JP2009105042A - 透光性導電塗料及びそれを用いて形成された透光性導電膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】透光性導電塗料であって、透光性と導電性に優れるだけでなく、特に分散型EL素子に適用した場合には背面電極とのショートの発生を抑制した透光性導電膜を形成することができる透光性導電塗料、及びこの透光性導電塗料を用いて形成される表面粗さの小さい透光性導電膜を提供する。
【解決手段】金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、導電性酸化物粉が、平均長さが30μmを超え、かつ平均アスペクト比が5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる透光性導電塗料。
【選択図】図1
【解決手段】金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、導電性酸化物粉が、平均長さが30μmを超え、かつ平均アスペクト比が5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる透光性導電塗料。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば分散型エレクトロルミネッセンス素子(分散型EL素子)、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、発光ダイオード(LED)等の発光素子の透明電極等や色素増感型太陽電池等の発電素子の光拡散性導電膜の形成に適用される透光性導電塗料、特に、優れた透光性及び導電性と共に、凹凸が小さく平滑な(凸部の最大高さの小さい)導電膜の形成に適した透光性導電塗料、及びその透光性導電塗料から得られる透光性導電膜に関するものである。
一般に、分散型EL素子等の発光素子や液晶等の表示素子の透明電極等に適用される透明導電膜は、バインダーを含む溶剤中に導電フィラーが分散された透明導電塗料を用いて、塗布法により形成することができる。そして、透明導電塗料の導電フィラーとしては、従来から、インジウム−錫酸化物(以下、ITOとも称する)、錫−アンチモン酸化物(以下、ATOとも称する)等の酸化物系フィラーが用いられており、その中でもITOはATOに比べて抵抗値が低いために広く使用されている。
上記透明導電塗料においては、導電フィラーの含有量は少ないほど好ましい。その理由は、塗料成分の一つである透明樹脂からなるバインダーに比べ、導電フィラーである導電性酸化物の光吸収が遥かに大きいからである。従って、低抵抗値の導電膜が得られる範囲で、バインダーに対する導電性酸化物フィラーの量を出来るだけ少なくすることによって、膜の可視光線透過率が向上する。このような理由から、球状や粒状の導電フィラーよりも、針状又はりん片状の導電フィラーの方が、少量の添加で低抵抗値の膜が得られる利点がある。
りん片状の酸化物粉を得る方法としては、無機酸化物、含水無機酸化物等のコロイド溶液を凍結し、コロイド溶液の溶剤の結晶面と結晶面の間隙に無機酸化物粒子や含水酸化物粒子を析出させた後、乾燥して脱溶剤し、含水酸化物の場合は更に焙焼する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。また、針状の酸化物粉を得る方法としては、針状の蓚酸錫を加熱分解して針状錫酸化物を得る方法(例えば、特許文献2参照。)、あるいは硝酸インジウムの高温加熱濃縮スラリーから回収される白色針状インジウム化合物粉を加熱分解して、針状のインジウム−錫酸化物粉を得る方法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。
上記した導電フィラーを用いた導電塗料として、長径(長さ)が5μm以上でアスペクト比が5以上の針状ITO粉を用いたペーストが知られている(例えば、特許文献4参照。)。このような導電性酸化物針状粉を含有する導電塗料を用いて形成した導電膜は、いわゆる透明導電膜に比べてヘイズ値が高い(散乱が大きい)ため透光性導電膜と称される。
ところで、上記針状ITO粉を用いたペーストにおいて、長さ(長径)が30μm以上の大きな針状ITO粉末を用いると膜の導電性は向上するが、膜の導電ネットワーク(導電パス)の網目が大きくなって微視的には膜面内の導電性不均一が生じることが知られており、これは、長さが5〜30μmの小さな針状ITO粉末を用いることで解消できることも知られている。ただし、長さが5〜30μmの小さな針状ITO粉末は製造効率が悪いため、必ずしも好ましいとは言えない(特許文献5参照)。尚、特許文献5の比較例2には、粉砕処理のなされていない長径(長さ)が20μmの針状ITO粉を用いたペースト、及び透光性導電膜が開示されているものの、上述のように、長さが30μm以下の針状ITO粉は生産性が悪いため実際には販売されておらず、市場で調達することが可能な針状ITO粉は、(平均)長さが30μmを超えるものしかないのが実情である。
ところで、上記針状ITO粉を用いたペーストにおいて、長さ(長径)が30μm以上の大きな針状ITO粉末を用いると膜の導電性は向上するが、膜の導電ネットワーク(導電パス)の網目が大きくなって微視的には膜面内の導電性不均一が生じることが知られており、これは、長さが5〜30μmの小さな針状ITO粉末を用いることで解消できることも知られている。ただし、長さが5〜30μmの小さな針状ITO粉末は製造効率が悪いため、必ずしも好ましいとは言えない(特許文献5参照)。尚、特許文献5の比較例2には、粉砕処理のなされていない長径(長さ)が20μmの針状ITO粉を用いたペースト、及び透光性導電膜が開示されているものの、上述のように、長さが30μm以下の針状ITO粉は生産性が悪いため実際には販売されておらず、市場で調達することが可能な針状ITO粉は、(平均)長さが30μmを超えるものしかないのが実情である。
したがって、必然的に長さが30μmを超える針状ITO粉を用いることとなるが、通常、その針状ITO粉の中には長さが50μm以上ある粒子も多く含まれているため、得られる透光性導電膜は凸凹が大きくなり、例えば、分散型EL素子の透明電極等として適用した場合、背面電極との間でショートが発生しやすく、EL素子が焼けてしまう欠点があった。
また、透明電極を適用するデバイスによっては(例えば、色素増感型太陽電池の光拡散性導電膜)、導電塗料の基材への塗布を、スピンコーティング、ワイヤーバーコーティング、スリットコーティング、ロールコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷等の種々の方法で行なえることが好ましいが、上述のような大きなITO粒子を含む導電塗料は、例えば、スクリーン印刷やドクターブレードコーティング等の限られた塗布(印刷)方法でしか均一な成膜ができないという課題もあった。
特開昭62−3003号公報
特開昭56−120519号公報
特開平6−293515号公報
特開平6−309922号公報
特開平8−78164号公報
