JP2008107767A - 光学フィルムおよび位相差板、並びに液晶化合物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低分子化合物を少なくとも1種類以上含有する、配向処理がなされた光学フィルムであって、配向方向に対して複屈折Δn(550nm)が0より大きく、且つ、下記数式(1)及び(2)を満たす、前記フィルム。
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5
【選択図】なし
Description
この方法は、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の複屈折性を有するモノマー単位を共重合させた高分子フィルムを用い一軸延伸によって作製するものである。この延伸した高分子フィルムは逆波長分散性を有するために、一枚の位相差フィルムで広帯域λ/4板を作製することができ、上記のような問題点を解決できるが、得られる位相差値の範囲が狭いため何層もフィルムを積層しなければ十分な光学特性が得られない。その結果、偏光板が分厚く、重くなる。また、フィルムを積層する工程で光軸ズレの発生や異物混入等の発生を防止する必要があり、製造が煩雑であるという問題もある。
[1]低分子化合物を少なくとも1種類以上含有する、配向処理がなされた光学フィルムであって、配向方向に対して複屈折Δn(550nm)が0より大きく、且つ、下記数式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、前記フィルム。
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5
[2]前記低分子化合物の分子量が100〜1500であることを特徴とする、[1]項に記載の光学フィルム。
[3]前記低分子化合物がフィルム質量に対して0.1〜50質量%含まれることを特徴とする、[1]または[2]項に記載の光学フィルム。
[4]下記数式(1’)及び(2’)を満たすことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
数式(1’) 0.7<Δn(450nm)/Δn(550nm)<0.9
数式(2’) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.25
[6]前記低分子化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[7]前記一般式(I)または(II)で表される化合物が液晶性を示す化合物である[5]または[6]項記載の光学フィルム。
[8]前記R2およびR3が、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のベンゾイルオキシ基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のベンゼン環を4位に有するシクロヘキサン環、または、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環である[5]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[9]セルロース化合物を主成分とする高分子組成物から形成されることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[10]前記セルロース化合物がセルロースアシレートであることを特徴とする、[9]項に記載の光学フィルム。
[12][11]項に記載の位相差板を含む、偏光板。
[13][11]項に記載の位相差板または[12]項に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
[14]下記一般式(II)で表される化合物。
[15]液晶性を示す化合物である[14]項記載の化合物。
[16]前記R2およびR3が、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のベンゾイルオキシ基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のベンゼン環を4位に有するシクロヘキサン環、または、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環である[14]または[15]項記載の化合物。
[17][14]〜[16]のいずれか1項に記載の化合物を含む、液晶組成物。
高分子組成物を延伸等の配向処理を行ったフィルムにおいて、配向方向に対して複屈折Δn(550nm)が正でありかつ特定波長における複屈折Δnが数式
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5
のようなΔnの波長分散性を発現させるためには、配向方向(以下、TD方向と示す)とそれに直交する方向(以下、MD方向と示す)における吸収波長と遷移モーメントの方向を上手く配置する必要がある。ここで、青(450nm)、緑(550nm)、赤(630nm)であり、視野角特性向上のためにはそれぞれの波長における最適レターデーションに合わせる必要がある。本発明では、最も重要な緑(550nm)に対して正の複屈折性を与えた場合の好適な青(450nm)、赤(630nm)の範囲が前記の数式(1)及び(2)の範囲となる。Δn(450nm)/Δn(550nm)の値が小さすぎると最適な緑に対しての最適な青のレターデーションが大きくなってしまうため、視野角特性が悪くなり、逆に、大きすぎると最適な緑に対しての最適な青のレターデーションが小さくなってしまうため、視野角特性が悪くなる。また、Δn(630nm)/Δn(550nm)の値が小さすぎると最適な緑に対しての最適な赤のレターデーションが小さくなってしまうため、視野角特性が悪くなり、逆に、大きすぎると最適な緑に対しての最適な赤のレターデーションが大きくなってしまうため、視野角特性が悪くなる。また、Δn(450nm)/Δn(550nm)およびΔn(630nm)/Δn(550nm)は、下記数式(1’)及び(2’)の範囲となることが好ましい。
数式(1’) 0.7<Δn(450nm)/Δn(550nm)<0.9
数式(2’) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.25
数式(3):1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(4):1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
を満足する。屈折率の波長分散性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収に密接な関係にあるため、MD方向の波長分散性をより右肩下がりにするためには、TD方向に比較してMD方向の吸収遷移波長をより長波化できれば、数式(3)及び(4)を満たすフィルムを設計することができる。例えば延伸処理を行ったポリマー材料では、MD方向は分子の鎖に直交方向である。そのような高分子幅方向の吸収遷移波長を長波化することは高分子材料としては非常に困難である。
低分子化合物の屈折率の大きさがMD方向に比べてTD方向に大きければ、フィルムとしてTD方向に対して複屈折Δn(550nm)が正であることに問題がないが、逆に低分子化合物の屈折率の大きさがTD方向に比べてMD方向に大きくても高分子材料の屈折率がTD方向に大きく、フィルムとして複屈折Δn(550nm)が正であれば問題ない。
本発明では、前記低分子化合物として、下記一般式(I)で表される化合物が好ましく、下記一般式(II)で表される化合物がより好ましい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
nは0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1である。
さらに、前記スキームに示したように、化合物(1−E)のテトラヒドロフラン溶液に、メタンスルホン酸クロライドを加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを滴下し攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを加え、化合物(1−D)のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、その後、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のテトラヒドロフラン溶液を滴下することで、例示化合物(1)を得ることができる。
