JP4596199B2 - ポリエステル樹脂、その製造法、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂、その製造法、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキに関するものである。本発明により得られたポリエステル樹脂は印刷インキ用バインダーとして有用である。印刷インキの種類としては、特にオフセット印刷インキ用として賞用しうるほか、新聞インキ、凸版印刷インキ、グラビア印刷インキにも好適に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オフセット印刷インキ用バインダーとしては、高分子量、高軟化点、高粘度、インキ用溶剤に対する高溶解性などの諸性能を有し、印刷適性に優れることから、ロジン変性フェノール樹脂が用いられている。該樹脂はロジン類、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物およびポリオールを主原料としている。しかし、ロジン変性フェノール樹脂は、主原料の一つであるアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の製造時にホルムアルデヒド含有廃水が発生するため、近年、揮発性有機化合物(VOC)による大気汚染などの環境問題や作業環境の安全衛生面での問題が指摘されている。また、ロジン変性フェノール樹脂は、当該樹脂を用いた印刷インキの加熱乾燥工程でホルムアルデヒドが発生することも指摘されていた。
【0003】
このような状況下、有害なホルムアルデヒドを用いないオフセット印刷インキ用バインダーの開発が待望されている。これらロジン変性フェノール樹脂の諸問題を軽減させようとロジン変性フェノール樹脂の代わりに石油樹脂を用いる試みもなされているが、一般的に石油樹脂は分子量が低く、官能基を多く持つことができず、また3次元構造も少ないことに起因して、ゲル化能が低い、ミスチングが大である、光沢が不十分であるなど、印刷適性が不十分であり、そのため石油樹脂が単独でオフセット印刷インキ用バインダーに用いられることはない。
【0004】
また、上記対策として、ロジン系ポリエステル樹脂を用いるという方法も考えられたが、従来のロジン系ポリエステル樹脂は高軟化点ではあるものの分子量が低いためミスチングが悪い、極性基を多く含有しているため乳化適性が実用レベルでないなど、印刷適性が不十分であった。このようにオフセット印刷インキ用バインダーに対する要求性能は多岐に亘るため、これまでのところロジン変性フェノール樹脂以外の樹脂でこれら諸性能を満足することは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を原料とせず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する特性(高分子量、高軟化点、高粘度、高溶解性など)を有する樹脂、当該樹脂の製造方法、および印刷インキ用バインダー、更には従来公知のロジン変性フェノール樹脂を用いてなる印刷インキの印刷適性(乳化特性、光沢、乾燥性、ミスチングなど)と同等以上の印刷適性を有する印刷インキを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑みて、本発明者らはアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を原料とせず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する諸性能を有する樹脂を見出すべく鋭意検討を行なった。その結果、ロジン類、特定のポリマーおよびポリオール類を反応させることにより得られるポリエステル樹脂が、前記目的に合致するものであること、また当該ポリエステル樹脂が各種印刷インキ用バインダー用途に好適であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)ロジン類12〜78重量%、(b)DCPD系重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーを反応させてなる重量平均分子量4,000〜30,000のポリマー19〜77重量%、ならびに(c)ポリオール類3〜11重量%を反応させてなる、軟化点120℃〜200℃、重量平均分子量30,000〜400,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダー;(a)ロジン類12〜78重量%、(b’)DCPD系重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーを反応させてなるポリマーと当該ポリマーのカルボキシル基に対し反応性を有する(1)炭素数6〜40の脂肪族モノアルコール、(2)炭素数6〜40の脂肪族ジアルコール、(3)炭素数6〜40の脂肪族モノアミン、(4)炭素数6〜40の脂肪族モノエポキシからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを部分的に反応させてなる重量平均分子量30,000〜400,000のポリマー19〜77重量%、ならびに(c)ポリオール類3〜11重量%を反応させてなる、軟化点120℃〜200℃重量平均分子量30,000〜400,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダー;当該印刷インキ用バインダーの製造方法;当該ポリエステル樹脂を用いた印刷インキ、に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の印刷インキ用バインダーは、ロジン類(以下、(a)成分という)、DCPD系重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーとからなるポリマー(以下、(b)成分という)、ならびにポリオール類(以下、(c)成分という)を必須構成要件とし、これらを反応させて得られるものである。