JP2011075924A - 光学フィルム、位相差板、偏光板、ならびに液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、従来の位相差板は、単色光に対しては、光線波長の1/4λまたは1/2λの位相差に調整可能であるが、可視光域の光線が混在している合成波である白色光に対しては、各波長での偏光状態に分布が生じ、有色の偏光に変換されるという問題がある。これは、位相差板を構成する材料が、位相差について波長分散性を有することに起因する。
しかし、目標の位相差を達成するために化合物の添加量を増やした場合や、セルロースアシレートのアシル置換度の程度や、併用する可塑剤、添加剤の種類によって、ブリードアウトが起こり、耐久性に問題があった。可塑剤に関していえば、従来用いられてきたリン酸エステル系可塑剤、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)では揮散性が大きな問題であり、改善が必要であった。そこで炭化水素系可塑剤(糖誘導体)やポリエステル系可塑剤を用いたところ、従来の特許文献3、4に記載されているような化合物ではブリードアウトが起こることがわかった。
本発明の第2の目的は、前記光学フィルムを用いた位相差板および液晶表示装置を提供することにある。
(1)下記一般式(I)または(II)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする光学フィルム。
(2)前記一般式(I)または(II)で表される化合物の少なくとも一種とともに、分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントMyに由来する分子吸収波長が、当該分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントMxに由来する分子吸収波長より長波長であって、分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|My|が分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|Mx|よりも大きい低分子化合物(a)の少なくとも一種を含有することを特徴とする(1)に記載の光学フィルム。
(3)前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(I−2)で表される化合物であることを特徴とする(1)または(2)に記載の光学フィルム。
(4)前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(I−a)、(I−b1)または(I−b2)で表される化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(5)前記一般式(II)で表される化合物が下記一般式(II−2)で表される化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(6)前記低分子化合物(a)が、その骨格中に下記式(A)で表される構造を含む化合物であることを特徴とする(2)〜(5)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(8)セルロースアシレートフィルムであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに1項に記載の光学フィルム。
(9)前記セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.00〜2.98であることを特徴とする(8)に記載の光学フィルム。
(10)前記セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基からなる群から選ばれる少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする(8)に記載の光学フィルム。
(11)前記一般式(I)または(II)で表される化合物がフィルム質量に対して0.1〜50質量%含まれることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(12)下記式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
数式(1): Δn(550nm)> 0
数式(2): 1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(3): 1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
(13)フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(14)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の光学フィルムからなる位相差板。
(15)(14)に記載の位相差板を含んでなる偏光板。
(16)(14)に記載の位相差板または(15)に記載の偏光板を含んでなる液晶表示装置。
(17)VAモードであることを特徴とする(16)に記載の液晶表示装置。
(18)下記一般式(I−a2)または(I−b3)で表される化合物。
[一般式(I)で表される化合物]
R1およびR2は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜30のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ドデシル基があげられる。ただし、R1,R2中に環構造、すなわち、シクロヘキシル環、ベンゼン環などを含まない。これらに置換してもよい基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基があげられる。
R1およびR2として好ましくは、水素原子または炭素原子数16以下の置換もしくは無置換のアルキル基である。
ヘテロ環連結基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子またはゲルマニウム原子があげられるがこれに限定されるものではない。酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子であることが好ましい。また、二つ以上のヘテロ原子を含むことも好ましい。単環でも縮環でもよく、また、置換基を有していてもよい。ヘテロ環の例には、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、1,3−チアゾリジン環、1,3−オキサゾリジン環、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジチオラン環および1,3,2−ジオキサボロラン環があげられる。特に好ましい二価の飽和ヘテロ環基は、ピペラジン−1,4−ジイレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイレンおよび1,3,2−ジオキサボロラン−2,5−ジイレンである。
ヘテロ環連結基としては、また、下記に示すような連結基があげられる。*の位置で連結するがどちら側がL1、L4側になっていてもよい。
Rcは置換基を表し、mは0〜4の整数を表し、nは1または2の整数である。
