JP5130076B2 - 液晶表示装置 - Google Patents
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Description
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。
しかしながら、これらの技術では、広視野角かつ黒表示の観点での改善がみられるものの、高温になると液晶セルのΔndが変化することが原因で、特に視野角方向でのコントラスト値が低下する問題は解決できていない。
Δndの変化に起因するコントラスト低下の問題に対しては、液晶セルのΔndの温度依存率に対応してレターデーションが変化する光学異方体フィルムを提供する手段が報告されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、
特許文献4の段落9に記載される光学異方体は、高分子と液晶化合物または液晶組成物を混合して得られる特定の物性を有する光学異方体フィルムであり、液晶化合物または液晶組成物は、「仕様として要求される位相差フィルムのレターデーション変化の下限以下のガラス転移温度を有し、組み合わせて使用する液晶セルのΔndの温度依存性に合うように等方相転移温度が選ばれてなる」と記載されているように特殊な組成物であり、位相差フィルムとしては生産適性があるとはいえなかった。また、この光学異方体フィルムは、液晶セルの温度変化に伴うΔndの変化には対応可能としても、波長変動に対するカラーシフトの改良ができていないという問題が残る。
<1>
液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置した液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少するとともに環境温度に対して負の特性を有し、かつ
前記保護膜Bが、セルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られたセルロースアシレートから実質的になるフィルムであって、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(vi)および(vii)を満たすセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする液晶表示装置(ただし、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。)。
数式(vi): 2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
<2>
前記保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)、保護膜BのReB(λ)およびRthB(λ)および液晶セルのΔndが下記式を満たすことを特徴とする<1>に記載の液晶表示装置。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
(ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。)
<3>
前記保護膜Bが液晶セルの視認側の基板上に配置されることを特徴とする<1>または<2>に記載の液晶表示装置。
<4>
前記保護膜Bが、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料、およびマット剤から選択された1種以上を含有していることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の液晶表示装置。
<5>
前記保護膜Bが、棒状化合物または円盤状化合物のレターデーション制御剤を1種以上含有していることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の液晶表示装置。
<6>
前記レターデーション制御剤が液晶性を示す化合物であることを特徴とする<5>に記載の液晶表示装置。
<7>
前記液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の液晶表示装置。
本発明は、上記<1>〜<7>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕〜〔9〕)についても記載している。
〔1〕
液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置した液晶表示装置であって、偏光板の液晶セル側に配置される保護膜の少なくとも一枚のRth(λ)が環境温度に対して負の特性を有することを特徴とする液晶表示装置(ただし、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する)。
〔2〕
前記液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少するとともに環境温度に対して負の特性を有することを特徴とする〔1〕に記載の液晶表示装置(ただし、Reは面内レターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する)。
〔3〕
前記保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)、保護膜BのReB(λ)およびRthB(λ)および液晶セルのΔndが下記式を満たすことを特徴とする〔2〕に記載の液晶表示装置。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
(ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。)
〔4〕
前記保護膜Bが液晶セルの視認側の基板上に配置されることを特徴とする〔2〕または〔3〕に記載の液晶表示装置。
〔5〕
前記保護膜Bが、セルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られたセルロースアシレートから実質的になるフィルムであって、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(vi)および(vii)を満たすセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
数式(vi): 2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
〔6〕
前記保護膜Bが、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料、およびマット剤から選択された1種以上を含有していることを特徴とする〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔7〕
前記保護膜Bが、棒状化合物または円盤状化合物のレターデーション制御剤を1種以上含有していることを特徴とする〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔8〕
前記レターデーション制御剤が液晶性を示す化合物であることを特徴とする〔7〕に記載の液晶表示装置。
〔9〕
前記液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
ここで、温度25℃湿度60%RHの環境下でKOBRA 21ADH、WR、エリプソメーターおよびセナルモン法のいずれかで測定したReおよびRthの値が、測定環境の温度が上昇するにしたがって減少する特性を持つことを負の温度依存性(「負の特性」とも称する)を示す、とする。逆に測定温度の上昇にしたがってRe、Rth値が増大する特性をもつことを正の温度依存性(「正の特性」とも称する)を示す、とする。
