JP4703423B2 - セルロースエステルフィルム、これを含む位相差フィルム、偏光子、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
一般的にセルローストリアセテートは延伸しにくい高分子素材であり、光学的異方性を十分に高めることは困難である。前記特許文献1では、添加剤を延伸処理で同時に配向させることにより光学的異方性を大きくし、高いレターデーション値を実現している。
[1]セルロース化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される化合物とを含有することを特徴とするセルロース化合物組成物。
[2]前記一般式(1)中のR3が前記−L3−Q1で表される基であることを特徴とする[1]項に記載のセルロース化合物組成物。
[3]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする[1]又は[2]項に記載のセルロース化合物組成物。
[4]前記セルロース化合物としてセルロースアシレートを含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロース化合物組成物。
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロース化合物組成物を用いたことを特徴とするセルロース化合物フィルム。
[6][1]〜[5]のいずれか1項に記載のセルロース化合物フィルムからなる光学フィルム。
[7][6]に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
[8][7]に記載の偏光板を有する、液晶表示装置。
[9]下記一般式(1)で表される化合物。
[10]下記一般式(2)で表される化合物。
本発明の目的は、下記手段により達成された。
(1)下記一般式(2A)で表される化合物を少なくとも1種含有するセルロースエステルフィルム。
(2)前記セルロースエステルが、セルロースアシレートである(1)に記載のセルロースエステルフィルム。
(3)(1)又は(2)記載のセルロースエステルフィルムを含む位相差フィルム。
(4)(1)又は(2)記載のセルロースエステルフィルムを含む偏光子。
(5)(4)記載の偏光子を用いた偏光板。
(6)(4)又は(5)記載の偏光子又は偏光板を含む液晶表示装置。
(7)下記一般式(2A)で表される化合物。
本発明のセルロースエステルフィルムは、光学フィルムとして、特に光学補償シートとして、偏光板および液晶表示装置に好適に用いることができる。
まず、セルロース化合物組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物に関して詳細に説明する。
また、L3は単結合、または2価の連結基を表し、一般式Q1中の*が一般式(1)中のベンゼン環を形成する炭素原子に直接結合する単結合であることが最も好ましい。
式Q1中、R6として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、アシルアミノ基又はスルホニルアミノ基であり、更に好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は水酸基であり、特に好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくはメチル基)である。
一般式(1)中、Ar1で表されるアリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar1で表されるアリーレン基は、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、o−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(1)中、Ar2で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar2で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
2価の連結基の例としては、−O−、−NR’−(R’は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基をあらわす)、−CO−、−SO2−、−S−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、またはこれらの二価の基を2つ以上組み合わせて得られる基である。R’は好ましくは水素原子、炭素数1〜12の無置換のアルキル基、炭素数6〜12の無置換のアリール基を表し、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4の無置換のアルキル基を表し、もっとも好ましくは水素原子を表す。
L1として、特に好ましくは単結合である。L2として、より好ましくは単結合、−O−、−CO−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−又はアルキニレン基であり、最も好ましくは単結合、−COO−、−OCO−又はアルキニレン基である。L4として、最も好ましくは単結合、−COO−、−OCO−又はアルキニレン基である。
nは1以上の整数を表し、好ましくは1〜7であり、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは3〜6である。
本発明のセルロースエステルフィルムは、前記一般式(2)の化合物のうち、前記一般式Q1で表わされる基のmが1〜7以上の整数を表しR 6 がアルキル基を表す化合物を少なくとも1種含有する。以下、この一般式(2)を特に一般式(2A)という。
置換基Tとして好ましくは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
セルロース化合物組成物は、少なくとも1種のセルロース化合物と、一般式(1)、(2)または(2A)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種とを含むセルロース化合物組成物である。本発明において、セルロース化合物とは、セルロース、またはセルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物をいう。セルロース化合物として好ましくはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いてもよい。
なお、セルロース化合物組成物は、液体(例えば、セルロース化合物溶液)であっても、固体(例えば、セルロース化合物フィルム)であってもよい。
セルロース化合物組成物に用いられるセルロース化合物は、上述のように好ましくはセルロースアシレートであり、以下セルロースアシレートを例にして、セルロース化合物組成物、並びに、それからなるセルロース化合物フィルムの好ましい態様について説明する。
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ特に限定されるものではない。
数式(4):2.0≦A+B≦3.0
数式(5):0<B
ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては180〜550が好ましく、180〜400がより好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著,「繊維学会誌」,第18巻,第1号,105〜120頁,1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、セルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることが特に好ましい。
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単独あるいは2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。セルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に規定するものではないが、溶融製膜法または溶液製膜法により製造することが好ましい。