また、透明電極を適用するデバイスによっては(例えば、色素増感型太陽電池の光拡散性導電膜)、導電塗料の基材への塗布を、スピンコーティング、ワイヤーバーコーティング、スリットコーティング、ロールコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷等の種々の方法で行なえることが好ましいが、上述のような大きなITO粒子を含む導電塗料は、例えば、スクリーン印刷やドクターブレードコーティング等の限られた塗布(印刷)方法でしか均一な成膜ができないという課題もあった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み、分散型EL素子等の発光素子の透明電極等や色素増感型太陽電池等の発電素子の光拡散性導電膜等として有用な透光性導電膜の形成に用いる透光性導電塗料について、透光性と導電性に優れるだけでなく、光拡散性が高く、例えば、分散型EL素子に適用した場合には背面電極とのショートの発生を抑制でき、色素増感型太陽電池に適用した場合には発電効率を高めることが可能な透光性導電膜を形成することができる透光性導電塗料を提供すること、及びこの透光性導電塗料を用いて形成される光拡散性が高く、凹凸が小さく平滑な(凸部の最大高さの小さい)透光性導電膜を提供することを目的とする。
本発明者等は、まず、分散型EL素子のショート発生を改善向上させるため、透光性導電塗料において様々な検討したところ、平均長さが30μmを超え、かつ平均アスペクト比が5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理した導電性酸化物粉を導電フィラーにすることにより、透光性導電膜の凹凸が小さく平滑となって、透光性導電膜と背面電極との間のショートの改善向上に有効であることを見出した。この知見に基づいて更に検討した結果、透光性導電膜の凸部の最大高さが7μm以下であれば、透光性と導電性に優れるだけでなく、背面電極との間のショートを抑制した透光性導電膜が得られることを見出した。
更に、上記試みによって、透光性導電塗料の塗布方法の自由度が改善されると共に、透光性導電膜の光拡散性も高く維持されるため、分散型EL素子への適用では輝度の向上、色素増感型太陽電池への適用では発電効率の向上に役立つという知見も得て、本発明を成すに至ったものである。
更に、上記試みによって、透光性導電塗料の塗布方法の自由度が改善されると共に、透光性導電膜の光拡散性も高く維持されるため、分散型EL素子への適用では輝度の向上、色素増感型太陽電池への適用では発電効率の向上に役立つという知見も得て、本発明を成すに至ったものである。
即ち、上記目的を達成するため、本発明が提供する透光性導電塗料は、金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、上記導電性酸化物粉は、平均長さが30μmを超え、かつ平均アスペクト比が5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる透光性導電塗料である。
前記導電性酸化物粉の平均長さは1〜15μmの範囲で、かつ、平均アスペクト比が5未満であることが好ましい。
前記金属酸化物としては、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
上記本発明の透光性導電塗料において、バインダーとして架橋性樹脂または架橋性樹脂と硬化剤であることが望ましい。
前記導電性酸化物粉の平均長さは1〜15μmの範囲で、かつ、平均アスペクト比が5未満であることが好ましい。
前記金属酸化物としては、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
上記本発明の透光性導電塗料において、バインダーとして架橋性樹脂または架橋性樹脂と硬化剤であることが望ましい。
また、上記本発明の透光性導電塗料において、前記架橋性樹脂としては、水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、フェノキシ樹脂またはこれらの混合物であることが好ましい。
また、上記本発明の透光性導電塗料において、前記硬化剤は、ブロックイソシアネートであることが好ましい。
また、上記本発明の透光性導電塗料において、前記導電性酸化物針状粉とバインダーとの重量比は、40:60から95:5であることが好ましい。
本発明は、また、上記本発明の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、導電膜の凸部の最大高さが7μm以下であることを特徴とする透光性導電膜を提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、膜のヘイズ値が50%以上であることを特徴とする透光性導電膜を提供するものである。
また、本発明は、金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、前記導電性酸化物粉の平均長さが1〜15μmの範囲で、かつ、平均アスペクト比が5未満であることを特徴とする透光性導電塗料を提供するものである。
また、上記本発明の透光性導電塗料において、前記硬化剤は、ブロックイソシアネートであることが好ましい。
また、上記本発明の透光性導電塗料において、前記導電性酸化物針状粉とバインダーとの重量比は、40:60から95:5であることが好ましい。
本発明は、また、上記本発明の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、導電膜の凸部の最大高さが7μm以下であることを特徴とする透光性導電膜を提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、膜のヘイズ値が50%以上であることを特徴とする透光性導電膜を提供するものである。
また、本発明は、金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、前記導電性酸化物粉の平均長さが1〜15μmの範囲で、かつ、平均アスペクト比が5未満であることを特徴とする透光性導電塗料を提供するものである。
本発明によれば、高い透光性と優れた導電性を有すると同時に、光拡散性に優れ、かつ、凹凸が小さく平滑な(凸部の最大高さの小さい)透光性導電膜の形成が可能な透光性導電塗料を提供することができる。従って、本発明の透光性導電塗料により形成された透光性導電膜を分散型EL素子、有機EL素子、LED等の発光素子の透明電極等や色素増感型太陽電池等の発電素子の光拡散性導電膜等として好適に用いることができ、特に分散型EL素子に適用した場合には背面電極との間のショートを抑えることが可能となる。
本発明の透光性導電塗料は、金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させた透光性導電塗料であって、導電性酸化物粉が、平均長さが30μmを超え、かつ平均アスペクト比が5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られていることを特徴とするものである。
上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる導電性酸化物粉の平均長さを15μm以下、好ましくは12μm以下、更に好ましくは8μm以下にすることにより(粉砕処理により、導電性酸化物粉の平均アスペクト比は5未満に低下)、透光性導電膜の表面粗さは低減し(平均表面粗さ(Ra)で1.2μm以下に低減)、透光性導電膜の凸部の最大高さを7μm以下とすることができる。これにより、例えば分散型EL素子を作製するときには背面電極との間のショートを抑制することが可能となる。導電性酸化物粉の平均長さを15μmよりも更に小さくすれば、透光性導電膜の凸部の最大高さも小さくできる(例えば、導電性酸化物粉の平均長さが4μm程度で、透光性導電膜の凸部の最大高さが4μm程度)。
尚、市場で調達可能な平均長さが30μmを超える導電性酸化物針状粉(ITO針状粉)の平均アスペクト比は10程度であるため、上述のように平均長さを15μm以下まで粉砕処理して得られる上記導電性酸化物粉では、その平均アスペクト比は5未満に低下することとなる。したがって、例えば、その平均長さが4μm程度以下になるまで粉砕を進めると、その平均アスペクト比は1程度まで低下し、ほぼ粒状粒子となるため、平均長さはいわゆる平均粒径と考えてよい(以下では、粒子形状が針状、あるいは粒状にかかわらず、その大きさとして、平均長さを用いることとする)。
