JP2007238795A - 印刷インキ用樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

印刷インキ用樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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滋 川瀬
Yasuhiro Matsubara
康弘 松原
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Abstract

【課題】印刷物の光沢を損なうことなく、印刷時に発生するミスチングを低減させることができ、インキ諸性能(乾燥性、乳化性等)を維持したままで、印刷物の光沢を損なうことなく、印刷インキのミスト量を低減された印刷インキ用樹脂組成物、およびその製造法を提供する。
【解決手段】ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物において、減圧蒸留および水蒸気蒸留を行うことによりロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂中に含まれるゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分を、3%以下とする。
【選択図】なし

Description

本発明は印刷インキ用樹脂組成物およびその製造方法に関する。
近年の印刷機の高速化により、印刷機から多量のインキミストが飛散し、印刷時の作業環境が悪化するという問題がある。これを改善する方法として、インキ用樹脂を高極性として導電性を付与する方法、高分子量・高架橋密度としてインキの弾性を上げる方法などあげられるが、一般的にはミスト量が低減する反面、光沢が低下する傾向にある。
このような問題を解決する手段として、印刷インキ用石油樹脂組成物が提案されているが、多岐にわたるインキ性能を石油樹脂単独で満足することは困難である(特許文献1参照)。またC10〜20のアルキルフェノールと酸触媒を使用した重量平均分子量3〜25万のロジン変性フェノール樹脂を印刷インキ組成物として用いることが提案されているが、該樹脂で種々のインキ性能を満たすことは困難であり、汎用性に欠けていた(特許文献2参照)
特開平7−33951号公報 特開平8−283641号公報
本発明は、インキ諸性能(乾燥性、乳化性等)を維持したままで、印刷物の光沢を損なうことなく、印刷インキのミスト量を低減された印刷インキ用樹脂組成物、およびその製造法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく、ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物に含まれるロジン系樹脂中に含まれる低分子成分を特定量以下とすることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物において、ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂が、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量が3%以下であるものであることを特徴とする印刷インキ用樹脂組成物;ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を減圧蒸留および水蒸気蒸留することにより、該樹脂中のゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量を3%以下としたものをベース樹脂として用いることを特徴とする印刷インキ用樹脂組成物の製造方法に関する。
本発明によれば、インキ諸性能(乾燥性、乳化性等)を維持したままで、印刷物の光沢を損なうことなく、印刷インキのミスト量を低減した印刷インキ用樹脂を提供することができる。また、本発明に係る印刷インキ用樹脂は、特にオフセット枚葉インキ(枚葉インキ)用、オフセット輪転インキ(オフ輪インキ)用、新聞インキ用等のオフセット印刷インキ用樹脂として賞用されるほか、凸版印刷インキ用、グラビア印刷インキ用樹脂としても好適に使用される。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、樹脂成分としてロジン変性フェノール樹脂および/または、ロジン系ポリエステル樹脂を含有するものである。
はじめに、本発明のロジンフェノール樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物について説明する。
本発明のロジン変性フェノール樹脂とは、ロジン類(以下、(a)成分という)、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物(以下、(b)成分という)、ポリオール類(以下、(c)成分という)を必須成分として含有するものである。
(a)成分としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン;天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどがあげられる。なお、不飽和酸変性ロジンとは、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、あるいはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられ、当該不飽和酸変性ロジンは原料ロジン100重量部に対し、不飽和カルボン酸を通常1〜30重量部程度用いて変性したものである。