一般式(I−2)において、Rcは置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成しても良い。置換基の例としては下記のものが適用できる。
mは0〜4の整数を表し、好ましくは0、1または2であり、より好ましくは0または1である。nは1または2の整数であり、nは好ましくは1である。
Y1,Y2、Y3,Y4はそれぞれ独立に−N<または>CH−を表し、Y1,Y2のうち少なくとも一つ、及び、Y3,Y4のうち少なくとも一つは−N<である。好ましくは、Y2及びY3は−N<であり、より好ましくは、Y1,Y2、Y3,Y4すべてが−N<である。
s1、s2は0〜4の整数を表し、s1、s2は好ましくは0である。
一般式(I−a)においては、L1、L4はもっとも好ましくは、単結合または、(*がヘテロ環に連結する方向として)*−C(=O)O−、*−C(=O)−である。L2a、L3aはもっとも好ましくは、(*が芳香環に連結する方向として)*−O−C(=O)−、*−NH−C(=O)−、*−C(=O)O−である。
t1、t2は0〜6の整数を表す。t1、t2は好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
一般式(I−b1)および(I−b2)においては、L1、L4はもっとも好ましくは、単結合である。L2a、L3aはもっとも好ましくは、(*が芳香環に連結する方向として)*−O−C(=O)−、*−NH−C(=O)−、*−O−CH2−である。
1,3−ジオキサン環では立体異性体が存在するが、本発明においては限定されず、両者の混合物でもよい。1,4位のL1とL2a、また、L3aとL4はトランス位に存在することが好ましい。
一般式(I−a2)において好ましくは、
R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数16以下の置換もしくは無置換のアルキル基であり、
L1、L4、は各々独立に単結合または(*がヘテロ環に連結する方向として)*−C(=O)、*−C(=O)O−、*−C(=O)NH−であり、
L2a、L3a、は各々独立に単結合または(*がXに連結する方向として)*−C(=O)O−、*−OC(=O)−、*−C(=O)NH−、*−NHC(=O)−、*−CH2O−、*−OCH2−であり、
Rcは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、もっとも好ましくは、メチル基、メトキシ基、塩素原子、フッ素原子、シアノ基であり、
mは0〜3の整数、より好ましくは0または1であり、
nは1または2の整数
である。
一般式(I−b3)において好ましくは、
R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数16以下の置換もしくは無置換のアルキル基であり、
L2’、L3’は各々独立に単結合または−O−、−NH−であり、
Rcは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、もっとも好ましくは、メチル基、メトキシ基、塩素原子、フッ素原子、シアノ基であり、
Rt1、Rt2は水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子であり、
mは0〜3の整数、より好ましくは0または1であり、
nは1または2の整数、
である。
一般式(II)において好ましくは、
R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数16以下の無置換のアルキル基であり、
L1、L4は、単結合または、(*がR1,R2に連結する方向として)*−O−C(=O)−、*−C(=O)−O−、*−O−であり、
L2、L3は、(*が中央の環に連結する方向として)*−O−C(=O)−、*−C(=O)−O−である。
Y1,Y2,Y3はそれぞれ独立に6員の環状脂肪族連結基を示す。
環状脂肪族連結基として用いられる脂肪族環の例としてはシクロヘキサン環があげられる。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基が好ましい。シクロヘキサン環にはシス体およびトランス体の立体異性体が存在するが、本発明においては限定されず、両者の混合物でも良い。好ましくはトランス−シクロヘキサン環である。したがって環状脂肪族連結基としてもっとも好ましくはトランス−1,4−シクロへキシレン基である。
一般式(II−2)において、三つのシクロヘキサン環は、シス体およびトランス体の立体異性体が存在するが、本発明においては限定されず、両者の混合物でも良い。好ましくはシクロヘキサン環は、トランス−シクロヘキサン環であり、三つのシクロヘキサン環がすべてトランス−シクロヘキサン環であることがもっとも好ましい。
以下に、一般式(I)または(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。下記一般式において、k、lは1〜8の整数であり、好ましくは、k=2,3,4,5,6、l=2,3,4,5,6である。(すなわち、II−1−kは、炭素数を表すkによって、II−1−1,II−1−2,II−1−3,II−1−4,II−1−5,II−1−6,II−1−7,II−1−8の8種類の化合物を示す。)またn、mはそれぞれ2〜12の整数であり、好ましくは、n=4〜10、より好ましくは、6〜10、m=4〜10、より好ましくは、6〜10である。(すなわち、I−3−nは、炭素数を表すnによって、I−3−2からI−3−12の11種類の化合物を示す。)
次に、一般式(I)または(II)で表される化合物の合成方法を説明する。
一般式(II)で表される化合物は、例えば特開昭57−99557号公報、特開昭57−145852号公報などに記載の合成方法に準じて合成することができる。
同様にして、例示化合物(II−2−k)の場合では、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を塩化チオニルを用いて、ジ酸クロライドとしたのち、4−アルキルシクロヘキサノールのTHF溶液中に滴下し、室温にて攪拌することで、目的の化合物を合成できる。
一般式(II)において置換基や連結基の異なる他の化合物の合成については、上記方法に基づき、使用する化合物や行う反応を変えることで行えるが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、シクロヘキサン環はトランス−シクロヘキサン環であることが好ましいが、原料の置換シクロヘキサンカルボン酸、置換シクロヘキサノール、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジオールをトランス体のものを使用して合成しても良いし、シストランス異性体の混合物を用い、反応後に精製してトランス体を取り出してもかまわない。
本発明における、一般式(I)または(II)で表される化合物の含有量は、フィルム質量に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.2〜20質量部であることがより好ましく、0.2〜10質量部であることがさらに好ましく、0.2〜5質量部であることがもっとも好ましい。
本発明で用いる一般式(I)または(II)で表される化合物は、低分子化合物(a)、特に、一般式(A−1)で表される化合物とともに用いることができる。低分子化合物(a)を併用することにより、光学フィルムのΔReを大きくすることができる。以下に低分子化合物(a)、一般式(A−1)で表される化合物について説明する。
(分子長軸の決定)
