JP2004314009A - フッ素を含む排水のフッ素晶析処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フッ素を含む排水、カルシウム含有液、および凝集剤を晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させることにより、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素晶析処理方法。該方法により、処理水における白濁の発生を防止でき、排水が高濃度のフッ素を含む場合であっても安定的かつ効率的にフッ素を晶析除去することが可能となる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素を含む排水から、フッ素を晶析除去するフッ素晶析処理方法に関する。特に、本発明は、フッ素晶析処理方法において、晶析反応槽に凝集剤が供給されるフッ素晶析処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場などからの排水の水質については厳しい制限がなされているが、その規制は年々厳しくなる傾向にある。電子産業(特に半導体関連)、発電所、アルミニウム工業などから排出される排水中には、フッ素、リン、重金属という、近年厳しい排水基準が設けられている元素が含まれている場合が多く、これらを排水から効率良く除去することが求められている。
特に半導体製造分野やその関連分野、あるいは各種金属材料、単結晶材料、光学系材料などの表面処理分野などにおいては、多量のフッ素系のエッチング剤が使用されている。このフッ素系エッチング剤としては、主にフッ化水素酸や、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムを主成分とするエッチング剤が用いられており、これらのエッチング剤で処理された材料は多量の洗浄水で洗浄されるため、多量のフッ素含有排水が発生する。
【0003】
カルシウム化合物によるフッ素除去技術は、従来より、排水中のフッ素を除去する技術として広く行われており、カルシウム化合物として水酸化カルシウム(Ca(OH)2)や塩化カルシウム(CaCl2)あるいは炭酸カルシウム(CaCO3)等が使用されている。カルシウム化合物によるフッ素の除去反応は式(I)により示されるように、難溶性のフッ化カルシウムを生成することによりなされる。
Ca2++2F−→CaF2↓ (I)
【0004】
カルシウム化合物によるフッ素除去技術の中で多用されているフッ化カルシウム沈殿法では、フッ素を含む排水に硫酸バン土やポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機系凝集剤、さらには有機系高分子凝集剤を添加することにより、式(I)により生成されたCaF2をフロック化し、当該フロックを沈殿槽で固液分離することにより、排水からフッ素を除去している。しかし、この方法においては、沈殿槽の設置面積が大きいこと、生成される沈殿汚泥の量が多いこと、汚泥の脱水性が良くないこと等が課題となっている。
フッ化カルシウム生成を利用した他のフッ素除去技術としては、フッ素とカルシウムを含有する固体粒子を充填した反応槽に、フッ素を含む排水をカルシウム剤と共に導入して、固体粒子上にフッ化カルシウムを析出させる、いわゆるフッ化カルシウム晶析法がある(特許文献1参照)。当該晶析法においては、一般的にはフッ素を含む排水は反応槽の下部から導入され、固体粒子を流動化させながら上向流で通水されて晶析処理が行なわれ、必要に応じて反応槽流出水が反応槽に循環される。この方法の長所としては、装置設置面積を低減できること、汚泥発生量が少ないこと等が挙げられている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−206485号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、フッ化カルシウム晶析法において良好な晶析処理を行うには、反応槽内でのフッ素とカルシウムの反応条件を、フッ化カルシウムの結晶成長が起こる、準安定域と呼ばれる過飽和状態に制御する必要がある。晶析法では、一般に、カルシウム剤の添加量を調節することにより反応条件の制御が行われるが、排水中のフッ素濃度が変動して急激にフッ素濃度が上昇すると、フッ素とカルシウムの関係は飽和状態である不安定域に入るため、固体粒子上への結晶成長が起こらずに微結晶が生成し処理水が白濁することがある。
また、フッ素とカルシウムの関係を過飽和状態に制御するには、排水中のフッ素濃度が高い程、カルシウム添加量の許容範囲が狭くなるので制御が難しくなり、処理水の白濁が起こり易くなる。
