本発明は、トナーを含む現像剤、現像装置、画像形成装置および画像形成方法を提供する。
[トナー]
本発明において用いるトナーは、顔料と自己分散性樹脂とを含む。
顔料としては、この分野で常用される無機顔料および有機顔料を使用できる。無機顔料としては、たとえば、各種カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。有機顔料としては、たとえば、ブルー顔料、ブラウン顔料、シアン顔料、グリーン顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、レッド顔料、イエロー顔料などが挙げられる。具体的には、アントラキノン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、ピレリン系顔料、ジアゾ系顔料、モノアゾ系顔料、ピラントロン系顔料、ペリレン系顔料、複素環式イエロー顔料、キナクリドン系顔料、インジゴイド系顔料、チオインジゴイド系顔料などが挙げられ、これらの中でも、アントラキノン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、ピレリン系顔料、複素環式イエロー顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴイド系顔料などが好ましい。アントラキノン系顔料としては、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194(ペリノンレッド)、ピグメントレッド216(臭素化ピラントロンレッド)、ピグメントレッド226(ピラントロンレッド)などが挙げられる。フタロシアニンブルー系顔料としては、銅フタロシアニンブルー、その誘導体であるピグメントブルー15などが挙げられる。ピレリン系顔料としては、ピグメントレッド123(ベルミリオン)、ピグメントレッド149(スカーレット)、ピグメントレッド179(マルーン)、ピグメントレッド190(レッド)、ピグメントバイオレット、ピグメントレッド189(イエローシェードレッド)、ピグメントレッド224などが挙げられる。キナクリドン系顔料としては、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット42などが挙げられる。チオインジゴイド系顔料としては、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、ピグメントレッドバイオレット38などが挙げられる。
顔料としては、前述の顔料に親水性基を結合させた自己分散性顔料を用いてもよい。親水性基としてはイオン性基が好ましく、その中でもアニオン性基が特に好ましい。アニオン性の親水性基の具体例としては、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの親水性基はアンモニウム塩、金属塩などの塩の形態で存在してもよい。顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。2種以上併用の場合、同色系顔料を併用してもよいし、異色系顔料を併用してもよい。これらの顔料の中から、水に対する分散性の良好な顔料を適宜選択して用いるのが好ましい。本発明で使用するトナーにおける顔料の含有量は、要求されるトナー特性に応じて広い範囲から選択できるけれども、自己分散性樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部である。0.1重量部未満では、形成される画像の画像濃度が不充分になるおそれがあり、一方20重量部を超えると、記録媒体上での顔料分散性が低下し、色再現性などが不充分な画像が形成されるおそれがある。
自己分散性樹脂としては、本発明における自己分散性ポリエステルまたは該自己分散性ポリエステルとそれ以外の自己分散性樹脂との混合物を使用できる。本発明における自己分散性ポリエステルは、酸価が1〜30mgKOH/gである。自己分散性ポリエステルの酸価が1mgKOH/g未満であると、後述する自己分散性ポリエステル水分散液中における自己分散性ポリエステル粒子の分散性が不充分になる。このような自己分散性ポリエステル水分散液を用いてトナーを製造すると、トナーの性能がばらつき、たとえば温度、湿度などの環境条件によって帯電性能がばらつく。また、このような自己分散性ポリエステルを用いて製造されたトナーは、帯電性能が十分でない。自己分散性ポリエステルの酸価が30mgKOH/gを超えると、自己分散性ポリエステル水分散液中における分散性は良好であっても、環境条件によってトナーの帯電性能がばらつく。したがって自己分散性ポリエステルの酸価を、1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下とした。自己分散性ポリエステルの酸価は、より好ましくは5mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは10mgKOH/g以上20mgKOH/g以下である。
本発明における自己分散性ポリエステルとしては、たとえば、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸およびその酸無水物から選ばれる1または2種以上を含むカルボン酸化合物と、多価アルコールを含むアルコール化合物とを重縮合させることによって得られる重縮合体が挙げられる。この自己分散性ポリエステルを、以後「自己分散性ポリエステル(A)」と称す。
自己分散性ポリエステル(A)の酸成分モノマーであるカルボン酸化合物には、1分子中に3個またはそれ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸(以後「3価カルボン酸」と称す)を使用し、さらに必要に応じて、ジカルボン酸、モノカルボン酸などを使用する。特に、3価カルボン酸とジカルボン酸とを併用するのが好ましい。3価カルボン酸としては公知のものを使用でき、たとえば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、これらの酸無水物などが挙げられる。3価カルボン酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ジカルボン酸としては公知のものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジプロピオン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェン酸、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸、フェニレンジアクリル酸などの芳香族不飽和ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの酸無水物などが特に好ましい。ジカルボン酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。モノカルボン酸としては、たとえば、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、これらの低級アルキルエステル、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャルブチル安息香酸、ターシャルブチルナフタレンカルボン酸、これらの酸無水物などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
カルボン酸化合物として3価カルボン酸とジカルボン酸とを併用する場合、好ましくはカルボン酸化合物全量の70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のジカルボン酸を使用すればよい。このとき、ジカルボン酸はテレフタル酸とイソフタル酸とで構成するのが好ましい。テレフタル酸とイソフタル酸との使用割合は特に制限はないけれども、テレフタル酸を好ましくはジカルボン酸全量の40〜95モル%、さらに好ましくは60〜95モル%、特に好ましくは70〜90モル%使用し、残部をイソフタル酸とすればよい。さらに具体的な使用割合の例を挙げれば、3価カルボン酸の使用割合を、好ましくはカルボン酸化合物全量の0.5〜8モル%、さらに好ましく0.5〜6モル%とし、残部をジカルボン酸とするのがよい。また、カルボン酸化合物として3価カルボン酸とジカルボン酸とモノカルボン酸とを併用する場合は、好ましくはカルボン酸化合物全量の70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のジカルボン酸を使用すればよい。なお、ジカルボン酸をテレフタル酸とイソフタル酸とで構成する場合は、前記と同じ使用割合でよい。
自己分散性ポリエステル(A)のアルコール成分モノマーであるアルコール化合物には、多価アルコール、モノアルコールなどを使用する。多価アルコールとしては公知のものを使用でき、たとえば、脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。脂肪族多価アルコ−ルとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエルスリトールなどのトリオール、テトラオールなどが挙げられる。脂環族多価アルコールとしては、たとえば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどが挙げられる。芳香族多価アルコールとしては、たとえば、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。さらに、ポリエステルポリオールとしては、たとえば、ε−カプロラクトンなどのラクトンを開環重縮合して得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオール、脂環族ジオールなどが好ましく、それらの中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオールなどが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの脂肪族ジオールが特に好ましい。モノアルコールとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコールなどが挙げられる。多価アルコールおよびモノアルコールはそれぞれ1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多価アルコールは、アルコール化合物全量の50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上の割合で使用し、残部をモノアルコールとするのがよい。なお、多価アルコールとしてエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールを用いる場合、その使用割合はアルコール化合物全量の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上とするのがよい。
