JP2007298967A - フィルムおよびフィルムの製造方法、並びにその利用 - Google Patents

フィルムおよびフィルムの製造方法、並びにその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高く、その方向を任意に変化させることができるフィルムおよびフィルムの製造方法、並びにその利用を提供する。
【解決手段】垂直配向膜上にホモジニアス配向性の棒状重合性液晶化合物の層を形成させる。このとき、上記棒状重合性液晶化合物は、垂直配向膜界面において、傾斜配向する。また、このときの傾斜角は、上記垂直配向膜のラビング処理の程度により、容易に調整することができる。つまり、光学異方性層における屈折率楕円体の傾斜角を、任意に制御することができる。したがって、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高く、その方向を任意に変化させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムおよびフィルムの製造方法、並びにその利用に関するものであって、フィルム平面に対して斜め方向に屈折率を変化させたフィルムおよびフィルムの製造方法、並びにその利用に関するものである。
液晶表示装置(以下、「LCD」ともいう)や有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)などのフラットパネル表示装置(以下、「FPD」ともいう)は、CRTと比較して省スペースや低消費電力である。そのため、近年、FPDは、コンピュータ、テレビ、携帯電話、カーナビゲーションあるいは携帯情報端末の画面として、広く普及している。
FPDには、一般に、反射防止、視野角拡大などのためにさまざまな光学フィルムが用いられる。上記光学フィルムとしては、例えば、屈折率の異なる光学薄膜層を多層化して光の干渉効果で表面の反射率を低減させるアンチリフレクション(以下、「AR」ともいう)フィルムなどの反射防止フィルム、特定の振動方向の光だけ透過させ他の光を遮断する偏光フィルム、STN方式やTN方式などのLCDの干渉色を光学的に色補償する位相差フィルム、偏光フィルムと位相差フィルムとを一体化した楕円偏光フィルム、およびLCDの視野角を拡大する視野角拡大フィルムなどが挙げられる。
また、FPDに用いられる光学フィルムは、適用するFPDの種類によっても異なる。例えば、LCDにおいて広視野角を発現させる光学補償フィルムの場合、LCDの駆動方式によって異なる。
具体的には、VAモードのLCDでは、平面方向に屈折率を変化させた延伸フィルムを用いて光学補償を行うことができる。上記延伸フィルムとしては、従来から光学補償効果を与える位相差フィルムとして用いられているフィルムを用いることができる。上記延伸フィルムは、例えば、ポリビニルアルコールやポリカーボネートなどのフィルムを延伸することにより得ることができる。
一方、TNモードのLCDにおいて、広視野角を発現させるためには、斜め方向に屈折率を変化させた光学フィルムを用いることが好ましい。そのようなフィルムとしては、例えば、WVフィルム(商品名、富士写真フィルム株式会社製)やNHフィルム(商品名、新日本石油株式会社製)等を挙げることができる。これらのフィルムは、延伸フィルムではなく、液晶分子の傾斜配向を利用した光学補償フィルムである。上記液晶分子としては、配向膜界面では水平配向して、空気界面では垂直配向する傾斜配向液晶分子が用いられる。これにより、得られるフィルムは、斜め方向に屈折率を変化させたフィルムとなる。
その他、斜め方向に屈折率を変化させた光学フィルムに関する技術としては、特許文献1および2に開示されている技術を挙げることができる。具体的には、特許文献1には、配向用の基板に、液晶性高分子ポリマーをまず均一に塗布し、次いでポリマーの液晶温度において熱処理してチルト配向させた後、冷却してチルト配向状態を固定化した液晶性高分子フィルムが開示されている。また、当該液晶性高分子フィルムの好適なチルト角は5°から85°の範囲であると記載されている。
また、特許文献2には、オキセタニル基を有するディスコティック液晶性化合物が液晶状態で形成した配向状態を光および/または熱により架橋固定化した光学フィルムが開示されている。前記ディスコティック液晶性化合物の配向がハイブリッド配向であることが好ましいことが記載されている。
特開平7−20434号公報(平成7(1995)年1月24日公開) 特開2004−109381号公報(平成16(2004)年4月8日公開)
しかしながら、WVフィルムに代表される斜め方向に屈折率を変化させたフィルムは、上述したように、水平配向膜と配向膜界面とでは水平配向して、空気界面では垂直配向する傾斜配向液晶分子を利用して製造される。そのため、斜め方向に屈折率を変化させることはできるが、その最も屈折率の変化する方向(屈折率楕円体の傾斜角)を任意にコントロールすることはできない。通常、液晶パネルの視野角を広視野角化するためには、仮に同じ液晶の駆動方式であったとしても、液晶パネル毎に光学補償をする程度が異なる。しかし、これらフィルムにおいては、屈折率楕円体の傾斜角を任意にコントロールできないため、液晶パネルにあわせた十分な光学補償を達成する事ができない。
特許文献1の液晶性高分子フィルムでは、液晶性分子の配向が幅広くコントロールされている。しかし、上記液晶性高分子フィルムの製造には、液晶性高分子のポリマーが用いられている。そのため、ここで開示されている様な液晶ポリマーの場合、当該液晶性高分子をモノドメインの傾斜配向にするためには、液晶ポリマーを液晶状態にする必要があり、液晶配向工程において高温での加熱が必要である。したがって、その加熱処理に耐久する基板を選定する必要がある。つまり、特許文献2の技術では、耐熱性の低い基板を使用することができないという問題がある。また、昇温に従って流動性が増すため、下地との密着性が低下したり、残留応力によって光学異方性が著しく低下したりするという問題が生じる。
特許文献2の光学フィルムでは、傾斜配向(ハイブリッド配向)をする液晶化合物が用いられている。このような傾斜配向をする液晶化合物を用いる場合、傾斜角をコントロールするには、用いる液晶化合物を変更する必要がある。しかし、一般に、どのような液晶化合物を用いれば、どのような傾斜角になるかといった傾斜角の予測は難しい。また、合成できる液晶化合物にも制限がある。そのため、所望の傾斜角の光学フィルムを製造することは極めて困難であるという問題がある。また、液晶化合物の傾斜角は、添加物などでによってもコントロールすることができるが、その場合に、光学異方性層における添加物の複屈折率も考慮しなくてはならない。そのため、このような方法でも、傾斜角をコントロールすることは、極めて困難である。
このように、従来のTNモードの広視野化に適応可能な光学補償フィルムは、様々な問題を抱えており、さらに好適な光学補償フィルムの開発が求められている。
また、特に、近年、FPDの大型化が進んでおり、光学フィルムに起因する問題が新たに発生している。具体的には、FPDが大型化すると、表示画面全体を広い角度から観察したときに、表示画像が着色したり(着色現象とも呼ばれる)、白黒が反転したり(反転現象とも呼ばれる)するという問題が生じる。また、表示画面の上方向である反視角方向に視角を傾けていくと、コントラストが低下するという問題が生じる。そこで、このような問題を解決するためにも、光学フィルムに関して、多くの試行錯誤を経ることがなくとも、任意の方向に光学異方性を与える光学フィルムを提供することが求められている。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高いフィルムおよびフィルムの製造方法、並びにその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、垂直配向用配向膜上にホモジニアス配向性の棒状重合性液晶化合物の層を形成させることにより、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高いフィルムが得られることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、産業上有用な以下の発明を包含する。
(1)垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムであって、上記光学異方性層は、棒状重合性液晶化合物に由来した構造単位を含むポリマーを含有する層からなり、上記棒状重合性液晶化合物は、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであって、上記棒状重合性液晶化合物は、上記垂直配向用配向膜に対して傾斜配向していることを特徴とするフィルム。
(2)上記垂直配向用配向膜は、垂直配向膜にラビング処理が施された配向膜であることを特徴とする(1)に記載のフィルム。
(3)上記光学異方性層における屈折率楕円体のフィルム平面に対する傾斜角が10°〜85°であることを特徴とする(1)または(2)に記載のフィルム。
(4)垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムであって、上記光学異方性層は、棒状重合性液晶化合物を含有する層からなり、上記棒状重合性液晶化合物は、水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであって、上記棒状重合性液晶化合物は、上記垂直配向用配向膜に対して傾斜配向していることを特徴とするフィルム。
(5)逆波長分散を示すことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルム。
(6)上記光学異方性層は、下記式(1)
Figure 2007298967
(式中、Yは2価の基を表し、sおよびtは、それぞれ独立に0または1の整数を表し、G1およびG2は、それぞれ独立に−CR−を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水素原子を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に、2価の環状炭化水素基、2価の複素環基、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基、チオフェニレン基を表し、A1およびA2には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が結合していてもよく、B1およびB2は、それぞれ独立に、−CRR’−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−NR−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、単結合からなる群から選ばれる2価の基を表し、RおよびR’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1およびX2は、それぞれ独立に、下記式(2)
Figure 2007298967
(式中、A3は2価の環状炭化水素基、複素環基を表し、B3は前記B1およびB2と同じ意味を表し、nは1〜4の整数を表す)
で表される2価の基を表し、E1およびE2は、それぞれ独立に、炭素数2〜25のアルキレン基を表し、E1およびE2は、さらに炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が結合していてもよく、P1およびP2は、水素原子または重合性基を表し、P1およびP2の少なくとも一方は重合性基である。)
で表される重合性化合物に由来する構造単位をさらに含むポリマーを含有することを特徴とする(5)に記載のフィルム。
(7)上記光学異方性層は、上記垂直配向用配向膜と接触している第1面と、該第1面と平行な第2面とを有し、上記第1面の近傍に位置する棒状重合性液晶化合物は水平に配向し、上記第2面の近傍に位置する棒状重合性液晶化合物は垂直に配向し、フィルムに対して垂直な第1方向の第1屈折率をnz)、該第1方向と直角な第2方向の第2屈折率をnx、並びに該第1方向および第2方向と直角な第3方向の第3屈折率をnyとするとき、nz>nxおよびnz>nyを満足することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のフィルム。
