JP3683076B2 - 表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料及びその製造方法 - Google Patents

表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学材料、屈折率調整材料、特に光−光変換素子や光−電子変換素子、位相共役波発生、光双安定現象を利用する非線形光学分野や超格子素子等の電子材料、発光材料、センサー材料、波長カットフィルターなどの光学分野、磁気記録や光記録などの材料として利用される記録関連分野、触媒関連分野、表面加工関連分野等に使用される半導体超微粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
非線形光学材料として用いる場合などのように、半導体超微粒子と光の相互作用を強めるために電子とホールがお互い束縛しあって運動する励起子状態を作り出し、いわゆる量子閉じ込め効果を利用するためには、励起子状態を安定化させる必要がある。そのためには、半導体超微粒子の粒子径を揃え、粒子間の凝集、凝結を防止し安定化させ、ボーア半径程度に小さくすることが必要になる。しかしその際には、半導体超微粒子の粒子径が著しく小さいため、半導体超微粒子の凝集による粗大粒子の生成が起こり易く、粒子径の制御が困難である。また実用上からは、簡単な方法で量産し、安定な状態で単離できることが望ましい。
【0003】
半導体超微粒子の粒子径を揃え、安定化するための解決法としては、半導体微粒子表面をポリマーでコートするという技術について報告されている。例えば、あらかじめ半導体微粒子表面をヒドロキシプロピルセルロースで処理し、その処理した半導体微粒子の懸濁溶液にスチレンを添加し、高剪断攪拌による懸濁重合を行い、ポリマーにコートされた半導体微粒子を得る、という方法や(高分子論文集、第40巻、697−702ページ、1983年)、硫化カドミウムなどの金属硫化物や酸化亜鉛などの金属酸化物の存在下、メチルメタクリレートを溶解した水溶液中で亜硫酸水の添加によりメチルメタクリレートの重合を実施し、生成するポリメチルメタクリレートでカプセル化するという方法(高分子論文集、第34巻、413〜420ページ、1977年)などが公知である。これら先行する技術は粒子の前処理などの工程数が増え、複雑であるという難点があった。また前者の方法の如き、通常よく用いられるラテックス製造方法はミクロン程度以下の粒子径の有効な制御が困難であった。また後者の方法によれば、溶出金属イオンと亜硫酸イオンとのレドックス反応で生じた亜硫酸ラジカルが開始剤となり、生成ポリマーの粒子への付着は生成ポリマー末端基と粒子表面の静電引力による事が知られているが、粒子表面電荷とポリマー末端電荷の組み合わせが条件に合う必要があるなどの欠点を有していた。
【0004】
簡単な方法で量産し、安定な状態で単離するために、半導体超微粒子表面をチオール化合物で覆い、表面を修飾する方法(特開平07−081936)が提案されている。この方法で製造された表面が修飾された半導体超微粒子は、半導体超微粒子表面が1つの官能基を有する化合物であるペンタフルオロチオフェノールで覆われているため、固体粉末として単離することができ、取り出した後の溶媒への再分散性の問題を解決している。
【0005】
さらに、デバイスとして用いる場合、半導体超微粒子を媒体である樹脂等へ分散させて用いることが多い。半導体超微粒子をポリスチレンやスチレンーアクリロニトリル共重合体等のスチロール系樹脂、ポリメチルメタクリル酸やポリアクリル酸等のアクリル酸系樹脂、エポキシ樹脂等に分散させるためには、これらの樹脂を溶媒に溶かしたものに半導体超微粒子を混ぜることにより行う方法(特開平05−287082)や、真空中で高分子の原料モノマーと半導体超微粒子原料を基板上に蒸発させ、その際原料モノマーを重合させ高分子膜中に半導体超微粒子を分散させる方法(特開平03−140335)等の分散方法が報告されているが、前者の場合、用いる樹脂と分散させる半導体超微粒子の特性や量によっては、乾燥中、若しくは乾燥後に、樹脂と半導体超微粒子が分離することにより半導体超微粒子が凝集、又は析出し、その結果、樹脂全体が濁りを生じ、半導体超微粒子が均一に分散した材料を得ることが困難である。また後者の場合では半導体超微粒子の粒子径制御、粒子径分布、粒子の凝集の制御が困難である。
【0006】