また、上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる導電性酸化物粉の平均長さは1μm以上、好ましくは2μm以上、更に好ましくは4μm以上が良い。この範囲内であれば、必要以上に透光性導電膜の導電性を損なうこともない。導電性酸化物粉の平均長さが1μm未満となると、透光性導電膜の平滑性は向上していくものの、導電性の悪化が著しくなるため好ましくない。
更に、上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる導電性酸化物粉の平均アスペクト比は5未満、好ましくは、1〜3が良い。ここで、導電性酸化物粉の平均長さの上限は15μmであるため、平均アスペクト比が大きくなることは、導電性酸化物粉が細くなることであり、導電性酸化物粉の一つの粒子で見ればその導電性が低下することを意味する。尚、透光性導電膜は、バインダー成分からなるマトリックス中に導電性酸化物粉の粒子同士が接触した状態の膜構造を有しており、その抵抗値は、導電性酸化物粉の粒子一つ一つの導電性と粒子同士の接触点の数でほぼ決まると考えて良い。ところで、接触点の接触抵抗は、膜抵抗値において大きな割合を占めているため、接触点を少なくすることが、低抵抗の膜の実現につながる。そこで、本発明の透光性導電膜において考えると、例えば同じ平均長さの導電性酸化物粉であれば、平均アスペクト比が小さい粉を用いた場合は、導電性の良い導電性酸化物粉の粒子同士が少ない接触点でつながった膜となるため、膜抵抗値を低くすることができる。したがって、上記範囲内であれば、必要以上に透光性導電膜の導電性を損なうこともない。導電性酸化物粉の平均アスペクト比が5以上となると、透光性導電膜の平滑性は幾分向上するものの、上記理由で導電性の悪化が大きくなるため好ましくない。
前述の通り、本発明の透光性導電膜は、導電フィラーに平均長さが1〜15μmであり、一般の透明導電膜に用いられるナノサイズ粒子と比べると比較的大きな導電性酸化物粉を用いており、その導電性酸化物粉の屈折率も一般に大きな値のため(屈折率=1.9〜2.2、ITOであれば屈折率=約2)、紫外線、赤外線、可視光線を含めた光線散乱性が大きく、例えば可視光線の光散乱の指標であるヘイズ値(曇り値;入射する全光線のうち、直進せずに散乱する光線の割合)は、膜厚にもよるが、少なくとも50%以上、通常は80〜90%にも達する。膜のヘイズ値が50%未満であると可視光線の散乱度合いが小さいため、光拡散性導電膜として用いる場合にはその機能は十分とは言えない。
上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる導電性酸化物粉の平均長さを15μm以下、好ましくは12μm以下、更に好ましくは8μm以下にすることにより(粉砕処理により、導電性酸化物粉の平均アスペクト比は5未満に低下)、透光性導電膜の表面粗さは低減し(平均表面粗さ(Ra)で1.2μm以下に低減)、透光性導電膜の凸部の最大高さを7μm以下とすることができる。これにより、例えば分散型EL素子を作製するときには背面電極との間のショートを抑制することが可能となる。導電性酸化物粉の平均長さを15μmよりも更に小さくすれば、透光性導電膜の凸部の最大高さも小さくできる(例えば、導電性酸化物粉の平均長さが4μm程度で、透光性導電膜の凸部の最大高さが4μm程度)。
尚、市場で調達可能な平均長さが30μmを超える導電性酸化物針状粉(ITO針状粉)の平均アスペクト比は10程度であるため、上述のように平均長さを15μm以下まで粉砕処理して得られる上記導電性酸化物粉では、その平均アスペクト比は5未満に低下することとなる。したがって、例えば、その平均長さが4μm程度以下になるまで粉砕を進めると、その平均アスペクト比は1程度まで低下し、ほぼ粒状粒子となるため、平均長さはいわゆる平均粒径と考えてよい(以下では、粒子形状が針状、あるいは粒状にかかわらず、その大きさとして、平均長さを用いることとする)。
また、上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる導電性酸化物粉の平均長さは1μm以上、好ましくは2μm以上、更に好ましくは4μm以上が良い。この範囲内であれば、必要以上に透光性導電膜の導電性を損なうこともない。導電性酸化物粉の平均長さが1μm未満となると、透光性導電膜の平滑性は向上していくものの、導電性の悪化が著しくなるため好ましくない。
更に、上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られる導電性酸化物粉の平均アスペクト比は5未満、好ましくは、1〜3が良い。ここで、導電性酸化物粉の平均長さの上限は15μmであるため、平均アスペクト比が大きくなることは、導電性酸化物粉が細くなることであり、導電性酸化物粉の一つの粒子で見ればその導電性が低下することを意味する。尚、透光性導電膜は、バインダー成分からなるマトリックス中に導電性酸化物粉の粒子同士が接触した状態の膜構造を有しており、その抵抗値は、導電性酸化物粉の粒子一つ一つの導電性と粒子同士の接触点の数でほぼ決まると考えて良い。ところで、接触点の接触抵抗は、膜抵抗値において大きな割合を占めているため、接触点を少なくすることが、低抵抗の膜の実現につながる。そこで、本発明の透光性導電膜において考えると、例えば同じ平均長さの導電性酸化物粉であれば、平均アスペクト比が小さい粉を用いた場合は、導電性の良い導電性酸化物粉の粒子同士が少ない接触点でつながった膜となるため、膜抵抗値を低くすることができる。したがって、上記範囲内であれば、必要以上に透光性導電膜の導電性を損なうこともない。導電性酸化物粉の平均アスペクト比が5以上となると、透光性導電膜の平滑性は幾分向上するものの、上記理由で導電性の悪化が大きくなるため好ましくない。
前述の通り、本発明の透光性導電膜は、導電フィラーに平均長さが1〜15μmであり、一般の透明導電膜に用いられるナノサイズ粒子と比べると比較的大きな導電性酸化物粉を用いており、その導電性酸化物粉の屈折率も一般に大きな値のため(屈折率=1.9〜2.2、ITOであれば屈折率=約2)、紫外線、赤外線、可視光線を含めた光線散乱性が大きく、例えば可視光線の光散乱の指標であるヘイズ値(曇り値;入射する全光線のうち、直進せずに散乱する光線の割合)は、膜厚にもよるが、少なくとも50%以上、通常は80〜90%にも達する。膜のヘイズ値が50%未満であると可視光線の散乱度合いが小さいため、光拡散性導電膜として用いる場合にはその機能は十分とは言えない。
粉砕処理されて透光性導電塗料に用いられる導電性酸化物針状粉としては、金属酸化物がドープされた酸化インジウムを用いるが、ドープすべき金属酸化物としては、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。特に、酸化インジウムに酸化錫をドープした針状のインジウム−錫酸化物(ITO)が、導電性酸化物針状粉として好ましい。
上記バインダーは、架橋性樹脂または架橋性樹脂と硬化剤であることが好ましい。
架橋性樹脂としては、硬化剤との反応により架橋して硬化する樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、ポリエチレン樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂の一部に、上記の熱硬化性樹脂成分を共重合させたものでもよい。その中でも、水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂は、イソシアネート等の硬化剤による架橋が可能であり、可撓性やPET(ポリエチレンテレフタレート)基材との密着力に優れているため、特に好ましい。
