JP4631764B2 - 透光性導電塗料及び透光性導電膜 - Google Patents

透光性導電塗料及び透光性導電膜 Download PDF

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本発明は、例えば分散型エレクトロルミネッセンス素子(分散型EL素子)の透明電極等の形成に適用される透光性導電塗料、特に、優れた透光性及び導電性と共に、優れた耐有機溶剤性を有する導電膜の形成に適した透光性導電塗料、及びその透光性導電塗料から得られる透光性導電膜に関するものである。
一般に、分散型EL素子の透明電極等に適用される透明導電膜は、バインダーを含む溶剤中に導電フィラーが分散された透明導電塗料を用いて、塗布法により形成されている。そして、透明導電塗料の導電フィラーとしては、従来から、インジウム−錫酸化物(以下、ITOとも称する)、錫−アンチモン酸化物(以下、ATOとも称する)等の酸化物系フィラーが用いられており、その中でもITOはATOに比べて抵抗値が低いために広く使用されている。
上記透明導電塗料においては、導電フィラーの含有量は少ないほど好ましい。その理由は、塗料成分の一つである透明樹脂からなるバインダーに比べ、フィラーである導電性酸化物の光吸収が遥かに大きいからである。従って、低抵抗値の導電膜が得られる範囲で、バインダーに対する導電性酸化物フィラーの量を出来るだけ少なくすることによって、膜の可視光線透過率が向上する。このような理由から、球状や粒状の導電フィラーよりも、針状又はりん片状の導電フィラーの方が、少量の添加で低抵抗値の膜が得られる利点がある。
りん片状の酸化物粉を得る方法としては、特開昭62−3003号公報(引用文献1)に記載されるように、無機酸化物、含水無機酸化物等のコロイド溶液を凍結し、コロイド溶液の溶剤の結晶面と結晶面の間隙に無機酸化物粒子や含水酸化物粒子を析出させた後、乾燥して脱溶剤し、含水酸化物の場合は更に焙焼する方法がある。また、針状の酸化物粉を得る方法としては、特開昭56−120519号公報(引用文献2)に記載されるように、針状の蓚酸錫を加熱分解して針状錫酸化物を得る方法、あるいは、特開平6−293515号公報(引用文献3)に記載されるように、硝酸インジウムの高温加熱濃縮スラリーから回収される白色針状インジウム化合物粉を加熱分解して、針状のインジウム−錫酸化物粉を得る方法等が知られている。
上記した導電フィラーを用いた導電塗料として、例えば特開平6−309922号公報(特許文献4)に記載されるように、針状ITO粉を用いたペーストが知られている。このような導電性酸化物針状粉を含有する導電塗料を用いて形成した導電膜は、いわゆる透明導電膜に比べてヘイズ値が高い(散乱が大きい)ため透光性導電膜と称される。しかし、かかる透光性導電膜は、例えばアセトン等の有機溶剤に浸漬すると簡単に基材から剥離してしまい、耐有機溶剤性に問題があることが判明した。
そのため、この透光性導電膜を分散型EL素子の透明電極等として適用した場合に、この膜の上に更に蛍光体層や絶縁体層等を積層すると、各々の層の形成に用いるペースト中に含まれる有機溶剤の種類によっては、透光性導電膜が侵されて剥離したり、抵抗値等の膜特性が劣化したりする欠点があった。
特開昭62−3003号公報 特開昭56−120519号公報 特開平6−293515号公報 特開平6−309922号公報
本発明は、このような従来の事情に鑑み、分散型EL素子の透明電極等として有用な透光性導電膜の形成に用いる透光性導電塗料について、透光性と導電性に優れるだけでなく、耐有機溶剤性も兼ね備えた透光性導電膜を形成することができる透光性導電塗料を提供すること、及びこの透光性導電塗料を用いて形成される透光性導電膜を提供することを目的とする。
本発明者等は、透光性導電膜の耐有機溶剤性を改善向上させるため、透光性導電塗料に用いられるバインダーについて詳細に検討したところ、架橋性樹脂のバインダーが耐有機溶剤性の改善向上に有効であることを見出した。この知見に基づいて更に検討した結果、架橋性樹脂と硬化剤を主成分とするバインダーで、架橋前の架橋性樹脂のガラス転移点(Tg)が70℃以上であれば、透光性と導電性に優れるだけでなく、耐有機溶剤性に優れた透光性導電膜が得られることを見出し、本発明を成すに至ったものである。
即ち、上記目的を達成するため、本発明が提供する透光性導電塗料は、金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物針状粉が、バインダーを含む溶剤中に分散した透光性導電塗料であって、該バインダーが架橋性樹脂と硬化剤を主成分とし、且つ架橋前の架橋性樹脂のガラス転移点(Tg)が70℃以上であることを特徴とするものである。
上記本発明の透光性導電塗料において、前記架橋性樹脂は、水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂あるいはアクリルポリオール樹脂であることが好ましい。また、前記硬化剤は、ブロックイソシアネートであることが好ましい。更に、前記金属酸化物としては、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記本発明の透光性導電塗料において、前記導電性酸化物針状粉のアスペクト比は5以上であることが好ましい。また、前記導電性酸化物針状粉:バインダーの重量比は、40:60から90:10であることが好ましい。
