本発明のイミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物(A)[「イミン・オキサゾリジン系化合物(A)」と称する場合がある]の製造方法は、23℃において液状であり、且つ水に対して反応性を有しているとともに、アミン系化合物(a)に対して反応性を有していないアミン非反応型水反応性液状化合物(B)[単に「アミン非反応型水反応性液状化合物(B)」と称する場合がある]の存在下、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させる工程を具備することを特徴としている。このように、本発明では、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応を、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下で行っているので、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応により生成した水は、系内に溶解しているアミン非反応型水反応性液状化合物(B)と反応して消費され、系内から実質的に除去される。しかも、水と、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と反応は、基本的に不可逆性の反応であるため、水和などとは異なり、加熱等により水が再び生成することがない。特に、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は液状であるので、生成した水が系内に溶け込み且つ反応後期又は反応終期で系内の水の量が非常に少なくなっても、水とアミン非反応型水反応性液状化合物(B)との反応を効果的に且つ迅速に生じさせることが可能である。そのため、系内に溶け込んで、共沸等によっては除去することが困難な程度の少量の水であっても、系内から有効に除去させることができる。これにより、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とが反応する平衡反応は、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とが反応する方向に[すなわち、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)が生成する方向に]効果的に進行して、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を生成させ、系内のアミン系化合物(a)の割合を有効に減少させることができ、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を高めることができる。
しかも、不純物としてのアミン系化合物(a)を、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を生成させることにより除去しているので、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を高めることができるとともに、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の収量(又は収率)も高めることができる。
本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を、90モル%を超える純度で得ることができる。具体的には、本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法では、純度が91〜100モル%(好ましくは92〜99.9モル%、さらに好ましくは95〜99.8モル%)のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を得ることができる。なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度は、温度や時間、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の使用量、カルボニル系化合物(b)の使用量などによりコントロールすることができる。そのため、例えば、温度や時間を調節することにより、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を95モル%以上(特に96モル%以上、なかでも98モル%以上)にまで高めることが可能である。
本発明では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度は、アミノ基を有していないイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン系化合物(a)[なお、アミン系化合物(a)がポリアミン系化合物である場合、少なくとも1個のアミノ基が残存する形態でカルボニル系化合物(b)と反応して得られるアミノ基を有しているイミン・オキサゾリジン系化合物(A)も含まれる]との総量(総モル数)に対するアミノ基を有していないイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の量(モル数)の割合(モル%)を意味している。具体的には、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度は、ガスクロマトグラフィー測定法により、アミノ基を有していないイミン・オキサゾリジン系化合物(A)のモル数(M1)と、アミン系化合物(a)のモル数(M2)とを求め、次式を利用して算出する。従って、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度は、アミン系化合物(a)のケチミン化率又はオキサゾリジン化率に相当している。
純度(モル%)=[M1/(M1+M2)]×100
また、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を求める際のガスクロマトグラフィー測定において、測定条件は下記の通りである。
(ガスクロマトグラフィーの測定条件)
・測定方法:FID法
・温度:80℃で1分間の後、10℃/minの温度上昇比率で温度を280℃まで上昇させ、280℃で1分間の条件
・カラム温度:280℃(Injection)、280℃(Detector)
・キャリアガス:ヘリウム(He)(流量:30ml/min)、水素(H2)(流量:30ml/min)、空気(流量:400ml/min)
なお、前述のように、アミン系化合物(a)には、カルボニル系化合物(b)と反応していない未反応のアミン系化合物(a)と、アミン系化合物がポリアミン系化合物である場合、少なくとも1個のアミノ基が残存する形態でカルボニル系化合物(b)と反応して得られるアミノ基を有しているイミン・オキサゾリジン系化合物(A)とが含まれる。具体的には、前述のアミノ基を有しているイミン・オキサゾリジン系化合物(A)とは、例えば、アミン系化合物(a)がジアミン系化合物である場合、一方のアミノ基のみがカルボニル系化合物(b)と反応したものなどを意味している。そのため、アミン系化合物(a)としてモノアミン系化合物を用いた場合、アミノ基を有しているイミン・オキサゾリジン系化合物(A)は生成しないので、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を求める際のアミン系化合物(a)には、未反応のアミン系化合物(a)のみが含まれる。一方、アミン系化合物(a)として、アミノ基を複数有するポリアミン系化合物を用いた場合、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を求める際のアミン系化合物(a)には、未反応のアミン系化合物(a)と、アミノ基を有しているイミン・オキサゾリジン系化合物(A)とが含まれる。
本発明では、カルボニル系化合物(b)は、通常、アミン系化合物(a)に対して過剰に用いられているため、反応終了後の系内には、過剰に用いられているカルボニル系化合物(b)が残存しているが、該カルボニル系化合物(b)は、蒸留などの公知の除去方法を利用して、反応系から容易に除去させることができる。
また、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により得られた反応混合物中には、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)とともに、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)又はその誘導体(水との反応により得られた反応生成物)が含まれるが、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応により得られた反応生成物は水和物ではなく、また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応は実質的に不可逆的な反応であるため、経時や加熱により、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応により得られた反応生成物から水が生成することがない。また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応により得られた反応生成物は、通常、反応混合物中に、コロイダル状、プリン状又はゲル状などの分散された形態や、溶解された形態で含まれている。しかも、反応混合物中にアミン非反応型水反応性液状化合物(B)が、水に対して反応性を有する活性な状態で残存していても、該アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の安定化剤としての機能を発揮することができる。そのため、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により得られた反応混合物において、系内に含まれるアミン非反応型水反応性液状化合物(B)又はその誘導体は、そのまま含まれていてもよく、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の調製後に取り除かれてもよい。
このように、本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を用いていても、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造後に、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)や、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応により得られた反応生成物を、系内から取り除く必要がなく、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を優れた生産性又は作業性で効率よく製造することができる。
なお、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の種類によっては、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応により、副反応生成物としてアンモニアガスなどの気体成分が生成する場合があるが、該気体成分は、通常、系外に流出する。そのため、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度には影響がないので、アンモニアガスなどの気体成分が生成しても、特に問題はない。
本発明では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)において、イミン系化合物を「イミン系化合物(A1)」と称し、オキサゾリジン系化合物を「オキサゾリジン系化合物(A2)」と称する場合がある。
なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)としてイミン系化合物(A1)を製造する場合、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応は、例えば、下記の反応式(I)で表すことができる。
[反応式(I)において、R
1は有機基である。また、R
2、R
3は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基である。]
また、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)としてオキサゾリジン系化合物(A2)を製造する場合、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応は、例えば、下記の反応式(II)で表すことができる。
[反応式(II)において、R
4、R
5、R
6、R
7は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基である。また、R
8は水素原子又は有機基である。なお、R
2、R
3は、前記と同様に、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基である。]
なお、前記式(I)において、R1の有機基としては1価若しくは多価の炭化水素基を好適に用いることができる。R1に係る1価若しくは多価の炭化水素基としては、例えば、下記の式(2b)におけるR18の1価若しくは多価の炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。R2、R3の炭化水素基としては、例えば、下記の式(2b)におけるR16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。
また、前記式(II)において、R4、R5、R6や、R7の炭化水素基としては、例えば、下記の式(3)におけるR19、R20、R21、R22における炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。R8の有機基としては炭化水素基を好適に用いることができる。R8に係る炭化水素基としては、例えば、下記の式(3)におけるR23に係る炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。また、R2、R3は、前記式(I)の場合と同様に、例えば、下記の式(2b)におけるR16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。
[アミン非反応型水反応性液状化合物(B)]
アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、下記の特性(1)〜(3)を有している化合物である。
(1)23℃において液状である特性
(2)水に対して反応性を有している特性
(3)アミン系化合物(a)に対して反応性を有していない特性
このように、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は23℃において液状であり、固形状ではないことが重要である。
また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、水に対して反応性を有しているので、水に対して反応性を有する基(「水反応性基」と称する場合がある)を有していることが重要である。水反応性基としては、特に制限されないが、例えば、無機系元素又は金属系元素に、水に対して反応性を発揮するための官能基が結合した形態を有している基などが挙げられる。このような水反応性基において、無機系元素又は金属系元素としては、例えば、ケイ素元素、チタン元素、ジルコニウム元素、スズ元素、亜鉛元素、アルミニウム元素などが挙げられる。無機系元素又は金属系元素としては、特に、ケイ素元素、チタン元素を好適に用いることができる。なお、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)中に含有されている無機系元素又は金属系元素の数は、単数(1個)であってもよく、複数(2個以上)であってもよい。また、無機系元素又は金属系元素は、一種のみであってもよく、二種以上が組み合わせられていてもよい。