尚、上記熱硬化性樹脂以外でも、2液性のエポキシ樹脂やウレタン樹脂などの常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることもできる。また、上記架橋性樹脂のガラス転移温度は70℃以上であることが望ましく、さらに120℃以上であると良い。
架橋性樹脂としては、硬化剤との反応により架橋して硬化する樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、ポリエチレン樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂の一部に、上記の熱硬化性樹脂成分を共重合させたものでもよい。その中でも、水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂は、イソシアネート等の硬化剤による架橋が可能であり、可撓性やPET(ポリエチレンテレフタレート)基材との密着力に優れているため、特に好ましい。
尚、上記熱硬化性樹脂以外でも、2液性のエポキシ樹脂やウレタン樹脂などの常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることもできる。また、上記架橋性樹脂のガラス転移温度は70℃以上であることが望ましく、さらに120℃以上であると良い。
また、上記硬化剤としては、水酸基と架橋することができるアミノ基、メチロール基を有するアミノ樹脂、ポリイソシアネートが用いられる。ここで、ポリイソシアネートには使用する原料イソシアネートにより、TDI(トリレンジイソシアネート)系、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系、XDI(キシリレンジイソシアネート)系、NDI(ナフチレン1,5−ジイソシアネート)系、TMXDI(テトラメチレンキシリレンジイソシアネート)系等の芳香族系イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系、H12MDI(水添MDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)系、H6XDI(水添XDI)系等の脂環族系イソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系、DDI(ダイマー酸ジイソシアネート)系、NBDI(ノルボルネン・ジイソシアネート)系等の脂肪族系イソシアネートなどがある。
これらの硬化剤のうち、一般にTDI系やMDI系など芳香族系イソシアネートは紫外線によって黄変しやすいが、IPDI系やHDI系の脂環族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネートは黄変しにくいため好ましい。
また、イソシアネート硬化剤において、ポリイソシアネートをブロック化剤で保護したブロックイソシアネートは、低温での架橋反応が抑制されるため、使用前に硬化剤を混合する2液タイプでなく、硬化剤を予め塗料に配合した1液タイプとすることができるため特に好ましい。ブロックイソシアネートの中でも、脂肪族系ブロックイソシアネートは黄変がないため好ましく、更に最低硬化温度(ブロック化剤の保護作用が低下し、硬化剤として有効に機能する温度)が100℃以下であるHDI系ブロックイソシアネート、例えば旭化成(株)製のデュラネートMF−K60X(商品名)が特に好ましい。ここで、上記水酸基を有する架橋性樹脂の水酸基(−OH)とポリイソシアネートのイソシアネート基(−NCO)の割合(モル比)は、架橋性樹脂の耐溶剤性や強度等の特性を考慮して、一般にNCO/OH=0.01〜5程度の範囲に設定される。
また、イソシアネート硬化剤において、ポリイソシアネートをブロック化剤で保護したブロックイソシアネートは、低温での架橋反応が抑制されるため、使用前に硬化剤を混合する2液タイプでなく、硬化剤を予め塗料に配合した1液タイプとすることができるため特に好ましい。ブロックイソシアネートの中でも、脂肪族系ブロックイソシアネートは黄変がないため好ましく、更に最低硬化温度(ブロック化剤の保護作用が低下し、硬化剤として有効に機能する温度)が100℃以下であるHDI系ブロックイソシアネート、例えば旭化成(株)製のデュラネートMF−K60X(商品名)が特に好ましい。ここで、上記水酸基を有する架橋性樹脂の水酸基(−OH)とポリイソシアネートのイソシアネート基(−NCO)の割合(モル比)は、架橋性樹脂の耐溶剤性や強度等の特性を考慮して、一般にNCO/OH=0.01〜5程度の範囲に設定される。
透光性導電塗料中における導電性酸化物粉とバインダーの割合は、導電性酸化物粉:バインダーの重量比で40:60〜95:5が好ましく、50:50〜70:30が更に好ましい。尚、上記導電性酸化物粉とバインダーの割合におけるバインダー量は、樹脂バインダーと硬化剤成分の合計量を示している。バインダーの割合が導電性酸化物粉:バインダーの重量比で40:60よりも多いと、得られる透光性導電膜の抵抗が高くなり過ぎる場合がある。また、バインダーの割合が導電性酸化物粉:バインダーの重量比で95:5よりも少ないと、透光性導電膜の強度が低下すると同時に、導電性酸化物粒子同士の接触がうまくとれず、膜の抵抗も高くなる場合があるため好ましくない。ただし、上記導電性酸化物粉とバインダーの最適割合は、導電性酸化物針状粉の粉砕処理の度合い(即ち、導電性酸化物粉の平均長さ)にも依存するため、必要に応じ適宜微調整することが望まれる。
透光性導電塗料に用いる溶剤としては、例えば、水、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3−オクチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ミネラルスピリッツ、ターピネオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
尚、透光性導電塗料に用いる溶剤は、使用するプラスチック基材に対する溶解性や成膜条件を考慮して、適宜選定することができる。例えば、スクリーン印刷について考えると、蒸発速度、刷版の乳剤やバインダー樹脂に対する溶解性、有害性などを考慮した場合、好ましい溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートやジエチレングリコールモノエチルエーテルを挙げることができる。
次に、導電性酸化物針状粉の製造方法について一例を説明する。
まず、インジウムメタルを硝酸に溶解した溶液を撹拌しながら加熱し、液温130〜150℃まで濃縮して濃厚なスラリーを生成せしめ、このスラリーに多量の水を加えて濾過し、得られた針状粉を洗浄、乾燥し、数百℃程度で30〜60分程度仮焼することにより針状酸化インジウム粉を得る。この針状酸化インジウム粉を水に分散させた後、錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の金属塩水溶液を加え、中和反応により上記針状酸化インジウム粉の表面及び細孔内に錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の水酸化物を形成し、固液分離した後、700〜1200℃程度で30〜60分程度仮焼する。この仮焼により上記水酸化物が酸化物に転化すると同時に、酸化インジウムと固溶化するので、更に必要に応じて還元性雰囲気下での熱処理(酸素空孔導入による低抵抗化処理)を施して、導電性酸化物針状粉を得ることができる。