更には、ロジン類(以下、(a)成分という)、重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および不飽和炭化水素モノマーとからなるポリマーと当該ポリマーのカルボキシル基に対し反応性を有する炭素数6〜40の脂肪族モノアルコール、炭素数6〜40の脂肪族ジアルコール、炭素数6〜40の脂肪族モノアミン、炭素数6〜40の脂肪族モノエポキシからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを部分的に反応させてなるポリマー(以下、(b’)成分という)、ならびにポリオール類(以下、(c)成分という)を必須構成要件とし、これら成分を反応させることにより得られるものである。
【0009】
前記(a)成分であるロジン類としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加してなる安定化ロジンなどがあげられる。また、ディールスアルダー反応やエン反応などにより、前記天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加してなる不飽和酸変性ロジンなどがあげられる。
【0010】
前記の不飽和酸変性ロジンとしては、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、あるいはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられ、原料ロジン100重量部に対して不飽和カルボン酸類を通常1〜30重量部程度を用いて変性させたものである。
【0011】
前記(a)成分の中でも、得られるポリエステル樹脂を高分子量化できることから、分子中に2個以上のカルボキシル基を有するロジンを含有するものが好ましい。また、得られるポリエステル樹脂を高分子量とし、さらに高溶解および高軟化点とするためには、これら(a)成分の中でも、特に重合ロジンおよび/または不飽和酸変性重合ロジンを含有するものが好ましい。この場合、重合ロジンと不飽和酸変性重合ロジンの合計含有量が、(a)成分100重量部中で40重量部程度以上とすることが好ましい。本発明では、(a)成分としては、前記各種ロジン類のうち1種を単独で使用したり、2種以上を適宜に併用することもできる。(a)〜(c)成分の合計仕込み量に対する(a)成分の仕込み量は、12〜78重量%程度である。(a)成分の含有量が12重量%より少なければ所望の分子量が得られにくく、また78重量%より多い場合では樹脂の溶解性が低くなりやすく、しかもインキの適正な乳化率が得られにくい。
【0012】
前記(b)成分および(b’)成分の構成成分であるDCPD系重合性石油樹脂には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどを成分とする二重結合を有する石油樹脂が該当する。DCPD系石油樹脂としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、アリルアルコールを原料とする水酸基含有DCPD系石油樹脂;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、無水マレイン酸を原料とするカルボキシル基含有DCPD系石油樹脂;ペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどのC5系原料;インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどのC9系原料との共重合石油樹脂などであってもよく、これらは無触媒あるいはフリーデルクラフツ型触媒(カチオン重合)などを用いて製造される。
【0013】
前記(b)成分および(b’)成分の構成成分である不飽和カルボン酸類としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和ジカルボン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸などが例示できる。これらは単独使用または2種以上を併用することができ、その使用量は特に限定されないが、ポリエステル樹脂の分子量を好ましい範囲に容易に調整できる観点から、前記重合性石油樹脂の使用量100重量部に対して1〜15重量部程度が好ましい。さらに好ましくは5〜10重量部程度である。
【0014】
前記(b)成分および(b’)成分における構成成分である不飽和炭化水素モノマーとしては、炭素数が10〜40であれば特に制限されず各種公知の物を使用することができる。不飽和炭化水素モノマーの構造としては特に制限されず、直鎖状脂肪族不飽和炭化水素モノマー、分岐鎖状脂肪族不飽和炭化水素モノマー、環状脂肪族不飽和炭化水素モノマーなどを使用できる。具体例としては、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトリエアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン、1−テトラコンテン、ミルセン、ポリブテン(3〜10量体)、ピネン、リモネンなどがあげられる。前記不飽和炭化水素モノマーは単独でまたは2種以上を併用して使用することができ、本発明の特徴を損なわない範囲で他のモノマーや化合物を併用することも可能である。また、その使用量は特に制限されないが、(b)成分および(b’)成分の反応率を高めるため前記不飽和カルボン酸類のモル数より少ない範囲で使用することが好ましい。
