以下において、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレートを必須成分として含有し、かつ、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする。
[安息香酸化合物]
まず、一般式(1)で表される化合物に関して詳細に説明する。
一般式(1)
(式中、R2、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R11、R13はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基を表す(Rは水素原子またはアルキル基を表す)。Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表し、nは3以上の整数を表し、n個のL2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n個のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただしR11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。)
一般式(1)中、R2、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
R2として好ましくは、水素原子、メトキシ基であり、最も好ましくは水素原子である。
R4として好ましくは、水素原子、メトキシ基である。
R5として好ましくは、水素原子、メトキシ基である。最も好ましくは水素原子である。
R11、R13はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、R11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。ここでヘテロ原子とは水素原子、炭素原子以外の原子のことを表し、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン、ケイ素、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ホウ素などが挙げられる。
R11、R13で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状であって、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基。)、更に環構造が多いトリシクロ構造などが挙げられる。
R11、R13で表されるアルキル基の好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル基、iso-ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基等を挙げることができる。また、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロアルキル基としては、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。
R11として更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
R13として特に好ましくは、炭素原子2個以上を含むアルキル基であり、より好ましくは炭素原子3個以上を含むアルキル基である。分岐または環状構造をもったものは特に好ましく用いられる。
以下にR
13で表されるアルキル基の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、(Ar1−L2)nで表される繰り返し単位中のAr1は、すべて同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。
一般式(1)中、Ar1で表されるアリーレン基として好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar1で表されるアリーレン基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(1)中、Ar2で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar2で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(1)中、Ar1又はAr2で表される芳香族ヘテロ環基は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環基であることができ、好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環基である。また、可能な場合にはさらに置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
一般式(1)中、Ar1又はAr2で表される芳香族ヘテロ環基の芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。これらの芳香族ヘテロ環の例えば水素原子を除去して前記の芳香族ヘテロ環基を与える。芳香族ヘテロ環として好ましいものは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。
一般式(1)中、L1及びL2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基を表す(Rは水素原子またはアルキル基を表す)。L1及びL2は、同じであっても異なっていてもよい。また、(Ar1−L2)nで表される繰り返し単位中のL2は、すべて同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。ここでRは好ましくは水素原子を表す。
本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物において、Ar1はL1及びL2と結合するが、Ar1がフェニレン基である場合、−L1−Ar1−L2−及び−L2−Ar1−L2−においてL1又はL2が互いにパラ位(1,4−位)の関係にあることが最も好ましい。
一般式(1)中、nは3以上の整数を表し、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜6である。一般式(1)で表される化合物は、nが3以上であるため(−Ar1−L2−)で表される部分が長く、同様の構造を有する従来の化合物に比べて、セルロースアシレートフィルムにおいて、より高いレターデーション発現能を有している。また、R11とR13が異なっているために、高いレターデーション発現能とセルロースアシレート組成物中での高い溶解性を両立することができる。
一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(2)又は(3)で表される化合物であることがより好ましい。
次に、本発明の一般式(2)で表される化合物に関して説明する。
一般式(2)
(式中、R 11 、R13はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基を表す(Rは水素原子またはアルキル基を表す)。Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表し、nは3以上の整数を表し、n個のL2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n個のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただしR11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。)
一般式(2)中、R 11、R13、L1、L2、Ar1、Ar2及びnは一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
次に、本発明の一般式(3)で表される化合物に関して説明する。
一般式(3)
(式中、R 11、R 13 はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、R 14 は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基を表す(Rは水素原子またはアルキル基を表す)。Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表し、nは3以上の整数を表し、n個のL2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n個のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただしR11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。)