以上に述べてきたように従来の技術では、半導体超微粒子の粒子径を制御し、取り出すことは可能となっているが、半導体超微粒子を樹脂中に分散させる際に、半導体超微粒子それ自体に反応性を持たせ、媒体である樹脂と反応させることによる化学的手法を用いて分散させる手法は報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、表面に官能基を有する表面修飾半導体超微粒子と樹脂とを反応させた表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料の製造を鋭意検討した結果、半導体超微粒子を合成する際に2種類以上の官能基を有する化合物、または2種類以上の官能基を有する化合物及び1種類の官能基を有する化合物との混合物を反応系中に存在させ、半導体超微粒子と反応させ、表面修飾半導体超微粒子を製造し、次いで表面修飾半導体超微粒子の表面に存在し、かつ半導体超微粒子と未反応である官能基と反応が可能である官能基を有する樹脂とを反応させることにより、表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料を製造できることを見いだし本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 表面に官能基を有する表面修飾半導体超微粒子と樹脂とを反応させて得られる表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料。
(2) 2種類以上の官能基を有する化合物、または2種類以上の官能基を有する化合物及び1種類の官能基を有する化合物と、半導体超微粒子とを反応させて表面修飾半導体超微粒子を製造し、次いで、該表面修飾半導体超微粒子と、官能基を有する樹脂とを反応させることを特徴とする表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料の製造方法。
(3) (2)に記載の方法により製造された表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料。
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本発明に用いられる半導体超微粒子の種類としては、シリコン超微粒子、TiO2やZnO、CdO、PbO等の酸化物半導体超微粒子、CdS、CdSe、ZnSe、CdTe、ZnS、HgS、HgSe等の12族−16族半導体超微粒子、PbS、PbSe等の14族−16族半導体超微粒子等が挙げられる。
【0011】
詳細に説明するためにまず、12−16族元素化合物半導体超微粒子を取り上げ、表面修飾半導体超微粒子を製造する方法を説明する。
本発明における周期律表における12族元素化合物としては、過塩素酸カドミウム、硝酸亜鉛等であり、用いる溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、結晶水を含むものであってもよい。
本発明によって得られる表面修飾半導体超微粒子は粒子径が1〜100nmの範囲内にあるものであればよい。
【0012】
本発明における官能基としては、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン、スルホ基、ビニル基、エポキシ基等、さらにはそれらの誘導体がある。
本発明における2種類以上の官能基を有する化合物とは、樹脂との反応が可能な官能基を有し、かつその官能基を半導体超微粒子の表面上に存在させるために、半導体超微粒子と反応することが可能な16族元素を含む官能基を有する化合物であればよい。例えば、アミノ基を有するチオール化合物、アミノ基を有するカルボキシル化合物、チオール基を有するカルボキシ化合物、水酸基を有するチオール化合物等である。
【0013】
アミノ基を有するチオール化合物の例としては、4−アミノチオフェノール、2−アミノチオフェノール、2−アミノエタンチオール、6−チオグアニン−5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール等があり、それぞれを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0014】
水酸基を有するチオール化合物としては、2−メルカプトフェノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、2−メルカプトエタノール等があり、それぞれを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0015】
