JP2007297608A - 透光性導電塗料及び透光性導電膜並びに分散型エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 透光性と導電性に優れると共に、耐有機溶剤性も兼ね備えた透光性導電膜を形成することができる透光性導電塗料、及びこの透光性導電塗料を用いて形成される透光性導電膜を提供する。
【解決手段】 バインダー樹脂を含む溶剤中に、導電性酸化物針状粉を分散した透光性導電塗料であって、前記バインダー樹脂のガラス転移点(Tg)が120℃以上であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 バインダー樹脂を含む溶剤中に、導電性酸化物針状粉を分散した透光性導電塗料であって、前記バインダー樹脂のガラス転移点(Tg)が120℃以上であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、例えば分散型エレクトロルミネッセンス素子(以下「分散型EL素子」と略称することがある)の透明電極等の形成に適用される透光性導電塗料、特に、優れた透光性及び導電性と共に、EL素子製造工程における抵抗値等の膜特性の劣化を抑制することができる透光性導電塗料、その透光性導電塗料から得られる透光性導電膜、及びその透光性導電膜を透明電極に用いた分散型エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
分散型EL素子は、交流電圧駆動による発光素子であり、これまで携帯電話、リモートコントローラー等の液晶ディスプレイのバックライト等に用いられてきた。近年では、その薄さ(厚さ0.1mm程度)、柔軟性、輝度の面内均一性、発光色の自由度、低消費電力等を生かして、携帯電話等のキー入力部品(キーパッド)に組み込まれる発光シート等にも適用されている。
一般に、分散型EL素子の透明電極等に適用される透明導電膜は、バインダーを含む溶剤中に導電フィラーが分散された透明導電塗料を用いて、塗布法により形成されている。
かかる透明導電塗料に使用される導電フィラーとしては、従来よりインジウム−錫酸化物(以下「ITO」とも称する)、錫−アンチモン酸化物(以下、「ATO」とも称する)等の酸化物系フィラー等があり、特にITOはATO等に比べて抵抗値が低いために広く利用されている。
かかる透明導電塗料に使用される導電フィラーとしては、従来よりインジウム−錫酸化物(以下「ITO」とも称する)、錫−アンチモン酸化物(以下、「ATO」とも称する)等の酸化物系フィラー等があり、特にITOはATO等に比べて抵抗値が低いために広く利用されている。
ところで、上記透明導電塗料に使用される導電フィラーの含有量は少なければ少ない程好ましい。というのも、導電フィラーである導電性酸化物の光吸収は、塗料成分の一つである透明樹脂からなるバインダーに比べ遥かに大きいからである。
従って、低抵抗値の導電膜が得られる範囲で、バインダーに対する導電性酸化物フィラーの量を出来るだけ少なくすることによって、膜の可視光線透過率が向上することとなる。
このような理由から、球状や粒状の導電フィラーよりも、針状又はりん片状の導電フィラーの方が、少量の添加で低抵抗値の膜が得られるという利点がある。
従って、低抵抗値の導電膜が得られる範囲で、バインダーに対する導電性酸化物フィラーの量を出来るだけ少なくすることによって、膜の可視光線透過率が向上することとなる。
このような理由から、球状や粒状の導電フィラーよりも、針状又はりん片状の導電フィラーの方が、少量の添加で低抵抗値の膜が得られるという利点がある。
上記りん片状の酸化物粉を得る方法としては、例えば特許文献1に記載されるように、無機酸化物、含水無機酸化物微粒子等のコロイド分散液を凍結し、コロイド分散液の溶剤の結晶面と結晶面の間隙に無機酸化物微粒子や含水酸化物微粒子を析出させた後、乾燥して脱溶剤し、含水酸化物微粒子の場合は更に仮焼する方法がある。
また、上記針状の酸化物粉を得る方法としては、例えば特許文献2に記載されるように、針状の蓚酸錫を加熱分解して針状錫酸化物を得る方法、あるいは、例えば特許文献3に記載されるように、硝酸インジウム溶液の高温加熱濃縮スラリーから回収される白色針状インジウム化合物粉を加熱分解して、針状のインジウム−錫酸化物粉を得る方法等が知られている。
また、上記針状の酸化物粉を得る方法としては、例えば特許文献2に記載されるように、針状の蓚酸錫を加熱分解して針状錫酸化物を得る方法、あるいは、例えば特許文献3に記載されるように、硝酸インジウム溶液の高温加熱濃縮スラリーから回収される白色針状インジウム化合物粉を加熱分解して、針状のインジウム−錫酸化物粉を得る方法等が知られている。
更に、上記した導電フィラーを用いた導電塗料として、例えば特許文献4〜6等に記載されるように、針状ITO粉を用いたペーストが知られている。このような導電性酸化物針状粉を含有する導電塗料を用いて形成した導電膜は、いわゆる透明導電膜に比べてヘイズ値が高い(散乱が大きい)ため透光性導電膜と称されている。
上記透光性導電膜は、透明ではないものの光の吸収が少なく優れた透光性を有するため、分散型EL素子の透明電極等として十分適用可能である。
しかしながら、上記特許文献4〜6に記載の従来のバインダー樹脂が適用された(透光性)導電塗料(ペースト)を、分散型EL素子の透明電極に用いようとした時、EL素子の製造工程で、上記透光性導電膜上に蛍光体層や誘電体層等を積層印刷すると、透光性導電膜の膜特性(抵抗値等)が劣化するという問題が生じることが判明した。
特開昭62−3003号公報
特開昭56−120519号公報
特開平6−293515号公報
特開平6−309922号公報
特開平9−35873号公報
特開平11−273874号公報