本発明は、また、上記本発明の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、架橋硬化した樹脂中に分散した導電性酸化物針状粉を含み、膜の比抵抗が5.0Ω・cm以下であることを特徴とする透光性導電膜を提供するものである。
本発明によれば、高い透光性と優れた導電性を有すると同時に、耐有機溶剤性に優れた透光性導電膜の形成が可能な透光性導電塗料を提供することができる。従って、本発明の透光性導電塗料により形成された透光性導電膜は、その上に必要な蛍光体層や絶縁体層等を形成する積層印刷工程において有機溶剤に侵されにくく、膜の剥離や抵抗値等の膜特性の劣化を防止することが可能となる。
本発明において、透光性導電塗料は導電性酸化物針状粉とバインダーを含み、そのバインダーとして架橋性樹脂と硬化剤を主成分とする樹脂バインダーを用いる。この樹脂バインダー成分は、導電性酸化物粉の微粒子同士を結合して透光性導電膜の導電性と強度を高めと共に、基材と透光性導電膜の密着力を高める。また、樹脂バインダーの架橋性樹脂が架橋硬化することにより、透光性導電膜の耐有機溶剤性を向上させ、各種デバイスの製造工程において別の膜を積層形成する場合に、その塗布液中の有機溶剤による透光性導電膜の劣化を防止することができる。更に、架橋性樹脂は架橋前のカラス転移点(Tg)が70℃以上であることが必要であり、これによって優れた透光性と共に優れた導電性を有する透光性導電膜が得られる。
架橋性樹脂の架橋前のガラス転移点が70℃以上の場合に、優れた導電性の透光性導電膜が得られる理由は明らかではないが、例えば以下のように考えることができる。架橋性樹脂はガラス転移点を越えると軟化するが、ガラス転移点が高い場合には、塗膜の乾燥過程でより強いストレスを導電性酸化物針状粉に与えることができ、その微粒子同士の接触を強化する作用があるものと推測される。そのため、乾燥後に樹脂バインダーの架橋を行えば、耐有機溶剤性に優れた透光性導電膜が得られる。逆に、架橋性樹脂のガラス転移点が低い場合には、乾燥過程での微粒子同士の接触が強化されないため、乾燥後の架橋によりガラス転移点が最終的に高くなっても、塗膜の抵抗値改善の効果は乏しいと考えられる。要するに、架橋性樹脂の最終的なガラス転移点ではなく、架橋前のガラス転移点が70℃以上であることが重要である。
上記架橋性樹脂としては、硬化剤との反応により架橋して硬化する樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、ポリエチレン樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂の一部に、上記の熱硬化性樹脂成分を共重合させたものでもよい。その中でも、水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂及びアクリルポリオール樹脂は、イソシアネート等の硬化剤による架橋が可能であり、可撓性やPET(ポリエチレンテレフタレート)基材との密着力に優れているため、特に好ましい。尚、上記熱硬化性樹脂以外でも、2液性のエポキシ樹脂やウレタン樹脂などの常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることもできる。
また、上記硬化剤としては、水酸基と架橋することができるアミノ基、メチロール基を有するアミノ樹脂、ポリイソシアネートが用いられる。ここで、ポリイソシアネートには使用する原料イソシアネートにより、TDI(トリレンジイソシアネート)系、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系、XDI(キシリレンジイソシアネート)系、NDI(ナフチレン1,5−ジイソシアネート)系、TMXDI(テトラメチレンキシリレンジイソシアネート)系等の芳香族系イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系、H12MDI(水添MDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)系、H6XDI(水添XDI)系等の脂環族系イソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系、DDI(ダイマー酸ジイソシアネート)系、NBDI(ノルボルネン・ジイソシアネート)系等の脂肪族系イソシアネートなどがある。
これらの硬化剤のうち、一般にTDI系やMDI系など芳香族系イソシアネートは紫外線によって黄変しやすいが、IPDI系やHDI系の脂環族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネートは黄変しにくいため好ましい。また、イソシアネート硬化剤において、ポリイソシアネートをブロック化剤で保護したブロックイソシアネートは、低温での架橋反応が抑制されるため、使用前に硬化剤を混合する2液タイプでなく、硬化剤を予め塗料に配合した1液タイプとすることができるため特に好ましい。ブロックイソシアネートの中でも、脂肪族系ブロックイソシアネートは黄変がないため好ましく、更に最低硬化温度(ブロック化剤の保護作用が低下し、硬化剤として有効に機能する温度)が100℃以下であるHDI系ブロックイソシアネート、例えば旭化成(株)製のデュラネートMF−K60X(商品名)が特に好ましい。ここで、上記水酸基を有する架橋性樹脂の水酸基(−OH)とポリイソシアネートのイソシアネート基(−NCO)の割合(モル比)は、架橋性樹脂の耐溶剤性や強度等の特性を考慮して、一般にNCO/OH=1〜5程度の範囲に設定される。
