本発明の光学フィルムは、平均総アシル基置換度が2.00〜2.60の範囲内のセルロースエステルと波長分散調整剤とを含有する光学フィルムであって、前記波長分散調整剤は、示差走査熱量計により測定された、融点が50〜180℃の範囲内にあり、降温結晶化温度が130℃以下であるか又は結晶化時の発熱ピークが観察されない化合物であり、かつ前記光学フィルムの面内の遅相軸と前記光学フィルムの搬送方向とのなす角度が40〜50°の範囲内であり、さらに前記式(a)〜式(c)を満たすことを特徴とする。この特徴は請求項1から請求項8までの各請求項に係る発明に共通の技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、光学フィルムに良好な逆波長分散性を付与する観点から、前記波長分散調整剤が上記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
また、前記波長分散調剤は、示差走査熱量計により測定された降温結晶化温度が80℃以下であるか又は結晶化時の発熱ピークが観察されない化合物であることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。
また、前記波長分散調整剤は、示差走査熱量測定により測定された融点が50〜100℃の範囲内であることが好ましい。
さらに、前記光学フィルムの厚さが、10〜45μmの範囲内であることが、製造コストを低減できる点、表示装置の薄型化しやすい点から好ましい。
また、前記セルロースエステルが、平均総アシル基置換度が2.00〜2.40の範囲内のセルロースエステルであることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。
本発明の光学フィルムは、円偏光板及び画像表示装置に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<光学フィルム>
本発明において、「光学フィルム」とは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機EL表示装置等の各種表示装置に用いられる機能性フィルムのことであり、詳しくは有機EL表示装置や液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等を含むものである。
本発明の光学フィルムは、平均総アシル基置換度が2.00〜2.60の範囲内のセルロースエステルと波長分散調整剤とを含有する。
(セルロースエステル)
本発明の光学フィルムは、平均総アシル基置換度が2.00〜2.60の範囲内のセルロースエステルを含有する。セルロースエステルの平均総アシル基置換度が2.00を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、平均総アシル基置換度が2.60より大きい場合は、必要な位相差が得られ難い。
ここで「アシル基置換度」とは、セルロースエステルにおいて、繰り返し単位のグルコースの2位、3位及び6位について、アシル基によりヒドロキシ基がエステル化されている割合の合計を表す。具体的には、セルロースの2位、3位及び6位のそれぞれのヒドロキシ基が全て100%エステル化した場合、置換度は最大の3となる。
なお、本願において、「平均総アシル基置換度」とは、セルロースエステルを構成する複数のグルコース単位の各種アシル基置換度の総計を、一単位あたりの平均値として表現したアシル基の置換度をいう。
アシル基置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルは、セルロースと、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸の少なくとも一方とをエステル化反応させて得られた化合物である。
アシル基を有するセルロースエステルの具体例としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオートが挙げられ、さらにセルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート等のセルロース混合脂肪酸エステルが挙げられる。セルロースエステルに含まれ得るブチリル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
本発明の光学フィルムは、平均総アシル基置換度2.00〜2.60のセルロースエステルを複数種混合して使用してもよい。
本発明では平均総アシル基置換度が2.00〜2.60の範囲内のセルロースエステルを含有するが、平均総アシル基置換度が、2.00〜2.40の範囲内のセルロースエステルであることが本発明の効果発現の観点から好ましい。
また、本発明の光学フィルムに用いられるセルロースエステルは、位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、高い位相差を発現させても延伸倍率を低く抑えることができ、破断等の故障を回避できる観点から、セルロースアセテートであることが好ましく、平均総アシル基置換度が2.00〜2.40の範囲内のセルロースアセテートであることがより好ましい。
さらに、本発明の光学フィルムに用いられるセルロースエステルは、平均総アシル基置換度が2.00〜2.40の範囲内のセルロースアセテートであって、平均総アシル基置換度に占めるアセチル基置換度の割合が、90%以上であることが好ましく、より好ましくは99〜100%の範囲内である。すなわち、本発明に係るセルロースエステルとして、平均総アシル基置換度が2.00〜2.40の範囲内のセルロースアセテートを単独で用いることが、最も好ましい。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、得られたフィルムの機械的強度を高めるため、3×104〜3×105の範囲内であることが好ましく、4.5×104〜2×105の範囲内であることがより好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:メチレンクロライド;
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工株式会社製)を3本接続して使用する;
カラム温度:25℃;
試料濃度:0.1質量%;
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製);
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製);
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレン(STK standard ポリスチレン、東ソー株式会社製、Mw=1000000〜500)の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
セルロースエステル中の残留硫酸の含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45.0質量ppmの範囲内であることが好ましく、1〜30質量ppmの範囲内であることがより好ましい。硫酸は、塩の状態でフィルムに残留していると考えられる。残留硫酸の含有量が45質量ppm以内であれば、フィルムの熱延伸時又は熱延伸後の裁断時に破断しにくくなる。残留硫酸の含有量は、ASTM D817−96に規定の方法により測定することができる。
セルロースエステル中の遊離酸の含有量は、1〜500質量ppmの範囲内であることが好ましく、1〜100質量ppmであることがより好ましく、1〜70質量ppmの範囲内であることがさらに好ましい。遊離酸の含有量が上記範囲であると、前述と同様に、フィルムの熱延伸時又は熱延伸後の裁断時に破断しにくい。遊離酸の含有量はASTM D817−96に規定の方法により測定することができる。
セルロースエステルは、微量の金属成分を含有することがある。微量の金属成分は、セルロースエステルの合成工程で用いられる水に由来すると考えられる。これらの金属成分のように、不溶性の核となり得るような成分の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。特に鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のある樹脂分解物等と塩形成して不溶物を形成する場合がある。また、カルシウム(Ca)成分は、カルボン酸やスルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物(すなわち、錯体)を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する場合がある。
具体的には、セルロースエステル中の鉄(Fe)成分の含有量は、1質量ppm以下であることが好ましい。また、セルロースエステル中のカルシウム(Ca)成分にの含有量は、好ましくは60質量ppm以下であり、より好ましくは0〜30質量ppmの範囲内である。セルロースエステル中のマグネシウム(Mg)成分の含有量は、0〜70質量ppmの範囲内であることが好ましく、特に0〜20質量ppmの範囲内であることが好ましい。
鉄(Fe)成分、カルシウム(Ca)成分、マグネシウム(Mg)成分等の金属成分の含有量は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)又はアルカリ融解して前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて測定することができる。
残留アルカリ土類金属、残留硫酸及び残留酸の含有量は、合成して得られたセルロースエステルを、十分に洗浄することによって調整することができる。
本発明に係るセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸とに、無水カルボン酸、触媒(硫酸等)等を混合して、セルロースをエステル化する。原料のセルロースは特に限定されず、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等であり得る。原料の異なるセルロースエステルを混合して用いてもよい。エステル化の反応は、セルロースのトリエステルができるまで進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の3個のヒドロキシ基は、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸のアシル酸で置換されている。同時に二種類の脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸を使用すると、混合型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル基置換度を有するセルロースエステルを合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥等の工程を経て、セルロースエステルを得る。
具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
本発明の光学フィルムは、平均総アシル基置換度2.00〜2.60のセルロースエステルに、他の樹脂を併用してもよい。
他の樹脂としては、上述したセルロースエステル以外のセルロース誘導体(例えば、セルロースエステル系樹脂、セルロースエーテル系樹脂等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂)等が挙げられる。
(波長分散調整剤)
本発明に用いられる波長分散調整剤は、光学フィルムの位相差の光波長依存性、すなわち波長分散性を調整するために用いる化合物である。特に、本発明では、光学フィルムに当該化合物を含有させたとき、逆波長分散性を高める効果を発現し、下記式(c1)及び式(c2)を満たす化合物をいう。
式(c1) Ro(550)>Ro(550)P
式(c2) {Ro(450)−Ro(450)P}/{Ro(550)−Ro(550)P}<1.0
(式(c1)及び式(c2)において、Ro(450)及びRo(550)は、それぞれ各光波長450nm及び550nmで測定された、波長分散調整剤を含有する光学フィルムの面内方向の位相差値を表す。Ro(450)P及びRo(550)Pは、各光波長450nm及び550nmで測定された、波長分散調整剤を含有しない光学フィルムの面内方向の位相差値を表す。)
