JP4639448B2 - ポリエステル樹脂、その製造法、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂、その製造法、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキに関するものである。本発明により得られたポリエステル樹脂は印刷インキ用バインダーとして有用である。印刷インキの種類としては、特にオフセット印刷インキ用として賞用しうるほか、新聞インキ、凸版印刷インキ、グラビア印刷インキにも好適に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オフセット印刷インキ用バインダーとしては、高分子量、高軟化点、高粘度、インキ用溶剤に対する高溶解性などの諸性能を有し、印刷適性に優れることから、ロジン変性フェノール樹脂が用いられている。該樹脂はロジン類、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物およびポリオールを主原料としている。しかし、ロジン変性フェノール樹脂は、主原料の一つであるアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の製造時にホルムアルデヒド含有廃水が発生するため、近年、揮発性有機化合物(VOC)による大気汚染などの環境問題や作業環境の安全衛生面での問題が指摘されている。また、ロジン変性フェノール樹脂は、当該樹脂を用いた印刷インキの加熱乾燥工程でホルムアルデヒドが発生することも指摘されていた。
【0003】
このような状況下、有害なホルムアルデヒドを用いないオフセット印刷インキ用バインダーの開発が待望されている。これらロジン変性フェノール樹脂の諸問題を軽減させようとロジン変性フェノール樹脂の代わりに石油樹脂を用いる試みもなされているが、一般的に石油樹脂は分子量が低く、官能基を多く持つことができず、また3次元構造も少ないことに起因して、ゲル化能が低い、ミスチングが大である、光沢が不十分であるなど、印刷適性が不十分であり、そのため石油樹脂が単独でオフセット印刷インキ用バインダーに用いられることはない。
【0004】
また、上記対策として、ロジン系ポリエステル樹脂を用いるという方法も考えられたが、従来のロジン系ポリエステル樹脂は高軟化点ではあるものの分子量が低いためミスチングが悪い、極性基を多く含有しているため乳化適性が実用レベルでないなど、印刷適性が不十分であった。このようにオフセット印刷インキ用バインダーに対する要求性能は多岐に亘るため、これまでのところロジン変性フェノール樹脂以外の樹脂でこれら諸性能を満足することは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を原料とせず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する特性(高分子量、高軟化点、高粘度、高溶解性など)を有する樹脂、当該樹脂の製造方法、および印刷インキ用バインダー、更には従来公知のロジン変性フェノール樹脂を用いてなる印刷インキの印刷適性(乳化特性、光沢、乾燥性、ミスチングなど)と同等以上の印刷適性を有する印刷インキを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑みて、本発明者らはアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を原料とせず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する諸性能を有する樹脂を見出すべく鋭意検討を行なった。その結果、(a)ロジン類、(b)極性基含有石油樹脂、(c)脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類および脂肪族モノエポキシ類からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(d)ポリオール類を、特定比率で反応させることにより得られる特定のポリエステル樹脂が、前記目的に合致するものであること、また当該ポリエステル樹脂が各種印刷インキ用バインダー用途に好適であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)カルボキシル基を2個以上有するロジンを含有するロジン類12〜75重量%、(b)DCPD系石油樹脂と不飽和カルボン酸類をラジカル共重合またはエン付加反応させてなる、2個以上の極性基を有する極性基含有石油樹脂19〜66重量%、(c)全炭素数10〜40である脂肪族モノアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族ジアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族モノアミン類および全炭素数10〜40である脂肪族モノエポキシ類からなる群より選択される少なくとも1種3〜11重量%、ならびに(d)最長炭素鎖における炭素数が4以下の3価および/または4価のポリオール類3〜11重量%を(a)〜(d)成分の各成分中の全水酸基当量数と全カルボキシル基当量数の割合(OH/COOH)が、0.50〜1.00となるように反応させてなる軟化点120〜200℃、重量平均分子量30,000〜300,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダーに関する。