成分(b)としては、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)とをF/P(モル比)が通常1〜3程度となる範囲内で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ触媒の存在下において付加・縮合反応させた縮合物(レゾール型フェノール樹脂)や、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)とをF/P(モル比)が通常0.5〜2程度となる範囲内で蓚酸、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下において付加・縮合反応させた縮合物(ノボラック型フェノール樹脂)が該当し、各種公知のものを特に制限なく使用することができる。また、必要により該縮合物を中和・水洗したものを成分(b)とすることもできる。ここにフェノール類(P)としては、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどが挙げられる。また、ホルムアルデヒド(F)はホルマリン、パラホルムアルデヒド等を使用すればよい。またロジン変性フェノール樹脂を高分子量化できる観点からレゾール型フェノール樹脂を用いることが好ましい。
成分(c)としては、例えばジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールエタン等、従来から公知のポリオールをあげることができる。
なお成分(c)のなかでも本発明に使用する印刷インキ用樹脂組成物の軟化点、分子量等を制御し易いことから、グリセリン、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタンなどの、当該分子の最長炭素鎖における炭素数が4以下のものである3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタンなど当該分子の最長炭素鎖における炭素数が4以下のものである4価アルコールを使用するのが好ましい。
本発明のロジン変性フェノール樹脂の成分(a)成分、(b)成分、(c)成分の使用量は特に限定されず、用途に応じてそれぞれ適宜に決定すればよいが、通常、(a)成分の使用量は41〜88重量%程度、好ましくは46〜74重量%程度であり、(b)成分の使用量は9〜50重量%程度、好ましくは22〜46重量%程度であり、(c)成分の使用量は、3〜9重量%程度、好ましくは4〜8重量部程度である。
前記数値範囲内とすることによって、耐ミスチング性、乾燥性、光沢などのインキとしての諸特性のバランスを適度に保つことができる。
さらに、成分(c)の使用量は、ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物を所望の分子量とし、印刷インキに適正な乳化特性を与えるため、ロジン変性フェノール樹脂に含まれる全水酸基当量数(OH)と全カルボキシル基当量数(COOH)の割合を、通常OH/COOH=0.5〜1.5程度となるように調整するのが好ましい。
次に本発明のロジン変性フェノールの製造方法は、従来公知のロジン変性フェノール樹脂の製造方法を採用することができる。反応に際し、触媒や反応温度等の反応条件は特に制限されることはない。たとえば、成分(a)、成分(b)および成分(c)を所定量ずつ反応装置に仕込み、必要に応じて各種公知の酸性または塩基性触媒の存在下、100〜300℃程度の温度範囲にて1〜20時間程度反応させればよい。前記触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属の水酸化物、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などの酢酸塩があげられる。
また、成分(a)と成分(b)とを反応させた後に、得られた反応生成物に成分(c)を加えて反応をさせる方法、成分(a)と成分(c)とを反応させた後に、得られた反応生成物に成分(b)を加えて反応をさせる方法によっても製造することができる。
次に、本発明の印刷インキ組成物に含有されるロジン系ポリエステル樹脂について説明する。ロジン系ポリエステル樹脂とは、上記(a)成分と、脂肪酸類、脂肪族多塩基酸類、脂肪族アルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類、脂肪族モノエポキシ類、およびカルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物とからなるポリマーと当該ポリマー中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物とを部分的に反応させてなる樹脂からなる群より選択される少なくとも1種(d)(以下、(d)成分という)、ならびに上記成分(c)を必須成分として含有し、好ましくは、上記必須成分に加えて、芳香族多塩基酸のエステル類(以下、(e)成分という)および/または極性基含有石油樹脂(以下、(f)成分という)を含有するものである。
成分(a)は、上述のロジン変性フェノール樹脂の場合と同様のものを使用することができるが、特に、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するロジン類を含有するものであれば、当該ロジン系ポリエステル樹脂を高分子量化、高軟化点化できる。特に高分子量化、高軟化点化が容易となる点から、成分(a)としては重合ロジンおよび/または不飽和酸変性重合ロジンを成分(a)全量に対して10重量%以上含有するものを使用することが好ましい。