自己分散性ポリエステル(A)は、たとえば、3価カルボン酸を除くカルボン酸化合物とアルコール化合物とを重縮合させた後、得られる重縮合物と3価カルボン酸とを反応させることによって製造できる。重縮合反応は、公知の方法に従って実施できる。たとえば、3価カルボン酸を除くカルボン酸化合物とアルコール化合物との混合物を、エステル交換触媒またはエステル化触媒の存在下に加熱すればよい。3価カルボン酸を除くカルボン酸化合物とアルコール化合物との使用割合は特に制限されず、得ようとするポリエステルの物性に応じて適宜選択すればよい。エステル交換触媒としては公知のものを使用でき、たとえば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムなどの金属酢酸塩、酸化亜鉛、酸化アンチモンなどの金属酸化物、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。エステル化触媒としても公知のものを使用でき、たとえば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドなどの有機金属化合物、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。加熱は2段階で行われ、たとえば、150〜220℃程度の温度下に1〜6時間程度加熱し、さらに230〜260℃程度の温度下かつ好ましくは減圧下に1〜3時間程度加熱すればよい。このようにして得られる重縮合物はそのままカルボキシル基導入反応に供し得る。次に、前記で得られる重縮合物と3価カルボン酸との反応は、たとえば、好ましくは窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中にて、該重縮合物と3価カルボン酸との混合物を加熱することによって行われる。加熱は、たとえば180〜220℃程度の温度下に行われ、0.5〜3時間程度で終了する。これによって、重縮合物の主鎖にカルボキシル基が導入された自己分散性ポリエステル(A)が得られる。この反応において、3価カルボン酸は塩の形態で用いることもできる。そのとき、3価カルボン酸塩のカウンターカチオンは、1価のカチオンであることが好ましい。自己分散性ポリエステル(A)を、必要に応じて、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物などで中和することによって、カルボキシル基をアンモニウム塩、アルカリ金属塩などの形態で存在させてもよい。このようにして得られる自己分散性ポリエステル(A)は、さらに酸洗浄を施して、疎水化することもできる。
自己分散性ポリエステル(A)は、主に2価以上の多価カルボン酸と2価以上の多価アルコールとを縮重合させて合成されることから、分子量分布が広く、ゲル化を起こし難い樹脂になっており、クロロホルム不溶分が0.5重量%以下、好ましくは0.25重量%以下であり、かつ、酸価が40mgKOH/g以下、好ましくは30mgKOH/g以下である。自己分散性ポリエステル(A)の中でも、酸価が1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である自己分散性ポリエステルが、本発明における自己分散性ポリエステルとして用いられる。また、自己分散性ポリエステル(A)の中でも、ガラス転移温度が好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは45〜80℃、特に好ましくは50〜75℃であるか、または、軟化点が好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは85〜150℃、特に好ましくは85〜145℃であるものを用いるのがよい。ガラス転移温度が40℃または軟化点が80℃より低いと、得られるトナーがブロッキングを起こし易くなり、トナーの保存安定性が低下するおそれがある。一方、ガラス転移温度が80℃または軟化点が150℃を超えると、得られるトナーの定着性が低下するとともに、記録媒体に転写されるトナー像を定着させるための定着ロールを高温に加熱する必要が生じるため、定着ロールの材質および転写される記録媒体の材質が制限される。また、自己分散性ポリエステル(A)は、得られるトナーをカラートナーとして使用すること、OHPシートなどへの定着性を向上させること、オフセット領域が高温側にシフトしてトナーの記録媒体への定着不良が起こるのを防止することなどを考慮すると、分子量が好ましくは2000〜200000、さらに好ましくは2000〜50000であり、数平均分子量が好ましくは2000〜30000、さらに好ましくは3000〜25000、特に好ましくは3000〜20000である。分子量が200000を超えると自己分散性が損なわれるおそれがあり、2000未満ではトナーとしての耐久性が低下するおそれがある。
自己分散性樹脂における自己分散性ポリエステル(A)の含有量は、好ましくは自己分散性樹脂全量の50重量%以上、さらに好ましくは自己分散性樹脂全量の80重量%以上、特に好ましくは自己分散性樹脂全量の90重量%以上である。50重量%未満では、得られるトナーが色再現性、記録媒体に対する接着性などの点で充分満足できないものになるおそれがある。もちろん、自己分散性樹脂の全量を自己分散性ポリエステル(A)にしても差し支えない。
本発明における自己分散性ポリエステルとしては、自己分散性ポリエステル(A)に限定されず、酸価が1〜30mgKOH/gである自己分散性ポリエステルであれば用いることができる。自己分散性ポリエステル(A)以外の自己分散性ポリエステルとしては、たとえば、ポリエステルの主鎖および側鎖の少なくともいずれか一方にスルホン基およびリン酸基などの親水性基を結合させたもの、およびポリエステルにアクリル酸を共重合したものが挙げられる。スルホン酸基は、トナーの帯電性能に悪影響を及ぼすおそれがあるので、量的な面を考慮して導入するのがよい。
自己分散性ポリエステル以外の自己分散性樹脂としては、水中で分散状態になり得る樹脂であれば特に制限されず、自己分散性ビニル系共重合体樹脂、自己分散性ポリウレタン、自己分散性エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの自己分散性樹脂は、主鎖および側鎖の少なくともいずれか一方に親水性基が結合している。これらの自己分散性樹脂の主鎖または側鎖に結合する親水性基としてはイオン性基が好ましく、その中でもアニオン性基が特に好ましい。その具体例としては、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基などが挙げられる。これらの基はアンモニウム塩、金属塩などの塩の形態で存在してもよい。なお、スルホン酸基はトナーの帯電性能に悪影響を及ぼすおそれがあるので、量的な面を考慮して自己分散性樹脂の主鎖および側鎖の少なくともいずれか一方に導入するのがよい。自己分散性ポリエステル以外の自己分散性樹脂を用いる場合は、該樹脂と自己分散性ポリエステルとの合計量が100、すなわち自己分散性ポリエステルの所定量と、残部が自己分散性ポリエステル以外の自己分散性樹脂で、全体として100になるように用いればよい。
本発明で使用するトナーは、顔料および自己分散性樹脂とともに、ワックスを含むことができる。ワックスとしては公知のものを使用でき、たとえば、カルナウバワックスおよびライスワックスなどの天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックスおよびフィッシャートロプッシュワックスなどの合成ワックス、モンタンワックスなどの石炭系ワックス、アルコール系ワックスおよびエステル系ワックスなどが挙げられる。ワックスは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。ワックスは粒子状の形態で用いられるけれども、さらにワックス粒子表面を合成樹脂により被覆したカプセル形態で用いることもできる。カプセル形態のワックスは、表面を合成樹脂により被覆してカプセル化しないトナーに添加した場合に、トナー表面に露出することがなく、トナーのキャリアに対するスペントを改良できる点で好ましい。ワックスの使用量は、自己分散性樹脂100重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。
本発明においては、粒子状に形成された後のトナー粒子に外添剤を添加し、トナー粒子表面の改質を行ってもよい。表面改質用の外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどの水分散性無機粒子、シリコーン樹脂などが挙げられる。水分散性無機粒子の粒径は特に制限はないけれども、好ましくは平均粒子径が1μm以下、さらに好ましくは0.01〜0.8μmである。外添剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また水分散性無機粒子も2種以上を併用できる。外添剤の使用量は特に制限はないけれども、好ましくはトナー粒子100重量部に対して1〜10重量部である。さらに、これら無機粒子はシリコーンカップリング剤等で疎水化されたものも使用できる。
また本発明においては、粒子状に形成された後のトナー粒子に、電荷制御剤、離型剤などの一般的なトナー添加剤を外添剤として添加できる。なお、電荷制御剤、離型剤などはトナー粒子内に直接含有させる内添剤として使用できる。
[トナーの製造方法]
本発明で使用するトナーは、混合液調製工程と凝集物形成工程とを含む製造方法により製造できる。図1は、トナーの製造方法の1実施形態を示すフローチャートである。図1に示すトナーの製造方法は、混合液調製工程S1と、凝集物形成工程S2と、粒子形成工程S3と、洗浄工程S4とを含む。なお、本発明の製造方法において使用する顔料、自己分散性樹脂、ワックスおよび外添剤は、本発明で使用するトナーの成分として示したものと同様のものである。
混合液調製工程S1では、顔料水分散液と自己分散性樹脂の水分散液とを混合してトナー成分混合液を調製する。顔料水分散液は、顔料と水とを混合することにより調製できる。顔料と水とを混合するに際し、適量の分散剤を添加すれば、顔料の水に対する分散性が向上し、顔料の分散粒径の小径化を図り得る。また、分散剤は後述する洗浄工程などで除去できるので、トナー特性を変化させるおそれもない。分散剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の中でも、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが好ましい。顔料水分散液における顔料含有量は特に制限はないけれども、作業効率などを考慮すると、顔料水分散液全量の0.1〜20重量%程度が好ましい。
顔料と水との混合は、たとえば、混合装置を用いて行う。混合装置としては公知の乳化機、分散機などをいずれも使用できるけれども、顔料、自己分散性樹脂、ワックスなどのトナー成分および水性媒体をバッチ式または連続式で受け入れることができ、加熱手段を有し、トナー成分および水性媒体を加熱下で混合することによって、顔料を含む結着樹脂粒子であるトナーを生成させ、トナーをバッチ式または連続式で放出することのできる装置が好ましい。また、混合装置は、トナー成分と水性媒体との混合物に剪断力を付与できるものであることが、形成された凝集物を粒径および形状の均一な粒子に形成することがより容易となる上で好ましい。さらに混合装置は、撹拌手段および回転手段の少なくともどちらかを有し、トナー成分と水性媒体とを撹拌下または回転下で混合できるものであることが好ましい。混合装置は、トナー成分と水性媒体とを混合するための混合容器が保温手段を有するものであることが好ましい。具体的には、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン(株)製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、特殊機化工業(株)製)、マックスブレンド(住友重機(株)製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、(株)荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー(商品名、特殊機化工業(株)製)、TKホモミックラインフロー(商品名、特殊機化工業(株)製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック(株)製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機(株)製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(商品名、(株)ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名、太平洋機工(株)製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック(株)製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業(株)製)などが挙げられる。なお、これらの混合装置は、顔料水分散液の調製に限定されず、自己分散性樹脂の水分散液の調製、ワックス水分散液の調製、顔料水分散液と自己分散性樹脂の水分散液との混合、多価金属塩の添加によるトナー成分の凝集粒子の調製、凝集粒子の加熱、凝集粒子の加熱により得られるトナー粒子の洗浄などの際にも使用できる。