また本発明は、当該印刷インキバインダーの製造方法、当該印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル樹脂からなる印刷インキバインダーは、(a)カルボキシル基を2個以上有するロジンを含有するロジン類(以下、(a)成分という)、DCPD系石油樹脂と不飽和カルボン酸類をラジカル共重合またはエン付加反応させてなる、2個以上の極性基を有する極性基含有石油樹脂(以下、(b)成分という)、(c)全炭素数10〜40である脂肪族モノアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族ジアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族モノアミン類および全炭素数10〜40である脂肪族モノエポキシ類からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(c)成分という)、ならびに最長炭素鎖における炭素数が4以下の3価および/または4価のポリオール類(以下、(d)成分という)を必須構成要件とし、これら成分を後述する特定の比率にて反応させることにより得られるものである。
【0009】
前記(a)成分であるロジン類とは、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加してなる安定化ロジンなどがあげられる。また、ディールスアルダー反応やエン反応などにより、前記天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加してなる不飽和酸変性ロジンなどがあげられる。
【0010】
前記の不飽和酸変性ロジンとしては、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、あるいはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられ、原料ロジン100重量部に対して不飽和カルボン酸を通常1〜30重量部程度を用いて変性されたものである。
【0011】
前記(a)成分の中でも、得られるポリエステル樹脂を高分子量化する観点から、分子中に2個以上のカルボキシル基を有するロジンを含有することが必須である。また、得られるポリエステル樹脂の高分子量の観点のみならず、高溶解および高軟化点とするためには、これら(a)成分の中でも、特に重合ロジンおよび不飽和酸変性重合ロジンを含有するものが好ましい。この場合、重合ロジンと不飽和酸変性重合ロジンの合計含有量が、(a)成分100重量部中で40重量部以上とされる。本発明では、(a)成分としては、前記各種のうち1種を単独で使用したり、2種以上を適宜に併用することもできる。(a)〜(d)成分の合計仕込み量に対する(a)成分の仕込み量は12〜75重量%が好ましい。(a)成分の含有量が12重量%より少なければ所望の分子量が得られにくく、また75重量%より多い場合では樹脂の溶解性が低く、しかもインキの適正な乳化率が得られにくいため好ましくない。
【0012】
前記(b)成分である極性基含有石油樹脂は、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンを原料とし、二重結合を有するDCPD系石油樹脂に、2個以上の極性基が付与されたものが該当する。また、二重結合を有するDCPD系石油樹脂としては、他の成分としてペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどのC5系原料、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどをC9系原料との共重合石油樹脂などであってもよく、これらは無触媒あるいはフリーデルクラフツ型触媒(カチオン重合)などを用いて製造される。
【0013】
(b)成分における極性基としては、カルボキシル基、水酸基などがあげられる。前記石油樹脂にカルボキシル基を付与する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、二重結合を有する前記石油樹脂とマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和ジカルボン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸類とをラジカル開始剤を使用してラジカル共重合させる方法や、前記石油樹脂へ前記不飽和カルボン酸をエン反応などにより付加させる方法などを採用できる。得られる印刷インキの耐ミスチング性の向上という観点からは、ラジカル共重合方法を採用するのがより好ましい。
【0014】
ラジカル共重合方法により(b)成分を製造する場合には、ラジカル開始剤や必要に応じて溶剤を使用する。ラジカル開始剤の種類は特に制限されず、各種公知のものを適宜に選択使用できる。具体的には、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水などの過酸化物などを使用できる。当該開始剤の使用量は、原料石油樹脂および不飽和カルボン酸類の総重量に対して、通常0.01〜10重量%の範囲内であり、好ましくは0.1〜5重量%である。反応温度も特に制限されないが、ラジカル開始剤の種類に応じて最適温度を適宜に決定すればよく、通常は室温〜200℃の範囲から適宜に設定できる。
【0015】
また、溶剤を使用する場合には、採用した共重合温度で、出発原料を溶解し、かつ反応生成物も溶解しうる溶剤を用いるのが好ましい。当該溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環系炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの脂肪族エステルなどが挙げられる。なお、原料である不飽和カルボン酸類に対して不活性であって、ラジカル重合を大きく阻害しない溶剤であれば、かかる具体例に限定されない。