無機系元素又は金属系元素に結合している官能基としては、例えば、炭化水素−オキシ基等の置換オキシ基や、ヒドロキシル基などが挙げられ、炭化水素−オキシ基が好適である。炭化水素−オキシ基としては、例えば、アルコキシ基等の脂肪族炭化水素−オキシ基;アリールオキシ基等の芳香族炭化水素−オキシ基;シクロアルキルオキシ基等の脂環式炭化水素−オキシ基などが挙げられる。炭化水素−オキシ基において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブチルオキシ基(ブトキシ基)、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数が1〜4(特に、炭素数が1〜2)のアルコキシ基が好適である。また、アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基などが挙げられ、シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。本発明では、炭化水素−オキシ基としては、アルコキシ基(特に、メトキシ基、エトキシ基)が好適である。炭化水素−オキシ基は、一種のみであってもよく、二種以上が組み合わせられていてもよい。
無機系元素又は金属系元素に結合している官能基の数は、単数(1個)であってもよく、複数(2個以上)であってもよい。例えば、無機系元素又は金属系元素がケイ素元素やチタン元素の場合、ケイ素元素やチタン元素に結合している官能基(アルコキシ基など)の数は、通常、1〜4個の範囲から適宜選択することができる。
従って、水反応性基としては、無機系元素又は金属系元素に、水に対して反応性を発揮するための官能基が結合した形態を有している基である場合、例えば、アルコキシシリル基、アルコキシチタニル基、アルコキシジルコニル基、アルコキシスタンニル基、アルコキシジンシル基、アルコキシアルミニル基などが挙げられる。
なお、無機系元素又は金属系元素がケイ素元素の場合、水反応性基としては、「Si−NH−Si」結合を有する基であってもよい。すなわち、水反応性基としては、ケイ素元素を2個以上含有するとともに、ケイ素元素同士がイミノ基(「−NH−」基)を介して結合した形態を有している基であってもよい。
さらに、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、アミン系化合物(a)に対して反応性を有していないので、アミン系化合物(a)に対して反応性を有する官能基[例えば、アミン反応性化合物(D)の項で例示のアミン反応性官能基(エポキシ基、イソシアネート基など)など]を有していないことが重要である。
従って、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)としては、ケイ素元素、チタン元素、ジルコニウム元素、スズ元素、亜鉛元素、およびアルミニウム元素から選択された少なくとも一種の元素を含有するアミン非反応型水反応性液状化合物を好適に用いることができる。また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)としては、炭化水素−オキシ基を含有するアミン非反応型水反応性液状化合物も好適に用いることができる。
本発明では、特に、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)としては、ケイ素元素、チタン元素、ジルコニウム元素、スズ元素、亜鉛元素、およびアルミニウム元素から選択された少なくとも一種の元素(特に、ケイ素元素またはチタン元素)を1個又は2個以上含有するとともに、該元素に炭化水素−オキシ基(特に、アルコキシ基)が1個又は2個以上結合している形態のアミン非反応型水反応性液状化合物や、「Si−NH−Si」結合を有する形態のアミン非反応型水反応性液状化合物を好適に用いることができる。
具体的には、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)としては、ケイ素元素またはチタン元素とともに、炭化水素−オキシ基を含有している場合、例えば、下記式(1a)〜(1b)で表されるシラン系化合物やチタン系化合物などが挙げられる。
[式(1a)〜(1b)において、Xはケイ素元素(Si)又はチタン元素(Ti)を示す。R
9、R
10、R
11、R
12は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。nは1以上の整数である。なお、R
9〜R
12のうち少なくとも1個は炭化水素基である。また、R
13は水素原子又は炭化水素基を示し、R
14、R
15は、同一又は異なって、有機基を示す。mは1〜3の整数である。なお、mが1の場合、R
13は炭化水素基であり、mが2又は3の場合、少なくとも1個のR
13は炭化水素基である。]
前記式(1a)のR9〜R12における炭化水素基や、前記式(1b)のR13における炭化水素基としては、アルキル基等の脂肪族炭化水素基;アリール基等の芳香族炭化水素基;シクロアルキル基等の脂環式炭化水素基などが挙げられる。該炭化水素基において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。アルキル基としては、炭素数が1〜4(特に、炭素数が1〜2)のアルキル基が好適である。アリール基としては、例えば、フェニル基などが挙げられ、シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基などが挙げられる。本発明では、炭化水素基としては、アルキル基(特に、メチル基、エチル基)が好適である。炭化水素基は、一種のみであってもよく、二種以上が組み合わせられていてもよい。
前記式(1b)のR14における有機基としては、アミン系化合物(a)に対して反応性を有していない基であることが重要である。R14における有機基としては、例えば、炭化水素基などが挙げられる。R14に係る炭化水素基としては、R13などにおける炭化水素基として例示の炭化水素基(アルキル基など)の他、ビニル基(「CH2=CH−」)、ビニル−アルキル基などが挙げられる。
前記式(1b)のR15における有機基としては、アミン系化合物(a)に対して反応性を有していない基であることが重要である。R15における有機基としては、例えば、炭化水素基などが挙げられる。R15に係る炭化水素基としては、R13などにおける炭化水素基として例示の炭化水素基の中から適宜選択することができ、脂肪族炭化水素基(特にアルキル基)が好適である。
なお、前記式(1a)で表されるシラン系化合物やチタン系化合物は、nが1である場合、炭化水素−オキシ基を含有するシラン系化合物(炭化水素−オキシ基含有シラン系化合物)、または炭化水素−オキシ基を含有するチタン系化合物(炭化水素−オキシ基含有チタン系化合物)であり、一方、nが2以上である場合、nが1である場合の炭化水素−オキシ基含有シラン系化合物の縮合物(オリゴマー又はポリマー等の多量体)、またはnが1である場合の炭化水素−オキシ基含有チタン系化合物の縮合物(オリゴマー又はポリマー等の多量体)に相当する。炭化水素−オキシ基含有シラン系化合物の縮合物や、炭化水素−オキシ基含有チタン系化合物の縮合物は、23℃において液状であることが重要である。そのため、これらの化合物の縮合物は、23℃において液状の形態となる程度で縮合されていることが重要である。
このようなシラン系化合物やチタン系化合物としては、アルコキシシラン系化合物や、アルコキシチタン系化合物を好適に用いることができる。アルコキシシラン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン系化合物;メトキシトリエトキシシラン等のアルコキシトリアルコキシシラン系化合物;ジメトキシジエトキシシラン等のジアルコキシジアルコキシシラン系化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン系化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン系化合物;これらのアルキルトリアルコキシシラン系化合物やジアルキルジアルコキシシラン系化合物に対応するトリアルキルモノアルコキシシラン系化合物などが挙げられる。
また、アルコキシシラン系化合物としては、ビニル基を含有するアルコキシシラン系化合物(ビニル基含有アルコキシシラン系化合物)も用いることができる。ビニル基含有アルコキシシラン系化合物において、ビニル基は、直接にケイ素原子に結合していてもよく、2価の炭化水素基(アルキレン基、アリレン基、シクロアルキレン基や、これらを組み合わせた2価の炭化水素基など)などの2価の有機基を介して結合していてもよい。このようなビニル基含有アルコキシシラン系化合物としては、アルキルトリアルコキシシラン系化合物、ジアルキルジアルコキシシラン系化合物やトリアルキルモノアルコキシシラン系化合物に対応するものなどが挙げられる。
より具体的には、ビニル基含有アルコキシシラン系化合物としては、ビニル基が、2価の有機基を介さずに、直接、アルコキシ基が結合したケイ素元素に結合している場合、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン系化合物;ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルメチルジイソプロポキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルエチルジプロポキシシラン、ビニルエチルジイソプロポキシシラン、ビニルエチルジブトキシシラン、ビニルプロピルジメトキシシラン、ビニルプロピルジエトキシシラン、ビニルプロピルジプロポキシシラン、ビニルプロピルジイソプロポキシシラン、ビニルプロピルジブトキシシラン等の(ビニル)アルキルジアルコキシシラン系化合物や、これらに対応する(ビニル)ジアルキル(モノ)アルコキシシラン系化合物などが挙げられる。
また、ビニル基含有アルコキシシラン系化合物としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、アルコキシ基が結合したケイ素元素に結合している場合、2価の有機基の種類に応じて、前述のような、ビニル基が、2価の有機基を介さずに、直接、アルコキシ基が結合したケイ素元素に結合している場合に対応したものが挙げられる。具体的には、ビニル基含有アルコキシシラン系化合物としては、例えば、ビニル基が、アルキレン基を介して、アルコキシ基が結合したケイ素元素に結合している場合、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリイソプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリブトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシラン系化合物;β−ビニルエチルメチルジメトキシシラン、β−ビニルエチルメチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジブトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジメトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジブトキシシラン等の(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシラン系化合物や、これらに対応する(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシラン系化合物などが挙げられる。
さらにまた、アルコキシシラン系化合物としては、オリゴマーの形態のアルコキシシラン系化合物(シリコーン系オリゴマー)であってもよい。シリコーン系オリゴマーとしては、例えば、アルコキシ基を2個以上有するアルコキシシラン系化合物の縮合によるシリコーン系オリゴマーなどが挙げられる。シリコーン系オリゴマーにおいて、モノマーとして用いられるアルコキシシラン系化合物(アルコキシ基を2個以上有するアルコキシシラン系化合物)としては、例えば、テトラアルコキシシラン系化合物、アルキルトリアルコキシシラン系化合物、ジアルキルジアルコキシシラン系化合物、ビニルトリアルコキシシラン系化合物、(ビニル)アルキルジアルコキシシラン系化合物、ビニルアルキルトリアルコキシシラン系化合物、(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシラン系化合物などが挙げられ、これらの具体例は前述の通りである。
シリコーン系オリゴマー中のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が好適である。すなわち、シリコーン系オリゴマーとしては、メトキシ基及び/又はエトキシ基を含有するシリコーン系オリゴマーを好適に用いることができる。
シリコーン系オリゴマーにおいて、アルコキシシラン系化合物による構成単位(繰り返し単位またはモノマー単位)の数としては、特に制限されないが、シリコーン系オリゴマーが23℃において液状の形態を有することが可能な数であることが重要である。例えば、シリコーン系オリゴマーが、テトラメトキシシランによるシリコーン系オリゴマー(テトラメトキシシランオリゴマー)である場合、テトラメトキシシランによる構成単位の数(平均)は、2〜6個であってもよい[すなわち、テトラメトキシシランオリゴマーは、テトラメトキシシランの2〜6量体(平均)であってもよい]。
一方、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)において、アルコキシチタン系化合物としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン系化合物;メチルトリメトキシチタン、メチルトリエトキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、メチルトリブトキシチタン、エチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、エチルトリプロポキシチタン、エチルトリイソプロポキシチタン、エチルトリブトキシチタン等のアルキルトリアルコキシチタン系化合物;ジメチルジメトキシチタン、ジメチルジエトキシチタン、ジメチルジプロポキシチタン、ジメチルジイソプロポキシチタン、ジメチルジブトキシチタン、ジエチルジメトキシチタン、ジエチルジエトキシチタン、ジエチルジプロポキシチタン、ジエチルジイソプロポキシチタン、ジエチルジブトキシチタン等のジアルキルジアルコキシチタン系化合物や、これらに対応するトリアルキルモノアルコキシチタン系化合物などが挙げられる。
また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)としては、「Si−NH−Si」結合を有している場合、例えば、シラザン系化合物や、シクロシラザン系化合物などが挙げられ、シラザン系化合物を好適に用いることができる。シラザン系化合物としては、「Si−NH−Si」の骨格を有しているジシラザン系化合物、「Si−NH−Si−NH−Si」の骨格を有しているトリシラザン系化合物や、テトラシラザン系化合物などが挙げられ、ジシラザン系化合物を好適に用いることができる。ジシラザン系化合物としては、例えば、ジシラザン(「H3Si−NH−SiH3」)の他、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン[「(CH3)3Si−NH−Si(CH3)3」]、1,1,1,3,3,3−ヘキサエチルジシラザン[「(C2H5)3Si−NH−Si(C2H5)3」]等のアルキルシリル基を含有するジシラザンなどが挙げられる。
なお、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[イミン・オキサゾリジン系化合物(A)]