光学フィルムの基材として用いられるセルロースエステルは、逆波長分散性を示すが、セルロースエステルのみでは逆波長分散性が不十分であり、位相差発現性も低い。本発明では、セルロースエステルに上記波長分散調整剤を添加することによって、光学フィルムの位相差発現性及び逆波長分散性をより高めている。
なお、本発明において、光の波長が長くなるほど位相差が増大する逆波長分散性に対し、光の波長が長くなるほど、位相差が減少する波長分散性を、順波長分散性(正の波長分散性ともいう。)という。
本発明に係る波長分散調整剤は、示差走査熱量計により測定された融点が50〜180℃の範囲内にあり、降温結晶化温度が130℃以下であるか又は結晶化時の発熱ピークが観察されない化合物である。発熱ピークが観察されないとは、ベースラインの変化がほとんど無い場合、変化がベースラインのシフトである場合、又は発熱ピークがあったとしても大きさが−2〜0mJ/mg程度の範囲内であり、ノイズとの有意差が認められず、化合物の結晶化に由来するものではない場合をいう。
本発明に用いられる波長分散調整剤の融点は、50〜100℃の範囲内にあることが好ましい。
波長分散調整剤の融点が50℃より低い場合、又は180℃より高い場合、波長分散剤調整剤同士の相互作用とセルロースエステル中の低置換度成分同士の相互作用が大きく異なるため、セルロースエステル中に含まれる低置換度成分の凝集を抑制することができない。また、製造適性の観点から、融点が50℃以上と高い方が乾燥工程の負荷が小さく、製造コストを抑えることができる。
本発明に係る波長分散調整剤の降温結晶化温度は、130℃以下又は結晶化時の発熱ピークが観察されない。波長分散調整剤の降温結晶化温度が130℃より高いと、乾燥工程において波長分散調整剤同士が凝集しやすくなる。このため、波長分散調整剤と低置換度成分の相互作用が弱くなり、低置換度成分同士の凝集してしまうため、ヘイズが高くなってしまう。また、このときに、波長分散調整剤の配向も乱れるため、位相差発現性も大きくならない。
本発明の効果をさらに高めるためには、降温結晶化温度が100℃以下であるか又は結晶化時の発熱ピークが観察されないことが好ましく、降温結晶化温度が80℃以下であるか又は結晶化時の発熱ピークが観察されないことがより好ましい。
本発明における波長分散調整剤の融点及び降温結晶化温度は、示差走査熱量計を用いて、以下の条件で測定される。
波長分散調整剤の試料をアルミニウム製のパンに10mg秤量し、アルミニウム製のカバーで蓋をして密閉する。リファレンスとして、アルミニウム製のパンとカバー(合計質量約35mg)を用いる。示差走査熱量計DSC6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下(50ml/min)で30℃から250℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、250℃で1分保持した後、250℃から30℃まで降温速度20℃/minで降温する。昇温過程において観察された吸熱ピークの極小点における温度を、試料の融点とする。試料によっては複数の吸熱ピークが存在することがあるが、最も高温側に位置する吸熱ピークから融点を求める。また、降温過程において観察された発熱ピークの極大点における温度を試料の降温結晶化温度とする。試料によっては複数の発熱ピークが存在することがあるが、最も高温側に位置する発熱ピークから降温結晶化温度を求める。また、試料によっては、結晶化時の発熱ピークが観察されない場合がある。
(一般式(A)で表される化合物)
本発明に係る波長分散調整剤は、融点と降温結晶化温度が上記範囲内であれば、特に構造は限定されないが、光学フィルムに良好な逆波長分散性を付与する観点から、下記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(A)のQは、芳香族炭化水素環、非芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は非芳香族複素環を表す。
芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよいが、好ましくは単環である。芳香族炭化水素環の好ましい例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が含まれ、より好ましくはベンゼン環である。
非芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよいが、好ましくは単環である。非芳香族炭化水素環の好ましい例には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、アダマンタン環、ビシクロノナン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、シクロノルボルネン環、ジシクロペンタジエン環、水素化ナフタレン環、水素化ビフェニル環等が含まれる。なかでも、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロノルボルネン環等がより好ましい。
芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよいが、好ましくは単環である。芳香族複素環の好ましい例には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(アザカルバゾール環とは、カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子で置き換わったものをいう)、トリアゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環、シロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾカルバゾール環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、フェナントロリン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環等が含まれる。なかでも、ピリジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等がより好ましい。
非芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよく、好ましくは単環である。非芳香族複素環の好ましい例には、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキソラン環、ジオキサン環、ピロリジン環、ピリドン環、ピリダジノン環、イミド環、ピペリジン環、ジヒドロピロール環、ジヒドロピリジン環、テトラヒドロピリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ジヒドロオキサゾール環、ジヒドロチアゾール環、ピペリジン環、アジリジン環、アゼチジン環、アゼピン環、アゼパン環、イミダゾリジン環、ジアゼピン環、テトラヒドロチオフェン環等が含まれる。なかでも、ピリドン環、イミド環、ピロリジン環等がより好ましい。
一般式(A)のWa及びWbは、それぞれQの環を構成する原子にそれぞれ結合する水素原子又は置換基を表す。WaとWbとは、互いに同じであっても異なっていてもよく、WaとWbは互いに結合して環を形成してもよい。
Wa及びWbが表す置換基として、以下の例が挙げられる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−ピロール基、2−フリル基、2−チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、ピラゾリノン基、ピリジル基、ピリジノン基、2−ピリミジニル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等。
一般式(A)のR3は、水素原子又は置換基を表す。置換基には、特に制限はないが、以下の例が挙げられる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)等。
なかでも、R3は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、アルケニル基(好ましくは炭素数3〜20)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜20)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20)、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基がより好ましい。これらの置換基は、同様の置換基をさらに有していてもよい。
一般式(A)のmは、R3が表す置換基の数であり、0〜2の整数を表す。mが2の場合、二つのR3は互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(A)のnは、1〜10の整数を表し、好ましくは1である。nが2以上である場合、2以上のQ、L2、Wa、Wb、R3及びmのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(A)のL1及びL2は、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、(C=O)−O、NRL、S、(O=S=O)及び(C=O)−NRLからなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらの組合せか、又は単結合を表す。好ましいL1及びL2は、O、(C=O)−O、O−(C=O)、(C=O)−NH又はNH−(C=O)である。
RLは、水素原子又は置換基を表す。RLで表される置換基の例には、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基等が含まれる。
一般式(A)のR1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を表す。R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2が表す置換基としては、下記の例が挙げられる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等。
なかでも、R1及びR2は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20のアリール基)又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜20のアリール基)であることが好ましく、アリール基又はシクロアルキル基であることがより好ましい。アリール基は、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基であり、より好ましくは置換基を有するフェニル基であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するフェニル基である。シクロアルキル基は、好ましくは置換若しくは無置換のシクロヘキシル基であり、より好ましくは置換基を有するシクロヘキシル基であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するシクロヘキシル基である。R1及びR2が表す置換基は、同様の置換基をさらに有していてもよい。
(一般式(B)で表される化合物)
一般式(A)で表される化合物は、一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(B)のWa、Wb、R3、m、L1、L2、RL、R1及びR2は、一般式(A)におけるWa、Wb、R3、m、L1、L2、RL、R1及びR2とそれぞれ同様に定義される。
(一般式(C)で表される化合物)
一般式(B)で表される化合物は、一般式(C)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(C)のWa、Wb、R3、m、L1、L2、RL、R1及びR2は、一般式(A)におけるWa、Wb、R3、m、L1、L2、RL、R1及びR2のそれぞれと、定義が同じである。
一般式(C)のWaとWbが、互いに結合して環を形成する場合、形成された環は、好ましくは含窒素複素環である。そのような一般式(C)で表される化合物の例には、以下のものが含まれる。
