JP2008086840A - フッ素を含む排水の晶析処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フッ素を含む排水とカルシウム含有液とを晶析反応槽に供給し、晶析反応槽内でpH2超かつ3以下の条件下でフッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素の晶析処理方法。該方法により、晶析反応の際の微細結晶の生成を低減し、pH3超〜12の条件下では微細結晶が生成する高濃度の原水に対しても高いフッ素回収率を得ることができ、かつフッ化カルシウムの溶解度を適正な範囲に保つことで、処理水中の溶解性フッ素濃度をも低減でき、さらに従来法で必要とされるような加温操作も不要となり、処理系でのエネルギー消費を低減することが可能となる。
【選択図】図6
Description
一方で、フッ化カルシウムを析出させる際の微細結晶生成の問題を解決するものとして、特開2005−206405号には、反応系のpHを2以下にすることによって、高濃度のフッ素含有排水においても微細結晶を生成させることなしに、フッ化水素製造用に適する粒径を有するフッ化カルシウムを析出させる方法が記載されている。
また、高濃度のフッ素含有排水の処理におけるSS性フッ素の処理水中への流出によるフッ素の回収率低下を解決するものとして、特開2005−206405号および特開2005−230735号には、攪拌機を反応槽に設置した晶析反応槽が提案されている。
さらに、攪拌機を反応槽に設置した晶析装置を用いる特開2005−206405号および特開2005−230735号の方法は、pH=1程度のフッ化カルシウムの溶解度が高い条件下、すなわち、微細なフッ化カルシウムが成長しにくい条件下で実施するものであるが、処理水の溶解性のフッ素濃度が高くなる問題がある。この溶解性フッ素をできるだけ低減するため、高温(40〜90℃)で反応させて、反応速度を上げる方法も提案されているが、加温のための熱が必要などの問題や、反応槽の材質や攪拌機の材質が高価となり、pH計などの計器の耐久性が短くなるなどの問題もある。これらの問題は、フッ化カルシウムの溶解度がpH=1では数百mg/Lと高いが、pH2〜11では、15〜数十mg/Lと非常に低く、0.5〜5%の高濃度のフッ酸とカルシウムを反応させると反応速度が非常に速く、瞬時に微細なフッ化カルシウム粒子を形成してしまう性質に原因がある。
本発明は第2の態様として、フッ素を含む排水およびカルシウム含有液を晶析反応槽に供給し、晶析反応槽内でpH2以下の条件下で種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させ、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素の晶析処理方法を提供する。
本発明は第3の態様として、フッ素とカルシウムとを反応させてフッ化カルシウムを析出させる晶析反応槽が複数段直列に連結された晶析反応装置を用いて、フッ素を含む排水から、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素の晶析処理方法であって、
第1段の晶析反応槽にフッ素を含む排水を供給し、かつ第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の0.6〜0.8倍量(重量比)のカルシウム量となるように、カルシウム含有液を第1段の晶析反応槽に供給して、フッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせ、
第2段以降の晶析反応槽においては、前段からの処理水を晶析反応槽に供給し、第2段以降の晶析反応槽に供給されるカルシウムの合計量が、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の0.2〜0.5倍量(重量比)(ただし、全ての晶析反応槽に供給されるカルシウム量の合計は、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の1.0〜1.3倍量(重量比)である)となるように、カルシウム含有液を第2段以降の各段の晶析反応槽に供給して、第2段以降の晶析反応槽においてフッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせる、フッ素の晶析処理方法を提供する。