さらに、排水中のフッ素濃度が高い場合、フッ素とカルシウムの関係を過飽和状態にするように適切に制御して処理水の白濁を防止するには、排水に添加可能なカルシウムの量が少なくなるので、処理水中のフッ素濃度が高くなる。このため、晶析処理により得られた処理水中のフッ素を除去する必要が生じ、例えば、処理水をさらにフッ素晶析処理するという2段処理が必要となる場合がある。
このように、安定的に良好なフッ素晶析処理を行うには、排水中のフッ素濃度や晶析反応槽に導入可能なフッ素負荷量に制約が生じていた。
【0007】
本発明者は、カルシウムを用いて、排水中のフッ素を晶析除去する晶析反応系において、当該晶析反応系に凝集剤を添加することにより、排水中のフッ素濃度などをはじめとする排水の性状が変動した場合であっても、晶析処理において白濁が生じにくく、また高濃度のフッ素を含む排水であっても、安定的かつ効率的にフッ素を晶析除去できることを見出した。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フッ素を含む排水をカルシウム含有液を用いてフッ素を晶析除去する晶析反応系において、当該晶析反応系に凝集剤を添加することにより、晶析処理における白濁の発生を低減、防止でき、排水が高濃度のフッ素を含む場合であっても安定的かつ効率的にフッ素を晶析除去できる、フッ素晶析処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は請求項1として、フッ素を含む排水、カルシウム含有液、および凝集剤を晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させることにより、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素晶析処理方法を提供する。
本発明は請求項2として、晶析反応槽に供給される凝集剤の量が、晶析反応槽に供給されるフッ素の重量に対して、重量比で0.0001〜10倍の量である、請求項1記載のフッ素晶析処理方法を提供する。
本発明は請求項3として、凝集剤が無機系凝集剤、有機系高分子凝集剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2記載のフッ素晶析処理方法を提供する。
本発明は請求項4として、有機系高分子凝集剤がアニオン性高分子有機凝集剤である、請求項3記載のフッ素晶析処理方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるフッ素を含む排水は、フッ素を含むものであれば、如何なる由来の排水であっても良く、例えば、半導体関連産業をはじめとする電子産業、発電所、アルミニウム工業などから排出される排水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。排水中に含まれるフッ素は、晶析反応により晶析するのであれば、任意の状態で排水中に存在することが可能である。排水中に溶解しているという観点から、フッ素はイオン化した状態であるのが好ましい。ここでイオン化した状態とは、フッ素イオン(F−)、または、フッ素元素を含む化合物がイオン化したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。排水中に含まれるフッ素は、フッ素イオンの形態で存在するのが好ましい。また、フッ化水素酸は弱酸であるため、pHによっては分子状フッ化水素(HF)の形態で存在していても良い。
フッ素を含む排水に含まれるフッ素の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、10000mg/L以下、より好ましくは、1000mg/L以下である。
また、本発明におけるフッ素を含む排水はフッ素以外の任意の他の成分を、任意の量で含んでいても良い。
【0010】
本発明の方法において使用されるカルシウム含有液としては、カルシウムを含んでおり、フッ素を晶析除去できる液であれば、任意のカルシウム化合物を含む液を使用することができる。また、カルシウム含有液を構成する液体媒体としては、本発明の目的に反しない限りは任意の物質が使用可能であり、好ましくは水である。カルシウム含有液においてカルシウムの供給源となるカルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、カルシウム含有液は、これらカルシウム化合物の1種類から調製されるものであっても良いし、2以上の化合物から調製されるものであっても良い。さらに、カルシウム含有液は、カルシウムが完全に液体媒体中に溶解された溶液状態であっても良いし、カルシウム化合物の全部または一部が固体として残存するスラリーの状態でも良い。カルシウム含有液中のカルシウムの濃度は、排水中のフッ素濃度、晶析反応槽の処理能力、循環される処理水量等に応じて適宜設定される。
