JP2006160806A - 印刷インキ用樹脂、並びに当該樹脂を用いた印刷用インキ - Google Patents

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Abstract

【課題】 ホルムアルデヒドフリーであり、高軟化点、高分子量の印刷インキ用樹脂、並びに当該樹脂を用いた印刷特性に優れた印刷用インキを提供する。
【解決手段】 重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族モノカルボン酸及び多価アルコールを加熱反応させて得られる印刷インキ用樹脂であって、重合ロジンの軟化点が150℃以上であり、当該重合ロジン中の二量化ロジンの含有量が80重量%を越える印刷インキ用樹脂である。軟化点が150℃以上の重合ロジンを用いることで、従来の重合ロジンに比して出発原料の分子量を増大でき、その分だけα,β−不飽和カルボン酸類の添加量を大幅に削減しても、適正な高分子量、高軟化点のインキ用樹脂を調製できる。また、当該インキ用樹脂を用いることで印刷適性に優れた印刷インキを調製できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は印刷インキ用樹脂、並びに当該樹脂を用いた印刷用インキに関して、ホルムアルデヒドフリーで環境保全に適し、且つ、高軟化点、高粘度、高分子量、インキ溶剤への高溶解性を有して、ロジン変性フェノール樹脂を用いたインキに比しても遜色のないオフセット印刷適性並びに作業性を具備できるものを提供する。
オフセット印刷は、多様な印刷原版の印刷が可能である利点を持ち、その利点から、広く用いられている代表的な印刷方式である。このオフセット印刷方式には、熱によってインキを乾燥させるヒートセット式のオフセット輪転印刷と、乾性油を触媒に用いて硬化、乾燥させる枚葉式印刷の二種の方式がある。オフセット印刷に用いられるインキでは、それを構成する樹脂として、天然物であるロジンを、フェノール樹脂、特にレゾール樹脂で変性したロジン変性フェノール樹脂が広く用いられている。
このロジン変性フェノール樹脂は、ロジンを樹脂骨格中に有しているため、顔料との濡れ性が向上し、顔料が均一分散し易いという利点を有している。このロジンをフェノール樹脂で変性している理由は、ロジン自体は、高分子重合を起こさないモノカルボン酸類であるため、樹脂に必要な架橋構造を導入する必要があり、フェノール樹脂で変性することにより、架橋構造の導入を図ったものである。
さらに、フェノール樹脂の合成には、主原料のフェノール類とホルムアルデヒドを、アルカリ又は酸触媒を用いて反応させる方法が用いられている。そのため、ロジン変性フェノール樹脂の合成過程では、ホルムアルデヒドは合成上必須な構成成分となっている。また、フェノール樹脂、具体的には、レゾール樹脂には、ホルムアルデヒドに由来する末端メチロール基が存在している。
ところで、ヒートセット式のオフセット印刷では、印刷工程中、インキ乾燥などのように、インキにかなりの熱がかかる工程がある。この加熱に際して、ロジン変性フェノール樹脂中に未反応のホルムアルデヒドが僅かでも残存していると、ホルムアルデヒドの飛散が起こる可能性がある。また、例えば、レゾール樹脂の末端メチロール基に由来するホルムアルデヒドなどのように、樹脂骨格より遊離するホルムアルデヒドの飛散が起こる可能性も、必ずしも否定することはできない。
最近、化学物質過敏症はシックハウス問題等で大きな関心が寄せられているが、このホルムアルデヒドは化学物質過敏症を引き起こす原因物質の一つであるとの指摘がなされている。
上記の理由から、印刷インキに用いられる樹脂でも、ホルムアルデヒドの遊離を抑えた樹脂の使用が望まれ、その開発が急がれている。
ホルムアルデヒドの遊離を抑える手段としては、従来から検討と改良が進めらている幾つかの方法がある。例えば、ホルムアルデヒドを含有する樹脂系に、ホルムアルデヒド捕捉能を有する添加剤、いわゆるキャッチャーを添加する方法などである。また、発想の転換を図って、ホルムアルデヒドを合成過程で使用しない樹脂を用いることで、ホルムアルデヒド遊離の問題を回避することも考えられる。
しかしながら、前者のキャッチャーを添加する方法では、インキ化したとき、要望される作業性を保つように、添加率を調整するのは容易ではない。そもそも、キャッチャーの添加は、僅かに残留している未反応ホルムアルデヒドに対しては有効な手段であるが、レゾール樹脂の末端メチロール基が脱離することに由来するホルムアルデヒドなどのように、経時的に徐々に遊離してくるものに対しては、キャッチャーのみで捕捉すること自体、相当に難しい。
一方、後者のホルムアルデヒドを合成過程で使用しない樹脂への転換は、本質的な解決策ではあるが、現状では、インキ用樹脂としての特性を一応満足する樹脂ですら、限られた数しかない。インキ用樹脂では、顔料との濡れ性から、ロジンを含有することが好ましく、現状のホルムアルデヒドを合成過程で使用しない樹脂のうち、ロジンの多価アルコールエステル類のみが、特定用途のインキ用樹脂として使用されている。
このロジンと多価アルコールのエステル化反応により得られた樹脂は、高分子量化が不充分なため、一般にはα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物等の極性基を多く有した化合物を反応させて高分子量化を図っている。しかし、結果的に樹脂中に極性基を多く含むことになるため、インキ溶剤への溶解性が不充分であり、かつ樹脂の親水性が高くなるため、浸し水と乳化することでレオロジー変化を起こし、印刷機上での安定性が悪くなる等の弊害があり、実用レベルに到達していないのが現状である。
これまでに本発明者らはアルキルフェノールやホルムアルデヒドを原料として使用せず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する高軟化点、高分子量、高粘度といった特性を有する樹脂について鋭意検討してきた。
例えば、特許文献1では、ロジン類、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールとを加熱反応させて得られる印刷インキ用樹脂を開示している。しかし、当該樹脂は分子内に極性基を多く含むため、インキ溶剤に対する溶解性や、当該樹脂を用いたインキの乳化特性等が不充分であり、満足し得るレベルには到達していなかった。
また、特許文献2では、上記特許文献1の技術を基本として、一価の高級アルコールを併用することにより、インキ溶剤への溶解性が向上し、インキの光沢、濃度等の印刷適性は改良されるが、インキの乳化特性を大幅に向上させるまでには至らなかった。
一方、下記の特許文献3〜8では、ポリエステル樹脂の分子量や軟化点を高める目的で、重合ロジンを原料に使用したポリエステル樹脂が検討されている。
即ち、上記特許文献3には、(a)ロジン類、(b)極性基含有石油樹脂、(c)脂肪酸類及び脂肪族多塩基酸の少なくとも一種、(d)ポリオール類を反応させたポリエステル樹脂、並びに当該ポリエステル樹脂を用いたインキ用樹脂が開示されている。当該ロジン類(a)には重合ロジンが含まれ(同文献3の段落9)、脂肪酸類及び脂肪族多塩基酸(c)にはステアリン酸、リノール酸などのC10〜C40の脂肪酸、ダイマー酸などが含まれる。