本発明に用いる上記低分子化合物(a)における分子長軸は、コンピューターを用いた密度汎関数計算によって決定することが出来る。すなわち密度汎関数計算によって分子の最適化構造を得て、得られた分子構造中の任意の2原子間距離のうち、最も距離の長い2原子同士を結んだ軸を分子長軸とする。
上記における分子構造の構築にあたっては、GausView3.0(商品名、Gaussain Inc.社製)を用いる。分子構造の最適化に用いるプログラムとしては、Gaussian03 Rev.D.02(商品名、Gaussain Inc.社製)を用い、基底関数としてB3LYP/6−31G(d)を用い、収束条件はデフォルト値を用いる。
上記遷移電気双極子モーメントMx、My、およびこれらの大きさ|Mx|、|My|、さらにはMx、Myに由来する吸収波長は時間依存密度汎関数計算によって求めることが出来る。時間依存密度汎関数計算に用いるプログラムとしては、Gaussian03 Rev.D.02(商品名、Gaussain Inc.社製)、基底関数としてB3LYP/6−31+G(d)を用い、さらにPCM法により溶媒効果を導入する。
さらに具体的には上記計算によって求めた遷移電気双極子モーメントを構成するベクトルと前記分子長軸を構成する両端の原子のカルテシアン座標で表されるベクトルとの内積から遷移電気双極子モーメントと上記分子長軸とのなす角度を求め、これらを基に前記Mx、Myおよび|Mx|、|My|、MxおよびMyに由来する分子吸収波長を決定する。
ここで分子長軸方向に略直交する遷移電気双極子モーメントMxに由来する吸収波長は、分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントMyに由来する吸収波長より10nm以上200nm以下長波長であることが好ましく、10nm以上150nm以下長波長あることがより好ましく、20nm以上120nm以下長波長であることがさらに好ましい。
上記長軸方向に略直交する遷移電気双極子モーメントMyに由来する吸収波長は、250nm以上400nm以下の範囲であることが好ましく、300nm以上390nm以下の範囲であることがより好ましく、320nm以上380nm以下の範囲であることがさらに好ましい。
上記の範囲の分子量より大きな分子量を有する化合物はブリードアウトが発生しやすく好ましくない。
本発明における、低分子化合物(a)の含有量は、フィルム質量に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.2〜20質量部であることがより好ましく、0.2〜10質量部であることがさらに好ましく、0.2〜5質量部であることがもっとも好ましい。
本発明においては、前記低分子化合物(a)が、その骨格中に下記式(A)で表わされる構造を含む化合物であることが好ましい。
以下、一般式(A−1)で表わされる化合物について説明する。
一般式(A−1)において、R31は置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成しても良い。置換基の例としては一般式(I−2)のRcについてあげたものが適用できる。
n1は0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1である。
R34、R35は各々独立に置換基を表す。例としては一般式(I−2)のRcについてあげたものがあげられる。好ましくは、ハメットの置換基定数σp値が0以上の電子吸引性の置換基である。σp値として好ましくは0以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、もっとも好ましくは0.35〜1.5である。
これらのうち好ましくは、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(−COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(−COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(−COOPh:0.44)、カルバモイル基(−CONH2:0.36)、アルキルカルボニル基(−COMe:0.50)、アリールカルボニル基(−COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(−SO2Me:0.72)、またはアリールスルホニル基(−SO2Ph:0.68)などが挙げられる。Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページから抜粋したものである。
さらに、好ましくは、R34及びR35の両方が、シアノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基のいずれかであり、より好ましくは、R34及びR35の両方が、シアノ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基のいずれかである。
L11、L12、L21、L22はそれぞれ独立に単結合、または−O−、−S−、−S(=O)2−、−CO−、−NRA−(RAは、炭素原子数が1〜7のアルキル基又は水素原子である。)、−CH2−及びそれらの(2個以上連結して形成される)組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
前記2個以上連結して形成される2価の連結基としては、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−OC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−O−CH2−があげられる。
L11およびL12として好ましくは単結合、−O−*、−C(=O)−O−*、−O−C(=O)−*、−O−CO−O−*、−OCH2−*であり、より好ましくは−O−*、−O−C(=O)−*、−O−CO−O−*、−OCH2−*である。(*はZ1に連結する方向を表す。)
L21、L22、として好ましくは単結合、*−O−、*−C(=O)−、*−C(=O)−O−、*−O−C(=O)−、*−O−CO−O−、*OCH2−、*−CH2O−、より好ましくは単結合、*−O−、*−C(=O)−、*−C(=O)−O−、*−O−C(=O)−である。(*はZ1に連結する方向を表す。)
Z1およびZ2は各々独立に二価の5員または6員の環状連結基を表し、当該二価の環状連結基に含まれる環としては、芳香族環、脂肪族環、ヘテロ環ともに用いることができ、単環でも縮環でもよく、また、置換基を有していてもよい。
これらのうち、芳香族環からなる二価の環状連結基として特に好ましくは、無置換もしくは置換の1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基であり、無置換もしくは置換の1,4−フェニレン基がもっとも好ましい。
R21およびR22は水素原子または、置換もしくは無置換のアルキル基であり、アルキル基の例としては先の一般式(I−2)のRcについて示したとおりである。
R21およびR22として好ましくは、炭素原子数20以下の置換もしくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは、14以下の無置換のアルキル基である。