しかしながら、上記特許文献4〜6に記載の従来のバインダー樹脂が適用された(透光性)導電塗料(ペースト)を、分散型EL素子の透明電極に用いようとした時、EL素子の製造工程で、上記透光性導電膜上に蛍光体層や誘電体層等を積層印刷すると、透光性導電膜の膜特性(抵抗値等)が劣化するという問題が生じることが判明した。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、分散型EL素子の透明電極等として有用な透光性導電膜の形成に用いる透光性導電塗料について、透光性と導電性に優れるだけでなく、EL素子製造工程における抵抗値等の膜特性の劣化を抑制することができる透光性導電塗料を提供すること、また、この透光性導電塗料を用いて形成される透光性導電膜を提供すること、及びその透光性導電膜を透明電極に用いた分散型エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、透光性導電膜の耐有機溶剤性を改善向上させるため、透光性導電塗料に用いられるバインダーについて鋭意検討した結果、ガラス転移点(Tg)が120℃以上の樹脂を適用した場合、EL素子の製造工程における透光性導電膜の抵抗値等の膜特性の劣化を抑制すること可能であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、バインダー樹脂を含む溶剤中に、導電性酸化物針状粉を分散した透光性導電塗料であって、前記バインダー樹脂のガラス転移点(Tg)が120℃以上であることを特徴とする透光性導電塗料である。
本発明の第2の発明は、前記バインダー樹脂のガラス転移点(Tg)が140℃以上であることを特徴とする第1の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第3の発明は、前記バインダー樹脂は架橋性樹脂であり、且つ、前記溶剤中には更に硬化剤を含有したことを特徴とする第1又は2の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第4の発明は、前記バインダー樹脂が、フェノキシ系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、サルホン系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする第1〜3の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第5の発明は、前記フェノキシ系樹脂の骨格中には、更にリンおよび/または硫黄が含有されていることを特徴とする第4の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第6の発明は、前記硬化剤が、ブロックイソシアネートであることを特徴とする第3の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第7の発明は、前記導電性酸化物針状粉が、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種を主成分としていることを特徴とする第1〜6の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第8の発明は、前記導電性酸化物針状粉が、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種がドープされた酸化インジウムであることを特徴とする第1〜7の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第9の発明は、前記導電性酸化物針状粉の平均アスペクト比が、5以上であることを特徴とする第1〜8の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第10の発明は、前記導電性酸化物針状粉が、平均長さ25μm以上で平均アスペクト比5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られた平均長さ5〜20μmの導電性酸化物針状粉であることを特徴とする第1〜9に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第11の発明は、前記(導電性酸化物針状粉:バインダー)の重量比が、(40:60)〜(90:10)であることを特徴とする第1〜10の発明に記載の透光性導電塗料である。
本発明の第12の発明は、第1〜11の発明に記載の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、膜の比抵抗が5.0Ω・cm以下であることを特徴とする透光性導電膜である。
本発明の第13の発明は、第12の発明に記載の透光性導電膜を透明電極に用いていることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明によれば、高い透光性と優れた導電性を有すると同時に、分散型EL素子の透明電極等として適用した場合に、分散型EL素子の製造工程において抵抗値等の膜特性の劣化を抑制することができる透光性導電膜、及びその膜を形成できる透光性導電塗料を提供することができる。
本発明の透光性導電塗料は、導電性酸化物針状粉、バインダー樹脂、及び溶剤を主成分として含有している。中でもバインダー樹脂成分は、導電性酸化物粉の微粒子同士を結合して透光性導電膜の導電性と強度を高めと共に、基材と透光性導電膜の密着力を高める働きがある。また、バインダー樹脂のガラス転移点を120℃以上と高く設定しているため、各種デバイス(例えばEL素子)の製造工程において透光性導電膜上に他の膜を積層印刷して形成する場合に、上記透光性導電膜の劣化を防止することができる。
上記バインダー樹脂のガラス転移点を120℃以上に高めた場合に、例えばEL素子製造工程において、透光性導電膜上への蛍光体層や誘電体層等の積層印刷により透光性導電膜の抵抗値上昇が抑えられる理由は明らかではないが、例えば以下のように考えることができる。
透光性導電膜上に更に蛍光体層や誘電体層等を積層印刷する場合、各々の積層工程で加熱処理を施すことになるが、この際に透光性導電膜のバインダー樹脂のガラス転移点が高いと透光性導電膜が軟化しないため、各積層印刷膜の影響を受けにくいと推測される。
透光性導電膜上に更に蛍光体層や誘電体層等を積層印刷する場合、各々の積層工程で加熱処理を施すことになるが、この際に透光性導電膜のバインダー樹脂のガラス転移点が高いと透光性導電膜が軟化しないため、各積層印刷膜の影響を受けにくいと推測される。