カルボキシル基を有するチオール化合物としては、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸ナトリウム等があり、それぞれを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0016】
本発明における1種類の官能基を有する化合物とは、上記の2種類以上の官能基を有する化合物とともに使用し、半導体超微粒子と反応することが可能な16族元素を含む化合物であり、表面修飾半導体超微粒子上に存在させる樹脂と反応が可能である官能基の量を調整するために必要に応じて使用することができる。例えば2種類以上の官能基を有する化合物としてアミノチオフェノール、1種類の官能基を有する化合物としてチオフェノールの組み合わせがある。2種類以上の官能基を含む化合物と、1種類の官能基を有する化合物の添加比を変えることで、2種類以上の官能基を有する化合物によって導入される樹脂と反応が可能である官能基の存在量を制御し、これにより表面修飾半導体超微粒子と樹脂との反応部位を制御することが可能となる。
【0017】
表面修飾半導体超微粒子を製造する反応場である溶液を調製するための溶媒としては、第12族元素化合物、2種類以上の官能基を有する化合物、1種類の官能基を有する化合物が溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、水、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンなど、あるいはこれらの混合溶媒が用いられ得る。
【0018】
12族元素化合物としては、このような液相中で1mol/l以下、好ましくは10-6〜10-1mol/lの濃度の溶液にすることが望ましい。多すぎると粒子径の制御が困難になるからである。
第16族元素化合物は、硫化水素やセレン化水素などの水素化物ガスや硫化水素ナトリウムなどを使用することができ、これらを上記の溶媒中に溶解させた溶液を用いることもある。
【0019】
上記、第12族元素化合物、2種類以上の官能基を有する化合物、1種類の官能基を含む化合物、溶媒からなる溶液を攪拌しながら、第16族元素化合物又は第16族元素化合物を含有する溶液を徐々に添加してゆく。前者の添加方法を用いて半導体超微粒子を製造する際には、反応効率を上げる点、半導体超微粒子の粒子径を制御する点から、溶液との接触効率を良くするためにバブリングさせることが好ましい。
【0020】
第16族元素化合物が水素化物ガスの場合、ヘリウムや窒素等の不活性ガスで、また硫化水素ナトリウム等の固体の場合は溶媒に溶解し、希釈することによって、生成する半導体超微粒子の粒子径をさらにコントロールすることができる。反応ガス濃度としては、体積で100%〜0.0001%の濃度が好ましく、流量としては反応を定常的に進行させるに充分な量であればよい。得られた半導体超微粒子を含むコロイド溶液を、エバポレーションや減圧蒸留などの方法によりコロイド溶液を濃縮し、生成した半導体超微粒子を沈殿させて取り出し、精製、乾燥することにより、表面修飾半導体超微粒子が得られる。
【0021】
次に表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料を製造する方法を説明する。
本発明に用いることのできる樹脂としては、表面修飾半導体超微粒子の表面に存在し、かつ半導体超微粒子と未反応である官能基と反応が可能である官能基を有する樹脂、例えば、ポリスチレンをアミノ化、クロロメチル化、スルホン化した、さらにはそれらの誘導体であるスチロール系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0022】
目的とする表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料を製造するためには、表面修飾半導体超微粒子と、上記の樹脂の双方が溶解する溶媒に溶解し、必要に応じて、触媒を添加し、加熱することにより、反応を進行させ、目的とする表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料を製造することができる。
【0023】
用いる触媒としてはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド等が挙げられ、表面修飾半導体超微粒子の表面に存在し、かつ半導体超微粒子と未反応である官能基と樹脂中の官能基の組み合わせによって必要に応じて用いることができる。反応温度は溶媒の融点から沸点の間であればよい。
【0024】
詳細に説明するために次に、酸化物半導体超微粒子を取り上げる。酸化物半導体超微粒子としてはTiO2やZnO、CdO、PbO等の酸化物半導体超微粒子が挙げられる。