自己分散性樹脂の水分散液も、顔料水分散液と同様に、乳化機、分散機などの混合装置を用いて自己分散性樹脂と水とを混合することにより調製できる。また、水中に分散する自己分散性樹脂の樹脂粒子の平均粒子径および粒度分布を調整しながら、自己分散性樹脂の水分散液を調製することもできる。たとえば、自己分散性樹脂と水溶性有機溶媒とを、それぞれ別々に予め50〜200℃に加熱しておき、その後両者を混合し、さらに水を添加する方法、自己分散性樹脂と水溶性有機溶媒(たとえばカウンターカチオンとなる)との混合物に水を添加して40〜120℃に加熱する方法、水と水溶性有機溶媒との混合物に自己分散性樹脂を添加し、40〜100℃に加熱して撹拌する方法などが挙げられる。これらの方法においては、反応後に自己分散性樹脂の酸価に応じて、酸価に当量のアルカリ剤を加えて中和操作を行うこともできる。ここで水溶性有機溶媒としては、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、これらの2種以上の混合溶媒などが挙げられる。これらの方法において、自己分散性樹脂、水溶性有機溶媒および水の使用量、加熱温度、水溶性有機溶媒の種類、混合時間などを適宜選択することによって、自己分散性樹脂粒子の平均粒子径および粒度分布を調整できる。なお、これらの方法において、自己分散性樹脂粒子が形成された後に、加熱などにより水溶性有機溶媒を除去することにより、所望の平均粒子径および粒度分布を有する自己分散性樹脂粒子が分散した自己分散性樹脂の水分散液が得られる。自己分散性樹脂粒子の体積平均粒子径は特に制限されないけれども、好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.01〜0.18μm、特に好ましくは0.01〜0.15μmである。なお、自己分散性樹脂粒子の体積平均粒子径が0.2μmを超えると、後述の凝集物形成工程S2で得られる凝集粒子が大きくなりすぎ、トナーの粒子径の制御が困難になる場合がある。自己分散性樹脂の水分散液における自己分散性樹脂(樹脂粒子)の含有量は特に制限はないけれども、後述の凝集物形成工程S2における凝集粒子形成の容易性、作業効率などを考慮すると、好ましくは、自己分散性樹脂の水分散液全量の80〜99重量%である。
本工程では、顔料水分散液と自己分散性樹脂の水分散液とともに、ワックスの水分散液を混合できる。ワックスの水分散液は、ワックスを界面活性剤で乳化させる方法、ワックス粒子またはワックス粒子の表面を合成樹脂で被覆したカプセル化ワックスを水に乳化させる方法によって調製できる。顔料水分散液と自己分散性樹脂の水分散液との混合は、前述と同様の混合装置を用い、たとえば室温下に1〜5時間程度攪拌することによりおこなわれる。これによって、トナー成分混合液が調製される。
凝集物形成工程S2では、トナー成分混合液に攪拌下に多価金属塩を添加し、トナー成分を含む凝集物(凝集粒子)を形成する。本工程において、凝集剤として用いられる多価金属塩は、2価以上の金属の塩である。2価以上の金属としては特に制限されないけれども、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの周期律表第13族元素などが挙げられ、マグネシウム、アルミニウムなどが好ましい。2価以上の金属塩の具体例としては、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、顔料として自己分散性顔料を用いる場合には、顔料および自己分散性樹脂のいずれもが親水性基または塩の形態の親水性基を有するので、顔料と自己分散性樹脂とをイオン結合させ得る2価以上の金属塩が好ましい。また、後述の洗浄工程S4での純水による洗浄によって除去され易いように、水に対する溶解度が比較的大きい塩化マグネシウム、硫酸アルミニウムなどが好ましい。これらの中でも、マグネシウム塩はイオンの価数が2価で、イオン価数が3価であるアルミニウム塩よりも凝集速度が緩やかで、凝集粒子の粒子径を制御するには最適である。多価金属塩は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。さらに本発明では、多価金属塩とともにまたは多価金属塩に代えて、ジメチルアミノエチル(2,2−ジメチロール)プロピオネートなどの一般的な有機化合物系凝集剤も使用できる。凝集剤の使用量は、トナー成分(顔料と自己分散性樹脂との合計量または顔料と自己分散性樹脂とワックスとの合計量)100重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜18重量部、特に好ましくは1.0〜18重量部である。0.5重量部未満では凝集効果が不充分になるおそれがあり、20重量部を超えると凝集粒子が大きくなりすぎるおそれがある。
また本工程では、トナー成分混合液に、多価金属塩とともに自己分散性樹脂の水分散液を添加して混合することもできる。この場合、前述の混合液調製工程S1において用いる自己分散性樹脂の水分散液から、本工程で使用される自己分散性樹脂の水分散液に含まれる樹脂量を予め減じておくのが好ましい。また本工程では、生成する凝集粒子が再凝集するのを防止するために、トナー成分混合液と多価金属塩との混合系に界面活性剤を添加すること、トナー成分混合液と多価金属塩との混合系に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ剤を添加して該混合系のpHを8以上に調整することなどを実施できる。トナー成分混合液と多価金属塩との混合は、室温〜自己分散性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近の温度下、好ましくは室温下にて、前述と同様の一般的な混合装置を用いて行なわれる。その際、機械的な剪断力を付与し得る混合装置を用いるのが好ましい。それによって、形成される凝集粒子の粒径および形状を一層均一化できる。
粒子形成工程S3では、凝集物形成工程S2で得られる凝集粒子を含む水性媒体を加熱することによって、トナー粒子を形成する。加熱温度は、凝集粒子中に最も多く含まれる自己分散性樹脂のガラス転移温度またはそれよりも高い温度である。これによって、粒子径が1〜20μmの範囲内にある、形状および粒子径が整ったトナー粒子が得られる。
本工程では、凝集粒子を含む水性媒体を加熱する前に、トナー粒子の帯電特性、形状などを一層均一化することなどを目的として、該水性媒体に自己分散性樹脂の水分散液を添加することもできる。凝集物形成工程S2で得られる凝集粒子を含む水性媒体中には、表面に顔料が付着する凝集粒子、表層に顔料が存在する凝集粒子、表層よりも内部に顔料が存在する凝集粒子などが含まれる。このような状態で凝集粒子を加熱してトナー粒子を形成すると、帯電特性の異なるトナー粒子を含むトナーが得られるおそれがある。顔料がカーボンブラックのような導電性物質である場合と、有色顔料(シアン、マゼンタ、イエローなど)である場合とでは、帯電特性の差がさらに大きくなるおそれがあり、使用する顔料に応じて現像剤の設計を個別に検討することが強いられる。一方、トナーの帯電特性は主にトナー粒子表面の性状に支配されることから、トナー粒子表面に顔料が直接露出しないように設計すれば、顔料の種類に関係なくほぼ同じ帯電特性を有するトナーが得られる。そこで、自己分散性樹脂の水分散液の添加により、表面に顔料が付着するかまたは表層に顔料が存在する凝集粒子表面にさらに自己分散性樹脂被覆層を形成することによって、トナー粒子の帯電特性、形状などを一層均一化できる。さらに、トナー粒子の表面に樹脂層を設けることによって、ワックスによるキァリアのスペントを防止できるという副次的な効果も期待できる。自己分散性樹脂の水分散液を添加する際には、凝集粒子同士の再凝集を防止するために、界面活性剤を添加するか、または水酸化ナトリウムなどの一般的なアルカリ剤により凝集粒子の水分散液のpHを8以上に調整してもよい。また、本工程で自己分散性樹脂の水分散液を添加する場合は、混合液調製工程S1で使用する自己分散性樹脂の水分散液から、本工程で使用される自己分散性樹脂の水分散液に含まれる樹脂量を予め減じておくのが好ましい。
洗浄工程S4では、粒子形成工程S3で得られるトナー粒子(凝集粒子)を洗浄する。トナー粒子の洗浄は、主に、トナーの帯電性能に悪影響を及ぼすような不純物、凝集に関与せずに残留する不要な凝集剤(多価金属塩)などの、トナー成分以外の不要な成分を取り除くために行なわれる。これによって、不要な成分を含まないトナーが得られる。トナー粒子の洗浄には、導電率20μS/cm以下の純水を用いる。このような純水は、たとえば活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などの公知の方法によって得ることができ、複数の方法を組み合わせてもよい。トナー粒子の洗浄は、たとえば、粒子形成工程S3で得られるトナー粒子を含む水性媒体から、ろ過、遠心分離などの一般的な分離手段によりトナー粒子のみを分離し、このトナー粒子を導電率20μS/cm以下の純水で洗浄することにより行われ、洗浄に用いられた水の導電率が50μS/cm以下になるまで、導電率20μS/cm以下の純水による洗浄を繰返し行うのが好ましい。この純水の温度は、トナー粒子同士が再凝集するのを防止するために、自己分散性樹脂の最も低いガラス転移温度以下が好ましい。このような洗浄は、バッチ式または連続式のいずれで行ってもよい。さらに、純水による洗浄の途中で、pH6以下の水による洗浄を1または2回以上行ってもよい。これによって不純物の除去がより充分に行われる。洗浄終了後、洗浄されたトナー粒子を必要に応じて真空乾燥機などの乾燥機により乾燥してもよい。乾燥して得られるトナー粒子に、たとえば、水分散性無機粒子、シリコーン樹脂といった表面改質剤、電荷制御剤、離型剤などの適量を外添剤として添加してもよい。このようにして得られる本発明で使用するトナーは、体積平均粒子径が好ましくは10μm以下、さらに好ましくは2〜9μm、特に好ましくは3〜8μmである。体積平均粒子径が10μmを越えると、トナーの製法上、粒度分布がブロードとなり、帯電性のばらつきが大きく、画像を乱す原因となる。
[現像剤]
本発明の現像剤は、本発明に開示の方法によって製造されるトナーと、キャリアとを含む2成分現像剤である。トナーは、前述したのと同様のトナーである。キャリアは、芯材と、芯材の表面に形成される被覆層とを含む。芯材としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト、マグネタイトなどの磁性金属酸化物などの磁性体が挙げられる。キャリアの芯材が前記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。
キャリアの芯材は、体積平均粒子径が好ましくは25〜150μm、さらに好ましくは体積平均粒子径が25〜90μmである。本明細書において、キャリアの芯材の体積平均粒子径は、粒度測定器(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)を用いて測定される値である。キャリアの芯材の体積平均粒径を25〜150μmにすることによって、トナー搬送が安定化されるとともに、高精細な画像形成が可能となる。芯材の体積平均粒径が25μm未満であると、キャリアが現像剤搬送担持体から離脱しやすくなるので、像担持体にキャリアが付着する現象であるキャリア付着が起こりやすくなる。芯材の体積平均粒径が150μmを超えると、後述するマグネットローラにキャリアが磁気的に吸着されて形成される磁気ブラシの穂である磁気穂が荒くなりすぎるため、トナーを小粒径化しても、トナーによる画質の向上の効果が見られない。