【0016】
不飽和カルボン酸類の使用量としては、原料石油樹脂100重量部に対して1〜15重量部が好ましく、1重量部以上、15重量部以下の不飽和カルボン酸類を用いて原料石油樹脂を変性してなる(b)成分を使用した場合には、得られるポリエステル樹脂の分子量を好ましい範囲に容易に調整することができる。さらに好ましくは1〜10重量部である。
【0017】
また、前記の原料石油樹脂に対し、極性基として水酸基を付与することにより、(b)成分を得る場合にも、当該反応方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、▲1▼石油樹脂の二重結合へ水を付加したり、▲2▼シクロペンタジエンとアリルアルコールを熱重合することにより、所望の水酸基含有石油樹脂を収得できる。かかる水酸基含有石油樹脂に対して、当該水酸基の当量数より少ないカルボキシル基の当量数となる割合で、不飽和カルボン酸類とラジカル開始剤を使用してラジカル共重合させたり、エン付加反応させる方法などが容易に高分子量化できるため好ましい。当該不飽和カルボン酸類としては、段落0013に記載した各種の不飽和ジカルボン酸類や不飽和モノカルボン酸類が該当する。特に、得られる印刷インキの耐ミスチング性向上という観点からは、特にラジカル共重合方法を採用するのが好ましく、当該条件も段落0014〜0015に記載した反応条件と同様である。
【0018】
得られるポリエステル樹脂を高分子量化する観点から、前記(b)成分の中でも、分子内に2個以上の極性基を有する石油樹脂を含有するものである。これら極性基含有石油樹脂は、前記のもののうち1種を単独で使用することもできるが、2種以上の異なるものを併用することもできる。前記(b)成分の仕込み量は、(a)〜(d)成分の合計仕込み量に対して19〜66重量%とする。(b)成分の使用量が19重量%より少ない場合ではインキの適正な乳化特性が得られにくく、また66重量%より多い場合では所望の分子量が得られにくい。(b)成分の下限としては25重量%、上限としては50重量%とするのがさらに好ましい。
【0019】
前記(c)成分である脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類および脂肪族モノエポキシ類としては、下記の各種のものを例示できる。▲1▼全炭素数10〜40である脂肪族モノアルコール類、▲2▼全炭素数10〜40である脂肪族ジアルコール類、▲3▼全炭素数10〜40である脂肪族モノアミン類、▲4▼全炭素数10〜40である脂肪族モノエポキシ類などである。前記▲1▼の化合物の具体例としては、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ゲラニオール、ロジンアルコール、ビサボロール、ラノリンアルコールなどあげられる。前記▲2▼の化合物の具体例としては、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、ラノリンアルコール、ダイマー酸を水添したジオールなどあげられる。前記▲3▼の化合物の具体例としては、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオクタデセニルアミンなどあげられる。前記▲4▼の化合物の具体例としては、エポキシデカン、エポキシドデカン、エポキシテトラデカン、エポキシヘキサデカン、エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテルなどあげられる。
【0020】
(c)成分の仕込み量は、(a)〜(d)成分の合計仕込み量に対して3〜11重量%とする。(c)成分が3重量%より少ない場合では得られるポリエステル樹脂の溶解性が低く、また(c)成分が11重量%より多い場合では所望の分子量が得られにくい。(c)成分の下限としては5重量%、上限としては10重量%とするのがさらに好ましい。
【0021】
前記(d)成分であるポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタンなど当該分子の最長炭素鎖における炭素数が4以下のものである3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタンなど当該分子の最長炭素鎖における炭素数が4以下のものである4価アルコールを使用する。長炭素鎖を有しているポリオールを単独使用すると樹脂の軟化点が低くなり、また2価のポリオールを使用すると3次元構造がとりにくく、低分子量となるため、インキのミスチングや乳化率を適正に調整できない。
【0022】
(d)成分の使用量は、ポリエステル樹脂の設計上、所望の分子量やインキの適正な乳化特性を与えるため、(a)〜(d)成分の各成分中の全水酸基当量数(OH)と全カルボキシル基当量数(COOH)の割合を、通常OH/COOH=0.50〜1.00となるように調整する。また(d)成分の仕込み量としては、(a)〜(d)成分の合計仕込み量に対して3〜11重量%とする。(d)成分が3重量%より少ない場合では所望の分子量が得られにくく、また(d)成分が11重量%より多い場合ではインキの適正な乳化特性が得られにくい。なお、前記OH/COOH(当量比)の計算においては、(c)成分中の脂肪族モノアミン類のうち2級アミンは1価とみなし、また1級アミンは2価とみなし、当該アミノ基の当量数=当該OHの当量数とし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。また、(c)成分中の脂肪族モノエポキシ類は2価アルコールとみなし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。