本発明によって得られる半導体超微粒子は粒子径が1〜100nmの範囲内にあるものであればよい。
【0025】
酸化物半導体の原料化合物としては、用いる溶媒に可溶な化合物であり、例えば、酢酸塩などの有機酸塩類、硝酸塩類、過塩素酸塩類、アルコキシド類、ハロゲン化物類などが用いられる。好ましくは、過塩素酸カドミウム、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛等であり、用いる溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、結晶水を含むものであってもよい。
【0026】
酸化物半導体の原料化合物は、このような液相中で1mol/l以下、好ましくは10-6〜10-1mol/lの濃度の溶液にすることが望ましい。多すぎると粒子径の制御が困難になるからである。
酸化するための酸素としては、空気中の酸素を反応系に供給してもよいが、溶媒中の溶存酸素でも充分であるし、必要であれば、塩基ないしは溶媒に水を使用した場合は水中の水酸基から、反応により生成する酸素を必要に応じて利用してもよい。用いられる塩基は、酸化物半導体の原料化合物から酸化物半導体への反応を促進するものであり、好ましくは強塩基であることが望ましい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが適宜用いられる。
【0027】
本発明における2種類以上の官能基を有する化合物とは、樹脂との反応が可能な官能基を有し、かつその官能基を半導体超微粒子の表面上に存在させるため、酸素元素を含む官能基を有する化合物であればよい。例えば、チオール基を有するカルボキシル化合物、アミノ基を有するカルボキシル化合物、アミノ基を有するヒドロキシ化合物等である。
【0028】
チオール基を含むカルボキシル化合物としては、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸等がある。
アミノ基を含むカルボキシル化合物としては、アミノフェニル酢酸、アミノ酢酸、アミノ安息香酸等がある。
アミノ基を含むヒドロキシ化合物としては、アミノプロパノール、アミノフェノール、アミノブタノール、アミノエタノール等がある。
【0029】
本発明における1種類の官能基を含む化合物とは、前述の、12−16族元素化合物半導体超微粒子で説明したのと同じ要領で用いる。
溶液を生成するための溶媒としては酸化物半導体元素化合物、2種類以上の官能基を有する化合物が溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、水、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンなど、あるいはこれらの混合溶媒が用いられ得る。
【0030】
上記、酸化物半導体の原料化合物、2種類以上の官能基を有する化合物、1種類の官能基を有する化合物、必要であれば塩基、溶媒からなる溶液を調製し、必要に応じて、加熱または還流させ、酸化物半導体の原料化合物を酸化する。反応温度は溶媒の融点から沸点の間であり、反応時間は数分から数日である。これにより表面修飾半導体超微粒子が得られる。
【0031】
このようにして得られた表面修飾半導体超微粒子と樹脂とを溶媒にとかし、必要に応じて、触媒を添加し、加熱することにより表面修飾半導体超微粒子と樹脂とを反応させ、目的とする表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料を製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1
過塩素酸カドミウム6水和物1.0×10-2mol、チオフェノール1.52×10-2mol、アミノチオフェノール1.52×10-2molを溶解したアセトニトリルーメタノール(1:1)混合溶液400mlをフラスコにいれスターラーチップで溶液を攪拌しながらアルゴンガスで置換した後、組成が5容量%の硫化水素/ヘリウム混合ガスを流量270ml/minで溶液中に2分間供給することにより反応を進行させた。得られた半導体超微粒子含んだコロイド溶液を濃縮し、トルエンと混ぜ、半導体超微粒子を沈殿させた。沈殿物を取り出し、再度メタノールに溶解させ後トルエンを混合することによって半導体超微粒子を沈殿させ未反応物を除去する精製をおこなった。この操作は5回繰り返しおこなった。最後に沈殿物を取り出し、乾燥させることにより、目的とする表面修飾半導体超微粒子を得た。