まず、インジウムメタルを硝酸に溶解した溶液を撹拌しながら加熱し、液温130〜150℃まで濃縮して濃厚なスラリーを生成せしめ、このスラリーに多量の水を加えて濾過し、得られた針状粉を洗浄、乾燥し、数百℃程度で30〜60分程度仮焼することにより針状酸化インジウム粉を得る。この針状酸化インジウム粉を水に分散させた後、錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の金属塩水溶液を加え、中和反応により上記針状酸化インジウム粉の表面及び細孔内に錫、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、チタン等の水酸化物を形成し、固液分離した後、700〜1200℃程度で30〜60分程度仮焼する。この仮焼により上記水酸化物が酸化物に転化すると同時に、酸化インジウムと固溶化するので、更に必要に応じて還元性雰囲気下での熱処理(酸素空孔導入による低抵抗化処理)を施して、導電性酸化物針状粉を得ることができる。
得られた導電性酸化物針状粉は、長さ5μm以上、アスペクト比(長さに対する太さの比率)5以上であり、インジウムメタル硝酸溶解液の濃縮条件(濃縮度合い、濃縮速度、加熱温度等)によって長さを制御することが可能である。ただし、平均長さが5〜30μmの小さい導電性酸化物針状粉を得ようとすると、十分に濃縮できないために(濃縮を進めると針状粉が成長して大きくなる)製造効率が低下するばかりでなく、小さい針状粉の回収効率の低下や作業性の低下を伴うため、実用的とは言えない。したがって、実際には、平均長さが30μmを超えるような(例えば31μm〜50μm程度)大きな導電性酸化物針状粉(平均アスペクト比は10程度)を得るのが普通である。
ここで、上記大きな導電性酸化物針状粉は、分級処理や粉砕処理により平均長さ30μm以下になるようにすることができる。分級処理では、例えば、セパレーター、気流分級機、サイクロン分級機などを用いることができ、粉砕処理には、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、超音波ホモジナイザー、ペイントシェーカー、アトマイザーなどが用いられる。ただし、分級処理では目的とする小さな導電性酸化物針状粉の収率が大幅に低下するため決して好ましいとはいえず、この点からすると粉砕処理が好ましい。粉砕処理は、乾式粉砕でも湿式粉砕でも良く、中でも、導電性酸化物針状粉のスラリーを超音波ホモジナイザーで粉砕する方法が簡便で好ましい。粉砕処理粉の形状は、用いる粉砕方法や粉砕度合いにもよるが、例えば上記超音波ホモジナイザーによる粉砕では、粉砕処理の初期段階では鋭角の破断面を呈したものが多く、粉砕が進むと角がとれた粒状粒子が多くなる。上記粉砕処理により、平均長さ(粒径)はどんどん小さくしていくことが可能であるが、その場合でも最終的な平均長さ(粒径)[前述の通り、粉砕処理が進んで粒状となった粒子については、長さでなく直径(粒径)を粒子サイズとする]は1μm以上に保つ必要がある。これは、前述のように、1μm未満になると、透光性導電膜の導電性が著しく悪化する可能性があるからである。
本発明の透光性導電塗料は、上記導電性酸化物針状粉を粉砕処理した導電性酸化物粉を、バインダー(上記の架橋性樹脂と硬化剤とからなる)及び溶剤と混合し、必要に応じて分散剤を添加した後、分散処理を行うことにより製造することができる。バインダーの添加は、導電性酸化物粉の分散液に加えても、導電性酸化物粉の分散前の溶剤に予め加えてもよく、特に制約はない。分散処理には、超音波処理、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル、スリーロールミル等の汎用の方法を適用することができる。
上記分散剤としては、シリコンカップリング剤等の各種カップリング剤、各種高分子分散剤、あるいはアニオン系、ノニオン系、カチオン系等の各種界面活性剤が挙げられる。これら分散剤は、必要に応じて添加すればよく、用いる導電性酸化物粉の種類や分散処理方法に応じて適宜選定される。また、塗膜の外観を改善するために、消泡剤やレベリング剤等の添加剤を加えても良い。
本発明の透光性導電膜は、上記透光性導電塗料を基材上に印刷塗布した後、加熱してバインダーの架橋性樹脂を架橋硬化させることにより、形成することができる。透光性導電塗料の基材上への塗布(印刷)には、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ワイヤーバーコーティング法、ドクターブレードコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法等を用いることができる。
上記基材としては、透明性があれば良く、ガラスや各種透明プラスチックを用いることができる。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等を用いることができる。PETは安価で且つ強度に優れ、透明性と柔軟性も兼ね備えている等の観点から基材として好ましい材質である。尚、上記基材にプラスチックを用いる場合には、透明導電膜との密着力を高めるための易接着処理、具体的には、プラズマ処理、コロナ放電処理、短波長紫外線照射処理等を予め施しておくこともできる。
次に、本発明の透光性導電膜の各種素子への適用について説明する。上記素子としては、例えば分散型EL素子、有機EL素子、LED等の発光素子、例えば色素増感型太陽電池等の発電素子が挙げられる。前者の発光素子では、その透明電極等に適用でき、後者の色素増感型太陽電池等の発電素子では、その光拡散性導電膜に適用できる。
ここで、発光素子としての上記無機分散型EL素子は、蛍光体粒子を含む層に強い交流電界を印加して発光させる自発光素子であり、従来から、携帯電話、リモートコントローラー等液晶ディスプレイのバックライト等に用いられてきた。また、近年の新しい用途として、例えば、携帯電話、リモートコントローラー、PDA、ラップトップPC等の携帯情報端末等の各種デバイスのキイ入力部品(キイパッド)の光源として組み込まれている。その基本構造は、透明電極としての透明導電層上に、少なくとも蛍光体層、誘電体層、背面電極層がスクリーン印刷等により順次形成されて成るもので、実際のデバイスでは、銀等の集電電極や、絶縁保護層等が更に形成されているのが一般的である。
本発明の透光性導電塗料を用いれば、上記透明電極としての透光性導電膜を、基材上に極めて簡便に形成することができる。また本発明の透光性導電膜は、膜のヘイズ値が高く可視光線の光散乱性が高いため、上記分散型EL素子の透明電極に用いると、発光層(蛍光体層)から種々の方向に発光する光を透光性導電膜が拡散させるため、外部への光取り出し効率を高めて、高輝度を発揮することが期待できる
本発明の透光性導電塗料を用いれば、上記透明電極としての透光性導電膜を、基材上に極めて簡便に形成することができる。また本発明の透光性導電膜は、膜のヘイズ値が高く可視光線の光散乱性が高いため、上記分散型EL素子の透明電極に用いると、発光層(蛍光体層)から種々の方向に発光する光を透光性導電膜が拡散させるため、外部への光取り出し効率を高めて、高輝度を発揮することが期待できる
また、発電素子としての色素増感型太陽電池は、近年、グレッツェルらによって提案されたもので、透明基材上に形成された透明電極、透明電極上に形成された酸化物半導体電極、酸化物半導体電極に吸着した色素、電解質、対電極で構成され、色素を吸着した酸化物半導体電極と、それに対向して配置された対電極との間に電解質が充填されており、上記色素を吸着した酸化物半導体電極に太陽光等の可視光線があたると、酸化物半導体電極と対電極間に電位差が生じ、両極間に電流を流すことが可能となる。簡単なプロセスで製造できることや、構成材料が安価なことから、従来のシリコン系太陽電池に比べ低コスト化できる可能が高く、盛んに研究が行われている。