また、上記した硬化剤と共に、必要に応じて、既存の硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート等)を併用することもできる。硬化剤の種類によっては、硬化触媒を併用することにより、架橋性樹脂の硬化速度を大幅に高めることができる。
透光性導電塗料の導電性酸化物針状粉としては、金属酸化物がドープされた酸化インジウムを用いる。また、ドープすべき金属酸化物としては、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。特に、酸化インジウムに酸化錫をドープした針状のインジウム−錫酸化物(ITO)が、導電性酸化物針状粉として好ましい。
また、導電性酸化物針状粉のアスペクト比(太さに対する長さの比)は、5以上であることが好ましく、10以上が更に好ましい。導電性酸化物針状粉のアスペクト比が5未満の場合には、少量の導電性酸化物針状粉の添加で透光性導電膜の比抵抗を5.0Ω・cm以下にすることが困難となる。
透光性導電塗料中における導電性酸化物針状粉とバインダーの割合は、導電性酸化物針状粉:バインダーの重量比で40:60〜90:10が好ましく、50:50〜70:30が更に好ましい。尚、上記導電性酸化物針状粉とバインダーの割合におけるバインダー量は、樹脂バインダーと硬化剤成分の合計量を示している。バインダーの割合が導電性酸化物針状粉:バインダーの重量比で40:60よりも多いと、得られる透光性導電膜の抵抗が高くなり過ぎる場合がある。また、バインダーの割合が導電性酸化物針状粉:バインダーの重量比で90:10よりも少ないと、透光性導電膜の強度が低下すると同時に、針状粒子同士の接触がうまくとれず、膜の抵抗も高くなる場合があるため好ましくない。
透光性導電塗料に用いる溶剤としては、例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミン類、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
尚、透光性導電塗料に用いる溶剤は、使用するプラスチック基材に対する溶解性や成膜条件を考慮して、適宜選定することができる。例えば、スクリーン印刷について考えると、蒸発速度、刷版の乳剤やバインダー樹脂に対する溶解性、有害性などを考慮した場合、好ましい溶剤の一つとしてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを挙げることができる。
次に、導電性酸化物針状粉の製造方法について、好ましい一例を説明する。まず、インジウムメタルを硝酸に溶解した溶液を撹拌しながら加熱し、液温130〜150℃まで濃縮して濃厚なスラリーを生成せしめ、このスラリーに多量の水を加えて濾過し、得られた針状粉を洗浄、乾燥し、数百℃程度で30〜60分程度仮焼することにより針状酸化インジウム粉を得る。この針状酸化インジウム粉を水に分散させた後、錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の金属塩水溶液を加え、中和反応により上記針状酸化インジウム粉の表面及び細孔内に錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の水酸化物を形成し、固液分離した後、700〜1200℃程度で30〜60分程度仮焼する。この仮焼により上記水酸化物が酸化物に転化すると同時に、酸化インジウムと固溶化するので、更に必要に応じて還元性雰囲気下での熱処理(酸素空孔導入による低抵抗化処理)を施して、導電性酸化物針状粉を得ることができる。
この導電性酸化物針状粉は、長さ5μm以上、アスペクト比5以上であり、濃縮条件によって長さ5〜200μm程度、アスペクト比30程度のものまで得られる。好ましい粉末形状としては、長さ20〜100μm、アスペクト比10以上である。ここで、例えば錫を添加した針状ITO粉の場合、この粉末を100kgf/cmの圧力を加えてペレット状にした時の比抵抗(以下、圧粉抵抗と称す)が、0.01〜0.03Ω・cm程度のものを得ることができる。
本発明の透光性導電塗料は、上記導電性酸化物針状粉を、バインダー(上記した架橋性樹脂と硬化剤とからなる)及び溶剤と混合し、必要に応じて分散剤を添加した後、分散処理を行うことにより製造することができる。バインダーの添加は、導電性酸化物針状粉の分散液に加えても、導電性酸化物針状粉の分散前の溶剤に予め加えてもよく、特に制約はない。分散処理には、超音波処理、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル、スリーロールミル等の汎用の方法を適用することができる。
上記分散剤としては、シリコンカップリング剤等の各種カップリング剤、各種高分子分散剤、あるいはアニオン系、ノニオン系、カチオン系等の各種界面活性剤が挙げられる。これら分散剤は、必要に応じて添加すればよく、用いる導電性酸化物針状粉の種類や分散処理方法に応じて適宜選定される。また、塗膜の外観を改善するために、消泡剤やレベリング剤等の添加剤を加えても良い。