上記高Tgのバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、サルホン系樹脂等が挙げられる。
具体的には、フェノキシ系樹脂とは、各種ビスフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により得られる分子鎖中にヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂であり、上記ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕、ビスフェノールB〔2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン〕、ビスフェノールC〔2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕、ビスフェノールD〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〕、ビスフェノールE(4,4’−ジヒドロキシビフェニル)、ビスフェノールF(3,3’−n−プロピル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル)等を挙げることができるが、中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFが好ましい。前記ビスフェノール化合物は、単独または2種以上を混合して使用することもできる。さらにフェノキシ系樹脂の耐熱性などを改善するためにハロゲン、リン、硫黄などの元素を添加して変性してもよく、フェノキシ系樹脂の骨格中にリンや硫黄が含まれるものが好ましく、特に骨格中にリンを含むフェノキシ系樹脂は高いTgを実現でき、かつ上述の積層印刷時の透光性導電膜の劣化を効果的に抑制する点で好ましい。
ここで、リン、硫黄などの元素が、フェノキシ系樹脂の骨格中ではなく、その側鎖にリン酸やスルホン酸等として存在した場合は、フェノキシ系樹脂の耐熱性の改善が図れないばかりか、リン酸やスルホン酸等の酸成分によって透光性導電膜に劣化を生じる場合があるため好ましくない。一方、フェノキシ系樹脂の骨格中にリン、硫黄などの元素を含む場合には、上記リン酸やスルホン酸等の酸成分の発生もなく、フェノキシ系樹脂の耐熱性向上を図ることができ、好ましい。
また、シクロオレフィン系樹脂とは、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂のことであり、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体やその水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。
サルホン系樹脂としては、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリサルホン等が挙げられる。
これらの中でも、フェノキシ系樹脂のような架橋性樹脂は、イソシアネート等の硬化剤により加熱架橋が可能であり、必要に応じて硬化剤と併用して用いると膜強度、耐有機溶剤性等の膜特性の向上が図れるため好ましい。
具体的には、フェノキシ系樹脂とは、各種ビスフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により得られる分子鎖中にヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂であり、上記ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕、ビスフェノールB〔2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン〕、ビスフェノールC〔2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕、ビスフェノールD〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〕、ビスフェノールE(4,4’−ジヒドロキシビフェニル)、ビスフェノールF(3,3’−n−プロピル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル)等を挙げることができるが、中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFが好ましい。前記ビスフェノール化合物は、単独または2種以上を混合して使用することもできる。さらにフェノキシ系樹脂の耐熱性などを改善するためにハロゲン、リン、硫黄などの元素を添加して変性してもよく、フェノキシ系樹脂の骨格中にリンや硫黄が含まれるものが好ましく、特に骨格中にリンを含むフェノキシ系樹脂は高いTgを実現でき、かつ上述の積層印刷時の透光性導電膜の劣化を効果的に抑制する点で好ましい。
ここで、リン、硫黄などの元素が、フェノキシ系樹脂の骨格中ではなく、その側鎖にリン酸やスルホン酸等として存在した場合は、フェノキシ系樹脂の耐熱性の改善が図れないばかりか、リン酸やスルホン酸等の酸成分によって透光性導電膜に劣化を生じる場合があるため好ましくない。一方、フェノキシ系樹脂の骨格中にリン、硫黄などの元素を含む場合には、上記リン酸やスルホン酸等の酸成分の発生もなく、フェノキシ系樹脂の耐熱性向上を図ることができ、好ましい。
また、シクロオレフィン系樹脂とは、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂のことであり、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体やその水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。
サルホン系樹脂としては、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリサルホン等が挙げられる。