面内レターデーション(Re)および膜厚方向のレターデーションの適正化および波長分散特性を制御するとともに、温度変化に対して負の特性を付与することで、液晶表示装置のΔndが低下する高温領域における視野角低下を抑制でき、黒表示のカラーシフトを低減できる。
以下、本発明の視野角低下抑制効果、および黒表示のカラーシフトの低減効果につき、詳細に説明する。
本発明では、液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)および RthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大(「波長に対し逆分散」とも言う)し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少(「波長に対し順分散」とも言う)するとともに、環境温度に対して負の特性をもたせることで、Δndが低下する高温領域でも広視野角かつ黒表示のカラーシフトが小さい液晶表示装置を提供できることを見出した。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。
尚、VAモードの液晶セルのΔnは、本発明においては0.06〜0.40、好ましくは0.06〜0.15、液晶セルのセルギャップすなわち液晶セルの液晶部分の厚みは2〜5μ、好ましくは3〜4μmである。また、通常の市販のVAモードの液晶セルは高温になるに従いΔnが減少する傾向にある。
本発明において、保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)は、波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大(「波長に対し逆分散」とも言う)する特性を有し、以下に述べる式(viii)〜(iix)を満たすことが好ましい。
式(viii) 0.75≦ReA(450)/ReA(550)<1.0
式(x) 1.0<ReA(630)/ReA(550)≦1.2
式(ix) 0.75≦RthA(450)/RthA(550)<1.0
式(iix) 1.0<RthA(630)/RthA(550)≦1.2
更に、式(viii')〜式(iix')を満たすことが好ましい。
式(viii') 0.80≦ReA(450)/ReA(550)<0.95
式(x') 1.0<ReA(630)/ReA(550)≦1.1
式(ix') 0.80≦RthA(450)/RthA(550)<0.95
式(iix') 1.0<RthA(630)/RthA(550)≦1.1
式(iiix) 1.2≦RthB(450)/RthB(550)≦1.0
式(ivx) 1.0≦RthB(630)/RthB(550)≦0.8
更に式(iiix')〜式(ivx')を満たすことが好ましい。
式(iiix') 1.1≦RthB(450)/RthB(550)≦1.0
式(ivx') 1.0≦RthB(630)/RthB(550)≦0.85
仮に、点1から入射した光が、保護膜A、液晶セル、保護膜Bを通過した後に点2に到達した時に可視光の成分B、G、R光が、点2に収束していればカラーシフトは起こらない。しかし実際には、複屈折性を有する材料を透過した光は、進行する距離がRth/λに依存するため、Rthが光の波長に依存しない固定値の場合は、B、G、R光により到達距離が異なることとなる。保護膜Aは、Rthが波長が大きくなるにつれて増大するように設計することにより、B、G、Rの各光が点Aに収束させることができる。通常のVA型液晶セルは垂直配向状態ではRthが波長が大きくなるにつれて減少するから、液晶セルを透過した光は点Bの付近には到達するが収束はしない。保護膜Bに、この液晶セルによる不収束の分をキャンセルするだけの波長依存性を持たせる事により、点2に収束させることができ、カラーシフトを減少させることができる。
式(11) −3.0≦(RthB(λ)(T)/RthB(λ)(25℃))/(T−25)<0
(ここでRthB(λ)(T)はT℃における波長λnmにおけるRth値を示す。)
更に好ましくは、式(11')を満たす。
式(11') −2.5≦(RthB(λ)(T)/RthB(λ)(25℃))/(T−25)<0
本発明においては、保護膜Bは、フロント側に設ける偏光板と液晶セルの間に設けるのが好ましい。保護膜Bが上記の環境温度に対し変動することにより、液晶表示装置が各種の環境に曝された時の液晶セルの変動を補償する効果を発揮する。
なお、以下の説明において光学フィルムの屈折率あるいは複屈折が可視光域の光に依存して(すなわち測定波長に依存して)変動することを、光学フィルムの屈折率あるいは複屈折の波長分散性といい、特に光学フィルムの屈折率あるいは複屈折が可視光域の光に対してその波長に依存して増大する性能を有することを「逆波長分散性を有する」、光学フィルムの屈折率あるいは複屈折が可視光域の光に対してその波長に依存して減少する性能を有することを「順波長分散性を有する」という。
本発明の液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜Aでは、高分子組成物に対して延伸等の配向処理を行って、延伸等による配向制御方向(以下、TD方向と示す)を正の方向とした場合の複屈折(Δn)を逆波長分散性とすることもできる。
ここで前記ΔnはTD方向の屈折率からMD方向の屈折率を差し引いた値である。このためΔnを逆波長分散性とするためにはTD方向の屈折率の波長分散性よりもMD方向の波長分散性がより右肩下がり(すなわち測定波長に対してそれぞれの屈折率の値を、短波長側を左、長波長側を右としてプロットした場合の屈折率の減少量が、MD方向のものが大きい)であることが必要である。
本発明では、高分子材料に対して下記化合物(A)のような化合物を添加し、さらに延伸等の配向処理を施すことで、TD方向に比較してMD方向における吸収遷移波長をより長波長化することを可能とするものである。
すなわち化合物(A)としては高分子材料中に添加し、これに延伸処理を施した場合、該化合物(A)の分子長軸がTD方向に配向する性質を持つ化合物が選ばれる。さらに化合物(A)としては分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントMyに由来する分子吸収波長が、該分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントMxに由来する分子吸収波長より長波長であって、分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|My|が分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|Mx|より大きい化合物が適する。このような性質を有する化合物(A)の添加により、TD方向に比較してMD方向における吸収遷移波長をより長波長化することが可能となる。
一般式(I):
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー、91巻、165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
上記(制御剤A)の他に、好ましいレターデーション上昇剤として、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物からなるものを挙げることができる。
棒状芳香族化合物は、液晶性を示すことが好ましい。棒状芳香族化合物は、加熱により液晶性を示す(サーモトロピック液晶性を有する)ことがさらに好ましい。液晶相は、ネマチィク相またはスメクティック相が好ましい。