生成したこの表面修飾半導体超微粒子は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒に可溶であり、見かけ上散乱のない黄色透明な溶液であった。
この溶液を取り出し透過型電子顕微鏡により観察したところ、粒子径が約3nmであるCdS半導体超微粒子が確認された。
【0033】
また得られた表面修飾半導体超微粒子をKBrと混合し、錠剤にして赤外吸収スペクトルを測定したところ、芳香族アミンに特徴的な、C−N伸縮(1340〜1250cm-1)、芳香族C−H伸縮に重なってNH3+に起因する幅広い吸収(3000〜2800cm-1)、残存SH基の伸縮の吸収(2600〜2550cm-1)が観測されるのが特徴的であり、CdS半導体超微粒子表面にアミノ基の存在が確認された(図1)。続いて、製造した表面修飾CdS半導体超微粒子0.1gをジメチルホルムアミド2mlに溶かし、ポリアクリル酸0.5gを加え、攪拌し乾燥した。その結果ゲル状の黄色の透明な反応物が確認された。この反応物はメタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドにはもはや不溶であった。反応物をジメチルホルムアミドで洗浄し、未反応のポリアクリル酸を除去した後、乾燥させ、赤外吸収スペクトルの測定をおこなった結果、アミド結合の存在が示唆され、ポリアクリル酸と反応していることが分かる(図2)。
【0034】
実施例2
実施例1で製造した表面修飾CdS半導体超微粒子0.1gをジメチルスルホキシド5mlに溶かし、ポリメチルメタクリレート0.5gを加えた。その後、140℃で3時間反応させた。反応後、反応物をメタノールに加えると黄色い沈澱物が得られ、上澄みは無色透明であった。さらに反応物をメタノールとアセトニトリルで再沈、精製し、乾燥させた。この反応物はアセトニトリル、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド等に可溶であった。さらに反応物をフィルム化したところ、黄色透明なフィルムを得ることが出来た。このフィルムの赤外吸収スペクトルの測定をおこなった結果、アミド結合の存在が示唆され、ポリメチルメタクリレートと反応していることが分かる。またこのフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したところ、粒径約3nmのCdS超微粒子が均一に分散していることが確認された(図3)。またこのフィルムの屈折率を測定したところ、CdS半導体超微粒子が分散していないポリメチルメタクリレートと比較して、0.01の増加があった。
【0035】
比較例1
実施例1で製造した表面修飾CdS半導体超微粒子0.1gをジメチルホルムアミド5mlに溶かし、ポリメチルメタクリレート0.5gを加えたものを調製した。これをシャーレに展開し乾燥しフィルム化を試みたが、実施例2で得られた様な黄色透明なフィルムは得られず、全体的に不透明な黄色のフィルムが得られCdS半導体超微粒子が凝集していることが推測された。
【0036】
参考例1
過塩素酸カドミウム6水和物2.5×10-3mol、p−ヒドロキシチオフェノール7.6×10-3molを溶解したアセトニトリルーメタノール(1:1)混合溶液400mlをフラスコにいれスターラーチップで溶液を攪拌しながらアルゴンガスで置換した後、組成が5容量%の硫化水素/ヘリウム混合ガスを流量270ml/minで溶液中に30秒間供給することにより反応を進行させた。得られた半導体超微粒子含んだコロイド溶液を濃縮し、蒸留水と混ぜ、半導体超微粒子を沈殿させた。沈殿物を再度メタノールに溶解させ後蒸留水を混合することによって半導体超微粒子から未反応物を除去する精製をおこなった。この操作は5回繰り返しおこなった。最後に沈殿物を乾燥させることにより、目的とする表面修飾半導体超微粒子を得た。生成したこの表面修飾半導体超微粒子は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドに可溶であり、見かけ上散乱のない黄色透明な溶液であった。
また得られた表面修飾半導体超微粒子をKBrと混合し、錠剤にして赤外吸収スペクトルを測定したところ、C−O伸縮(1260cm-1付近)、O−H面内変角振動(1357cm-1付近)が観測され、2置換ベンゼンのC−H面外変角の吸収(800cm-1付近)も観測されているのが特徴的であり、CdS半導体超微粒子表面に水酸基の存在が確認された(図4)。
【0037】
参考例2