【0011】
フッ化カルシウムを晶析させる場合におけるカルシウムの供給量は、晶析反応槽に供給されるフッ素に対して、少なくとも、モル比でフッ素:カルシウム=2:1となる量、すなわち、重量比でフッ素:カルシウム=1:(20/19) (式II)であることが望まれる。フッ化カルシウムを晶析させるためには、式IIの重量比で要求されるカルシウム量に対して、カルシウムが過剰に存在していることが好ましく、式IIの重量比で要求されるカルシウム量に対して、晶析反応槽内での濃度として、200〜600mgCa/L過剰になるようにカルシウムを供給することがより好ましい。カルシウムの供給量は、フッ素晶析処理により生じた処理水中のカルシウム濃度を指標として制御することができ、すなわち、処理水中に残存するカルシウム濃度が200〜600mgCa/Lとなるように制御することが好ましい。
【0012】
本発明における凝集剤とは、微細な粒子を凝集させる作用を有する物質であり、後述のような例を挙げることができる。特に、フッ化カルシウムをはじめとする難溶性フッ素化合物の微細粒子を凝集させ得る物質をいう。凝集剤としては、無機系凝集剤および有機系高分子凝集剤が挙げられる。本発明の方法においては、単一の凝集剤が使用されても良いし、複数の凝集剤が使用されても良い。複数の凝集剤が使用される場合には、無機系凝集剤と有機系高分子凝集剤を組合わせて使用しても良い。
【0013】
無機系凝集剤とは、無機化合物からなる凝集剤であり、例えば、アルミニウム、鉄などの多価金属元素を含む無機化合物が挙げられる。好ましくは、無機系凝集剤としては、硫酸アルミニウム(硫酸バン土)、アルミン酸ナトリウムおよびポリ塩化アルミニウム(PAC)等をはじめとするアルミニウム元素含有化合物、並びに硫酸鉄(II)、塩化鉄(III)および硫酸鉄(III)等をはじめとする鉄元素含有化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、無機系凝集剤としては、上述の無機化合物をはじめとする市販の凝集剤を使用することができるが、これに限定されるものではなく、本発明における凝集剤として機能し得るのであれば、アルミニウム、鉄などを含む排水、処理水などの水溶液を凝集剤として使用することも可能である。
【0014】
有機系高分子凝集剤とは、高分子の有機化合物からなる凝集剤であり、アニオン性高分子有機凝集剤、ノニオン性高分子有機凝集剤およびカチオン基を有する高分子有機凝集剤を挙げることができる。
本発明に使用することができるアニオン性高分子有機凝集剤としては、例えば、アルギン酸またはその塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸またはその塩の重合物、アクリル酸またはその塩とアクリルアミドとの共重合物、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩の共重合物、アクリル酸またはその塩とアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩の3元共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。アニオン性高分子有機凝集剤の重量平均分子量の範囲は特に限定されるものではないが、500万〜2000万の範囲が好ましい。これらアニオン性高分子有機凝集剤は、単独でまたは混合物として使用することができる。
【0015】
本発明に使用することができるノニオン性高分子有機凝集剤としては、例えば、アクリルアミドの重合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ノニオン性高分子有機凝集剤の重量平均分子量の範囲は特に限定されるものではないが、500万〜2000万の範囲が好ましい。これらノニオン性高分子有機凝集剤は、単独でまたは混合物として使用することができる。
【0016】
本発明に使用することができるカチオン基を有する高分子有機凝集剤とは、分子構造中にカチオン性を有する基を含む高分子有機凝集剤であり、カチオン性有機凝結剤、カチオン性高分子有機凝集剤および両性高分子有機凝集剤が挙げられる。