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において透湿性を低下する化合物以外にも用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、またその添加する時期はドープ作製工程において何れを添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物が挙げられる。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されているものが挙げられる。
[染料]
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレートに対して5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が好ましく、2000以下がより好ましい。これら化合物の総量が5質量%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45質量%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁(フィルムからの泣き出し)しやすくなる。
ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。ジクロロメタンが特に好ましい主溶媒である。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。ハロゲン系溶媒75〜89重量部に対してアルコール系溶媒11〜25重量部の混合溶媒が最も好ましい。アルコールは一価であることが好ましい。アルコールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を有していても、環状であってもよい。炭化水素部分は、飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。メタノールが特に好ましい。
(溶解工程)
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。セルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロース化合物フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。以下、これを具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。セルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することが好ましい。特に、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
本発明において、Re(λ)、Rth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)は“KOBRA 21ADH”{商品名、王子計測機器(株)社製}において、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定するこができる。Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、合計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、“KOBRA 21ADH”により算出することができる。
数式(2):0nm≦Re≦200nm
数式(3):0nm≦Rth≦400nm
[上記式中、Re、Rthは、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である(本発明において、ReまたはRthとは、特に断らない限り、この波長におけるそれぞれの値をいう。)]
2枚型の場合、Reは20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rthについては70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Reは30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rthについては100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを超えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。またセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。透明支持体の残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
セルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、0.1〜2000Pa(10-3〜20Torr)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、その用途として好ましくは光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学フィルムであって、用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。セルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムは様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、例えば、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、例えば、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成することができる。透明電極層は、例えば、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成することができる。液晶セルには、例えば、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、基板上に設けることができる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さにすることが好ましい。上記の本発明の偏光板は液晶表示装置に好適に用いることができる。
セルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効であり、また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
セルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
セルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
セルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いることができる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0〜150nmとし、Rthレターデーション値を70〜400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20〜70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
セルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いることができる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)にセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のリターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
セルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いることができる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO98/48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00/65384号に記載がある。
セルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いることができる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
セルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
セルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、以下の特許文献に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
セルロースアシレートフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、セルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
本発明の一般式(1)または(2)で表される化合物(以下、レターデーション制御剤ともいう。)は、その種類および添加量を適宜設定することで、フィルムの延伸倍率を適宜調整することとあいまって、セルロース化合物フィルムのRe値とRth値をそれぞれ好ましい範囲に制御することができる。すなわち、本発明のセルロース化合物フィルムにおいては、レターデーション制御剤を選択してRth値を目的の範囲に制御し、かつ該レターデーション制御剤の添加量およびフィルムの延伸倍率を適宜設定することによりRe値を目的の範囲に制御して、所望のRe値、Rth値、およびその組み合わせを有するセルロース化合物フィルムを得ることができる。
<例示化合物(11)の作製>
下記スキームに従い、例示化合物(11)を作製した。
3−メトキシ−1−ブタノール200g(1.92mol)の酢酸エチル(AcOEt)溶液にトリエチルアミン(Et3N)185g(1.83mol)を加えた。反応系を2℃に冷却した後、メタンスルホン酸クロライド(MsCl)209g(1.83mol)を、反応系の温度を15℃以下に保ちつつ滴下した。滴下終了後、10℃以下で30分攪拌した後、室温まで昇温し、3時間攪拌した。水を加えて分液し、有機層を水、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することで292.2gの中間体(1−A)の粗製物を得た。
パラブロモフェノール(1)64gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)500ml溶液に炭酸カリウム67.2gを加え、中間体(1−A)84gを加えた。反応系を100℃まで昇温し、6時間攪拌した。反応終了後、系を冷却したところに水、酢酸エチル1Lを加え分液した。有機層を、水、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い中間体(1−B)を96gを得た。
中間体(1−B)84.6g、トリメチルシリル(TMS)アセチレン68ml、トリフェニルホスフィン(PPh3)2.57g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)1.38gおよびヨウ化銅(I)(CuI)0.5gをトリエチルアミン200mlに溶解させ、窒素雰囲気下で6時間還流した。反応終了後、系を冷却したところに水、酢酸エチル1Lを加え分液した。有機層を、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い中間体(1−C)を86gを得た。
中間体(1−C)72gをテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解し、テトラブチルアンモニウムフルオラド(TBAF)のテトラヒドロフラン溶液(1.0M溶液)を312ml添加し、室温で60分間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、中間体(1−D)61gを得た。
中間体(1−D)50.5g、4−ブロモ安息香酸エチル(2)62.3g、トリフェニルホスフィン1.95g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド1.04gおよびヨウ化銅(I)0.47gをトリエチルアミン200mlに溶解させ、窒素雰囲気下で6時間還流した。反応終了後、系を冷却したところに水、酢酸エチル1Lを加え分液した。有機層を、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い中間体(1−E)を80gを得た。
中間体(1−E)97gにメタノール(MeOH)110mlを加え、水酸化カリウム46gの水溶液165mlを滴下した。反応系を60℃まで加熱し、そのまま4時間攪拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応終了を確認し、反応系を室温に冷却した。N塩酸水1Lに反応液をゆっくりと滴下した。生成した結晶をろ取し、乾燥することで89gの中間体(1−F)を得た。
中間体(1−F)7.1gのテトラヒドロフラン80ml溶液に氷冷下にてメタンスルホン酸クロライド1.7mlを加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(IPr2NEt)3.8mlをゆっくりと滴下した。1時間攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン7.6mlを加え、1.24gのメチルハイドロキノン(3)のテトラヒドロフラン30ml溶液を滴下した。その後、N,N−ジメチルアミノピリジンを0.1g含むテトラヒドロフラン(THF)5ml溶液を滴下した。氷冷下にて1時間攪拌した後、室温まで昇温し、6時間攪拌した。反応液をメタノール1Lに滴下し、生成した結晶をろ取し、乾燥することで6.0gの例示化合物(11)を得た。
化合物の同定は1H−NMRにより行った。
1H−NMR(CDCl3):δ1.20(d,6H),1.95(m,4H),2.25(s,3H),3.35(s,6H),3.55(m,2H),4.10(m,4H),6.90(d,4H),7.15(m,3H),7.50(m,4H),7.65(m,4H),8.20(m,4H)
下記のセルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション制御(上昇)剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション調整剤は、セルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加した。
エリプソメーター(AEP−100、商品名、島津製作所(株)製)を用いて、波長632.8nmで測定した面内の縦横の屈折率差にフィルム膜厚を乗じた値として、下記式に従って求めた。
Re=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
nx:遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率
ny:遅相軸に直交する方向の屈折率
nz:厚さ方向の屈折率
d :フィルムの厚さ(単位:nm)
Rth=Re×3.6+43 (式1)
を満たす。
すなわち、比較化合物1を含有するフィルムは延伸によりReは発現し、Rthはさほど変化させないため、比較化合物1を添加することにより、
Rth≧Re×3.6+43 (式2)
の領域の光学特性を満足するフィルムを作製できることがわかる。
これに対し、一般式(1)又は(2)で表される化合物(例示化合物(11))を添加したフィルムは、比較化合物1を添加したフィルムでは実現できなかったより大きなRe発現性を有する(つまりRth<Re×3.6+43の領域)新規なセルロースフィルムを作製できることが分かる。
Claims (7)
- 下記一般式(2A)で表される化合物を少なくとも1種含有するセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルが、セルロースアシレートである請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
- 請求項1又は2記載のセルロースエステルフィルムを含む位相差フィルム。
- 請求項1又は2記載のセルロースエステルフィルムを含む偏光子。
- 請求項4記載の偏光子を用いた偏光板。
- 請求項4又は5記載の偏光子又は偏光板を含む液晶表示装置。
- 下記一般式(2A)で表される化合物。
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