本発明の第2の態様においては、晶析反応槽内で、pH2以下の条件下で種晶上にフッ化カルシウムを析出させることによって、晶析反応の際の微細結晶の生成を低減させ、pH3超〜12の条件下では微細結晶が生成する高濃度の原水に対しても高いフッ素回収率を得ることができ、かつフッ化カルシウムの溶解度を適正な範囲に保つことで、処理水中の溶解性フッ素濃度をも低減でき、さらにフッ素を含む排水の一般的な温度である10〜40℃でも処理できることから、処理系でのエネルギー消費を低減できるという有利な効果を有する。また、このとき、回収されたフッ化カルシウムのペレットの純度は95%以上であり、多くの場合、98%程度の高純度のフッ化カルシウムを回収することができる。また、フッ化カルシウムのペレットの含水率は10%以下であり、多くの場合は2〜5%にすることができる。
本発明の第3の態様においては、晶析処理において複数段の晶析反応槽を使用し、第1段の晶析反応槽に供給されるカルシウムの量を、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の0.6〜0.8倍量(重量比)にして、第2段以降に残りの量のカルシウムを分配して供給することにより、複数段の全段において供給される合計量のカルシウムを、単一段の晶析反応槽に供給して晶析処理を行う場合と比較して、過酷な条件で処理を行わなくても、微細粒子の発生量を低減でき、晶析処理によるフッ素回収率を向上できるという有利な効果を有する。
また、攪拌羽根20を有する晶析反応槽11にあっては、フッ素を含む排水やカルシウム含有液、pH調節剤の注入点を攪拌羽根近傍に設置することが好ましい。これにより、攪拌羽根近傍の強い攪拌力により排水等がすばやく分散され、微細粒子が大量に発生することが抑制され、フッ素の回収率を向上させることができる。このとき、排水等の注入点の軸方向(すなわち、図12においては縦方向)の位置は、図12に示されるような、攪拌羽根から上方あるいは下方の、攪拌羽根径(ここで、攪拌羽根径とは、回転する攪拌羽根が形成する円の直径をいう)と同程度の位置までの領域内(図12において薄く着色されている部分)であることが好ましい。なお、図12は、攪拌羽根20を有する晶析反応槽11の側面からおよび上方からの概略図を示し、各供給ラインなどは省略されている。
また、攪拌羽根20を有する晶析反応槽11としては、攪拌羽根の外周に筒状のドラフトチューブ60を配置するものであってもよい。このとき、攪拌羽根は、ドラフトチューブ内に下降流れを形成するように選定することが好ましい。これにより、ドラフトチューブの外側には緩やかな上向流が形成され、この上向流ゾーンでは粒子が分級されて、小粒径の粒子がドラフトチューブ上部からドラフトチューブ内部に下降することから、排水とカルシウム含有液が反応する際の核となり、フッ素の回収率を向上させることができる。このとき、排水等をすばやく分散させるために、排水等の注入点の径方向(即ち、図13においては横方向)の位置を、ドラフトチューブ内部に配置することが好ましく。この態様が図13に示され、図13において薄く着色された部分が、上記観点から注入点の配置に好ましい部分である。より好ましくは、フッ素を含む排水やカルシウム含有液、pH調節剤の注入点をドラフトチューブ内に配置することが好ましい。例えば、この部分は、図14において薄く着色された部分として示される。
連結される晶析反応槽の数は2以上であれば、2段連結、3段連結、4段連結などであって良く、その数は特に限定されるものではない。また、連結される複数の晶析反応槽は互いに同じであっても異なっていても良く、使用可能な晶析反応槽については、既に上述したとおりであり、図1に示すような上向流式流動床の態様の晶析反応槽であってもよいし、図2に示すような攪拌羽根を有する晶析反応槽であってもよい。例えば、図10および11に示すような攪拌羽根を有する晶析反応槽を2段、3段と連結させたものであってもよいし、図1に示すような上向流式流動床の晶析反応槽と図2に示すような攪拌羽根を有する晶析反応槽を連結させるものであってもよい。