本発明では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)[イミン系化合物(A1)又はオキサゾリジン系化合物(A2)]は、前記アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させる工程を経て製造されている。なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、水により加水分解してアミン系化合物(a)を生成するので、潜在性硬化剤(特に、湿気分解型の潜在性硬化剤)としての機能を有している。そのため、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、硬化性組成物における潜在性硬化剤(特に、湿気分解型の潜在性硬化剤)として好適に用いることができる。イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[イミン系化合物(A1)]
イミン系化合物(A1)は、下記式(2)で表される基(「ケチミン基」と称する場合がある)を有しているイミン系化合物を用いることができる。
イミン系化合物(A1)としては、前記式(2)で表される基(ケチミン基)を有している化合物であれば特に制限されないが、例えば、下記式(2a)で表される基を有するケチミン系化合物やアルジミン系化合物を好適に用いることができる。
[式(2a)において、R
16、R
17は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基を示す。]
式(2a)において、R16、R17の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。R16、R17の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基などが挙げられる。
また、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基の他、多環式炭化水素環(例えば、ノルボルナンにおける炭化水素環等の橋かけ環など)を有する基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などのアリール基などが挙げられる。なお、芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環や縮合炭素環(例えば、ナフタレン環等の2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)が挙げられる。
なお、R16、R17の炭化水素基は、置換基(例えば、炭化水素基など)を有していてもよい。R16、R17は、同一であっても異なっていてもよい。従って、R16、R17としては、両方とも水素原子であってもよく、一方が水素原子で且つ他方が炭化水素基であってもよく、両方とも炭化水素基であってもよい。なお、イミン系化合物(A1)としては、前記式(2a)におけるR16、R17のうち両方が炭化水素基である場合、ケチミン系化合物となり、前記式(2a)におけるR16、R17のうち少なくとも一方が水素原子である場合、アルジミン系化合物となる。
イミン系化合物(A1)は、分子中に、ケチミン基[前記式(2)で表される基]を少なくとも1つ有していればよい。従って、イミン系化合物(A1)としては、例えば、下記式(2b)で表されるイミン系化合物(ケチミン系化合物やアルジミン系化合物など)を用いることができる。
[式(2b)において、R
18は1価若しくは多価の炭化水素基を示す。pは1以上の整数である。R
16、R
17は前記に同じ。]
式(2b)において、R18の1価の炭化水素基としては、前記R16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、アルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基、アリール基などの芳香族炭化水素基など)を用いることができる。
また、R18の多価の炭化水素基としては、多価の脂肪族炭化水素基、多価の脂環式炭化水素基、多価の芳香族炭化水素基の他、これらの多価の炭化水素基が組み合わされた多価の基(「多価の複合炭化水素基」と称する場合がある)などが挙げられる。多価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基などの2価の脂肪族炭化水素基を用いることができる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状のアルキレン基の他、分岐鎖又は置換基を有するアルキレン基(例えば、プロピレン基など)などが挙げられる。
多価の脂環式炭化水素基としては、単環式炭化水素環を有する多価の脂環式炭化水素基であってもよく、多環式炭化水素環を有する多価の脂環式炭化水素基であってもよい。多価の脂環式炭化水素基としては、2価の脂環式炭化水素基を好適に用いることができる。なお、前記単環式炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキレン環が挙げられる。また、多環式炭化水素環としては、例えば、橋かけ環などが挙げられる。該橋かけ環としては、例えば、二環式炭化水素環(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンなどにおける炭化水素環など)、三環式炭化水素環(例えば、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどにおける炭化水素環など)、四環式炭化水素環(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどにおける炭化水素環など)などが例示できる。このような橋かけ環としては、環を構成する炭素数が6〜16程度(特に炭素数6〜14程度)の二環式ないし四環式炭化水素環(例えば、ピナン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタンなどにおける炭化水素環など)を好適に用いることができる。
具体的には、シクロヘキサン環を有する2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基が挙げられる。また、ノルボルナンにおける二環式炭化水素環を有する2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン−2,3−ジイル、ノルボルナン−2,5−ジイル、ノルボルナン−2,6−ジイルなどのノルボルナン−ジイル基などが挙げられる。
多価の芳香族炭化水素基としては、アリレン基などの2価の芳香族炭化水素基を用いることができる。アリレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基など)などのベンゼン環を有する2価の芳香族炭化水素基や、ナフチレン基などのナフタレン環を有する2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。なお、多価の芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環やナフタレン環の他、アズレン、インダセン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレンなどの2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環なども挙げられる。
さらにまた、これらの多価の炭化水素基が組み合わされた多価の基(多価の複合炭化水素基)としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(アルキレン基など)、単環式炭化水素環又は多環式炭化水素環を有する2価の脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基やノルボルナン−ジイル基など)、ベンゼン環又は縮合炭素環を有する2価の芳香族炭化水素基(フェニレン基やナフチレン基など)が適宜組み合わされた2価の基(2価の複合炭化水素基)を好適に用いることができる。2価の複合炭化水素基としては、例えば、アルキレン−フェニレン基、アルキレン−フェニレン−アルキレン基などの脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが組み合わされた2価の複合炭化水素基;アルキレン−シクロアルキレン基、アルキレン−シクロアルキレン−アルキレン基、アルキレン−ノルボルナン−ジイル基、アルキレン−ノルボルナン−ジイル−アルキレン基などの脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが組み合わされた2価の複合炭化水素基などが挙げられる。これらの多価の複合炭化水素基が組み合わされた基において、アルキレン部位、フェニレン部位、シクロアルキレン部位、ノルボルナン−ジイル部位としては、前記例示のアルキレン基、フェニレン基、シクロアルキレン基、ノルボルナン−ジイル基などを用いることができる。従って、アルキレン部位としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレンなどが挙げられる。フェニレン部位としては、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレンなどが挙げられる。シクロアルキレン部位としては、例えば、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどが挙げられる。ノルボルナン−ジイル部位としては、例えば、ノルボルナン−2,3−ジイル、ノルボルナン−2,5−ジイル、ノルボルナン−2,6−ジイル等のノルボルナン−ジイルなどが挙げられる。
具体的には、多価の複合炭化水素基としては、例えば、メチレン−1,3−フェニレン−メチレン(m−キシリレン)基、メチレン−1,3−シクロヘキシレン−メチレン基、メチレン−ノルボルナン−2,5−ジイル−メチレン基、メチレン−ノルボルナン−2,6−ジイル−メチレン基や、これらの基においてメチレン部位が他のアルキレン部位(例えば、エチレン部位、トリメチレン部位、プロピレン部位など)となっている基などが挙げられる。
このようなR18は、アミン系化合物(a)の残基に相当する。なお、R18の炭化水素基は、置換基(例えば、炭化水素基など)を有していてもよい。
また、前記式(2b)において、pは1以上の整数である。pとしては、1以上の整数であれば特に制限されないが、例えば、1〜10(好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3)の整数から選択することができる。なお、pとしては、1又は2である場合が多い。
このようなイミン系化合物(A1)(特に、ケチミン系化合物)は互変異性を有している場合がある。そのため、本発明では、イミン系化合物(A1)には、ケチミン系化合物の互変異構造を有する化合物に相当するエナミン形の化合物も含まれる場合がある。
[オキサゾリジン系化合物(A2)]
オキサゾリジン系化合物(A2)は、オキサゾリジン環を有しているオキサゾリジン系化合物であれば特に制限されないが、例えば、下記式(3)で表されるオキサゾリジン系化合物を用いることができる。
[式(3)において、R
19、R
20、R
21、R
22は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基である。また、R
23は水素原子又は有機基である。R
24、R
25は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基である。]
前記式(3)において、R19、R20、R21、R22の炭化水素基としては、前記R16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、アルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基、アリール基などの芳香族炭化水素基など)を用いることができる。R19〜R22の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、特にアルキル基(例えば、炭素数1〜20程度のアルキル基など)が好適である。なお、R19〜R22の炭化水素基は、置換基(例えば、炭化水素基など)を有していてもよい。R19〜R22は、すべて又は部分的に同一であってもよく、すべて異なっていてもよい。R19、R20としては、少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、特に両方とも水素原子であることが好適である。また、R21、R22としては、両方とも水素原子であることが好適である。
R23の有機基としては、炭化水素基が好適である。R23に係る炭化水素基としては、前記R16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、アルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基、アリール基などの芳香族炭化水素基など)を用いることができる。また、R23に係る炭化水素基は、ヒドロキシル基を含有していてもよい。R23がヒドロキシル基を含有する炭化水素基(ヒドロキシル基含有炭化水素基)である場合、該ヒドロキシル基含有炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基や、該ヒドロキシアルキル基に炭化水素基が置換した形態の基などが挙げられる。なお、このようなヒドロキシル基含有炭化水素基としては、例えば、「R19−CR20(OH)−CR21R22−」基(R19〜R22は前記に同じ)が好適である。
R24、R25の炭化水素基としては、前記R16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、アルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基、アリール基などの芳香族炭化水素基など)を用いることができる。R24、R25の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、特にアルキル基(例えば、炭素数1〜20程度のアルキル基など)が好適である。なお、R24、R25の炭化水素基は、置換基(例えば、炭化水素基など)を有していてもよい。R24、R25は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
[アミン系化合物(a)]
アミン系化合物(a)としては、イミン系化合物(A1)を製造する場合とオキサゾリジン系化合物(A2)を製造する場合とでは、通常、異なる形態のアミン系化合物が用いられる。アミン系化合物(a)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、イミン系化合物(A1)を製造する場合、アミン系化合物(a)としては、例えば、分子内に少なくとも1個のアミノ基(無置換アミノ基)を有しているアミン系化合物(第1級アミン系化合物)を用いることができる。このような第1級アミン系化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるアミン系化合物などが挙げられる。
[式(4)において、R
26は1価若しくは多価の炭化水素基を示す。qは1以上の整数である。]
前記式(4)において、R26の1価若しくは多価の炭化水素基は、前記式(2b)におけるR18の1価若しくは多価の炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。なお、R26は、前記式(2b)におけるR18に相当又は対応している。