(8)棒状重合性液晶化合物に由来する構造単位を含むポリマーを含有する光学異方性層からなるフィルムであって、上記光学異方性層は、垂直配向用配向膜上に、棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を塗布することによって、塗膜を形成し、該塗膜を25℃〜120℃で、10秒間〜60分間、加熱し、さらに、上記棒状液晶化合物を光重合により架橋した後、上記垂直配向用配向膜を剥離することにより得られる光学異方性層であり、上記棒状重合性液晶化合物は、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであり、フィルム平面の直交軸方向およびフィルム厚さ方向における屈折率をそれぞれnx、ny、nz、とした場合に、nz>nxおよびnz>nyを満足することを特徴とするフィルム。
(9)垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムの製造方法であって、(A)垂直配向用配向膜上に、棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を塗布する工程と、(B)上記工程(A)で形成された塗膜を25〜120℃で、10秒間〜60分間加熱させる工程とを少なくとも含み、上記棒状重合性液晶化合物が、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであることを特徴とするフィルムの製造方法。
(10)(C)上記棒状重合性液晶化合物を光重合により架橋する工程をさらに含むことを特徴とする(9)に記載のフィルムの製造方法。
(11)上記(A)工程の前に、(D)上記垂直配向用配向膜をラビング処理する工程をさらに含むことを特徴とする(9)または(10)に記載のフィルムの製造方法。
(12)(1)〜(8)のいずれかに記載のフィルムを積層してなることを特徴とする偏光フィルム。
(13)(1)〜(8)のいずれかに記載のフィルム、または(12)に記載の偏光フィルムを備えることを特徴とするフラットパネル表示装置。
本発明にかかるフィルムでは、垂直配向膜上に、光学異方性層が形成されている。上記光学異方性層は、水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する棒状重合性液晶化合物を含有する層である。それゆえ、光学異方性層における屈折率楕円体の傾斜角を、任意に制御することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
<I.本発明にかかるフィルム>
本発明にかかるフィルムは、垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムである。上記垂直配向用配向膜は、支持基材上に形成される。すなわち、本発明にかかるフィルムは、支持基材上に、上記垂直配向用配向膜および光学異方性層が順に積層されたフィルムである。すなわち、本発明にかかるフィルムには、支持基材、垂直配向用配向膜、および光学異方性層からなるフィルム、該フィルムから支持基材が剥離されたフィルム(換言すれば、垂直配向用配向膜および光学異方性層からなるフィルム)、および該フィルムから支持基材と垂直配向用配向膜とが剥離されたフィルム(換言すれば、光学異方性層からなるフィルム)が含まれる。また、本発明にかかるフィルムでは、光学異方性層に対向する面は、空気層である。
上記光学異方性層は、棒状重合性液晶化合物が重合したポリマーを含有する層からなる。上記棒状重合性液晶化合物としては、図1(左)に示すように、水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有する棒状重合性液晶化合物(図中、楕円)が用いられる。このような棒状重合性液晶化合物を用いれば、上記棒状重合性液晶化合物は、上記垂直配向用配向膜に対して傾斜配向する。より具体的には、垂直配向用配向膜のラビングにより、棒状重合性液晶化合物は、図1(中)に示すように、傾斜してハイブリッド配向したり、図1(右)に示すように、傾斜配向したりする。また、垂直配向用配向膜のラビング処理の程度に応じて、棒状重合性液晶化合物の、図1(中)に示すように、傾斜してハイブリッド配向したり、図1(右)に示すように、傾斜配向したりする角度が変化する。それゆえ、本発明にかかるフィルムでは、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高く、その方向を任意に変化させることができる。したがって、本発明にかかるフィルムは、TNモード等の液晶パネルにおいて、広い視野角を発現させるのに好適な光学フィルムとして用いることができる。
なお、便宜上、図1では、垂直配向用配向膜を「配向層」、棒状重合性液晶化合物を「液晶分子」、光学異方性層を「液晶層」と記載している。
このような本発明にかかるフィルムは、その特性として、フィルム平面の直交軸方向およびフィルム厚さ方向における屈折率をそれぞれnx、ny、nz、とした場合に、nz>nxおよびnz>nyを満足するフィルムである。つまり、フィルムの平面方向に屈折率変化が小さく、フィルムの法線方向に屈折率変化が大きいフィルムである。それゆえ、本発明にかかるフィルムは、フィルムの平面方向に屈折率変化が少なく、フィルムの法線方向に屈折率変化が大きいという効果を奏する。したがって、本発明にかかるフィルムは、IPSモード等の液晶パネルに好適な光学フィルムとして用いることができる。なお、nz、nx、およびnyは、それぞれ、フィルムに垂直な第1方向の第1屈折率(nz)、フィルムの第1方向と直角な第2方向の第2屈折率(nx)、およびフィルムの第1方向及び第2方向と直角な第3方向の第3屈折率(ny)と称することもできる。
本発明にかかるフィルムは、その一実施形態として、硬化前に、液晶を形成するためのモノマーまたはオリゴマー(具体的には、棒状重合性液晶化合物)の配向性を制御することにより、硬化後の液晶層の配向性が制御される。この実施形態では、硬化前のモノマーの配向性と、硬化後のポリマー、すなわち、液晶の配向性とは、同一であると考えられる。
また、本発明にかかるフィルムは、光学異方性を有している。上記光学異方性としては、例えば、チルト角、位相差値などが挙げられる。本発明にかかるフィルムの光学異方性について、図2に基づいてより詳細に説明すると、以下の通りである。
図2に示すように、フィルム1の光学特性を示す屈折率楕円体22において、3次元の主屈折率na、nb、ncが定義される。Y軸と主屈折率nbとのなす角をチルト角23と定義され、Z方向から観察したときにフィルム上にできる垂直楕円面24の長軸nyと短軸nxが定義されnyとnxの差と膜厚dの積(ny−nx)・dを位相差値と定義される。
位相差値の測定法としては、例えば、エリプソメータ測定などの方法が挙げられる。チルト角の測定法としては、例えば、位相差値の測定において、光の入射角依存性を測定し、理想屈折率楕円体の位相差値の入射角依存による変化の計算値を用いてカーブフィッティングから算出する方法などが挙げられる。
通常、位相差値としては、5〜700nm程度であり、好ましくは、50〜400nm程度である。
以下、上記支持基材、垂直配向膜、および光学異方性層について、より詳細に説明する。
(I−1)支持基材
上記支持基材は、当該支持基材上に垂直配向用配向膜を形成できるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、および透光性フィルムを挙げることができる。なお、上記透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
一般に、重合性液晶化合物を用いた光学異方性層は、薄膜であり、例えば、本発明のフィルムを用いる貼合工程、フィルムを運搬、保管などを実施する工程など、フィルムの強度が必要な工程でも、支持基材を用いることにより、破れなどなく容易に取り扱うことができる。
(I−2)垂直配向用配向膜
本発明のフィルムでは、垂直配向用配向膜は、光学異方性層の塗工等により溶解しない溶剤耐性を持つこと、溶媒の除去や液晶の配向の加熱処理による耐熱性をもつこと、ラビングによる摩擦などによる剥がれなどが起きないこと等が必要であり、ポリマー若しくはポリマーを含有する組成物である。
上記ポリマーは、上記支持基材上に形成されるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いても良いし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
また、このようなポリマーは、ステロイドのような脂環基、長鎖アルキル基、フッ化アルキル基、芳香環構造およびフッ素含有芳香環構造等の有機基を導入することができる。上記に示したような構造を導入することにより、棒状重合性液晶化合物は、より垂直配向しやすくなる。また、ステロイドのような脂環基、長鎖アルキル基、フッ化アルキル基、芳香環構造およびフッ素含有芳香環構造等の有機基を有する化合物を混入したり、オニウム塩、セシウムイオン、ルビジウムイオンなどの無機塩や有機酸塩類を添加した組成物とすることによっても、棒状重合性液晶化合物はより垂直配向しやすくなる。
上記ポリマーの具体例としては、例えば、特開平2001−305549号公報、WO2003−042752、特開2005−139228号公報、液晶第8巻第4号216頁等に開示されるポリイミド及びそのポリアミック酸や、特開平2005−196015号公報、特開平2005−315988号公報及び特開平2005−196016号公報等に開示されるポリビニルアルコール等を挙げることできる。また、後述の実施例で使用する、垂直配向用ポリイミド配向膜(商品名SE−5300、日産化学社製)なども垂直配向用のポリイミド配向膜である。
垂直配向用配向膜の厚さは、通常、10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲内であれば、得られるフィルムを軽量化することができる。また、垂直配向用配向膜が持っている光学特性が、得られるフィルムに及ぼす影響を小さくすることができる。
上記垂直配向用配向膜を用いることにより、上記棒状重合性液晶化合物をフィルム平面に対して、傾斜してハイブリッド配向させたり、傾斜配向させたりすることができる。それゆえ、得られるフィルムは、傾斜配向フィルムとなる。
(I−3)光学異方性層
上記光学異方性層は、上記垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性を有する層である。上記光学異方性層は、棒状重合性液晶化合物に由来する構造単位を含むポリマーを含有する層からなる。上記光学異方性層には、棒状重合性液晶化合物以外の化合物に由来する構造単位が含まれたポリマーを含有していてもよい。例えば、本発明にかかるフィルムに所望の波長分散特性を付与するために、棒状重合性液晶化合物に由来する構造単位に、さらに特定の重合性化合物に由来する構造単位を含むポリマーを用いてもよい。また、棒状重合性液晶化合物および特定の重合性化合物とは異なる液晶化合物(以下、説明の便宜上、「その他の液晶化合物」と称することもある)に由来する構造単位が含まれていてもよい。さらに、重合開始剤や、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤等が含まれていてもよい。なお、光学異方性層を構成する化合物の詳細については後述する。
上記光学異方性層の厚さは、得られるフィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))が所望の値となるように、適宜調整すればよい。Re(λ)は、下記数式(a)によって決定される。つまり、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚dを調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ)・・・(a)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける屈折率異方性を表す。)