一般式(3)中、R 11、R13、L1、L2、Ar1、Ar2及びnは一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)中、R14は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。R11とR14は同じであっても異なっていてもよいが、ともにメチル基であることが特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(4−A)又は(4−B)で表される化合物であることがより好ましい。
一般式(4−A)
(式中、R2、R5はそれぞれ独立に水素原子またはまたは炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R11、R13はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基を表す(Rは水素原子またはアルキル基を表す)。Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、nは3以上の整数を表し、n個のL1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n個のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただしR11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。)
一般式(4−A)中、R2、R5、R11、R13、L1、L2、Ar1及びnは一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(4−B)
(式中、R 11、R 13 はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、R 14 は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基を表す(Rは水素原子またはアルキル基を表す)。Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表し、nは3以上の整数を表し、n個のL2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n個のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただしR11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。)
一般式(4−B)中、R2、R5、R11、R13、R14、L1、L2、Ar1、nは一般式(1)又は(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとして好ましくは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、
アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(4−A)で表される化合物の好ましいものは、
R11がメチル基であり、
R2、R5がいずれも水素原子であり、
R13が炭素原子3個以上をもつアルキル基であり、
L1が、単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基(Rは水素原子またはアルキル基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
L2が−O−または−NR−(Rは水素原子またはアルキル基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
Ar1がアリーレン基であり、
nが3以上6以下である
ものを挙げることができる。
一般式(4−B)で表される化合物の好ましいものは、
R11、R14がいずれもメチル基であり、
R2、R5がいずれも水素原子であり、
R13が炭素原子3個以上をもつアルキル基であり、
L1が、単結合、−O−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基(Rは水素原子またはアルキル基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
L2が−O−または−NR−(Rは水素原子またはアルキル基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
Ar1がアリーレン基であり、
nが3以上6以下である
ものを挙げることができる。
以下に一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物は、まず置換安息香酸を合成したのちに、この置換安息香酸とフェノール誘導体もしくはアニリン誘導体の一般的なエステル反応もしくはアミド化反応によって合成でき、エステル結合、アミド結合形成反応であれば任意の反応を用いることができる。例えば、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール誘導体もしくはアニリン誘導体と縮合する方法、縮合剤あるいは触媒を用いて置換安息香酸とフェノール誘導体もしくはアニリン誘導体を脱水縮合する方法などがあげられる。
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール誘導体もしくはアニリン誘導体と縮合する方法が好ましい。
反応溶媒として炭化水素系溶媒(好ましくはトルエン、キシレンが挙げられる。)、エーテル系溶媒(好ましくはジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる)、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。これらの溶媒は単独でも数種を混合して用いてもよく、反応溶媒として好ましくはトルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
反応温度としては、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃、更に好ましくは0〜90℃であり、特に好ましくは20℃〜90℃である。
本反応には塩基を用いないのが好ましく、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなどが挙げられる)である。
一般式(4−A)又は(4−B)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、例えば、n=4である化合物の場合、下記構造:
(式中、Aは水酸基、ハロゲン原子等の反応性基を表し、R
11、R
2、R
13、およびR
5は先に記載した通りであり、R
4は水素原子もしくは前述の−OR
14で表される置換基である。)
を有する原料化合物を、水酸基、アミノ基等の反応性部位を有する誘導体との反応に付して得られた中間体:
(式中、A’はカルボキシル基等の反応性基を表し、R
11、R
2、R
13、R
4、R
5、Ar
1、およびL
1は先に記載した通りである。)
2分子を、
(式中、BおよびB’は水酸基、アミノ基等の反応性基を表し、Ar
2およびL
2は先に記載したAr
1、L
1と同義である。)
1分子により連結することによって得ることができる。ただし、本発明に用いられる化合物の合成法はこの例に限定されない。
本発明のセルロースアシレート組成物における、一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物の含有量は、セルロースアシレートに対して0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜16質量%、さらに好ましくは1〜12質量%、特に好ましくは1〜8質量%である。
前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物は、光学フイルム用レターデーション制御剤として用いることができ、特に延伸によるRe発現性に優れたフイルムを得るためのレターデーション制御剤として好適に用いることができる。前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物は、特にセルロースアシレートフイルム用レターデーション制御剤として有用である。これら化合物を含むフイルムの製造方法等の詳細は後述する。
[セルロースアシレート組成物]