上記特許文献4には、(A)樹脂酸、(B)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物、(C)ポリオール、(D)その他の脂肪酸を反応させてなるポリエステル樹脂が開示されている。当該樹脂酸(A)には重合ロジン(実施例1〜3では、ダイマー化率40%又は80%)が含まれ(段落14、段落39〜41参照)、その他の脂肪酸(D)にはステアリン酸、リノール酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸などが含まれる(段落20参照)。また、重合ロジンを含む樹脂酸(A)と不飽和カルボン酸類(B)の重量比は、(インキ溶剤に対する溶解性の低下を抑制する見地から、)A/B=80/20〜97/3である(段落17参照)。
上記特許文献5には、(イ)重合ロジン、(ロ)不飽和二塩基酸、(ハ)多価アルコール、(ニ)多官能アクリレートを反応させて得られる、軟化点が120〜220℃、重量平均分子量が2万〜30万のオフセットインキ用樹脂が開示されている。当該重合ロジン(イ)の軟化点は概略80〜140℃、ダイマー化率は概略20〜80%であり(段落7参照)、不飽和二塩基酸(ロ)は重合ロジン100重量部当たり概略0.5〜10重量部とするのが望ましいことが記載されている(段落8参照)。実施例1〜2で使用する重合ロジンの軟化点は140℃、ダイマー化率は80%である(段落17〜18参照)。
上記特許文献6には、少なくとも二量化ロジンを20〜80重量%含有するロジン類(a)と、炭化水素樹脂類(b)と、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその無水物(c)と、多価アルコール(d)との反応生成物を含有するインキワニスが開示されている。当該ロジン類(a)は二量化ロジン、二量化ロジンを含む重合ロジンなどである。二量化ロジンの含有量が上記上限(80重量%)を越える場合には、得られるワニスの粘度が上昇して、インキの流動性の低下、印刷物のインキに締まり現象、紙むけなどが生じることが記載されている(段落11参照)。尚、インキ用樹脂の軟化点は150〜180℃であり、重量平均分子量は1万〜10万である(同文献6の請求項5、段落18参照)。
上記特許文献7は本出願人が提案したもので、重合ロジンとダイマー酸を含む混合物に多価アルコールを特定当量反応させることで、エステル化反応物の樹脂骨格中に長鎖アルキルをペンダント状に導入し、極性を最適に制御できるポリエステル樹脂を開示している(段落18参照)。当該重合ロジンは、通常、軟化点90〜140℃、酸価は140〜160のものをいい(段落20)、実施例では、中国桂林化工廠の重合ロジン#140(酸価148)をマレイン化変性したもの(実施例1〜2)や石油樹脂と併用したもの(実施例3)を使用している(段落47、54〜56参照)。また、不飽和多塩基酸の重量は重合ロジンに対して7重量%以下、好ましくは1〜7重量%である(段落27参照)。
上記特許文献8には、(イ)重合ロジン、(ロ)植物油、植物油脂肪酸、その他の高級脂肪酸、(ハ)不飽和二塩基酸、(ニ)多価アルコールを反応させて得られる、軟化点120〜220℃、重量平均分子量5千〜5万のオフセット印刷用のインキが開示されている。当該重合ロジンは概略、軟化点80〜140℃、ダイマー化率20〜80%であり(段落7参照)、合成例1では、重合ロジン(軟化点140℃、ダイマー化率80%)720部に無水マレイン酸120部を添加している(段落17参照)。
特開2001−11164号公報 特開2001−164169号公報 特開2001−139670号公報 特開2000−212493号公報 特開2002−309146号公報 特開2003−268283号公報 特開2000−159867号公報 特開2004−300400号公報
以上のように、上記特許文献3〜8は、概ね、軟化点140℃までの従来の重合ロジンを使用している。従って、高分子量、高粘度、高軟化点のインキ用樹脂を得るためには、α,β−不飽和カルボン酸等の極性基を多く含む化合物が多量に必要となる。このため、インキ溶剤に対する溶解性が低くなり、光沢、印刷濃度、乳化適正といった印刷適性を満足するレベルには達していなかった。
本発明は、ホルムアルデヒドを合成過程で使用せず、インキ調製用に好適な高軟化点、高粘度、高分子量、高溶解性を有する印刷インキ用樹脂、並びに、当該樹脂を用いて調製される広い用途で優れた印刷特性を有する印刷用インキを提供することを技術的課題とする。
本発明者らは、重合ロジンを用いることで分子内にロジン骨格を保持しながら、且つ、樹脂に必要な架橋構造を有し、高軟化点、高粘度、高分子量、高溶解性を有する新規なインキ用樹脂を合成すべく鋭意研究を重ねた結果、重合ロジンとして軟化点が150℃以上で、且つ、二量化ロジンの含有量(即ち、ダイマー化率)が80重量%を越える特定のものを選択することで、従来高分子量化に必要とされていたα,β−不飽和カルボン酸類、多塩基酸等の使用量が大幅に削減でき、これらを多価アルコールと加熱反応させて得られる生成物は、インキ調製用樹脂に好適な高軟化点、高粘度、高分子量、高溶解性を具備することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族モノカルボン酸及び多価アルコールを加熱反応させて得られる印刷インキ用樹脂であって、
重合ロジンの軟化点が150℃以上であり、当該重合ロジン中の二量化ロジンの含有量が80重量%より多いことを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明2は、上記本発明1において、加熱反応に際して、さらに脂肪族多塩基酸及び/又は炭化水素樹脂を添加することを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、加熱反応で得られる印刷インキ用樹脂におけるエステル結合の指標としての極性基価が130〜160であることを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、重合ロジン100重量部に対するα,β−不飽和カルボン酸類の添加量が1〜8重量部であることを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、脂肪族モノカルボン酸がC10以上の直鎖状又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸であることを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明6は、上記本発明2〜5のいずれかにおいて、脂肪族多塩基酸がC2以上の直鎖アルカン二酸又はその無水物であることを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明7は、上記本発明2〜6のいずれかにおいて、重合ロジンなどの反応物全量に対して炭化水素樹脂を5〜30重量%添加することを特徴とする印刷インキ用樹脂である。
本発明8は、上記本発明1〜7のいずれかの印刷インキ用樹脂、乾性油、溶剤及び顔料を必須成分として含有する印刷用インキである。
(1)上記特許文献3、5、7〜8などに見るように、従来の軟化点が140℃以下の重合ロジンでは、インキ用樹脂を適正に高分子量化し、高軟化点化するには、α,β−不飽和カルボン酸類の添加量を多くする必要があった。その結果、インキ用樹脂の分子内にエステル結合数が多くなって極性が上がる(親水性が上がる)ため、インキ溶剤への溶解性や、乳化性が悪化するという弊害があった。