本発明の透光性導電塗料を用いれば、上記透明電極と酸化物半導体電極の間に光拡散効果の大きい透光性導電膜を極めて簡便に形成することができるため、太陽電池への入射光線が発電層内の種々の方向に散乱されて、その利用効率が高まるため発電効率の向上が期待できる。
本発明の透光性導電塗料を用いれば、上記透明電極と酸化物半導体電極の間に光拡散効果の大きい透光性導電膜を極めて簡便に形成することができるため、太陽電池への入射光線が発電層内の種々の方向に散乱されて、その利用効率が高まるため発電効率の向上が期待できる。
以上の述べたように、本発明の透光性導電膜は、高い透光性と導電性を両立できるだけでなく、透光性導電膜の凹凸が小さく平滑(凸部の最大高さが小さい)なため、特に上記分散型EL素子の透明電極に適用する場合、従来の透光性導電膜の場合と比べると背面電極との間のショートが抑制されている。更に、本発明の透光性導電塗料は、その中に含まれる導電性酸化物粉の粒子サイズが比較的小さく、塗布性に優れるため、種々の塗布・印刷方法で均一な透光性導電膜が形成できる。ここで、透光性導電膜の表面抵抗値は10kΩ/□(キロオーム・パー・スクエアと読む)以下であることが好ましく、3kΩ/□以下であるとなお良い。表面抵抗値が10kΩ/□を超える場合は、透光性導電膜を分散型EL素子の透明電極や色素増感型太陽電池の光拡散性導電膜に適用することが難しくなるからである。
[実施例]
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の記述において「%」は、透過率及びヘイズ値の%を除いて、「重量%」を示している。
透光性導電膜の透過率(可視光)とヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用い、JIS K7105に基づいて測定した。透光性導電膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用いて測定した。また、透光性導電塗料の粘度は、塗料温度25℃で、B型粘度計を用いて測定した。平均膜厚は、(株)ニコン製のデジマイクロ(標準測定プローブ[測定子]:高硬度金属製;先端曲率=1.2mm)を用い、透光性導電膜の任意の5箇所の膜厚を測定し、その平均値から求めた。膜の表面粗さ(Ra)、及び、凸部の最大高さは、Lasertec社製のレーザー顕微鏡(VL2000)を用いた膜表面観察(0.5mm×0.5mmの領域)で測定した。尚、凸部の最大高さは、図1に示すように、レーザー顕微鏡の測定値から求めた値(測定領域で計測された凹凸を平均化して求めた凹凸の中心面からの最も厚い凸部の高さ)であって、上記平均膜厚を用いて求めた値(最も厚い凸部膜厚−平均膜厚)ではない。一般に、上記デジマイクロで測定される平均膜厚は、凹凸が大きな膜においては、上記レーザー顕微鏡による平均膜厚(凹凸の中心面の基材表面からの高さ)よりも大き目の値となるため、デジマイクロの平均膜厚を用いて計算された凸部の最大高さは、逆に小さ目の値となる傾向がある。例えば、以下に述べる本発明の実施例の透光性導電膜においては、上記2通りの方法において、3〜4μm程度の違いが生じると考えられる。
透光性導電膜の透過率(可視光)とヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用い、JIS K7105に基づいて測定した。透光性導電膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用いて測定した。また、透光性導電塗料の粘度は、塗料温度25℃で、B型粘度計を用いて測定した。平均膜厚は、(株)ニコン製のデジマイクロ(標準測定プローブ[測定子]:高硬度金属製;先端曲率=1.2mm)を用い、透光性導電膜の任意の5箇所の膜厚を測定し、その平均値から求めた。膜の表面粗さ(Ra)、及び、凸部の最大高さは、Lasertec社製のレーザー顕微鏡(VL2000)を用いた膜表面観察(0.5mm×0.5mmの領域)で測定した。尚、凸部の最大高さは、図1に示すように、レーザー顕微鏡の測定値から求めた値(測定領域で計測された凹凸を平均化して求めた凹凸の中心面からの最も厚い凸部の高さ)であって、上記平均膜厚を用いて求めた値(最も厚い凸部膜厚−平均膜厚)ではない。一般に、上記デジマイクロで測定される平均膜厚は、凹凸が大きな膜においては、上記レーザー顕微鏡による平均膜厚(凹凸の中心面の基材表面からの高さ)よりも大き目の値となるため、デジマイクロの平均膜厚を用いて計算された凸部の最大高さは、逆に小さ目の値となる傾向がある。例えば、以下に述べる本発明の実施例の透光性導電膜においては、上記2通りの方法において、3〜4μm程度の違いが生じると考えられる。
導電性酸化物粉として、導電性酸化物針状粉である住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;BET比表面積=9.1m2/g、平均長さ=31μm、平均アスペクト比=約9)を粉砕処理(アルコールスラリーで湿式粉砕し、固液分離した後、真空乾燥)し、平均長さを10μmにしたITO針状粉を使用した。上記ITO針状粉は、アスペクト比が3〜4程度の針状粒子に、粒径1〜5μm程度の粒状粒子が少量(粒子全体の15%程度)混入していた(平均アスペクト比=約3)。樹脂バインダーの樹脂としてウレタン変性ポリエステル樹脂(Tg:83℃、水酸基価2〜3KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製のMF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いた。
上記導電性酸化物粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ウレタン変性ポリエステル樹脂:14%、硬化剤成分:0.9%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:58.5%、その他溶剤:0.6%であった(酸化物針状粉:バインダー=63.6:36.4、NCO/OH=約3)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、約3500mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、基材としての東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スクリーン印刷(東京プロセスサービス(株)製、150メッシュ版T150S)し、120℃で20分間加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は75.6%、ヘイズ値は86.9%、表面抵抗値は2690Ω/□、平均膜厚は8.2μm、表面粗さ(Ra)は約1.0μm、凸部の最大高さは約6μmであった。尚、透光性導電膜の透過率(可視光)及びヘイズ値は、透光性導電膜だけの値であり、それぞれ下記計算式により求められる。
透光性導電膜の透過率(%)=(透光性導電膜付き基材の透過率)/(基材の透過率)×100
透光性導電膜のヘイズ値(%)=(透光性導電膜付き基材のヘイズ値)−(基材のヘイズ値)
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は75.6%、ヘイズ値は86.9%、表面抵抗値は2690Ω/□、平均膜厚は8.2μm、表面粗さ(Ra)は約1.0μm、凸部の最大高さは約6μmであった。尚、透光性導電膜の透過率(可視光)及びヘイズ値は、透光性導電膜だけの値であり、それぞれ下記計算式により求められる。
