JP2006232953A - セルロース誘導体組成物、セルロース誘導体フイルム、およびトリアルコキシ安息香酸誘導体化合物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有するセルロース誘導体組成物。
一般式(1)
(式中、R2、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R11、R13はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表す。Ar1はアリーレン基または芳香族ヘテロ環基を表し、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表し、nは3以上の整数を表し、n個のL2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n個のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただしR11、R13は互いに異なっており、R13で表されるアルキル基はヘテロ原子を含まない。)
【選択図】なし
Description
一般にセルローストリアセテートは延伸しにくい高分子素材であり、光学的異方性を大きくすることは困難であることが知られているが、前記特許文献1及び2では添加剤を延伸処理で同時に配向させることにより光学的異方性を大きくすることを可能にし、高いレターデーション値を実現している。
本発明の第2の目的は、光学フイルムとして好ましいレターデーション値を有するセルロース誘導体フイルムを提供することにある。
[1]下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするセルロース誘導体組成物。
一般式(1)
[2]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする[1]項に記載のセルロース誘導体組成物。
一般式(2)
[3]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする[1]項に記載のセルロース誘導体組成物。
一般式(3)
[4]前記セルロース誘導体としてセルロースアシレートを含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体組成物。
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体組成物からなるセルロース誘導体フイルム。
[6]下記一般式(2)で表される化合物。
一般式(2)
[7]下記一般式(3)で表される化合物。
一般式(3)
[8]偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が、[5]項に記載のセルロースアシレートであることを特徴とする偏光板。
[9]保護フィルムの少なくとも片方の面上に、光学異方性層を有することを特徴とする[8]項に記載の偏光板。
[10]液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも1方の偏光板が[8]又は[9]項に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
[11]該液晶表示装置がVAモードであることを特徴とする[10]項記載の液晶表示装置。
[12]該液晶表示装置がOCBモードであることを特徴とする[10]項記載の液晶表示装置。
本発明のセルロース誘導体フイルムは、液晶表示装置用光学フイルムとして、特に光学補償シートとして好適に用いることができる。
[安息香酸誘導体化合物]
まず、一般式(1)で表される化合物に関して詳細に説明する。
一般式(1)
R11、R13で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状であって、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基。)、更に環構造が多いトリシクロ構造などが挙げられる。
R13として特に好ましくは、炭素原子2個以上を含むアルキル基であり、より好ましくは炭素原子3個以上を含むアルキル基である。分岐または環状構造をもったものは特に好ましく用いられる。
一般式(1)中、Ar1で表されるアリーレン基として好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar1で表されるアリーレン基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(1)中、Ar2で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar2で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
二価の連結基として好ましいものは、−O−、−NR−(Rは水素原子または置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基をあらわす)、−CO−、−SO2−、−S−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基およびこれらの二価の基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−NR−、−CO−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基である。ここでRは好ましくは水素原子を表す。
一般式(1)中、nは3以上の整数を表し、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜6である。一般式(1)で表される化合物は、nが3以上であるため(−Ar1−L2−)で表される部分が長く、同様の構造を有する従来の化合物に比べて、セルロース誘導体フィルムにおいて、より高いレターデーション発現能を有している。また、R11とR13が異なっているために、高いレターデーション発現能とセルロース誘導体組成物中での高い溶解性を両立することができる。
次に、本発明の一般式(2)で表される化合物に関して説明する。
一般式(2)
一般式(2)中、R2、R5、R11、R13、L1、L2、Ar1、Ar2及びnは一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
次に、本発明の一般式(3)で表される化合物に関して説明する。
一般式(3)
一般式(3)中、R2、R5、R11、R13、L1、L2、Ar1、Ar2及びnは一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)中、R14は水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基としてはR11、R13の好ましい例として示したアルキル基が好ましく用いられる。また好ましくは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。R11とR14は同じであっても異なっていてもよいが、ともにメチル基であることが特に好ましい。
一般式(4−A)
一般式(4−A)中、R2、R5、R11、R13、L1、L2、Ar1及びnは一般式(1)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(4−B)
一般式(4−B)中、R2、R5、R11、R13、R14、L1、L2、Ar1、nは一般式(1)又は(3)におけるそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
置換基Tとして好ましくは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
R11がメチル基であり、
R2、R5がいずれも水素原子であり、
R13が炭素原子3個以上をもつアルキル基であり、
L1が、単結合、−O−、−CO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
L2が−O−または−NR−(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
Ar1がアリーレン基であり、
nが3以上6以下である
ものを挙げることができる。
R11、R14がいずれもメチル基であり、
R2、R5がいずれも水素原子であり、
R13が炭素原子3個以上をもつアルキル基であり、
L1が、単結合、−O−、−CO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
L2が−O−または−NR−(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、
Ar1がアリーレン基であり、
nが3以上6以下である
ものを挙げることができる。
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール誘導体もしくはアニリン誘導体と縮合する方法が好ましい。