また、本発明にかかるフィルムの好ましい一実施形態では、上記垂直配向用配向膜はラビング処理されており、上記棒状重合性液晶化合物の屈折率楕円体は、垂直配向用配向膜界面では、フィルム平面に対して10°〜85°の傾斜角をもつことが好ましい。これにより、当該フィルムは、傾斜配向フィルムとなる。
以下、上記光学異方性層に含有させることができる棒状重合性液晶化合物、その他の液晶化合物、重合性化合物、およびその他の構成化合物について詳細に説明する。
(I−3−1)棒状重合性液晶化合物
上記光学異方性層に含まれる棒状重合性液晶化合物は、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面で水平に配向する棒状重合性液晶化合物である。上記「モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面で水平に配向する棒状重合性液晶化合物」とは、例えば、表面を水平処理したガラス基板上や表面に水平配向膜としてポリビニルアルコールなどの水平配向を誘起する配向膜を設けた基材上に棒状重合性液晶化合物をモノマーとして塗布した時に得られる配向が配向膜上では水平になり、空気界面では水平に配向する棒状重合性液晶化合物である。
このようないわゆるホモジニアス配向性を与える棒状重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)または式(8)で表される化合物が挙げられる。
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B14-A14-B15-E12-P12 (3)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B14-A14-B13-F11 (4)
P11-B11-A11-B12-A12-B14-A14-B13-F11 (5)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-F11 (6)
P11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (7)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (8)
なお、上記式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)および式(8)において、A11、A12、およびA14は、それぞれ独立に、2価の環状炭化水素基、2価の複素環基、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基、またはチオフェニレン基を表す。A11、A12、およびA14には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン原子が結合していてもよい。
B11、B12、B13、B14、およびB15は、それぞれ独立に、−CRR’−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−NR−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、および単結合からなる群(なお、RおよびR’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)より選ばれる2価の基を表す。
E11およびE12は、それぞれ独立に、炭素数2〜25のアルキレン基を表す。さらに、E11およびE12には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン原子が結合していてもよい。
式(4)〜(8)のP11は重合性基を表す。式(3)のP11およびP12は、水素原子または重合性基を表し、P11およびP12の少なくとも一方は重合性基である。
F11は、水素原子、アルキル基、ニトリル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子などのハロゲン原子又は水素原子を表す。
その他の液晶化合物としては、とりわけ、以下の式(3−1)〜(3−6)、式(6−1)、式(6−2)、式(8−1)、および式(8−2)
Figure 2007298967
のいずれかで表される液晶化合物や、下記式(3−7)〜(3−12)、(4−1)〜(4−4)、式(5−1)、式(5−2)、式(7−1)、および式(7−2)
Figure 2007298967
のいずれかで表される液晶化合物が、入手容易であることから好ましい。
より具体的には、後述の実施例で使用するRMS−03−001(商品名、メルク株式会社製)、LC−242(商品名、BASF株式会社製)に含有される棒状重合性液晶化合物を挙げることができる。
本発明にかかるフィルムでは、棒状重合性液晶化合物として、従来、用いられている傾斜若しくはハイブリッド配向性を与える棒状重合性液晶化合物ではなく、上述したようなホモジニアス配向性を与える棒状重合性液晶化合物を用いることにより、光学異方性層における屈折率楕円体の傾斜角を、任意に制御することができる。より詳しく言えば、垂直配向用配向膜に施すラビング処理の程度などにより上記棒状重合性液晶化合物の配向状態を変更することによりなされる。上記棒状重合性液晶化合物を液晶状態で配向させたとき、上記棒状重合性液晶化合物は、その傾きの違いにより、光学異方性層における屈折率楕円体の傾斜角が変わる。
それゆえ、本発明にかかるフィルムは、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高く、その方向を任意に変化させたものとなる。
また、上記棒状重合性液晶化合物は、どのような重合様式で重合するものであってもよい。例えば、熱重合性の棒状重合性液晶化合物や、光重合性の棒状重合性液晶化合物を挙げることができる。本発明では、特に光重合性の棒状重合性液晶化合物であることが好ましい。これによれば、棒状重合性液晶化合物を低温で重合し、固定化することができる。それゆえ、上記支持基材の選択の幅が広がると同時に、工業的にも有利である。
(I−3−2)重合性化合物
上記光学異方性層のポリマーには、得られるフィルムの所望の波長分散特性を付与するために、特定の重合性液晶化合物に由来する構造単位をさらに含むポリマーを用いてもよい。
上記「特定の重合性化合物」とは、上記棒状重合性液晶化合物に併せて用いることにより、得られるフィルムに所望の波長分散特性を付与できるものである。
このような重合性化合物は、下記式(1)
Figure 2007298967
(式中、Yは2価の基を表し、sおよびtは、それぞれ独立に0または1の整数を表し、G1およびG2は、それぞれ独立に−CR−(なお、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、または水素原子を表す)を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に、2価の環状炭化水素基、2価の複素環基、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基、またはチオフェニレン基を表し、A1およびA2には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン原子が結合していてもよく、B1およびB2は、それぞれ独立に、−CRR’−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−NR−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、および単結合からなる群(なお、RおよびR’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)より選ばれる2価の基を表し、X1およびX2は、それぞれ独立に、下記式(2)
Figure 2007298967
(式中、A3は2価の環状炭化水素基、または複素環基を表し、B3は、−CRR’−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−NR−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、および単結合からなる群(なお、RおよびR’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)より選ばれる2価の基を表し、nは1〜4の整数を表す)
で表される2価の基を表し、E1およびE2は、それぞれ独立に、炭素数2〜25のアルキレン基を表し、さらに、E1およびE2には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン原子が結合していてもよく、P1およびP2は、水素原子または重合性基を表し、P1およびP2の少なくとも一方は重合性基である。)
で表される化合物である。
上記式(1)中のYは、2価の基を表し、この基は屈曲構造を有していることが好ましい。ここで、「屈曲構造」とは、Yの結合基であってA1を含む基に結合する結合基と、Yの結合基であってA2を含む基に結合する結合基とから形成される角度が、100°〜140°である構造を意味する。また、上記角度は、110°〜130°であることが好ましい。上記範囲であれば、重合性化合物と棒状重合性液晶化合物とを有機溶媒に溶解したときの相溶性が向上する。それゆえ、得られるフィルムの位相差値を向上させることができる。
具体的なYとしては、下記式(9)
Figure 2007298967
で表される2価の基などを例示することができる。
Yの結合基であってA1を含む基に結合する結合基と、Yの結合基であってA2を含む基に結合する結合基とから形成される角度を、A1、A2、C1、D1、D2、(G1)s、(G2)tで表すと、上記式(1)においてs=t=1である場合、当該角度は、下記式(9−1)の両矢印で表すことができる。同様に、上記式(1)においてs=t=0の場合、当該角度は、下記式(9−2)で表すことができる。
Figure 2007298967
上記式(9)において、C1は4級炭素原子または4級ケイ素原子を表す。そのうち、製造が容易であることから、C1は4級炭素原子であることが好ましい。
上記式(9)において、D1およびD2は、それぞれ、環状炭化水素基、複素環基、炭素数1〜5の直鎖状炭化水素基、または炭素数1〜5の分枝状炭化水素基を表す。D1およびD2に用いられる環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数5〜12程度のシクロアルキル基;下記式
Figure 2007298967
のいずれかで表される炭素数6〜18程度の芳香族基などを挙げることができる。
また、D1およびD2に用いられる複素環基としては、5員環、6員環などの下記式
Figure 2007298967
のいずれかで表される基などを挙げることができる。
D1とD2とは、炭素数1〜5の炭化水素基、アミノ基、エーテル基、チオエーテル基、または単結合で連結されていてもよい。また、D1およびD2には、水酸基、アミノ基、チオール基、環状炭化水素基、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状アルキル基、炭素数1〜5の直鎖状もしくは分枝状アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、ニトリル基、ニトロ基、またはハロゲン原子が結合していてもよい。
ここで、上記炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基、アルキレン基の単結合が二重結合や三重結合に置換された連結基などを挙げることができる。また、上記環状炭化水素基としては、D1およびD2に用いられるのと同様の環状炭化水素基を例示することができる。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子としては、前記A1およびA2に置換される基として例示されたアルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子を同様に例示することができる。