m1が2の場合、複数存在するL21およびZ1は同一であっても異なっていてもよい。また同様に、m2が2の場合、複数存在するL22およびZ2は同一であっても異なっていてもよい。また、−L11−(Z1−L21)m1−R21で表される基と、および−L12−(Z2−L22)m2−R22で表される基は、同一であっても異なっていてもよい。合成の観点からは同じであることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の一般式(A−1)で表される化合物のもっとも好ましい例としては、
n1は0または1であり、n1は1のときのR31は塩素原子、メチル基、t-ブチル基、メトキシ基であり、
R34、R35はそれぞれ独立に炭素原子数10以下のシアノ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基であり、
L11およびL12は単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−CO−O−、−OCH2−であり、より好ましくは−O−、−O−C(=O)−、−O−CO−O−、−OCH2−である。
L21、L22は単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−CO−O−、−OCH2−、−CH2O−であり、より好ましくは、単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−である。
Z1、Z2は無置換もしくは置換の1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基であり、
R21およびR22はそれぞれ独立に無置換のアルキル基であり、
m1およびm2はそれぞれ独立に0ないし2である。
以下に、一般式(A−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。下記一般式において、nは1〜8の整数であり、好ましくは、n=2,3,4,5,6である。すなわち、(1−nは、炭素数を表すnによって、1−1,1−2,1−3,1−4,1−5,1−6,1−7,1−8の8種類の化合物を示す。)また、同様に、mは1〜14の整数であり、好ましくは、m=4〜14の整数である。
一般式(A−1)で表される化合物の合成は既知の方法で行うことができ、特開2008−107767号公報の段落〔0066〕〜〔0067〕、〔0136〕〜〔0176〕に記載の方法を用いることができる。また、中間体の合成については、J. Org. Chem., 29, 660-665 (1964)、 J. Org. Chem., 69, 2164-2177 (2004)、 Justus Liebigs Annalen der Chemie, 726, 103-109 (1969)、 Journal of Chemical Crystallography (1997);27(9);515-526 に記載の方法を用いることができる。例えば、下記化合物は、下記スキームに従って合成することができる。
さらに、前記スキームに示したように、化合物(S−5)のトルエン溶液にN,N−ジメチルホルムアミドを添加し、塩化チオニルを加えて加熱攪拌することによって酸クロライドを生成させたのち、この酸クロライドを、化合物(S−4)のテトラヒドロフラン溶液に滴下し、その後、ピリジンを加えて攪拌することで、一般式(A−1)で表される化合物(S−6)を得ることができる。
本発明の光学フィルムは以下のセルロース組成物より製造されるセルロースフィルムが好ましい。
本発明において、「セルロース化合物」とは、例えば、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものをいう。本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合して用いてもよい。
セルロース化合物として好ましいものはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。以下、セルロース化合物としてセルロースアシレートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤・宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7〜8頁)に記載されており、本発明に対しては特に限定されるものではない。
また、本発明において、もう一つの好ましいセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基及び炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(4)及び数式(5)を満足するセルロースアシレートである。
数式(4): 2.0≦A+B≦3.0
数式(5): 0<B
(上記式中Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素原子数3以上のアシル基の置換度を表す。)
本発明においては、セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基からなる群から選ばれる少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることも好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫・斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるセルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
本発明のセルロース組成物(以下、セルロースアシレート溶液もしくはドープともいう)には、上記低分子化合物(a)及び一般式(I)または(II)で表される化合物のほか、種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、剥離促進剤、染料、マット剤微粒子、赤外線吸収剤など光学特性調整剤等)を加えることができる。また、低分子化合物(a)及び一般式(I)または(II)で表される化合物および他の添加剤の添加時期は、ドープ作製工程の何れにおいて添加してもよく、また、ドープ調製工程の最後に調製工程としてこれらの添加剤を添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止するために添加してもよい。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物を用いることができる。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル、多価アルコールの脂肪酸エステル類、ポリエステル類、および/または、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体(以下、炭水化物系可塑剤という)であることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。
また、多価アルコールの脂肪酸エステル類としては、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
炭水化物系可塑剤としては、キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネートなどが好ましい。
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が好ましい例として挙げられる。
(赤外吸収剤)
赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載のものが好ましい。
本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがさらに好ましい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
その他の光学特性制御剤としては、たとえば、特許第3896404号公報段落[0020]〜[0029]、特開2003-344655号公報段落[0044]〜[0056]に記載の添加剤を用いることができる。
セルロースアシレート溶液にマット剤として微粒子を加え、本発明のセルロースアシレートフィルムに含有させてもよい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点でより好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットルが好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレート溶液から形成されるフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、剥離促進剤、染料、マット剤微粒子、赤外吸収剤など光学特性調整剤である。さらに、分子量が2000以下の化合物の総量が上記範囲内であることがより好ましい。これら化合物の総量を5質量%以上とすることにより、セルロースアシレート単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しにくくなる。またこれら化合物の総量を45質量%以下とすることにより、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムの白濁(ブリードアウト)が抑止される傾向にあり好ましい。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造されることが好ましい。主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
これらの特許文献によると本発明において好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、それらも、本発明においても好ましい態様である。
次に、上記セルロースアシレート溶液を用いたフィルム(以下、本発明のセルロースアシレートフィルムという。)の製造方法を例に、本発明の光学フィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来周知のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を広く採用することができる。
(溶解工程)
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法または高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等の塗布層を、フィルムの表面へ塗布形成(塗布加工)するために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
(延伸処理)
本発明の光学フィルムは、延伸処理によりレターデーション値を調整することが好ましい。特に、光学フィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。フィルムは、1〜200%の延伸を行うことが好ましく、1〜100%の延伸を行うことがより好ましく、1〜50%の延伸を行うことがさらに好ましい。
[光学フィルムのΔn]
以下、光学フィルムのΔnについて説明する。
Δnは配向方向(以下TD方向と示す。)の屈折率から配向方向と直交する方向(以下MD方向と示す。)の屈折率を差し引いた値である。
本発明の光学フィルムは、配向処理されたのち、配向方向に対して屈折率Δn(550nm)が0より大きい、すなわち、
数式(1): Δn(550nm) > 0
を満足する。本発明においては、高分子材料に対して、一般式(I)または(II)で表わされる化合物を添加し配向することで、数式(1)を満たすフィルムを設計することができる。
さらに、TD方向の屈折率の波長分散性よりも、MD方向の波長分散性が、より右肩下がり(左を短波長側、右を長波長側とおいたときのΔnの傾き)であれば、その差し引いた値は、
数式(2): 1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(3): 1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
を満足する。屈折率の波長分散性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収に密接な関係にあるため、MD方向の波長分散性をより右肩下がりにするためには、TD方向に比較してMD方向の吸収遷移波長をより長波化できれば、数式(2)及び(3)を満たすフィルムを設計することができる。例えば延伸処理を行ったポリマー材料では、MD方向は分子の鎖に直交方向である。そのような高分子幅方向の吸収遷移波長を長波化することは高分子材料としては非常に困難である。
低分子化合物の屈折率の大きさがMD方向に比べてTD方向に大きければ、フィルムとしてTD方向に対して複屈折Δn(550nm)が正であることに問題がないが、逆に低分子化合物の屈折率の大きさがTD方向に比べてMD方向に大きくても高分子材料の屈折率がTD方向に大きく、フィルムとして複屈折Δn(550nm)が正であれば問題ない。
(Re、Rthの測定)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(商品名、王子計測機器社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(21)及び式(22)よりRthを算出することもできる。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
数式(6):0nm≦Re(590)≦200nm
数式(7):0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
さらに好ましくは、以下の数式(6−1)、(7−1)を満たすことである。
数式(6−1):30nm≦Re(590)≦150nm
数式(7−1):30nm≦Rth(590)≦300nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、式(5)、(6)におけると同義である。)
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
本発明の位相差板(光学補償シート)に用いる光学フィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z 0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明の光学フィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求める。
本発明では、光学フィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明の光学フィルムを支持体に用いる場合、残留溶剤量を該範囲内とすることでカールをより抑制できる。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