本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)と前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む組成物である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いても良い。
好ましいセルロースアシレートは以下の素材を挙げることができる。すなわち、セルロースアシレートが、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートである。
(I) 1.0≦SA+SB≦3.0
(II) 0.5≦SA≦3.0
(III) 0≦SB≦1.5
ここで、式中SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明で使用されるセルロースアシレートにおいては、水酸基のSAとSBの置換度の総和は、より好ましくは1.50〜2.96であり、特に好ましくは2.00〜2.95である。また、SBの置換度は0〜1.5であり、特には0〜1.0である。さらにSBは好ましくはその28%以上が6位水酸基の置換基部分であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、35%以上がさらに好ましく、特には40%以上が6位水酸基の置換基のものであることも好ましい。またさらに、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートを用いることもできる。
本発明において、セルロースアシレートの上記のSBを示す炭素数3〜22のアシル基としては、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBを示す置換基としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、ピバロイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他著,「木材化学」,180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。
無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは250〜550、さらに好ましくは250〜400であり、特に好ましくは粘度平均重合度250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著,「繊維学会誌」,第18巻,第1号,105〜120頁,1962年)により測定できる。さらに特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。
なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明で使用されるセルロースアシレートの含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており、その含水率は2.5〜5質量%であることが知られている。本発明において、含水率の小さなセルロースアシレートを得るためには、セルロースアシレートを乾燥させればよく、その方法は目的とする含水率(例えば2質量%以下)にできれば特に限定されない。
本発明において使用され得るこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
本発明のセルロースアシレート組成物におけるセルロースアシレートの含有量は、固形分全量に対して55質量%以上であることができ、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。フイルム製造の原料として、本発明のセルロースアシレート組成物を調製する際には、セルロースアシレートの粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子サイズを有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子サイズを有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明のセルロースアシレート組成物には、セルロースアシレートおよび前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物のほかに、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、本発明のセルロースアシレート組成物からなるセルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。
さらにこれらの素材としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明において、セルロースアシレートを溶解するために用いられる有機溶媒について記述する。
まず、本発明において、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限り、非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。
エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
以上のセルロースアシレートの溶解に用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、本発明において、セルロースアシレートの溶解に用いられる好ましい溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも1種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒は炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールである。
なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。
さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒は、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。
なお、第1の溶媒が混合液で第2の溶媒を用いない場合は、第1の溶媒が20〜90質量%、第3の溶媒が5〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜86質量%であり、さらに第3の溶媒が7〜25質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて12頁〜16頁に詳細に記載されている。本発明において好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(68/10/10/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(77/10/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(90/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(59/15/15/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1,3−ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・1,3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(60/20/10/5/5、質量部)
などをあげることができる。
また、セルロースアシレート溶液には、上記非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
また、本発明の実施において、本発明のセルロースアシレートの溶液(組成物)を作製するに際しては、場合により主溶媒として塩素系有機溶媒も用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。
また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは少なくとも50質量%使用することが好ましい。本発明において、主溶媒としての塩素系有機溶媒と併用される非塩素系有機溶媒について以下に記す。すなわち、併用される好ましい非塩素系有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。
さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