Ri〜Riiiは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
例えば、上記例示化合物C1において、一般式(A)におけるQは、ベンゼン環であり、Waは、ベンゼン環に結合する酸素原子を含む基であり、Wbは、ベンゼン環に結合する窒素原子を含む基である。
一方、下記式で表される例示化合物A0において、一般式(A)におけるQは、ナフタレン環である。
以下に、一般式(A)、一般式(B)又は一般式(C)で表される化合物の具体例を示すが、本発明に用いることができる波長分散調整剤は、下記例示化合物A1〜A24によって何ら限定されることはない。
上記例示化合物において、幾何異性体(トランス体とシス体)が存在する場合については、いずれの異性体でも制限されないが、位相差発現性がより高いトランス体の方がシス体よりも好ましい。
本発明に用いることができる波長分散調整剤は、上記一般式(A)、一般式(B)又は一般式(C)で表される化合物であることが本発明の効果発現の観点から好ましいが、融点及び降温結晶化温度が上記範囲を満たすのであれば、下記例示化合物(D1)〜(D4)等であることもできる。
本発明に用いられる波長分散調整剤は、公知の方法で合成することができる。例えば、上記例示化合物A1は以下のスキームによって合成することができる。
エステル管を備えた反応容器に、トルエン125ml、マロン酸12.5g(0.12mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル31.7g(0.26mol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物11.42gを加え、窒素雰囲気下、加熱還流しながら5時間撹拌した。反応の経過とともに、水の留去が確認された。その後、反応液から溶媒を減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製して、化合物(l)を27.7g得た。収率は、マロン酸基準で75%であった。
N,N−ジメチルホルムアミド200mlに、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド6.9g(0.05mol)、化合物(m)31.6g(0.11mol)、炭酸カリウム13.8g及びヨウ化カリウム3.3gを加え、窒素雰囲気下、100℃で5時間撹拌した。反応液を冷却後、水及び酢酸エチルを加えて、抽出した。有機層から溶媒を減圧留去し、得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、化合物(n)を13.2g得た。収率は、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド基準で48%であった。
エステル管を備えた反応容器に、トルエン50ml、化合物(n)5.5g(0.01mol)、化合物(l)3.1g(0.01mol)及びピペリジン1.5gを加え、窒素雰囲気下、加熱還流しながら5時間撹拌した。反応の経過とともに、水の留去が確認された。反応液を冷却後、水及び酢酸エチルを加えて、抽出した。有機層から溶媒を減圧留去し、得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、例示化合物A1を6.1g得た。収率は、化合物(n)基準で72%であった。
化合物の融点及び降温結晶化温度は、化合物の構造に影響し、融点は一般に化合物の分子の対称性、極性及び剛直性が大きいほど高くなることが知られている。
上記一般式(A)で表される化合物は、−L1−R1、−L2−R2によって化学構造の対称性が大きくなるように制御することができる。極性は、Wa、Wb、L1又はL2が極性基を含むことにより、大きくすることができる。また、Q、WaとWb、R1又はR2が環構造(芳香族炭化水素環、非芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は非芳香族複素環)を含むことにより、剛直性が大きくなるように制御することができる。このようにして、化合物の分子構造により、波長分散調整剤の融点を特定範囲にすることができる。
一般に、化合物の融点が高いと降温結晶化温度も高くなるが、分岐構造や柔軟な基を導入することによって、降温結晶化温度を大きく低下させることができる。
上記一般式(A)で表される化合物は、Wa、Wb、L1又はL2に分岐構造や柔軟な基を含むことにより、降温結晶化温度を特定範囲に調整することができる。分岐構造としては、例えばi−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。柔軟な基としては、鎖状のアルキル基(例えば、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等)、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等)等が挙げられる。
本発明に用いられる波長分散調整剤の含有量は、求められる逆波長分散性及び位相差発現性を付与し得る程度に、適宜設定される。具体的には、本発明に用いられる化合物の含有量は、セルロースエステルに対して1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。波長分散調整剤の含有量が1質量%以上であれば、光学フィルムに高い位相差発現性及び十分な逆波長分散性を付与し得る。波長分散調整剤の含有量が、15質量%以下であれば、光学フィルムがブリードアウトを生じにくい。
<添加剤>
本発明の光学フィルムは、必要に応じて下記のような種々の添加剤をさらに含有していてもよい。
(糖エステル)
本発明の光学フィルムは、光学フィルムの可塑性を向上させる観点から、前述したセルロースエステル以外の糖エステルを含有することができる。
本発明に用いることのできるセロースエステル以外の糖エステルは、フラノース構造若しくはピラノース構造を1〜12個有する化合物であって、該化合物中のヒドロキシ基の全部又は一部がエステル化された化合物をいう。
そのような糖エステルの好ましい例には、下記一般式(FA)で表されるスクロースエステルが含まれる。
一般式(FA)のR1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表す。R1〜R8は、互いに同じであっても、異なってもよい。
置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基等のアリール基が含まれる。
置換若しくは無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。アリール基が有する置換基の例には、メチル基等のアルキル基や、メトキシ基等のアルコキシル基等が含まれる。
スクロースエステルのアシル基の平均置換度は、3.0〜7.5の範囲内であることが好ましい。アシル基の平均置換度がこの範囲内であると、セルロースエステルとの十分な相溶性が得られやすい。
一般式(FA)で表されるスクロースエステルの具体例には、下記例示化合物FA−1〜FA−24が含まれる。下記表は、例示化合物FA−1〜FA−24の一般式(FA)におけるR1〜R8と、アシル基の平均置換度を示している。
その他の糖エステルの例には、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載の化合物が含まれる。
糖エステルの含有量は、セルロースエステルに対して0.5〜35.0質量%の範囲内であることが好ましく、5.0〜30.0質量%の範囲内であることがより好ましい。
(可塑剤)
本発明の光学フィルムは、フィルム製造時の組成物の流動性や、フィルムの柔軟性を向上するために可塑剤を含有していていもよい。可塑剤の例には、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤等を含む)等が含まれる。これらは、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系可塑剤は、1〜4価のカルボン酸と、1〜6価のアルコールとを反応させて得られた化合物であり、好ましくは2価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られた化合物である。
2価カルボン酸の例には、コハク酸、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等が含まれる。特に、2価カルボン酸として、コハク酸、アジピン酸、フタル酸等を用いた化合物は、可塑性を良好に付与し得る。
グリコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が含まれる。2価カルボン酸及びグリコールは、それぞれ一種類であってもよいし、二種類以上を併用してもよい。
ポリエステル系可塑剤は、エステル、オリゴエステル、ポリエステルのいずれであってもよい。ポリエステル系可塑剤の分子量は、100〜10000の範囲が好ましく、可塑性を付与する効果が大きいことから、600〜3000の範囲がより好ましい。
ポリエステル系可塑剤の粘度は、分子構造や分子量にもよるが、アジピン酸系可塑剤の場合、セルロースエステルとの相溶性が高く、かつ可塑性を付与する効果が高いこと等から、200〜5000MPa・s(25℃)の範囲であることが好ましい。ポリエステル系可塑剤は、一種類であっても、二種類以上を併用してもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル系化合物は、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。
脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれる。
モノカルボン酸は、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等であり得る。モノカルボン酸は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。また、脂肪族多価アルコールに含まれるOH基の全部をエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
脂肪族モノカルボン酸は、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸であることが好ましい。脂肪族モノカルボン酸の炭素数はより好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。そのような脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等が含まれ、セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、好ましくは酢酸であり得る。
脂環式モノカルボン酸の例には、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸等が含まれる。
芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸;安息香酸のベンゼン環にアルキル基又はアルコキシ基(例えばメトキシ基やエトキシ基)を1〜3個を導入したもの(例えばトルイル酸等);ベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸(例えばビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等)が含まれ、好ましくは安息香酸である。