過塩素酸カドミウム6水和物の代わりとして、過塩素酸亜鉛6水和物1.0×10-2molを使用する以外は実施例1と同様におこなった。 生成したこの半導体超微粒子は、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒に可溶であり、見かけ上散乱のない無色透明な溶液であった。
この溶液を取り出し透過型電子顕微鏡により観察したところ、粒子径が約3nmであるZnS半導体超微粒子が確認された。
また得られた半導体超微粒子をKBrと混合し、錠剤にして赤外吸収スペクトルを測定したところ、芳香族アミンに特徴的な、C−N伸縮、芳香族C−H伸縮に重なってNH3+に起因する幅広い吸収が観測された。2置換ベンゼンのC−H面外変角の吸収も観測されているのが特徴的であり、ZnS半導体超微粒子表面にアミノ基の存在が確認された。
【0038】
参考例3
メタノール−エタノール混合溶媒(体積比5:7)400mlに水酸化ナトリウム3.5×10-3mol、3−メルカプトプロピオン酸1.0×10-2molを溶解させた。この溶液を還流管をつけたフラスコに入れ、攪拌し、加熱しながら窒素気流下で溶液温度を70℃に保ち還流した。ここに硝酸亜鉛6水和物1.0×10-2molをエタノール5mlに溶解した溶液を加え、10時間窒素気流下で還流を続けた。反応後、溶媒をエバポレーターで除去し、粉末を得た。得られた粉末のX線回折スペクトルの結果より得られた粉末が酸化亜鉛であることが確認された。
【0039】
実施例3
硝酸亜鉛の代わりに四塩化チタンを使用し、3−メルカプトプロピオン酸の代わりにアミノ安息香酸を使用する以外は参考例3と同様にした。得られた粉末のX線回折スペクトルの結果より、得られた粉末が酸化チタンであることが確認された。また得られた半導体超微粒子をKBrと混合し、錠剤にして赤外吸収スペクトルを測定したところ、芳香族アミンに特徴的な、C−N伸縮、芳香族C−H伸縮に重なってNH3+に起因する幅広い吸収が観測され、2置換ベンゼンのC−H面外変角の吸収も観測されているのが特徴的であり、TiO2半導体超微粒子表面にアミノ基の存在が確認された。
さらに得られた粉末0.1gをジメチルホルムアミド2mlに溶かし、ポリアクリル酸0.5gを加え、攪拌し乾燥した。その結果ゲル状の白色の反応物が確認された。この反応物はジメチルホルムアミドにはもはや不溶であった。反応物をジメチルホルムアミドで洗浄し、未反応のポリアクリル酸を除去した後、乾燥させ、赤外吸収スペクトルの測定をおこなった結果、アミド結合の存在が示唆された。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、半導体超微粒子をその生成過程において単に粒子径の制御をするだけではなく、半導体超微粒子表面に官能基を存在させることにより、半導体超微粒子と樹脂とを反応させることに成功し、高濃度かつ均一に分散させることが可能となった。本発明によって得られた表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料は、屈折率調整材料、光学材料、特に光−光変換素子や光−電子変換素子等に用いられる非線形光学材料や超格子素子等の電子材料、発光材料、センサー材料などの光学分野、磁気記録や光記録などの材料として利用される記録関連分野の他、触媒関連分野にも本発明は貢献することができ、従って、産業上の利用に重要な意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1より得られた表面修飾硫化カドミウム超微粒子の赤外吸収スペクトル
【図2】実施例1より得られた表面修飾硫化カドミウム超微粒子含有樹脂材料の赤外吸収スペクトル
【図3】実施例2より得られた硫化カドミウム粒子の電子顕微鏡写真
【図4】参考例1より得られた表面修飾硫化カドミウムの赤外吸収スペクトル

Claims (3)

  1. 表面に官能基を有する表面修飾半導体超微粒子と樹脂とを反応させて得られる表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料。
  2. 2種類以上の官能基を有する化合物、または2種類以上の官能基を有する化合物及び1種類の官能基を有する化合物と、半導体超微粒子とを反応させて表面修飾半導体超微粒子を製造し、次いで、該表面修飾半導体超微粒子と、官能基を有する樹脂とを反応させることを特徴とする表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料の製造方法。
  3. 請求項2に記載の方法により製造された表面修飾半導体超微粒子含有樹脂材料。
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