【0015】
(b)成分は前記の重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および不飽和炭化水素モノマーとを共重合させることにより得られる。(b)成分を製造する方法としてはラジカル重合、イオン重合などがあげられるが、樹脂の色調を悪化させずに所望の分子量とする観点からラジカル重合による方法が好ましい。ラジカル重合により共重合をする場合には、ラジカル重合開始剤を使用してもよく、また、必要に応じて溶剤を使用してもよい。ラジカル重合開始剤の種類は特に制限されず、各種公知のものを適宜に選択使用できる。具体的には、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水などの過酸化物等を使用できる。当該開始剤の使用量は、原料石油樹脂および不飽和カルボン酸類の総重量に対して、通常0.01〜10重量%程度の範囲内である。反応温度も特に制限されないが、ラジカル開始剤の種類に応じて最適温度を適宜に決定すればよく、通常は室温〜200℃程度の範囲から適宜に設定できる。
また、溶剤を使用する場合には、採用した共重合温度で、出発原料を溶解し、かつ反応生成物も溶解しうる溶剤を用いるのが好ましい。当該溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環系炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの脂肪族エステルなどが挙げられる。なお、原料である不飽和カルボン酸類に対して不活性であって、ラジカル重合を大きく阻害しない溶剤であれば、かかる具体例に限定されない。
【0016】
前記(b’)成分の構成成分であるカルボキシル基に対し反応性を有する化合物としては、▲1▼炭素数6〜40の脂肪族モノアルコール類、▲2▼炭素数6〜40の脂肪族ジアルコール類、▲3▼炭素数6〜40の脂肪族モノアミン類および▲4▼炭素数6〜40の脂肪族モノエポキシ類などがあげられる。前記▲1▼の化合物の具体例としては、ヘキサノール、オクタノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ゲラニオール、ロジンアルコール、ビサボロール、ラノリンアルコールなどがあげられる。前記▲2▼の化合物の具体例としては、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、ラノリンアルコール、ダイマー酸を水添したジオールなどがあげられる。前記▲3▼の化合物の具体例としては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオクタデセニルアミンなどがあげられる。前記▲4▼の化合物の具体例としては、エポキシヘキサン、エポキシオクタン、エポキシデカン、エポキシドデカン、エポキシテトラデカン、エポキシヘキサデカン、エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0017】
(b’)成分は、前記の重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および不飽和炭化水素モノマーとを共重合してなるポリマーと、当該ポリマーのカルボキシル基に対し反応性を有する化合物とを反応させることにより得られる。当該重合条件は段落0015に記載した条件と同様であり、またカルボキシル基に対し反応性を有する化合物との反応条件としては、例えば従来公知の酸性・塩基性触媒の存在下または不存在下に100〜300℃程度で1〜20時間程度反応させるといった方法があげられる。なお、カルボキシル基に対し反応性を有する化合物は、所望の分子量、溶解性とするため、(b’)成分中の全カルボキシル基の20〜80%程度反応させることが好ましい。
【0018】
上記方法により得られる前記(b)成分および(b’)成分の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値であり、以後、重量平均分子量という場合はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値を示す)は4,000〜30,000程度である。前記重量平均分子量4,000より小さい場合ではポリエステル樹脂を所望の分子量とすることが困難であり、30,000より大きい場合では(a)成分や(c)成分と反応させる際の反応制御が難しくなるおそれがある。
【0019】
(a)〜(c)成分の合計仕込み量に対する(b)成分の仕込み量は、19〜77重量%程度とする。(b)成分が19重量%より少ない場合ではインキの適正な乳化率が得られにくく、また(b)成分が77重量%より多い場合では所望の分子量が得られにくい。
【0020】
(a)〜(c)成分の合計仕込み量に対する(b’)成分の仕込み量は、19〜77重量%程度とする。(b’)成分が19重量%より少ない場合ではインキの適正な乳化率が得られにくく、また(b’)成分が77重量%より多い場合では所望の分子量が得られにくい。
【0021】
前記(c)成分であるポリオールとしては、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの従来からロジン変性フェノール樹脂のポリオール成分として知られる各種のものを例示できる。樹脂の軟化点や分子量を適正に調整する観点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタンを使用するのが好ましい。