これらの中でも、フェノキシ系樹脂のような架橋性樹脂は、イソシアネート等の硬化剤により加熱架橋が可能であり、必要に応じて硬化剤と併用して用いると膜強度、耐有機溶剤性等の膜特性の向上が図れるため好ましい。
また、上記硬化剤としては、水酸基と架橋することができるアミノ基、メチロール基を有するアミノ樹脂、ポリイソシアネート等が用いられる。ここで、ポリイソシアネートには使用する原料イソシアネートにより、TDI(トリレンジイソシアネート)系、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系、XDI(キシリレンジイソシアネート)系、NDI(ナフチレン1,5−ジイソシアネート)系、TMXDI(テトラメチレンキシリレンジイソシアネート)系等の芳香族系イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系、H12MDI(水添MDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)系、H6XDI(水添XDI)系等の脂環族系イソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系、DDI(ダイマー酸ジイソシアネート)系、NBDI(ノルボルネン・ジイソシアネート)系等の脂肪族系イソシアネートなどがある。
これらの硬化剤のうち、一般にTDI系やMDI系など芳香族系イソシアネートは紫外線によって黄変しやすいが、IPDI系やHDI系の脂環族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネートは黄変しにくいため好ましい。また、イソシアネート硬化剤において、ポリイソシアネートをブロック化剤で保護したブロックイソシアネートは、低温での架橋反応が抑制されるため、使用前に硬化剤を混合する2液タイプでなく、硬化剤を予め塗料に配合した1液タイプとすることができるため特に好ましい。ブロックイソシアネートの中でも、脂肪族系ブロックイソシアネートは黄変がないため好ましく、更に最低硬化温度(ブロック化剤の保護作用が低下し、硬化剤として有効に機能する温度)が100℃以下であるHDI系ブロックイソシアネート、例えば旭化成(株)製のデュラネートMF−K60X(商品名)が特に好ましい。ここで、上記水酸基を有する架橋性樹脂の水酸基(−OH)とポリイソシアネートのイソシアネート基(−NCO)の割合(モル比)は、架橋性樹脂の耐溶剤性や強度等の特性を考慮して任意に設定される。
また、上記した硬化剤と共に、必要に応じて、既存の硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート等)を併用することもできる。硬化剤の種類によっては、硬化触媒を併用することにより、架橋性樹脂の硬化速度を大幅に高めることができる。
透光性導電塗料の導電性酸化物針状粉としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種を主成分としたものを用いることが必要である。
より具体的には、例えば、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種がドープされた酸化インジウムや、フッ素および/または酸化アンチモンがドープされた酸化錫や、酸化アルミニウムおよび/または酸化ガリウムがドープされた酸化亜鉛であることが望ましい。特に、酸化インジウムに酸化錫をドープした針状のインジウム−錫酸化物(ITO)が、透光性と導電性に優れており導電性酸化物針状粉として好ましい。
より具体的には、例えば、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種がドープされた酸化インジウムや、フッ素および/または酸化アンチモンがドープされた酸化錫や、酸化アルミニウムおよび/または酸化ガリウムがドープされた酸化亜鉛であることが望ましい。特に、酸化インジウムに酸化錫をドープした針状のインジウム−錫酸化物(ITO)が、透光性と導電性に優れており導電性酸化物針状粉として好ましい。
また、導電性酸化物針状粉の平均アスペクト比(太さに対する長さの比)は、5以上であることが好ましく、10以上が更に好ましい。導電性酸化物針状粉の平均アスペクト比が5未満の場合には、少量の導電性酸化物針状粉の添加で透光性導電膜の比抵抗を5.0Ω・cm以下にすることが困難となる場合があるからである。
ここで、導電性酸化物針状粉の上記平均アスペクト比、及び以下に記載の平均長さは、粒子の数平均で求められている。
ここで、導電性酸化物針状粉の上記平均アスペクト比、及び以下に記載の平均長さは、粒子の数平均で求められている。
前記導電性酸化物針状粉が、平均長さ25μm以上で平均アスペクト比5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られた平均長さ5〜20μmの導電性酸化物針状粉であってもよい。粉砕処理された導電性酸化物針状粉を透光性導電塗料に用いると、得られる透光性導電膜の表面抵抗値は幾分悪化するものの、その表面粗さ(膜表面の凹凸)は小さくなるため、上記透光性導電膜を適用するデバイスによっては有用な場合がある。例えば、分散型EL素子では、透明電極と背面電極で挟まれた蛍光体層(発光層)及び誘電体層に100V程度の交流電圧を印加して発光させているため、その透明電極に上記表面粗さの小さい透光性導電膜を適用すると、透明電極上の大きな凸部に起因する電極間のショート(短絡)や絶縁破壊によるスパーク発生を抑制する効果を有する。前述の携帯電話等のキー入力部品(キーパッド)等のように、分散型EL素子の発光面積が小さい用途の場合には、透明電極の表面抵抗値は数キロΩ/□(オーム・パー・スクエア)程度と高めの値でもよいため、表面抵抗値よりも電極間ショート(短絡)や絶縁破壊の抑制効果に優れる透光性導電膜の方が好まれる傾向がある。
尚、上記導電性酸化物針状粉の粉砕処理には、超音波処理、ビーズミル処理、ホモジナイザー処理、3ロールミル処理等の汎用の粉砕方法を用いることができる。
尚、上記導電性酸化物針状粉の粉砕処理には、超音波処理、ビーズミル処理、ホモジナイザー処理、3ロールミル処理等の汎用の粉砕方法を用いることができる。