以上のセルロースアシレートに対して用いられる主溶媒である塩素系有機溶媒と併用される非塩素系有機溶媒については、特に限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサン、炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステル、炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれることが好ましい。なお好ましい併用される非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができる。本発明において、好ましい主溶媒である塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒の組合せとしては以下を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(67/10/10/5/7、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(77/10/5/8、質量部)、
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
などをあげることができる。
本発明ではセルロースアシレートを含むドープを上記に例示した組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。さらにまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜2×10-4である。ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。
これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定することができる。下記方法によれば測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%R.H.で行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。
続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液の静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700、商品名)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021、商品名)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定することができる。
本発明におけるセルロースアシレートを含むドープの調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施することができる。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、同58−127737号、特開平9−95544号、同10−95854号、同10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、同2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、同4−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、同11−302388号などの各公報にセルロース誘導体溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロース誘導体の有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であれば適用することができる。
これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている。さらに本発明において、セルロースアシレートを含むドープに対しては、溶液濃縮、ろ過が通常実施され、その方法は、同様に発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明のセルロースアシレート組成物は、前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物を適当な溶媒に溶解して得られた溶液と、セルロースアシレートを適当な溶媒に溶解して得られたセルロースアシレート溶液とを混合することによって調製することができる。両溶液の混合方法は特に限定されず、両溶液を混合することにより得られた溶液を、フイルム形成用のドープとして用いることができる。但し、本発明では、セルロースアシレートと一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物の添加順序は問わず、また、両者を同時に添加してもよい。ドープにおけるセルロースアシレートの濃度は、10〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは濃度13〜27質量%であり、特に濃度15〜25質量%であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを溶解する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、上記濃度のドープが得られるのであれば、いずれの方法でも構わない。
また、前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物を溶解するためには、前述のセルロースアシレート用溶媒と同様のものを用いることができる。ドープ中の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物の濃度は、例えば例えば0.1〜30質量%とすることができ、好ましくは1〜15質量%することができる。
本発明において、セルロースアシレートを含むドープは、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製、商品名)を用いて測定することができる。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であることが好ましく、40℃での粘度が10〜200Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万であることがより好ましい。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
[セルロースアシレートフイルム]
本発明のセルロースアシレートフイルムは、本発明のセルロースアシレート組成物からなるものである。
次に、本発明のセルロースアシレートフイルムの製造方法について述べる。
本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する方法および設備としては、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置を用いることができる。以下に、その具体例を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート組成物溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。さらには−30〜40℃であることが好ましく、特には−20〜30℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたドープは、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフイルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できる。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%R.H.が好ましく、さらには0〜50%R.H.が好ましい。また、本発明ではドープを流延する流延部の支持体の温度が通常−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃であり、さらに好ましくは−20〜15℃である。流延部を所望の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