カチオン性有機凝結剤とは、分子構造中にカチオン性を有する基を含む有機凝結剤であり、例えば、ジメチルアミンとエピクロルヒドリンとの重縮合物、ポリジメチルアリルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミドとホルマリンとの重縮合物、ジメチルアミノエチルメタクリレートとスチレンとの共重合物、メラミンとホルマリンとの重縮合物あるいはこれらを構成するモノマーとアクリルアミドなどのノニオン性モノマーからなる共重合物などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。カチオン性有機凝結剤の重量平均分子量の範囲は特に限定されるものではないが、数万〜数百万の範囲が好ましい。これらカチオン性有機凝結剤は単独でまたは混合物として使用することができる。
【0017】
本発明におけるカチオン性高分子有機凝集剤とは、例えば、キトサン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩および/または4級塩(例えば、塩化メチル4級塩)の重合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩および/または4級塩(例えば、塩化メチル4級塩)とアクリルアミドの共重合物、N−ビニルアクリルアミジン塩単位含有高分子有機凝集剤(例えば、特開平5−192513号、特開平8−155500号、特開平8−243600号、特開平9−87323号などに開示される高分子有機凝集剤)、ポリビニルイミダゾリン酸またはその塩、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。カチオン性高分子有機凝集剤の重量平均分子量の範囲は特に限定されるものではないが、数百万〜1000万の範囲が好ましい。これらカチオン性高分子有機凝集剤は単独でまたは混合物として使用することができる。
【0018】
本発明における両性高分子有機凝集剤としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩および/または4級塩(例えば、塩化メチル4級塩)等から選択される1種以上のカチオン性単量体と、アクリル酸およびその塩類等から選択される1種以上のアニオン性単量体とアクリルアミドとの共重合物などの両性高分子有機凝集剤などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。両性高分子有機凝集剤の重量平均分子量の範囲は特に限定されるものではないが、数百万〜1000万の範囲が好ましい。これら両性高分子有機凝集剤は、単独でまたは混合物として使用することができる。
【0019】
本発明の1態様は、フッ素を含む排水、カルシウム含有液および凝集剤を晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させることにより、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素晶析処理方法である。
図1に上記態様のフッ素晶析処理方法に使用可能な晶析反応装置の概略図を示し、これに基づいて、本発明を詳述する。晶析反応装置は、晶析反応が行われ、フッ素が低減された処理水を排出する晶析反応槽1と、フッ素を含む排水を晶析反応槽1に供給する排水供給手段と、カルシウム含有液を晶析反応槽1に供給するカルシウム含有液供給手段とを具備し、任意に、該晶析反応槽から排出される処理水の少なくとも一部を晶析反応槽1に返送する処理水循環手段とを具備する。晶析反応槽1の種晶充填部2には種晶が充填されており、該種晶の表面上に、排水中に含まれるフッ素とカルシウムとの反応物であるフッ化カルシウムを析出させてフッ化カルシウムペレットを形成させることにより、フッ素が低減された処理水が排出される。晶析反応槽1は前記機能を有するものであれば、長さ、内径、形状などについては、任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。
【0020】
晶析反応槽1に充填される種晶の充填量は、フッ素を晶析反応により除去できるのであれば特に限定されるものではなく、排水中のフッ素濃度、カルシウム含有液中のカルシウム濃度、また、晶析反応装置の運転条件等に応じて適宜設定される。晶析反応装置においては、晶析反応槽1内に上向流を形成し、該上向流によってペレットが流動するような流動床の晶析反応槽1が好ましいので、種晶は流動可能な量で晶析反応槽1に充填されるのが好ましい。