透光性導電膜の透過率(%)=(透光性導電膜付き基材の透過率)/(基材の透過率)×100
透光性導電膜のヘイズ値(%)=(透光性導電膜付き基材のヘイズ値)−(基材のヘイズ値)
導電性酸化物粉として、住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;BET比表面積=8.6m2/g、平均長さ35μm、平均アスペクト比=約10)を実施例1と同様の方法で粉砕処理し、平均長さを12μmにしたITO針状粉を使用した。上記ITO針状粉は、アスペクト比が3〜4程度の針状粒子に、粒径1〜5μm程度の粒状粒子が少量(粒子全体の15%程度)混入していた(平均アスペクト比=約3)。樹脂バインダーの架橋性樹脂としてフェノキシ樹脂(Tg:146℃、水酸基価182KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製のMF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いた。
上記ITO針状粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:25%、フェノキシ樹脂:10.7%、硬化剤成分:6.8%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル:53.0%、その他溶剤:4.5%(酸化物針状粉:バインダー=58.7:41.3、NCO/OH=約0.5)であった。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、2000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様にPETフィルムにスクリーン印刷、加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は81.8%、ヘイズ値は86.3%、表面抵抗値は1551Ω/□、平均膜厚は8.0μm、表面粗さ(Ra)は約1.0μm、凸部の最大高さは約6μmであった。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は81.8%、ヘイズ値は86.3%、表面抵抗値は1551Ω/□、平均膜厚は8.0μm、表面粗さ(Ra)は約1.0μm、凸部の最大高さは約6μmであった。
導電性酸化物粉として、住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;BET比表面積=8.6m2/g、平均長さ35μm、平均アスペクト比=約10)を実施例1と同様の方法で粉砕処理し、平均長さを15μmにしたITO針状粉を使用した。上記ITO針状粉は、アスペクト比が4程度の針状粒子に、粒径1〜5μm程度の粒状粒子が少量(粒子全体の15%程度)混入していた(平均アスペクト比=約4)。樹脂バインダーの架橋性樹脂としてフェノキシ樹脂(Tg:146℃、水酸基価182KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製のMF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いた。
上記ITO針状粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:25%、フェノキシ樹脂:10.7%、硬化剤成分:6.8%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル:53.0%、その他溶剤:4.5%(酸化物針状粉:バインダー=58.7:41.3、NCO/OH=約0.5)であった。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、2200mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様にPETフィルムにスクリーン印刷、加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は81.5%、ヘイズ値は86.8%、表面抵抗値は1360Ω/□、平均膜厚は8.0μm、表面粗さ(Ra)は約1.1μm、凸部の最大高さは約7μmであった。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は81.5%、ヘイズ値は86.8%、表面抵抗値は1360Ω/□、平均膜厚は8.0μm、表面粗さ(Ra)は約1.1μm、凸部の最大高さは約7μmであった。
導電性酸化物粉として、住友金属鉱山(株)製のITO針状粉(SCP−X700B;BET比表面積=8.6m2/g、平均長さ35μm、平均アスペクト比=約10)を実施例1と同様の方法で粉砕処理し、平均長さを4μmにしたITO粉を使用した。上記ITO粉では、アスペクト比が2以上の粒子は極めて少なく(粒子全体の5%未満)、粒状粒子がほとんどであった(平均アスペクト比=約1)。樹脂バインダーの架橋性樹脂としてフェノキシ樹脂(Tg:146℃、水酸基価182KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製のMF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いた。
上記ITO粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、フェノキシ樹脂:8.7%、硬化剤成分:5.6%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル:43.0%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:13%、その他溶剤:3.7%(酸化物針状粉:バインダー=64.5:35.5、NCO/OH=約0.5)であった。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、約1200mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様にPETフィルムにスクリーン印刷、加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は77.5%、ヘイズ値は87.9%、表面抵抗値は2200Ω/□、平均膜厚は6.5μm、表面粗さ(Ra)は約0.6μm、凸部の最大高さは約4μmであった。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は77.5%、ヘイズ値は87.9%、表面抵抗値は2200Ω/□、平均膜厚は6.5μm、表面粗さ(Ra)は約0.6μm、凸部の最大高さは約4μmであった。
導電性酸化物粉として、実施例4のITO粉を使用した。樹脂バインダーの架橋性樹脂としてフェノキシ樹脂(Tg:146℃、水酸基価182KOHmg/g)を用い、その硬化剤にはHDI系ブロックイソシアネート(旭化成(株)製のMF−K60X、固形分(硬化剤成分)約60%、最低硬化温度90℃)を用いた。また、溶剤としては、シクロヘキサノンを用いた。