本発明の光学フィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではなく、吸湿膨張係数は小さい方が好ましい傾向にあるが、より好ましくは、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明の光学フィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
光学フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、光学フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)が好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明の光学フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明の光学フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムの用途について説明する。
偏光板は、一般的に、偏光膜及びその表面を保護する保護膜で構成されているが、本発明の光学フィルムは特に偏光板の保護膜用として有用である。偏光板保護膜として用いる場合、偏光板自体の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製(準備)することができる。例えば得られたセルロースフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護膜処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は、上記したように、偏光膜及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に当該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護膜はどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護膜には透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護膜をこの部分に用いることが特に好ましい。
光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。本発明の光学フィルムは、様々な用途で用いることができるが、液晶表示装置の当該光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。当該光学補償フィルムは、複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられるものである。
<一般的な液晶表示装置の構成>
本発明の光学フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、光学フィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜、および該液晶セルと該偏光膜との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明の光学フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。具体的には、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、VA、ECB、およびHAN等の表示モードが挙げられる。また、上記表示モードを配向分割した表示モードにおいても用いることができる。また、本発明の光学フィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
本発明の光学フィルムは、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の光学フィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明の光学フィルムを好ましく用いることができる。
さらに、本発明の光学フィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。具体的には、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載に従って、本発明のセルロースフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法に従って、作製することができる。
本発明の光学フィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持たせることもできることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明の光学フィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15質量%含む酸化インジウムの薄膜(ITO)が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報に記載の方法を用いることができる。
[合成例1−1]
[例示化合物(1a-1-6)(式(1a-1-n)において、n=6の化合物)の合成]
下記スキームに従い合成した。なお、合成したすべての化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
N−ヘキシルピペラジン塩酸塩9.73gを酢酸エチル、KOH水溶液で処理して、フリー化したのち、有機相を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去して、N−ヘキシルピペラジンのフリー体を得た。トリホスゲン4.75gを塩化メチレンに溶解させ、氷冷化、ピリジン3.24mlをゆっくりと滴下した。その後、N−ヘキシルピペラジンのフリー体の塩化メチレン溶液をゆっくりと滴下し、この反応溶液を室温で4時間攪拌した。反応終了後、水とKOH水溶液を加え、分液し、有機層は、水、飽和食塩水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。このカルバモイルクロライドの粗生成物5.4gはそのまま次工程に用いた。
得られたカルバモイルクロライドを、ハイドロキノン1.1g、トリエチルアミン3.25mlのN,N−ジメチルアセトアミド50ml溶液に室温で滴下し、この反応溶液を60℃で4時間加熱攪拌して反応させた。反応終了後、メタノール、水を加え、析出した生成物をろ取した。この粗生成物をメタノール、次いで、アセトニトリルにより再結晶することで、例示化合物(Ia−1−6)を白色固体として2.1g得た。
融点;140℃
1H−NMR(CDCl3、δ)0.90(m、6H),1.30(m,12H),1.50(m、4H),2.37(m、4H),2.47(m,8H),3.59(m,4H),3.65(m,4H),7.08(s,4H)
合成例1−1において、ヘキシルブロマイドをデシルブロマイドに変更した以外はまったく同様にして、例示化合物(Ia−1−10)を合成した。
融点134℃。
融点;134℃