本発明の透光性導電膜は、上記透光性導電塗料を基材上に印刷塗布した後、加熱してバインダーの架橋性樹脂を架橋硬化させることにより、形成することができる。透光性導電塗料の基材上への印刷には、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ワイヤーバーコーティング法、ドクターブレードコーティング法、ロールコーティング法等を用いることができる。
上記基材としては、透明性があれば良く、ガラスや各種透明プラスチックを用いることができる。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等を用いることができる。PETは安価で且つ強度に優れ、透明性と柔軟性も兼ね備えている等の観点から基材として好ましい材質である。尚、上記基材としてプラスチックを用いる場合には、透明導電膜との密着力を高めるための易接着処理、具体的には、プラズマ処理、コロナ放電処理、短波長紫外線照射処理等を予め施しておくこともできる。
このようにして得られる本発明の透光性導電膜は、高い透光性と導電性を両立できるだけでなく、架橋性樹脂が架橋硬化しているため、耐有機溶剤性が優れている。そのため、例えば分散型EL素子の透明電極に適用する場合、透光性導電膜上に素子を形成する各層の積層印刷工程において、層形成用の塗布液中の有機溶剤に侵されにくく、抵抗値等の膜特性の劣化を防止することできる。また、透光性導電膜の比抵抗は5.0Ω・cm以下であることが好ましい。比抵抗が5.0Ω・cmを超える場合は、透光性導電膜を分散型EL素子の透明電極に適用することが難しくなるからである。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の記述において「%」は、透過率及びヘイズ値の%を除いて、「重量%」を示している。
透光性導電膜の耐有機溶剤性は、アセトンをしみこませた綿棒で膜を1cm程度往復して擦り(1〜5回往復)、膜の状態を目視観察して評価した。また、透光性導電膜の透過率(可視光)とヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。透光性導電膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用いて測定した。また、透光性導電塗料の粘度は、塗料温度25℃で、B型粘度計を用いて測定した。
[実施例1]
導電性酸化物針状粉として、住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;圧粉抵抗値0.05Ω・cm、BET比表面積8.9m/g)を用いた。樹脂バインダーの架橋性樹脂としてウレタン変性ポリエステル樹脂(Tg:83℃、水酸基価2〜3KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製、MF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いた。
上記ITO針状粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、更に分散剤として高分子分散剤(楠本化成(株)製、ディスパロンDA705)を添加混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ウレタン変性ポリエステル樹脂:15.7%、硬化剤成分:0.8%、分散剤:0.3%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:57.2%であった(酸化物針状粉:バインダー=61.2:38.8、NCO/OH=約3)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、5000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、基材としてのPETフィルム(東レ(株)製、ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜は、アセトンを含ませた綿棒で往復5回擦っても変化はなかった。また、透光性導電膜の透過率(可視光)は80.0%、ヘイズは83.4%、表面抵抗値は2400Ω/□、比抵抗値は1.2Ω・cmであった。尚、透光性導電膜の透過率(可視光)及びヘイズ値は、透光性導電膜だけの値であり、それぞれ下記計算式により求められる。
透光性導電膜の透過率(%)=(透光性導電膜付き基材の透過率)/(基材の透過率)×100
透光性導電膜のヘイズ値(%)=(透光性導電膜付き基材のヘイズ値)−(基材のヘイズ値)
[実施例2]
導電性酸化物針状粉は、上記実施例1と同じものを使用した。樹脂バインダーの架橋性樹脂としてアクリルポリオール樹脂(Tg:81℃、水酸基価64KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製、MF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、γ−ブチロラクトンを用いた。