【0022】
(c)成分の使用量は特に制限されないが、ポリエステル樹脂の設計上、所望の分子量やインキの適正な乳化特性を与えるため、(a)〜(c)成分の各成分中の全水酸基当量数(OH)と全カルボキシル基当量数(COOH)の割合を、通常OH/COOH=0.50〜1.00程度となるように調整する。また(c)成分の仕込み量としては、(a)〜(c)成分の合計仕込み量に対して3〜11重量%程度とする。(c)成分が3重量%より少ない場合では所望の分子量が得られにくく、また(c)成分が11重量%より多い場合ではインキの適正な乳化特性が得られにくい。なお、前記OH/COOH(当量比)の計算においては、脂肪族モノアミン類を使用する場合、2級アミンは1価とみなし、また1級アミンは2価とみなし、当該アミノ基の当量数=当該OHの当量数とし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。また、脂肪族モノエポキシ類を使用する場合は2価アルコールとみなし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。
【0023】
前記(a)成分、(b)成分および(c)成分の反応条件;前記(a)成分、(b’)成分および(c)成分の反応条件は、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法を採用することができる。例えば、(a)成分、(b)成分および(c)成分を所定量ずつ反応装置に仕込み、従来公知の酸性・塩基性触媒の存在下または不存在下に230〜300℃程度で2〜20時間程度反応させる。各成分の反応順序は特に限定されず、いかなる順序で仕込んでもよい。たとえば、前記のように(a)成分、(b)成分および(c)成分を同時に仕込む方法、(a)成分の一部および(c)成分の反応物と、(a)成分の残り、(b)成分、必要に応じてさらに(c)成分を仕込む方法などがあげられる。前記(b)成分を(b’)成分とした場合も前記と同様の反応条件を採用することができる。また当該触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物を例示できる。
【0024】
前記反応方法を採用する場合、エステル化前および/またはエステル化途中でフタル酸やアジピン酸のようなジカルボン酸類を任意の割合で添加することにより、所望の分子量および軟化点に調節することもできる。
【0025】
前記反応方法によって得られる本発明の樹脂は、高軟化点を有する。軟化点は通常120〜200℃程度であり、好ましくは140〜200℃程度である。軟化点を120℃以上とすることによって乾燥性、セット性を良好に保つことができるためであり、またインキ用溶剤への溶解性を考慮すると200℃以下が適当であるからである。また本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、通常は30,000〜400,000程度であり、好ましくは50,000〜200,000の範囲である。30,000より小さい場合は所望の粘度が得られにくく、また400,000より大きい場合は高粘度となり安定製造が困難になる傾向があるためである。本発明の樹脂の溶解性は良好であり、芳香族成分を含まない石油系インキ用溶剤にも十分な溶解性を有している。また、本発明の樹脂は33重量%アマニ油粘度が4〜15Pa・sと高粘度である。こうして得られた本発明のポリエステル樹脂は、印刷インキ用バインダーとして有用である。
【0026】
本発明の印刷インキ用バインダーは、通常公知の方法により調整できるが、例えば以下の方法により調製される。本発明のポリエステル樹脂に、植物油、ゲル化剤、必要に応じて溶剤などを配合し、これを適宜に加熱溶解したり反応させることにより、ゲルワニスである印刷インキ用バインダーが調製される。前記印刷インキ用バインダーには得られる印刷インキの性能を損なわない限り、石油樹脂、アルキド樹脂、ロジンエステル、脂肪酸エステルなどを適宜に併用してもよい。ゲルワニス中のポリエステル樹脂固形分濃度は特に制限はされないが、印刷時の作業性等を考慮して適宜決定され、通常は20〜60重量%程度、好ましくは30〜50重量%程度である。また、当該ワニス粘度は、25℃でのコーン・アンド・プレート型粘度計測定値が通常10〜1000Pa・s程度の範囲に調整するのが実用的である。
【0027】
本発明の印刷インキ用バインダーの調製に用いる植物油としては特に制限されず、各種公知のものを使用できる。具体的にはアマニ油、桐油またはこれらの重合油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、大豆油などがあげられるが、印刷物の乾燥性の点から不飽和結合を有している植物油が好ましく、近年の環境対策面から考えると大豆油が特に好ましい。
【0028】
本発明の印刷インキ用バインダーの調製に用いるゲル化剤としては、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテートなど公知のものがあげられる。
【0029】
本発明の印刷インキ用バインダーの調製に用いる溶剤としては、沸点が200℃程度以上で芳香族炭化水素の含有率が1重量%程度以下である石油系溶剤であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。具体的には日石三菱(株)製0号ソルベント、日石三菱(株)製AF4号ソルベント、日石三菱(株)製AF5号ソルベント、日石三菱(株)製AF6号ソルベント、日石三菱(株)製AF7号ソルベントなどがあげられる。
【0030】