多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は、特に制限されないが、300〜1500の範囲内であることが好ましく、350〜750の範囲内であることがより好ましい。揮発し難くするためには、分子量が大きい方が好ましい。透湿性を高め、セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、分子量が小さい方が好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤の具体例には、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、特開2008−88292号公報に記載の一般式(I)で表されるエステル(A)等が含まれる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコールとのエステルである。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸、3〜20価の芳香族多価カルボン酸又は3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸の例には、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸;酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸等が含まれ、フィルムからの揮発を抑制するためには、オキシ多価カルボン酸が好ましい。
アルコールの例には、直鎖若しくは側鎖を有する脂肪族飽和アルコール、直鎖若しくは側鎖を有する脂肪族不飽和アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール等が含まれる。脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールの炭素数は、好ましくは1〜32であり、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。脂環式アルコールの例には、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が含まれる。芳香族アルコールの例には、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等が含まれる。アルコールは、一種類でもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、特に制限はないが、300〜1000の範囲内であることが好ましく、350〜750の範囲内であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きい方が好ましい。透湿性やセルロースエステルとの相溶性の観点では、小さい方が好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の酸価は、1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価は、JIS K0070に準拠して測定したものである。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例には、特開2008−88292号公報に記載の一般式(II)で表されるエステル(B)等が含まれる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤であってもよい。フタル酸エステル系可塑剤の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
グリコレート系可塑剤の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が含まれる。
エステル系可塑剤には、脂肪酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等が含まれる。
脂肪酸エステル系可塑剤の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル系可塑剤の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル系可塑剤の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。トリメリット酸系可塑剤の例には、トリメリット酸オクチル、トリメリット酸n−オクチル、トリメリット酸イソデシル、トリメリット酸イソノニル等が含まれる。
可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して0.5〜30.0質量%の範囲内であることが好ましい。可塑剤の含有量が30.0質量%以下であれば、光学フィルムがブリードアウトを生じにくい。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤をさらに含有していてもよい。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系等であり得る。具体的には、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類等が挙げられる。
なかでも、分子量が400以上である紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的添加量が少なくても、得られたフィルムに耐候性を付与することができる。
分子量が400以上である紫外線吸収剤の例には、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系;
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系;
2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系;
等が含まれ、好ましくは2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。これらは、一種類であっても、二種以上を併用してもよい。
(微粒子)
本発明の光学フィルムは、無機化合物又は有機化合物からなる微粒子を含有してもよい。
無機化合物の例には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等が含まれる。
有機化合物の例には、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、有機高分子化合物(ポリフッ化エチレン系樹脂、澱粉等)の粉砕分級物、懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法又は分散法等により球型にした高分子化合物等が含まれる。
微粒子は、得られたフィルムのヘイズを低く維持し得る点から、ケイ素を含む化合物、好ましくは二酸化ケイ素で構成され得る。
二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等が含まれる。
なかでも、アエロジル200V、アエロジルR972Vが、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、フィルム表面の滑り性を高め得るため、特に好ましい。
酸化ジルコニウムの微粒子の例には、アエロジルR976、R811(以上、日本アエロジル(株)製)等が含まれる。
高分子化合物の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が含まれ、好ましくはシリコーン樹脂であり、より好ましくは3次元の網状構造を有するシリコーン樹脂である。そのようなシリコーン樹脂の例には、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120、同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等が含まれる。
微粒子の一次粒子の平均粒径は、好ましくは5〜400nmの範囲内であり、より好ましくは10〜300nmの範囲内である。微粒子は、主に粒径が0.05〜0.30μmの範囲内にある二次凝集体を形成していてもよい。微粒子の平均粒径が100〜400nmの範囲内であれば、凝集せずに一次粒子として存在し得る。
光学フィルムの少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0の範囲内となるように、微粒子を含有させることが好ましい。
微粒子の含有量は、セルロースエステルに対して0.01〜1.00質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.50質量%の範囲内であることがより好ましい。
(分散剤)
本発明の光学フィルムは、微粒子の分散性を高める観点から、分散剤をさらに含有していてもよい。分散剤は、アミン系分散剤及びカルボキシ基含有高分子分散剤から選ばれる一種又は二種以上である。
アミン系分散剤は、アルキルアミン又はポリカルボン酸のアミン塩であることが好ましく、その具体例には、ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、脂肪酸、脂肪酸アミド、ポリカルボン酸、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等をアミン化した化合物等が含まれる。アミン塩の例には、アミドアミン塩、脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アルカノールアミン塩、多価アミン塩等が含まれる。
アミン系分散剤の具体例には、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が含まれる。市販品の例には、ソルスパーズシリーズ(ルーブリゾール社製)、アジスパーシリーズ(味の素社製)、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、EFKAシリーズ(EFKA社製)等を挙げることができる。
カルボキシ基含有高分子分散剤は、ポリカルボン酸又はその塩であることが好ましく、例えばポリカルボン酸、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム等であり得る。カルボキシ基含有高分子分散剤の具体例には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム共重合体、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸アンモニウム、ポリマレイン酸ナトリウム等が含まれる。
アミン系分散剤やカルボキシ基含有高分子分散剤は、溶剤成分に溶解させて用いてもよいし、市販されているものでもよい。
分散剤の含有量は、分散剤の種類等にもよるが、微粒子に対して0.2質量%以上であることが好ましい。分散剤の含有量が、微粒子に対して0.2質量%以上であれば、微粒子の分散性を十分に高めることができる。
本発明の光学フィルムが界面活性剤等をさらに含有する場合、分散剤の微粒子表面への吸着が、界面活性剤よりも生じにくく、微粒子同士を容易に再凝集させることがある。分散剤は高価であるため、その含有量はできるだけ少ないことが好ましい。一方、分散剤の含有量が少なすぎると、微粒子の濡れ不良や、分散安定性の低下を生じやすい。そのため、本発明の光学フィルムが界面活性剤等をさらに含有する場合の分散剤の含有量は、微粒子10.00質量部に対して0.05〜10.00質量部程度とし得る。
(位相差制御剤)
液晶表示装置等の画像表示装置の表示品質の向上のため、光学フィルム中に位相差制御剤を添加するか、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来の位相差を複合化することにより、光学フィルムに光学補償能を付与することができる。
位相差制御剤としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、2以上の芳香族環を有する芳香族化合物、特開2006−2025号公報に記載の棒状化合物等が挙げられる。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。この芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む芳香族性ヘテロ環であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に不飽和ヘテロ環である。なかでも、特開2006−2026号公報に記載の1,3,5−トリアジン環が好ましい。
これらの位相差制御剤の添加量は、フィルム基材として使用する樹脂に対して、0.5〜20.0質量%の範囲内であることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
(その他の添加剤)