キャリアの芯材は、フェライト粒子であることが好ましい。キャリアの芯材をフェライト粒子にすることによって、芯材の表面に被覆層を形成した場合であっても、帯電性能および耐久性に優れるとともに、適した飽和磁化を有するキャリアを実現することができる。したがって被覆層による芯材の被覆を容易に行なうことができる。
被覆層は、導電性粒子を含有する。
前述のように本発明のトナーは、酸価が1〜30mgKOH/gである自己分散性ポリエステルを含む自己分散性樹脂を含有するので、たとえば自己分散性樹脂の水分散液と、顔料を含む他のトナー成分の水分散液とを混合して凝集させることによって、有機溶媒、モノマーといった余分な成分を含まず、粒径および形状が整った均一な粒子として生成することができる。したがってトナーは、環境による帯電性能の変化が少なく、色再現性、特に二次色再現性に優れ、粉体流動性、低温定着性などが良好で、記録媒体への転写率が高いといった好ましい特性を有する。
このようなトナーが、被覆層に導電性粒子を含有するキャリアとともに本発明の現像剤に含まれるので、本発明の現像剤を用いれば、画像を高精細に再現し、色再現性が良好でかつ画像濃度が高く、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を安定的に形成できる。またキャリアは、導電性微粒子を含有する被覆層が芯材の表面に形成されたものであるので、現像剤が静電荷像の現像に用いられる場合、トナーが電荷制御剤を含まなくても、静電荷像の現像に充分な電荷をトナーに付与することができる。したがって、トナーに電荷制御剤を添加する必要がなくなるので、トナーの製造が容易になる。
本実施形態では、被覆層は、シリコーン樹脂と導電性粒子とを含有するシリコーン樹脂組成物からなるものである。このようにキャリアの被覆層が、導電性粒子およびシリコーン樹脂を含有するシリコーン樹脂組成物からなることによって、トナーに対するキャリアの離型性と、キャリアにおける被覆層と芯材との密着性とを両立することができるので、長期的かつ安定的にトナーを帯電させることのできるキャリアが実現される。したがって高画質の画像をより安定的に形成することのできる現像剤が実現される。
シリコーン樹脂としては特に制限されず、この分野で常用されるシリコーン樹脂を使用できるけれども、架橋性シリコーン樹脂が好ましい。架橋性シリコーン樹脂は、下記に示すように、Si原子に結合する水酸基同士または水酸基と基−OXとが加熱脱水反応、常温硬化反応などによって架橋して硬化する公知のシリコーン樹脂である。
〔式中、複数のRは同一または異なって1価の有機基を示す。基−OXはアセトキシ基、アミノキシ基、アルコキシ基、オキシム基などである。〕
架橋型シリコーン樹脂としては、加熱硬化型シリコーン樹脂、常温硬化型シリコーン樹脂のいずれをも使用できる。加熱硬化型シリコーン樹脂を架橋させるには、該樹脂を200〜250℃程度に加熱することが必要である。常温硬化型シリコーン樹脂を硬化させるには加熱は必要ないけれども、硬化時間の短縮のために150〜280℃で加熱するのが好ましい。架橋型シリコーン樹脂の中でも、Rで示される1価の有機基がメチル基であるものが好ましい。Rがメチル基である架橋型シリコーン樹脂は架橋構造が緻密であることから、該架橋型シリコーン樹脂を用いてキャリア芯材の樹脂被覆層を形成すると、撥水性、耐湿性などの良好なキャリアが得られる。ただし、架橋構造が緻密になりすぎると、樹脂被覆層が脆くなる傾向があるので、架橋型シリコーン樹脂の分子量の選択が重要である。また、架橋型シリコーン樹脂中の珪素と炭素の重量比(Si/C)が0.3〜2.2であることが好ましい。Si/Cが0.3未満では、樹脂被覆層の硬度が低下し、キャリア寿命などが低下するおそれがある。Si/Cが2.2を超えると、キャリアのトナーに対する電荷付与性が温度変化による影響を受けやすくなり、樹脂被覆層が脆化するおそれがある。本発明では市販の架橋型シリコーン樹脂を使用でき、たとえば、SR2400、SR2410、SR2411、SR2510、SR2405、840RESIN、804RESIN(いずれも商品名、東レダウコーニング(株)製)、KR271、KR272、KR274、KR216、KR280、KR282、KR261、KR260、KR255、KR266、KR251、KR155、KR152、KR214、KR220、X−4040−171、KR201、KR5202、KR3093(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。架橋型シリコーン樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
導電性粒子としては、導電性を有する無機粒子を好ましく使用できる。その中でも無機酸化物系の導電性粒子が好ましい。その具体例としては、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタン、アンチモンをドープした導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、酸化スズ/酸化インジウム(ITO)などが挙げられる。これらの中でも、少量で充分な導電性を発現させるためには導電性カーボンブラックが好ましい。また、カラートナーにおいて、導電性カーボンブラックが被覆層から脱離する懸念がある場合は、アンチモンをドープした導電性酸化チタン、酸化スズ/酸化インジウム(ITO)などが好ましい。導電性粒子は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。導電性粒子の体積平均粒子径は特に制限されないけれども、好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.02〜1μmである。なお、この体積平均粒子径はコールターカウンター(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)を用いて測定された値である。
シリコーン樹脂組成物における導電性粒子の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは、シリコーン樹脂100重量部に対して30重量部以下であり、より好ましくは1重量部以上30重量部以下である。導電性粒子の含有量がシリコーン樹脂100重量部に対して30重量部を超えると、被覆層から導電性粒子が欠落しやすく、カラー画像に影響を及ぼすことが懸念される。また被覆層の機械的強度および芯材に対する密着性が不充分となり、被覆層が剥離して、芯材が露出するおそれがある。このように被覆層が剥離して芯材が露出すると、もとのキャリアと比べて、帯電性能が変化してしまい、トナーを安定して帯電させることができないおそれがある。導電性粒子の含有量をシリコーン樹脂100重量部に対して30重量部以下にすることによって、被覆層からの導電性粒子の欠落を防いで、カラー画像への影響を抑えることができる。また被覆層の機械的強度および芯材に対する密着性を向上させることができるので、長期的かつ安定的にトナーを帯電させることのできるキャリアが実現される。したがって高画質の画像をより安定的に形成することのできる現像剤が実現される。
導電性粒子の含有量がシリコーン樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、導電性粒子の添加効果が見られず、トナーに充分な電荷を付与することができないおそれがある。導電性粒子の含有量をシリコーン樹脂100重量部に対して1重量部以上とすることによって、導電性粒子の添加効果がより確実に発現し、トナーに充分な電荷を付与することができる。
本実施形態では、被覆層は、さらに電荷制御剤を含有する。より詳細には、被覆層は、シリコーン樹脂と導電性粒子と電荷制御剤とを含有するシリコーン樹脂組成物からなる。被覆層は、電荷制御剤を含有しなくてもよいが、本実施形態のように電荷制御剤を含有する方が好ましい。被覆層が電荷制御剤を含有することによって、本発明の現像剤を用いて画像を形成するときに、画像形成枚数の増加に伴うキャリア表面のトナーの入れ替わりによってキャリア表面の電荷が枯渇しても、被覆層内部の電荷制御剤から導電性粒子を介してトナーに電荷を供給することができる。したがって長期的かつ安定的にトナーを帯電させることができるので、高画質の画像をより安定的に形成することのできる現像剤を実現することができる。
電荷制御剤としては、トナーの帯電極性と同じ極性を有するものを用いることが好ましく、トナーの帯電極性に応じて、正電荷制御用電荷制御剤または負電荷制御用電荷制御剤が使用される。正電荷制御用電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩における金属としては、クロム、亜鉛、ジルコニウムなどが挙げられる。前述の負電荷制御用電荷制御剤の中でもホウ素化合物は、重金属を含まないので特に好ましい。
電荷制御剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、シリコーン樹脂100重量部に対して20重量部以下である。電荷制御剤の使用量がシリコーン樹脂100重量部に対して20重量部を超えると、塗膜すなわち被覆層の機械的強度が弱くなり、また被覆層の芯材に対する密着性が不充分となり、被覆層が剥離して、芯材が露出するおそれがある。このように被覆層が剥離して芯材が露出すると、トナースペントが発生しやすくなったり、芯材からの電荷供給が過剰になり帯電を不安定化させる要因となる。さらには、芯材の露出は環境安定性の面からも帯電を不安定化させる。電荷制御剤の含有量をシリコーン樹脂100重量部に対して20重量部以下にすることによって、画像形成枚数の増加に伴うキャリア表面のトナーの入れ替わりによってキャリア表面の電荷が枯渇したときに、被覆層内部の電荷制御剤から導電性粒子を介してより確実にトナーに電荷を供給することができる。したがって、より安定的にトナーを帯電させることができるので、高画質の画像を一層安定的に形成することのできる現像剤を実現することができる。
電荷制御剤の使用量の下限は、特に制限されないが、シリコーン樹脂100重量部に対して1重量部以上であることが好ましい。すなわち、電荷制御剤の使用量は、シリコーン樹脂100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であることが、さらに好ましい。電荷制御剤の使用量がシリコーン樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、電荷制御剤の添加効果が見られず、トナーに充分な電荷を付与することができないおそれがある。電荷制御剤の使用量をシリコーン樹脂100重量部に対して1重量部以上とすることによって、電荷制御剤の添加効果がより確実に発現し、トナーに充分な電荷を付与することができる。
シリコーン樹脂組成物は、トナー帯電量の調整を一層容易にするために、シランカップリング剤を含有してもよい。その中でも、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤がさらに好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤としては公知のものを使用でき、たとえば、一般式
(Y)nSi(R)m …(1)
〔式中、m個のRは同一または異なってアルキル基、アルコキシ基または塩素原子を示す。n個のYは同一または異なってアミノ基を含有する炭化水素基を示す。mおよびnはそれぞれ1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。〕で表されるものが挙げられる。
上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基などが好ましい。アルコキシ基としては、たとえば、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。Yで示されるアミノ基を含有する炭化水素基としては、たとえば、−(CH2)a−X(式中、Xはアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、フェニルアミノ基またはジアルキルアミノ基を示す。aは1〜4の整数を示す。)、−Ph−X(式中、Xは前記に同じ。−Ph−はフェニレン基を示す。)などが挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、たとえば、次のようなものが挙げられる。