本反応には塩基を用いないのが好ましく、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなどが挙げられる)である。
を有する原料化合物を、水酸基、アミノ基等の反応性部位を有する誘導体との反応に付して得られた中間体:
2分子を、
1分子により連結することによって得ることができる。ただし、本発明に用いられる化合物の合成法はこの例に限定されない。
本発明のセルロース誘導体組成物は、セルロース誘導体と前記の一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む組成物である。本発明において「セルロース誘導体」とは、セルロース化合物、および、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものとする。セルロース骨格を有する化合物として好ましいものはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロース誘導体を混合して用いても良い。
以下、セルロース誘導体としてセルロースアシレートを用いた場合を代表例として、本発明を説明する。
(I) 1.0≦SA+SB≦3.0
(II) 0.5≦SA≦3.0
(III) 0≦SB≦1.5
まず、本発明において、セルロース誘導体の溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロース誘導体が溶解し流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限り、非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(77/10/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(90/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(59/15/15/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・1,3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(60/20/10/5/5、質量部)
などをあげることができる。
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(67/10/10/5/7、質量部)、
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
などをあげることができる。
4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製、商品名)を用いて測定することができる。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であることが好ましく、40℃での粘度が10〜200Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万であることがより好ましい。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
本発明のセルロース誘導体フイルムは、本発明のセルロース誘導体組成物からなるものである。
次に、本発明のセルロース誘導体フイルムの製造方法について述べる。
本発明のセルロース誘導体フイルムを製造する方法および設備としては、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置を用いることができる。以下に、その具体例を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロース誘導体組成物溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
また、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて11頁に詳細に記載されているセルロースアシレートのイエローインデックス、透明度、熱物性(Tg、結晶化熱)なども挙げることができる。
延伸は、公知の方法が使用でき、例えばセルロース誘導体フイルムのガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度から、50℃高い温度の間の温度で、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法により延伸できる。また、溶液流涎法によるフイルム製造の場合、残留溶媒が1〜30%の範囲内で、より好ましくは5〜20%の範囲内で延伸することができる。延伸倍率は1.01〜2倍が好ましく用いられる。
また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。
本発明のセルロース誘導体フイルムは、光学フイルム、特に偏光板保護フイルム用、液晶表示装置の光学補償シート(位相差フイルムともいう)、反射型液晶表示装置の光学補償シート、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として有用である。
したがって本発明のフイルムの厚さはこれらの用途によって定まり、特に制限はないが、好ましくは30μm以上、より好ましくは30〜200μmである。
[実施例1:例示化合物(A−6)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(A−6)を合成した。
2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル67.3g、2−エチルヘキシルブロミド85.3ml、炭酸カリウム137.5gをジメチルホルムアミド(DMF)500mlに添加し、90℃の湯浴上で6時間加熱攪拌した。その後、硫酸ジメチル75.9ml、炭酸カリウム137gを添加し、加熱攪拌を10時間続けた。反応終了後、酢酸エチル500mlを添加し、無機塩を減圧濾過にて濾別した。濾液に水を添加し、酢酸エチルで有機層を二度抽出した。有機層は、1mol/l塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、炭酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、酢酸エチル/n-ヘキサン=1/10)にて精製し、中間体であるメチルエステル体を油状物70g(収率59%)として得た。このメチルエステル体をメタノール150ml、5N水酸化カリウム水溶液143mlに溶解させ、2時間加熱還流した。その後、水500ml、12N塩酸水59.3mlの混合液中に添加し、ついで酢酸エチル500mlを添加し、有機層を分取した。有機層は水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を減圧留去した。こうして中間体(S1)を油状物として66g得た。
中間体(S1)28g、トルエン100ml、ジメチルホルムアミド0.1mlを70℃に加熱した後、塩化チオニル8.03mlをゆっくりと滴下し、滴下後70℃で1時間加熱攪拌した。その後、反応液に4−ヒドロキシ安息香酸(S2)13.81gをジメチルホルムアミド20mlに溶解させた溶液を加え、さらに70℃で2時間反応させた。反応後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル、水を加えて、有機層を分取した。有機層は、1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、塩化メチレン/メタノール=20/1)にて精製し、n−ヘキサンで分散、減圧濾過することで中間体(S3)を白色固体として21.8g得た。
中間体(S3)19.22g、4、4’−ビフェノール3.72g、ジメチルアミノピリジン0.98g、を塩化メチレン75ml、THF25mlに溶解させ、ここに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10.73gをゆっくりと添加し、続いて、この溶液3時間加熱還流させた。その後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶(ジシクロヘキシルウレア)をろ別し、ろ液に水を添加して、有機層を分取した。得られた有機層は1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに、塩化メチレン/メタノールから再結晶をおこなうことで、例示化合物(A−6)を白色固体として6.4g得た。
また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ0.89(m,12H),1.28−1.60(m,16H),1.76(m,2H),3.92(m,10H),6.55(m,4H),7.29(d,4H),7.38(d,4H),7.64(d,4H),8.08(d,2H),8.29(d,4H)