種晶は、本発明の目的に反しない限りは、任意の材質が可能であり、例えば、ろ過砂、活性炭、およびジルコンサンド、ガーネットサンド、サクランダム(商品名、日本カートリット株式会社製)などをはじめとする金属元素の酸化物からなる粒子、並びに、晶析反応による析出物であるフッ化カルシウムからなる粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。種晶上で晶析反応が起こりやすいという点、また、生成するペレットから、より純粋なフッ化カルシウムを回収できるという観点から、フッ化カルシウム(蛍石)が種晶として使用されるのが好ましい。種晶の形状、粒径は、晶析反応槽1内での流速、フッ素濃度およびカルシウム濃度等に応じて適宜設定され、本発明の目的に反しない限りは特に限定されるものではない。
【0021】
排水供給手段は、フッ素を含む排水を晶析反応槽1に供給できるものであれば任意の態様が可能である。図1の態様においては、晶析反応槽1に連結された排水供給ライン3から、フッ素を含む排水が晶析反応槽1に供給される。排水中のフッ素濃度を一定にする等のために、排水供給ライン3には、排水を一旦貯留することができる排水貯留タンク4が連結されていても良い。
カルシウム含有液供給手段は、カルシウム含有液を晶析反応槽1に供給できるものであれば任意の態様が可能である。図1の態様においては、晶析反応槽1に連結されたカルシウム含有液供給ライン5から、カルシウム含有液が晶析反応槽1に供給される。
【0022】
排水供給ライン3およびカルシウム含有液供給ライン5は晶析反応槽1の任意の部分に接続することができる。本発明に使用可能な晶析反応装置においては、晶析反応槽1内に上向流を形成すると効率的に晶析反応を行うことができるという観点から、排水供給ライン3およびカルシウム含有液供給ライン5は晶析反応槽1の下部、特に底部に接続されるのが好ましい。また、図1の態様においては、排水供給ライン3およびカルシウム含有液供給ライン5はそれぞれ1つであるが、これに限定されるものではなく、これらが複数設けられていても良い。
【0023】
晶析反応槽1は、晶析反応により、フッ素が低減された処理水を該晶析反応槽1の外部に排出する。処理水は、晶析反応槽1における液体の流れに従って任意の部分から排出される。晶析反応槽1内で上向流が形成される場合には、晶析反応槽1の上部から処理水が排出される。図1の態様では、晶析反応槽1の上部から排出される処理水は、処理水排出ライン6を通って最終的に系外に排出される。図1の態様においては、処理水排出ライン6には処理水貯留タンク7が介装されているがこの設置は任意であり、また、通常の排水処理で使用されるpH測定手段、pH調整手段などその他の手段を設けることも可能である。
【0024】
図1の晶析処理装置は、晶析反応槽1から排出される処理水の少なくとも一部を該晶析反応槽1に返送する処理水循環手段を有する。処理水循環手段としては、処理水の少なくとも一部を晶析反応槽1に返送できるものであれば任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。図1の態様においては、処理水循環手段として、処理水貯留タンク7と晶析反応槽1を連結する処理水循環ライン8が設けられており、該処理水循環ライン8には処理水移送のためのポンプが介装されている。処理水循環手段は、処理水を晶析反応槽1に循環させることにより、晶析反応槽1内に供給された排水を希釈すると共に、カルシウム含有液と排水を混合し、さらに、晶析反応槽1内で所定の流れ、好ましくは上向流を形成させることができる。よって、晶析反応槽1内で上向流が形成される場合には、図1のように、処理水循環ライン8は晶析反応槽1の下部、特に底部に接続されるような態様が好ましい。
また、図1の態様において処理水貯留タンク7は、循環される処理水と、系外に排出される処理水との分岐のための手段として機能し、処理水循環手段を形成しているが、処理水循環手段の形成はこの態様に限定されるものではなく、処理水排出ライン6から処理水循環ライン8が直接分岐するような態様など、任意の態様が可能である。
【0025】
本発明の方法においては、晶析反応槽においてフッ素とカルシウムによる晶析反応が行われる際に、凝集剤が晶析反応槽に供給される。凝集剤の晶析反応槽への供給は、晶析反応槽においてフッ素とカルシウムによる晶析反応が行われている際に凝集剤が晶析反応槽に供給されるのであれば、任意の態様により供給することが可能である。なお、一般に、凝集剤は水に溶解された水溶液の状態で供給されるが、この態様に限定されるものではない。
例えば、晶析反応槽に供給される前のフッ素を含む排水に凝集剤を添加、混合して、凝集剤を含む排水を晶析反応槽に供給する態様により、凝集剤が晶析反応槽に供給されても良い。この場合のフッ素を含む排水への凝集剤の添加は、排水貯留タンク4に凝集剤供給ライン9を接続し、当該凝集剤供給ライン9から凝集剤を排水貯留タンク4に供給することにより、排水貯留タンク4内でフッ素を含む排水と凝集剤とが混合される態様であっても良い。また、排水供給ライン3に凝集剤供給ライン9aが接続され、排水供給ライン3においてフッ素を含む排水と凝集剤が混合される態様であっても良い。