透光性導電塗料中における導電性酸化物針状粉とバインダーの割合は、(導電性酸化物針状粉:バインダー)の重量比で(40:60)〜(90:10)が好ましく、(50:50)〜(70:30)が更に好ましい。尚、上記導電性酸化物針状粉とバインダーの割合におけるバインダー量は、バインダー樹脂と硬化剤成分の合計量を示している。バインダーの割合が(導電性酸化物針状粉:バインダー)の重量比で(40:60)よりも多いと、得られる透光性導電膜の抵抗が高くなり過ぎる場合がある。また、バインダーの割合が(導電性酸化物針状粉:バインダー)の重量比で(90:10)よりも少ないと、透光性導電膜の強度が低下すると同時に、針状粒子同士の接触がうまくとれず、膜の抵抗も高くなる場合があるため好ましくない。
透光性導電塗料に用いる溶剤としては、例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミン類、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
尚、透光性導電塗料に用いる溶剤は、使用するプラスチック基材に対する溶解性や成膜条件を考慮して、適宜選定することができる。例えば、スクリーン印刷について考えると、蒸発速度、刷版の乳剤やバインダー樹脂に対する溶解性、有害性などを考慮した場合、好ましい溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
次に、導電性酸化物針状粉の製造方法について、好ましい一実施形態を説明する。まず、インジウムメタルを硝酸に溶解した溶液を撹拌しながら加熱し、液温130〜150℃まで濃縮して濃厚なスラリーを生成せしめ、このスラリーに多量の水を加えて濾過し、得られた針状粉を洗浄、乾燥し、数百℃程度で30〜60分程度仮焼することにより針状酸化インジウム粉を得る。この針状酸化インジウム粉を水に分散させた後、錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の金属塩水溶液を加え、中和反応により上記針状酸化インジウム粉の表面及び細孔内に錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の水酸化物を形成し、固液分離した後、700〜1200℃程度で30〜60分程度仮焼する。この仮焼により上記水酸化物が酸化物に転化すると同時に、酸化インジウムと固溶化するので、更に必要に応じて還元性雰囲気下での熱処理(酸素空孔導入による低抵抗化処理)を施して、酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物針状粉を得ることができる。
この酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物針状粉は、平均長さ5μm以上、平均アスペクト比5以上であり、濃縮条件によって平均長さ5〜200μm程度、平均アスペクト比30程度のものまで得られる(ただし、平均長さ20μm以下のITO針状粉は、上記製造方法において生産性が低いためコスト面から考えると好ましいとはいえず、一般に販売されていないため入手が困難である)。透光性導電膜の表面抵抗値の面から見た場合の好ましい粉末形状としては、長さ20〜100μm、アスペクト比10以上である。ここで、例えば酸化錫がドープされた針状ITO粉の場合、この粉末を100kgf/cm2の圧力を加えてペレット状にした時の比抵抗(以下、圧粉抵抗と称す)が、0.01〜0.03Ω・cm程度のものを得ることができる。
本発明の透光性導電塗料は、上記導電性酸化物針状粉を、バインダー(上記の架橋性樹脂と硬化剤とからなる)及び溶剤と混合し、必要に応じて分散剤を添加した後、分散処理を行うことにより製造することができる。バインダーの添加は、導電性酸化物針状粉の分散液に加えても、導電性酸化物針状粉の分散前の溶剤に予め加えてもよく、特に制約はない。分散処理には、超音波処理、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル、スリーロールミル等の汎用の方法を適用することができる。
上記分散剤としては、シリコンカップリング剤等の各種カップリング剤、各種高分子分散剤、あるいはアニオン系、ノニオン系、カチオン系等の各種界面活性剤が挙げられる。これら分散剤は、必要に応じて添加すればよく、用いる導電性酸化物針状粉の種類や分散処理方法に応じて適宜選定される。また、塗膜の外観を改善するために、消泡剤やレベリング剤等の添加剤を加えても良い。
本発明の透光性導電膜は、上記透光性導電塗料を基材上に印刷又は塗布した後、加熱してバインダーの架橋性樹脂を架橋硬化させることにより、形成することができる。透光性導電塗料の基材上への印刷又は塗布には、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ワイヤーバーコーティング法、ドクターブレードコーティング法、ロールコーティング法等を用いることができる。
上記基材としては、透明性があれば良く、ガラスや各種透明プラスチックを用いることができる。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等を用いることができる。PETは安価で且つ強度に優れ、透明性と柔軟性も兼ね備えている等の観点から基材として好ましい材質である。尚、上記基材にプラスチックを用いる場合には、透明導電膜との密着力を高めるための易接着処理、具体的には、プラズマ処理、コロナ放電処理、短波長紫外線照射処理等を予め施しておくこともできる。
このようにして得られる本発明の透光性導電膜は、高い透光性と導電性を両立できるだけでなく、バインダー樹脂のガラス転移点が高いため、透光性導電膜の耐熱性が優れている。そのため、例えば分散型EL素子の透明電極に適用する場合、素子製造工程で透光性導電膜上に各層を積層印刷して形成する際の加熱処理工程において、透光性導電膜の抵抗値等の膜特性の劣化を防止することできる。また、透光性導電膜の比抵抗は5.0Ω・cm以下であることが好ましい。比抵抗が5.0Ω・cmを超える場合は、透光性導電膜を分散型EL素子の透明電極に適用することが難しくなるからである。
[実施例]