本発明の光学フィルムは、成形加工時の熱分解や熱による着色を防止するための酸化防止剤、帯電防止剤や難燃剤等をさらに含有していていもよい。
リン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種以上を挙げることができる。その具体例には、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が含まれる。
<光学フィルムの物性>
本発明の光学フィルムは、温度23℃・相対湿度55%の条件下で、光波長450nm、550nm及び650nmで測定された面内方向の位相差値Roを、それぞれRo(450)、Ro(550)及びRo(650)としたとき、当該Ro(450)、Ro(550)及びRo(650)が、下記式(a)〜式(c)を満たす。
式(a) 110nm≦Ro(550)≦170nm
式(b) 0.72≦Ro(450)/Ro(550)≦0.96
式(c) 0.83≦Ro(550)/Ro(650)≦0.97
Ro(550)が、式(a)を満たす光学フィルムは、λ/4位相差フィルムとして好ましく機能し得る。なかでも、120nm≦Ro(550)≦160nmを満たすことがより好ましく、130nm≦Ro(550)≦150nmを満たすことがさらに好ましい。
Ro(450)、Ro(550)及びRo(650)が、上記式(b)及び式(c)を満たす光学フィルムは、逆波長分散性に優れ、λ/4位相差フィルムとしてより好ましく機能し得る。また、光学フィルムを用いた画像表示装置を黒表示させたときの光漏れ等も低減し得る。具体的には、式(b)を満たすと青色の再現性が高く、式(c)を満たすと赤色の再現性が高い。なかでも、0.79≦Ro(450)/Ro(550)≦0.89を満たすことがより好ましく、0.84≦Ro(550)/Ro(650)≦0.93を満たすことがより好ましい。
位相差発現性を表すRo(550)、波長分散性を表すRo(450)/Ro(550)及びRo(550)/Ro(650)は、本発明に用いられる化合物や延伸条件によって調整することができる。上記式(a)〜式(c)を全て満たすためには、本発明に用いられる波長分散調整剤を含有させればよい。さらに延伸条件を調整してもよい。
また、本発明の光学フィルムは、23℃・55%RHの条件下で、波長550nmで測定された厚さ方向の位相差値RtをRt(550)としたとき、当該Rt(550)が、50nm≦Rt(550)≦250nmを満たすことが好ましい。
上記Ro及びRtは、それぞれ下記式(I)、(II)で定義される。
式(I) :Ro=(nx−ny)×d
式(II) :Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
(式(I)及び(II)において、nxは、光学フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表す。nyは、光学フィルムの面内方向において遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nzは、光学フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、光学フィルムの膜厚(nm)を表す。)
上記Ro及びRtは、自動複屈折率計、例えばAxometric社製のAxoScan、王子計測機器株式会社製のKOBRA−21ADHを用いて測定することができる。AxoScanを用いる場合、具体的には、以下の方法で測定することができる。
1)光学フィルムを、23℃・55%RHで24時間調湿する。調湿後の光学フィルムの、波長450nm、550nm及び650nmのそれぞれにおける平均屈折率を、アッベ屈折計と分光光源を用いて測定する。また、光学フィルムの膜厚d(nm)を、膜厚計を用いて測定する。
2)調湿後の光学フィルムに、フィルム表面の法線と平行に、波長450nm、550nm又は650nmの光をそれぞれ入射させたときの面内方向の位相差値Ro(450)、Ro(550)及びRo(650)を、AxoScanにて測定する。測定は、23℃・55%RH条件下で行う。
3)AxoScanにより、光学フィルムの面内の遅相軸を確認する。確認された遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、光学フィルムの表面の法線に対してφの角度(入射角(φ))から波長450nm、550nm及び650nmの光をそれぞれ入射させたときの位相差値R(φ)を測定する。R(φ)の測定は、φが0〜50°の範囲で、10°毎に6点行うことができる。測定は、23℃・55%RH条件下で行う。
4)上記2)で測定されたRo(450)、Ro(550)及びRo(650)と、上記3)で各波長450nm、550nm又は650nmにて測定されたR(φ)と、上記1)で測定された平均屈折率及び膜厚dとから、AxoScanにより、nx、ny及びnzを算出する。そして、上記式(II)に基づいて、各波長450nm、550nm及び650nmでの厚さ方向の位相差値Rt(450)、Rt(550)及びRt(650)を、それぞれ算出する。
本発明の光学フィルムは、下記式(d)で定義されるNzが、下記式(e)を満たすことが好ましい。
式(d) Nz=Rt(550)/Ro(550)+0.5
式(e) 0≦Nz≦1
Nzが式(e)を満たせば、厚さ方向の位相差値Rtが、面内方向の位相差値Roよりも相対的に小さいため、本発明の光学フィルムを具備する画像表示装置を斜め方向から観察したときの色味の変化を低減し得る。
本発明の光学フィルムの面内の遅相軸がフィルムの搬送方向となす角度(配向角ともいう。)は、40〜50°の範囲内にある。配向角がこの範囲内であれば、長尺方向(搬送方向)に対して斜め方向に遅相軸を有する光学フィルムと、長尺方向(搬送方向)に平行な透過軸を有する偏光フィルムとを、それぞれロールから巻き出し、互いに長尺方向同士が重なるようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせることで、円偏光板を容易に製造することができる。フィルムのカットロスも少なく、生産上有利である。配向角は45°であることが特に好ましい。光学フィルムの配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)により測定することができる。
光学フィルムの厚さは、熱や湿度による位相差の変動を少なくするため、好ましくは250μm以下、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは45μm以下である。一方、光学フィルムの厚さは、一定以上のフィルム強度や位相差を発現させるため、好ましくは10μm以上である。
光学フィルムの厚さは、10〜45μmの範囲内であることが好ましく。より好ましくは20〜45μmの範囲内である。光学フィルムの膜厚がこれらの範囲内にあると、画像表示装置の薄型化、製造コストの低減及び生産性等の観点から好ましい。
光学フィルムのヘイズ(全ヘイズ)は、2%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
光学フィルムのヘイズ(全ヘイズ)は、JIS K−7136に準拠して、ヘイズメーターNDH2000やNDH−1001DP(以上日本電色工業株式会社製)にて測定することができる。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とし得る。ヘイズの測定は、23℃・55%RHの条件下にて行う。
本発明の光学フィルムの可視光透過率は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
本発明の光学フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠して測定された、少なくとも一方向の破断伸度が、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
上述のように、本発明の光学フィルムは、面内方向の位相差が高く、優れた逆波長分散性を示す。そのため、本発明の光学フィルムは、広い波長領域の光に対し高い位相差を付与することができる。
本発明の光学フィルムは、有機EL表示装置や液晶表示装置等の画像表示装置の光学フィルムとして用いられる。具体的には、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム又は反射防止フィルムとして用いられ、好ましくはλ/4位相差フィルムとして用いられる。
λ/4位相差フィルムは、所定の光の波長(通常、可視光領域)の約1/4の面内方向の位相差値Roを有する。λ/4位相差フィルムは、本発明の光学フィルムの単層からなることが好ましい。λ/4位相差フィルムは、好ましくは有機EL表示装置の反射防止フィルムに用いられる。
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムは、溶液流延法又は溶融流延法で製造され得る。光学フィルムの着色や異物欠点、ダイライン等の光学欠点を抑制する観点では、溶液流延法が好ましく、光学フィルムに溶媒が残留するのを抑制する観点では、溶融流延法が好ましい。
A)溶液流延法
セルロースエステルを含む光学フィルムを溶液流延法で製造する方法は、A1)少なくともセルロースエステルと、必要に応じて他の添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する工程、A2)ドープを無端の金属支持体上に流延する工程、A3)流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブとする工程、A4)ウェブを金属支持体から剥離する工程、A5)ウェブを乾燥後、延伸してフィルムを得る工程を含む。
A1)ドープ調製工程
溶解釜において、セルロースエステルと、必要に応じて他の添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する。
溶剤は、セルロースエステル、その他の添加剤等を溶解するのであれば、制限なく用いることができる。例えば、塩素系有機溶媒としては、メチレンクロライド、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、好ましくはメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等を用いることができる。
ドープは、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールをさらに含有することが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高いと、ウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になる。一方、ドープ中のアルコールの比率が少ないと、非塩素系有機溶媒系でのセルロースアセテートの溶解を促進し得る。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が含まれる。なかでも、ドープの安定性が高く、沸点が比較的低く、乾燥性が高いこと等から、エタノールが好ましい。
なかでも、ドープは、溶剤のメチレンクロライドと炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとを含有することが好ましい。
ドープにおけるセルロースエステルの濃度は、乾燥負荷を低減するためには高い方が好ましいが、セルロースエステルの濃度が高すぎるとろ過しにくい。そのため、ドープにおけるセルロースエステルの濃度は、好ましくは10〜35質量%の範囲内であり、より好ましくは15〜25質量%の範囲内である。
セルロースエステルを溶剤に溶解させる方法は、例えば、加熱及び加圧下で溶解させる方法であり得る。加熱温度は、セルロースエステルの溶解性を高める観点では、高い方が好ましい。温度が高すぎると圧力を高める必要があり、生産性が低下するため、加熱温度は、45〜120℃の範囲内であることが好ましい。
添加剤は、ドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に、微粒子は、ろ過材への負荷を減らすために、全部又は一部を、インライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープと混合しやすくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましい熱可塑性樹脂の含有量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部の範囲内とし、より好ましくは3〜5質量部の範囲内とし得る。