上記ITO針状粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:38%、アクリルポリオール樹脂:15.7%、硬化剤成分:6.6%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:39.7%であった(酸化物針状粉:バインダー=63:37、NCO/OH=約1)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、1000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、上記実施例1と同様に、基材である東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜は、アセトンを含ませた綿棒で往復5回擦っても変化はなかった。また、この透光性導電膜の透過率(可視光)は68.6%、ヘイズは88.2%、表面抵抗値は922Ω/□、比抵抗値は0.92Ω・cmであった。
[比較例1]
樹脂バインダーの架橋性樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂(Tg:34℃、水酸基価16〜18KOHmg/g)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ウレタン変性ポリエステル樹脂:15.5%、硬化剤成分:1.8%、分散剤:0.3%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:57.0%であった(酸化物針状粉:バインダー=60.0:40.0、NCO/OH=約1)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、4500mPa・sであった。
次いで、この透光性導電塗料を、上記実施例1と同様に、基材である東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜は、アセトンを含ませた綿棒で往復5回擦っても変化はなかった。また、この透光性導電膜の透過率(可視光)は78.9%、ヘイズは85.3%、表面抵抗値は20000Ω/□、比抵抗値は12Ω・cmであった。この比較例1の透光性導電膜の特性は、上記実施例1と比較すると、耐有機溶剤性は同様に優れているが、比抵抗が5.0Ω・cmよりも高く、導電性に劣ることが分かる。
[比較例2]
樹脂バインダーの樹脂として、架橋性のないアクリル樹脂(Tg:105℃)を用い且つ硬化剤を添加しなかった以外は、上記実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:28%、アクリル樹脂:18.7%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:53.3%であった(酸化物針状粉:バインダー=60.0:40.0)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、3000mPa・sであった。
次いで、この透光性導電塗料を、上記実施例1と同様に、基材である東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、200メッシュ版T200S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜は、アセトンを含ませた綿棒で擦ると、1回で膜が溶けた。また、この透光性導電膜の透過率(可視光)は79.2%、ヘイズは84.4%、表面抵抗値は2100Ω/□、比抵抗値は1.26Ω・cmであった。この比較例2の透光性導電膜の特性は、上記実施例1と比較すると、抵抗値や透過率はほぼ同じであるが、耐有機溶剤性に劣ることが分かる。


Claims (8)

  1. 金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物針状粉が、バインダーを含む溶剤中に分散した透光性導電塗料であって、該バインダーが架橋性樹脂と硬化剤を主成分とし、且つ架橋前の架橋性樹脂のガラス転移点(Tg)が70℃以上であることを特徴とする透光性導電塗料。
  2. 前記架橋性樹脂が水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の透光性導電塗料。
  3. 前記架橋性樹脂がアクリルポリオール樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の透光性導電塗料。
  4. 前記硬化剤がブロックイソシアネートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透光性導電塗料。
  5. 前記金属酸化物が酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透光性導電塗料。
  6. 前記導電性酸化物針状粉のアスペクト比が5以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の透光性導電塗料。
  7. 前記導電性酸化物針状粉:バインダーの重量比が、40:60から90:10であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の透光性導電塗料。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、架橋硬化した樹脂中に分散した導電性酸化物針状粉を含み、膜の比抵抗が5.0Ω・cm以下であることを特徴とする透光性導電膜。


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