このようなアミン系化合物には、1価のアミン(モノアミン又はモノアミン系化合物)や多価のアミン(ポリアミン又はポリアミン系化合物)などが含まれる。モノアミン系化合物には、脂肪族モノアミン系化合物、脂環式モノアミン系化合物、芳香族モノアミン系化合物などが含まれる。具体的には、脂肪族モノアミン系化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、s−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等のモノC1-20アルキルアミンなどが挙げられる。脂環式モノアミン系化合物としては、例えば、シクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミン、ノルボルナン−2−アミンなどの橋かけ環を有するアミンなどが挙げられる。芳香族モノアミン系化合物としては、例えば、アニリンなどが挙げられる。
また、脂肪族モノアミン系化合物として、ポリオキシアルキレン骨格を有するモノアミン系化合物や、アミノシランカップリング剤(例えば、3−アミノプロピルトリアルコキシシランなど)を用いることもできる。なお、この場合、前記式(2b)で表されるイミン系化合物(A1)としては、前記式(2b)におけるR15が、ポリオキシアルキレン骨格を有する1価の基[例えば、「H−(R27 t1−O)t2−」(R27はアルキレン基を示す。t1は1以上の整数である。また、t2は1以上の整数である。)など]や、アルコキシシラン基を有するアルキル基などであるイミン系化合物(ケチミン化合物やアルジミン系化合物)に相当する。
また、ポリアミン系化合物には、脂肪族ポリアミン系化合物、脂環式ポリアミン系化合物、芳香族ポリアミン系化合物、芳香脂肪族ポリアミン系化合物などが含まれる。脂肪族ポリアミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、2,3−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン系化合物の他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。また、脂肪族ポリアミン系化合物として、ポリオキシアルキレン骨格を有するジアミン系化合物などのポリオキシアルキレン骨格を有するポリアミン系化合物を用いることもできる。なお、この場合、前記式(2b)で表されるイミン系化合物(A1)としては、前記式(2b)におけるR18が、多価のポリオキシアルキレン基[例えば、「−(R27 t1−O)t2−」(R27はアルキレン基を示す。t1は1以上の整数である。また、t2は1以上の整数である。)など]であるイミン系化合物(ケチミン化合物やアルジミン系化合物)に相当する。
脂環式ポリアミン系化合物としては、例えば、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−3−アミノメチルシクロヘキサン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、メチル−2,3−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン{例えば、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンなど}等の脂環式ジアミン系化合物などが挙げられる。
芳香族ポリアミン系化合物としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、4,4´−ジフェニルジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、2,4´−ジフェニルメタンジアミン、4,4´−ジフェニルエ−テルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジアミン、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジアミン、4,4´−ジフェニルプロパンジアミン、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジアミン等の芳香族ジアミン系化合物などが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミン系化合物としては、例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、ω,ω´−ジアミノ−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルアミノメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジアミン系化合物などが挙げられる。
なお、イミン系化合物(A1)を製造する際のアミン系化合物(a)には、ポリアミン系化合物が、少なくとも1個のアミノ基が残存する形態でカルボニル系化合物(b)と反応して得られるアミン系化合物[すなわち、アミノ基を有しているイミン系化合物(A1)]も含まれる。
一方、オキサゾリジン系化合物(A2)を製造する場合、アミン系化合物(a)としては、例えば、分子内に少なくとも1個のアミノ基(無置換アミノ基)とともに、β−位の炭素原子にヒドロキシル基を有しているアミン系化合物(β−アミノアルコール系化合物)を用いることができる。このようなβ−アミノアルコール系化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるアミン系化合物などが挙げられる。
[式(5)において、R
28、R
29、R
30、R
31は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基である。また、R
32は有機基である。]
式(5)において、R28、R29、R30、R31の炭化水素基としては、前記式(3)におけるR19、R20、R21、R22の炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。R28〜R31の炭化水素基としては、R19〜R22の炭化水素基と同様に、脂肪族炭化水素基が好ましく、特にアルキル基(例えば、炭素数1〜20程度のアルキル基など)が好適である。なお、R28〜R31は、それぞれ、前記式(3)におけるR19〜R22に相当又は対応している。
R32の有機基としては、前記式(3)におけるR23の有機基と同様の有機基(炭化水素基や、ヒドロキシル基含有炭化水素基など)を用いることができる。R32に係るヒドロキシル基含有炭化水素基としては、「R28−CR29(OH)−CR30R31H2−」基(R28〜R31は前記に同じ)が好適である。
このようなアミン系化合物(β−アミノアルコール系化合物)には、エタノールアミン系化合物が含まれる。エタノールアミン系化合物としては、例えば、ジ(ヒドロキシエチル)アミン(いわゆる「ジエタノールアミン」または2,2´−ジオキシジエチルアミン)、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシメチルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシプロピルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシイソプロピルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシブチルアミン等のジアルコールアミン;ジ(2−メチル−ヒドロキシエチル)アミン、ジ(2−エチル−ヒドロキシエチル)アミン、ジ(2−プロピル−ヒドロキシエチル)アミン、ジ(2−イソプロピル−ヒドロキシエチル)アミン、ジ(2−ブチル−ヒドロキシエチル)アミン等のジ(2−アルキル−ヒドロキシエチル)アミン;N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミン;N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−プロピルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−イソプロピルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ブチルアミン等のN−ヒドロキシエチル−N−アルキルアミンなどが挙げられる。
[カルボニル系化合物(b)]
カルボニル系化合物(b)としては、例えば、下記式(6)で表されるカルボニル系化合物を用いることができる。
[式(6)において、R
33、R
34は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基を示す。]
前記式(6)において、R33、R34の炭化水素基としては、前記式(2b)におけるR16、R17の炭化水素基と同様の炭化水素基を用いることができる。R33、R34の炭化水素基としては、R16、R17の炭化水素基と同様に、置換基を有していてもよい。
また、R33、R34は、R16、R17と同様に、同一であってもよく、異なっていてもよい。従って、R33、R34としては、両方とも水素原子であってもよく、一方が水素原子で且つ他方が炭化水素基であってもよく、両方とも炭化水素基であってもよい。なお、R33、R34は、前記式(2b)におけるR16、R17に相当又は対応している。
具体的には、カルボニル化合物(b)としては、アルデヒド類である場合、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、t−ブチルアルデヒド、s−ブチルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド類;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド類などが挙げられる。
また、カルボニル化合物(b)としては、ケトン類である場合、例えば、ジメチルケトン(アセトン)、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルt−ブチルケトン、メチルs−ブチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソブチルケトン、エチルt−ブチルケトン、エチルs−ブチルケトン、エチルペンチルケトン、エチルヘキシルケトン、エチルヘプチルケトン、エチルオクチルケトン、エチル2−エチルヘキシルケトン、ジプロピルケトン、プロピルイソプロピルケトン、プロピルブチルケトン、プロピルイソブチルケトン、プロピルt−ブチルケトン、プロピルs−ブチルケトン、プロピルペンチルケトン、プロピルヘキシルケトン、プロピルヘプチルケトン、プロピルオクチルケトン、プロピル2−エチルヘキシルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジt−ブチルケトン、ジs−ブチルケトン、ジペンチルケトン、ジヘキシルケトン、ジペンチルケトン、ジオクチルケトン等の脂肪族ケトン類(例えば、C1-20アルキル−C1-20アルキルケトン)などが挙げられる。
なお、カルボニル系化合物(b)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法]
イミン・オキサゾリジン系化合物(A)[イミン系化合物(A1)又はオキサゾリジン系化合物(A2)]は、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させる工程(「高反応工程(X)」と称する場合がある)を具備する製造方法により製造されている。このように、高反応工程(X)では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下で、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応を行っている。
高反応工程(X)において、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、高反応工程(X)を行う際に、系内に存在していればよい。従って、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、高反応工程(X)を行う際に、系内に導入されてもよく、また、高反応工程(X)の前に、予め系内に導入されていてもよく、さらにまた、一部が高反応工程(X)の前に予め系内に導入され且つ残部が高反応工程(X)を行う際に系内に導入されていてもよい。本発明では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、通常、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とが、所定の割合で含まれている系内に、導入される。なお、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、アミン系化合物(a)のみが含まれている系内、カルボニル系化合物(b)のみが含まれている系内、一部のアミン系化合物(a)と一部又は全部のカルボニル系化合物(b)とが含まれている系内や、一部又は全部のアミン系化合物(a)と一部のカルボニル系化合物(b)とが含まれている系内に、導入することも可能である。この場合、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を導入した後に、残部のアミン系化合物(a)や、残部のカルボニル系化合物(b)を系内に導入することができる。
なお、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを混合するだけで、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応は、系内の温度が室温〜40℃程度の温度であっても、ある程度[例えば、40℃程度では、アミン系化合物(a)がイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に転化される転化率が40〜60モル%になる程度]までは進行し、系内の温度に応じた平衡が保たれる。このような平衡反応系に、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を導入することにより、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応により生成した水が、系内から、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)との反応により実質的に除去され、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応が進行する。
特に、カルボニル系化合物(b)が、水に容易に溶解することが可能なカルボニル系化合物(例えば、アセトン、ホルムアルデヒドなど)である場合、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応により生成した水に、カルボニル系化合物(b)が溶解するため、従来のような共沸を利用した方法(例えば、水と共沸させる際の溶媒としてジエチルエーテルを用いる方法など)では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)(例えば、いわゆる「アセトン型ケチミン系化合物」など)を工業的に製造することが極めて困難であり、実質的に不可能であった。しかし、本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を用いているので、カルボニル系化合物(b)が、水に溶解することが可能なカルボニル系化合物であっても、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を高純度で、しかも容易に製造することが可能である。