インライン添加及び混合には、例えばスタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
得られたドープには、例えば原料であるセルロースエステルに含まれる不純物等の不溶物が含まれることがある。このような不溶物は、得られたフィルムにおいて輝点異物となり得る。不溶物を除去するため、得られたドープをさらにろ過することが好ましい。
ドープのろ過は、得られたフィルムにおける輝点異物の数が一定以下となるように行うことが好ましい。具体的には、径が0.01mm以上である輝点異物の数が、200個/cm2以下、好ましくは100個/cm2以下、より好ましくは50個/cm2以下、さらに好ましくは30個/cm2以下、特に好ましくは10個/cm2以下となるようにろ過する。
径が0.01mm以下である輝点異物も200個/cm2以下であることが好ましく、100個/cm2以下であることがより好ましく、50個/cm2以下であることがさらに好ましく、30個/cm2以下であることがさらに好ましく、10個/cm2以下であることが特に好ましく、皆無であることが最も好ましい。
フィルムの輝点異物の数は、以下の手順で測定することができる。
1)2枚の偏光板をクロスニコル状態に配置し、それらの間に得られたフィルムを配置する。
2)一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察したときに、光が漏れてみえる点を異物として数をカウントする。
A2)流延工程
ドープを、加圧ダイのスリットから無端状の金属支持体上に流延させる。
金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面がメッキ仕上げされたドラム等が好ましく用いられる。金属支持体の表面は、鏡面仕上げされていることが好ましい。
キャストの幅は1〜4mの範囲内とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃以上、溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、ウェブの発泡、平面性の低下を防ぐことができる温度の範囲内とする。
金属支持体の表面温度は、好ましくは0〜100℃の範囲内であり、より好ましくは5〜30℃の範囲内である。また、金属支持体を冷却して、ウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離できるようにしてもよい。
金属支持体の温度の調整方法は、特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で金属支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
A3)溶媒蒸発工程
ウェブ(ドープを金属支持体上に流延して得られたドープ膜)を金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる。ウェブの乾燥方法や乾燥条件は、前述のA2)流延工程と同様とし得る。
A4)剥離工程
金属支持体上で溶媒を蒸発させたウェブを、金属支持体上の剥離位置で剥離する。
金属支持体上の剥離位置で剥離する際のウェブの残留溶媒量は、得られたフィルムの平面性を高めるためには、10〜150質量%の範囲内とすることが好ましく、20〜40質量%又は60〜130質量%の範囲内とすることがより好ましく、20〜30質量%又は70〜120質量%の範囲内とすることがさらに好ましい。
ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理は、115℃で1時間の加熱処理を意味する。
A5)乾燥及び延伸工程
金属支持体から剥離して得られたウェブを、必要に応じて乾燥させた後、延伸する。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、ウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブの乾燥方法は、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便であることから熱風で乾燥する方法が好ましい。
ウェブの延伸により、所望の位相差を有する光学フィルムを得る。光学フィルムの位相差は、ウェブに対する張力の大きさを調整することで制御することができる。
本発明の光学フィルムは、光学フィルムの面内の遅相軸とフィルムの搬送方向とがなす角度を40〜50°の範囲内とするため、ウェブの延伸を斜め方向に行う(斜め延伸する)。斜め方向は、ウェブの搬送方向に対して40〜50°の範囲の角度の方向であり、ウェブの搬送方向に対して角度45°の方向に延伸することが好ましい。
前述したように、ロール体から巻き出され、長尺方向に透過軸を有する偏光フィルムと、ロール体から巻き出され、長尺方向に対して角度45°の方向に遅相軸を有する光学フィルムとを、長尺方向が互いに重なり合うようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせるだけで、円偏光板を容易に製造できる。また、フィルムのカットロスを少なくすることができ、生産上有利である。
延伸倍率は、延伸前後の延伸方向でのフィルムの長さの比の値W/W0(Wは延伸前、W0は延伸後の長さを表す)で表される。得られた光学フィルムの膜厚や、求められる位相差にもよるが、好ましくは、1.3〜3.0倍の範囲内、より好ましくは1.5〜2.8倍の範囲内である。
延伸温度は、好ましくは120〜230℃の範囲内とし、より好ましくは150〜220℃の範囲内とし、さらに好ましくは150℃より大きく210℃以下とし得る。
遅相軸が搬送方向に対し、40〜50°の範囲内で傾斜するフィルムを作製する方法としては、特に制限されない。例えば、把持手段により幅方向の左右を把持し、ウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いて延伸する方法が挙げられる。
斜め方向に延伸する機構を有する延伸装置の例には、特開2003−340916号公報の実施例1に記載の延伸装置、特開2005−284024号公報の図1に記載の延伸装置、特開2007−30466号公報に記載の延伸装置、特開2007−94007号公報の実施例1に使用された延伸装置等が含まれる。
また、直線式の斜め延伸装置(同時二軸延伸装置)を用い、長尺フィルムを繰り出す方向と、延伸後の長尺フィルムを巻き取る方向とを傾斜させる必要がない方法も挙げられる。具体的には、フィルムの両端部を複数の把持具で把持し、フィルムを搬送しながら、一方の端部を把持する把持具と他方の端部を把持する把持具との走行速度に差を設け、フィルムを斜め延伸する方法が挙げられる。例えば、特開2008−23775号公報に記載の方法が挙げられる。
延伸開始時のウェブの残留溶媒は、好ましくは20質量%以下とし、より好ましくは15質量%以下とし得る。
延伸後のフィルムを、必要に応じて乾燥させた後、巻き取る。フィルムの乾燥は、前述と同様に、フィルムを上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし(ローラー方式)、ウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい(テンター方式)。
B)溶融流延法
本発明の光学フィルムを溶融流延法で製造する方法は、B1)溶融ペレットを製造する工程(ペレット化工程)、B2)溶融ペレットを溶融混練した後、押し出す工程(溶融押出し工程)、B3)溶融樹脂を冷却固化してウェブを得る工程(冷却固化工程)、B4)ウェブを延伸する工程(延伸工程)、を含む。
B1)ペレット化工程
光学フィルムの主成分であるセルロースエステルを含む樹脂組成物は、あらかじめ混練してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、例えば前述のセルロースエステルと、必要に応じて可塑剤等の添加剤とを含む樹脂組成物を、押し出し機にて溶融混錬した後、ダイからストランド状に押し出す。ストランド状に押し出された溶融樹脂を、水冷又は空冷した後、カッティングしてペレットを得ることができる。
ペレットの原材料は、分解を防止するために、押し出し機に供給する前に乾燥しておくことが好ましい。
酸化防止剤とセルロースエステルの混合は、固体同士で混合してもよいし、溶剤に溶解させた酸化防止剤を、セルロースエステルに含浸させて混合してもよいし、酸化防止剤を、セルロースエステルに噴霧して混合してもよい。また、押し出し機のフィーダー部分やダイの出口部分の周辺の雰囲気は、ペレットの原材料の劣化を防止するため等から、除湿した空気又は窒素ガス等の雰囲気とすることが好ましい。
押し出し機では、樹脂の劣化(分子量の低下、着色、ゲルの生成等)が生じないように、低いせん断力又は低い温度で混練することが好ましい。例えば、二軸押し出し機で混練する場合、深溝タイプのスクリューを用いて、二つのスクリューの回転方向を同方向にすることが好ましい。均一に混錬するためには、二つのスクリュー形状が互いに噛み合うようにすることが好ましい。
セルロースエステルを含む樹脂組成物をペレット化せずに、溶融混練していないセルロースエステルをそのまま原料として押し出し機にて溶融混練して光学フィルムを製造してもよい。
B2)溶融押出し工程
得られた溶融ペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、ホッパーから押し出し機に供給する。ペレットの供給は、ペレットの酸化分解を防止するため等から、真空下、減圧下又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。そして、押し出し機にて、フィルム材料である溶融ペレット、必要に応じて他の添加剤を溶融混練する。
押し出し機内のフィルム材料の溶融温度は、フィルム材料の種類にもよるが、フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、好ましくはTg〜(Tg+100)℃の範囲内であり、より好ましくは(Tg+10)〜(Tg+90)℃の範囲内である。
さらに、可塑剤や微粒子等の添加剤を、押し出し機の途中で添加する場合、これらの成分を均一に混合するために、押し出し機の下流側に、スタチックミキサー等の混合装置をさらに配置してもよい。
押し出し機から押し出された溶融樹脂を、必要に応じてリーフディスクフィルター等でろ過した後、スタチックミキサー等でさらに混合して、ダイからフィルム状に押し出す。
押出し流量は、ギヤポンプを用いて安定化させることが好ましい。また、異物の除去に用いるリーフディスクフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターであることが好ましい。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合わせたうえで圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。
ダイの出口部分における樹脂の溶融温度は、200〜300℃程度の範囲内とし得る。
B3)冷却固化工程
ダイから押し出された樹脂を、冷却ローラーと弾性タッチローラーとでニップして、フィルム状の溶融樹脂を所定の厚さにする。そして、フィルム状の溶融樹脂を、複数の冷却ローラーで段階的に冷却して固化させる。
冷却ローラーの表面温度は、フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、Tg(℃)以下とし得る。複数の冷却ローラーの表面温度は異なっていてもよい。
弾性タッチローラーは挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラーは、市販のものを用いることもできる。弾性タッチローラー側のフィルム表面温度は、フィルムのTg〜(Tg+110)℃の範囲内とし得る。
冷却ローラーから固化したフィルム状の溶融樹脂を剥離ローラー等で剥離してウェブを得る。フィルム状の溶融樹脂を剥離する際は、得られたウェブの変形を防止するために、張力を調整することが好ましい。
B4)延伸工程
溶液流延法と同様に、得られたウェブを、延伸機にて斜め方向に延伸してフィルムを得る。ウェブの延伸方法、延伸倍率及び延伸温度についても、溶液流延法と同様とし得る。