これに対して、本発明では、軟化点が150℃以上でダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンを用いることにより、従来のような低軟化点の重合ロジンに比して出発原料の分子量を増大できるため、その分だけα,β−不飽和カルボン酸類の添加量を大幅に削減して、インキ用樹脂中のエステル結合数を適正範囲に調整できるため(つまり、本発明3の極性基価を適正化できるため(後述の試験例参照))、高分子量、高軟化点で、インキ溶剤への溶解性や乳化性に優れたインキ用樹脂を製造できる。
この結果、本発明のインキ用樹脂は、従来より汎用されて来たロジン変性フェノール樹脂に比しても樹脂特性に遜色はなく、オフセット印刷用インキの調製に際して、ロジン変性フェノール樹脂からの代替が容易になる。
また、本発明の樹脂で調製した印刷インキにおいては、これまでのエステル樹脂での課題であった乳化性、乾燥性などの印刷適性をバランス良く改善でき、従来のロジン変性フェノール樹脂を用いた印刷インキに比しても、なんらの遜色もないオフセット印刷特性、作業性を具備できる。
(2)本発明の印刷インキ用樹脂は、ホルムアルデヒドなどの揮発性が高く、化学物質過敏症を誘起する物質を含まず、また、樹脂内には合成により導入されたメチロール基も含まないため、加熱などによりホルムアルデヒドが遊離・発生する恐れはない。
即ち、本発明の印刷インキ用樹脂は、いわゆるホルムアルデヒドフリーであり、環境保全、労働衛生に資する。
本発明は、第一に、軟化点が150℃以上で、且つ、ダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンを用いて、当該重合ロジンと、α,β−不飽和カルボン酸類と、脂肪族モノカルボン酸と、多価アルコールとを混合し、加熱反応により得られる高軟化点、高分子量、高粘度、高溶解性を有する印刷インキ用樹脂であり、第二に、当該インキ用樹脂を用いて調製した印刷用インキである。
上記加熱反応に際しては、必要に応じてさらに、脂肪族多塩基酸や炭化水素樹脂を混合して加熱反応させても良い。また、α,β−不飽和カルボン酸は重合ロジン100重量部に対して1〜8重量部の少なめに反応させることが好ましい。
本発明は、軟化点が150℃以上でダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンを必須成分として用いることに特徴がある。
一般に、重合ロジンはガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、又はこれらの混合物を酸触媒存在下で二量化反応し、必要に応じて、低分子量物質や未反応ロジン等を蒸留除去して製造される。
前記特許文献3〜8にも示す通り、市販の重合ロジンの軟化点は概ね90〜140℃であり、製品中の二量化ロジンの含有率は約20〜80重量%である。
これに対して、本発明で用いる重合ロジンは軟化点が150℃以上であり、且つ、二量化ロジンの含有量が80重量%より多いものである。当該重合ロジンは、上記一般製法で得られる重合ロジンを蒸留などの操作により、さらに軟化点を高め、二量化ロジンの含有量を高めることで得られる。
即ち、市販の重合ロジンを再蒸留して軟化点を150℃以上に調整したり、或は、市販品ではなく上記ロジン類を出発原料として一貫製造することによって得られる。軟化点は蒸留温度、真空度を任意に調整し、低分子量物質や未反応ロジン等の留出量をコントロールすることで、容易に調整できる。
蒸留操作では、粗反応物から低分子量物質や未反応ロジンが除去され、重合ロジン中のダイマー化率が増して、概ね重合ロジンの軟化点が高まるが、具体的な蒸留方法としては、従来の真空下におけるフラッシュ蒸留や水蒸気蒸留が適用でき、被蒸留物質の熱履歴や生産性等を考慮すれば、薄膜式蒸留が好ましい。
また、重量ロジン中のダイマー化率の測定は、例えば、GPC測定で得られた分子量分布図から二量化ロジン分画とその他分画の割合(面積比)に基づいて算出する。
本発明で使用する重合ロジンの軟化点は150℃以上である必要があるが、好ましくは150℃〜185℃である。また、重合ロジンのダイマー化率は80重量%を越える必要があるが、好ましくは85〜95重量%である。
本発明において、軟化点が150℃以上で、ダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンを必須成分として用いる理由は、次の通りである。
従来、インキ樹脂の軟化点及び分子量を上げるには、共役二重結合を有するロジン類と、α,β−不飽和カルボン酸類との間でディールズ・アルダー反応等の付加反応を行い、さらに多価アルコールを加えてエステル化する方法が採られるが、インキ樹脂を適正に高分子量化し、高軟化点化するには、α,β−不飽和カルボン酸類の添加量を多く設定する必要がある。その結果、分子量や軟化点は充分に高くなるが、樹脂の分子内にエステル結合が多くなって極性が上がるため、インキ溶剤への溶解性が低下し、乳化性が悪化するという弊害が生じる。
本発明では、軟化点が150℃以上で、ダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンを用いることで、従来の低軟化点の重合ロジンに比して分子量が大きい分だけα,β−不飽和カルボン酸類の添加量を大幅に削減できるため、エステル結合が低減し、上記弊害を解消することができる。
本発明のα,β−不飽和カルボン酸類は、アルダーのエン反応又はディールズ・アルダー反応において使用される種々のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物を用いることができる。なかでも、炭素数3〜5の鎖状α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸又はその無水物、或は、前記鎖状α,β−不飽和モノカルボン酸の炭素−炭素二重結合を共役し得る芳香環が置換している、置換鎖状α,β−不飽和モノカルボン酸が好ましい。
具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、クロトン酸、(無水)シトラコン酸、或はケイ皮酸等が挙げられる。
上述のように、本発明では、特定の軟化点と二量化ロジン含量を有する重合ロジンを用いることで、α,β−不飽和カルボン酸類の添加量を大幅に削減することができる。
従って、本発明4に示すように、重合ロジン100重量部に対するα,β−不飽和カルボン酸類の添加量は1〜8重量部と少なめが適当であり、3〜6重量部程度がより好ましい。
本発明の脂肪族モノカルボン酸は、主として、多価アルコールとエステル結合を形成して、樹脂末端構造を形成し、溶剤との相溶性、インキの流動性を確保するために用いる。従って、種々の脂肪族モノカルボン酸を利用できるが、炭素鎖10以上の直鎖状又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸(飽和或は不飽和酸を包含する)が好ましい。