【0023】
前記(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の反応条件は、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法を採用することができる。たとえば、(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分を所定量ずつ反応装置に仕込み、従来公知の酸性・塩基性触媒の存在下または不存在下に230〜300℃程度で2〜20時間程度反応させる。各成分の反応順序は特に限定されず、いかなる順序で仕込んでもよい。たとえば、前記のように(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分を同時に仕込む方法、(a)成分の一部および(c)成分の反応物に(a)成分、(b)成分ならびに(c)成分を仕込む方法、(b)成分および(c)成分の反応物に(a)成分ならびに(c)成分を仕込む方法、(a)成分の一部および(d)成分の反応物と、(b)成分および(c)成分の反応物、必要に応じて(a)成分や(d)成分を仕込む方法などがあげられる。また当該触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物を例示できる。
【0024】
前記反応方法を採用する場合、エステル化前および/またはエステル化途中でフタル酸やアジピン酸のようなジカルボン酸類を任意の割合で添加することにより、所望の分子量および軟化点に調節することもできる。
【0025】
前記反応方法によって得られる本発明の樹脂は、高軟化点を有する。軟化点は通常120〜200℃であり、好ましくは140〜200℃程度である。これは軟化点を120℃以上とすることによって乾燥性、セット性を良好に保つことができるためであり、またインキ用溶剤への溶解性を考慮すると200℃以下が適当であるからである。また本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、通常は30,000〜300,000の範囲であり、好ましくは50,000〜200,000の範囲である。30,000より小さい場合は所望の粘度が得られにくく、また300,000より大きい場合は高粘度となり安定製造が困難なためである。本発明の樹脂の溶解性は良好であり、芳香族成分を含まない石油系インキ用溶剤にも十分な溶解性を有している。また、本発明の樹脂は33重量%アマニ油粘度が4〜15Pa・sと高粘度である。こうして得られた本発明のポリエステル樹脂は、印刷インキ用バインダーとして有用である。
【0026】
本発明の印刷インキ用バインダーは、例えば以下の方法により調製される。本発明のポリエステル樹脂に、植物油、ゲル化剤、必要に応じて溶剤などを配合し、これを適宜に加熱溶解したり反応させることにより、ゲルワニスである印刷インキ用バインダーが調製される。前記印刷インキ用バインダーには得られる印刷インキの性能を損なわない限り、石油樹脂、アルキド樹脂、ロジンエステル、脂肪酸エステルなどを適宜に併用してもよい。ゲルワニス中のポリエステル樹脂固形分濃度は特に制限はされないが、印刷時の作業性等を考慮して適宜決定され、通常は20〜60重量%程度、好ましくは30〜50重量%程度である。また、当該ワニス粘度は、25℃でのコーン・アンド・プレート型粘度計測定値が通常10〜1000Pa・s程度の範囲に調整するのが実用的である。
【0027】
本発明の印刷インキ用バインダーの調製に用いる植物油としては特に制限されず、各種公知のものを使用できる。具体的にはアマニ油、桐油またはこれらの重合油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、大豆油などがあげられるが、印刷物の乾燥性の点から不飽和結合を有している植物油が好ましく、近年の環境対策面から考えると大豆油が特に好ましい。
【0028】
本発明の印刷インキ用バインダーの調製に用いるゲル化剤としては、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキサイド、アルミニウムジプロポキサイドモノアセチルアセテートなど公知のものがあげられる。
【0029】
本発明の印刷インキ用バインダーの調製に用いる溶剤としては、沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下である石油系溶剤であれば特に制限されず、公知のものを使用できる。具体的には日石三菱(株)製0号ソルベント、AF4〜7号ソルベントなどがあげられる。
【0030】
かくして得られた本発明の印刷インキ用バインダーであるゲルワニスには、黄色、紅色、藍色または黒色などの顔料、植物油および/または沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1%以下である石油系溶剤、さらに必要に応じてインキ流動性およびインキ表面皮膜を改良するための界面活性剤、ワックス、ドライヤー、その他添加剤が適宜配合される。ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの通常のインキ製造装置を用いて当該配合物を混練し、適切なインキ恒数に調節することにより、オフセット枚葉インキ(枚葉インキ)、オフセット輪転インキ(オフ輪インキ)、水なしオフセットインキなど所望の印刷インキが製造される。なお、印刷インキの製造の際に使用する本発明によるバインダーの配合量は、ポリエステル樹脂固形分濃度が10〜50重量%になるように配合するのが好ましい。
【0031】