かくして得られた本発明の印刷インキ用バインダーであるゲルワニスには、黄色、紅色、藍色または黒色などの顔料、植物油および/または沸点が200℃程度以上で芳香族炭化水素の含有率が1%程度以下である石油系溶剤、さらに必要に応じてインキ流動性およびインキ表面皮膜を改良するための界面活性剤、ワックス、ドライヤー、その他添加剤が適宜配合される。ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの通常のインキ製造装置を用いて当該配合物を混練し、適切なインキ恒数に調節することにより、オフセット枚葉インキ(枚葉インキ)、オフセット輪転インキ(オフ輪インキ)、水なしオフセットインキなど所望の印刷インキが製造される。なお、印刷インキの製造の際に使用する本発明によるバインダーの配合量は、ポリエステル樹脂固形分濃度が10〜50重量%程度になるように配合するのが好ましい。
【0031】
印刷インキの種類としては、特にオフセット印刷インキ用として賞用しうるほか、新聞インキ、凸版印刷インキ、グラビア印刷インキにも好適に使用することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を使用しないため環境上好ましく、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する高分子量、高軟化点、高粘度、高溶解性を有するポリエステル樹脂を提供できる。また、本発明のポリエステル樹脂をオフセット印刷インキ用バインダーなどとして使用した場合には、印刷インキの乳化特性、光沢、乾燥性、ミスチングなどの印刷適性が従来公知のロジン変性フェノール樹脂と同等以上である為、今日の要求に合致する印刷インキを提供しうる。さらに当該ポリエステル樹脂を用いた印刷インキ用バインダー、大豆油および/または沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下である石油系溶剤、必要により添加剤からなる印刷インキを使用することにより、環境問題や作業環境など安全衛生面が改善できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはもとよりである。尚、以下「部」とは重量部を示した。
【0034】
製造例1(不飽和酸変性ロジンの製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、フマル酸267部を添加し、攪拌下に230℃まで昇温、1時間保温した後、冷却して固形樹脂(酸価:342.0)を得た。なお、当該酸価はJIS K5601に準じて測定したものである(以下、酸価は同様の方法にて測定した値を示した)。
【0035】
製造例2(70%レゾール型ノニルフェノールキシレン溶液の製造)
製造例1と同様の反応容器に、ノニルフェノール1,000部、パラホルムアルデヒド270部および水1,000部を仕込み、攪拌下に50℃まで昇温した。50℃において水酸化ナトリウム100部を仕込み、冷却しながら90℃まで徐々に昇温後、2.5時間保温し、硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、キシレン150部を加え、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部分を除去、冷却してレゾール型ノニルフェノールの70%キシレン溶液を得た。
【0036】
実施例1
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)449部、炭素数16〜18のα−オレフィン(商品名 ダイアレン168、三菱化学(株)製)63部、キシレン45部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら160〜170℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸42部とジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)5部を30分間連続的に添加し、160〜170℃で1時間保温した。こうして得られたポリマー(重量平均分子量:11,000)中に重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)398部仕込み、180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.80となるよう、ペンタエリスリトール24部およびグリセリン24部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったら、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂の脂肪族炭化水素系溶剤(商品名 0号ソルベント、日石三菱(株)製)溶液のトレランスは1.5g/g、酸価は15.1、軟化点は174℃、重量平均分子量は187,000であった(表1参照)。ここに、33重量%アマニ油粘度とは、樹脂とアマニ油を1対2重量比で加熱混合したものを日本レオロジー機器(株)製コーン・アンド・プレート型粘度計を用いて25℃で測定した粘度をいう(以下、粘度は同様の方法により測定した値を示した)。トレランス(溶解性の指標)とは、樹脂と0号ソルベントを1対1の重量比で加熱混合したものに25℃でさらに0号ソルベントを加えて白濁するまでに要した総溶剤重量に対する樹脂重量から算出した値である(以下、トレランスは同様の方法により測定した値を示した)。軟化点とは、JIS K5601に準拠する(以下、軟化点は同様の方法により測定した値を示した)。重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、HLC−8020)および東ソー(株)製TSK−GELカラムを用い、THF溶媒下で測定したポリスチレン換算によるものをいう(以下、重量平均分子量は同様の方法により測定した値を示した)。