具体的には、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の直鎖飽和脂肪酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸等の直鎖モノエン不飽和脂肪酸、リノール酸、共役リノール酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、アラキドン酸等の直鎖ポリエン不飽和脂肪酸、イソステアリン酸等の分岐飽和脂肪酸、リシノール酸等の含酸素脂肪酸等が挙げられ、好ましくはステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸などである。
また、脂肪族モノカルボン酸には、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、サンフラワー油脂肪酸、牛脂脂肪酸などの乾性油、又は半乾性油系の脂肪酸(即ち、混合脂肪酸)を使用することができる。
本発明の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロプレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、D-ソルビトール等が挙げられる。
出発原料である多価アルコールは、インキ用樹脂形成のエステル化反応に使用されるものである。
上記特定の重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族多塩基酸は多価アルコールとエステルを形成し、樹脂に架橋構造が導入される。さらに、残存するヒドロキシル基と脂肪族モノカルボン酸がエステルを形成することにより、樹脂の末端構造が形成され、未反応ヒドロキシル基が少なくなり、樹脂の極性が低減してインキ化にとって好ましいものとなる。
この場合、多価アルコールの添加量は、上記特定の重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族モノカルボン酸、或はさらに下記の脂肪族多塩基酸が有するカルボキシル基1当量に対して、少なくとも0.3当量〜過剰量を添加すれば良く、より好ましくは0.5〜1.5当量である。また、上記2種類のエステル化反応が作用することから、カルボキシル基1当量に対する多価アルコールの添加量は、概ねこの二種類のエステル化反応に要する量である0.9〜1.2当量にするのが一層好ましい。
さらに、エステル化反応により、樹脂に架橋構造が導入される点を考慮すると、多価アルコールは、ジオールのみではなく、3価アルコール以上の多価アルコールを含むものを用いると、そこに架橋構造の形成がなされるので、より好ましい結果が得られる。
加熱反応を行う際には、エステル化反応に対する触媒となる水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウムなどの2価金属化合物、或は、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等の公知の酸触媒を添加することが好ましい。
前記の触媒として添加する化合物のうちでも、得られる樹脂の粘度をより高くする上では、上記特定の重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族多塩基酸、脂肪族モノカルボン酸、多価アルコールの重量総和に対して、0.1%〜2%程度添加するのが好ましい。
本発明の脂肪族多塩基酸は、主として、多価アルコールとエステル結合を形成して、樹脂の架橋構造の一部となる。当該脂肪族多塩基酸は種々のものが利用できるが、本発明6に示すように、炭素数2以上の直鎖アルカン二酸又はその無水物が好ましく、例えば、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸並びにこれらの無水物である。より好ましくはC2〜C32の直鎖アルカン二酸類であり、例えば、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などである。
これらの脂肪族多塩基酸を分子内に含むことで、インキ溶剤への溶解性が向上し、長鎖の炭素鎖を有する脂肪酸、多塩基酸においては、長鎖になるほど親油性が増し、インキ溶剤への溶解性がさらに増す。
本発明では、印刷インキ用樹脂を製造する加熱反応に際して、インキ調製時のインキ溶剤への溶解性を増す目的で、さらに炭化水素樹脂を添加することができる。
炭化水素樹脂の添加量は重合ロジンなどの反応物全量に対して5〜30重量%が好ましく(本発明7参照)、より好ましくは7〜30重量%である。添加量が5重量%より少ないと、得られた樹脂のインキ溶剤への溶解性の改良効果が不充分になり、30重量%を越えると、インキ化した際の乾燥性やミスチングに問題が生じる恐れがある(後述の実施例4参照)。
上記目的では、主に、石油分解油留分から得られる低分子量の熱可塑性炭化水素樹脂や、テレピン油中のα−ピネン、β−ピネン、リモネン等を無水塩化アルミニウム触媒等でカチオン重合して得られるテルペン樹脂が好ましく、さらには、石油化学において副産物として得られる石油副生成物樹脂、コールタール樹脂等も有効である。これらの炭化水素樹脂、並びに石油副生成物樹脂やコールタール樹脂は、その特徴的な構成成分により、例えばインデン系、クマロン系、ビニルトルエン系、α−メチルスチレン系、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン系、ペンテン系、ペンタジエン系、ピネン系、パラメンタンジエン系などと称される。
本発明では、これらの炭化水素樹脂を単用又は併用できる。
さらに、炭化水素樹脂として前記の極性基を有しない炭化水素樹脂に加えて、極性基を有する炭化水素樹脂を用いることも可能である。
この極性基を有する炭化水素樹脂としては、例えば、インデン系、クマロン系、ビニルトルエン系、α−メチルスチレン系、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン系、ペンテン系、ペンタジエン系、ピネン系、パラメンタンジエン系等の分子内に二重結合を有する炭化水素樹脂にカルボキシル基や水酸基等の極性基を導入したものが挙げられる。炭化水素樹脂に極性基を導入する方法を説明すると、カルボキシル基の導入法として、マレイン酸変性、フマル酸変性、アクリル酸変性等のカルボン酸変性が挙げられ、また、水酸基の導入法として、フェノール変性等が挙げられる。極性基を導入する際に利用する変性の種類についてはこれらに限定されるものではない。
本発明では、これらの極性基を有する炭化水素樹脂を単用又は併用することもできる。さらには、上記未変性の炭化水素樹脂と極性基を有する炭化水素樹脂を併用することもできる。
炭化水素樹脂の添加時期は、加熱反応後、冷却すると本発明の印刷インキ用樹脂は、粘度が高く、均一な混合を行うには、多くの労力を要するので、予め加熱反応を行う際に添加すると良い。即ち、上記の樹脂原料を反応容器に入れる際に、炭化水素樹脂を加えることができる。
尚、加熱反応中、或は、加熱反応後に炭化水素樹脂を添加しても、得られる樹脂組成物の特性は、実質的に差異を与えるものでない。
前述したように、本発明では、特定の軟化点及びダイマー化率を有する重合ロジンを用いることにより、加熱反応で得られる印刷インキ用樹脂の軟化点や分子量を高く確保しながら、樹脂中のエステル結合数を適正化し(従来の樹脂より低減し)、樹脂のインキ溶剤への溶解性や乳化性を良好に保持することを特徴とする。