第2段以降の晶析反応槽においては、前段からの処理水を晶析反応槽に供給し、第2段以降の晶析反応槽に供給されるカルシウムの合計量が、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の0.2〜0.5倍量(重量比)(ただし、全ての晶析反応槽に供給されるカルシウム量の合計は、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の1.0〜1.3倍量(重量比)である)となるように、カルシウム含有液を第2段以降の各段の晶析反応槽に供給して、第2段以降の晶析反応槽においてフッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせる。
すなわち、この態様においては、晶析反応装置全体として使用されるカルシウムの量は、当該晶析反応装置に供給されるフッ素の1.0〜1.3倍量(重量比)のカルシウム量であり、このカルシウムが第1段および第2段以降に上述の量で分配され、晶析処理が行われる。第2段以降の晶析反応槽に供給されるカルシウム量は、合計量が上記特定した量であれば、第2段以降の各段に供給されるカルシウムの量比は特に限定されるものではない。例えば、晶析反応装置が3段の晶析反応槽を連結している場合には、第2段および第3段の晶析反応槽に供給されるカルシウム量の比(第2段:第3段)は、例えば、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1など、特に限定されるものではない。
当該態様における晶析反応槽内の反応場のpHは、いずれの段の晶析反応槽においても、1.5〜4.0が好ましく、2.0〜2.5がより好ましい。
本発明の流動床型晶析方法による実施例を示す。晶析処理装置としては、図1に示される態様の装置を使用した。晶析反応槽は、晶析反応槽内に種晶を充填し、原水および晶析反応槽出口水(循環水)を上向流で通水することによる流動床式とした。装置の運転条件、通水条件は以下の通りである。晶析反応槽は、20mmφ内径×2500mm高さのアクリル製晶析塔を使用した。晶析処理水を貯留する中間槽は500mLの容量であった。原水タンクは100Lであった。種晶として蛍石(フッ化カルシウム)を使用した。被処理水として、フッ素濃度が500〜10000mg−F/Lの範囲のフッ化ナトリウム水溶液を調製し使用した。晶析剤すなわちカルシウム含有液として、塩化カルシウム10%水溶液を使用し、処理水中の溶解性カルシウム濃度10〜400mg/Lとなるように注入した。pH調節剤として水酸化ナトリウム溶液を使用した。反応場のpHとしては、晶析塔出口処理水のpHが所定の値になるように原水pHを調整した。通水量は、フッ素負荷=3kg−F/m2/h、LV=40m/hになるように処理水を循環させた。
原水のフッ素濃度を5000mg−F/Lで一定として、処理水中の溶解性カルシウム濃度の条件を、10、50、200、400mg/Lと変化させたことを除き、実施例1と同じ条件で晶析処理試験をおこなった。pHとフッ素回収率の関係を図8のグラフに示す。pH2〜3の範囲で、回収率はおおむね80%以上と良好な結果を示した。また、カルシウム濃度が高いほど回収率のピークが低pH側に、低いほど高pH側となった。このとき、回収したフッ化カルシウムのペレットの純度は95〜98%であり、含水率は2〜5%であった。
本発明の攪拌型晶析方法による実施例を示す。晶析処理装置としては、図2に示される態様の装置を使用した。晶析反応槽内に種晶を充填し、原水およびカルシウム含有液を供給した。装置の運転条件、通水条件は以下の通りである。晶析反応槽としては、200mmφ内径、容積10Lのアクリル製攪拌型反応槽を使用した。種晶として蛍石(フッ化カルシウム)を使用した。被処理水として、フッ素濃度が5000mg−F/Lのフッ化ナトリウム水溶液を調製し使用した。晶析剤すなわちカルシウム含有液として、塩化カルシウム10%水溶液を使用し、処理水中の溶解性カルシウム濃度が100mg/Lとなるように注入した。pH調節剤として水酸化ナトリウム溶液を使用した。反応場のpHとしては、晶析反応槽出口処理水のpHが所定の値になるように原水pHを調整した。通水量は、フッ素負荷=5kg−F/m3/hとした。その他の測定条件は実施例1と同じである。
