分とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子部品。
- 積層体の積層方向に複数の導体パターンを接続してなるコイルで形成されたインダクタを含む電子部品の製造方法であって、
非磁性体のセラミックグリーンシートに導体パターンを印刷し、しかる後、前記導体パターンの周囲に第1磁性体のペーストを印刷して複合シートを形成する工程と、
前記複合シートを複数枚積層した後、圧着して、前記導体パターンがビアホールを介して互いに接続するコイルを形成した積層体とする工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。 - 積層体の積層方向に複数の導体パターンを接続してなるコイルで形成されたインダクタを含む電子部品の製造方法であって、
非磁性体のセラミックグリーンシートに導体パターンの印刷パターンに相応する部分を除く領域に第1磁性体のペーストを印刷し、しかる後、導体パターンを印刷して複合シートを形成する工程と、
前記複合シートを複数枚積層した後、圧着して、前記導体パターンがビアホールを介して互いに接続するコイルを形成した積層体とする工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。 - コイルの上下に第2磁性体のグリーンシートを積層する工程を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の電子部品の製造方法。
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