この場合、得られた印刷インキ用樹脂のインキ溶剤への溶解性や乳化性は、樹脂中のエステル結合を主とする極性基の割合に影響されるため、インキ用樹脂中の極性基価を目安としてその適否が判断できる。
本発明では、インキ用樹脂の反応物には、重合ロジンや植物油脂肪酸のような分子量が特定困難な混合物が含まれるため、エステル結合数を測定する代わりに、便宜上、樹脂の酸価、水酸基価、エステル基価を合算した概念である極性基価により、樹脂特性を判断することになる。
即ち、インキ用樹脂の極性基価は、エステル化反応が完全に進行するものと仮定した場合に、インキ用樹脂1g中の極性基をKOHのmg数に換算した数値であり、酸が過剰の場合には、極性基価はCOOHとエステル(酸価とエステル価)の合計、アルコールが過剰の場合には、極性基価はOHとエステル(水酸基価とエステル価)の合計で表され、また、理論的に酸とアルコールが当量ある場合には、極性基価はエステル価に相当することから、極性基価は概ねエステル結合の指標としての性格を有する。
換言すると、樹脂の極性基価は、樹脂の製造に直接関与する原料全体の酸価(又は水酸基価)を原料の総仕込量で割った数値であり、酸、アルコールの含有割合により、下記(a)〜(c)に分けて示すことができる。但し、上記原料には、重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族モノカルボン酸、多価アルコールのみならず、脂肪族多塩基酸や炭化水素樹脂も当然に含まれる(つまり、原料が脂肪族多塩基酸や炭化水素樹脂を含めた全体(本発明2参照)であり、或は、これらを除いた原料(本発明1参照)であることを問わず、極性基価の測定対象になる)。
(a)原料中、酸(COOH)が過剰の場合(OH/COOH < 1)
極性基価=原料全体の酸価/総仕込量
(b)原料中、アルコール(OH)が過剰の場合(OH/COOH > 1)
極性基価=原料全体の水酸基価/総仕込量
(c)酸(COOH)とアルコール(OH)が当量の場合には、酸価、水酸基価のどちらを用いても同じ数値になる。
上記酸価と水酸基価の具体的な測定においては、前述のように、反応物には分子量が特定困難な混合物が含まれ、理論値では対応できないため、酸価はJIS K5601に、また、水酸基価はJIS K0070に準じた各実測値とする。
インキ用樹脂の極性基価を適正化して、当該樹脂のインキ溶剤への溶解性や乳化性などを良好に確保する見地から、極性基価は130〜160が好ましく(本発明3参照)、この範囲内で必要なインキ性能(下記の通り、乳化やミスチング性などの良好な確保)に応じて調整できる。極性基価が130より低いとインキ溶剤への相溶性は良くなるが、分子量が低くなる傾向にあり、インキ化に際して乾燥性やミスチングに問題が生じる。また、極性基価が160を越えると樹脂の分子量は高くなるが、インキ溶剤への相溶性が悪くなり、乳化適正に問題が生じる。
上記インキ用樹脂を得るための加熱反応においては、その反応温度は、100〜290℃の範囲に選択するのが適当であり、特に、200〜270℃の範囲がより好ましい。尚、加熱反応温度は、用いられる原料とその組成に応じて、上記の好適な範囲と実質的に差異のない温度を選択することもできる。最適な反応時間は、原料中の上記特定の重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族多塩基酸、脂肪族モノカルボン酸、多価アルコールの各成分比率、さらには、触媒として添加される亜鉛、マグネシウム、カルシウムの酸化物、水酸化物等の量に依存して変化するが、前記の温度範囲においては、通常、2〜20時間の範囲が適当であり、好ましくは3〜10時間の範囲である。
本発明の印刷インキ用樹脂は、軟化点が150℃以上でダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンと、α,β−不飽和カルボン酸類と、脂肪族モノカルボン酸と、多価アルコールとを混合し、或は、さらに脂肪族多塩基酸や炭化水素樹脂を混合して加熱反応により得られる高軟化点、高分子量、高粘度、高溶解性の樹脂である。
この加熱反応では、次の二種の反応が進行し、樹脂内に架橋構造が導入されたものとなる。
即ち、加熱を行うと、α,β−不飽和カルボン酸類は、不飽和結合を有しているロジン類と、アルダーのエン反応又はディールズ-アルダー反応等の付加反応を行い、α,β−不飽和カルボン酸とロジン類との付加体を生成する。この付加体は、分子内に、3以上のカルボキシル基を有することになる。
次いで、この付加反応に加え、系内に存在する多価アルコール、脂肪族多塩基酸、脂肪族モノカルボン酸とエステル化反応を行わせることにより、樹脂が架橋構造を形成することができ、分子量の増大がなされる。この場合、前述したように、脂肪族モノカルボン酸は残存するヒドロキシル基とエステル化反応して、樹脂の末端構造を形成する。
得られる樹脂組成物は、架橋構造を有する高い分子量となり、それに伴い樹脂粘度も高くなる。
また、加熱反応時に発生する泡を消泡する目的で、シリコン系の消泡剤を添加することもできる。加えて、上記混合物に、印刷インキに使用可能な溶剤類、例えば、0号ソルベント(新日本石油化学(株)製)、AFソルベント(新日本石油化学(株)製)等、テレピン油等を適宜添加できる。これら溶剤類の添加により、反応終了時に樹脂を反応釜から取り出す際、その作業が容易となる。この消泡剤や、溶剤等の付加的な添加剤については、エステル化反応時においても適宜添加することは可能である。
そこで、特定の重合ロジンを初めとする各種成分を加熱反応して得られた本発明の印刷インキ用樹脂を用いて、オフセット印刷用インキを調製する方法を以下に説明する。
本発明8に示すように、オフセット印刷用インキは、本発明の印刷インキ用樹脂、乾性油、溶剤及び顔料を必須成分として含み、これらを混練して得られる。
上記顔料は、被印刷物に色付けを行うためのもので、所望の色とするため、黄色、紅色、藍色又は黒色等の顔料が適宜選択される。
この場合、本発明の印刷インキ用樹脂は、原料の重合ロジン類に由来する炭素骨格を保持するため、顔料との優れた濡れ性を保持して、顔料を均一に分散させることができる。従って、従来のロジン変性フェノール樹脂を用いたインキに利用される顔料を同様に使用することができる。
上記乾性油は、例えば、アマニ油、桐油等が挙げられる。また、半乾性油である大豆油等を前記乾性油に代えて用いることもできる。これらは、ドライヤーと呼ばれる触媒によって、印刷後に乾性油同士が重合し、皮膜が硬化する。従って、インキを調製する際、前記乾性油の種類と添加量に合わせて、適合するドライヤー、例えば、ナフテン酸マンガン溶液などを適量添加することもできる。
上記溶剤は、インキ粘度の調整と印刷後のインキ乾燥性を早めるために添加される。
本発明では、従来のロジン変性フェノール樹脂を用いるインキに利用されていた溶剤を、そのまま利用することができる。好適に利用できる市販の溶剤としては、例えば、0号ソルベント、0号ソルベントS、0号ソルベントH、AF4〜7号ソルベント(以上、新日本石油化学(株)製)等を挙げることができる。
本発明の印刷インキ用樹脂は、従来のロジン変性フェノール樹脂と比較して、遜色のない粘度の高さ、顔料に対する優れた濡れ性、溶剤に対する溶解性を示すので、これら顔料、乾性油、溶剤の使用量は、従来のロジン変性フェノール樹脂を利用したインキにおける使用量と実質的に一致するものとなる。