【0037】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)441部、炭素数20〜28のα−オレフィン(商品名 ダイアレン208、三菱化学(株)製)81部、キシレン44部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら160〜170℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸41部とジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)5部を30分間連続的に添加し、160〜170℃で1時間保温した。こうして得られたポリマー(重量平均分子量:12,000)中に重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)391部仕込み、180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.80となるよう、ペンタエリスリトール23部およびグリセリン23部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったら、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0038】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)436部、炭素数10のα−オレフィン(商品名 ダイアレン10、三菱化学(株)製)33部、キシレン44部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら160〜170℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸41部とジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)5部を30分間連続的に添加し、160〜170℃で1時間保温した。こうして得られたポリマー(重量平均分子量:10,000)中にステアリルアルコール32部を添加、200℃まで昇温し、2時間保温した後、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)387部、製造例1より得られた樹脂24部仕込み、溶融させた。反応容器内の温度が180℃となったら、OH/COOH(当量比)=0.80となるよう、ペンタエリスリトール23部およびグリセリン23部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったら、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0039】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)437部、炭素数10のα−オレフィン(商品名 ダイアレン10、三菱化学(株)製)34部、キシレン44部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら160〜170℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸41部とジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)5部を30分間連続的に添加し、160〜170℃で1時間保温した。こうして得られたポリマー(重量平均分子量:10,000)中にオクタデシルアミン32部を添加、200℃まで昇温し、2時間保温した後、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)388部、製造例1より得られた樹脂25部仕込み、溶融させた。反応容器内の温度が180℃となったら、OH/COOH(当量比)=0.80となるよう、ペンタエリスリトール21部およびグリセリン21部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったら、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。なお、上記のOH/COOH(当量比)の計算においては、オクタデシルアミンは2価とみなし、当該アミノ基の当量数=当該OHの当量数とし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とした。
【0040】
実施例5