H2N(H2C)3Si(OCH3)3
H2N(H2C)3Si(OC2H5)3
H2N(H2C)3Si(CH3)(OCH3)2
H2N(H2C)2HN(H2C)3Si(CH3)(OCH3)2
H2NOCHN(H2C)3Si(OC2H5)3
H2N(H2C)2HN(H2C)3Si(OCH3)3
H2N−Ph−Si(OCH3)3(式中−Ph−はp−フェニレン基を示す。)
Ph−HN(H2C)3Si(OCH3)3(式中Ph−はフェニル基を示す。)
(H9C4)2N(H2C)3Si(OCH3)3
アミノ基含有シランカップリング剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。アミノ基含有シランカップリング剤の使用量はトナーに充分な電荷を付与し、かつ樹脂被覆層の機械的強度などを著しく低下させることがない範囲から適宜選択されるけれども、好ましくはシリコーン樹脂100重量部に対して20重量部以下、さらに好ましくは0.01重量部以上20重量部以下、特に好ましくは0.01重量部以上10重量部以下である。
シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)により形成される樹脂被覆層の好ましい特性を損なわない範囲で、シリコーン樹脂とともに他の樹脂を含むことができる。他の樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アセタール樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、これらの共重合体樹脂、配合樹脂などが挙げられる。また、シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)により形成される樹脂被覆層の耐湿性、離型性などをさらに向上させるために、二官能性シリコーンオイルを含むことができる。
シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂および導電性粒子の所定量ならびに必要に応じてアミノ基含有シランカップリング剤、シリコーン樹脂以外の樹脂、二官能シリコーンオイルなどの添加剤から選ばれる1種または2種以上の適量を混合することによって製造できる。シリコーン樹脂組成物の1形態としては、前記成分を有機溶媒に溶解させた溶液の形態が挙げられる。有機溶媒としては、シリコーン樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないけれども、たとえば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、高級アルコール類、これらの2種以上の混合溶媒などが挙げられる。この溶液形態のシリコーン樹脂組成物(以後「コート樹脂液」と称す)を用いれば、キャリアの芯材表面に樹脂被覆層を容易に形成できる。たとえば、キャリアの芯材表面にコート樹脂液を塗布して塗布層を形成し、加熱により塗布層から有機溶媒を揮発除去し、さらに乾燥時または乾燥後に塗布層を加熱硬化または単に硬化させることによって、樹脂被覆層が形成され、キャリアが製造される。
コート樹脂液のキャリア芯材表面への塗布方法としては、たとえば、キャリア芯材をコート樹脂液に含浸させる浸漬法、キャリア芯材にコート樹脂液を噴霧するスプレー法、流動気流により浮遊状態にあるキャリア芯材にコート樹脂液を噴霧する流動層法などが挙げられる。これらの中でも、膜形成を容易にできることから、浸漬法が好ましい。塗布層の乾燥には、乾燥促進剤を用いてもよい。乾燥促進剤としては公知のものを使用でき、たとえば、ナフチル酸、オクチル酸などの鉛、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛塩などの金属石鹸、エタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。乾燥促進剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。塗布層の硬化は、シリコーン樹脂の種類に応じて加熱温度を選択しながら行われるけれども、たとえば、150〜280℃程度に加熱して行うのが好ましい。もちろん、シリコーン樹脂が常温硬化型シリコーン樹脂である場合は、加熱は必要ないけれども、形成される樹脂被覆層の機械的強度を向上させること、硬化時間を短縮することなどを目的として、150〜280℃程度に加熱してもよい。なお、コート樹脂液の全固形分濃度は特に制限されず、キャリア芯材への塗布作業性などを考慮しつつ、硬化後の樹脂被覆層の膜厚が通常5μm以下、好ましくは0.1〜3μm程度になるように調整すればよい。
このようにして得られるキャリアは、高電気抵抗でかつ球形であることが好ましいけれども、導電性または非球形であっても本発明の効果が失われるものではない。
本発明の現像剤は、本発明で使用するトナーと前記キャリアとを混合することにより製造できる。トナーとキャリアとの混合割合は、特に制限はないけれども、高速画像形成装置(A4サイズの画像で40枚/分以上)に用いることを考慮すると、キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径が5以上の状態で、キャリアの総表面積(全キャリア粒子の表面積の総和)に対するトナーの総投影面積(全トナー粒子の投影面積の総和)の割合(トナーの総投影面積/キャリアの総表面積×100)が30〜70%になるように混合すればよい。これによって、トナーの帯電性が充分良好な状態で安定的に維持され、高速画像形成装置においても高画質画像を安定的にかつ長期的に形成できる好適な現像剤として使用できる。たとえば、トナーの体積平均粒子径が6.5μm、キャリアの体積平均粒子径が90μm、キャリアの総表面積に対するトナーの総投影面積の割合を30〜70%にすると、現像剤においてキャリア100重量部に対してトナー2.2〜5.3重量部程度を含むようになる。このような現像剤で高速現像すると、トナー消費量とトナーの消費に応じて現像装置の現像槽に供給されるトナー供給量とがそれぞれ最大になり、それでも需給バランスが損なわれることがない。そして、現像剤におけるキャリアの量が2.2〜5.3重量部程度よりも多くなると、帯電量がより低くなる傾向があり所望の現像特性が得られないばかりか、トナー供給量よりもトナー消費量の方が多くなり、トナーに充分な電荷を付与できなくなり、画質の劣化を招く。さらに、少ない場合は帯電量が高くなる傾向があり、キャリアからトナーが電界によって分離しにくくなり、結果として画質の劣化を招く。
なお、トナーの投影面積は、以下のように算出した。トナーの比重を1.0とし、コールターカウンター(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径をもとに算出した。混合するトナー重量に対するトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)でトナー総面積とする。同様に、キャリアはマイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)より得られた粒子径を元に混合するキャリア重量から総面積を算出した。このときのキャリア比重は4.7とした。上記で得られた、トナー総面積/キャリア総面積×100で混合比を算出した。
また本発明の現像剤は、キャリアの体積平均粒子径とトナーの体積平均粒子径との比(キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径)が5以上であり、かつ現像剤の全重量に対するトナーの重量の比率で示されるトナーの混合率が4〜13%であることが好ましい。キャリアの体積平均粒子径とトナーの体積平均粒子径との比(キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径)が5未満であると、トナーの帯電が良好な状態に維持されないおそれがある。トナーの混合率が4%未満であると、トナーの帯電量が高くなりすぎる傾向がある。トナーの混合率が13%を超えると、トナーとキャリアとの混合が十分に行われない可能性があり、トナーの帯電不良を生じる。
キャリアの体積平均粒子径とトナーの体積平均粒子径との比(キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径)を5以上とし、かつ現像剤の全重量に対するトナーの重量の比率で示されるトナーの混合率を4〜13%にすることによって、トナーへの電荷付与性が安定して、トナーの帯電性が一層安定するとともに、本発明の現像剤を高速で画像を形成する画像形成装置、たとえば電子写真方式の画像形成装置に適用する場合に、トナー消費量を最低限に留めながら、高精細で高濃度の高画質画像を安定的に形成できる。
キャリアの体積平均粒子径とトナーの体積平均粒子径との比(キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径)は、より好ましくは5以上30以下である。キャリアの体積平均粒子径とトナーの体積平均粒子径との比(キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径)が30を超えると、現像剤の体積が非常に増えるため現像槽を大きく設計することになり、非効率的である。トナーの混合率は、トナーの帯電量を好適なものにするという観点から、4.0〜13.0%、すなわち4.0%以上13.0%以下であることがさらに好ましい。
本発明の現像剤は、像担持体に潜像として形成される静電荷像を現像する静電荷像現像剤、より詳細には電子写真法による画像形成において形成される静電荷像を現像する静電荷像現像剤として好適に使用される。本発明の現像剤が静電荷像現像剤として使用される場合、本発明の現像剤に含まれるトナーは、静電荷像を現像する静電荷像現像用トナーとして使用される。本発明の現像剤は、静電荷像に限定されず、他の潜像の現像に用いられてもよく、たとえば磁気潜像の現像に用いられてもよい。
[現像装置、画像形成装置、画像形成方法]
図2は本発明の実施の一形態である現像装置14を備える画像形成装置1の構成を示す透視側面図であり、図3は本発明の実施の一形態である現像装置14の構成を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置1は、電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。
本実施形態の画像形成装置1は、互いに異なる色の複数のトナー像が重ね合わされた多色画像を形成可能に構成される。より詳細には、本実施形態の画像形成装置1は、多色画像として、ブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の4色から選ばれる2色以上のトナー像が重ね合わされた多色画像を形成可能に形成される。トナー像形成手段2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段2は、像担持体である感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像手段14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12および露光ユニット13は、潜像形成手段として機能する。帯電手段12、現像手段14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像手段14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しないが、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であってもよい。本実施形態において電荷発生層および電荷輸送層は、この順に導電性基体に積層される。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。また本実施形態において電荷発生層および電荷輸送層は、この順に導電性基体に積層されるが、電荷輸送層および電荷発生層の順に導電性基体に積層されてもよい。