上記式(9)で表される基の具体例としては、下記式(D−1)〜(D−18)
Figure 2007298967
で表される2価の置換基(ここでは、4級原子C1として、製造が容易なことから炭素原子が例示されている)や、C1が炭素原子であり、D1およびD2が共にフェニル基である置換基などを挙げることができる。
なお、前記例示された構造に含まれる水素原子の一部は、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜4程度のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;ニトリル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
Yとしては、製造の容易さの観点から、C1が炭素原子であり、D1およびD2が共にフェニル基である置換基、またはび上記式(D−1)〜(D−12)で表される置換基であることが好ましい。とりわけ、逆波長分散を顕著に示すという観点から、上記式(D−1)〜(D−12)で表される置換基であることが好ましい。
上記式(1)中の(G1)sおよび(G2)tにおいて、sおよびtは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。
sおよびtが1の場合、G1およびG2は、それぞれ独立して、−CR−である。ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。
また、sおよびtが0の場合、YとA1とは、単結合し、YとA2とは、単結合している。
上記式(1)において、A1およびA2は、それぞれ独立に、2価の環状炭化水素基、2価の複素環基、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基、またはチオフェニレン基を表す。ここで、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基、またはチオフェニレン基中のメチレン基、エーテル基、チオエーテル基はB1およびB2と結合している。
A1およびA2に用いられる2価の環状炭化水素基としては、例えば、下記式
Figure 2007298967
のいずれかで表される炭素数6〜18程度の芳香族基、下記式
Figure 2007298967
で表される5員環および6員環などからなる脂環式基、および下記式
Figure 2007298967
のいずれかで示される5員環および6員環などからなる複素環基等を挙げることができる。
なお、A1およびA2として、前記例示された基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜4程度のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;ニトリル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
製造の容易さの観点から、A1およびA2は、ともに同種類の基であることが好ましい。特に、A1およびA2は、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、またはベンゼン環の炭素原子が1〜3個窒素原子で置換された2価の基であることが好ましく、1,4−フェニレン基であることがさらに好ましい。
B1およびB2は、それぞれ独立に、−CRR’−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−NR−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、単結合からなる群から選ばれる2価の基を表す。ここで、RおよびR’はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、エチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、または、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。
また、製造の容易さの観点から、B1およびB2は、ともに同種類の2価の基であることが好ましい。
上記式(1)において、sおよびtが0である場合、B1およびB2は、−CRR’−、−O−、−S−またはNR−であることが好ましい。
B1およびB2が上記結合基であると、A1(A2)とB1(B2)との連結部と、B1(B2)とX1(X2)との連結部とが屈曲することになり、連結基Yで生じる角度を変えることができるため、混合する棒状重合性液晶化合物等との相溶性が向上する傾向にあることから好ましい。
上記式(1)において、sおよびtが1である場合であって、好ましくは、さらにG1およびG2がメチレン基である場合、B1およびB2は、単結合、−C≡C−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−C(=O)−O−であることが好ましい。
B1およびB2が上記結合基であると、製造が容易であり、上記式(1)中のX2−B2−A2およびA1−B1−X1がそれぞれ直線状となることから、配向性を向上させる傾向があることから好ましい。
上記式(1)におけるX1およびX2は、下記式(2)
Figure 2007298967
で表される2価の基を表す。
上記式(2)中、A3は2価の環状炭化水素基または2価の複素環基を表す。具体的には、A3としては、A1およびA2で例示された2価の環状炭化水素基および2価の複素環基を同様に例示することができる。製造の容易さの観点から、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、またはベンゼン環の炭素原子が1〜3個窒素原子で置換された2価の基であることが好ましく、1,4−フェニレン基であることがさらに好ましい。
また、製造の容易さの観点から、X1およびX2がともに同種類の2価の基であることが好ましい。
B3は、B1と同様に定義することができる。中でも、製造の容易さの観点から、−OC(=O)−、−C(=O)−O−、−O−、または単結合であることが好ましい。
nは1〜4の整数を表す。nが2以上の場合、後述する表1中の化合物(1−2)〜(1−4)のように、A3およびB3からなる構造単位は互いに異なっていてもよい。
得られる重合性化合物を含む組成物をキャストする際、取り扱いが容易であるとの観点から、nとしては、1または2が好ましい。さらに、製造の容易さの観点から、nは1であることが好ましい。
E1およびE2は、それぞれ独立に、炭素数2〜25のアルキレン基、好ましくは、炭素数4〜10のアルキレン基を表す。
E1およびE2の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、ニトリル基、ニトロ基、またはハロゲン原子によって置換されていてもよいが、水素原子のままであることが好ましい。
E1およびE2がともに同種類のアルキレン基であると、製造が容易なことから好ましい。
P1およびP2は、水素原子または重合性基を表す。
本明細書において、「重合性基」とは、重合性化合物および上述の棒状重合性液晶化合物を重合させることのできる置換基を意味する。具体的には、ビニル基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4もアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基、およびチオイソシアネート基などを例示することができる。
また、重合性基には、上記例示の基とE1またはE2とを連結するために、B1またはB2に例示される基が含まれていてもよい。
中でも、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がさらに好ましい。これらの基を用いれば、光重合させる際の取り扱いが容易な上、製造も容易である。
P1およびP2の少なくとも一方は重合性基であることが好ましく、P1およびP2がいずれも重合性基であることがさらに好ましい。これにより、得られるフィルムの膜硬度を良好なものとすることができる。
上記重合性化合物の具体的な化合物としては、表1〜4で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2007298967
Figure 2007298967
Figure 2007298967
Figure 2007298967
上記光学異方性層には、上記重合性化合物のいずれかが単独で含まれていてもよいが、異なる複数の重合性化合物が含まれていてもよい。中でも、表1および2に記載の化合物が含まれていることが好ましい。このような化合物を用いれば、本発明にかかるフィルムは、逆波長分散を顕著に示すことができる。さらに、表1に記載の化合物を含むことがより好ましい。このような化合物を用いれば、本発明にかかるフィルムを容易に製造することができる。
ここで、表の表記について、化合物(1−1)を例にして説明する。「A1=A2」とは、A1とA2とが同一のフェニレン基であることを表す。「B1=B2のA側」とは、エステル基のエーテル部がA(フェニレン基)に結合していることを表す。また、「B1=B2のX側」とはエステル基のカルボニル部がX(フェニレンエーテル基)に結合していることを表す。さらに、側の指定がない場合はいずれの方向に置換してもよいことを表す。
重合性化合物としては、表1または表2に記載の化合物が好ましく、表1に記載の化合物がより好ましく、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−11)、(1−45)、(1−49)、および(1−50)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 2007298967
上記式(1−1)で表される化合物のように、上記式(1)中のs=t=0である重合性化合物の製造方法としては、例えば、C1、D1およびD2の構造を与える化合物として対応するカルボニル化合物を用い、該カルボニル化合物にA1(A2)、B1(B2)、X1(X2)、E1(E2)およびP1(P2)を含む化合物のハロゲン化物を作用させて脱水縮合して得る方法などを挙げることができる。A1(A2)、B1(B2)、X1(X2)、E1(E2)およびP1(P2)を含む化合物は、A1(=A2)、B1(=B2)、X1(=X2)、E1(=E2)、P1(=P2)の各構造単位を含む化合物を脱水縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、ウィッティッヒ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、またはアルドール反応などで結合することにより製造することができる。
上記式(1−2)で表される化合物のように、上記式(1)中のsおよびtが1であって、G1およびG2がともにメチレン鎖である重合性化合物の製造方法としては、例えば、前記カルボニル化合物に、C2とA1(C3およびA2)との構造単位を与える化合物としてベンゼン環に沃素を有するハロゲン化ベンジルをアルカリ金属水酸化物とともに反応させて、A1(A2)、C1、G1(G2)、D1およびD2を含む化合物を合成し、別途合成したB1(B2)、X1(X2)、E1(E2)およびP1(P2)を含む化合物と反応させる方法、同様にして得られたA1、A2、C1、G1、G2、D1およびD2を含む化合物から、B1(B2)、X1(X2)、E1(E2)およびP1(P2)の構造を与える化合物を順次、反応させる方法などを挙げることができる。