実施例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)448部、炭素数10のα−オレフィン(商品名 ダイアレン10、三菱化学(株)製)34部、キシレン45部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら160〜170℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸42部とジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)5部を30分間連続的に添加し、160〜170℃で1時間保温した。こうして得られたポリマー(重量平均分子量:10,000)中に1,2−エポキシオクタデカン41部を添加、200℃まで昇温し、2時間保温した後、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)397部仕込み、溶融させた。反応容器内の温度が180℃となったら、OH/COOH(当量比)=0.80となるよう、ペンタエリスリトール19部およびグリセリン19部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったら、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。なお、上記のOH/COOH(当量比)の計算においては、1,2−エポキシオクタデカンを2価アルコールとみなして、当該OH当量数を含めてOHの合計当量数とした。
【0041】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、ガムロジン552部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら230℃まで昇温して溶融させた。ついで、ペンタエリスリトール52部および酸化亜鉛2部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温し、酸価が20以下となるまで反応した。さらに230℃まで冷却した後、保温状態において製造例5より得られたレゾール型ノニルフェノールの70%キシレン溶液394部(固形分276部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
(ゲルワニスの調製A)
実施例1で得られた樹脂45部、大豆油10部および脂環族炭化水素系溶剤(商品名 AFソルベント7号、日石三菱(株)製)45部を180℃にて30分混合溶解しワニスを得た。このワニスを60℃まで冷却後、アルミキレート(商品名 ALCH、川研ファインケミカル(株)製)1.0部を加え、190℃まで昇温、1時間保温し、ゲルワニスを得た。実施例2〜5および比較例1で得られた各樹脂についても上記と同様にしてゲルワニスを調製した。
【0044】
(インキの調製A)
前記ゲルワニスを用いて表1に示した配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
【0045】
【表2】
上記配合に基づいてインキのタック値が6.5±0.5、フロー値が41.0±1.0となるよう適宜調整した。
【0046】
(インキの性能試験A)
タック値:インキ1.3mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間回転させ、値を読み取った。結果を表3に示した。
フロー値:インキ約2mlをスプレッドメーター(熊谷理機工業(株)製)の試料穴に入れ、インキの上面を固定板の上面と同一面になるようへらでかきとり、荷重板を落下させた。同心円状に広がったインキの1分後の直径値を読み取った。結果を表3に示した。
光沢:インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、20℃、65%R.H.にて24時間調湿し、60°−60°の反射率を光沢計により測定した。光沢は数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
乾燥性:インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、160℃の雰囲気中に2秒、4秒、6秒間それぞれ暴露し、指蝕によりべたつきの無い状態を乾燥として判断した。乾燥性は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
ミスチング:インキ2.6mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間、更に1800rpmで2分間回転させ、ロール直下に置いた白色紙上へのインキの飛散度を観察して評価を行なった。ミスチングは数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
乳化率:インキ3.9mlを動的乳化試験機(日本レオロジー機器(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、200rpmにて純水を5ml/分の速度で供給、このインキ中の水分量を赤外水分計測定した。乳化率は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
【0047】
【表3】
【0048】
(ゲルワニスの調製B)
実施例1で得られた樹脂45部、大豆油55部を180℃にて30分混合溶解しワニスを得た。このワニスを60℃まで冷却後、アルミキレート(商品名 ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.5部を加え、190℃まで昇温、1時間保温し、ゲルワニスを得た。実施例2〜5および比較例1で得られた樹脂についても上記と同様にしてゲルワニスを調製した。
【0049】
(インキの調製B)
前記ゲルワニスを用いて表3に示した配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
【0050】
【表4】
上記配合に基づいてインキのタック値が7.0±0.5、フロー値が34.0±1.0となるよう適宜調整した。
【0051】
(インキの性能試験B)
タック値:インキ1.3mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間回転させ、値を読み取った。結果を表5に示した。