得られた化合物の融点は94℃であった。
セルロースアセテートフイルムの作製
下記のセルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション制御(上昇)剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション制御剤は、セルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加した。
ReはKOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に算出した。
(式1)Rth=Re×3.6+43
を満たす。
比較化合物を含有するフイルムは延伸によりReを発現し、Rthはさほど変化しないため、比較化合物を添加することにより、
(式2)Rth≧Re×3.6+43
の領域の光学特性を満足するフイルムを作製できることがわかる。
それに対し、一般式(1)〜(3)又は一般式(4−A)もしくは(4−B)で表される化合物を添加することにより、比較化合物を添加したフイルムでは実現できなかったより大きなRe発現性を有する(つまりRth<Re×3.6+43の領域)新規なセルロース誘導体フイルムを作製できることが分かる。
[セルロースアシレートフィルムの鹸化処理]
前記実施例2で作製したセルロースアシレートフィルムNo.9を、1.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し、次いで室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した後、再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムNo.9の表面を鹸化した。
延伸したPVAフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光子を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で鹸化したセルロースアシレートフィルムNo.9を偏光子の片側に貼り付けた。偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。
[液晶セルの作製]
ポリビニルアルコール3質量%水溶液100質量部に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(カップリング剤)を1質量部添加した。これを、ITO電極付のガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるようにした。セルギャップ(d)が5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.08)を注入し、垂直配向液晶セルを作製した。Δnとdとの積は400nmであった。
[セルロースアシレート溶液の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
アセチル化度2.87のセルロースアセテート 100.0質量部
可塑剤:トリフェニルホスフェート 6.0質量部
可塑剤:ビフェニルホスフェート 3.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
平均粒径20nmのシリカ粒子 2.0質量部
(AEROSIL R972、商品名、日本アエロジル(株)製)
メチレンクロリド(第1溶媒) 75.0質量部
メタノール(第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
レターデーション上昇剤(A−11) 10.0質量部
レターデーション上昇剤(A−13) 10.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
[光学補償シートの作製]
(セルロースアシレートフィルムの鹸化処理)
実施例5で作製したセルロースアシレートフィルムNo.14上に、下記組成の液を5.2mL/m2塗布し、60℃で10秒間乾燥させた。フィルムの表面を流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルム表面を乾燥させた。
イソプロピルアルコール 818質量部
水 167質量部
プロピレングリコール 187質量部
日本エマルジョン(株)製“EMALEX”(商品名) 10質量部
水酸化カリウム 67質量部
鹸化処理したセルロースアシレートフィルムNo.14の上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアシレートフィルムNo.14の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
下記構造の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
配向膜上に、下記構造のディスコティック化合物91質量部、エチレンオキシド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、商品名、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、商品名、イーストマン・ケミカル社製)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、商品名、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、商品名、日本化薬(株)製)1質量部を、メチルエチルケトン214.2質量部に溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーコーターで5.2mL/m2塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(B)を得た。
実施例3と同様にして鹸化処理を行った。
(偏光子の作製)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。次に、作製した光学補償シート(B)のセルロースアシレートフィルムNo.14側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子の片側に貼り付けた。セルロースアシレートフィルムNo.14の遅相軸および偏光子の透過軸が平行になるように配置した。
[ベンド配向液晶セルの作製]
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた2枚のガラス基板を、ラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを5.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物“ZLI1132”(商品名、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
作製したベンド配向セルを挟むように、偏光板(B)を2枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
Claims (12)
- 下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするセルロース誘導体組成物。
一般式(1)
- 前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載のセルロース誘導体組成物。
一般式(2)
- 前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1記載のセルロース誘導体組成物。
一般式(3)
- 前記セルロース誘導体としてセルロースアシレートを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース誘導体組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体組成物からなるセルロース誘導体フイルム。
- 偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が、請求項5記載のセルロースアシレートであることを特徴とする偏光板。
- 保護フィルムの少なくとも片方の面上に、光学異方性層を有することを特徴とする請求項8記載の偏光板。
- 液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも1方の偏光板が請求項8又は9に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- 該液晶表示装置がVAモードであることを特徴とする請求項10記載の液晶表示装置。
- 該液晶表示装置がOCBモードであることを特徴とする請求項10記載の液晶表示装置。
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