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像手段14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
現像手段14は、図3に示すように、現像剤規制ブレード19と現像槽20とトナーホッパ21と現像ローラ22と供給ローラ23と撹拌ローラ24とを含む。現像槽20は、容器状部材であり、感光体ドラム11表面を臨むように配置される。現像槽20は、その内部空間に、本発明の現像剤を収容し、かつ現像ローラ22、供給ローラ23および撹拌ローラ24を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ22が回転駆動可能に設けられる。
現像ローラ22は、現像剤を担持して搬送する現像剤搬送担持体である。現像ローラ22は、いわゆるマグネットローラであり、固定磁石体を内包する。この固定磁石体の磁力によって現像剤中のキャリアが現像ローラ22に磁気的に吸着され、これによって現像剤が現像ローラ22に担持される。現像ローラ22は、ローラ状部材であり、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給する。トナーの供給に際しては、現像ローラ22表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」という)として印加される。これによって、現像ローラ22表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。現像ローラ22の表面に担持される現像剤の量は、現像剤規制ブレード19によって規制される。現像装置14は、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に、現像ローラ22によってトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する。
供給ローラ23は、ローラ状部材であり、現像ローラ22を臨んで回転駆動可能に設けられ、現像ローラ22周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ24は、ローラ状部材であり、供給ローラ23を臨んで回転駆動可能に設けられ、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーおよび現像槽20内に貯留されていたトナーを撹拌して供給ローラ23周辺に送給する。供給ローラ23は、現像ローラ22にトナーを供給する供給手段として機能し、撹拌ローラ24は、現像槽20内のトナーを撹拌して供給手段である供給ローラ23に送給する撹拌送給手段である。供給手段および撹拌送給手段は、本実施形態ではローラ状部材であるが、これに限定されず、たとえばスクリュー状部材であってもよい。
トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に形成されるトナー補給口51と、現像槽20の鉛直方向上部に形成されるトナー受入口52とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
図2に戻って、クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本実施形態の画像形成装置1においては、感光体ドラム11として、有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15による擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段3は、感光体ドラム11の鉛直方向上方に配置され、中間転写体である中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。多色画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、多色画像が形成される。
駆動ローラ26は、図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は、駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。中間転写ベルト25に多色画像が形成される場合、形成された多色画像は、転写ローラ30によって記録媒体に一括して転写される。このようにしてトナー像が転写された記録媒体は、定着手段4に送給される。
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25にトナー像が転写され、この転写されたトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は、図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。
加圧ローラ32は、定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。
搬送ローラ37は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置1内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。
記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置1内部における各装置にも電力を供給する。
以上の本実施形態によれば、現像装置14は、本発明の現像剤を用いて、感光体11に形成される静電潜像を現像して、トナー像を形成する。したがってトナーの帯電を安定化させて現像を行うことのできる現像装置14が実現される。
また本実施形態では、このような現像装置14によって現像が行なわれるので、画像を高精細に再現し、色再現性が良好でかつ画像濃度が高く、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を安定的に形成できる画像形成装置1が実現される。
また本実施形態では、転写手段13は、中間転写体である中間転写ベルト25を含む。この中間転写ベルト25には、互いに色の異なる複数のトナー像が重ね合わされて多色画像が形成される。この多色画像が転写ローラ30によって記録媒体に転写される。
現像装置14で用いられる本発明の現像剤は、長期的かつ安定的にトナーを帯電させることができるので、本実施形態のように転写手段13が中間転写ベルト25を含み、中間転写ベルト25を介して記録媒体に多色画像を転写する転写手段である場合のように、トナー像の転写が2回行なわれる場合において、色再現性をも含めた画像再現性に優れ、高精細かつ高画像濃度の多色画像を安定的にかつ長期的に形成できる。このように本発明の現像装置は、転写手段が中間転写体を含む画像形成装置において、高画質画像の安定的形成効果をより有効に発現することができる。
本実施形態の画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であるが、これに限定されず、たとえば複写機、プリンタまたはファクシミリ装置として用いられてもよい。
本発明の画像形成方法は、本発明の現像剤を用いることを特徴とする。本発明の画像形成方法は、たとえば図2に示す画像形成装置1によって実行される。本発明の画像形成方法によれば、本発明の現像剤を用いて、互いに色の異なる複数のトナー像が重ね合わされた多色画像が形成される。これによって、色再現性をも含めた画像再現性に優れ、高精細かつ高画像濃度の多色画像を安定的にかつ長期的に形成できる。
また前述の図2に示す画像形成装置1によって実行される場合、多色画像は、中間転写体である中間転写ベルト25に、互いに色の異なる複数のトナー像を重ね合わせて形成することによって形成され、この中間転写ベルト25に形成された多色画像が記録媒体に転写される。本発明の現像剤は、トナーを安定して一定の帯電量に帯電させることができるので、中間転写ベルト25を介して記録媒体に多色画像を転写する場合のように、トナー像の転写が2回行なわれる場合において、色再現性をも含めた画像再現性に優れ、高精細かつ高画像濃度の多色画像を安定的にかつ長期的に形成できる。
本発明の画像形成方法は、図2に示す画像形成装置1を用いる方法に限定されず、たとえば他の電子写真方式の画像形成方法において用いられてもよい。
電子写真方式の画像形成は、たとえば、表面に静電荷像を形成し得る感光層を有する像担持体と、像担持体表面を所定電位に帯電させる帯電手段と、表面が帯電状態にある像担持体に画像情報に応じた信号光を照射して像担持体の表面に静電荷像(静電潜像)を形成する露光手段と、現像剤搬送担持体を含み、現像剤を静電荷像に供給し、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、像担持体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体表面のトナー像を記録媒体に定着させる定着手段と、トナー像の記録媒体への転写後に像担持体表面に残留するトナー、紙粉などを除去するクリーニング手段とを含む電子写真方式の画像形成装置を用いて行われる。
静電荷像を現像する際には、現像剤搬送担持体に担持される現像剤が、現像剤搬送担持体と像担持体との近接領域に形成される現像領域に搬送され、現像剤搬送担持体に交流バイアス電圧を印加して形成される振動電界下に像担持体上の静電荷像を反転現像法で顕像化する現像工程が繰返し実行され、像担持体上に色の異なる複数のトナー像を重ね合わせて多色トナー像が形成される。
本発明の画像形成方法によれば、色再現性をも含めた画像再現性に優れ、高精細かつ高画像濃度の多色画像を安定的にかつ長期的に形成できる。
以下に参考例、実施例、比較例および試験例を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。以下において、「部」は「重量部」を示す。また、特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。
また、自己分散性ポリエステルの酸価、ガラス転移温度および数平均分子量は次の方法に従って測定した。
[酸価]
酸価は、以下のようにして中和滴定法によって測定した。クロロホルム(溶剤)20mLに、試料0.2gを溶解させ、指示薬としてフェノールフタレインのエタノール溶液を数滴加えた後、0.1モル/Lの水酸化カリウム(KOH)水溶液で滴定を行なった。試料溶液の色が無色から紫色に変化した点を終点とし、終点に達するまでに要した水酸化カリウム水溶液の量と滴定に供した試料の重量とから、酸価(mgKOH/g)を算出した。
[ガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:DSC210、セイコー電子工業(株)製)を用いて200℃まで昇温し、200℃から速度10℃/分で0℃まで降温して冷却した試料を10℃/分で昇温した時に示すピークのチャートを求め、最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までで最大傾斜を示す接線との交点の温度として求めた。
[数平均分子量]
以下のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、得られた分子量部分から数平均分子量を算出した。
測定装置:CO−8010(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー(株)製)
試料濃度:0.5g/100mlテトラヒドロフラン
溶離液:テトラヒドロフラン(40℃)
溶離液の流速:1ml/分
標準試料:単分散ポリスチレン
(参考例1)