印刷インキの種類としては、特にオフセット印刷インキ用として賞用しうるほか、新聞インキ、凸版印刷インキ、グラビア印刷インキにも好適に使用することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を使用しないため環境上好ましく、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する高分子量、高軟化点、高粘度、高溶解性を有するポリエステル樹脂を提供できる。また、本発明のポリエステル樹脂をオフセット印刷インキ用バインダーなどとして使用した場合には、印刷インキの乳化特性、光沢、乾燥性、ミスチングなどの印刷適性が従来公知のロジン変性フェノール樹脂と同等以上である為、今日の要求に合致する印刷インキを提供しうる。さらに当該ポリエステル樹脂を用いた印刷インキ用バインダー、大豆油および/または沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下である石油系溶剤、必要により添加剤からなる印刷インキを使用することにより、環境問題や作業環境など安全衛生面が改善できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはもとよりである。尚、以下「部」とは重量部を示した。
【0034】
製造例1(不飽和酸変性ロジンの製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ガムロジン1,000部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、フマル酸267部を添加し、攪拌下に230℃まで昇温、1時間保温した後、冷却して固形樹脂(酸価:342.0)を得た。なお、当該酸価はJIS K5601に準じて測定したものである(以下、同様)。
【0035】
製造例2(ロジンエステルの製造)
製造例1と同様の反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)1,000部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、ペンタエリスリトール43部を添加し、攪拌下に5時間かけて275℃まで昇温、酸価が70以下となるまで反応させた後、冷却して固形樹脂(酸価:69.5)を得た。
【0036】
製造例3(極性基含有石油樹脂の製造)
製造例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)1,000部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸70部を添加し、攪拌下に230℃まで昇温、3時間保温した後、冷却して固形樹脂(理論酸価:75、重量平均分子量:1,500)を得た。なお、当該理論酸価とは、使用原料のカルボキシル基当量数から算出したものである(以下、同様)。また、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、HLC−8020)および東ソー(株)製TSK−GELカラムを用い、THF溶媒下で測定したポリスチレン換算によるものをいう(以下、同様)。
【0037】
製造例4(極性基含有石油樹脂の製造)
製造例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)1,000部、キシレン100部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら150℃まで昇温して溶融させた。ついで、無水マレイン酸70部を仕込み、ジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)6部を30分間で連続的に添加、増粘抑制のため必要に応じてキシレンを追加し、150〜160℃で2.5時間保温した。保温後、キシレン除去のため200℃まで昇温し、0.02MPaで10分間減圧(増粘抑制のため必要に応じて230℃まで昇温)、冷却して固形樹脂(理論酸価:75、重量平均分子量:5,000)を得た。
【0038】
製造例5(70%レゾール型ノニルフェノールキシレン溶液の製造)
製造例1と同様の反応容器に、ノニルフェノール1,000部、パラホルムアルデヒド270部および水1,000部を仕込み、攪拌下に50℃まで昇温した。50℃において水酸化ナトリウム100部を仕込み、冷却しながら90℃まで徐々に昇温後、2.5時間保温し、硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、キシレン150部を加え、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部分を除去、冷却してレゾール型ノニルフェノールの70%キシレン溶液を得た。
【0039】
実施例1
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)353部、製造例1より得られた樹脂101部、製造例3より得られた樹脂426部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、ペンタエリスリトール22部、グリセリン22部および1,2−オクタデカンジオール76部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったら、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂の脂肪族炭化水素系溶剤(商品名 0号ソルベント、日石三菱(株)製)溶液のトレランスは1.4g/g、酸価は14.2、軟化点は168℃、重量平均分子量は103,000であった(表1参照)。ここに、33重量%アマニ油粘度とは、樹脂とアマニ油を1対2重量比で加熱混合したものを日本レオロジー機器(株)製コーン・アンド・プレート型粘度計を用いて25℃で測定した粘度をいう(以下、同様)。また、トレランス(溶解性の指標)とは、樹脂と0号ソルベントを1対1の重量比で加熱混合したものに25℃でさらに0号ソルベントを加えて白濁するまでに要した総溶剤重量に対する樹脂重量から算出した値である(以下、同様)。また、軟化点とは、JIS K5601に準拠する(以下、同様)。