高反応工程(X)では、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させる際には、必要に応じて、加熱することができる。加熱により、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応をより一層迅速に進行させることができる。このような加熱の際の温度としては、例えば、40〜100℃(好ましくは45〜80℃、さらに好ましくは50〜70℃)の範囲から適宜選択することができる。特に、本発明では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応を行っているので、80℃未満の温度(特に70℃未満の温度、中でも60℃程度)であっても、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応が迅速に進行するので、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との平衡反応を、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)が生成する方向に迅速に進行させることができる。
また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下でのアミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応は、攪拌した条件下で行ってもよく、攪拌をせずに静置した条件下で行ってもよい。
なお、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を系内に導入する際には、滴下により徐々に導入する方法や、一括的に導入する方法を採用することができる。
従って、高反応工程(X)では、アミン系化合物(a)およびカルボニル系化合物(b)が含まれている系内(反応容器内)に、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を導入(添加)し、必要に応じて加熱することにより、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応を行うことが好ましい。なお、高反応工程(X)の前には[すなわち、高反応工程(X)の前工程としては]、通常、反応容器内に、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを導入する工程「混合工程(Z)」と称する場合がある]が行われる。
混合工程(Z)において、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との導入量(割合)としては、特に制限されないが、通常、平衡反応であるので一方の成分が過剰となる割合であり、特に、アミン系化合物(a)に対してカルボニル系化合物(b)が過剰となる割合であることが好ましい。具体的には、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との割合としては、例えば、カルボニル系化合物(b)/アミン系化合物(a)(モル比)=1/1〜10/1の範囲から適宜選択することができる。なお、カルボニル系化合物(b)は、アミン系化合物(a)に対してある程度の割合で過剰に用いることにより、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応を効果的に進行させることができる。そのため、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との割合としては、例えば、カルボニル系化合物(b)/アミン系化合物(a)(モル比)=1.5/1〜8/1であることが好ましく、中でも、カルボニル系化合物(b)/アミン系化合物(a)(モル比)=2/1〜6/1(特に、3/1〜5/1)であることが好適である。
混合工程(Z)において、反応容器内に、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを添加する方法は、特に制限されず、例えば、反応容器内に、アミン系化合物(a)およびカルボニル系化合物(b)のうち、いずれか一方を導入した後、他方を導入する方法、反応容器内に、アミン系化合物(a)およびカルボニル系化合物(b)を同時に導入する方法など、何れの方法であってもよい。なお、通常、反応容器内に、カルボニル系化合物(b)を導入した後、アミン系化合物(a)を導入する方法が採用される。アミン系化合物(a)や、カルボニル系化合物(b)を系内に導入する際には、滴下による導入方法、一括的な導入方法などの各種の導入方法を採用することができる。
本発明では、前述のように、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との平衡反応は、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを混合するだけであっても進行するが、混合工程(Z)の後、且つ高反応工程(X)の前に、溶剤との共沸により水を除去しながら、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させる工程[「共沸工程(Y)」と称する場合がある]が行われていてもよい。このように、高反応工程(X)の前工程として共沸工程(Y)を行うことにより、高反応工程(X)を行う際の系内におけるアミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応率を高めることができ、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の使用量を最小限に抑えることができる。もちろん、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の使用量を減らす必要(特に最小限に抑える必要)がない場合は、共沸工程(Y)を行う必要はない。共沸工程(Y)の実施の有無に関係なく、高反応工程(X)では、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応率[すなわち、アミン系化合物(a)がイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に転化される転化率]を最大限にまで高めることが可能である。
共沸工程(Y)では、水を共沸により除去するために、溶剤(共沸溶剤)が用いられている。このような共沸溶剤としては、特に制限されず、水に対する共沸溶剤として公知の共沸溶剤から適宜選択して用いることができる。共沸溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤などが挙げられる。なお、系内にカルボニル系化合物(b)として、液状のアルデヒド類やケトン類が存在する場合、このアルデヒド類やケトン類も共沸溶剤として利用することが可能である。共沸溶剤の使用量は、特に制限されず、系内に生成する水を共沸により除去することが可能な量であればよい。共沸溶剤は一種のみが用いられていてもよく、二種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。
共沸工程(Y)において、水と共沸溶剤とを共沸させる際の温度としては、系内の水や共沸溶剤の量、共沸溶剤の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、共沸溶剤としてトルエンを用いた場合、水とトルエンとを共沸させる際の温度としては、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応の初期では、通常、80℃程度であり、その後、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応の進行とともに連続的に又は段階的に上昇させ、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応の後期では、100℃以上となる。
なお、共沸工程(Y)において、水と共沸溶剤とを共沸させる際の時間としては、特に制限されず、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応率などに応じて適宜選択することができる。
従って、共沸工程(Y)では、アミン系化合物(a)およびカルボニル系化合物(b)が含まれている系内(反応容器内)に、共沸溶剤を導入(添加)した後、及び/又は共沸溶剤を導入(添加)しながら、加熱することにより、水と共沸溶剤との共沸を行い、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応を行うことが好ましい。
なお、共沸により、水と共沸溶剤との混合溶液が系内から除去されるが、この混合溶液は、そのまま廃棄してもよいが、混合溶液から共沸溶剤を分離して、この分離された共沸溶剤を、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応系内に再び導入(添加)して、水との共沸に利用することが好ましい。
また、水を共沸により除去させた後、系内に共沸溶剤が残存している場合、系内に残存している共沸溶剤は、公知の除去方法(例えば、蒸留方法など)を利用して系内から除去することができる。
なお、混合工程(Z)、共沸工程(Y)や高反応工程(X)では、反応速度を速くするため、必要に応じて、酸触媒などの触媒が用いられていてもよい。
[アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物及びその製造方法]
本発明のアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法は、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の存在下、重合性不飽和単量体を重合させてアクリル系ポリマー(C)を調製する工程(「重合工程(W)」と称する場合がある)を具備することを特徴としている。このように、本発明では、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の存在下で、重合性不飽和単量体の重合を行って、アクリル系ポリマー(C)を調製しているので、該製造方法により得られた反応混合物を、そのまま、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物として利用することができる。すなわち、本発明のアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物は、イミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物(A)とともに、アクリル系ポリマー(C)を含有しており、前述のようなアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製されている。そのため、本発明では、従来のように、アクリル系ポリマー(C)の調製の際に用いられた溶剤を除去する必要がない。
なお、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、アミン系化合物(a)を殆ど含んでおらず、純度が極めて優れている。そのため、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)中で、アクリル系ポリマー(C)を得るための重合を行っても、該重合を有効に行うことができる。本発明では、ケチミン化が100%でない場合は、イソシアネート化合物を添加し、アミノ基をブロックしてから、アクリル系ポリマー(C)を得るための重合を行ってもよい。
一方、純度が低いイミン・オキサゾリジン系化合物(A)中で[例えば、純度が90モル%以下のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)中で]、アクリル系ポリマー(C)を得るための重合を行った場合、アミン系化合物(a)による連鎖移動の効果などのため、重合が進行せず、前記重合を有効に行うことができない。
このように、重合工程(W)では、高反応工程(X)を具備する製造方法により反応混合物としてイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を得た後、該イミン・オキサゾリジン系化合物(A)が含まれている系内(反応容器内)で、重合性不飽和単量体の重合を行うことにより、アクリル系ポリマー(C)を製造して、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物を得ている。なお、重合性不飽和単量体の重合を行う際には、系内には、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)とともに、下記のアミン反応性化合物(D)やシラン系化合物(E)などが含まれていてもよい。すなわち、本発明では、高反応工程(X)を具備する製造方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含む反応混合物と、必要に応じてアミン反応性化合物(D)やシラン系化合物(E)などとの存在下、重合性不飽和単量体の重合を行うことができ、しかも、該重合により得られた反応混合物をアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物として用いることができる。
本発明のアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法において、重合性不飽和単量体の重合を行う際には、重合時に溶媒として利用されている溶媒系に、重合性不飽和単量体を滴下する方法を好適に採用することができる。この際、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、溶媒系に予め含まれていてもよく、滴下する重合性不飽和単量体とともに、溶媒系に滴下されてもよい。従って、重合工程(W)としては、下記の工程(W1)〜(W3)などが挙げられる。
重合工程(W1):イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含んでいる溶媒系に、重合性不飽和単量体を滴下して重合を行い、アクリル系ポリマー(C)を調製する工程
重合工程(W2):適宜な溶媒系に、重合性不飽和単量体と、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)とを滴下して重合を行い、アクリル系ポリマー(C)を調製する工程
重合工程(W3):イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含んでいる溶媒系に、重合性不飽和単量体と、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)とを滴下して重合を行い、アクリル系ポリマー(C)を調製する工程
本発明では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、溶媒系に予め含まれていることが好ましい。従って、重合工程(W)としては、重合工程(W1)や重合工程(W3)が好ましく、特に重合工程(W1)が好適である。
重合工程(W)では、重合性不飽和単量体の重合を効率よく行うために、公知乃至慣用の重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチル−4−トリメトキシシリルペントニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチル−4−メチルジメトキシシリルペントニトリル)等のアゾ化合物系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、t−アルキルパーオキシエステル、アセチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
また、前記重合の際には、安定性に影響を及ぼさない範囲で、連鎖移動剤、希釈剤等の添加剤などが含まれていてもよい。なお、前記希釈剤としては、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の調製時に得られる反応混合物中のカルボニル系化合物(b)(特にケトン類)などが挙げられ、該希釈剤は、重合工程(W)の途中や重合工程(W)の後に除去することができる。