<円偏光板>
本発明の円偏光板は、偏光子(直線偏光膜)と、その少なくとも一方の面上に配置された本発明の光学フィルムとを備える。本発明の光学フィルムは、偏光子に直接貼り合わされてもよいし、他の層又はフィルムを介して配置されてもよい。
偏光子は、ヨウ素系偏光膜、二色染料を用いた染料系偏光膜又はポリエン系偏光膜であり得る。ヨウ素系偏光膜、染料系偏光膜は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素又は二色性染料で染色して得られたフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素又は二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の透過軸は、フィルムの延伸方向と平行である。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能及び耐久性能に優れ、色斑が少ない等ことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。
二色性染料の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素及びアントラキノン系色素等が含まれる。
偏光子の厚さは、5〜30μmの範囲内であることが好ましく、10〜20μmの範囲内であることがより好ましい。
偏光子の透過軸と、本発明の光学フィルムの面内の遅相軸とがなす角度は、40〜50°の範囲内であり、好ましくは45°である。
偏光子と本発明の光学フィルムとの間に、反射偏光板をさらに配置してもよい。反射偏光板は、偏光子の透過軸と平行な方向の直線偏光を透過させ、透過軸とは異なる方向の直線偏光を反射する。そのような円偏光板を有する有機EL表示装置は、発光層が発光した光をより多く、外側に出射させることができる。
反射偏光板の例には、一方向において屈折率の異なる高分子薄膜を交互に積層した複屈折光偏光子(特表平8−503312号公報に記載)、コレステリック構造を有する偏光分離膜(特開平11−44816号公報に記載)等が含まれる。また、偏光子の表面に保護膜をさらに配置してもよい。
偏光子の一方の面上に本発明の光学フィルムが配置される場合、偏光子の他方の面には、本発明の光学フィルム以外の透明保護フィルムが配置されてもよい。透明保護フィルムは、特に制限されず、通常のセルロースエステルフィルム等であってよい。セルロースエステルフィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC(以上、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製)等)が好ましく用いられる。
透明保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、10〜200μm程度の範囲内とすることができ、好ましくは10〜100μmの範囲内であり、より好ましくは10〜70μmの範囲内である。
透明保護フィルム又はλ/4位相差フィルムが、ディスプレイの最表面に配置される場合には、当該透明保護フィルム又はλ/4位相差フィルムの最表面には、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等がさらに設けられてもよい。
円偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムとを貼り合わせるステップを経て製造することができる。貼り合わせに用いられる接着剤は、例えば完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液等が好ましく用いられる。
円偏光板は、後述する有機EL表示装置や液晶表示装置等の画像表示装置に好ましく用いることができる。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムが具備されている。本発明の画像表示装置の例には、有機EL表示装置や液晶表示装置等が含まれる。
図1は、有機EL表示装置の構成の一例を示す模式図である。
図1に示されるように、有機EL表示装置10は、光反射電極12、発光層14、透明電極層16、透明基板18及び円偏光板20をこの順に有している。円偏光板20は、λ/4位相差フィルム20A及び偏光子20Bを有している。λ/4位相差フィルム20Aは、本発明の光学フィルムであることができ、偏光子20Bは直線偏光膜である。
光反射電極12は、光反射率の高い金属材料で構成されていることが好ましい。金属材料の例には、Mg、MgAg、MgIn、Al、LiAl等が含まれる。光反射電極12の表面が平坦であるほど、光の乱反射を防止できるので好ましい。
光反射電極12は、スパッタリング法により形成され得る。光反射電極12は、パターニングされていてもよい。パターニングは、エッチングにより行われ得る。
発光層14は、R(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)の発光層を含む。各発光層は、発光材料を含有する。発光材料は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよく、好ましくは有機化合物である。
R、G、Bの各発光層は、電荷輸送材料をさらに含み、電荷輸送層としての機能をさらに有していてもよい。R、G、Bの各発光層は、ホール輸送材料をさらに含み、ホール輸送層としての機能をさらに有していてもよい。R、G、Bの各発光層が、電荷輸送材料又はホール輸送材料を含まない場合、有機EL表示装置10は、電荷輸送層又はホール輸送層をさらに有し得る。
発光層14は、発光材料を蒸着して形成することができる。R、G、Bの各発光層は、それぞれパターニングされて得られる。パターニングは、フォトマスク等を用いて行うことができる。
透明電極層16は、一般的には、ITO(酸化インジウムスズ)電極であり得る。透明電極層16は、スパッタリング法等により形成され得る。透明電極層16は、パターニングされていてもよい。パターニングは、エッチングにより行うことができる。
透明基板18は、光を透過させ得るものであればよく、ガラス基板、プラスチックフィルム等であり得る。
円偏光板20は、λ/4位相差フィルム20Aが透明基板18側に位置し、偏光子20Bが視認側に位置するように配置されている。
有機EL表示装置10は、光反射電極12と透明電極層16間を通電させると、発光層14が発光し、画像を表示することができる。また、R、G及びBの発光層のそれぞれが通電可能に構成されていることで、フルカラー画像の表示が可能となる。
本発明の光学フィルム又はそれを含む円偏光板は、前述した構成を有する有機EL表示装置だけでなく、国際特許出願WO96/34514号明細書、特開平9−127885号公報及び同11−45058号公報に記載の有機EL表示装置にも適用することができる。その場合、あらかじめ設けられた有機EL表示装置の反射防止手段に代えて、又はそれとともに、本発明の光学フィルム又は円偏光板を配置すればよい。また、本発明の光学フィルム又は円偏光板は、例えば「エレクトロルミネッセンスディスプレイ」(猪口敏夫著、産業図書株式会社、1991年発行)に記載の無機EL表示装置にも適用することができる。
図2は、上記円偏光板20による反射防止機能を説明する模式図である。
有機EL表示装置10の表示画面の法線に平行に、外部から直線偏光a1及びb1を含む光が入射すると、偏光子20Bの透過軸方向と平行な直線偏光b1のみが偏光子20Bを通過する。偏光子20Bの透過軸と平行でない他の直線偏光a1は、偏光子20Bに吸収される。偏光子20Bを通過した直線偏光b1は、λ/4位相差フィルム20Aを通過することで、円偏光c2に変換される。円偏光c2は、有機EL表示装置10の光反射電極12(図1参照)で反射されると、逆回りの円偏光c3となる。逆回りの円偏光c3は、λ/4位相差フィルム20Aを通過することで、偏光子20Bの透過軸に直交する直線偏光b3に変換される。この直線偏光b3は、偏光子20Bに吸収され、通過できない。
このように、有機EL表示装置10に外部から入射する光(直線偏光a1及びb1を含む)は、全て偏光子20Bに吸収されるため、有機EL表示装置10の光反射電極12で反射しても、外部に出射しない。したがって、背景の映り込みによる画像表示特性の低下を防止することができる。
そして、本発明の光学フィルムとして用いたλ/4位相差フィルム20Aは、優れた逆波長分散性を示すので、広い波長領域の光に対してλ/4の位相差を付与し得る。そのため、外部から入射した光の大部分を、有機EL表示装置10の外部に漏れないようにすることができる。よって、有機EL表示装置10を黒表示させたときの正面方向の光漏れを抑制し、反射を防止することができる。
さらに、本発明の光学フィルムとして用いたλ/4位相差フィルム20Aは、位相差発現性が高く、優れた逆波長分散性を示すので、フィルムの厚さを小さくすることができる。そのため、正面方向の色味と、斜め方向の色味との差を小さくすることができる。その結果、斜め方向からの視認性を高めることができる。
また、有機EL表示装置10の内部からの光、すなわち発光層14からの光は、円偏光c3及びc4の二つの円偏光成分を含む。一方の円偏光c3は、上述のようにλ/4位相差フィルム20Aを通過することで直線偏光b3に変換され、偏光子20Bを通過できずに吸収される。他方の円偏光c4は、λ/4位相差フィルム20Aを通過することで、偏光子20Bの透過軸と平行な直線偏光b4に変換される。そして、直線偏光b4は偏光子20Bを通過して、直線偏光b4となり、画像として認識される。
偏光子20Bとλ/4位相差フィルム20A間に、反射偏光板(不図示)をさらに配置し、偏光子20Bの透過軸と直交する直線偏光b3を反射してもよい。反射偏光板は、直線偏光b3を偏光子20Bで吸収させずに反射させ、それを光反射電極12で再度反射させて、偏光子20Bの透過軸と平行な直線偏光b4に変換することができる。反射偏光板をさらに配置することで、発光層14が発光した光の全て(円偏光c3及びc4)を外側に出射させることができる。
図3は、液晶表示装置の構成の一例を示す模式図である。
図3に示されるように、液晶表示装置30は、液晶セル40、液晶セル40を挟持する二つの偏光板50、60及びバックライト70を有する。
液晶セル40の表示方式は、特に制限されず、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式(MVA;Multi−domain Vertical Alignment、PVA;Patterned Vertical Alignmentを含む)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式等がある。コントラストを高めるためには、VA(MVA、PVA)方式が好ましい。
VA方式の液晶セルは、一対の透明基板と、それらの間に挟持された液晶層とを有する。
一対の透明基板のうち、一方の透明基板には、液晶分子に電圧を印加するための画素電極が配置される。対向電極は、一方の透明基板(画素電極が配置された透明基板)に配置されてもよいし、他方の透明基板に配置されてもよい。
液晶層は、負又は正の誘電率異方性を有する液晶分子を含む。液晶分子は、透明基板の液晶層側の面に設けられた配向膜の配向規制力により、電圧が印加されずに、画素電極と対向電極との間に電界が生じていない時には、液晶分子の長軸が、透明基板の表面に対して略垂直となるように配向している。
このように構成された液晶セルでは、画素電極に画像信号に応じた電圧を印加することで、画素電極と対向電極との間に電界を生じさせる。これにより、透明基板の表面に対して垂直に初期配向している液晶分子を、その長軸が基板面に対して水平方向となるように配向させる。このように、液晶層を駆動し、各副画素の透過率を変化させて画像表示を行う。
偏光板50は視認側に配置され、偏光子52と、偏光子52を挟持する保護フィルム54及び56とを有する。
偏光板60はバックライト70側に配置され、偏光子62と、偏光子62を挟持する保護フィルム64及び66とを有する。保護フィルム56及び64の一方は、必要に応じて省略されてもよい。
保護フィルム54、56、64及び66のうちのいずれかを、本発明の光学フィルムとすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
(実施例1)
<光学フィルム1の作製>
下記成分を、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて、微粒子分散液を調製した。