得られるフィルムの波長分散特性は、上記棒状重合性液晶化合物および重合性化合物に由来する構造単位の割合によって、決定されるものである。本発明では、上記重合性化合物を含有させない場合、得られるフィルムは、正波長分散を示すフィルムとなる。一方、上記重合性化合物に由来する構造単位の含有量を増加させることにより、正波長分散から逆波長分散へと波長分散特性を任意に調整することができる。したがって、本発明にかかるフィルムは、上記重合性化合物を、所望の波長分散特性が得られる量だけ含有していることが好ましい。所望の波長分散特性を付与するのに必要な上記重合性化合物の含有量は以下のようにして決定することができる。例えば、上記棒状重合性液晶化合物と重合性化合物とを含む組成物に含まれる重合性化合物に由来する構造単位の割合を調整し、得られるフィルムの位相差値を求める。その結果から、重合性化合物に由来する構造単位の含有量を決定することができる。
(I−3−3)その他の構成化合物
〔重合開始剤〕
上記光学異方性層には、上記棒状重合性液晶化合物や重合性化合物を重合させるための重合開始剤が含有されていてもよい。上記重合開始剤は、上記化合物を重合させるために用いることができるものであればよく、特に限定されるものではない。本発明にかかるフィルムの好ましい一実施形態として、棒状重合性液晶化合物は光重合していることが好ましい。そのため、上記重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、およびイルガキュア369(以上、全てチバスペシャルティケミカルズ社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170(以上、全て旭電化)などを挙げることができる。
このような光重合開始剤を用いることにより、上記棒状重合性液晶化合物および重合性化合物を光重合させることができる。また、このような重合開始剤の含有量は、棒状重合性液晶性化合物の配向性が乱さないためにも、後述する液晶化合物含有組成物に対して10重量%以下であることが好ましい。
〔重合禁止剤〕
上記光学異方性層には、重合禁止剤が含有されていてもよい。上記重合禁止剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロキノン、アルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6、−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類、およびβ−ナフトール類を挙げることができる。
上記重合禁止剤を用いることにより、上記棒状重合性液晶化合物や重合性化合物の重合を制御することができ、光学異方性層の安定性を向上させることができる。
〔光増感剤〕
また、上記光学異方性層には、光増感剤が含有されていてもよい。上記光増感剤は、特に限定されるものではないが、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類、アントラセン、アルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン、およびルブレンを挙げることができる。
上記光増感剤を用いることにより、上記棒状重合性液晶化合物や重合性化合物の重合を高感度化することができる。
〔レベリング剤〕
さらに、上記光学異方性層には、レベリング剤が含有されていてもよい。上記レベリング剤は、特に限定されるものではなく、従来公知のレベリング剤を添加することができる。上記レベリング剤としては、例えば、放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、および塗料添加剤(信越シリコーン社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)などを挙げることができる。
上記レベリング剤を用いることにより、光学異方性層を平滑化することができる。さらに、上記フィルムの製造過程で、後述する液晶化合物含有組成物の流動性を制御したり、上記棒状重合性液晶化合物や重合性化合物の架橋密度を調整したりすることができる。
<II.本発明にかかるフィルムの製造方法>
本発明にかかるフィルムの製造方法は、上述した本発明にかかるフィルムを製造するのに好適に用いることができるものである。具体的には、具体的には、(A)垂直配向用配向膜上に、先述の棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を塗布する工程(以下、「液晶化合物含有組成物塗布工程」ともいう)と、(B)上記液晶化合物含有組成物塗布工程で形成される塗膜を、25℃〜120℃で、10秒間〜60分間、加熱する工程(以下、「(液晶化合物含有組成物加熱工程」ともいう)とを少なくとも含む。
上記構成によれば、棒状重合性液晶化合物は未重合状態であるので、得られるフィルムは、未重合フィルムとなる。また、ラビング処理された垂直配向膜上に棒状重合性液晶化合物を、フィルム平面に対してハイブリッドもしくは傾斜配向させることができる。したがって、上記構成によれば、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高い未重合フィルムを製造することができる。本発明にかかるフィルムの製造方法には、このような未重合フィルムの製造方法も含まれる。
上記垂直配向用配向膜および棒状重合性液晶化合物は、<I.本発明にかかるフィルム>で述べたものを同様に用いることができる。上記工程を経て形成される光学異方性層では、上記棒状重合性液晶化合物は、上記垂直配向用配向膜に対して傾斜配向している。それゆえ、フィルム平面に対して、斜め方向に屈折率が変化したフィルムを製造することができる。また、本発明にかかるフィルムの製造方法では、垂直配向用配向膜に施すラビング処理の程度を変化させることで光学異方性層における屈折率楕円体の傾斜角を、任意に制御することができる。それゆえ、様々な傾斜角のフィルムを容易に製造することができる。
さらに、本発明にかかるフィルムの製造方法は、上記液晶化合物含有組成物塗布工程および液晶化合物含有組成物加熱工程に加えて、(C)液晶化合物含有組成物加熱工程で得られる未重合フィルムを重合(架橋)する工程(以下、「液晶化合物重合工程」ともいう)や、(D)垂直配向用配向膜をラビングする工程(以下、「ラビング工程」ともいう)、(E)垂直配向用配向膜上記に塗布する棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を調製する工程(以下、「液晶化合物含有組成物調製工程」ともいう)、(F)支持基材に垂直配向用配向膜を形成させる工程(以下、「垂直配向用配向膜形成工程」ともいう)を含んでいてもよい。これら4つの工程は、全て含んでいてもよいし、いずれか1つ、もしくは2つだけ含んでいてもよい。もちろん、いずれをも含んでいなくてもよい。
以下、垂直配向用配向膜形成工程、ラビング工程、液晶化合物含有組成物調製工程、液晶化合物含有組成物塗布工程、液晶化合物含有組成物加熱工程、および液晶化合物重合工程について、詳細に説明する。
(II−1)垂直配向用配向膜形成工程
上記垂直配向用配向膜形成工程では、支持基材上に垂直配向用配向膜を形成する。上記支持基材は、特に限定されるものではない。例えば、<I.本発明にかかるフィルム>で例示した支持基材を用いることができる。上記垂直配向用配向膜についても、特に限定されるものではなく、例えば、<I.本発明にかかるフィルム>で例示した垂直配向用配向膜を用いることができる。このような垂直配向用配向膜を用いれば、延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。それゆえ、支持基材上にFPDの大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを提供できるという効果を奏する。
上記支持基材上に垂直配向用配向膜を形成する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記支持基材上に、垂直配向用配向膜の材料を塗布し、その後、アニールすることにより、上記支持基材上に垂直配向用配向膜を形成することができる。
このようにして得られる垂直配向用配向膜の厚さは特に限定されるものではないが、10nm〜10000nmであることが好ましく、10nm〜1000nmであることがより好ましい。上記範囲とすれば、後述する光学異方性層形成工程において、棒状重合性液晶化合物を当該垂直配向用配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
(II−2)ラビング工程
ラビング工程では、上記垂直配向用配向膜形成工程で得られた垂直配向用配向膜をラビング処理する。これにより、後述する液晶化合物含有組成物加熱工程において、棒状重合性液晶化合物を、空気層界面では、水平配向のまま、当該垂直配向用配向膜界面では傾斜配向させることができる。なお、上記垂直配向用配向膜は、上記垂直配向用配向膜形成工程で得られたものでなくてもよく、同等の物性をもつ垂直配向用配向膜であって、別途用意したもの、例えば、市販品であってもよい。
上記垂直配向用配向膜をラビングする方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている垂直配向用配向膜に接触させる方法を用いることができる。
上記ラビング布は、特に限定されるものではなく、ラビングロールに巻きつけることができる布であればよい。上記ラビング布の材質としては、レーヨン、コットン、ウール、シルクなど様々な材質を挙げることができる。また、同じ材質でも、布に使用されている糸の太さや長さなどで、そのラビング状態を変えることができる。ラビング状態を均一にするためには、糸の太さや長さが均一であることが好ましい。
上記ラビングロールの径は、一般的には、その回転を安定的に制御するために、直径10mm〜300mmであることが好ましい。また、上記ラビングロールの径を変えることにより、配向膜に接触する角度や面積を調整することができる。
また、上記ラビングロールの回転数は、上記ラビングロールの径にもよるが、安定的にラビングロールを回転させるために、100〜2000rpmとすることが好ましい。また、上記ラビングロールの回転数を変えることによっても、ラビングのかかり具合を調整することができる。
上記ステージのステージ速度、および垂直配向用配向膜の搬送速度は、一般的には、垂直配向用配向膜の搬送速度が遅すぎても速すぎても安定的に搬送することが難しいため、0.1m/分〜10m/分に制御することが好ましい。また、ステージ速度並びに垂直配向用配向膜の搬送速度を変えることにより、ラビングのかかり具合を調整することができる。
さらに、上記例示したラビング方法において、押し込み量および接触長は、特に限定されるものではなく、ラビング布の糸の長さに応じて、所望のラビング効果が得られるように設定すればよい。なお、上記「押し込み量」とは、垂直配向用配向膜にラビングロールを押し当てる量であり、配向膜に押し当てるラビング布の毛の長さで表される。上記のラビング方法では、ラビング布の布に対して垂直方向に糸が出ている分だけ押し当てることができる。また、上記「接触長」とは、ラビングロールと基材の接している長さを表す。上記接触長は、ラビングロールが垂直配向用配向膜に接触してから、ラビングロールを完全に押し当てた時にラビングロールと垂直配向用配向膜とが接している長さまで変えることができる。
このように、上記ラビング工程では、上記例示したような方法で、上記垂直配向用配向膜をラビング処理するが、ラビング工程における垂直配向用配向膜のラビング回数は、特に限定されるものではない。すなわち、上記ラビング工程においては、垂直配向用配向膜を1回だけラビング処理してもよいし、配向を制御するために複数回ラビング処理してもよい。
(II−3)液晶化合物含有組成物調製工程