なお、重合性不飽和単量体を重合させる際の温度としては、重合性不飽和単量体および重合開始剤の種類などに応じて適宜選択することができる。前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の存在下で、重合性不飽和単量体の重合を行う際の温度としては、例えば、20〜200℃(特に50〜150℃)程度であってもよい。また重合の際の反応時間は、特に制限されず、例えば、数時間〜数十時間であってもよい。
また、重合性不飽和単量体を滴下する際の滴下方法としては、特に制限されず、例えば、連続的な滴下方法や、間欠的な滴下方法などのいずれの滴下方法であってもよい。
重合工程(W)では、アクリル系ポリマー(C)を調製しているので、重合性不飽和単量体としては、アクリル系単量体が少なくとも含まれている重合性不飽和単量体が用いられていることが重要である。重合性不飽和単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。従って、重合性不飽和単量体としては、アクリル系単量体のみにより構成されていてもよく、アクリル系単量体と、該アクリル系単量体に対して共重合が可能な重合性不飽和単量体(共重合性単量体)とにより構成されていてもよい。なお、重合性不飽和単量体とは、重合性不飽和結合(特に、エチレン性の炭素−炭素二重結合)を有する単量体のことを意味している。
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸エステル]などが挙げられる。該(メタ)アクリル酸エステルには、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが含まれる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステル]などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルには、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが含まれる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルエステルなどが挙げられる。
また、共重合性単量体としては、特に制限されず、例えば、カルボキシル基含有単量体、酸無水物基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、アミノ基含有単量体、シアノ基含有単量体、スチレン系単量体、オレフィン系単量体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体、(N−置換)アクリルアミド系単量体、N−ビニルラクタム類、複素環含有ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキレングリコール系単量体、スルホン酸基含有ビニル系単量体、リン酸基含有ビニル系単量体、ハロゲン原子含有ビニル系単量体、多官能系単量体や、珪素原子含有基を有する重合性不飽和単量体など各種の重合性不飽和単量体を用いることができる。
このように、重合性不飽和単量体としては、エチレン性の炭素−炭素二重結合を有する基(ビニル基など)とともに、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボキシル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミノアルキルカルボニル基、シアノ基、炭化水素基(アリール基、シクロアルキル基など)、アシルオキシ基、置換オキシ基(アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基など)、置換アミノカルボニル基(ジアルキルアミノ−カルボニル基など)、複素環含有基、スルホン酸基、リン酸基、珪素原子含有基の他、イソシアネート基、ジチオカーボネート結合を有する基[特に、環内にジチオカーボネート結合を有する環状の基(さらには5員環の環状の基)]、チイラン環を有する基、ケチミン結合を有する基(ケチミン基;N−(1−アルキル−アルキリデン)−アミノ基など)、アルジミン結合を有する基(アルジミン基;アルキリデンアミノ基など)、オキサゾリジン環を有する基などの反応性・非反応性の各種の基を有していてもよい。
共重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸の他、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート(カルボキシエチルアクリレート等)などのカルボキシル基含有単量体;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチルなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アクリルアミド系単量体;N−ビニルカルボン酸アミド類;N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類;N−ビニルピリジン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどの複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどの(メタ)アクリル酸アルキレングリコール系単量体;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有ビニル系単量体;塩化ビニルなどのハロゲン原子含有ビニル系単量体の他、下記に具体例が示されている珪素原子含有基を有する重合性不飽和単量体などが含まれる。
また、共重合性不飽和単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの各種の多官能系単量体も適宜選択して用いることができる。
珪素原子含有基を有する重合性不飽和単量体としては、ビニル基が、2価の有機基を介して又は介さずに、反応性シリル基(アルコキシシリル基など)における珪素原子に結合している重合性不飽和単量体(ビニル基含有シランカップリング剤)を好適に用いることができる。ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介さずに、直接、反応性シリル基における珪素原子に結合している場合、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン;ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルメチルジイソプロポキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルエチルジプロポキシシラン、ビニルエチルジイソプロポキシシラン、ビニルエチルジブトキシシラン、ビニルプロピルジメトキシシラン、ビニルプロピルジエトキシシラン、ビニルプロピルジプロポキシシラン、ビニルプロピルジイソプロポキシシラン、ビニルプロピルジブトキシシラン等の(ビニル)アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(ビニル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
また、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合している場合、2価の有機基の種類に応じて、前述のような、ビニル基が、2価の有機基を介さずに、直接、反応性シリル基における珪素原子に結合している場合に対応したものが挙げられる。具体的には、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合しており、且つ前記2価の有機基がアルキレン基である場合、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリイソプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリブトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシラン;β−ビニルエチルメチルジメトキシシラン、β−ビニルエチルメチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジブトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジメトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジブトキシシラン等の(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
さらにまた、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合しており、且つ前記2価の有機基がカルボニルオキシアルキレン基である場合、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリイソプロポキシシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリブトキシシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジイソプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジブトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
従って、アクリル系ポリマー(C)は、前述のような重合性不飽和単量体による重合体である。アクリル系ポリマー(C)は、直鎖状の形態、架橋された形態などの何れの形態を有していてもよい。また、アクリル系ポリマー(C)は、共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの何れの形態で共重合された共重合体であってもよい。
アクリル系ポリマー(C)は、例えば、下記に示されるようなアミン反応性化合物(D)が硬化成分(樹脂成分)として使用されている硬化性組成物の物性を改善するために用いることができる。そのため、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物において、アクリル系ポリマー(C)の割合としては、特に制限されず、硬化性組成物の目的とする物性などに応じて適宜設定することができる。具体的には、アクリル系ポリマー(C)としては、例えば、下記に示される硬化性組成物中のアミン反応性化合物(D)100質量部に対して1〜150質量部(好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは40〜80質量部)程度となる割合の範囲から選択することができる。
なお、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物中には、通常、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)又はその誘導体(水との反応により得られた反応生成物)が含まれているが、該アミン非反応型水反応性液状化合物(B)又はその誘導体は、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の調製前や調製後に取り除かれていてもよい。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン系化合物(a)に対する反応性官能基を含有するアミン反応性化合物(D)とを少なくとも含有しており、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)が、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)、または前記アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製されたアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物中のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)であることを特徴としている。すなわち、硬化性組成物は、(1)イミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン反応性化合物(D)とを含有する硬化性組成物であってもよく、(2)イミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アクリル系ポリマー(C)と、アミン反応性化合物(D)とを含有する硬化性組成物であってもよい。従って、このような硬化性組成物は、アミン反応性化合物(D)等の硬化成分(主剤)と、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)等の硬化剤とが予め混合されているので、1液型の硬化性組成物である。
なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)、またはイミン・オキサゾリジン系化合物(A)およびアクリル系ポリマー(C)を含むアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物は、それぞれ、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法、または前記アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製されているので、硬化性組成物中には、通常、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)又はその誘導体(水との反応により得られた反応生成物)が含まれているが、該アミン非反応型水反応性液状化合物(B)又はその誘導体は、硬化性組成物の調製前や調製後に取り除かれていてもよい。
アミン反応性化合物(D)としては、アミン系化合物(a)に対して反応性を有している官能基(反応性官能基)を含有する化合物(アミン反応性化合物)であれば特に制限されず、特に、潜在性硬化剤としてのイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)に対する反応性官能基を含有するアミン反応性化合物が好適に用いられる。すなわち、アミン反応性化合物(D)は、アミン系化合物(a)[特に、潜在性硬化剤としてのイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)]と反応することができる。該アミン反応性化合物(D)としては、分子内に、アミン系化合物(a)に対する反応性官能基を少なくとも2つ有するアミン反応性化合物(D)を好適に用いることができる。このようなアミン系化合物(a)に対する反応性官能基(アミン反応性官能基)としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、ジチオカーボネート結合(チオオキシ−チオカルボニル−オキシ結合)を有する基[ジチオカーボネート基;特に、環内にジチオカーボネート結合を有する環状の基(さらには5員環の環状の基)]、チイラン環を有する基(チイラン基)、電子吸引基含有ビニル基[2−カルボキシビニル基、2−(アルコキシカルボニル)ビニル基、2−シアノビニル基、2−カルボキシ−2−メチルビニル基、2−(アルコキシカルボニル)−2−メチルビニル基、2−シアノ−2−メチルビニル基など]、ビニルエステル部を有する基[2−(アシルオキシ)ビニル基、2−(アシルオキシ)−2−メチルビニル基など]などが挙げられる。アミン反応性化合物(D)は、アミン反応性官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。また、アミン反応性化合物(D)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アミン反応性化合物(D)としては、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を好適に用いることができ、特にエポキシ基含有化合物が好適である。エポキシ基含有化合物としては、エポキシ樹脂が好適であり、該エポキシ樹脂としては、特に制限されず、公知乃至慣用のエポキシ樹脂を用いることができる。なお、エポキシ樹脂は、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)[特に、イミン系化合物(A1)、なかでも、ケチミン系化合物]の加水分解により生成するアミン系化合物(a)と反応し得るエポキシ基を有していることが重要である。