【0040】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)353部、製造例1より得られた樹脂101部、製造例4より得られた樹脂426部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、ペンタエリスリトール22部、グリセリン22部および1,2−ヘキサデカンジオール76部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったらパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0041】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)355部、製造例1より得られた樹脂101部、製造例4より得られた樹脂429部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、ペンタエリスリトール22部、グリセリン22部および1,2−エポキシオクタデカン72部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったらパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。なお、上記のOH/COOH(当量比)の計算においては、1,2−エポキシオクタデカンを2価アルコールとみなして、当該OH当量数を含めてOHの合計当量数とした。
【0042】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に、製造例4より得られた樹脂420部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら200℃まで昇温して溶融させた。ついで、オクタデシルアミン58部を添加し、200℃で2時間保温後、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)348部、製造例1より得られた樹脂124部仕込み、溶融させた。その後、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、ペンタエリスリトール25部およびグリセリン25部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったらパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。なお、上記のOH/COOH(当量比)の計算においては、オクタデシルアミンは2価とみなし、当該アミノ基の当量数=当該OHの当量数とし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とした。
【0043】
実施例5
実施例1と同様の反応容器に、製造例4より得られた樹脂413部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら200℃まで昇温して溶融させた。ついで、イソステアリルアルコール57部を添加し、200℃で2時間保温後、製造例2より得られた樹脂370部、製造例1より得られた樹脂122部仕込み、溶融させた。その後、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、ペンタエリスリトール14部およびグリセリン29部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったらイソフタル酸8部、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0044】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、ガムロジン552部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら230℃まで昇温して溶融させた。ついで、ペンタエリスリトール52部および酸化亜鉛2部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温し、酸価が20以下となるまで反応した。さらに230℃まで冷却した後、保温状態において製造例5より得られたレゾール型ノニルフェノールの70%キシレン溶液394部(固形分276部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内に滴下した。滴下終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0045】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)464部、製造例1より得られた樹脂309部、製造例4より得られた樹脂116部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、ペンタエリスリトール46部、グリセリン46部およびイソステアリルアルコール19部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、酸価が30以下となったらパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応した。エステル化反応終了後、33重量%アマニ油粘度を8.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂のトレランス、酸価、軟化点および重量平均分子量を表1に示した。