1H−NMR(CDCl3、δ)1.26(t、6H),1.76(m,4H),1.96(m、4H),2.51(m、2H),2.93−3.20(m,4H),4.26(m+d,8H),7.06(s,4H)
[合成例2−1]
[例示化合物(Ib-1−8)(式(1b-1-n)において、n=8の化合物)の合成]
下記スキームに従い例示化合物(Ib−1−8)を合成した。
化合物(Ib−1−8−S)6.6g、ハイドロキノン1.2g、を塩化メチレン80mlに溶解させ、氷冷化、ジシクロヘキシルカルボジイミド5.6gの塩化メチレン溶液をゆっくりと滴下した。その後、N,N−ジメチルアミノピリジン0.28gを添加し、室温にて4時間攪拌した。析出した固体をろ別したのち、ろ液に水を加えて分液し、有機層は、水、飽和食塩水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、アセトニトリルにより再結晶することで、例示化合物(Ib−1−8)を白色固体として2.3g得た。
1H−NMR(CDCl3、δ)0.90(t、6H),1.20−1.48(m,24H),1.62(m、4H),3.22(m、2H),3.89(t,4H),4.40−4.50(dd+t,6H),7.05(s,4H)
得られた化合物は液晶性を示し、その相転移温度はCr−100℃→SmB−201℃→Iso であった。なお、Crは結晶相、Nはネマチック相、SmBはスメクチックB相、Isoは等方相を示す。
合成例2−1において、(Ib−1−8−S)で示されるカルボン酸の側鎖をオクチル基からノニル基に変更した以外はまったく同様にして、例示化合物(Ib−1−9)を合成した。その相転移温度はCr−100℃→SmB−197℃→Iso であった。
合成例3−1におけるトランス−4−ペンチルシクロヘキシルカルボン酸を、トランス−4−エチルシクロヘキシルカルボン酸、トランス−4−プロピルシクロヘキシルカルボン酸、トランス−4−ブチルシクロヘキシルカルボン酸、と変更したこと以外は合成例2−1と同様にして、例示化合物(II−1−2)、(II−1−3)、(II−1−4)を合成した。
相転移温度はそれぞれ下記のとおりであった。
(II−1−2)Cr−113℃→SmB−128℃→Iso
(II−1−3)Cr−98℃→SmB−157→N−158℃→Iso
(II−1−4)Cr−97℃→N−170℃→Iso
合成例3−3における4−ペンチルシクロヘキサノールを、トランス−4−エチルシクロヘキサノールと変更したこと以外は合成例3−3と同様にして、例示化合物(II−2−2)を合成した。融点は126℃だった。
[例示化合物(1−4)の合成]
下記スキームに従い合成した。
トランス−4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸(1-e)10.35g、トルエン50ml、N,N−ジメチルホルムアミド0.1mlの混合溶液に、塩化チオニル4.72mlを添加し、1時間60℃に加熱攪拌したのち、溶媒を減圧留去した。この酸クロライドをテトラヒドロフラン25mlでけん濁させた溶液を、化合物(1-d)6.2gのテトラヒドロフラン50ml溶液に氷冷下で滴下し、さらにピリジン6.37mlを滴下した。この反応溶液を室温で4時間攪拌したのちに、メタノール、水を加え、析出した生成物をろ取した。この粗生成物を塩化メチレンに溶解させ、活性炭処理した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、アセトニトリルにより再結晶することで、例示化合物(1−4)を白色固体として7.2g得た。
融点;150℃
1H−NMR(CDCl3、δ)0.90(m、6H),1.02(m,4H),1.28(m、12H),1.54(m、6H),1.92(d,4H),2.13(d,4H),2.52(m,2H),7.21(s,2H)
(ハロゲン系混合溶媒への溶解性の評価)
表1、2に示す化合物の、塩化メチレン87質量部、メタノール13質量部の混合溶媒への溶解性を調べた。溶解性は、20%、15%、10%、5%、2%、2%以下の5段階で評価した。下表に結果を示した。
後述するとおり、セルロースアセテートフィルムを作製し、評価した。
用いた可塑剤、添加剤の構造を下記に示す。
すべての作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長450nm、550nm、630nmにおけるRe値を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器社製)において各波長の光をフィルム法線方向に入射させて測定した。表中、ReおよびRthは波長550nmにおける値(nm)である。また、Reの波長分散性として、ΔReを示したが、ΔRe=Re(630)−Re(450)であり、値が大きいほど逆波長分散性が強いことを示す。
(ブリードアウトの評価)
すべての作製したセルロースアセテートフィルムについて、目視で下記の基準により評価し、表に示した。
◎ ブリードアウトが見られない。
○ 部分的に弱いブリードアウトが見られる。
△ 部分的に強いブリードアウトが見られる、または、全面で弱いブリードアウトが見られる。
× 全面でブリードアウトまたは白化が発生しており、光学特性評価を行えない。
(ヘイズの測定)
ヘイズの測定は、セルロースアセテートフィルムをヘイズメーター“HGM−2DP”(商品名、スガ試験機(株)製)を用い、JIS K−6714に従って測定した。ブリードアウトが大きいとヘイズの値も対応して大きくなる。
(セルロースアセテートフィルム101の作製)
(ドープ調整)
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
全置換度2.81のセルロースアセテート 100質量部
糖誘導体1(可塑剤) 3.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 414質量部
メタノール(第2溶媒) 62質量部
(レターデーション発現剤溶液)
例示化合物(Ia−1−6)(一般式(I)で表される化合物) 12.0質量部
メチレンクロライド 87質量部
メタノール 13質量部
上述のドープをガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚60μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。
次に、得られたフィルムを175℃の条件で20%の延伸倍率まで、30%/分の延伸速度で横延伸した。出来上がったセルロースアシレートフィルムの、膜厚は52μmであった。このフィルムをフィルム101とした。
フィルム101のレターデーション発現剤溶液を表3に示す組成となるように、化合物の種類と添加量を調整し、フィルム101と同様に製膜・延伸を行いフィルム102〜119、100を作製した。なお、表3中のNo.100は、レターデーション発現剤を加えないこと以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。また、以下の表中の添加量(質量部)はセルロースアシレート100質量部に対する値である。
測定した結果を表3、4に示した。膜厚50μmに換算した値を示した。
これに対し、比較化合物1、2を用いたNo.109、119はフィルムが白化してしまい、光学フィルムとして機能しないことがわかる。
(セルロースアシレートフィルム201の作製)
実施例1とまったく同じようにして、ドープ溶液を作成し、フィルム101と同様に製膜・延伸を行いフィルム200〜213を作製した。用いた添加剤の種類と添加量は表5に併せて示した。