【0026】
また、他の態様としては、晶析反応槽1に凝集剤供給ライン9bを直接接続し、当該凝集剤供給ライン9bから凝集剤を晶析反応槽1内に直接供給するような態様も可能である。
さらに、他の態様としては、晶析反応槽1に循環される処理水に凝集剤を添加して、循環される処理水と共に凝集剤を晶析反応槽1に供給する態様も可能である。この場合、例えば、処理水循環ライン8に凝集剤供給ライン9cを接続し、処理水循環ライン8において処理水と凝集剤が混合され、晶析反応槽1に供給される態様であっても良い。また、処理水貯留タンク7に凝集剤供給ライン9dを接続し、当該凝集剤供給ライン9dから凝集剤を処理水貯留タンク7に供給することにより、処理水貯留タンク7内で処理水と凝集剤とが混合され、凝集剤を含む処理水を晶析反応槽1に供給する態様であっても良い。
凝集剤を晶析反応槽1に供給する態様として上述の態様を例示したが、これらに限定されるものではなく、また、本発明においては、これらのいずれかの態様だけでなく、これら複数の態様を組合わせた態様も可能である。
【0027】
晶析反応槽に供給される凝集剤の量は、装置の仕様や形状、排水中のフッ素含有量、その他排水の性状、使用される凝集剤の種類、晶析反応槽におけるフッ素負荷、晶析反応槽内の温度、pHなど諸条件によって異なり、特に限定されるものではない。凝集剤の供給量が少ない場合には、処理水の白濁の抑制という本発明の効果が充分に達成できない場合があり、並びに供給量が多い場合には、凝集剤自身による凝集により濁度上昇をもたらす場合があり、また晶析反応槽内で形成されるフッ化カルシウムのペレットの純度が低下して、ペレットをフッ酸製造の原料やセメント材料として再利用する際の資源としての価値が低下する場合がある。このような観点から、好ましくは、晶析反応槽に供給される凝集剤の量は処理水の白濁を低減、防止できる量であり、より好ましくは、晶析反応槽に供給される凝集剤の量が、晶析反応槽に供給されるフッ素の重量に対して、重量比で0.0001〜10倍の量であり、さらにより好ましくは、重量比で0.001〜1倍の量である。
例えば、フッ素を含む排水に凝集剤を添加する態様の場合には、フッ素濃度が1000mgF/Lの排水中に、凝集剤を10mg/Lとなるように添加すれば、晶析反応槽内でのフッ素濃度にかかわらず、フッ素の重量負荷に対して0.01の重量比で凝集剤を添加したことになる。
【0028】
凝集剤が晶析反応槽に供給される態様として、上述のように、凝集剤がフッ素を含む排水と混合され、凝集剤を含む排水が晶析反応槽に供給される態様、凝集剤が直接晶析反応槽に供給される態様、および凝集剤が循環する処理水と混合され、凝集剤を含む処理水が晶析反応槽に循環供給される態様が挙げられる。これら凝集剤の晶析反応槽への供給において、凝集剤自身が凝集しない、すなわち、凝集剤自体による浮遊物質(SS)発生、濁度の上昇を生じさせないように、凝集剤濃度だけでなく、凝集剤が添加される対象(例えば、フッ素を含む排水、晶析反応槽内、処理水など)におけるpHが制御されるのが望ましい。例えば、無機系凝集剤として、硫酸鉄(II)、塩化鉄(III)および硫酸鉄(III)等をはじめとする鉄元素含有化合物からなる群から選択される化合物が使用される場合には、鉄の濃度条件にもよるが、当該凝集剤が添加される対象におけるpHが5以下であるのが好ましく、pHが4以下であるのがより好ましい。
【0029】
理論に拘束されるのを望むものではないが、本発明においては、フッ素とカルシウムとの反応によりフッ化カルシウムが晶析する場合に、当該反応系に凝集剤を存在させることにより、以下の理論により本発明の有利な効果を奏するものと考えられ、これを、縦軸をフッ素濃度、横軸をカルシウム濃度とした場合のフッ化カルシウムの溶解度曲線および過溶解度曲線を示すグラフ(図2)を用いて説明する。
図2に示されるように、凝集剤を添加しない場合には、フッ化カルシウムの過溶解度曲線を越えた範囲(不安定域)では、フッ化カルシウムは種晶上に結晶成長せずに微結晶となり、処理水が白濁することとなる。なお、過溶解度曲線を境に、全てが微結晶となり白濁の原因となるわけではなく、過溶解度曲線から不安定域側に離れるにつれて微結晶生成の割合が多くなるものと考えられる。