フロー値:インキ約2mlをスプレッドメーター(熊谷理機工業(株)製)の試料穴に入れ、インキの上面を固定板の上面と同一面になるようへらでかきとり、荷重板を落下させた。同心円状に広がったインキの1分後の直径値を読み取った。結果を表5に示した。
光沢:インキ0.27mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、20℃、65%R.H.にて24時間調湿し、60°−60°の反射率を光沢計により測定した。光沢は数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
乾燥性:インキ0.27mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)を使用し、硫酸紙上に展色、その展色面に硫酸紙を重ねてC型乾燥試験機((株)東洋精機製作所製)にあて紙用硫酸紙が外側になるように回転ドラムに巻き付けた。おもりおよび押し圧歯車をあて紙用硫酸紙の上に静かに降ろし、ドラムを回転させ、押し圧歯車の歯形がほとんど移らなくなった時間を乾燥時間とする。乾燥性は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
ミスチング:インキ2.6mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間、更に1200rpmで2分間回転させ、ロール直下に置いた白色紙上へのインキの飛散度を観察して評価を行なった。ミスチングは数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
乳化率:インキ3.9mlを動的乳化試験機(日本レオロジー機器(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、200rpmにて純水を5ml/分の速度で供給、このインキ中の水分量を赤外水分計測定した。乳化率は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
【0052】
【表5】
【0053】
表3、5の結果より、本発明のポリエステル樹脂(実施例1〜5)を使用した印刷インキは、ロジン変性フェノール樹脂(比較例1)を使用した本発明の印刷インキと同等またはそれ以上の性能を有することが分かる。
Claims (5)
- (a)ロジン類12〜78重量%、(b)DCPD系重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーを反応させてなる重量平均分子量4,000〜30,000のポリマー19〜77重量%、ならびに(c)ポリオール類3〜11重量%を反応させてなる、軟化点120℃〜200℃、重量平均分子量30,000〜400,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダー。
- (a)ロジン類12〜78重量%、(b’)重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーを反応させてなるポリマーと当該ポリマーのカルボキシル基に対し反応性を有する炭素数6〜40の脂肪族モノアルコール、炭素数6〜40の脂肪族ジアルコール、炭素数6〜40の脂肪族モノアミン、炭素数6〜40の脂肪族モノエポキシからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを部分的に反応させてなる重量平均分子量30,000〜400,000のポリマー19〜77重量%、ならびに(c)ポリオール類3〜11重量%を反応させてなる、軟化点120℃〜200℃重量平均分子量30,000〜400,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダー。
- (a)ロジン類12〜78重量%、(b)DCPD系重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーを反応させてなる重量平均分子量4,000〜30,000のポリマー19〜77重量%、ならびに(c)ポリオール類3〜11重量%を反応させてなる、軟化点120℃〜200℃、重量平均分子量30,000〜400,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダーの製造方法。
- (a)ロジン類12〜78重量%、(b’)DCPD系重合性石油樹脂、不飽和カルボン酸類および炭素数10〜40の脂肪族不飽和炭化水素モノマーを反応させてなるポリマーと当該ポリマーのカルボキシル基に対し反応性を有する炭素数6〜40の脂肪族モノアルコール、炭素数6〜40の脂肪族ジアルコール、炭素数6〜40の脂肪族モノアミン、炭素数6〜40の脂肪族モノエポキシからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを部分的に反応させてなる重量平均分子量4,000〜30,000のポリマー19〜77重量%、ならびに(c)ポリオール類3〜11重量%を反応させてなる、軟化点120℃〜200℃、重量平均分子量30,000〜400,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダーの製造方法。
- 請求項1または2記載の印刷インキ用バインダー、顔料、ならびに植物油および/または沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1%以下である石油系溶剤を含有してなる印刷インキ。
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