【0046】
比較例3
実施例1と同様の反応容器に、重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価:140)109部、製造例4より得られた樹脂711部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、OH/COOH(当量比)=0.90となるよう、グリセリン15部およびイソステアリルアルコール164部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、エステル化中にゲル化した。また(a)成分を重合ロジンと製造例1(フマル化ロジン)との併用、あるいは(d)成分をグリセリンとペンタエリスリトールの併用とした場合、前記よりも短時間でゲル化した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1中、比較例1は従来技術としての印刷インキ用樹脂であるロジン変性フェノール樹脂を示し、比較例2は(a)〜(d)成分の合計仕込み量に対する(a)成分の仕込み量が75重量%を超えるポリエステル樹脂を示し、比較例3は(a)成分の仕込み量が12重量%に満たないポリエステル樹脂を示す。
【0049】
(ゲルワニスの調製A)
実施例1で得られた樹脂45部、大豆油10部および脂環族炭化水素系溶剤(商品名 AFソルベント7号、日石三菱(株)製)45部を180℃にて30分混合溶解しワニスを得た。このワニスを60℃まで冷却後、アルミキレート(商品名 ALCH、川研ファインケミカル(株)製)1.0部を加え、190℃まで昇温、1時間保温し、ゲルワニスを得た。実施例2〜5および比較例1〜2で得られた各樹脂についても上記と同様にしてゲルワニスを調製した。なお、比較例3ではゲル化したためゲルワニスを調製できなかった。
【0050】
(インキの調製A)
前記ゲルワニスを用いて表1に示した配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
【0051】
【表2】
上記配合に基づいてインキのタック値が6.5±0.5、フロー値が41.0±1.0となるよう適宜調整した。
【0052】
(インキの性能試験A)
タック値:インキ1.3mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間回転させ、値を読み取った。結果を表3に示した。
フロー値:インキ約2mlをスプレッドメーター(熊谷理機工業(株)製)の試料穴に入れ、インキの上面を固定板の上面と同一面になるようへらでかきとり、荷重板を落下させた。同心円状に広がったインキの1分後の直径値を読み取った。結果を表3に示した。
光沢:インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、20℃、65%R.H.にて24時間調湿し、60°−60°の反射率を光沢計により測定した。光沢は数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
乾燥性:インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、160℃の雰囲気中に2秒、4秒、6秒間それぞれ暴露し、指蝕によりべたつきの無い状態を乾燥として判断した。乾燥性は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
ミスチング:インキ2.6mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間、更に1800rpmで2分間回転させ、ロール直下に置いた白色紙上へのインキの飛散度を観察して評価を行なった。ミスチングは数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
乳化率:インキ3.9mlを動的乳化試験機(日本レオロジー機器(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、200rpmにて純水を5ml/分の速度で供給、このインキ中の水分量を赤外水分計測定した。乳化率は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
(ゲルワニスの調製B)
実施例1で得られた樹脂45部、大豆油55部を180℃にて30分混合溶解しワニスを得た。このワニスを60℃まで冷却後、アルミキレート(商品名 ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.5部を加え、190℃まで昇温、1時間保温し、ゲルワニスを得た。実施例2〜5および比較例1〜2で得られた樹脂についても上記と同様にしてゲルワニスを調製した。なお、比較例で3はゲル化したためゲルワニスを調製できなかった。
【0055】
(インキの調製B)
前記ゲルワニスを用いて表3に示した配合割合で3本ロールミルにより練肉して印刷インキを調製した。
【0056】
【表4】
上記配合に基づいてインキのタック値が7.0±0.5、フロー値が34.0±1.0となるよう適宜調整した。
【0057】
(インキの性能試験B)