本発明の方法によると、本来微結晶として形成され、存在するフッ化カルシウムが凝集剤の効果により種晶上に付着し、すなわち種晶上にフッ化カルシウムが析出することとなると考えられる。このため、良好に晶析反応を行うことができるフッ素濃度領域およびカルシウム濃度領域が大幅に増加するので、晶析反応槽内のフッ素が高濃度となる場合であっても、安定的かつ効果的にフッ素晶析処理を行うことが可能になると考えられる。また、排水中のフッ素濃度が変動して急激にフッ素濃度が上昇しても、処理水の白濁を抑制、防止することが可能になると考えられる。この良好に晶析反応を行うことができるフッ素濃度領域およびカルシウム濃度領域の増大は、図2においては、過溶解度曲線が上方、右方向にシフトすることにより示される。
以下、実施例で本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
以下の実施例において使用された有機系高分子凝集剤の成分は以下の通りである。オルフロックCL−621(オルガノ株式会社製)ジメチルアミンとエピクロルヒドリンの重縮合物;オルフロックOX−606(オルガノ株式会社製)ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の重合物;オルフロックOA−34(オルガノ株式会社製)アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩の共重合物;オルフロックAX−500S(オルガノ株式会社製)アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物;オルフロックOA−8(オルガノ株式会社製)アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物。
【0031】
実施例1
フッ化ナトリウムを、フッ素濃度750mgF/Lとなるように精製水に溶解したものを模擬排水として、図1に示す態様のフローで、フッ素の晶析試験を行った。模擬排水は、排水貯留タンクにpH調整剤(塩酸またはNaOH)を添加することにより、pH4または7に調整された。晶析反応槽への凝集剤の供給は、排水貯留タンクにおいて模擬排水と凝集剤を混合しpH調整してから、これを晶析反応槽に供給することにより行われた。凝集剤として、酸化アルミニウム(Al2O3)として、10〜11%の濃度を有する市販のポリ塩化アルミニウム(PAC)原液を使用し、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)は、1、10または100mg・原液/L(すなわち、酸化アルミニウムとして、それぞれ、約0.1、1または10mg・Al2O3/L)であった。
晶析反応槽として、粒径約0.1mmの天然フッ化カルシウム(蛍石)種晶150mLが充填された、高さ2.5m、容量0.8Lの円柱型アクリルカラムを用いた。晶析反応槽への模擬排水の通液は、流量2L/hrであり、処理水の循環通液量は、流量10L/hrであった。処理水中の残留カルシウム濃度が300〜500mgCa/Lとなるように、カルシウム含有液として10%塩化カルシウム水溶液を晶析反応槽に供給した。
通液開始から5時間後の処理水について、処理水pH、処理水中の溶解性フッ素濃度、処理水の濁度を測定した。なお、溶解性フッ素濃度はイオンクロマト法により分析を行い、濁度は積分球濁度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0032】
実施例2
模擬排水のpHを4に調整し、凝集剤として塩化鉄(III)(FeCl3)を用い、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)が、1、10または100mg/Lであったことを除き、実施例1と同じ方法でフッ素の晶析試験を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
無機系凝集剤であるPACまたは塩化鉄(III)をフッ化カルシウムの晶析反応系に添加することにより、処理水の濁度の低下が認められた。処理水の濁度は、凝集剤であるPACまたは塩化鉄(III)の添加量の増加に応じて低下した。ただし、模擬排水のpH4で、PAC原液添加量100mg・原液/Lの場合には、PAC原液添加量10mg・原液/Lの場合と比較して濁度が若干増加したが、これは、PACを排水に添加した時点でSSが発生し、当該SSが処理水中にリークしたためと考えられる。
なお、排水のpHが4の場合には、pH7の場合と比較して、処理水中の溶解性フッ素濃度が高く、濁度が低かったが、これは、排水のpHが4の場合における処理水pHが2.6〜2.8と強酸性であり、フッ化カルシウムの溶解度が高くなったためと考えられる。
以上のことから、フッ化カルシウムの晶析反応系に無機系凝集剤を添加することにより、処理水の濁度を低減できることが明らかとなった。
【0035】
実施例3