[キャリア(1)〜(4)の製造]
下記表1に示す使用量(部)のシリコーン樹脂、導電性粒子、シランカップリング剤および溶剤をスリーワンモータにて5分間攪拌し、コート樹脂液を調製した。溶剤にはトルエンを用いた。但し、導電性微粒子はあらかじめ分散剤を用いて、トルエン溶媒中に分散したものを用いた。このコート樹脂液を、下記表1に示す体積平均粒子径(μm)および使用量(部)のフェライト芯材と混合してさらに攪拌機に投入してさらに混合した。得られた混合物から減圧および加熱下にトルエンを除去し、フェライト芯材表面に塗布層を形成した。これを、200℃で1時間加熱して塗布層を硬化させて樹脂被覆層を形成し、100メッシュのふるいにかけてキャリア(1)〜(4)を製造した。
なお、表1においてシリコーン樹脂、導電性粒子およびシランカップリング剤は具体的には次のものを用いた。また表1において「−」は、その成分を含有しないことを意味する。表1に示す各成分の使用量は、固形分換算の値ではなく、以下に示す各製品の使用量である。
シリコーン樹脂 商品名:SR2411、シリコーン樹脂の20%溶液、東レダウコーニング(株)製
導電性微粒子A 商品名:VULCANXC72、キャボット(株)製、導電性カーボンブラック(1次粒子径0.03μm)の15%トルエン分散液
導電性微粒子B 商品名:FS−10P、石原産業(株)製、導電性酸化チタン(長軸粒子径2μm)の30%トルエン分散液
シランカップリング剤 商品名:SH6020、東レダウコーニング(株)製、100%品
(参考例2)
[キャリア(5)〜(10)の製造]
下記表2に示す使用量(部)のシリコーン樹脂、導電性粒子、電荷制御剤、シランカップリング剤および溶剤をスリーワンモータにて5分間攪拌し、コート樹脂液を調製した。溶剤にはトルエンを用いた。但し、導電性微粒子はあらかじめ分散剤を用いて、トルエン溶媒中に分散したものを用いた。また電荷制御剤については、後述する所定の溶液に溶解したものを用いた。このコート樹脂液を、下記表2に示す体積平均粒子径(μm)および使用量(部)のフェライト芯材と混合してさらに攪拌機に投入してさらに混合した。得られた混合物から減圧および加熱下にトルエンを除去し、フェライト芯材表面に塗布層を形成した。これを、200℃で1時間加熱して塗布層を硬化させて樹脂被覆層を形成し、100メッシュのふるいにかけてキャリア(5)〜(10)を製造した。
なお、表2においてシリコーン樹脂、導電性粒子、電荷制御剤およびシランカップリング剤は具体的には次のものを用いた。また表2において「−」は、その成分を含有しないことを意味する。表2に示す各成分の使用量は、固形分換算の値ではなく、以下に示す各製品の使用量である。
シリコーン樹脂 商品名:SR2411、シリコーン樹脂の20%溶液、東レダウコーニング(株)製
導電性微粒子A 商品名:VULCANXC72、キャボット(株)製、導電性カーボンブラック(1次粒子径0.03μm)のトルエン分散液、固形分濃度15%
導電性微粒子B 商品名:FS−10P、石原産業(株)製、導電性酸化チタン(長軸粒子径2μm)のトルエン分散液、固形分濃度30%
電荷制御剤C 商品名:E−81、オリエント化学(株)製、負帯電性電荷制御剤(サリチル酸金属錯体)の5%トルエン溶液
電荷制御剤D 商品名:LR−147、日本カーリット(株)製、負帯電性荷電制御剤(ボロビス(1,1−ジフェニル−1−オキソアセチル)カリウム塩)の5%アセトン溶液
シランカップリング剤 商品名:AY43−059、東レダウコーニング(株)製、100%品
参考例1および2で得られたキャリア(1)〜(10)について、粒度測定器(商品名:マイクロトラックMT3000・日機装(株)製)により体積平均粒子径を測定したところ、得られたキャリア(1)〜(10)は、いずれも、フェライト芯材の表面にシリコーン樹脂層が形成されていた。
(参考例3)
[自己分散性ポリエステル(A1)の合成および水分散液(A2)の調製]
温度計および攪拌機を備えるオートクレーブに、ジメチルテレフタレート137部、ジメチルイソフタレート55部、エチレングリコール68部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均分子量350)175部およびテトラブトキシチタネート(触媒)0.1部を仕込み、150〜220℃で180分間加熱してエステル交換反応を行い、次いで、240℃に昇温した後、反応系の圧力を徐々に減じて30分後に10mmHgにして70分間反応を続けた。次いで、オートクレーブ中を窒素ガスで置換するとともに内部圧力を大気圧とし、温度を200℃に保持しながら無水トリメリット酸2部を加えて70分間反応を行い、酸価15mgKOH/g、ガラス転移温度64℃および数平均分子量7800の自己分散性ポリエステル(A1)を製造した。
次に、温度計、コンデンサおよび攪拌羽根を備える四つ口の10リットル容セパブルフラスコに上記で得られた自己分散性ポリエステル(A1)100部、ブタノール48部、メチルエチルケトン12部およびイソプロパノール20部を投入し、70℃に加温して自己分散性ポリエステル(A1)の溶液を調製した。この溶液に、自己分散性ポリエステル樹脂(A1)の酸価に等量となるように1Nアンモニア水溶液270部を加え、70℃を保持し30分間撹拌した後、攪拌下に70℃の水300部を添加して自己分散性ポリエステルの水分散液を得た。得られた水分散液を蒸留用フラスコに入れ、温度70℃で真空ポンプにて減圧して有機溶剤を除去した。最終的に脱イオン水にて固形分を調整し、固形分濃度30%の自己分散性ポリエステル水分散液(A2)を得た。この水分散液における自己分散性ポリエステル(A1)の樹脂粒子の体積平均粒子径は0.095μmであった。
(参考例4)
[自己分散性ポリエステル(B1)の合成および水分散液(B2)の調製]
温度計および撹拌機を備えるオートクレーブに、1,5−ナフタレンジカルボン酸メチルエステル38部、ジメチルテレフタレート96部、ジメチルイソフタレート58部、エチレングリコール136部およびテトラブトキシチタネート(触媒)0.1部を仕込み、以後の操作を、無水トリメリット酸の添加量を2部から10部に変更する以外は、参考例3と同様にして行い、酸価14mgKOH/g、ガラス転移温度65℃および数平均分子量3500の自己分散性ポリエステル(B1)を製造した。
上記で得られた自己分散性ポリエステル(B1)を自己分散性ポリエステル(A1)に代えて用いる以外は、参考例3と同様にして、固形分濃度30%の自己分散性ポリエステル水分散液(B2)を調製した。この水分散液における自己分散性ポリエステル(B1)の樹脂粒子の体積平均粒子径は0.080μmであった。
(参考例5)
[自己分散性ポリエステル(C1)の製造および水分散液(C2)の調製]
温度計および撹拌機を備えるオートクレーブに、ジメチルテレフタレート112部、ジメチルイソフタレート76部、5−ナトリウムスルホジメチルイソフタレート6部、エチレングリコール96部、プロピレングリコール50部およびテトラブトキシチタネート(触媒)0.1部を仕込み、180〜230℃で120分間加熱してエステル交換反応を行った。次いで、反応系を250℃まで昇温しかつ反応系の圧力1〜10mmHgとして60分間反応を行い、酸価0.1mgKOH/g、ガラス転移温度58℃および数平均分子量3100の自己分散性ポリエステル(C1)を製造した。
上記で得られた自己分散性ポリエステル(C1)を自己分散性ポリエステル(A1)に代えて用いる以外は、参考例3と同様にして、固形分濃度30%の自己分散性ポリエステル水分散液(C2)を調製した。この水分散液における自己分散性ポリエステル(C1)の樹脂粒子の体積平均粒子径は0.2μmであった。
表3に、参考例3〜5で得られた自己分散性ポリエステル水分散液の特徴をまとめて示す。
(参考例6)
[青色顔料水分散液(I)の調製]
シアン顔料(商品名:Eupolen Blue 69−1501、BASF社製)50部、 アニオン性界面活性剤(商品名:ネオゲンR、第一工業製薬(株)製、)5部およびイオン交換水223部をφ0.5mmのジルコニアビーズを用いて、遊星型ボールミル(フリッチュ社製)で40分間分散した。引き続き、混合装置(商品名:ポリトロンホモジナイザ、型番:PT3000、キネマティカ社製)に投入して室温下に20分間攪拌し、さらに超音波ホモジナイザ(日本精機(株)製)で20分間分散し、体積平均粒子径0.10μmの青色顔料が水中に分散した青色顔料水分散液(I)を調製した。なお、顔料および後述のワックス粒子の平均粒子径は、レーザ回折散乱方式の粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA−EX150)により測定した。
(参考例7)
[赤色顔料水分散液(II)の調製]
シアン顔料に代えてマゼンタ顔料(商品名:Eupolen Red 47−9001、BASF社製)を使用する以外は、参考例6と同様に操作して、平均粒子径0.09μmの赤色顔料が水中に分散した赤色顔料水分散液(II)を調製した。
(参考例8)
[黄色顔料水分散液(III)の調製]
シアン顔料に代えてイエロー顔料(商品名:Eupolen Yellow 09−6101、BASF社製)を使用する以外は、参考例6と同様に操作して、体積平均粒子径0.08μmの黄色顔料が水中に分散した黄色顔料水分散液(III)を調製した。
(参考例9)
[黒色顔料水分散液(IV)の調製]
カーボンブラック(商品名:モーガルL、キャボット社製)50部、非イオン性界面活性剤(商品名:ノニポール400、三洋化成(株)製)5部およびイオン交換水223部をφ0.5mmのジルコニアビーズを用いて、遊星型ボールミル(フリッチュ社製)で40分間分散し、引き続き前述のポリトロンホモジナイザ(PT3000)に投入して室温で20分間攪拌して、体積平均粒子径0.13μmのカーボンブラックが水中に分散した黒色顔料水分散液(IV)を調製した。
(参考例10)
[ワックス水分散液の調製]
パラフィンワックス(商品名:HNP10、融点72℃、日本精蝋(株)製)50部、アニオン性界面活性剤(ネオゲンR)5部およびイオン交換水161部をジャケットつきステンレスビーカに投入し、95℃の加熱下に前述のポリトロンホモジナイザ(PT3000)にて30分間分散し、引き続き圧力吐出型ホモジナイザ(日本精機(株)製)に移して90℃の加熱下に20分間分散処理を行い、体積平均粒子径0.4μmのワックス微粒子が水中に分散した固形分濃度25%のワックス水分散液を調製した。
(実施例1〜4)
[混合液調製工程]
下記表4に示す使用量(部、いずれも固形分換算)で、自己分散型ポリエステル水分散液、顔料水分散液およびワックス水分散液を混合し、必要に応じて純水を加えて、固形分濃度10%のトナー原料混合液を調製した。なお本工程では、自己分散ポリエステル水分散液は、表4に示す使用量のうち85%を用いた。
[凝集物形成工程]
上記で得られたトナー混合液をマックスブレンド攪拌機(日本ガイシ(株)製)に入れ、攪拌下(1500rpm)に塩化マグネシウム(凝集剤)の1%水溶液270部を少量ずつ滴下し、滴下終了後この混合液を1時間攪拌し、凝集物(凝集粒子)を形成した。次に、自己分散性ポリエステル水分散液(表4に示す使用量の残り15%)を混合し、さらに塩化マグネシウムの1%水溶液30部を少量ずつ滴下し、滴下終了後この混合液を1時間攪拌し、凝集物(凝集粒子)を形成した。
[粒子形成工程]
上記で得られた凝集物を含む水媒体を75℃まで加熱して30分間攪拌し、さらに94℃にて20分間攪拌し、粒径および形状の均一化なトナー粒子を形成した。
[洗浄工程]
上記で得られたトナー粒子を含む水媒体をろ過してトナー粒子を分離した。このトナー粒子1部に対して純水4部を混合し、トナー粒子をろ過により分離するという洗浄操作を5回行った。次に、トナー粒子1部に対して塩酸水溶液(pH2)4部で洗浄し、さらに前記と同じ洗浄操作を3回行った後、真空乾燥機を用いて乾燥して実施例1〜4のトナーを調製した。
なお、洗浄に用いる純水は、超純水製造装置(商品名:Ultra Pure Water System CPW−102、ADVANTEC社製)を用いて水道水から調製した導電率0.5μS/cmの純水を使用した。水のpHおよび導電率はラコムテスター(商品名:EC−PHCON10、井内盛栄堂製)を用いて測定した。