次に、成分(d)について説明する。成分(d)のうち、脂肪酸類(d1)および脂肪族多塩基酸類(d2)としては全炭素数10〜40程度のものが好ましく使用され、直鎖状、分岐鎖状または環状であってよい脂肪酸、アルキルコハク酸およびその無水物ならびにこれらに対応するアルケニルコハク酸およびその無水物、α,ω−ジカルボン酸類、不飽和カルボン酸付加高級脂肪酸類、ダイマー酸等が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、カプロレイン酸、リンデル酸、フィゼテリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ニシン酸、ステアロール酸、モノマー酸等の直鎖状脂肪酸;イソ酸、ツベルクロステアリン酸等の分岐状脂肪酸;マルバリン酸、ショールムーグリン酸等の環状脂肪酸;直鎖状、分岐鎖状、環状であってよいα−オレフィンオリゴマーまたはエチレン、プロピレンなどをオリゴマー化してなる直鎖状、分岐鎖状、環状の内部オレフィンオリゴマーとマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和ジカルボン酸類とをエン付加反応等の付加反応をさせることで得られる化合物、および当該化合物の水素化物;オクテニルコハク酸、オクテニル無水コハク酸、デセニルコハク酸、デセニル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、オクタデセニルコハク酸、オクタデセニル無水コハク酸、エイコセニルコハク酸、エイコセニル無水コハク酸、メチルウンデセニルコハク酸、メチルウンデセニル無水コハク酸、アリルシクロペンテニルコハク酸、アリルシクロペンテニル無水コハク酸、オクチルコハク酸、オクチル無水コハク酸、デシルコハク酸、デシル無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、テトラデシルコハク酸、テトラデシル無水コハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘキサデシル無水コハク酸、オクタデシルコハク酸、オクタデシル無水コハク酸、メチルウンデシルコハク酸、メチルウンデシル無水コハク酸、アリルシクロペンチルコハク酸、アリルシクロペンチル無水コハク酸;セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ヘキサコサン二酸、オクタコサン二酸、トリアコンタン二酸;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸類と桐油、アマニ油、サンフラワー油、大豆油、脱水ヒマシ油などの半乾性油または乾性油から得られる高級脂肪酸とを付加反応させることにより得られる化合物等;牛脂系オレイン酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸などの不飽和脂肪酸を、触媒としてモンモリロナイト系白土などを用い、二量化したダイマー酸等を例示できる。なお、該ダイマー酸の市販品は、炭素数36のダイマー酸と副生成物である炭素数54のトリマー酸を含有したものとして容易に入手できる。
成分(d)のうち、脂肪族モノアルコール類(d3)、脂肪族ジアルコール類(d4)、脂肪族モノアミン類(d5)および脂肪族モノエポキシ類(d6)としては、炭素数10〜40程度ものが好ましく使用され、具体的にはデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ゲラニオール、ロジンアルコール、ビサボロール、ラノリンアルコール;デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、ラノリンアルコール、ダイマー酸を水添したジオール;デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオクタデセニルアミン;1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテル等を例示できる。
成分(d)における、カルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物とからなるポリマー(以下、ポリマー(d7)と略す)と当該ポリマー(d7)中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物とを部分的に反応させてなる樹脂)(以下、樹脂(d7)と略す)について説明する。当該ポリマー(d7)の構成成分である該カルボン酸類としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらは単独で使用、または2種以上を併用することができ、その使用量はロジン系ポリエステル樹脂を適正な分子量としうる範囲内で任意に変えることができる。また、当該ポリマー(d7)の他の構成成分である該疎水性の重合性不飽和化合物としては、(I)炭素数2〜50程度の脂肪族不飽和炭化水素モノマー、(II)炭素数5〜50程度の脂環族不飽和炭化水素モノマー、(III)炭素数8〜50程度の芳香族炭化水素モノマー、(IV)ロジン類、(V)高級不飽和脂肪酸、(VI)不飽和油などを例示できる。(I)の化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−n−ブテン、ジプロピレン、ジイソブチレン、トリプロピレン、トリブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトリエアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン、1−テトラコンテンなどのα−オレフィンや、ブタジエン、不飽和ポリオレフィンなどが挙げられる。(II)の化合物の具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、アリルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどがあげられる。(III)の化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。(IV)の化合物の具体例としては、成分(a)として分子内に炭素―炭素不飽和結合を有する化合物が相当する。(V)成分および(VI)成分の化合物の具体例としては、桐油、アマニ油、サフラワー油、大豆油、脱水ヒマシ油などの半乾性油または乾性油、またはこれらから得られる高級不飽和脂肪酸があげられる。(I)〜(VI)の化合物は単独で、または2種以上を併用することができる。また、本発明の特徴を損なわない範囲で他のモノマーや化合物を併用してもよく、その使用量はロジン系ポリエステル樹脂を適正な分子量としうる範囲内で任意に変えることができる。また、ポリマー(d7)中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物(以下、疎水性化合物と略す)としては、(i)炭素数6〜50程度の脂肪族モノアルコール、(ii)炭素数6〜50程度の脂肪族ジアルコール、(iii)炭素数6〜50程度の脂肪族モノアミン、(iv)炭素数6〜50程度の脂肪族モノエポキシなどがあげられる。(i)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、ヘキサノール、オクタノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、2−エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ゲラニオール、ロジンアルコール、ビサボロール、ラノリンアルコールなどがあげられる。(ii)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、ラノリンアルコール、ダイマー酸を水添したジオールなどあげられる。(iii)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオクタデセニルアミンなどがあげられる。(iv)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ポリマー(d7)は、カルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物を原料として、公知の重合反応、たとえばラジカル重合反応、熱重合反応、イオン重合反応により得ることができる。なおこれらの反応を行うに際し、開始剤や触媒は必須ではないが、ラジカル重合反応の場合にはアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過硫酸カリウム、過酸化水素水などの開始剤を使用することができる。また、カチオン重合の場合には硫酸などのプロトン酸や、三弗化ホウ素、塩化アルミニウムなどのルイス酸と水、アルコール、エーテルからなる共触媒等、各種公知の触媒を使用することができる。また、アニオン重合の場合には、NaR、RMgX、ROK(Rはアルキル基、Xはハロゲン原子を表す)、ピリジン、配位アニオン開始剤としてチーグラーナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの開始剤を使用することができる。これら開始剤や触媒は前記カルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物の総重量に対し0.01〜10重量%程度使用される。また、反応の際に溶媒は必須とされないが、使用する場合には各種公知のものを使用することができる。溶媒としては、重合反応を行う温度で原料を十分に溶解でき、反応生成物を溶解できるものが好ましく使用され、特に前記不飽和カルボン酸類に対し不活性であって重合反応を大きく阻害しないものが好ましく使用することができる。溶媒の具体例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの脂肪族エステル等があげられる。また、反応温度は開始剤や触媒の種類により最適温度を決定すればよいが、通常室温〜200℃程度である。
樹脂(d7)は上記方法で得られたポリマー(d7)中のカルボキシル基の20〜80%程度を疎水性化合物と反応させて得られる変性物であり、該ポリマー(d7)の疎水性が高い場合は変性率を低くするのが好ましく、疎水性が低い場合は変性率を高くするのが好ましい。また、成分(d)の構成成分であるカルボン酸類と、当該カルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物を予めエステル化したものを、当該樹脂の反応物として使用することも可能である。
次に、成分(c)について説明する。成分(c)としては、ロジン変性フェノール樹脂の場合と同様のものをあげることができ、(c)の使用量は、ロジン系エステル樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物を所望の分子量とし、印刷インキに適正な乳化特性を与えるため、ロジン系エステル樹脂に含まれる全水酸基当量数(OH)と全カルボキシル基当量数(COOH)の割合を、通常OH/COOH=0.5〜1.5程度となるように調整するのが好ましい。
この際、OH/COOH(当量比)の計算においては、成分(c)として脂肪族モノアミン類を使用する場合には、2級アミンは1価とみなし、また1級アミンは2価とみなし、当該アミノ基の当量数=当該OHの当量数とし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。また、脂肪族モノエポキシ類を使用する場合は2価アルコールとみなし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。