前記の一般式(I)又は(II)で表される化合物は、高分子組成物に含有されることが好ましい。当該高分子組成物は、通常用いられる重合体であれば特に制限はない。例えば、エステル、カーボネート、オレフィン、アセチレン、シクロオレフィン、ノルボルネンなどからなる高分子組成物またはセルロース化合物が挙げられる。高分子組成物はセルロース化合物を主成分とすることが好ましい。
ここで、「主成分とする」とは、セルロース化合物を、高分子組成物全体に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上含有することをいう。
また、本発明において、「セルロース化合物」とは、例えば、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものをいう。セルロース化合物として好ましいものはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合して用いてもよい。
本発明における、一般式(I)又は(II)で表される化合物の含有量は、セルロース化合物に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.1〜30質量部であることがより好ましく、0.5〜30質量部であることがさらに好ましく、1〜30質量部であることが最も好ましい。
本発明に用いられるセルロース化合物は、好ましくはセルロースアシレートである。
以下、セルロースアシレートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤・宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
数式(5):2.0≦A+B≦3.0
数式(6):0<B
上記式中Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素原子数3以上のアシル基の置換度を表す。
本発明におけるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫・斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるセルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
本発明のセルロースアシレート溶液には、上記一般式(I)又は(II)で表される化合物のほか、種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤等)を加えることができる。また、一般式(I)又は(II)で表される化合物および他の添加剤の添加時期は、ドープ作製工程の何れにおいて添加してもよく、また、ドープ調製工程の最後に調製工程としてこれらの添加剤を添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止するために添加してもよい。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物を用いることができる。
可塑剤としては、リン酸エステルおよび/またはカルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が好ましい例として挙げられる。
(赤外吸収剤)
赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載のものが好ましい。
本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがさらに好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えてもよい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点でより好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットルが好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などである。さらに、分子量が2000以下の化合物の総量が上記範囲内であることがより好ましい。これら化合物の総量を5質量%以上とすることにより、セルロースアシレート単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しにくくなる。またこれら化合物の総量を45質量%以下とすることにより、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムの白濁(フィルムからの泣き出し)が抑止される傾向にあり好ましい。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造されることが好ましい。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
これらの特許文献によると本発明のセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、それらも、本発明においても好ましい態様である。
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を広く採用することができる。
<セルロースアシレートフィルムの製造工程>
(溶解工程)
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法または高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーション値を調整することが好ましい。特に、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
(Re、Rthの測定)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)は“KOBRA 21ADH”(商品名、王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、合計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に“KOBRA 21ADH”が算出する。
ここで平均屈折率の仮定値は「ポリマーハンドブック」(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
数式(7):0nm≦Re(590)≦200nm
数式(8):0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
さらに好ましくは、
数式(7−1):30nm≦Re(590)≦150nm
数式(8−1):30nm≦Rth(590)≦300nm
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z 0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24h以下とすることにより、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こしにくくなる。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度を400g/m2・24h以上とすることにより、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムによって接着剤が乾燥しにくくなり、接着不良を生じにくくできる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる傾向にある。そこで、本発明における透湿度は、膜厚を80μmに換算した値として述べている。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求める。