上記ITO粉を、上記架橋性樹脂と硬化剤、及び微量の分散剤を含む溶剤に混合し、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:10%、フェノキシ樹脂:3.3%、硬化剤成分:2.2%、ジシクロヘキサノン:83.1%、その他溶剤:1.4%(酸化物針状粉:バインダー=64.5:35.5、NCO/OH=約0.5)であった。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、約10mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、基材としての東レ(株)製のPETフィルム(ルミラー、厚さ100μm)上に、スピンコーティング(200rpm)した後、加熱(60℃×10分間−120℃×20分間)して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は75.5%、ヘイズ値は88.0%、表面抵抗値は2500Ω/□、平均膜厚は7.0μm、表面粗さ(Ra)は約0.7μm、凸部の最大高さは約5μmで、塗布欠陥のない均一な膜であった。
(比較例1)
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は75.5%、ヘイズ値は88.0%、表面抵抗値は2500Ω/□、平均膜厚は7.0μm、表面粗さ(Ra)は約0.7μm、凸部の最大高さは約5μmで、塗布欠陥のない均一な膜であった。
(比較例1)
導電性酸化物粉として、住友金属鉱山(株)製の針状ITO粉(SCP−X700B;BET比表面積=8.6m2/g、平均長さ35μm、平均アスペクト比=約10)を粉砕処理せずに用いた以外は、実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ウレタン変性ポリエステル樹脂:14%、硬化剤成分:0.9%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:58.5%、その他溶剤:0.6%であった(酸化物針状粉:バインダー=63.6:36.4、NCO/OH=約3)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、約5000mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様にPETフィルムにスクリーン印刷、加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は67.6%、ヘイズ値は87.4%、表面抵抗値は731Ω/□、平均膜厚は8.6μm、表面粗さ(Ra)は約1.5μm、凸部の最大高さは約11μmであった。
(比較例2)
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は67.6%、ヘイズ値は87.4%、表面抵抗値は731Ω/□、平均膜厚は8.6μm、表面粗さ(Ra)は約1.5μm、凸部の最大高さは約11μmであった。
(比較例2)
前述のインジウムメタル硝酸溶解液の濃縮を利用して針状ITO粉を得る方法において、針状粉が成長しないように濃縮を進めずに、製造効率を大幅に低下させて(通常の半分以下)、試験的に小さい針状ITO粉を製造した。
導電性酸化物粉として、上記小さい針状ITO粉(BET比表面積=9.0m2/g、平均長さ20μm、平均アスペクト比=約10)を粉砕処理せずに用いた以外は、実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ウレタン変性ポリエステル樹脂:14%、硬化剤成分:0.9%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:58.5%、その他溶剤:0.6%であった(酸化物針状粉:バインダー=63.6:36.4、NCO/OH=約3)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、約4500mPa・sであった。
導電性酸化物粉として、上記小さい針状ITO粉(BET比表面積=9.0m2/g、平均長さ20μm、平均アスペクト比=約10)を粉砕処理せずに用いた以外は、実施例1と同様にして、透光性導電塗料を調製した。この透光性導電塗料の組成は、ITO:26%、ウレタン変性ポリエステル樹脂:14%、硬化剤成分:0.9%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:58.5%、その他溶剤:0.6%であった(酸化物針状粉:バインダー=63.6:36.4、NCO/OH=約3)。また、この透光性導電塗料の粘度(25℃)は、約4500mPa・sであった。
上記透光性導電塗料を、実施例1と同様にPETフィルムにスクリーン印刷、加熱して透光性導電膜を形成した。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は68.8%、ヘイズ値は88.0%、表面抵抗値は865Ω/□、平均膜厚は8.3μm、表面粗さ(Ra)は約1.3μm、凸部の最大高さは約9μmであった。
得られた透光性導電膜の透過率(可視光)は68.8%、ヘイズ値は88.0%、表面抵抗値は865Ω/□、平均膜厚は8.3μm、表面粗さ(Ra)は約1.3μm、凸部の最大高さは約9μmであった。
上記実施例および比較例により作製された各透光性導電膜を用いて、分散型EL素子を作製し、点灯試験を行った。その結果を表1にまとめる。比較例1、2ではショートが多発していることが分かる。
Claims (10)
- 金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、前記導電性酸化物粉は、平均長さが30μmを超え、かつ平均アスペクト比が5以上の導電性酸化物針状粉を粉砕処理して得られたものであることを特徴とする透光性導電塗料。
- 前記導電性酸化物粉の平均長さが1〜15μmの範囲で、かつ、平均アスペクト比が5未満であることを特徴とする請求項1に記載の透光性導電塗料。
- 前記金属酸化物が酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の透光性導電塗料。
- 前記バインダーが架橋性樹脂または架橋性樹脂と硬化剤であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 前記架橋性樹脂が水酸基を有するウレタン変性ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、フェノキシ樹脂またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の透光性導電塗料。
- 前記硬化剤がブロックイソシアネートであることを特徴とする請求項4に記載の透光性導電塗料。
- 前記導電性酸化物粉とバインダーとの重量比が、40:60から95:5であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透光性導電塗料。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、該導電膜の凸部の最大高さが7μm以下であることを特徴とする透光性導電膜。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の透光性導電塗料を用いて形成された透光性導電膜であって、該膜のヘイズ値が50%以上であることを特徴とする透光性導電膜。
- 金属酸化物がドープされた酸化インジウムからなる導電性酸化物粉を、バインダーを含む溶剤中に分散させてなる透光性導電塗料であって、前記導電性酸化物粉の平均長さが1〜15μmの範囲で、かつ、平均アスペクト比が5未満であることを特徴とする透光性導電塗料。
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