即ち、従来のロジン変性フェノール樹脂を利用したインキの組成、調整法に準じ、ロジン変性フェノール樹脂を本発明の印刷インキ用樹脂に置き換えるだけで、従来のロジン変性フェノール樹脂を利用したインキと同等のインキ特性を達成できるものである。
その他、インキにゲル味を持たせ、印刷特性を向上させる目的で、ゲル化剤等を添加することもできる。また、印刷後の印刷光沢性を向上させる目的で、脂肪酸エステル等を添加することもできる。このゲル化剤や脂肪酸エステル等の添加は、本発明のインキにおいて好ましい態様である。
以下、本発明の特定の軟化点とダイマー化率を有する重合ロジンの製造例、当該重合ロジンを含む印刷インキ用樹脂の実施例、当該インキ用樹脂の極性基価、軟化点、粘度などの特性評価試験例、当該樹脂を用いた印刷インキの調製例、並びに当該印刷インキの光沢値、乾燥性、乳化性などの印刷適性評価試験例を順次説明する。また、製造例、実施例、試験例中の「部」、「%」は特に指定しない限り重量基準である。
尚、本発明は下記の製造例、実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
先ず、軟化点が150℃以上でダイマー化率が80重量%を越える重合ロジンの製造例を述べる。
《特定重合ロジンの製造例》
(1)製造例1
攪拌機、温度計を備えた4つ口フラスコに、トールロジン(ハートールR−WW;ハリマ化成製)100部、シクロヘキサン100部を加えて溶解させ、これに塩化亜鉛7部を加えて、110℃で10時間攪拌し、二量化反応を行った。反応後、蒸留水100部を加えて激しく攪拌した後、攪拌を止めて静置した。次いで、下層の水層を除去し、新しい蒸留水100部を添加し、同様の操作を4回繰り返した。そして、シクロヘキサン等を減圧下で除去して、粗反応物99部を得た。
これを薄膜蒸留装置にかけ、圧力1Torr、加熱温度280℃で蒸留し、重合ロジン45部を得た。当該重合ロジンの酸価は145、軟化点は161℃、ロジン二量体含有率は93%であった。
(2)製造例2
攪拌機、温度計を備えた4つ口フラスコに、中国ガムロジン100部、シクロヘキサン100部を加えて溶解させ、これに塩化亜鉛7部を加えて、110℃で10時間攪拌し、二量化反応を行った。反応後、蒸留水100部を加えて激しく攪拌した後、攪拌を止めて静置した。次いで、下層の水層を除去し、新しい蒸留水100部を添加して、同様の操作を4回繰り返した。そして、シクロヘキサン等を減圧下で除去して、粗反応物96部を得た。
これを薄膜蒸留装置にかけ、圧力1Torr、加熱温度270℃で蒸留し、重合ロジン59部を得た。当該重合ロジンの酸価は142、軟化点は172℃、ロジン二量体含有率は88%であった。
そこで、上記製造例1〜2で得られた各重合ロジンを初め、α,β−不飽和カルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、多価アルコールを添加し、或はさらに、炭化水素樹脂や脂肪族多塩基酸を添加して、加熱反応により各種印刷インキ用樹脂を合成した。
《印刷インキ用樹脂の実施例》
下記の実施例1〜6のうち、実施例1〜5は上記製造例2で得られた重合ロジン(軟化点172℃、ダイマー化率88%)を用いた例、実施例6は上記製造例1で得られた重合ロジン(軟化点161℃、ダイマー化率93%)を用いた例である。実施例1はこの重合ロジンとα,β−不飽和カルボン酸(無水マレイン酸)と脂肪族モノカルボン酸(ステアリン酸)と多価アルコール(ペンタエリスリトール、グリセリン)を反応させた例(本発明1に相当)であり、印刷インキを調製する上で基準(STD)とした。実施例2〜4と実施例6は各々さらに炭化水素樹脂を反応させた例(本発明2に相当)、実施例5はさらに炭化水素樹脂と脂肪族多塩基酸(アジピン酸)を反応させた例(本発明2に相当)である。
一方、比較例1〜4のうち、比較例1は印刷インキ用樹脂として従来のロジン変性フェノール樹脂を使用した例、比較例2は上記実施例1を基本として、従来の重合ロジン(軟化点140℃以下)を用いた例、比較例3は従来の重合ロジン(軟化点140℃以下)を用いて実施例レベルの粘度、軟化点を有するインキ用樹脂の製造を目的とした例、比較例4は上記実施例3を基本として、従来の重合ロジン(軟化点140℃以下)を用いた例である。
(1)実施例1
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、上記製造例2で得られた重合ロジン(軟化点172℃、ダイマー化率88%)100部を加え、220℃で溶融した。これに無水マレイン酸2.7部、ステアリン酸5.5部を加え、溶解させた後、充分に攪拌した。
再度、容器内温度が220℃になった時点で、ペンタエリトリトール6.8部、グリセリン3.0部を添加・混合し、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸1gを添加し、均一化した。この反応容器を275℃に加熱し、酸価25以下になるまで反応を行い、印刷インキ用樹脂を得た。
(2)実施例2
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、前記製造例2の重合ロジン(軟化点172℃、ダイマー化率88%)100部を加え、220℃で溶融した。そこに無水マレイン酸3.2部、ステアリン酸7部、炭化水素樹脂10部(クイントン1325、日本ゼオン(株)製)を加え、溶解させた後、充分に攪拌した。
再度、容器内温度が220℃になった時点で、ペンタエリトリトール7.1部、グリセリン3.1部を添加・混合し、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸1gを添加し、均一化した。この反応容器を275℃に加熱し、酸価25以下になるまで反応を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
(3)実施例3
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、前記製造例2の重合ロジン(軟化点172℃、ダイマー化率88%)100部を加え、220℃で溶融した。そこに無水マレイン酸6部、ステアリン酸11部、炭化水素樹脂45部(クイントン1325、日本ゼオン(株)製)を加え、溶解させた後、充分に攪拌した。
再度、容器内温度が220℃になった時点で、ペンタエリトリトール8.9部、グリセリン3.5部を添加・混合し、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸1gを添加し、均一化した。この反応容器を275℃に加熱し、酸価25以下になるまで反応を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
(4)実施例4
上記実施例3を基本としながら、炭化水素樹脂(クイントン1325、日本ゼオン(株)製)の配合量を45部から60部に増量した以外は、実施例3と同様の合成操作を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
(5)実施例5
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、前記製造例2の重合ロジン(軟化点172℃、ダイマー化率88%)100部を加え、220℃で溶融した。そこに無水マレイン酸1.5部、ステアリン酸6部、アジピン酸5部、炭化水素樹脂10部(クイントン1325、日本ゼオン(株)製)を加え、溶解させた後、充分に攪拌した。