本発明では、セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明のセルロースアシレートフィルムを支持体に用いる場合、残留溶剤量を該範囲内とすることでカールをより抑制できる。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではなく、吸湿膨張係数は小さい方が好ましい傾向にあるが、より好ましくは、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
本発明のセルロースフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)が好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースフィルムの用途について説明する。
本発明のセルロースフィルムは特に偏光板保護膜用として有用である。偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護膜処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光膜及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のセルロースフィルムを適用した偏光板保護膜はどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護膜には透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護膜をこの部分に用いることが特に好ましい。
本発明のセルロースフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
<一般的な液晶表示装置の構成>
セルロースフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、セルロースフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜、および該液晶セルと該偏光膜との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明のセルロースフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。具体的には、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、VA、ECB、およびHAN等の表示モードが挙げられる。また、上記表示モードを配向分割した表示モードにおいても用いることができる。また、本発明のセルロースフィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
本発明のセルロースフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36,(1997),p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36,(1997),p.1068)の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
本発明のセルロースフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーション値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
本発明のセルロースフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーション値の絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38,(1999),p.2837)の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開WO98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報の記載に従って作製することができる。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開WO00/65384号の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest,(1998),p.1089)の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明のセルロースフィルムを好ましく用いることができる。
さらに、本発明のセルロースフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。具体的には、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載に従って、本発明のセルロースフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法に従って、作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持たせることもできることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15質量%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報に記載の方法を用いることができる。
[例示化合物(1)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(1)を合成した。
[例示化合物(2)、(3)、(4)の合成]
合成例1における4−(トランス−4−ペンチルシクロへキシル)シクロヘキサンカルボン酸をそれぞれ4−(トランス−4−ブチルシクロへキシル)シクロヘキサンカルボン酸、4−(トランス−4−プロピルシクロへキシル)シクロヘキサンカルボン酸、4−(トランス−4−エチルシクロへキシル)シクロヘキサンカルボン酸に変更したこと以外は合成例1と同様にして例示化合物(2)、(3)、(4)を合成した。
[例示化合物(16)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(16)を合成した。
[例示化合物(20)の合成]
合成例5におけるシアノ酢酸イソプロピルエステルをシアノ酢酸3−メトキシブチルエステルに変更したこと以外は合成例5と同様にして例示化合物(20)を合成した。
[例示化合物(49)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(49)を合成した。
[例示化合物(129)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(129)を合成した。
[例示化合物(124)の合成]
下記スキームに従い、実施例8における2−メトキシブタノール(129−B)を2−メチル−2,4−ブタンジオール(124−B)に変更したこと以外は実施例8と同様にして、例示化合物(124)を合成した。
[例示化合物(140)、例示化合物(141)、例示化合物(142)の混合物調製]
下記スキームに従い、例示化合物(140)、例示化合物(141)、例示化合物(142)の混合物を調製した。
[例示化合物(128)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(128)を合成した。
[例示化合物(100)と例示化合物(116)の混合物調製]
下記スキームに従い、例示化合物(100)と例示化合物(116)の混合物を調製した。
[例示化合物(124)、例示化合物(122)、例示化合物(133)の混合物合成]
下記スキームに従い、実施例9の化合物(16−E)を化合物(16−E)と化合物(16’−E)との等モル混合物に置き換えした以外は実施例9と同様にして、例示化合物(124)と例示化合物(122)と例示化合物(133)との混合物を合成した。
(セルロースアセテートフィルムの作製1)
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