(I) Ar1−L1−Ar2
式(I)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましく、2乃至8であることがより好ましく、2乃至6であることがさらに好ましく、2乃至4であることがさらにまた好ましく、2(ビニレンまたはエチニレン)であることが最も好ましい。
二価の飽和ヘテロ環基は、3員乃至9員のヘテロ環を有することが好ましい。ヘテロ環のヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子またはゲルマニウム原子が好ましい。飽和ヘテロ環の例には、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、1,3−チアゾリジン環、1,3−オキサゾリジン環、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジチオラン環および1,3,2−ジオキサボロランが含まれる。特に好ましい二価の飽和ヘテロ環基は、ピペラジン−1,4−ジイレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイレンおよび1,3,2−ジオキサボロラン−2,5−ジイレンである。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
L−7:−O−CO−二価の飽和ヘテロ環基−CO−O−
L−8:−CO−O−二価の飽和ヘテロ環基−O−CO−
式(II) Ar1−L2−X−L3−Ar2
式(II)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
L2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
以下に、式(I)で表される棒状芳香族化合物の例を示す。
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
本発明におけるレターデーション上昇剤としては、下記一般式(II)で表される化合物も好ましい。
一般式(II)
R4、R5、R6、R7、R8及びR9が各々表す置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
本発明におけるレターデーション上昇剤としては、さらに下記一般式(III)で表される化合物も好ましい。
一般式(III)で表される化合物について説明する。
一般式(III):
R12は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
X11は、各々独立に、単結合または−NR13−を表す。ここで、R13は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
X11が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
R13が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
R13が表す芳香族環基および複素環基は、R12が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様の置換基を挙げることができる。
本発明に用いる保護膜Aは、上記レターデーション制御剤(A)、(B)、(D)から選ばれる少なくとも1種を含有し、他の種類を併用しても良い。制御剤(C)は必要に応じて添加することができる。保護膜Aにおいて、目的とするRe、Rthを得、かつそのレターデーション値を長波長ほど高レターデーションとするための好ましい制御剤の組み合わせは、制御剤(A)と(B)の組み合わせ、または制御剤(A)と(D)との組み合わせである。
本発明に用いる保護膜Bは上記レターデーション制御剤(A)〜(D)から選ばれる少なくとも1種を含有し、他の種類を併用しても良い。保護膜Bにおいて、目的とするRe、Rthを得、かつそのレターデーション値を長波長ほど低レターデーションとするためには、制御剤(C)または(D)を用いることが好ましく、(C)と(D)を併用してもよい。また、さらに保護膜BのRthの温度依存性を制御するためには、前記(C)、(D)に加えて制御剤(A)、(B)から選ばれる少なくとも1種を加えて用いることが好ましく、その際には制御剤(A)と(B)を併用することがより好ましい。
さらに、保護膜Aの基材ポリマーに対して、制御剤(A)の添加量は0.1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%であり、制御剤(B)〜(D)は、合算して0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%である。
また、保護膜Bの基材ポリマーに対して、制御剤(C)の添加量は0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%であり、制御剤(A)、(B)、(D)は、合算して0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%である。
本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いても良い。セルロースアシレートフィルムが偏光板の液晶セル側に配置される保護膜である場合、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(vi)および(vii)を満たすことが好ましい。
式(vi) :2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
上記式(vi)および(vii)を満たすことにより、溶剤への溶解性が向上し、また光学異方性の湿度依存性を小さくすることができる。
DS2+DS3+DS6の総和は小さいほうが光学異方性の発現性が大きいが、光学異方性の湿度変化が大きくなり実用的に問題となる。逆にDS2+DS3+DS6の総和が大きいと、光学異方性の湿度変化は小さくなるが、光学異方性の発現性が小さくなる。したがって、光学異方性の発現性と湿度変化を両立させるためには、DS2+DS3+DS6の総和は2.2〜2.9が好ましく、2.4〜2.85がさらに好ましい。
光学異方性の発現性を損なわずに湿度変化を抑制するためには、さらにDS6/(DS2+DS3+DS6)を0.315以上とすることが好ましく、0.318以上とすることが更に好ましい。
本発明の液晶セルの視認側に設けられる保護膜Bは上記式(vi)および式(vii)を満たすことがとくに好ましい。
式(viii):2.0≦A+B≦3.0
式(xiv) :0<B
ここで、式中AおよびBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明では、水酸基のAとBとの置換度の総和(A+B)は、上記数式(viii)に示すように、2.0〜3.0であり、好ましくは2.2〜2.9であり、特に好ましくは2.40〜2.85である。また、Bの置換度は上記数式(xiv)に示すように、0より大きいことが好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。
A+Bが2.0未満であると、親水性が強くなり環境湿度の影響を受けやすくなる。
さらにBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましいが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。