再度、容器内温度が220℃になった時点で、ペンタエリトリトール8.0部、グリセリン2.7部を添加・混合し、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸1gを添加し、均一化した。この反応容器を275℃に加熱し、酸価25以下になるまで反応を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
(6)実施例6
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1で得られた重合ロジン(軟化点161℃、ダイマー化率93%)100部を加え、220℃で溶融した。そこに無水マレイン酸4.5部、ステアリン酸8部、炭化水素樹脂10部(クイントン1325、日本ゼオン(株)製)を加え、溶解させた後、充分に攪拌した。
再度、容器内温度が220℃になった時点で、ペンタエリトリトール7.6部、グリセリン3.5部を添加・混合し、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸1gを添加し、均一化した。この反応容器を275℃に加熱し、酸価25以下になるまで反応を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
(7)比較例1
印刷インキ用樹脂として、従来のロジン変性フェノール樹脂(ハリフェノールP−600、ハリマ化成(株)製)を使用した。ハリフェノールP−600は、ロジンのペンタエリスリトールエステルとフェノールホルムアルデヒド初期縮合物を反応させて得られたものである。
(8)比較例2
前記実施例1を基本としながら、製造例2の重合ロジン100部(軟化点172℃)に代えて、従来の軟化点140℃の重合ロジン(ダイマー化率74%)を使用した以外は、上記実施例1に記載の原料組成と同様の合成操作を行って、印刷インキ用樹脂を製造した。
(9)比較例3
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、上記比較例2と同様の軟化点140℃の重合ロジン(ダイマー化率74%)100部を加え、220℃で溶融した。そこに無水マレイン酸4.1部、ステアリン酸8.1部を加え、溶解させた後、充分に攪拌した。
再度、容器内温度が220℃に時点で、ペンタエリトリトール7.4部、グリセリン3.5部を添加・混合し、さらに触媒としてパラトルエンスルホン酸1gを添加し、均一化した。この反応容器を275℃に加熱し、酸価25以下になるまで反応を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
(10)比較例4
前記実施例3を基本としながら、製造例2の重合ロジン(軟化点172℃、ダイマー化率88%)100部に代えて、従来の軟化点140℃の重合ロジン(ダイマー化率74%)を使用した以外は、実施例3に記載の原料組成と同様の合成操作を行い、印刷インキ用樹脂を製造した。
《印刷インキ用樹脂の特性評価試験例》
そこで、上記実施例1〜6及び比較例1〜4の各印刷インキ用樹脂について、軟化点、極性基価、酸価を初め、インキ用樹脂として重要な特性である粘度(アマニ油粘度)、溶剤への溶解性(0号ソルベント溶解性)、重量平均分子量を測定した。
測定方法は、次の通りである。
(1)アマニ油粘度(ガードナー気泡型粘度)
アマニ油とインキ用樹脂とを、重量比2:1の割合で配合し、加熱溶解させたものを、ガードナー気泡型粘度計により測定した。
(2)0号ソルベント溶解性
インキ用樹脂を0号ソルベントに溶解し、25℃に放置したときに、白濁しない最小量の樹脂の重量%を測定した。
(3)重量平均分子量
GPCによるポリスチレン換算の分子量を測定した。
尚、酸価、軟化点はJISに規定された公知の方法で測定し、極性基価は前述の通り、樹脂製造に直接関与した原料全体の酸価(又は水酸基価)を原料の総仕込み量で除して算出した。
図1はその試験結果をまとめたものである。
同図1を見ると、軟化点150℃以上で、且つ、ダイマー化率80%を越える重合ロジンを用いた実施例の各インキ用樹脂は、実施例4を除いて、従来のロジン変性フェノール樹脂を用いた比較例1と対比しても、軟化点、アマニ油粘度、0号ソルベント溶解性ともに遜色がなかった。また、上記実施例4では、実施例3を基本として炭化水素樹脂を増量したために、アマニ油粘度と樹脂軟化点が低くなる傾向が見られた。
これに対して、従来の軟化点140℃の重合ロジンを用いた比較例2では、アマニ油粘度と樹脂軟化点が低くなった。また、同重合ロジン(軟化点140℃)を使用しながら、これらを是正することを目的とした比較例3では、アマニ油粘度と軟化点は実施例と同様のレベルを示したが、樹脂中の極性基が多くなり(極性基価は164)、インキ溶剤への相溶性が悪化した。
《印刷インキの調製例》
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各インキ用樹脂を細かく砕き、この粉砕された樹脂40部、アマニ油20部、AF6号溶剤40部を反応容器に入れ、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、200℃で攪拌しながら30分保温して樹脂ワニスを得た。
得られた樹脂ワニスを100℃に冷却し、ゲル化剤を添加した。ゲル化剤は、ALCH(川研ファインケミカルス(株)製)1.2重量部を、AF7号溶剤1.2重量部で希釈したものを用いた。
さらに、再度200℃に昇温し、1時間保温して、インキ用ゲルワニスを得た。
次いで、このゲルワニス60部に紅色顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製)18部を三本ロールミルを用いて分散し、さらに、タックが4〜5、フローが35〜37になるように調製するため、AF7号溶剤とゲルワニスを適量添加して、総量を100部とした後、均一に混合して、印刷インキを得た。
《印刷インキの特性評価試験例》
そこで、実施例1〜6及び比較例1〜4の各インキ用樹脂を用いて調製された印刷インキの各種印刷特性を評価した。
評価方法は次の通りである。
(1)タック
インコメーター(東洋精機(株)製)を使用した。インキ量1.3cc、室温25℃、ローラー温度30℃、回転数400rpmの条件で1分後の値を測定した。
(2)ミスチング
インコメーター(東洋精機(株)製)を使用した。インキ量2.6cc、室温25℃、ローラー温度40℃、回転数2000rpmの条件で2分回転し、インキの飛散を相対的に評価した。
(3)光沢値
インキ0.3ccをRIテスター((株)明製作所製)2カットロールでコート紙に展色した後、160℃雰囲気下で6秒間乾燥させた展色物を24時間経過した時点で、光沢値を60゜−60゜光沢計で測定した。
(4)乾燥性(セット)
インキ0.5ccをRIテスター((株)明製作所製)2カットロールで展色した後、展色物をドライヤーで乾燥させながら、指触にて5段階評価を行った。
この評価は、相対評価で行い、STD(実施例1の印刷インキを基準とする)と2カットロールで展色し、指触による紙面のべたつき、紙面の汚れが無いものを乾燥性良とし、数値が大きいほど乾燥性が良い。
(5)フロー60s
離合社(株)のスプレッドメーターによるインキの広がり(直径:mm)を測定した。
(6)乳化率