ロジン系エステル樹脂に対して使用することが好ましい成分(e)としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多塩基酸類やこれらに対応するモノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル等の芳香族多塩基酸のエステル類を例示できる。成分(e)を用いると、高分子量化が容易になるという点で好ましい。
ロジン系エステル樹脂に対して使用することが好ましい成分(f)としては、分子内に二重結合を有する石油樹脂にカルボキシル基や水酸基等の極性基を付与したものが該当する。当該分子内に二重結合を有する石油樹脂としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのDCPD系原料から得られるDCPD系石油樹脂、ペンテン、シクロペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどのC5系原料から得られるC5系石油樹脂、メチルブテン、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどのC9系原料から得られるC9系石油樹脂、DCPD系原料とC5系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂、C5系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC5系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂などがあげられ、通常これらの樹脂は無触媒あるいは触媒(たとえばカチオン重合による場合はフリーデルクラフツ型触媒など)の存在の下で製造される。これらの中でも特に極性基を容易に付与でき、所望の軟化点に調整し易いことから、DCPD系原料を成分とする石油樹脂が好ましい。具体的にはDCPD系石油樹脂、DCPD系原料とC5系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC5系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂があげられる。
分子内に二重結合を有する石油樹脂に極性基を導入する方法としては、公知の方法を採用することができる。たとえば極性基としてカルボキシル基を導入する場合には、前記した各種石油樹脂と、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和モノカルボン酸類等の不飽和カルボン酸類とを、公知のラジカル反応開始剤の存在下でラジカル共重合反応させる方法や、石油樹脂と不飽和カルボン酸類とをエン反応させる方法等が採用できる。なお、当該不飽和カルボン酸類の使用量としては、当該ロジン系ポリエステル樹脂の分子量を所望の範囲に調整し易いことから、原料となる石油樹脂100重量部に対して1〜15重量部程度、好ましくは1〜12重量部を使用するのがよい。
また、極性基として例えば水酸基を導入する場合にもその方法は特に制限されるものではなく、たとえば前記した分子内に二重結合を有する石油樹脂とアリルアルコール等の分子内に二重結合と水酸基を有する化合物を熱重合させる方法等、各種公知の方法を採用することができる。特に、水酸基を有する成分(f)に不飽和カルボン酸類をエン付加させたものやラジカル反応開始剤の存在下でラジカル共重合させたものは、ロジン系ポリエステル樹脂を容易に高分子量化、高軟化点化できるので好ましい。なお、前者は成分(f)中の水酸基の当量数より少ないカルボキシル基の当量数となる割合で不飽和カルボン酸類を反応させて得ることができる。
こうして得られた成分(f)は1種を単独で使用しても良く、2種以上の混合物として使用してもよい。また成分(f)としては、ロジン系ポリエステル樹脂を高分子量化、高軟化点化する目的から、分子内に2個以上の極性基を有するものが好ましく使用される。なお、成分(f)の重量平均分子量は、ロジン系ポリエステル樹脂の構成成分とする場合には通常4,000〜30,000程度とするのが好ましく、重量平均分子量を4,000以上とすることでロジン系ポリエステル樹脂を所望の分子量としやすく、30,000以下とすることで、不溶物の発生を抑制することができる。
本発明で用いられるロジン系ポリエステル樹脂の各成分(a)、(c)、(d)、(e)、(f)の使用量は何れも特に限定されず、用途に応じてそれぞれ適宜に決定すればよいが、一般的には、(a)成分の使用量は10〜90重量%程度、(c)成分の使用量は1〜30重量%程度、(d)成分の使用量は3〜40重量%程度であり、(e)成分および/または(f)成分を用いる場合には、その使用量は(e)成分が1〜20重量%程度、(f)成分が1〜50重量%程度とすれば、インキの諸性能を適度に保つことができる。
次に、本発明のロジン系エステル樹脂の製造方法は、従来公知のロジン系エステル樹脂の製造方法を採用することができ、反応に際し、触媒や反応温度等の反応条件は特に制限されることはない。たとえば、成分(a)、成分(c)、成分(d)、必要に応じて成分(e)および成分(f)を所定量ずつ反応装置に仕込み、必要に応じて各種公知の酸性または塩基性触媒の存在下、100〜300℃程度の温度範囲にて1〜20時間程度反応させればよい。前記触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属の水酸化物、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などの酢酸塩があげられる。
また、ロジン変性フェノール樹脂とロジン系エステル樹脂の各成分(a)〜(f)を所定量反応装置に仕込めば、ロジン変性フェノール樹脂とロジン系エステル樹脂の併用タイプのものを得ることができる。