液晶化合物含有組成物調製工程では、棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を調製する。具体的には、上記棒状重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解した溶液を調製する。上記棒状重合性化合物としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べた棒状重合性液晶化合物を用いればよい。また、上記有機溶媒は、上記棒状重合性液晶化合物を溶解できるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、メチルアミルケトン、キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ガンマーブチロラクトン、ジメトキシエタン、乳酸エチル、クロロホルム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
また、上記組成物における棒状重合性液晶化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、あまりに上記濃度が低いと、光学異方性層が薄くなりすぎるため、液晶パネルの光学補償に必要な光学異方性が得られなくなる傾向がある。逆に、あまりに上記濃度が高いと、液晶化合物含有組成物の溶液の粘度が高くなりすぎるため、塗工膜厚にムラが生じやすくなる傾向がある。したがって、上記濃度は、5〜50wt%であることが好ましい。上記範囲内であれば、上述したような問題が起こることがない。
上記組成物には、特定の重合性化合物および/または上記棒状重合性液晶化合物とは異なる複数の液晶化合物をさらに含有させてもよい。
上記液晶化合物としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べたその他の液晶化合物を用いればよい。
上記液晶化合物の含有量は、得られるフィルムに求められる位相差値に応じて、適宜決定すればよい。具体的には、所望の位相差値を付与するように、上記組成物に含まれる液晶化合物に由来する構造単位の割合を調整し、得られる光学フィルムの位相差値を求める。その結果に基づいて、上記液晶化合物に由来する構造単位の含有量を決定することができる。
通常、位相差値は、膜厚を変えることにより、コントロールすることができる。しかし、膜厚のコントロールだけでは、法線方向の位相差値を任意に制御できても、入射角を変えた時の位相差値のコントロールは難しく、前述の棒状重合性液晶化合物の化学構造を変えなくてはならない。一方、上記液晶化合物に由来する構造単位を加えることにより、法線方向の位相差値だけではなく、あらゆる角度での位相差値を任意に調整することができる。言い換えると、上記液晶化合物に由来する構造単位を加えることにより、光学異方性層の持つ屈折率楕円体の形状を任意にコントロールすることができる。しかし、上記液晶化合物に由来する構造単位を加えすぎた場合、本発明の垂直配向を得られなくなることもある。その為、例えば、上記液晶化合物に由来する構造単位と棒状重合性液晶化合物に由来する構造単位との合計100重量部に対し、液晶化合物に由来する構造単位の含有量を5〜50重量部とすることが好ましい。上記含有量とすることにより、得られるフィルムの、屈折率楕円体の形状を任意にコントロールすることができる。
上記重合性化合物としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べた重合性化合物を用いればよい。このような重合性化合物を上記組成物に含有させることにより、任意の波長分散特性を有するフィルムを製造することができる。
上記重合性化合物の含有量は、得られるフィルムに求められる波長分散特性に応じて、適宜決定すればよい。具体的には、所望の波長分散特性を付与するように、上記組成物に含まれる重合性化合物に由来する構造単位の割合を調整し、得られる光学フィルムの位相差値を求める。その結果に基づいて、上記重合性化合物に由来する構造単位の含有量を決定することができる。
一般に、上記重合性化合物を含有しない、もしくは少量しか含有しないフィルムは、正波長分散を示す。一方、上記重合性化合物に由来する構造単位の含有量を増加させることにより、正波長分散から逆波長分散へと波長分散特性を任意に調整することができる。逆波長分散を示すフィルムを得る場合、例えば、上記重合性化合物に由来する構造単位と棒状重合性液晶化合物に由来する構造単位との合計100重量部に対し、重合性化合物に由来する構造単位の含有量を5〜50重量部とすることが好ましい。上記含有量とすることにより、得られるフィルムを、逆波長分散を示すと同時に、大きな位相差値を示すフィルムとすることができる。
また、本発明にかかるフィルムの製造方法では、得られるフィルムの波長分散特性(正波長分散〜逆波長分散)を、上記組成物の組成変化によって行っている。それゆえ、フィルムの波長分散特性を、非常に簡便な方法な方法で、任意に調整することができるという効果を奏する。
また、上記組成物には、重合開始剤や、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤等を含有させてもよい。
上記重合開始剤としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べた重合開始剤を用いることができる。また、上記重合開始剤の添加量は、棒状重合性液晶化合物および/または重合性化合物の重合反応に適した量であり、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱さない程度であればよい。すなわち、棒状重合性液晶化合物、重合性化合物、および重合開始剤の種類、並びに上記組成物の組成に応じて、適宜決定することが好ましい。このように、重合開始剤の添加量の具体的な数値は、特に限定されるものではないが、例えば、棒状重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であることが好ましく、0.5重量部〜10重量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、棒状重合性液晶化合物を重合させることができる。
上記重合禁止剤としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べた重合禁止剤を用いることができる。また、上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではなく、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、棒状重合性液晶化合物および/または重合性化合物の重合反応を調節することができ、かつ、光学異方性層の安定性を向上させることができる量であればよい。具体的には、棒状重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であることが好ましく、0.5重量部〜10重量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、棒状重合性液晶化合物の重合をコントロールし、光学異方性層の安定性を向上させることができる。
また、上記光増感剤としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べた光増感剤を用いることができる。また、上記光増感剤の添加量は、特に限定されるものではなく、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、棒状重合性液晶化合物および/または重合性化合物の重合反応を高感度化できる量であればよい。具体的には、棒状重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であることが好ましく、0.5重量部〜10重量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、棒状重合性液晶化合物の重合を高感度化することができる。
さらに、上記レベリング剤としては、<I.本発明にかかるフィルム>で述べたレベリング剤を用いることができる。また、上記レベリング剤の添加量は、特に限定されるものではなく、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、光学異方性層を平滑化したり、液晶化合物含有組成物の塗工時の流動性を制御したり、棒状重合性液晶性化合物の架橋密度を調整したりできる量であればよい。具体的には、棒状重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であることが好ましく、0.5重量部〜10重量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、棒状重合性液晶性化合物の配向性を乱すことなく、光学異方性層を平滑化したり、液晶化合物含有組成物の塗工時の流動性を制御したり、棒状重合性液晶性化合物の架橋密度を調整したりすることができる。
(II−4)液晶化合物含有組成物塗布工程
液晶化合物含有組成物塗布工程では、上記液晶化合物含有組成物調製工程で調製した組成物を垂直配向用配向膜上に塗布する。これにより、垂直配向用配向膜上に、上記組成物を含有する塗膜を形成させることができる。ここで、上記組成物は、液晶化合物含有組成物調製工程で調製したものではなく、同等の組成をもつ組成物であって、別途用意した棒状重合性液晶化合物を含有する組成物、例えば、市販品を用いてもよい。
上記組成物を垂直配向用配向膜上に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法、ディップコート法、バーコート法、およびスピンコート法などを用いることができる。
また、上記組成物の塗布量は、特に限定されるものではなく、得られるフィルムに所望の位相差値を与える膜厚となるように、適当量塗布すればよい。上述したように、膜厚を調整することにより、得られるフィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))を決定することができる。
上記組成物を塗布して形成される層の厚みは、上記のとおり、得られるフィルムの位相差値によって、異なるものである。本発明では、上記厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜2μmであることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、上述した本発明にかかるフィルムの位相差値とすることができる。
上記の通り、液晶化合物含有組成物塗布工程では、任意の支持基材の上に積層した垂直配向用配向膜上に光学異方性層(液晶層)を積層する。それゆえ、液晶セルを作製し、当該液晶セルに液晶化合物を注入する方法に比べて、生産コストを低減することができる。さらに、ロールフィルムでのフィルムの生産が可能である。
(II−5)液晶化合物含有組成物加熱工程
液晶化合物含有組成物加熱工程では、上記液晶化合物含有組成物塗布工程において形成された上記塗膜を加熱する。これにより、上記塗膜に含まれる溶剤が乾燥され、棒状重合性液晶化合物が未重合状態である未重合フィルムを得ることができる。本発明には、こうして得られる未重合フィルムも含まれる。上記未重合フィルムは、ネマチック相などの液晶相を示し、モノドメイン配向による複屈折性を有する。また、上記未重合フィルムは、通常、10〜120℃程度、好ましくは、25〜80℃の低温で配向する。したがって、本発明では、上述した支持基材として、耐熱性が低い基材を用いることができる。
液晶化合物含有組成物加熱工程において、上記組成物を加熱する方法や加熱条件等としては、上記物性を有する未重合フィルムが得られる条件であればよい。具体的には、加熱温度としては、10〜120℃であることが好ましく、25〜80℃であることがさらに好ましい。また、加熱時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。加熱温度および加熱時間が、上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
(II−6)液晶化合物重合工程
液晶化合物重合工程では、上記液晶化合物含有組成物加熱工程で得られた未重合フィルムを重合し、硬化させる。これにより、棒状重合性液晶化合物の配向性が固定化されたフィルム、すなわち重合フィルムとなる。したがって、フィルムの平面に対して斜め方向に最も屈折率が高い重合フィルムを製造することができる。