タック値:インキ1.3mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間回転させ、値を読み取った。結果を表5に示した。
フロー値:インキ約2mlをスプレッドメーター(熊谷理機工業(株)製)の試料穴に入れ、インキの上面を固定板の上面と同一面になるようへらでかきとり、荷重板を落下させた。同心円状に広がったインキの1分後の直径値を読み取った。結果を表5に示した。
光沢:インキ0.27mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、20℃、65%R.H.にて24時間調湿し、60°−60°の反射率を光沢計により測定した。光沢は数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
乾燥性:インキ0.27mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)を使用し、硫酸紙上に展色、その展色面に硫酸紙を重ねてC型乾燥試験機((株)東洋精機製作所製)にあて紙用硫酸紙が外側になるように回転ドラムに巻き付けた。おもりおよび押し圧歯車をあて紙用硫酸紙の上に静かに降ろし、ドラムを回転させ、押し圧歯車の歯形がほとんど移らなくなった時間を乾燥時間とする。乾燥性は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
ミスチング:インキ2.6mlをインコメーター(東洋精機(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間、更に1200rpmで2分間回転させ、ロール直下に置いた白色紙上へのインキの飛散度を観察して評価を行なった。ミスチングは数値が大きいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
乳化率:インキ3.9mlを動的乳化試験機(日本レオロジー機器(株)製)上に展開し、ロール温度30℃、200rpmにて純水を5ml/分の速度で供給、このインキ中の水分量を赤外水分計測定した。乳化率は数値が小さいほど良好であることを示し、結果を表5に示した。
【0058】
【表5】
【0059】
表3、5の結果より、本発明のポリエステル樹脂(実施例1〜5)を使用した印刷インキは、ロジン変性フェノール樹脂(比較例1)を使用した本発明の印刷インキと同等またはそれ以上の性能を有することが分かる。また、(a)成分の仕込み量の点で本発明の数値限定の上限(75重量%)を超えるポリエステル樹脂(比較例2)を使用した印刷インキは、本発明の印刷インキと比較して、耐乳化性の点で劣っており、また(a)成分の仕込み量の点で本発明の数値限定の下限(12重量%)に満たないポリエステル樹脂(比較例3)はゲル化したため印刷インキとして評価できなかった。本発明の中でも、印刷適性の水準の点では、(b)成分としてラジカル共重合タイプのものを用いてなる樹脂(実施例2〜5)を使用した印刷インキは、(b)成分が付加反応タイプのものを用いてなる樹脂(実施例1)を使用した印刷インキと比較して、ミスチングや耐乳化性の点で一層優れることが分かる。
Claims (3)
- (a)カルボキシル基を2個以上有するロジンを含有するロジン類12〜75重量%、(b)DCPD系石油樹脂と不飽和カルボン酸類をラジカル共重合またはエン付加反応させてなる、2個以上の極性基を有する極性基含有石油樹脂19〜66重量%、(c)全炭素数10〜40である脂肪族モノアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族ジアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族モノアミン類および全炭素数10〜40である脂肪族モノエポキシ類からなる群より選択される少なくとも1種3〜11重量%、ならびに(d)最長炭素鎖における炭素数が4以下の3価および/または4価のポリオール類3〜11重量%を、(a)〜(d)成分の各成分中の全水酸基当量数と全カルボキシル基当量数の割合(OH/COOH)が、0.50〜1.00となるように反応させてなる軟化点120〜200℃、重量平均分子量30,000〜300,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダー。
- (a)カルボキシル基を2個以上有するロジンを含有するロジン類12〜75重量%、(b)DCPD系石油樹脂と不飽和カルボン酸類をラジカル共重合またはエン付加反応させてなる、2個以上の極性基を有する極性基含有石油樹脂19〜66重量%、(c)全炭素数10〜40である脂肪族モノアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族ジアルコール類、全炭素数10〜40である脂肪族モノアミン類および全炭素数10〜40である脂肪族モノエポキシ類からなる群より選択される少なくとも1種3〜11重量%、ならびに(d)最長炭素鎖における炭素数が4以下の3価および/または4価のポリオール類3〜11重量%を、(a)〜(d)成分の各成分中の全水酸基当量数と全カルボキシル基当量数の割合(OH/COOH)が、0.50〜1.00となるように反応させることを特徴とする軟化点120〜200℃、重量平均分子量30,000〜300,000のポリエステル樹脂からなる印刷インキ用バインダーの製造方法。
- 請求項1記載の印刷インキ用バインダー、顔料、ならびに植物油および/または沸点が200℃以上で芳香族炭化水素の含有率が1%以下である石油系溶剤を含有してなる印刷インキ。
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