本発明にかかる印刷インキ用組成物は、前記に詳述したロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を含有するものであり、しかも、当該樹脂中に含まれるゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量300以下の成分の含有量が、3%以下であることを特徴とする。
上記の樹脂中に含有される低分子成分は、通常、各種反応の際に生じた分解物(例えば、アビエチン酸が脱炭酸し、カルボキシル基を失ったもの)や、反応系に残存した触媒類や未反応物、ロジン類に含まれていた不純物と考えられるが、これら低分子成分の樹脂中の含有量が3%を超えると、得られる印刷インキ組成物はミスチングを引き起こしやすくなる。耐ミスチング性の観点から、これら低分子成分の樹脂中の含有量を2%以下とすることが好ましく、更に好ましくは1%以下である。
なお、分子量300以下の成分の含有量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるピーク面積の比によって求めることができる。具体的には、全ピーク面積100%に対する、GPCによるポリスチレン換算値から求めた分子量300以下の成分のピーク面積比(%)により求めることができる。
ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂から分子量300以下の成分を除去する方法としては、減圧蒸留と水蒸気蒸留の2種の蒸留工程を組み合わせて行う方法があげられる。これらのいずれか単独の蒸留法のみによっては、分子量300以下の成分を効率よく除去できないが、これらを組合せることにより効率的な除去を実現することができる。ここで、減圧蒸留とは、所定の温度に加熱しながら減圧によって蒸留する方法であり、分子量300以下の成分を除去する際には、通常、温度を240〜300℃程度、圧力を0.01〜3kPa程度とすることが望ましい。水蒸気蒸留とは、加熱した水蒸気を系内に吹き込む水蒸気によって蒸留を行う方法であり、通常、反応温度を240〜300℃程度で行うことが望ましい。これら2つの蒸留工程の順序は特に限定されず、減圧蒸留された樹脂に対して水蒸気蒸留を行う方法や、逆に、水蒸気蒸留された樹脂に対して減圧蒸留を行う方法、同時に蒸留する方法など適宜、組合せて実施することができる。減圧蒸留および水蒸気蒸留の温度条件は240℃以上とすることで低分子成分を効率良く除去でき、300℃以下とすることで樹脂の炭化を抑制できる。時間は温度・減圧条件により異なるが、分子量300以下の成分の含有量が3%以下になるまで継続すればよい。
本発明の樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物は、前記ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂をベース樹脂として用いることにより製造されるものであるが、その製造方法は、通常の方法であればよく、公知の顔料、乾性油、各種添加剤等を適宜配合して練肉することにより印刷インキ用組成物とすることができる。
前記方法で得られた本発明の印刷インキ用樹脂組成物は高軟化点を有することを特徴とする。軟化点は140〜200℃程度が好ましい。軟化点を140℃以上とすることで印刷物の乾燥性を適度に保ち、また200℃以下とすることでインキ用ビヒクルとの親和性を高め、十分な溶解性を保つことができる。また、本発明の印刷インキ用樹脂組成物の重量平均分子量は、30,000〜400,000程度、好ましくは50,000〜200,000の範囲とされる。30,000より小さい場合は所望の軟化点が得られにくくなり、400,000より大きい場合は不溶物が発生しやすくなる傾向にある。
以下、製造例、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。なお、以下「部」とは重量部を示す。
製造例1
(ロジン類(a)の製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、窒素雰囲気下で反応系を攪拌しながら180℃まで昇温して、これを溶融した。次いで、同反応容器にフマル酸267部を仕込み、攪拌下に反応系を230℃まで昇温して、1時間保温した。その後、反応容器を冷却して、固形フマル酸変性ロジン(酸価342.0、軟化点148℃)を得た。
製造例2
(極性基含有石油樹脂(f)の製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)1,000部を仕込み、窒素雰囲気下で反応系を攪拌しながら180℃まで昇温して、これを溶融した。次いで、同反応容器に無水マレイン酸70部を仕込み、攪拌下に反応系を230℃まで昇温して、3時間保温した。その後、同反応容器を冷却して、固形状のカルボキシル基含有石油樹脂(理論当量65、重量平均分子量1,500)を得た。該石油樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりTHF溶媒下で測定したポリスチレン換算値をいい、GPC装置としてはHLC−8020(東ソー(株)製)を、カラムとしてはTSK−GELカラム(東ソー(株)製)を用いた。
製造例3
(フェノール−ホルムアルデヒド縮合物の製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、オクチルフェノール1,000部、パラホルムアルデヒド270部および水1,000部を仕込み、攪拌下に50℃まで昇温した。次いで、同反応容器に水酸化ナトリウム100部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2.5時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、キシレン150部を加え、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を除去し、更に内容物を冷却して、レゾール型オクチルフェノールの70%キシレン溶液を得た。