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の記述において「%」は、透過率及びヘイズ値の%を除き、「重量%」を示している。
また、透光性導電膜の透過率(可視光)とヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。透光性導電膜の表面抵抗値は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用いて測定した。また、透光性導電塗料の粘度は、塗料温度25℃で、B型粘度計を用いて測定した。
導電性酸化物針状粉として、住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;圧粉抵抗値0.05Ω・cm、BET比表面積8.9m2/g、平均長さ31μm、平均アスペクト比8.4)を用いた。バインダー樹脂としてフェノキシ樹脂(東都化成(株)製、FX−293;Tg:163℃、水酸基価163KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製のMF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いた。
上記ITO針状粉を、上記樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:33%、フェノキシ樹脂:14.8%、硬化剤成分:3.1%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:49.1%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂+硬化剤成分]=65:35、NCO/OH=1/5.4)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、1500mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、基材としての東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm、 透過率90%、ヘイズ1.8%)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は77.8%、ヘイズは87.5%、表面抵抗値は2000Ω/□(オーム・パー・スクエア)、比抵抗値は1.2Ω・cmであった。尚、透光性導電膜の透過率(可視光)及びヘイズ値は、透光性導電膜だけの値であり、それぞれ下記計算式により求められる。
透光性導電膜の透過率(%)=(透光性導電膜付き基材の透過率)/(基材の透過率)×100
透光性導電膜のヘイズ値(%)=(透光性導電膜付き基材のヘイズ値)−(基材のヘイズ値)
透光性導電膜のヘイズ値(%)=(透光性導電膜付き基材のヘイズ値)−(基材のヘイズ値)
次に上記透光性導電膜上に蛍光体層、誘電体層、背面電極の順に積層して分散型EL素子を形成した。上記積層は、蛍光体粒子、誘電体微粒子(チタン酸バリウム等)、カーボン微粒子がそれぞれバインダーを含む溶剤に分散した蛍光体ペースト、誘電体ペースト、カーボンペーストをスクリーン印刷(乾燥・硬化:130℃×30分)して行った。分散型EL素子形成後の透光性導電膜の抵抗値を測定し、分散型EL素子形成前の抵抗値と比較した。その結果を表1に示す。
バインダー樹脂として架橋性の無いポリエーテルサルホン樹脂(ソルベイアドバンスドポリマーズ(株)製、RADEL A A−300A NT;Tg:220℃)を用いかつ硬化剤を添加しなかった、また、溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた点以外は上記実施例1と同様にして透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ポリエーテルサルホン樹脂:14.0%、NMP:60.0%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂]=65:35)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、1000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様に基材の東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は77.0%、ヘイズは84.7%、表面抵抗値は1000Ω/□、比抵抗値は0.7Ω・cmであった。
実施例1と同様に分散型EL素子を形成し、透光性導電膜の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
バインダー樹脂として骨格中に硫黄を含有するフェノキシ樹脂(東都化成(株)製のYPS−007樹脂溶液を加熱・乾燥して得た樹脂;Tg:130℃、水酸基価 172KOHmg/g)用い、また、溶剤としては、イソホロンを用いた点以外は上記実施例1と同様にして透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:31%、フェノキシ樹脂:16.1%、硬化剤成分:0.5%、イソホロン:52.4%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂+硬化剤成分]=65:35、NCO/OH=1/34.4)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、3000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様に基材の東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は76.7%、ヘイズは87.2%、表面抵抗値は1410Ω/□、比抵抗値は0.99Ω・cmであった。
実施例1と同様に分散型EL素子を形成し、透光性導電膜の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