本発明においてその各層の内容と流延については、特に以下の構成が好ましい。すなわち、ドープが25℃において、少なくとも1種の液体または固体の可塑剤をセルロースアシレートに対して0.1〜20質量%含有しているドープであること、および/または少なくとも1種の液体または固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有しているドープであること、および/または少なくとも1種の固体でその平均粒子サイズが5〜3000nmである微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有しているドープであること、および/または少なくとも1種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対して0.001〜2質量%含有しているドープであること、および/または少なくとも1種の剥離剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有しているドープであること、および/または少なくとも1種の劣化防止剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有しているドープであること、および/または少なくとも1種の光学異方性コントロール剤をセルロースアシレートに対して0.1〜15質量%含有していること、および/または少なくとも1種の赤外吸収剤をセルロースアシレートに対して0.1〜5質量%含有しているドープであること、を特徴とするドープおよびそれから作製されるセルロースアシレートフイルムが好ましい。
流延工程では1種類のドープを単層流延してもよいし、2種類以上のドープを同時およびまたは逐次共流延しても良い。2層以上からなる流延工程を有する場合は、作製されるドープおよびセルロースアシレートフイルムにおいて、各層の塩素系溶媒の組成が同一であるか異なる組成のどちらか一方であること、各層の添加剤が1種類であるかあるいは2種類以上の混合物のどちらか一方であること、各層への添加剤の添加位置が同一層であるか異なる層のどちらか一方であること、添加剤の溶液中の濃度が各層とも同一濃度であるかあるいは異なる濃度のどちらか一方であること、各層の会合体分子量が同一であるかあるいは異なる会合体分子量のどちらか一方であること、各層の溶液の温度が同一であるか異なる温度のどちらか一方であること、また各層の塗布量が同一か異なる塗布量のどちらか一方であること、各層の粘度が同一であるか異なる粘度のどちらか一方であること、各層の乾燥後の膜厚が同一であるか異なる厚さのどちらか一方であること、さらに各層に存在する素材が同一状態あるいは分布であるか異なる状態あるいは分布であること、各層の物性が同一であるかあるいは異なる物性のどちらか一方であること、各層の物性が均一であるか異なる物性の分布のどちらか一方であること、を特徴とするドープおよびそのドープから作製されるセルロースアシレートフイルムであることも好ましい。
ここで、物性とは発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の6頁〜7頁に詳細に記載されている物性を含むものであり、例えばヘイズ、透過率、分光特性、レターゼーションRe、同Rth、分子配向軸、軸ズレ、引裂強度、耐折強度、引張強度、巻き内外Rt差、キシミ、動摩擦、アルカリ加水分解、カール値、含水率、残留溶剤量、熱収縮率、高湿寸度評価、透湿度、ベースの平面性、寸法安定性、熱収縮開始温度、弾性率、および輝点異物の測定などであり、さらにはベースの評価に用いられるインピーダンス、面状も含まれるものである。
また、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて11頁に詳細に記載されているセルロースアシレートのイエローインデックス、透明度、熱物性(Tg、結晶化熱)なども挙げることができる。
本発明のセルロースアシレートフイルムは延伸されていても良い。光学的異方性を発現するために任意の倍率での延伸されることが特に好ましい。
延伸は、公知の方法が使用でき、例えばセルロースアシレートフイルムのガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度から、50℃高い温度の間の温度で、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法により延伸できる。また、溶液流涎法によるフイルム製造の場合、残留溶媒が1〜30%の範囲内で、より好ましくは5〜20%の範囲内で延伸することができる。延伸倍率は1.01〜2倍が好ましく用いられる。
セルロースアシレートフイルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。
プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフイルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1〜5.0mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜4.0mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
また、アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行ってもよい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。
フイルムと機能層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフイルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフイルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている。
本発明のセルロースアシレートフイルムのRe値とRth値をそれぞれ好ましい範囲に制御するためには、使用する一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物(レターデーション制御剤)の種類および添加量、ならびにフイルムの延伸倍率を適宜調整することが好ましい。特に、本発明では、所望のRth値を達成し得るレターデーション制御剤を選択し、かつ、所望のRe値が得られるように、該レターデーション制御剤の添加量およびフイルムの延伸倍率を適宜設定することにより、所望のRe値およびRth値を有するセルロースアシレートフイルムを得ることができる。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製、商品名)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は「ポリマーハンドブック」(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
本発明のセルロースアシレートフイルムの用途についてまず簡単に述べる。
本発明のセルロースアシレートフイルムは、光学フイルム、特に偏光板保護フイルム用、液晶表示装置の光学補償シート(位相差フイルムともいう)、反射型液晶表示装置の光学補償シート、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として有用である。
したがって本発明のフイルムの厚さはこれらの用途によって定まり、特に制限はないが、好ましくは30μm以上、より好ましくは30〜200μmである。
偏光板保護フイルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフイルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフイルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フイルム処理面と偏光子を貼り合わせるために使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子およびその両面を保護する保護フイルムで構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフイルムを、反対面にセパレートフイルムを貼合して構成される。プロテクトフイルムおよびセパレートフイルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
この場合、プロテクトフイルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフイルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のフイルムを適用した偏光板保護フイルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フイルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フイルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフイルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフイルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。
セルロースアシレートフイルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロースアシレートフイルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフイルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。
一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロースアシレートフイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフイルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
本発明のセルロースアシレートフイルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開WO98/48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフイルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。
その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフイルムの用途は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて45頁〜59頁に詳細に記載されている。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物の合成
[実施例1:例示化合物(A−6)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(A−6)を合成した。
[中間体(S1)の合成]
2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル67.3g、2−エチルヘキシルブロミド85.3ml、炭酸カリウム137.5gをジメチルホルムアミド(DMF)500mlに添加し、90℃の湯浴上で6時間加熱攪拌した。その後、硫酸ジメチル75.9ml、炭酸カリウム137gを添加し、加熱攪拌を10時間続けた。反応終了後、酢酸エチル500mlを添加し、無機塩を減圧濾過にて濾別した。濾液に水を添加し、酢酸エチルで有機層を二度抽出した。有機層は、1mol/l塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、炭酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、酢酸エチル/n-ヘキサン=1/10)にて精製し、中間体であるメチルエステル体を油状物70g(収率59%)として得た。このメチルエステル体をメタノール150ml、5N水酸化カリウム水溶液143mlに溶解させ、2時間加熱還流した。その後、水500ml、12N塩酸水59.3mlの混合液中に添加し、ついで酢酸エチル500mlを添加し、有機層を分取した。有機層は水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を減圧留去した。こうして中間体(S1)を油状物として66g得た。
[中間体(S3)の合成]
中間体(S1)28g、トルエン100ml、ジメチルホルムアミド0.1mlを70℃に加熱した後、塩化チオニル8.03mlをゆっくりと滴下し、滴下後70℃で1時間加熱攪拌した。その後、反応液に4−ヒドロキシ安息香酸(S2)13.81gをジメチルホルムアミド20mlに溶解させた溶液を加え、さらに70℃で2時間反応させた。反応後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル、水を加えて、有機層を分取した。有機層は、1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、塩化メチレン/メタノール=20/1)にて精製し、n−ヘキサンで分散、減圧濾過することで中間体(S3)を白色固体として21.8g得た。
[例示化合物(A−6)の合成]
中間体(S3)19.22g、4、4’−ビフェノール3.72g、ジメチルアミノピリジン0.98g、を塩化メチレン75ml、THF25mlに溶解させ、ここに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10.73gをゆっくりと添加し、続いて、この溶液3時間加熱還流させた。その後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶(ジシクロヘキシルウレア)をろ別し、ろ液に水を添加して、有機層を分取した。得られた有機層は1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに、塩化メチレン/メタノールから再結晶をおこなうことで、例示化合物(A−6)を白色固体として6.4g得た。
また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ0.89(m,12H),1.28−1.60(m,16H),1.76(m,2H),3.92(m,10H),6.55(m,4H),7.29(d,4H),7.38(d,4H),7.64(d,4H),8.08(d,2H),8.29(d,4H)
得られた化合物の融点は94℃であった。
[実施例2]
セルロースアセテートフイルムの作製
下記のセルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
別のミキシングタンクに、例示化合物(B−2)、(A−6)、(A−7)、(B−7)、(A−12)、(A−21)、(B−21)、もしくは(A−26)、または比較化合物16質量部、メチレンクロライド87質量部およびメタノール13質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション制御剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション制御(上昇)剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション制御剤は、セルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加した。
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフイルム(厚さ:92μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフイルム(光学補償シート)について、波長590nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。結果を表1に示す。
<Re、Rthの測定>
ReはKOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に算出した。
比較化合物(特開2003−344655号公報に記載の化合物)
表1の結果から分かるように、比較化合物未含有のフイルム、比較化合物を2質量部含有するフイルム、比較化合物を5質量部含有するフイルムは、いずれも、
(式1)Rth=Re×3.6+43
を満たす。
比較化合物を含有するフイルムは延伸によりReを発現し、Rthはさほど変化しないため、比較化合物を添加することにより、
(式2)Rth≧Re×3.6+43
の領域の光学特性を満足するフイルムを作製できることがわかる。
それに対し、一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物を添加することにより、比較化合物を添加したフイルムでは実現できなかったより大きなRe発現性を有する(つまりRth<Re×3.6+43の領域)新規なセルロースアシレートフイルムを作製できることが分かる。
表1の結果から分かるように、一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物を添加することにより、公知の円盤状化合物(比較化合物)では実現できなかった、よりRe発現性の高い領域の光学特性を有する新規なセルロースアシレートフイルムの作製が可能になることがわかった。
[実施例3]〔偏光板の作製〕
[セルロースアシレートフィルムの鹸化処理]