具体的には、エポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂やこれらの誘導体(例えば、水添化物や臭素化物など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂の他、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、含窒素エポキシ樹脂(例えば、メタキシレンジアミンやヒダントイン等のアミンのエポキシ化物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンやトリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂など)、ゴム変性エポキシ樹脂(例えば、ゴム成分としてポリブタジエン等の合成ゴムや天然ゴムを含有するエポキシ樹脂など)、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂などが挙げられる。
なお、イソシアネート基含有化合物としては、ウレタン系プレポリマーを好適に用いることができる。このようなウレタン系プレポリマーとしては、ポリウレタンの原料として公知乃至慣用のウレタン系プレポリマー(特に、イソシアネート基末端ウレタン系ポリマー)を用いることができる。
硬化性組成物は、例えば、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン反応性化合物(D)とを混合する方法、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アクリル系ポリマー(C)と、アミン反応性化合物(D)とを混合する方法や、前記アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製されたアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物と、アミン反応性化合物(D)とを混合する方法などにより、調製することができる。従って、硬化性組成物としては、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により得られた反応混合物や、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により得られた反応混合物に、アミン反応性化合物(D)と、必要に応じてアクリル系ポリマー(C)とが加えられた混合物を用いることができる。
また、硬化性組成物は、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)や、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物を調製する際に、予めアミン反応性化合物(D)を用いることにより調製されていてもよい。具体的には、硬化性組成物は、例えば、アクリル系ポリマー(C)を調製する際の溶媒として、アミン反応性化合物(D)が含まれている溶媒を用いる方法、アクリル系ポリマー(C)を調製する際の重合性不飽和単量体を含む滴下物として、アミン反応性化合物(D)が含まれている滴下物を用いる方法や、これらを組み合わせた方法などにより、調製することができる。従って、硬化性組成物としては、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法における高反応工程(X)や、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法における重合工程(W)で、溶媒系や滴下物系にアミン反応性化合物(D)が含まれている場合、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により得られた反応混合物や、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により得られた反応混合物をそのまま用いることができる。
なお、硬化性組成物が、さらに、下記に示されるようなシラン系化合物(E)や硬化触媒(F)などを含有している場合、これらの化合物は、適宜な段階[例えば、アミン反応性化合物(D)と同様の添加段階など]で添加し混合することにより硬化性組成物を調製することができる。
このように、本発明では、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法や、前記アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製された反応混合物を、精製せずに、そのままの状態で用いて、硬化性組成物を調製することができる。
なお、硬化性組成物の調製において、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)またはアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物と、アミン反応性化合物(D)の他、下記に示されるシラン系化合物(E)や硬化触媒(F)、他の成分(添加剤など)などとの混合(混練)は、窒素雰囲気下及び/又は減圧下で行うことが好ましい。また、脱水を行いながら、混合することが望ましい。
また、添加剤などに水分が含まれている場合には、貯蔵中に硬化が生じて貯蔵安定性が低下する場合があるので、添加剤の水分を脱水除去していることが好ましく、該水分の脱水処理は、添加剤を配合する前に行っていてもよく、アミン反応性化合物(D)などに添加剤を配合した後に行ってもよい。このような水分の脱水処理方法としては、例えば、加熱及び/又は減圧による脱水処理方法などが挙げられる。
なお、本発明の硬化性組成物では、アミン反応性化合物(D)として、エポキシ基含有化合物(特に、エポキシ樹脂)が用いられている場合、アクリル系ポリマー(C)として、共重合性不飽和単量体として珪素原子含有基を有する重合性不飽和単量体が用いられたアクリル系ポリマー(C)を用いることにより、アミン反応性化合物(D)としてのエポキシ基含有化合物と、アクリル系ポリマー(C)との相溶性を高めることができる。そのため、硬化性組成物としては、アクリル系ポリマー(C)として、共重合性不飽和単量体として少なくとも珪素原子含有基を有する重合性不飽和単量体が用いられたアクリル系ポリマー(C)が用いられていることが好ましく、特に、共重合性不飽和単量体として少なくとも反応性シリル基含有単量体が用いられたアクリル系ポリマー(C)[反応性シリル基を含有するアクリル系ポリマー(C)]が用いられていることが好適である。
本発明では、硬化性組成物には、さらに、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(E)[単に「シラン系化合物(E)」と称する場合がある]が含まれていてもよい。シラン系化合物(E)は、反応性希釈剤や、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の安定化剤としての機能を有している。なお、シラン系化合物(E)は、液状の形態を有している場合、アクリル系ポリマー(C)の重合時の溶媒としても利用可能である。シラン系化合物(E)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、シラン系化合物(E)において、加水分解性珪素原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基または炭化水素−オキシ基(アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基など)が直接に又は他の基を介して珪素原子に結合した形態の基などが挙げられる。加水分解性珪素原子含有基において、珪素原子に結合しているヒドロキシ基や炭化水素−オキシ基の数は、1つの珪素原子に対して1〜4個である。
シラン系化合物(E)は、加水分解性珪素原子含有基を有しているので、水に対して反応性を有している。なおシラン系化合物(E)としては、23℃において、液状であっても、液状でなくてもよい。また、シラン系化合物(E)は、アミン系化合物(a)に対する反応性を有していてもよく、有していなくてもよい。
本発明では、シラン系化合物(E)としては、例えば、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の項で例示のシラン系化合物[例えば、テトラアルコキシシラン系化合物、アルキルトリアルコキシシラン系化合物、ジアルキルジアルコキシシラン系化合物、ビニルトリアルコキシシラン系化合物、(ビニル)アルキルジアルコキシシラン系化合物、ビニルアルキルトリアルコキシシラン系化合物、(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシラン系化合物、シリコーン系オリゴマーなど]の他、ビニル基以外の各種基を有するシラン系化合物[例えば、エポキシ基を含有するシラン系化合物、イソシアネート基を含有するシラン系化合物、アミノ基を含有するシラン系化合物、ケチミン基、ジチオカーボネート基、チイラン基、(メタ)アクリロキシ基など]や、ポリマータイプのシラン系化合物などを用いることができる。
シラン系化合物(E)において、エポキシ基を含有するシラン系化合物としては、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等のグリシドキシアルキルトリアルコキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のグリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するグリシドキシアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。また、他の基を有するシラン系化合物としては、前記に例示のエポキシ基を含有するシラン系化合物に対応するものなどが挙げられる。さらに、ポリマータイプのシラン系化合物としては、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン、ポリテトラプロポキシシラン、ポリテトライソプロポキシシラン、ポリテトラブトキシシラン等のポリテトラアルコキシシラン;ポリ(メトキシエトキシシラン)等のポリ(アルコキシアルコキシシラン);ポリ(メトキシシラン)、ポリ(エトキシシラン)、ポリ(プロポキシシラン)、ポリ(イソプロポキシシラン)、ポリ(ブトキシシラン)等のポリ(アルコキシシラン);ポリ(メトキシメチルシラン)、ポリ(メトキシエチルシラン)、ポリ(エトキシメチルシラン)等のポリ(アルコキシアルキルシラン)などが挙げられる。
シラン系化合物(E)としては、エポキシ基を含有するシラン系化合物(例えば、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシランやグリシドキシアルキルジアルキルアルコキシシラン等のエポキシ基を含有するシラン系化合物など)が好適である。
また、本発明の硬化性組成物には、さらに、硬化触媒(F)が含まれていてもよい。硬化触媒(F)としては、アミン反応性化合物(D)における反応性官能基(例えば、エポキシ基含有化合物におけるエポキシ基など)を活性化させることができる硬化触媒などを用いることができる。なお、硬化性組成物が、反応性シリル基含有単量体をモノマー成分とするアクリル系ポリマー(C)を含有している場合、硬化触媒(F)として、反応性シリル基による硬化反応(縮合反応など)を促進させることができる硬化触媒を用いることもできる。反応性シリル基による硬化反応を促進させることができる硬化触媒は、アミン反応性化合物(D)における反応性官能基(例えば、エポキシ基含有化合物におけるエポキシ基など)を活性化させることもできる場合がある。
なお、アミン反応性化合物(D)による反応に際して、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)は、該アミン系化合物(a)とアミン反応性化合物(D)との反応における反応成分であるとともに、触媒としての機能も有している。
硬化触媒(F)としては、反応性シリル基による硬化反応を促進させることができる硬化触媒を好適に用いることができる。このような硬化触媒(F)としては、例えば、ポリオルガノシロキサンの硬化触媒として公知の硬化触媒などを用いることができる。具体的には、硬化触媒(F)としては、例えば、スズ系硬化触媒[ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)等のアルキルスズ系化合物など]、チタン系硬化触媒、鉄系硬化触媒、ジルコニウム系硬化触媒、ビスマス系硬化触媒、ホウ素系硬化触媒などが挙げられる。硬化触媒(F)としては、スズ系硬化触媒、チタン系硬化触媒が好ましく、特にスズ系硬化触媒が好適である。硬化触媒(F)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、前記硬化触媒(F)とともに、酸触媒(例えば、蟻酸、酢酸、モノクロロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸;塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸など)や、窒素原子含有触媒[例えば、トリエタノールアミン等の有機アミン;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノアルキルシラン;オルガノシリコン第4アンモニウム塩等の第4アンモニウム塩など]などの各種触媒や、助触媒などが用いられていてもよい。このような硬化触媒(F)などの触媒や助触媒は、硬化性組成物を調製する際に、系内に添加することにより用いられていてもよく、また、硬化性組成物の調製前で、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の調製時や、アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の調製時などで、予め、系内に添加することにより用いられていてもよい。
このように、本発明では、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)や、前記アクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製されたアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物中のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、予め、アミン反応性化合物(D)と混合された状態で利用されてもよく、また、使用時に、アミン反応性化合物(D)と混合することにより利用されてもよい。すなわち、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、1液型の硬化性組成物における硬化剤として用いられていてもよく、2液型の硬化性組成物における硬化剤として用いられていてもよい。