バインダー樹脂として骨格中にリンを含有するフェノキシ樹脂(東都化成(株)製のERF−001樹脂溶液を加熱・乾燥して得た樹脂;Tg:146℃、水酸基価 166KOHmg/g)用い、また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)を用いた点以外は上記実施例1と同様にして透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、フェノキシ樹脂:18.9%、硬化剤成分:0.7%、カルビトール:54.4%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂+硬化剤成分]=57:43、NCO/OH=1/33.2)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、4000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様に基材の東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は79.2%、ヘイズは89.3%、表面抵抗値は792Ω/□、比抵抗値は0.71Ω・cmであった。
実施例1と同様に分散型EL素子を形成し、透光性導電膜の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
導電性酸化物針状粉として、住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;圧粉抵抗値0.05Ω・cm、BET比表面積8.9m2/g、平均長さ31μm、平均アスペクト比8.4)を粉砕処理して得られた平均長さ12μmのITO針状粉を用いた点以外は上記実施例4と同様にして透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:33%、フェノキシ樹脂:13.7%、硬化剤成分:0.5%、カルビトール:52.8%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂+硬化剤成分]=70:30、NCO/OH=1/33.2)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、1900mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例4と同様に基材の東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は76.1%、ヘイズは90.0%、表面抵抗値は950Ω/□、比抵抗値は0.57Ω・cmであった。
実施例4と同様に分散型EL素子を形成し、透光性導電膜の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例1]
バインダー樹脂としてフェノキシ樹脂(東都化成(株)製のYP−50樹脂溶液を加熱・乾燥して得た樹脂;Tg:84℃、水酸基価197KOHmg/g)用いた点以外は上記実施例1と同様にして透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:35%、フェノキシ樹脂:7.9%、硬化剤成分:10.9%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:46.2%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂+硬化剤成分]=65:35、NCO/OH=1/1)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、1300mPa・sであった。
バインダー樹脂としてフェノキシ樹脂(東都化成(株)製のYP−50樹脂溶液を加熱・乾燥して得た樹脂;Tg:84℃、水酸基価197KOHmg/g)用いた点以外は上記実施例1と同様にして透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:35%、フェノキシ樹脂:7.9%、硬化剤成分:10.9%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:46.2%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂+硬化剤成分]=65:35、NCO/OH=1/1)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、1300mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様に基材の東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は78.9%、ヘイズは86.1%、表面抵抗値は2500Ω/□、比抵抗値は1.5Ω・cmであった。
実施例1と同様に分散型EL素子を形成し、透光性導電膜の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
バインダー樹脂として、架橋性のないアクリル樹脂(Tg:105℃)を用い且つ硬化剤を添加しなかった以外は、上記実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:28%、アクリル樹脂:18.7%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:53.3%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂]=60:40)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、3000mPa・sであった。