未重合フィルムを重合させる方法は、棒状重合性液晶化合物および重合性化合物の種類に応じて、決定されるものである。例えば、光重合や熱重合により、上記未重合フィルムを重合させることができる。本発明では、特に、光重合により未重合フィルムを重合させることが好ましい。これによれば、低温で、未重合フィルムを重合させることができるので、支持基材の耐熱性の選択幅が広がる。また、工業的にも製造が容易となる。
未重合フィルムを光重合させる方法は、特に限定されなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、未重合フィルムに紫外線を照射することにより、未重合フィルムを重合させることができる。
このように、本発明にかかるフィルムの製造方法では、液晶化合物として、液晶ポリマーを用いない。また、棒状重合性液晶化合物を光重合により架橋することができる。それゆえ、熱による複屈折の変化の影響を受けにくいという効果を奏する。また、垂直配向用配向膜に、界面活性剤などの表面処理剤を用いなくてよい。つまり、本発明にかかるフィルムの配向膜(垂直配向用配向膜)は、支持基材と配向膜との密着性および配向膜と光学異方性層との密着性が良好であるから、フィルムの製造が容易である。さらに、本発明にかかるフィルムの製造方法によれば、延伸フィルムで同等の性能を期待するものに比較して、薄膜で所望の位相差値を持つ光学補償フィルムを製造することが可能である。
本発明にかかるフィルムの製造方法は、上記工程に加えて、最終段階で、支持基材を剥離する工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られるフィルムは、垂直配向用配向膜と光学異方性層とからなるフィルムとなる。また、本発明にかかるフィルムの製造方法は、上記支持基材を剥離する工程に加えて、垂直配向用配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られるフィルムは、光学異方性層からなるフィルムとなる。これらのフィルムもまた、フィルム平面の直交軸方向およびフィルム厚さ方向における屈折率をそれぞれnx、ny、nz、とした場合に、nz>nxおよびnz>nyを満足する。したがって、このようなフィルムも本発明の範囲に含まれる。
<III.本発明にかかるフィルムの利用>
本発明にかかるフィルムは、優れた波長分散特性を有する光学フィルムと広く用いることができる。上記光学フィルムとしては、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルム、および透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルムなどを挙げることができる。
さらに、本発明にかかるフィルムは、反射型液晶ディスプレイおよび有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイの位相差板、並びに、当該位相差板や上記光学フィルムを備えるフラットパネル表示装置にも利用することができる。上記フラットパネル表示装置も、特に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)を挙げることができる。
このように、本発明にかかるフィルムは、広範囲な用途が考えられる。例えば、このうち、本発明にかかるフィルムを積層してなる偏光フィルム、並びに、本発明にかかるフィルムもしくは偏光フィルムを備えるフラットパネル表示装置について、以下説明する。
(III−1)偏光フィルム
本発明にかかる偏光フィルムの実施形態について、図3(a)〜図3(k)に基づいて、説明すると以下の通りであるが、本発明の偏光フィルムはこれに限定されるものではない。
本発明にかかる偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルム、すなわち偏光層の片面もしくは両面に直接、または接着剤もしくは粘着剤を用いて張り合わせることにより得られるものである。なお、以下の図3および図4の説明では、接着剤および粘着剤を総称して接着剤と呼ぶ。
例えば、図3(a)〜図3(e)に示すように、(1)フィルム1と、偏光層2とが、直接貼り合わされた実施形態(図3(a))、(2)フィルム1と偏光層2とが、接着層3を介して貼り合わされた実施形態(図3(b))、(3)フィルム1とフィルム1’と直接貼り合せ、さらに、フィルム1’と偏光層2とを直接貼り合わせた実施形態(図3(c))、(4)フィルム1とフィルム1’とを接着層3を介して貼り合わせ、さらに、フィルム1’上に偏光層2を直接貼り合わせた実施形態(図3(d))、および(5)フィルム1とフィルム1’とを接着層3を介して貼り合わせ、さらに、フィルム1’と偏光層2とを接着層3’を介して貼り合せた実施形態(図3(e))などが挙げられる。
本発明にかかる偏光フィルムにおいて、偏光層と張り合わされる本発明にかかるフィルムは、上述した本発明にかかるフィルムのいずれであってもよい。すなわち、支持基材、垂直配向用配向膜および光学異方性層からなるフィルム、垂直配向用配向膜および光学異方性層からなるフィルム、並びに、光学異方性層からなるフィルムのいずれを用いることもできる。本発明にかかる偏光フィルムにおいて、本発明にかかるフィルムを複数積層する実施形態では、その複数の本発明にかかるフィルムは、全て同一であってもよいし、異なるものを組み合わせて用いてもよい。より具体的に説明すると、本発明にかかる偏光フィルムとしては、図4(a)〜(k)に示す構成が例示される。
図4(a)〜(e)では、フィルム1およびフィルム1’として、液晶層11または液晶層11’(光学異方性層)と配向層12または配向層12’(垂直配向用配向膜)とからなるフィルムが用いられている。図4(a)〜(e)は、それぞれ、フィルム1と偏光層2とが直接貼り合わされた構成(図4(a))、フィルム1と偏光層2とが接着層3を介して貼り合わされた構成(図4(b))、フィルム1とフィルム1’と直接貼り合せ、さらに、フィルム1’と偏光層2とを直接貼り合わせた構成(図4(c))、フィルム1とフィルム1’とを接着層3を介して貼り合わせ、さらに、フィルム1’上に偏光層2を直接貼り合わせた構成(図4(d))、およびフィルム1とフィルム1’とを接着層3を介して貼り合わせ、さらに、フィルム1’と偏光層2とを接着層3’を介して貼り合せた構成(図4(e))を示す。
また、図4(f)および(g)では、フィルム1およびフィルム1’として、液晶層11または液晶層11’からなるフィルムが用いられており、フィルム1には、配向層12または配向膜12’(垂直配向用配向膜)は含まれていない。また、図4(f)では、フィルム1と偏光層2とが、一対の接着層3を介して貼り合わされている。一方、図4(g)
では、フィルム1とフィルム1’とを接着層3を介して貼り合わせ、さらに、その外側に、接着層3’を介して偏光層2を貼り合わせている。
図4(h)は、図4(f)と同様の構造を示す。ただし、図4(f)とは異なって、フィルム1として、支持フィルム(支持基材)13と、支持フィルム13の表面上に形成された配向膜12と、配向膜12の表面上に形成された液晶層11とからなる積層体(フィルム)が用いられている。
図4(i)は、図4(g)と同様の構造を示す。ただし、図4(g)とは異なって、フィルム1およびフィルム1’として、支持フィルム13または支持フィルム13’と、支持フィルム13または支持フィルム13’の表面上に形成された配向膜12または配向膜12’と、配向膜12または配向膜12’の表面上に形成された液晶層11または液晶膜11’とを含む積層体(フィルム)が用いられている。
図4(j)および(k)は、図4(g)と同様の構造を示す。ただし、2枚あるフィルムのうち、図3(j)では、フィルム1’として液晶層11’からなるフィルムを用い、フィルム1として液晶層11、配向膜12および支持フィルム13からなるフィルムを用いている。また、図4(k)では、フィルム1’として液晶層11’、配向膜12および支持フィルム13からなるフィルムを用い、フィルム1として液晶層11からなるフィルムを用いている。
上記偏光層2は、偏光機能を有するフィルムであればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記偏光層2として、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルムやポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルムを用いることができる。
上記接着層3および接着層3’に用いられる接着剤は、特に限定されるものではないが、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系あるいはウレタン系接着剤などが用いられる。
また、上記偏光フィルムにおいては、図3(c)〜図3(e)に示すように、本発明にかかるフィルムは、必要に応じて、1層〜3層張り合わせてもよい。
(III−2)フラットパネル表示装置
本発明にかかるフラットパネル表示装置は、本発明にかかるフィルムまたは偏光フィルムを備えるものである。例えば、本発明にかかる偏光フィルムと、液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置や、本発明にかかる偏光フィルムと、発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)パネルを備える有機EL表示装置を挙げることができる。
本発明にかかるフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機ELとについて、以下詳細に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
実施の形態1にかかる液晶表示装置は、図5に示す液晶パネルを備える。上記液晶パネルは、偏光フィルム4と液晶パネル6とを、接着層5を介して貼り合わせてなるものである。上記構成によれば、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子が駆動し、光シャッター効果を奏する。
〔実施の形態2〕
実施の形態2にかかる有機EL表示装置は、図6に示す有機ELパネルを備える。上記有機ELパネルは、偏光フィルム4と、発光層7とを、接着層5を介して貼り合わせてなるものである。
上記有機ELパネルにおいて、偏光フィルム4は、広帯域円偏光板として機能する。また、上記発光層7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。
なお、本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における波長分散特性は次のようにして行った。
〔波長分散特性の測定〕
585.6nmの波長において、製造したフィルムの位相差値の入射角依存性を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。同時に、585.6nmの波長において、製造したフィルムの正面位相差値Ro(nm)を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。
〔実施例1:フィルムの製造〕
ガラス基板上に垂直配向用ポリイミド配向膜(SE−5300、日産化学社製)を塗布した後、アニールして、厚さ104nmの膜を得た。続いて、その配向膜をレーヨン(吉川化工製YA−20−R)で一回、表6に示したラビング処理した後、表5の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥した。得られた未重合フィルムは、偏光顕微鏡によりモノドメインであることが確認された。続いて紫外線を照射して、重合性液晶化合物を重合させ、膜厚0.9μmのフィルムを製造した。得られたフィルムは、はじきがなく、均一に塗工することができ、室内で30日間放置してもはがれなどはみられず、密着性良好であり、光学特性にも変化はみられなかった。
得られたフィルムについて、上記の方法で、入射角依存性を測定した。得られた光学異方性層の屈折率楕円体のチルト角を表6に示す。