(微粒子分散液)
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製): 11質量部
エタノール: 89質量部
下記微粒子添加液の成分のうち、メチレンクロライドを溶解タンクに投入し、調製した微粒子分散液を下記の添加量で、十分撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、微粒子の二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散させた後、ファインメットNF(日本精線(株)製)でろ過して、微粒子添加液を得た。
(微粒子添加液)
メチレンクロライド: 99質量部
微粒子分散液: 5質量部
下記主ドープの成分のうち、メチレンクロライドとエタノールを加圧溶解タンクに投入した。次いで、下記セルロースエステルe8、糖エステルS、例示化合物A1及び調製した微粒子添加液を撹拌しながら投入し、加熱、撹拌して完全に溶解させた。得られた溶液を、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用してろ過し、主ドープを調製した。
(主ドープの組成)
メチレンクロライド: 520質量部
エタノール: 45質量部
セルロースエステル:セルロースエステルe8(アセチル基置換度2.33、平均総アシル基置換度2.33、数平均分子量(Mn)70000) 100質量部
糖エステルS: 5質量部
波長分散調整剤:例示化合物A1 4質量部
微粒子添加液: 1質量部
以下に、糖エステルSの構造を示す。
得られたドープを、無端ベルト流延装置を用いて、ステンレスベルト支持体上に均一に流延させた。ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したドープ膜中の溶媒を、残留溶媒量が75%になるまで蒸発させ、得られたウェブをステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したウェブを、テンター延伸装置のクリップで把持しながら搬送した。次いで、得られたフィルムを、乾燥ゾーン内で、多数のローラーで搬送させながら乾燥させた。テンタークリップで把持していたフィルムの幅方向端部をレーザーカッターでスリット除去した後、巻き取って原反フィルムを得た。
得られた原反フィルムを巻き出して、原反フィルムのガラス転移温度Tg+20℃の延伸温度、2.5倍の延伸倍率にて、フィルムの搬送方向に対し45°傾斜した斜め方向に延伸し、光学フィルム1を得た。光学フィルム1の膜厚は40μmであった。また、光学フィルム1の面内の遅相軸とフィルムの搬送方向とのなす角度は45°だった。
<光学フィルム2〜25の作製>
光学フィルム1の作製において、セルロースエステル及び波長分散調整剤の種類を、下記表2に示すように変更した以外は、同様の方法で光学フィルム2〜24を作製した。
また、光学フィルム1の作製において、波長分散調整剤を添加しなかったこと以外は、同様の方法で光学フィルム25を作製した。
なお、得られた光学フィルム2〜25の面内の遅相軸とフィルムの搬送方向とのなす角度は、全て45°だった。また、光学フィルム2〜25の膜厚は、いずれも40μmであった。
下記表1は、表2中のセルロースエステルe1〜e10の、各種アシル基のアシル基置換度、平均総アシル基置換度及び数平均分子量Mnを示している。
表2中のA1〜A9及びD1は、波長分散調整剤の具体例として前述した例示化合物A1〜A9及びD1を表す。
表2中の比較化合物h1〜h5(表中では比較h1〜h5と略記)を、以下に示す。
<評価>
(波長分散調整剤の融点及び降温結晶化温度の測定)
各光学フィルム1〜22に用いられた波長分散調整剤の融点及び降温結晶化温度を示差走査熱量計DSC6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、次のように測定した。
波長分散調整剤の試料をアルミニウム製のパンに10mg秤量し、アルミニウム製のカバーで蓋をして密閉した。リファレンスとして、アルミニウム製のパンとカバー(合計質量約35mg)を用いた。示差走査熱量計DSC6220を用いて、窒素雰囲気下(50ml/min)で30℃から250℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、250℃で1分保持した後、250℃から30℃まで降温速度20℃/minで降温した。昇温過程において観察された吸熱ピークの極小点における温度を、試料の融点とした。複数の吸熱ピークが存在する試料については、最も高温側の吸熱ピークから融点を求めた。また、降温過程において観察された発熱ピークの極大点における温度を試料の降温結晶化温度とした。複数の発熱ピークが存在する試料については、最も高温側の発熱ピークから降温結晶化温度を求めた。ベースラインに変化が無いか、ベースラインの変化がシフトであるか、又は発熱ピークがあっても、−2〜0mJ/mg程度の発熱ピークである場合、結晶化時の発熱ピークが観察されなかったと判断した。
(光学フィルムの光学特性)
各光学フィルム1〜22の位相差発現性を表すRo(550)、波長分散特性を表すRo(450)/Ro(550)及びRo(550)/Ro(650)を、前述したAxoScanを用いる場合と同様にして測定した。
1)光学フィルムを、23℃・55%RHで24時間調湿した。調湿後の光学フィルムについて波長450nm、550nm及び650nmのそれぞれにおける平均屈折率を、アッベ屈折計と分光光源を用いて、それぞれ測定した。また、市販のマイクロメーターを用いて光学フィルムの膜厚d(nm)を測定した。
2)調湿後の光学フィルムに、フィルム表面の法線と平行に、波長450nm、550nm及び650nmの光をそれぞれ入射させたときの面内方向の位相差値Ro(450)、Ro(550)及びRo(650)を、Axometrics社製AxoScanにて測定した。測定は、23℃・55%RH条件下で行った。
3)2)で測定されたRo(450)とRo(550)から、Ro(450)/Ro(550)を算出した。また、Ro(550)とRo(650)から、Ro(550)/Ro(650)を算出した。
(ヘイズ)
JIS K−7136に準拠してヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて、23℃・55%RHの条件下、任意の10点を測定し、平均値を求めた。
上記10点測定した値の標準偏差値をヘイズムラとして、以下のような基準で評価した。
◎:標準偏差値が0.02未満
○:標準偏差値が0.02以上0.10未満
△:標準偏差値が0.10以上0.50未満
×:標準偏差値が0.50以上
以上の結果を表2に示した。
表2より、本発明の光学フィルムは、比較の光学フィルムに比べヘイズとヘイズムラが低く、位相差発現性が高く、逆波長分散性に優れていることがわかる。
(実施例2)
<円偏光板1の作製>
(偏光子の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、延伸温度110℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬した。次いで、ヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬し、水洗、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。
(円偏光板の作製)
実施例1で作製した光学フィルム1の一方の表面をアルカリケン化処理した。コニカミノルタタックフィルムKC6UA(コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製)を準備し、同様に一方の表面をアルカリケン化処理した。いずれも、ケン化処理された表面が、偏光子との貼合面である。そして、偏光子の一方の面に、粘着剤であるポリビニルアルコール5%水溶液を介して、光学フィルム1のケン化処理された表面を貼り合わせた。また、偏光子の他方の面に、ポリビニルアルコール5%水溶液を介して、コニカミノルタタックフィルムKC6UAのケン化処理された表面を貼り合わせて、円偏光板1を作製した。光学フィルム1と偏光子との貼り合わせは、偏光子の透過軸と光学フィルム1の遅相軸とのなす角が45°となるように行った。
<円偏光板2〜25の作製>
円偏光板1の作製において、光学フィルム1を、各光学フィルム2〜25に変更した以外は、円偏光板1の作製と同様にして円偏光板2〜25をそれぞれ作製した。
次に、画像表示装置として、有機EL表示装置を作製した。
<有機EL表示装置1の作製>
ガラス基板上に、スパッタリング法により、厚さ80nmのクロムからなる光反射電極を形成した。この光反射電極上に、陽極として厚さ40nmのITOの薄膜を形成した。次いで、この陽極上に、スパッタリング法により、厚さ80nmのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)からなる正孔輸送層を形成した。さらに、正孔輸送層上に、シャドーマスクを用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光層をそれぞれパターニングして形成した。発光層の厚さは、色毎に100nmとした。赤色発光層は、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と発光性化合物[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して形成し、緑色発光層は、ホストとしてAlq3と、発光性化合物クマリン6とを共蒸着(質量比99:1)して形成した。青色発光層は、ホストとして下記化合物BAlqと発光性化合物Peryleneとを共蒸着(質量比90:10)して形成した。
得られたRGBの発光層上に、真空蒸着法により、効率的に電子を注入できるような第1の陰極として、仕事関数の低いカルシウムからなる厚さ4nmの薄膜を形成した。この第1の陰極上に、第2の陰極として厚さ2nmのアルミニウムからなる薄膜を形成し、有機発光層を得た。第2の陰極として用いたアルミニウムは、その上に透明電極をスパッタリング法で成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的に変質するのを防ぐ役割がある。
次いで、第2の陰極上に、スパッタリング法により、ITOからなる厚さ80nmの透明導電膜(第1の陰極、第2の陰極及び透明導電膜を、合わせて透明電極層とする)を形成した。さらに、透明導電膜上に、CVD法により、窒化ケイ素からなる厚さ200nmの薄膜を形成し、絶縁膜(透明基板)とした。
得られた絶縁膜(透明基板)上に、作製した円偏光板1を、粘着剤を介して貼り合わせて、有機EL表示装置1を作製した。円偏光板1の貼り合わせは、光学フィルム1が絶縁膜側に位置するように行った。
<有機EL表示装置2〜25の作製>
有機EL表示装置1の作製において、円偏光板1を各円偏光板2〜23に変更した以外は、有機EL表示装置1と同様にして有機EL表示装置2〜23をそれぞれ作製した。
<評価>
<コントラストムラ>
通常の実験室内の蛍光灯点灯下で、所定の台上に10cm×10cmの大きさの発光面を上にして有機EL表示装置を置くとともに、この素子の斜め上約50cmの距離に白熱電球(100W)を配置した。そして、白熱電球を点灯しながら、素子に9Vの電圧を印加して、該有機EL表示装置を発光させたときの輝度と、素子に電圧を印加していないときの輝度とを、色彩色差計(コニカミノルタオプティクス社製CS−100)により測定し、次式により正面コントラストを算出した。
正面コントラスト=〔電圧印加時(発光時)の輝度〕/〔電圧を印加していないとき(非発光時)の輝度〕
なお、輝度測定時の光学的環境は、有機EL素子が実際に使用される際の代表的な光学的環境を模したものである。
有機EL表示装置の定点(10点)の正面コントラストを測定し、以下の基準にて評価した。
◎:正面コントラストのばらつきが1%未満で、ムラもない
○:正面コントラストのばらつきが1%以上5%未満であり、ムラが小さい
△:正面コントラストのばらつきが5%以上10%未満であり、ムラがややある
×:正面コントラストのばらつきが10%以上であり、ムラが大きい
以上の評価結果を表3に示す。
表2から本発明の光学フィルムを用いた偏光板が具備された有機EL表示装置は比較の有機EL表示装置に比べて、コントラストムラが少ないことが分かる。