上記で得られたトナー粒子100部に対して、シランカップリング剤で表面処理した平均一次粒径20nmのシリカ粒子0.7部を混合し、実施例1〜4のトナーを調製した。
(実施例5)
混合液調製工程において自己分散性ポリエステル水分散液の全量を用い、凝集物形成工程において自己分散性ポリエステル水分散液の添加および2度目の塩化マグネシウム水溶液の添加を行わない以外は、実施例4と同様にしてトナー粒子を製造し、実施例5のトナーを調製した。
(比較例1)
自己分散性ポリエステル水分散液(C2)および顔料水分散液(IV)を表4に示す使用量(部、全て固形分換算)で用いる以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造し、比較例1のトナーを調製した。
(比較例2)
凝集剤をアルキルベンジルアンモニウムクロライド(商品名:サニゾールB50、花王(株)製)の1.5%水溶液に変更する以外は、実施例4と同様にしてトナー粒子を製造し、比較例2のトナーを調製した。
[評価1]
実施例1〜5および比較例1〜2で得られたトナーについて、体積平均粒子径、変動係数および平均円形度を評価した。
さらに、実施例1〜5および比較例1のトナー5部とキャリア(1)100部とを混合し、本発明の現像剤を調製した。この現像剤について、画像濃度、かぶり、環境安定性および転写率を評価した。各評価は、具体的には次のようにして行った。結果を表4に併記する。表4中の「○」は当該評価項目について非常に優れることを意味する。表4中の「−」は、評価を行わなかったことを意味する。比較例2のトナーについては、変動係数の評価が「×」であったので、画像濃度、かぶり、環境安定性および転写率の評価試験を行わずに「×」と評価した。
[体積平均粒子径および変動係数]
トナー粒子の体積平均粒子径(μm)および変動係数(CV値)は、粒度測定器(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)を用い、測定粒子数50000カウント、アパーチャ径100μmで測定した。
具体的には、体積平均粒子径および変動係数(CV値)は次のようにして求められる値である。電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散機(商品名:UH−50、SMT社製)により超音波周波数20kzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、コールターカウンター(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径および体積粒度分布における標準偏差を求めた。変動係数(CV値、%)は、下記式に基づいて算出した。変動係数については、変動係数40以下のものを「○」、変動係数が40を超えるものを「×」と評価した。
CV値(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒子径)×100
[平均円形度]
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(商品名:FPIA−2000、東亜医用電子(株)製)を用いてトナー粒子の投影像の周囲長を測定し、下記式から算出した。平均円形度は通常1以下の値になる。
平均円形度=(投影像と同じ面積をもつ真円の周囲長)/(投影像の周囲長)
[画像濃度]
画像濃度は、評価画像の光学濃度を、分光測色濃度計(商品名:X−Rite938、日本平版印刷機材(株)製)により測定して評価した。光学濃度が1.2以上であるものを「○」、1.2未満であるものを「×」と評価した。なお、評価画像は、現像装置を上記本発明の現像剤用に改造したデジタルフルカラー複合機(商品名:AR−C150、シャープ(株)製)および本発明の現像剤を用い、トナー付着量が0.6mg/cm2になるように調整してフルカラー専用紙(商品名:PP106A4C、シャープ(株)製)にカラートナー像を転写し、外部定着機によって定着させて作製した。
[かぶり]
かぶりは、下記式からかぶり濃度W(%)を算出して評価した。かぶり濃度Wが2.0%以下のものを「○」、2.0%を超えるものを「×」と評価した。
W(%)=[(W1−W2)/W1]×100
式中のW1は、A4サイズのフルカラー専用紙(商品名:PP106A4C、シャープ(株)製)の白度である。W2は、直径55mmの白円を含む原稿を3枚複写して得られる複写画像の白部の白度である。白度は、いずれも白度計(商品名:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
[環境安定性]
本発明の現像剤を現像槽に所定量投入し、(a)温度5℃、湿度10%の低温低湿環境下および(b)温度35℃、湿度80%の高温高湿環境下において1昼夜ずつ保存し、上記画像形成装置(AR−C150)と同じ回転数で2分間回転させ、そのときのトナーの帯電量を測定し、(a)の低温低湿条件下でのトナーの帯電量に対する(b)の高温高湿条件下でのトナーの帯電量の相対比率(変化率)を算出して評価した。相対比率(変化率)が75%を超えれば「○」、75%以下であれば「×」と評価した。
[転写率]
転写率T(%)は下記式から算出し、転写率Tが90%以上であれば「○」、90%未満であれば「×」と評価した。
T(%)=[Mp/(Md+Mp)]×100
式中のMpは所定チャートを複写した紙面上のトナー重量である。Mdは所定チャートの複写の際に像担持体(電子写真感光体)表面に残留するトナー重量である。ここで、所定のチャートとは4cm×4cmのパッチをA4紙上の4隅(紙の端から1.5cmずつ内側に配置)および中央部に配置したものである。
[総合評価]
以上の評価結果に基づいて、総合評価を行なった。総合評価では、変動係数、画像濃度、かぶり、環境安定性および転写率の評価において、「×」の評価が1つもないものを「○」と評価し、「×」の評価が1つ以上あるものを「×」と評価した。
表4から、実施例1〜5によれば、粒度分布の幅が狭く(変動係数が小さく)、画像濃度および転写率が高く、かぶりの発生が少なく、良好な環境安定性を有するなど、種々のトナー特性を高水準で保持するトナーを製造できることがわかる。また、実施例4と実施例5との比較から、凝集物形成工程において、凝集物形成操作を繰返し実行することによって、トナーの帯電性の環境安定性が一層向上することがわかる。また、実施例4と比較例1との比較から、酸価が1〜30mgKOH/gの範囲内にある自己分散性ポリエステル(A1)と、酸価が1〜30mgKOH/gの範囲を外れる自己分散ポリエステル(C1)とでは、酸価が1〜30mgKOH/gの範囲内にある自己分散性ポリエステルを用いたトナーの方が環境安定性の点ではるかに優れることがわかる。また、実施例4と比較例2との比較から、凝集剤として多価金属塩を用いると、体積平均粒子径が小さく、体積平均粒子径の変動幅が小さいトナー粒子を安定的に作製できることがわかる。
(実施例6〜8および比較例3〜5)
参考例1で得られたキャリア100部に対して、実施例1で得られたトナーを表5に示す割合で混合し、本発明の現像剤である実施例6〜8の現像剤(キャリア1〜3を使用)および比較例3〜5の現像剤(キャリア1,4を使用)を調製した。
[評価2]
実施例6〜8および比較例3〜5で得られた現像剤について、トナーの帯電量、現像剤を用いて形成される画像の画像濃度、および現像剤の環境安定性を評価した。各評価は、具体的には次のようにして行った。結果を表5に併記する。表5中の「○」は当該評価項目について非常に優れることを意味する。
[トナーの帯電量]
上記で得られた本発明および比較例の現像剤を100cc容プラスチック製ビンに20g秤量して2本ロール上で攪拌し、1時間経過後のトナーの帯電量(μC/g)を帯電量測定機(トレック社製)で測定した。トナーの帯電量の測定値が20μC/g以上50μC/g以下のものを「○」、それ以外のものを「×」と評価した。
[画像濃度]
本発明および比較例の現像剤500gを用い、評価1と同様にして画像濃度の評価を行った。評価基準も同様とした。
[環境安定性]
本発明の現像剤を現像槽に所定量投入し、(a)温度5℃、湿度10%の低温低湿環境下および(b)温度35℃、湿度80%の高温高湿環境下において1昼夜ずつ保存し、上記画像形成装置(AR−C150)と同じ回転数で2分間回転させ、そのときのトナーの帯電量を測定し、(a)の低温低湿条件下でのトナーの帯電量に対する(b)の高温高湿条件下でのトナーの帯電量の相対比率(変化率)を算出して評価した。相対比率(変化率)が75%を超えれば「○」、75%以下であれば「×」と評価した。
(実施例9〜13および比較例6〜8)
参考例2で得られたキャリア100部に対して、実施例1で得られたトナーを表6に示す割合で混合し、本発明の現像剤である実施例9〜13の現像剤(キャリア5〜8,10を使用)および比較例6〜8の現像剤(キャリア5,8,9を使用)を調製した。
[評価3]
実施例9〜13および比較例6〜8で得られた現像剤について、トナーの帯電量および現像剤のライフ安定性を評価した。トナーの帯電量の評価は、評価2と同様にして行なった。評価基準も同様とした。現像剤のライフ安定性の評価は、具体的には次のようにして行った。結果を表6に併記する。表6中の「○」は当該評価項目について非常に優れることを意味する。
[ライフ安定性]
二成分現像装置を備える市販の複写機(商品名:MX−6200N、シャープ(株)製)の改造機の現像装置の現像槽に現像剤をセットし、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿下において、初期の評価用画像としてべた画像を実写させ、さらにべた画像を50000枚実写した後、繰返し使用後の評価用画像としてべた画像を実写させた。初期および繰返し使用後の評価用画像について、それぞれ評価用画像のうち、トナーが付着する、べた画像部の画像濃度を測定した。
画像濃度は、分光測色濃度計(商品名:X−Rite938、日本平版印刷機材(株)製)によって、べた画像部の反射率濃度を測定し、これを画像濃度とした。画像濃度が1.4以上である場合を良好(○)と評価し、画像濃度が1.4未満である場合を不良(×)と評価した。
また、べた画像の50000枚の実写前および繰返し使用後の評価用画像の形成後に、現像槽内の現像剤を採取し、現像剤中のトナーの帯電量(μC/g)を測定した。トナーの帯電量は、吸引式帯電量測定装置(商品名:210H−2A、TREK株式会社製)にて測定した。べた画像の50000枚の実写前の帯電量を初期の帯電量とし、繰返し使用後の評価用画像の形成後の帯電量を繰返し使用後の帯電量として、初期の帯電量と繰返し使用後の帯電量との差の絶対値を、帯電変化量として求めた。帯電変化量が10μC/g以下である場合を良好(○)と評価し、帯電変化量が10μC/gを超えて15μC/g以下である場合を利用可(△)と評価し、帯電変化量が15μC/gを超える場合を不良(×)と評価した。
以上の結果から、体積平均粒子径比(キャリア体積平均粒子径/トナー体積平均粒子径)が5以上であり、かつトナーの混合率が4〜13%であるものは、帯電量が安定化することがわかる。
また、比較例3および比較例6のように、樹脂被覆層中に導電性粒子が含まれないキャリア(4)または(9)を用いると、帯電量が低下することがわかる。さらに、比較例4のように、トナーの混合率が4%未満であると、環境安定性が得られないことがわかる。また比較例7のように、トナーの混合率が4%未満であると、ライフ安定性が得られないことがわかる。また、比較例5および比較例8のように、トナーの混合率が13%を超えると、帯電量の減少が見られることがわかる。また比較例8のライフ安定性の評価結果から、比較例8のようにトナーの混合率が13%を超えると、初期には高い画像濃度が得られるが、繰返し使用後には画像濃度が低下し、所望の画像濃度が得られないことがわかる。比較例8の現像剤について、ライフ安定性の評価後の状態を目視によって観察したところ、現像剤は凝集傾向を示しており、磁気穂の穂立ち不良が見られた。この穂立ち不良によって、前述のように画像濃度が低下したものと考えられる。