模擬排水のpHを4、7または10に調整し、凝集剤として、有機系高分子凝集剤であるオルフロックCL−621を使用し、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)が、10mg/Lであったことを除き、実施例1と同じ方法でフッ素の晶析試験を行った。結果を表2に示す。
【0036】
実施例4
模擬排水のpHを4、7または10に調整し、凝集剤として、有機系高分子凝集剤であるオルフロックOX−606を使用し、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)が、2mg/Lであったことを除き、実施例1と同じ方法でフッ素の晶析試験を行った。結果を表2に示す。
【0037】
実施例5
模擬排水のpHを4、7または10に調整し、凝集剤として、有機系高分子凝集剤であるオルフロックAX−500Sを使用し、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)が、2mg/Lであったことを除き、実施例1と同じ方法でフッ素の晶析試験を行った。結果を表2に示す。
【0038】
実施例6
模擬排水のpHを4、7または10に調整し、凝集剤として、有機系高分子凝集剤であるオルフロックOA−8を使用し、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)が、2mg/Lであったことを除き、実施例1と同じ方法でフッ素の晶析試験を行った。結果を表2に示す。
【0039】
実施例7
模擬排水のpHを4、7または10に調整し、凝集剤として、有機系高分子凝集剤であるオルフロックOA−34を使用し、模擬排水中の凝集剤の濃度(凝集剤の添加量)が、0.2または2mg/Lであったことを除き、実施例1と同じ方法でフッ素の晶析試験を行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
排水のpHが4、7または10のいずれの場合であっても、各種有機系高分子凝集剤を排水と混合し、フッ化カルシウムの晶析反応系に添加することにより、処理水の濁度の低下が認められた。また、濁度の低下と共に、処理水中の溶解性フッ素濃度の低減も認められた。
以上のことから、フッ化カルシウムの晶析反応系に有機系高分子凝集剤を添加することにより、処理水の濁度および処理水中の溶解性フッ素濃度を低減できることが明らかとなった。
【0042】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明は、フッ素を含む排水をカルシウム含有液を用いてフッ素を晶析除去する晶析反応系において、当該晶析反応系に凝集剤を添加することにより、処理水における白濁の発生を低減、防止でき、排水が高濃度のフッ素を含む場合であっても安定的かつ効率的にフッ素を晶析除去できるという有利な効果を有する。また、本発明は、上述の方法において、凝集剤として有機系高分子凝集剤を使用することにより、処理水における白濁の発生を低減、防止できるだけでなく、処理水中の溶解性フッ素濃度も低減でき、排水が高濃度のフッ素を含む場合であっても安定的かつ効率的にフッ素を晶析除去できるという有利な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の晶析処理方法に使用可能な晶析処理装置の1態様を示す概略図である。
【図2】図2は、フッ化カルシウムの溶解度曲線および過溶解度曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
1 晶析反応槽
2 種晶充填部
3 排水供給ライン
4 排水貯留タンク
5 カルシウム含有液供給ライン
6 処理水排出ライン
7 処理水貯留タンク
8 処理水循環ライン
9、9a、9b、9c、9d 凝集剤供給ライン
Claims (4)
- フッ素を含む排水、カルシウム含有液、および凝集剤を晶析反応槽に供給し、該晶析反応槽内の種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させることにより、フッ素が低減された処理水を生じさせるフッ素晶析処理方法。
- 晶析反応槽に供給される凝集剤の量が、晶析反応槽に供給されるフッ素の重量に対して、重量比で0.0001〜10倍の量である、請求項1記載のフッ素晶析処理方法。
- 凝集剤が無機系凝集剤、有機系高分子凝集剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2記載のフッ素晶析処理方法。
- 有機系高分子凝集剤がアニオン性高分子有機凝集剤である、請求項3記載のフッ素晶析処理方法。
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