セルロースアセテート溶液474質量部に上記調製したレターデーション制御剤溶液をそれぞれ36質量部混合し、充分に攪拌してドープを調製した。例示化合物又は比較化合物の量は、セルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加するように、各レターデーション制御剤溶液を調製した。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長450nm、550nm、630nmにおけるRe値を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において各波長の光をフィルム法線方向に入射させて測定した。結果を表1に示す。なお、表1中のNo.1は、レターデーション制御剤溶液を加えないこと以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。
これに対し、本発明の試料(試料No.2〜9)はいずれも各波長におけるRe値が大きく、かつ、上記数式(1)及び(2)を満たし、複屈折Δnの波長分散性が優れることがわかった。
また、例示化合物(16)の添加量を変化させた試料No.2、3及び4を比較すると、添加量の増大につれてRe値が増大することがわかる。
(セルロースアセテートフィルムの作製2)
実施例14で作成したドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、150℃の条件で、固定端一軸延伸で15%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:80μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長450nm、550nm、630nmにおけるRe値を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において各波長の光をフィルム法線方向に入射させて測定した。結果を表2に示す。なお、表2中のNo.21は、レターデーション制御剤溶液を加えないこと以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、商品名、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光膜の透過軸と上記のように作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、商品名、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板(観察者側)には、市販品のスーパーハイコントラスト品(株式会社サンリッツ社製、商品名、HLC2−5618)を用いた。下側偏光板(バックライト側)には上記実施例14で作製したフィルム(表1、No.4、No.6、No.8)、および上記実施例15で作製したフィルム(表2、No.23、No.25)を備えた偏光板を、該セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように設置した。上側偏光板および下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
(逆分散液晶化合物の評価)
本発明の例示化合物(16)について、くさび型の液晶セル(N-Wedge NLCD-057、商品名、NIPPO DENKI CO.,LTD.製)に200℃で注入し、180℃における450nm、550nm、650nmのΔnを求めたところ、それぞれ、Δn(450nm)=0.037、Δn(550nm)=0.046、Δn(650nm)=0.051であった。即ちΔn(450nm)/Δn(550nm)=0.80、Δn(650nm)/Δn(550nm)=1.11であることがわかった。下記表3に示す。
定法により合成可能な棒状液晶化合物(比較化合物(A))をくさび型の液晶セル(N-Wedge NLCD-057、商品名、NIPPO DENKI CO.,LTD.製)に210℃で注入し、150℃における450nm、550nm、650nmのΔnを求めたところ、それぞれ、Δn(450nm)=0.126、Δn(550nm)=0.111、Δn(650nm)=0.108であった。即ちΔn(450nm)/Δn(550nm)=1.14、Δn(650nm)/Δn(550nm)=0.97であることがわかった。下記表3に示す。
なお、実施例17において、Δn(450nm)、Δn(550nm)およびΔn(650nm)はそれぞれ、450nm、550nmおよび650nmにおける液晶化合物の複屈折率を意味する。
(Δnの波長分散が正常分散である液晶化合物を含有する液晶組成物)
本発明の液晶化合物(20)と一般的な液晶化合物(前記比較化合物(A))をジクロロメタンに一度溶解させた後、減圧下でジクロロメタンを除去し、液晶組成物を得た。この液晶組成物を上記同様の操作にてネマチック相における450nm、550nm、650nmのΔnを求めると右肩上がりの逆分散液晶組成物であることが分かる。すなわち、本発明のΔnの波長分散が逆分散である液晶化合物と波長分散が正常分散である液晶化合物を混合することで、その中間の波長分散性を有する液晶組成物を得ることが可能となる。
Claims (17)
- 低分子化合物を少なくとも1種類以上含有する、配向処理がなされた光学フィルムであって、配向方向に対して複屈折Δn(550nm)が0より大きく、且つ、下記数式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、前記フィルム。
数式(1) 0.5<Δn(450nm)/Δn(550nm)<1.0
数式(2) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.5 - 前記低分子化合物の分子量が100〜1500であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記低分子化合物がフィルム質量に対して0.1〜50質量%含まれることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 下記数式(1’)及び(2’)を満たすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
数式(1’) 0.7<Δn(450nm)/Δn(550nm)<0.9
数式(2’) 1.05<Δn(630nm)/Δn(550nm)<1.25 - 前記一般式(I)または(II)で表される化合物が液晶性を示す化合物である請求項5または6記載の光学フィルム。
- 前記R2およびR3が、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のベンゾイルオキシ基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のベンゼン環を4位に有するシクロヘキサン環、または、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環である請求項5〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- セルロース化合物を主成分とする高分子組成物から形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記セルロース化合物がセルロースアシレートであることを特徴とする、請求項9に記載の光学フィルム。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムからなる位相差板。
- 請求項11に記載の位相差板を含む、偏光板。
- 請求項11に記載の位相差板または請求項12に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
- 液晶性を示す化合物である請求項14記載の化合物。
- 前記R2およびR3が、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のベンゾイルオキシ基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するベンゼン環、置換もしくは無置換のベンゼン環を4位に有するシクロヘキサン環、または、置換もしくは無置換のシクロヘキシル基を4位に有するシクロへキサン環である請求項14または15記載の化合物。
- 請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物を含む、液晶組成物。
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