実施例1
(水蒸気・減圧蒸留したロジン変性フェノール樹脂の製造A)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ガムロジン552部を仕込み、これを窒素雰囲気下に攪拌しながら230℃まで昇温して溶融した。次いで、ペンタエリスリトール52部および酸化亜鉛2部を添加し、攪拌下に280℃まで昇温し、酸価が20以下となるまで反応した。更に230℃まで冷却した後、前記レゾール型オクチルフェノール70%キシレン溶液394部(固形分276部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、水蒸気発生装置の設定温度を105℃にして30分間水蒸気を系内に吹き込むことにより水蒸気蒸留を行い、その後反応系内の温度を250℃、減圧度0.008MPaで30分間減圧蒸留を行った。蒸留処理の間、33重量%アマニ油粘度測定を繰り返し、粘度が8.0Pa・sとなるよう調整して内容物を取り出した。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は14.2、軟化点は179℃、重量平均分子量は77,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は1.6%であった。
実施例2
(水蒸気・減圧蒸留したロジン変性フェノール樹脂の製造B)
実施例1で得られたロジン変性フェノールを、更に実施例1と同一の条件で水蒸気蒸留および減圧蒸留を繰り返しロジン変性フェノール樹脂を調製した。得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は12.5、軟化点は184℃、重量平均分子量は71,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は0.8%であった。
実施例3
(水蒸気・減圧蒸留したロジン系ポリエステル樹脂Aの製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)588部、製造例1で得たフマル酸変性ロジン266部、炭素数18のアルケニル無水コハク酸52部を仕込み、反応系を窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温し、これらを溶融した。次いで、同反応容器にペンタエリスリトール47部、グリセリン47部を添加し、攪拌下に反応系を260℃で保温し、樹脂の酸価が50以下となった時点でパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまでエステル化反応させた。反応終了後、水蒸気発生装置の設定温度を105℃にして30分間水蒸気を系内に吹き込むことにより水蒸気蒸留を行い、その後、反応系内の温度を270℃、減圧度0.008MPaで30分間減圧蒸留を行った。蒸留処理の間、33重量%アマニ油粘度測定を繰り返し、粘度が8.0Pa・sになるよう調整して内容物を取り出した。こうして得られたロジン系ポリエステル樹脂の酸価は13.3、軟化点は178℃、重量平均分子量は121,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は2.0%であった。
実施例4
(水蒸気・減圧蒸留したロジン系ポリエステル樹脂Bの製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)676部、炭素数18のアルケニル無水コハク酸68部、イソフタル酸135部を仕込み、反応系を窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温し、これらを溶融した。次いで、同反応容器にペンタエリスリトール121部を添加し、攪拌下に反応系を260℃で保温し、樹脂の酸価が50以下となった時点でパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまでエステル化反応させた。反応終了後、水蒸気発生装置の設定温度を105℃にして30分間水蒸気を系内に吹き込むことにより水蒸気蒸留を行い、その後、反応系内の温度を270℃、減圧度0.008MPaで30分間減圧蒸留を行った。蒸留処理の間、33重量%アマニ油粘度測定を繰り返し、粘度が8.0Pa・sになるよう調整して内容物を取り出した。こうして得られたロジン系ポリエステル樹脂の酸価は11.2、軟化点は180℃、重量平均分子量は125,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は2.5%であった。
実施例5
(水蒸気・減圧蒸留したロジン系ポリエステル樹脂Cの製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)353部、製造例1で得たフマル酸変性ロジン101部、製造例2で得た極性基含有石油樹脂樹脂426部を仕込み、反応系を窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温し、これらを溶融した。次いで、同反応容器にペンタエリスリトール22部、グリセリン22部および1,2−オクタデカンジオール76部を添加し、攪拌下に反応系を260℃で保温し、樹脂の酸価が30以下となった時点でパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまでエステル化反応させた。反応終了後、水蒸気発生装置の設定温度を105℃にして30分間水蒸気を系内に吹き込むことにより水蒸気蒸留を行い、その後、反応系内の温度を260℃、減圧度0.008MPaで30分間減圧蒸留を行った。蒸留処理の間33重量%アマニ油粘度測定を繰り返し、粘度が8.0Pa・sになるよう調整して内容物を取り出した。こうして得られたロジン系ポリエステル樹脂の酸価は11.3、軟化点は175℃、重量平均分子量は97,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は2.3%であった。