バインダー樹脂として、架橋性のないアクリル樹脂(Tg:105℃)を用い且つ硬化剤を添加しなかった以外は、上記実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:28%、アクリル樹脂:18.7%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:53.3%であった(酸化物針状粉:バインダー成分[バインダー樹脂]=60:40)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、3000mPa・sであった。
次いで、この透光性導電塗料を、上記実施例1と同様に、基材の東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
また、この透光性導電膜の透過率(可視光)は79.2%、ヘイズは84.4%、表面抵抗値は2100Ω/□、比抵抗値は1.26Ω・cmであった。
実施例1と同様に分散型EL素子を形成し、透光性導電膜の抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
『透光性導電膜の表面凹凸の評価』
本発明の各実施例及び各比較例に係わる透光性導電膜の表面凹凸をレーザー顕微鏡による膜表面観察(0.5mm×0.5mmの領域)で評価した。実施例1〜4及び比較例1、2の透光性導電膜はいずれの場合も、表面粗さ(Ra)が約2μmで、凸部の最大高さ(最も厚い凸部の膜厚−平均膜厚)が4〜5μmであったのに対し、実施例5の粉砕処理された導電性酸化物針状粉を用いた透光性導電膜では、表面粗さ(Ra)が約1μmで、凸部の最大高さ(最も厚い凸部の膜厚−平均膜厚)が約2μmであった。
本発明の各実施例及び各比較例に係わる透光性導電膜の表面凹凸をレーザー顕微鏡による膜表面観察(0.5mm×0.5mmの領域)で評価した。実施例1〜4及び比較例1、2の透光性導電膜はいずれの場合も、表面粗さ(Ra)が約2μmで、凸部の最大高さ(最も厚い凸部の膜厚−平均膜厚)が4〜5μmであったのに対し、実施例5の粉砕処理された導電性酸化物針状粉を用いた透光性導電膜では、表面粗さ(Ra)が約1μmで、凸部の最大高さ(最も厚い凸部の膜厚−平均膜厚)が約2μmであった。
[結果]
実施例1〜4と比較例1〜2を比べることにより、ガラス転移点の高い樹脂をバインダーに用いることにより、分散型EL素子の形成による透光性導電膜の抵抗値の上昇を抑制できることが分かる。
加えて、実施例5では透光性導電膜の表面粗さ(膜表面の凹凸)が小さいため、分散型EL素子の電極間ショート(短絡)や絶縁破壊によるスパーク発生の抑制効果があり、分散型EL素子の構造設計の自由度が広がると同時に分散型EL素子の生産歩留まり向上にも役立つことが判る。
実施例1〜4と比較例1〜2を比べることにより、ガラス転移点の高い樹脂をバインダーに用いることにより、分散型EL素子の形成による透光性導電膜の抵抗値の上昇を抑制できることが分かる。
加えて、実施例5では透光性導電膜の表面粗さ(膜表面の凹凸)が小さいため、分散型EL素子の電極間ショート(短絡)や絶縁破壊によるスパーク発生の抑制効果があり、分散型EL素子の構造設計の自由度が広がると同時に分散型EL素子の生産歩留まり向上にも役立つことが判る。
以上、本発明に係る透光性導電塗料等によれば、高い透光性と優れた導電性を有すると同時に、分散型EL素子の透明電極等として適用した場合に、分散型EL素子の製造工程において抵抗値等の膜特性の劣化を抑制することができるため、産業上の利用価値が多大である。
Claims (13)
- バインダー樹脂を含む溶剤中に、導電性酸化物針状粉を分散した透光性導電塗料であって、前記バインダー樹脂のガラス転移点(Tg)が120℃以上であることを特徴とする透光性導電塗料。
- 前記バインダー樹脂のガラス転移点(Tg)が140℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の透光性導電塗料。
- 前記バインダー樹脂は架橋性樹脂であり、且つ、前記溶剤中には更に硬化剤を含有したことを特徴とする請求項1又は2に記載の透光性導電塗料。
- 前記バインダー樹脂が、フェノキシ系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、サルホン系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 前記フェノキシ系樹脂の骨格中には、更にリンおよび/または硫黄が含有されていることを特徴とする請求項4に記載の透光性導電塗料。
- 前記硬化剤が、ブロックイソシアネートであることを特徴とする請求項3に記載の透光性導電塗料。
- 前記導電性酸化物針状粉が、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種を主成分としていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 前記導電性酸化物針状粉が、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種がドープされた酸化インジウムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 前記導電性酸化物針状粉の平均アスペクト比が、5以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 前記導電性酸化物針状粉が、平均長さ25μm以上で平均アスペクト比5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られた平均長さ5〜20μmの導電性酸化物針状粉であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 前記(導電性酸化物針状粉:バインダー)の重量比が、(40:60)〜(90:10)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、膜の比抵抗が5.0Ω・cm以下であることを特徴とする透光性導電膜。
- 請求項12に記載の透光性導電膜を透明電極に用いていることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
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