また更に、セルロースアシレートの6位のAとBの置換度の総和が0.75以上であるのが好ましく、さらには0.80以上が、特には0.85以上が好ましい。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性、濾過性の好ましいフィルム調製用の溶液が作製でき、非塩素系有機溶媒においても、良好な溶液の調製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の調製が可能となる。
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、染料、レターデーション(光学異方性)上昇剤、レターデーション(光学異方性)減少剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション上昇剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤および染料の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いることができ、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。さらに赤外吸収剤としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。
また、本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。又インライン添加する紫外線吸収剤液に添加しても良い。特開平5−34858号公報に記載されているアントラキノン誘導体のような縮合環のキノン化合物の染料を用いることができる。
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
前記二酸化珪素微粒子を用いる場合の使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
(塩素系溶媒)
本発明のセルロースアシレートの溶液を調製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組み合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
次に、本発明のセルロースアシレートの溶液を調製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法。
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを10〜30質量%の濃度で溶解させた溶液であるのが製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として調製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液の静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折率計で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定する。
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製について述べる。セルロースアシレートの溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
ドープ膜が流延された金属支持体上の温度、金属支持体上に流延されたドープ膜に当てる乾燥風の温度および風量を調節することによっても、セルロースアシレートフィルムのRe値およびRth値を調整することができる。特にRth値は金属支持体上における乾燥条件の影響を大きく受ける。金属支持体の温度を高くする、またはドープ膜に当てる乾燥風の温度を高くする、乾燥風の風量を大きくする、つまりドープ膜に与える熱量を大きくすることによりRth値は低くなり、逆に熱量を小さくすることによりRthは高くなる。特に流延直後から剥ぎ取るまでの間の前半部の乾燥がRth値に対して大きく影響を与える。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムを延伸する。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、延伸時のフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg〜Tg+20℃であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。縦延伸は0.1〜50%の延伸が行われる。好ましくは1〜10%の延伸が、特に好ましくは2から5%延伸を行う。横延伸は3〜100%の延伸が行われる。好ましくは10〜50%の延伸が、特に好ましくは20から40%延伸を行う。フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って横延伸の倍率を縦延伸の倍率よりも大きくすることが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量が2〜40%で好ましく延伸することができる。
面内の遅相軸の幅方向に対するバラツキを小さくするために、横延伸後に緩和工程を設けることが好ましい。緩和工程では緩和前のフィルムの幅に対して緩和後のフィルムの幅を100〜70%の範囲(緩和率0〜30%)に調節することが好ましい。緩和工程における温度はフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg−10〜Tg+20℃であることが好ましい。また緩和工程における残留溶剤量は2〜20%の範囲とすることが好ましい。
ここで、延伸工程におけるフィルムの見かけ上のTgは、残留溶剤を含んだフィルムをアルミパンに封入し、示差走査熱量計(DSC)で25℃から150℃まで20℃/分で昇温し、吸熱曲線をもとめることにより求めた。
全幅のRe(590)値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、およびRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃80%RHにおける平衡含水率が3.2%以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
ガラス転移温度の測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(ハ゛イフ゛ロン:DVA−225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
吸湿膨張係数の測定は、25℃80%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定値した値L80から25%10%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定した値L10から、次式にて求めた。
(L10−L80)/(80%RH−10%RH)×1000000
ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定する。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であるのが、好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%であるのが、好ましい。
光弾性係数が、50×10-13cm2/dyne以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
次に、本発明に用いる偏光板について説明する。