得られたフィルムについて、上記の方法で、正面位相差値Roも測定した結果を、表6に示す。
Figure 2007298967
Figure 2007298967
〔実施例8〜11:フィルムの製造〕
ガラス基板上に垂直配向用ポリイミド配向膜(SE−5300、日産化学社製)を塗布した後、アニールして、厚さ104nmの膜を得た。続いて、その配向膜をレーヨン(吉川化工製YA−20−R)で一回、表8に示したラビング処理した後、表7の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥した。得られた未重合フィルムは、偏光顕微鏡によりモノドメインであることが確認された。続いて紫外線を照射して、重合性液晶化合物を重合させ、膜厚0.9μmのフィルムを製造した。得られたフィルムは、はじきがなく、均一に塗工することができ、室内で30日間放置してもはがれなどはみられず、密着性良好であり、光学特性にも変化はみられなかった。
得られた光学フィルムについて、上記の方法で、入射角依存性を測定した。得られた光学異方性層の屈折率楕円体のチルト角を表8に示す。
得られた光学フィルムについて、上記の方法で、正面リタデーション値Rも測定した結果を、表8に示す。
Figure 2007298967
Figure 2007298967
〔比較例1〜2:フィルムの製造〕
ガラス基板上にポリビニルアルコール水溶液を塗布した後、アニールして、厚さ100nmの膜を得た。その配向膜をレーヨン(吉川化工製YA−20−R)で一回、表9に示したラビング処理した後、表5の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥した。得られた未重合フィルムは、偏光顕微鏡によりモノドメインであることが確認された。続いて紫外線を照射して、重合性液晶化合物を重合させ、膜厚0.9μmのフィルムを製造した。得られたフィルムは、はじきがなく、均一に塗工することができ、室内で30日間放置してもはがれなどはみられず、密着性良好であり、光学特性にも変化はみられなかった。
得られたフィルムについて、上記の方法で、入射角依存性を測定した。得られた光学異方性層の屈折率楕円体のチルト角を表9に示す。
得られたフィルムについて、上記の方法で、正面位相差値Ro測定した結果を、表9に示す。
Figure 2007298967
〔比較例3:フィルムの製造〕
ガラス基板上にポリビニルアルコール水溶液を塗布した後、アニールして、厚さ100nmの膜を得た。その配向膜をレーヨン(吉川化工製YA−20−R)で一回、表10に示したラビング処理した後、表7の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥した。得られた未重合フィルムは、偏光顕微鏡によりモノドメインであることが確認された。続いて紫外線を照射して、膜厚0.9μmの光学フィルムを製造した。得られたフィルムは、はじきがなく、均一に塗工することができ、室内で30日間放置してもはがれなどはみられず、密着性良好であり、光学特性にも変化はみられなかった。
得られた光学フィルムについて、上記の方法で、入射角依存性を測定した。得られた光学異方性層の屈折率楕円体のチルト角を表10に示す。
得られた光学フィルムについて、上記の方法で、正面リタデーション値Rも測定した結果を、表10に示す。
Figure 2007298967
本発明にかかるフィルムは、フィルム平面に対して斜め方向に最も屈折率が高く、その方向を任意に制御できるフィルムである。そのため、本発明は、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルムなど、優れた波長分散特性を有する光学フィルムとして用いることができる。さらに、本発明は、反射型液晶ディスプレイおよび有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの位相差板や、そのような位相差板を備えるフラットパネル表示装置(FPD)にも利用することができる。
図1は、本発明にかかるフィルムの基本的な断面構造の一例を示す概念図である。 図2は、本発明にかかるフィルムの複屈折性を示す図である。 本実施形態にかかる偏光フィルムの断面図である。 本実施形態にかかる偏光フィルムの断面図である。 本実施形態にかかる液晶パネルの断面図である。 本実施形態にかかる有機ELパネルの断面図である。
符号の説明
1、1’ フィルム
2、2’ 偏光層
3、3’、3’’ 接着層
4 偏光フィルム
5 接着層
6 液晶パネル
7 発光層
11、11’ 液晶層(光学異方性層)
12、12’ 配向層(垂直配向用配向膜)
13、13’ 支持フィルム(支持基材)

Claims (13)

  1. 垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムであって、
    上記光学異方性層は、棒状重合性液晶化合物に由来した構造単位を含むポリマーを含有する層からなり、
    上記棒状重合性液晶化合物は、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであって、
    上記棒状重合性液晶化合物は、上記垂直配向用配向膜に対して傾斜配向していることを特徴とするフィルム。
  2. 上記垂直配向用配向膜は、垂直配向膜にラビング処理が施された配向膜であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
  3. 上記光学異方性層における屈折率楕円体のフィルム平面に対する傾斜角が10°〜85°であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
  4. 垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムであって、
    上記光学異方性層は、棒状重合性液晶化合物を含有する層からなり、
    上記棒状重合性液晶化合物は、水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであって、
    上記棒状重合性液晶化合物は、上記垂直配向用配向膜に対して傾斜配向していることを特徴とするフィルム。
  5. 逆波長分散を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。
  6. 上記光学異方性層は、下記式(1)
    Figure 2007298967
    (式中、Yは2価の基を表し、sおよびtは、それぞれ独立に0または1の整数を表し、G1およびG2は、それぞれ独立に−CR−を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水素原子を表し、
    A1およびA2は、それぞれ独立に、2価の環状炭化水素基、2価の複素環基、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基、チオフェニレン基を表し、A1およびA2には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が結合していてもよく、B1およびB2は、それぞれ独立に、−CRR’−、−C≡C−、−CH=CH−、
    −CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、
    −O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、
    −O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CH=N−、−N=CH−、
    −N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、−C(=O)−NR−、
    −NR−C(=O)−、−OCH−、−NR−、−CHO−、−SCH−、
    −CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、単結合からなる群から選ばれる2価の基を表し、RおよびR’はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1およびX2は、それぞれ独立に、下記式(2)
    Figure 2007298967
    (式中、A3は2価の環状炭化水素基、複素環基を表し、B3は前記B1およびB2と同じ意味を表し、nは1〜4の整数を表す)
    で表される2価の基を表し、E1およびE2は、それぞれ独立に、炭素数2〜25のアルキレン基を表し、E1およびE2は、さらに炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子が結合していてもよく、
    P1およびP2は、水素原子または重合性基を表し、P1およびP2の少なくとも一方は重合性基である。)
    で表される重合性化合物に由来する構造単位をさらに含むポリマーを含有することを特徴とする請求項5に記載のフィルム。
  7. 上記光学異方性層は、上記垂直配向用配向膜と接触している第1面と、該第1面と平行な第2面とを有し、
    上記第1面の近傍に位置する棒状重合性液晶化合物は水平に配向し、上記第2面の近傍に位置する棒状重合性液晶化合物は垂直に配向し、
    フィルムに対して垂直な第1方向の第1屈折率をnz)、該第1方向と直角な第2方向の第2屈折率をnx、並びに該第1方向および第2方向と直角な第3方向の第3屈折率をnyとするとき、nz>nxおよびnz>nyを満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム。
  8. 棒状重合性液晶化合物に由来する構造単位を含むポリマーを含有する光学異方性層からなるフィルムであって、
    上記光学異方性層は、
    垂直配向用配向膜上に、棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を塗布することによって、塗膜を形成し、
    該塗膜を25℃〜120℃で、10秒間〜60分間、加熱し、
    さらに、上記棒状液晶化合物を光重合により架橋した後、上記垂直配向用配向膜を剥離することにより得られる光学異方性層であり、
    上記棒状重合性液晶化合物は、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであり、
    フィルム平面の直交軸方向およびフィルム厚さ方向における屈折率をそれぞれnx、ny、nz、とした場合に、nz>nxおよびnz>nyを満足することを特徴とするフィルム。
  9. 垂直配向用配向膜上に形成された光学異方性層を有するフィルムの製造方法であって、
    (A)垂直配向用配向膜上に、棒状重合性液晶化合物を含有する組成物を塗布する工程と、
    (B)上記工程(A)で形成された塗膜を25〜120℃で、10秒間〜60分間加熱させる工程とを少なくとも含み、
    上記棒状重合性液晶化合物が、モノマーとして水平配向膜上で水平に配向し、空気界面でも水平に配向する特性を有するものであることを特徴とするフィルムの製造方法。
  10. (C)上記棒状重合性液晶化合物を光重合により架橋する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
  11. 上記(A)工程の前に、(D)上記垂直配向用配向膜をラビング処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9または10に記載のフィルムの製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムを積層してなることを特徴とする偏光フィルム。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルム、または請求項12に記載の偏光フィルムを備えることを特徴とするフラットパネル表示装置。
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