晶析反応槽を複数段直列に連結した晶析反応装置を用いる態様について検討を行った。晶析処理装置としては、2つの反応槽を連結した装置として図10、3つの反応槽を連結した装置として図11に示される態様の装置を使用した。1つの反応槽により処理を行う比較例1および2については、図10の第1段晶析反応槽として記載される態様の装置を使用した。各晶析反応槽は500mmφ内径×1200mm高さ、容積150Lであった。被処理水として、フッ素濃度が10000mg−F/Lのフッ酸廃水を使用した。フッ酸廃水の流量は1槽式の晶析反応槽(比較例1および2)については300L/h、2槽式の晶析反応槽(実施例4〜7)については600L/h、3槽式の晶析反応槽(実施例8および9)については900L/hとした。晶析剤すなわちカルシウム含有液として、塩化カルシウム10%水溶液を使用した。pH調節剤として水酸化ナトリウム溶液を使用して、各晶析反応槽の反応場のpHを所定の値に調節した。
上記条件で、pH、フッ酸廃水およびカルシウム供給量を変え、晶析反応槽内での滞留時間を変えることなく、フッ素の晶析反応処理を行った。なお、ここでいう処理水フッ素濃度は、SS性のフッ素(フッ化カルシウム)と溶解性のフッ素を含むトータルフッ素濃度である。結果を表1に示す。
2 種晶
3、13 排水供給ライン
4 排水貯留タンク
5、15 カルシウム含有液供給ライン
6 カルシウム含有液貯留タンク
7、17 処理水排出ライン
8 処理水貯留タンク
9 処理水循環ライン
10 pH計
20 攪拌羽根
21 高濃度フッ素反応槽
22 原水供給ライン
23 カルシウム含有液供給ライン
24 pH調節剤供給ライン
25 1次処理水移送ライン
26 1次処理水循環ライン
27 希釈水供給ライン
28 分級脚
29 ペレット洗浄槽
30 中和沈殿槽
31 pH調節剤供給ライン
32 2次処理水循環ライン
33 中間槽
34 処理水槽
41 フッ素反応槽
42 リン反応槽
43 アルミニウム反応槽
44 凝集槽
45 沈殿槽
46 処理水槽
47 ペレット精製槽
48 汚泥溶解槽
49 ペレット洗浄槽
50 中継槽
60 ドラフトチューブ
61 pH調節剤供給ライン
Claims (5)
- フッ素を含む排水とカルシウム含有液とを晶析反応槽に供給し、晶析反応槽内でpH2超かつ3以下の条件下でフッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素の晶析処理方法。
- 排水中のフッ素濃度が500〜10000mg/Lである、請求項1に記載の方法。
- 処理水中の溶解性カルシウム濃度が10〜500mg/Lである、請求項1または2に記載の方法。
- フッ素を含む排水およびカルシウム含有液を晶析反応槽に供給し、晶析反応槽内で、pH2以下の条件下で種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させ、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素の晶析処理方法。
- フッ素とカルシウムとを反応させてフッ化カルシウムを析出させる晶析反応槽が複数段直列に連結された晶析反応装置を用いて、フッ素を含む排水から、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素の晶析処理方法であって、
第1段の晶析反応槽にフッ素を含む排水を供給し、かつ第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の0.6〜0.8倍量(重量比)のカルシウム量となるように、カルシウム含有液を第1段の晶析反応槽に供給して、フッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせ、
第2段以降の晶析反応槽においては、前段からの処理水を晶析反応槽に供給し、第2段以降の晶析反応槽に供給されるカルシウムの合計量が、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の0.2〜0.5倍量(重量比)(ただし、全ての晶析反応槽に供給されるカルシウム量の合計は、第1段の晶析反応槽に供給されるフッ素の1.0〜1.3倍量(重量比)である)となるように、カルシウム含有液を第2段以降の各段の晶析反応槽に供給して、第2段以降の晶析反応槽においてフッ化カルシウムを析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせる、フッ素の晶析処理方法。
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