本発明に用いる偏光板は、好ましくは、上述のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚、偏光子の保護膜として用いたものである。
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。そして、本発明では、少なくとも一方の保護膜として、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるのが好ましい。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。液晶セル側の保護膜と、液晶セルと反対側の保護膜の厚み、弾性率、吸湿膨張係数の関係を調整し、偏光板のカールを調節することができる。
なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じ、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られない為、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
偏光板のクロスニコルにおける色相a*およびb*は、液晶表示装置の黒表示状態における色味を適切な範囲に設定するために、それぞれ−1.0≦a*≦2.0かつ−1.0≦b*≦2.0が好ましく、−0.5≦a*≦1.5かつ−0.5≦b*≦1.5であることが更に好ましい。
偏光板の色相a*およびb*は、偏光板の可視域における分光透過率を分光光度計で測定し、測定した分光透過率に等色関数を乗じ積分することで三刺激値X、Y、Zを求め、CIE1976L*a*b*色空間の定義から求める。詳細は「色再現光学の基礎」((株)コロナ社)に記載がある。
具体的には分光光度計UV−3100(島津製作所(株)製)においてカラー測定モードにおいて、以下の測定条件にて透過率測定を行い偏光板色相を算出した。測定波長範囲:780〜380nm、スキャンスピード:中速、スリット幅:2.0nm、サンプリングピッチ:1.0nm、光源:C光源、視野:2°。ここで、2枚の偏光板はセル側保護膜同士を向かい合わせ、各々の透過軸が直交となるように組合せ、偏光板透過軸が分光光度計の試料室の法線方向(グレーティングの溝の方向)に対して45°となるように配置した。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.30−32に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
本発明の偏光板に用いられる上記各機能層としては、特開2007−140497号公報の〔0158〕〜〔0159〕に記載の反射防止層が、同公報の〔0160〕〜〔0161〕に記載の光散乱層が、同公報の〔0162〕〜〔0163〕に記載の中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層(ARフィルム)が、同公報の〔0164〕〜〔0165〕に記載のハードコート層、帯電防止層に記載された技術を利用できる。
本発明の液晶表示装置は、本発明の保護膜を有する偏光板を少なくとも1枚用いた液晶表示装置(第1形態)、本発明の保護膜を有する偏光板のいずれかをセル上下に1枚ずつ用いたVAモード、OCBモードおよびTNモード液晶表示装置(第2形態)、および本発明の保護膜を有する偏光板のいずれか1枚をバックライト側にのみ用いたVAモード液晶表示装置(第3形態)である。
すなわち、本発明の保護膜は光学補償シートとして有利に用いられる。また、本発明の保護膜を用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の保護膜は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching )、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、VAモードまたはOCBモードに好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード、CPAモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置としては、図8に示すように、液晶セル(VAモードセル)およびその両側に配置された二枚の偏光板(TAC1、偏光子およびTAC2からなる偏光板)からなるものが挙げられる。液晶セルは、特に図示しないが二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
図8の保護膜(TAC2)は、市販のセルレートアシレートフィルムでも良く、本発明のセルロースアシレートフィルムより薄いことが好ましい。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
[視認側偏光板保護膜の作製(F−1〜F−8)]
(1)F−1の作製
下記表1に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−1を作製した。膜厚は70μとした。
25℃60%RHで波長450nm、550nm、630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。ここで本発明のフィルムにおいては平均屈折率を1.48としてRth(λ)を算出した。さらに、測定したフィルムをガラス板に粘着剤を介して貼り合わせ、膜面の温度が60℃に達するまで加熱した状態で同様に波長450nm、550nm、630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。以下、F−1〜F−8まで同様の手法でレターデーション測定を行った。
F−1と同様のセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−2を作製した。膜厚は92μとした。
下記表2に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−3を作製した。膜厚は80μとした。
レターデーション制御剤Cを2.6%とした以外はF−3と同じセルロースアシレート溶液を金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−3を作製した。膜厚は80μとした。
市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士フイルム(株)製)をF−5とした。
下記表3に記載の各成分を混合して、セルロースアシレートプロピオネート溶液を調製した。このセルロースアシレートプロピオネート溶液を、ドープ温度30℃で金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−6を作製した。膜厚は40μとした。
厚さ100μのノルボルネン系フィルムゼオノアZF14(日本ゼオン(株)製)を150℃で15%二軸延伸することでF−7を作製した。膜厚は80μであった。平均屈折率を1.52とした以外はF−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
下記表4に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−8を作製した。膜厚は80μとした。
[バックライト側偏光板保護膜の作製(R−1〜R−2)]
(1)R−1の作製
下記表6に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で3%縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて32%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に7%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。膜厚は80μとした。