前記実施例2で作製したセルロースアシレートフィルムNo.9を、1.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し、次いで室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した後、再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムNo.9の表面を鹸化した。
さらに市販のセルローストリアセテートフィルム「フジタックTD80UF」(富士写真フイルム(株)製、商品名)についても同条件で鹸化し、以下の偏光板試料作製に供した。
[偏光子の作製]
延伸したPVAフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光子を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で鹸化したセルロースアシレートフィルムNo.9を偏光子の片側に貼り付けた。偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。
さらに上記で鹸化処理した「フジタックTD80UF」を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板(A)を作製した。
[実施例4]VA液晶表示装置の作製と評価
[液晶セルの作製]
ポリビニルアルコール3質量%水溶液100質量部に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(カップリング剤)を1質量部添加した。これを、ITO電極付のガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるようにした。セルギャップ(d)が5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.08)を注入し、垂直配向液晶セルを作製した。Δnとdとの積は400nmであった。
上記実施例3で作製した偏光板(A)を、25℃、60%RHの温湿度条件で事前に調湿した後、防湿処理を施した袋に包装し、3日間放置した。袋はポリエチレンテレフタレート/アルミ/ポリエチレンの積層構造からなる包装材であり、透湿度は1×10-5g/m2・日以下であった。
25℃、60%RHの環境下で、偏光板(A)を取り出して、作製した垂直配向液晶セルの両面に、粘着シートを用いて貼り付けて、液晶表示装置を作製したところ、本発明のセルロースアシレートフィルムを含む偏光板を使用した液晶表示画面は、色味視野角が広く好ましいことがわかった。
[実施例5]セルロースアシレートフィルムNo.14の作製
[セルロースアシレート溶液の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
(セルロースアシレート溶液の組成)
アセチル化度2.87のセルロースアセテート 100.0質量部
可塑剤:トリフェニルホスフェート 6.0質量部
可塑剤:ビフェニルホスフェート 3.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
[マット剤溶液の調製]
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
(マット剤溶液組成)
平均粒径20nmのシリカ粒子 2.0質量部
(AEROSIL R972、商品名、日本アエロジル(株)製)
メチレンクロリド(第1溶媒) 75.0質量部
メタノール(第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
[レターデーション上昇剤溶液の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
(レターデーション上昇剤溶液の組成)
レターデーション上昇剤(A−11) 10.0質量部
レターデーション上昇剤(A−13) 10.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
上記セルロースアシレート溶液93.3質量部、マット剤溶液1.3質量部及びレターデーション上昇剤溶液5.4質量部をそれぞれ濾過した後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶媒含量35質量%で得られたウェブをバンドから剥離し、140℃の条件でテンターを用いて15%の延伸倍率まで、30%/分の延伸速度で横延伸した後、10%の延伸倍率で140℃、30秒間保持した。その後、クリップを外して140℃で40分間乾燥させ、セルロースアシレートフィルムNo.14を製造した。出来上がったセルロースアシレートフィルムの残留溶媒量は0.2質量%であり、膜厚は80μm、Re(590)は40nm、Rth(590)は180nmであった。
[実施例6]偏光板の作製
[光学補償シートの作製]
(セルロースアシレートフィルムの鹸化処理)
実施例5で作製したセルロースアシレートフィルムNo.14上に、下記組成の液を5.2mL/m2塗布し、60℃で10秒間乾燥させた。フィルムの表面を流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルム表面を乾燥させた。
(鹸化液の組成)
イソプロピルアルコール 818質量部
水 167質量部
プロピレングリコール 187質量部
日本エマルジョン(株)製“EMALEX”(商品名) 10質量部
水酸化カリウム 67質量部
(配向膜の形成)
鹸化処理したセルロースアシレートフィルムNo.14の上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアシレートフィルムNo.14の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
(配向膜塗布液の組成)
下記構造の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記構造のディスコティック化合物91質量部、エチレンオキシド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、商品名、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、商品名、イーストマン・ケミカル社製)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、商品名、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、商品名、日本化薬(株)製)1質量部を、メチルエチルケトン214.2質量部に溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーコーターで5.2mL/m2塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(B)を得た。
(光学補償シートの鹸化処理)
実施例3と同様にして鹸化処理を行った。
[偏光板の作製]
(偏光子の作製)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。次に、作製した光学補償シート(B)のセルロースアシレートフィルムNo.14側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子の片側に貼り付けた。セルロースアシレートフィルムNo.14の遅相軸および偏光子の透過軸が平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフィルム「フジタックTD80UF」(商品名、富士写真フイルム(株)製)を実施例3と同様に鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側(光学補償シートを貼り付けなかった側)に貼り付けた。このようにして、楕円偏光板(B)を作製した。
[実施例7]液晶表示装置の作製
[ベンド配向液晶セルの作製]
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた2枚のガラス基板を、ラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを5.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物“ZLI1132”(商品名、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
[液晶表示装置の作製]
作製したベンド配向セルを挟むように、偏光板(B)を2枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、コントラスト視野角が広く好ましい画像を有していることがわかった。