ニットー自動乳鉢(日陶科学株式会社製)を用いて、25℃において、20gのインキに10g水を添加し、30分間練肉した。そして、30分後の水量を計量し、インキに移行した水分量を測定した。インキに移行する水の量が少ない方を良とする。
図2はその試験結果をまとめたものである。
実施例1〜6のインキ用樹脂を用いて調製した印刷インキは、比較例1のロジン変性フェノール(従来樹脂)を用いた印刷インキと比較して、すべての評価項目について全く遜色はなく、性能的には同等な印刷インキが得られることが確認できた。なお、タック値、フロー60s、乾燥性(セット)の各項目は、含まれる溶剤量に大きく依存するもので、図2に示す実施例の数値は、実用上いずれも好適な範囲と判断できる。
また、実施例4のインキ用樹脂で調製した印刷インキにおいては、炭化水素樹脂を実施例3より増量したために、インキの流動性が高くなり、乾燥性、ミスチングの評価が低下する傾向が見られた。この点から、炭化水素樹脂を増やすと樹脂中の極性基を減らすことはできるが(実施例3の極性基価は132に対して、実施例4では121に低減)、炭化水素樹脂を過剰に添加すると印刷適性をかえって低下させることが確認できた。従って、樹脂をインキ化して良好な印刷適性を得るためには、インキ用樹脂の極性基価の適正化(130〜160)と、樹脂を製造する際の炭化水素樹脂の添加量の適正化(反応物全量に対して5〜30重量%)の両立が重要であることが判断できる。
比較例2は実施例1(炭化水素樹脂、脂肪族多塩基酸を不使用)を基本として、軟化点172℃、ダイマー化率88%の重合ロジン(実施例1)に代えて、軟化点140℃、ダイマー化率74%の重合ロジンを使用したものである。この比較例2のインキ用樹脂では、樹脂粘度、軟化点が低くなるため、当該樹脂でインキ化を試みると、インキの流動性が高くなって乾燥性やミスチングが大きく悪化した。この点から、従来の重合ロジン(軟化点140℃以下)を使用するとインキ用樹脂の軟化点が低くなり、インキの流動性が増して、乾燥性、ミスチングなどの印刷適性に悪影響を及ぼすことが判明した。
上記比較例2の粘度、軟化点を実施例1(STD)と同等のレベルに是正することを目的とした比較例3では、樹脂中の極性基が増えて、インキ溶剤への相溶性が悪くなった結果、比較例3の樹脂でインキ化を試みると、印刷適性では光沢の不足、乳化性の不良という問題が生じた。
これに対して、比較例2の基本となった実施例1の樹脂のインキ化では、乾燥性、ミスチング、光沢性、乳化性などの印刷適性に優れることが分かる。従って、実施例1を比較例2〜3に対比すると、バランスの良い印刷適性を具備させるには、インキ用樹脂の原料となる重合ロジンの軟化点、ダイマー化率を特定範囲(軟化点は150℃以上、ダイマー化率は80%越え)に適正化することの重要性が判断できる。
比較例4は実施例3(炭化水素樹脂を使用し、脂肪族多塩基酸は不使用)を基本として、軟化点172℃、ダイマー化率88%の重合ロジン(製造例2)に代えて、軟化点140℃、ダイマー化率74%の重合ロジンを使用したものである。この比較例4のインキ用樹脂では、比較例2と同様に樹脂粘度、軟化点が低くなるため、当該樹脂でインキ化を試みると、やはりインキの流動性が高くなって乾燥性やミスチングがかなり悪化した。この点から、インキ用樹脂の製造に際して炭化水素樹脂を添加する場合でも、従来の重合ロジン(軟化点140℃以下)を使用すると樹脂の軟化点は低くなり、これをインキ化すると、比較例2と同様に、乾燥性、ミスチングなどの評価が悪化することが判明した。
一方、実施例1〜6から調製された印刷インキの評価を詳細に検討する。
実施例1は印刷インキを製造する際の基準(STD)にした樹脂であり、実施例2〜5とは軟化点172℃の重合ロジンを使用した点で共通する。
この実施例2〜3は、実施例1の組成に対して、樹脂製造に際して炭化水素樹脂を適量加えたもので、炭化水素樹脂を添加しない実施例1に比して、インキ化した場合の乳化適性を増して、印刷適性のバランスをさらに改善できる。
実施例5は実施例1の組成において、α,β−不飽和カルボン酸(無水マレイン酸)と脂肪族モノカルボン酸(ステアリン酸)の一部を脂肪族多塩基酸(アジピン酸)に置き換えたもので、当該置き換えを行っても、実施例1のインキ化と同様にバランスの良い印刷適性を付与できる。
実施例6は軟化点161℃(ダイマー化率93%)の重合ロジンを使用したもので、実施例1で使用した重合ロジンの軟化点172℃には劣るが、実施例6の樹脂をインキ化しても、従来の重合ロジン(軟化点が140℃以下)を用いた樹脂(比較例2〜4)をインキ化した場合に比べて印刷適性の優位性は明らかである。従って、印刷適性を良好に確保するには、インキ用樹脂を製造するに際して、重合ロジンは150℃以上の軟化点のものを使用することの重要性が再確認できた。
実施例4は、前述したように、炭化水素樹脂を実施例3より増量して樹脂中の極性基を減らしたものであるが、インキ化するとインキの流動性が高くなり、乾燥性、ミスチングの評価が低下する傾向が見られた。この点から、バランスの良い印刷適性には、炭化水素樹脂の添加量を適正化(反応物全量に対して5〜30重量%)し、且つ、インキ用樹脂の極性基価を適正範囲(130〜160)に調整することの重要性が判断できる。
実施例1〜6及び比較例1〜4の各印刷インキ用樹脂の特性評価をまとめた図表である。 実施例1〜6及び比較例1〜4の各インキ用樹脂から調製した印刷インキの印刷適性の評価をまとめた図表である。

Claims (8)

  1. 重合ロジン、α,β−不飽和カルボン酸類、脂肪族モノカルボン酸及び多価アルコールを加熱反応させて得られる印刷インキ用樹脂であって、
    重合ロジンの軟化点が150℃以上であり、当該重合ロジン中の二量化ロジンの含有量が80重量%より多いことを特徴とする印刷インキ用樹脂。
  2. 加熱反応に際して、さらに脂肪族多塩基酸及び/又は炭化水素樹脂を添加することを特徴とする請求項1に記載の印刷インキ用樹脂。
  3. 加熱反応で得られる印刷インキ用樹脂におけるエステル結合の指標としての極性基価が130〜160であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷インキ用樹脂。
  4. 重合ロジン100重量部に対するα,β−不飽和カルボン酸類の添加量が1〜8重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷インキ用樹脂。
  5. 脂肪族モノカルボン酸がC10以上の直鎖状又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷インキ用樹脂。
  6. 脂肪族多塩基酸がC2以上の直鎖アルカン二酸又はその無水物であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の印刷インキ用樹脂。
  7. 重合ロジンなどの反応物全量に対して炭化水素樹脂を5〜30重量%添加することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の印刷インキ用樹脂。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷インキ用樹脂、乾性油、溶剤及び顔料を必須成分として含有する印刷用インキ。
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