25℃60%RHで波長450nm,550nm,630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。ここで本発明のフィルムにおいては平均屈折率1.48としてRth(λ)を算出した。
下記表7に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で5%縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて25%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に2%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。膜厚は60μとした。R−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
R−2と同様に流延したフィルムを幅方向に30%延伸したフィルムをR−3とした。膜厚は45μとした。R−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
F6と同様に作製したセルロースアシレートプロピオネート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で125%縦方向に延伸し、セルロースプロピオネートフィルムを製膜した。膜厚は74μとした。
R−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
[偏光板の作製]
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ化カリウム濃度2質量%のヨウ化カリウム水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子Aを得た。
また、厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ化カリウム濃度12質量%のヨウ化カリウム水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子Bを得た。
表5および8に示した実施例1および2で作製した保護膜および市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士写真フイルム(株)製)を1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行った実施例1および2で作製した保護膜と市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士写真フイルム(株)製)を、偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板FH−1〜FH−8、RH−1〜RH−4を得た。偏光子と実施例1から2で作製した保護膜はR−4を除き、偏光子のMD方向と保護膜のMD方向が一致するように貼り合わせた。R−4はMD方向が直交するように貼り合わせた。
[液晶表示装置の作製]
市販の40インチVAモード液晶テレビ(SONY製)の表裏の偏光板および位相差板を剥して、液晶セルとして用いた。この液晶セルのΔnd値は、25℃では300nm、60℃では225nmであった。
下記表9の構成で、作製した偏光板FH−1〜FH−8およびRH−1〜RH−4を液晶セルに粘着剤を介して貼り合わせ、図9に示すように、液晶表示装置を作製した。なお、視認側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
[表示性能の測定]
測定機(EZ−contrast 160D,ELDIM社製)を用いて、25℃60%に調整された暗室内で黒表示および白表示の輝度および色度を測定し、黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比を算出した。さらに、暗室内の温度を60%に設定し同様にカラーシフトおよびコントラスト比を測定値から算出した。結果を表9に示した。黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比は以下の指標を用いた。
[コントラスト比]
方位角45°/135°/225°/315°での極角60°におけるコントラスト比の平均値をCRとした。
[カラーシフト]
極角60°で方位角0〜360°視野を回転させたときのu'v'色度図からu'の最大値、最小値をそれぞれu'(max),u'(min)、v'の最大値、最小値をそれぞれv'(max),v'(min)とし次式からΔu'v'を定義した。
Δu'v'={(u'(max)2- u'(min)2)+(v'(max)2-v'(min)2)}0.5
Claims (7)
- 液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置した液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少するとともに環境温度に対して負の特性を有し、かつ
前記保護膜Bが、セルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られたセルロースアシレートから実質的になるフィルムであって、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(vi)および(vii)を満たすセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする液晶表示装置(ただし、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。)。
数式(vi): 2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315 - 前記保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)、保護膜BのReB(λ)およびRthB(λ)および液晶セルのΔndが下記式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
(ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。) - 前記保護膜Bが液晶セルの視認側の基板上に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
- 前記保護膜Bが、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料、およびマット剤から選択された1種以上を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。
- 前記保護膜Bが、棒状化合物または円盤状化合物のレターデーション制御剤を1種以上含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
- 前記レターデーション制御剤が液晶性を示す化合物であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
- 前記液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
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