(Re、Rth、ブリードアウトの測定)
測定した結果を表5に示した。膜厚50μmに換算した値を示した。
(セルロースアシレートフィルム301の作製)
(ドープ調整)
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分を混合し、攪拌して、各成分を溶解し、製膜用ドープを調製した。
全置換度2.41のセルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 396質量部
メタノール(第2溶媒) 59質量部
上述のドープをガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚60μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。
次に、得られたフィルムを200℃の条件で30%の延伸倍率まで横延伸した。出来上がったセルロースアシレートフィルムの膜厚は51μmであった。このフィルムをフィルム301とした。
フィルム301と同様に製膜・延伸を行いフィルム300、302〜307を作製した。
(Re、Rth、ブリードアウトの測定)
測定した結果を表6に示した。
(セルロースアシレートフィルム401の作製)
実施例3と同じようにして、ドープ溶液を作成し、フィルム301と同様に製膜・延伸を行いフィルム400〜404を作製した。用いた添加剤の種類と添加量、延伸条件は表00に合わせて示した。
(Re、Rth、ブリードアウトの測定)
測定した結果を表7に示した。
(セルロースアシレートフィルム501の作製)
(ドープ調整)
下記セルロースアセテートプロピオネート溶液組成の各成分を混合し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、製膜用ドープを調製した。
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
可塑剤3 表9に記載の量(単位 質量部)
添加剤 表9に記載の量(単位 質量部)
メチレンクロライド(第1溶媒) 316質量部
エタノール(第2溶媒) 59質量部
上述のドープをガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚60μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。
次に、得られたフィルムを180℃の条件で30%の延伸倍率まで横延伸した。出来上がったセルロースアシレートフィルムの膜厚は50μmであった。このフィルムをフィルム501とした。
実施例1とまったく同じようにして、フィルム501と同様に製膜・延伸を行いフィルム500、502〜508を作製した。なお、フィルム500は添加剤を加えないこと以外は同様にして製造されたフィルムであり、フィルム506は添加剤を加えず可塑剤3を使用したこと以外は同様にして製造されたフィルムである。
用いたセルロースアシレートの置換度は下表8のとおりである。
測定した結果を表9に示した。
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
上記で作製したセルロースアシレートフィルム(表5、No.212およびNo.213)をポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下のような条件で行った。
偏光膜の透過軸と上記のように作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、商品名、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板(観察者側)および下側偏光板(バックライト側)には上記実施例3−1で作製したフィルム(表00、No.212およびNo.213)を備えた同一の偏光板を、当該セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように設置した。上側偏光板および下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
Claims (18)
- 下記一般式(I)または(II)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする光学フィルム。
- 前記一般式(I)または(II)で表される化合物の少なくとも一種とともに、分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントMyに由来する分子吸収波長が、当該分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントMxに由来する分子吸収波長より長波長であって、分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|My|が分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|Mx|よりも大きい低分子化合物(a)の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(I−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(I−a)、(I−b1)または(I−b2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(II)で表される化合物が下記一般式(II−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記式(A)で表される構造を含む低分子化合物(a)が、下記一般式(A−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに1項に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.00〜2.98であることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基からなる群から選ばれる少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(I)または(II)で表される化合物がフィルム質量に対して0.1〜50質量%含まれることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 下記式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
数式(1): Δn(550nm)> 0
数式(2): 1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(3): 1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)| - フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学フィルムからなる位相差板。
- 請求項14に記載の位相差板を含んでなる偏光板。
- 請求項14に記載の位相差板または請求項15に記載の偏光板を含んでなる液晶表示装置。
- VAモードであることを特徴とする請求項16に記載の液晶表示装置。
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