比較例1
実施例1において、水蒸気蒸留および減圧蒸留を行わずにロジン変性フェノール樹脂を調製した。得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は16.5、軟化点は170℃、重量平均分子量は83,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は3.8%であった。
比較例2
実施例2において、水蒸気蒸留および減圧蒸留を行わずにロジン系エステル樹脂を調製した。得られたロジン系エステル樹脂の酸価は16.1、軟化点は170℃、重量平均分子量は130,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は5.5%であった。
比較例3
実施例2において、水蒸気蒸留および減圧蒸留を行わずにロジン系エステル樹脂を調製した。得られたロジン系エステル樹脂の酸価は14.2、軟化点は171℃、重量平均分子量は132,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は5.2%であった。
比較例4
実施例3において、水蒸気蒸留および減圧蒸留を行わずにロジン系エステル樹脂を調製した。得られたロジン系エステル樹脂の酸価は14.5、軟化点は166℃、重量平均分子量は105,000、製造例2と同様にして測定したGPC法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量は4.7%であった。
以上、実施例および比較例で得られた樹脂物性を表1に示す。
Figure 2007238795
(ワニスの調製)
各実施例および比較例で得られた樹脂を45部、アマニ油10部、及びAFソルベント7号(新日本石油(株)製、非芳香族石油系溶剤)44部を180℃で30分間混合溶解した。次にこれを80℃まで冷却した後、アルミキレート(商品名ALCH、川研ファインケミカル(株)製)1部を加え190℃まで加熱して1時間ゲル化反応させ、ゲルワニスを得た。
(印刷インキの調製)
前記実施例および比較例のゲルワニスを用い、次の配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
フタロシアニンブルー(藍顔料) 15重量部
前記ゲルワニス 65〜73重量部
日石AFソルベント7号 12〜20重量部
上記配合に基づいて30℃、400rpmにおけるインコメーターのタック値が6.5±0.3、25℃におけるスプレッドメーターのフロー値が18.0±1.0となるよう適宜調整した。
(印刷インキの性能試験)
前記ゲルワニスを用いて調製した印刷インキの性能を下記試験により評価した。結果を表2に示す。
(光沢)
インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、20℃、65%R.H.にて24時間調湿し、60°−60°の反射率を光沢計により測定した。
(ミスチング)
インキ2.6mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間、更に1800rpmで2分間回転させ、ロール直下に置いた白色紙上へのインキの飛散度を観察して1〜10段階で評価を行なった。ミスチングは数値が大きいほど良好であることを示す。
(乾燥性)
インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、160℃の雰囲気中に2秒、4秒、6秒間それぞれ暴露し、指触によりべたつきのない状態を乾燥として判断した。数値が小さいほど乾燥性が良好であることを示す。
(乳化率)
インキ3.9mlを動的乳化試験機(日本レオロジー機器(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、200rpmにて純水を5ml/分の速度で供給、このインキ中の水分量を赤外水分計測定した。乳化率は数値が小さいほど良好であることを示す。
Figure 2007238795




Claims (3)

  1. ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を含有する印刷インキ用樹脂組成物において、ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂が、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量が3%以下であるものであることを特徴とする印刷インキ用樹脂組成物。
  2. 減圧蒸留および水蒸気蒸留を行うことにより得られる請求項1に記載された印刷インキ用樹脂組成物。
  3. ロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン系ポリエステル樹脂を減圧蒸留および水蒸気蒸留することにより、該樹脂中のゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が300以下の成分の含有量を3%以下としたものをベース樹脂として用いることを特徴とする印刷インキ用樹脂組成物の製造方法。

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