従って、本発明では、1液型の硬化性組成物、2液型の硬化性組成物などの硬化性組成物を調製することができる。1液型の硬化性組成物は、前述のように、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン反応性化合物(D)と、必要に応じてアクリル系ポリマー(C)などの他の成分とが、予め混合された形態の硬化性組成物である。一方、2液型の硬化性組成物は、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン反応性化合物(D)とが混合されておらず、使用時に、混合する形態の硬化性組成物である。なお、2液型の硬化性組成物では、アクリル系ポリマー(C)などの他の成分は、各成分の種類に応じて、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)又はアミン反応性化合物(D)の少なくとも何れか一方の側に予め混合されている。
なお、本発明において、「1液型の硬化性組成物」等の「1液型」とは、例えば、エポキシ系接着剤の分野で一般的にいわれている「1液型エポキシ系接着剤や2液型エポキシ系接着剤」における「1液型」のことを意味している。具体的には、1液型の硬化性組成物とは、例えば、エポキシ樹脂等のポリマー硬化成分(主剤)と、ケチミン系化合物等の硬化剤とが1つの容器に入れられた状態(例えば、混合している状態)で、実質的に販売可能なものを意味し、室温で長期間貯蔵(又は保管)されても、ゲル化や硬化がほとんど又は全く生じず、実質的に初期状態(初期の分散状態)を長期間保持することができるものを意味している。従って、1液型の硬化性組成物は、使用する際に、ポリマー硬化成分(エポキシ樹脂成分など)を、他の成分(硬化剤など)と混合する必要がなく、そのまま所定部位に塗布することにより、用いることができる。なお、貯蔵に係る長期間としては、例えば、6ヶ月以上、1年以上、1年6ヶ月以上など適宜選択可能であるが、少なくとも6ヶ月以上であることが好ましい。
一方、2液型の硬化性組成物とは、ポリマー硬化成分と、硬化剤又は助剤等の他の成分とが、それぞれ異なる容器に入れられている状態で販売され、使用する際に、これらのポリマー硬化成分と、該ポリマー硬化成分と異なる容器に入れられた硬化剤又は助剤等の他の成分とを混合し、この混合物を所定の部位に塗布して、使用されるものを意味している。従って、2液型の硬化性組成物は、基本的には、使用する際に2液を混合して1液としているだけであって、1液にすると硬化又はゲル化が生じるため、実質的な貯蔵安定性がなく、1液型としては実質的に販売は不可能なものである。なお、1液型として利用可能な硬化性組成物を、2液型の硬化性組成物として、ポリマー硬化成分と、硬化剤又は助剤等の他の成分とを、それぞれ異なる容器に入れた状態で販売することも可能である。
本発明における硬化性組成物は、1液型の硬化性組成物である場合、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法を経て得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン反応性化合物(D)とを少なくとも含有する混合物(組成物)を、窒素置換を施した容器に収納させることにより、製品(市販品)としての1液型の硬化性組成物(特に、湿気硬化性1液型の硬化性組成物)を含有する各種処理剤(接着剤やコーティング剤など)を製造することができる。また、本発明における硬化性組成物は、2液型の硬化性組成物である場合、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法を経て得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を少なくとも含有する硬化剤組成物と、アミン反応性化合物(D)を少なくとも含有する硬化成分組成物とを、それぞれ、各容器に収納させることにより(なお、少なくとも、硬化剤組成物を収納する容器は、窒素置換を施した容器であることが重要である)、製品(市販品)としての2液型の硬化性組成物(特に、湿気硬化性2液型の硬化性組成物)を含有する各種処理剤(接着剤やコーティング剤など)を製造することができる。
硬化性組成物において、アミン反応性化合物(D)の使用量(又は含有量)としては、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の種類や、アミン反応性化合物(D)の種類などに応じて適宜選択することができる。これは、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の種類により、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基(無置換アミノ基)の数(モル数)が異なり、一方、アミン反応性化合物(D)の種類により、アミン反応性化合物(D)におけるアミン系化合物(a)に対する反応性官能基の数(モル数)が異なるからである。例えば、アミン反応性化合物(D)におけるアミン系化合物(a)に対する反応性官能基1モルに対して、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基がnモル反応することが可能な場合は、アミン反応性化合物(D)と、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)との割合としては、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基のモル数/アミン反応性化合物(D)における反応性官能基のモル数が0.5n〜2nとなるような割合の範囲から選択することができ、特に0.8n〜1.2nとなるような割合であると、理想的な架橋構造を形成することができ、接着剤組成物又はコーティング剤組成物として優れた機械的強度を発揮させることができるようになる。
より具体的には、例えば、アミン反応性化合物(D)におけるアミン系化合物(a)に対する反応性官能基がエポキシ基である場合、アミン反応性化合物(D)におけるエポキシ基1モルに対して、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基は0.5モルの割合で反応することが可能である。従って、この場合、アミン反応性化合物(D)と、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)との配合割合としては、例えば、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基のモル数/アミン反応性化合物(D)におけるエポキシ基のモル数が0.25〜1.0(好ましくは0.4〜0.6)となるような割合の範囲から選択することができる。
また、例えば、アミン反応性化合物(D)におけるアミン系化合物(a)に対する反応性官能基がイソシアネート基である場合、アミン反応性化合物(D)におけるイソシアネート基1モルに対して、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基は1モルの割合で反応することが可能である。従って、この場合、アミン反応性化合物(D)と、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)との配合割合としては、例えば、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解により生成するアミン系化合物(a)のアミノ基のモル数/アミン反応性化合物(D)におけるイソシアネート基のモル数が0.5〜2.0(好ましくは0.8〜1.2)となるような割合の範囲から選択することができる。
また、本発明における硬化性組成物中にアクリル系ポリマー(C)が含まれている場合、アクリル系ポリマー(C)の配合割合としては、アクリル系ポリマー(C)の種類や、目的とする硬化物の物性などに応じて適宜選択することができる。具体的には、アクリル系ポリマー(C)の割合としては、前述と同様に、アミン反応性化合物(D)100質量部に対して1〜150質量部(好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは40〜80質量部)程度の範囲から選択することができる。
さらにまた、本発明における硬化性組成物中にシラン系化合物(E)が含まれている場合、シラン系化合物(E)の割合としては、特に制限されず、シラン系化合物(E)の種類の他、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)やアミン反応性化合物(D)等の種類などに応じて適宜選択することができる。シラン系化合物(E)との割合としては、例えば、アミン反応性化合物(D)100質量部に対して50質量部以下(例えば、1〜50質量部、好ましくは5〜45質量部、さらに好ましくは10〜40質量部)程度の範囲から選択することができる。
なお、硬化触媒(F)を用いる場合、硬化触媒(F)の使用量(配合割合)としては、特に制限されないが、例えば、アミン反応性化合物(D)100質量部に対して0.001〜10質量部(好ましくは0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部)の範囲から選択することができる。
本発明では、硬化性組成物には、添加剤[例えば、充填剤(炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、シリカや珪砂など)、可塑剤、顔料(酸化チタン、カーボンブラックなど)、染料、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着付与剤、分散剤、揺変剤(又はチクソトロピー付与剤)(例えば、ヒュームドシリカ、アマイドワックス、植物油誘導体、ヒィブリル化繊維など)、反応性希釈剤、増量剤、改質剤、ポリマー粉(例えば、アクリル系ポリマー粉など)など]の他、他の潜在性硬化剤(例えば、他のケチミン系化合物、アルジミン系化合物、オキサゾリジン系化合物など)や粘度調整剤(例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類等の溶剤など)などが含まれていてもよい。また、硬化性組成物には、接着性や付着性を損なわない範囲で、例えば、変性シリコーン、シリル基末端ウレタンポリマー、シリル基を有し且つ主鎖がポリオキシアルキレン骨格を有しているポリマー、カルボン酸ビニルエステル系化合物などが添加されていてもよい。また、これらの配合割合は、公知乃至慣用の割合の中から適宜選択することができる。本発明では、これらの添加剤による水分の影響を可能な限り除去することが、硬化性組成物の貯蔵安定性に好結果を与えるため好ましい。
なお、硬化性組成物が2液型の硬化性組成物である場合、前記添加剤などは、それぞれの種類などに応じて、硬化成分としてのアミン反応性化合物(D)を含む硬化成分組成物、硬化剤としてのイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含む硬化剤組成物のうち、適宜な側又は両方の側に添加することができる。
本発明における硬化性組成物では、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法を経て製造されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)が潜在性硬化剤(特に、湿気分解型の潜在性硬化剤)として用いられている。前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、純度が極めて優れているので、このイミン・オキサゾリジン系化合物(A)が用いられた硬化性組成物は、1液型の硬化性組成物であっても、貯蔵安定性が極めて優れている。なお、硬化性組成物が1液型の硬化性組成物である場合、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)自体は、アミン反応性化合物(D)に対する反応性を有していないので、湿気が遮断されている容器中では、1液型の硬化性組成物は、通常、安定的に存在しており、硬化反応が生じない。しかし、1液型の硬化性組成物が一旦容器から取り出されると、空気中の湿気によって、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の加水分解が生じてアミン系化合物(a)が生成し、該アミン系化合物(a)がアミン反応性化合物(D)と反応して架橋構造が形成されて硬化が進行し、優れた機械的強度及び接着性が発現される。しかも、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)として適宜選択することにより、空気中の湿気によって容易に加水分解を進行させてアミン系化合物(a)を生成させて、このアミン系化合物(a)をアミン反応性化合物(D)(特に、エポキシ基含有化合物)と反応させることができるので、接着性を極めて迅速に発現させ、しかも優れた機械的強度を発現させることも可能である。このように、本発明における硬化性組成物としては、実質的に1液型の硬化性組成物としても利用することができ、接着剤やコーティング剤等として利用する際には、優れた初期密着性(初期接着性や初期付着性など)を発揮させることができる。もちろん、硬化性組成物が2液型の硬化性組成物である場合も、同様に、優れた初期密着性(初期接着性や初期付着性など)を発揮させることができる。
特に、本発明では、硬化性組成物中にはアクリル系ポリマー(C)が用いられていてもよいので、硬化性組成物による硬化物の物性を、目的とする各種物性に調整することができる。しかも、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)およびアクリル系ポリマー(C)として、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の存在下、重合性不飽和単量体を重合させて得られる混合物を用いることができるので、貯蔵安定性が極めて優れている硬化性組成物を得ることができる。従って、本発明における硬化性組成物は、実用的に極めて優れた硬化特性を発揮することができるだけでなく、極めて優れた貯蔵安定性を有することができる。
なお、硬化性組成物による硬化物の物性は、アクリル系ポリマー(C)の種類やその配合割合などに応じて、目的とする各種物性に調整することができる。硬化性組成物による硬化物の改良する物性としては、例えば、柔軟性、光沢性、塗り継ぎ性、表面白化防止性、密着性(付着性や接着性等)などが挙げられる。
このような硬化性組成物は、各種処理剤として利用することができる。具体的には、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法を経て製造されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含む硬化性組成物は、接着剤[例えば、自動車内装用接着剤、各種車両用接着剤(例えば、電車等の車両に用いられる接着剤)、建築内装工事用接着剤、建材用接着剤、電気・電子部品用接着剤、家具用接着剤、家庭用接着剤など]、コーティング剤[例えば、塗料(例えば、コンクリート用塗料、金属用塗料、木材用塗料、タイル用塗料、プラスチック用塗料、重防食塗料など)、トップコート剤、フロアポリッシュなど]、アンダーコート剤(下塗り剤)の他、バインダ(例えば、インキ、顔料プリント、セラミック材料、不織布、繊維収束剤、ゴム、木粉等におけるバインダ)、シーリング材、封止材(シーラー)、ポッティング材、パテ材、プライマー材、ラミネート材、サイジング剤等として用いることができる。
特に、硬化性組成物が、1液型の硬化性組成物である場合、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)、アミン反応性化合物(D)(エポキシ基含有化合物など)およびアクリル系ポリマー(C)を含んでいる1液型の硬化性組成物であるにもかかわらず、貯蔵安定性が優れており、使用時に他の液(硬化剤など)と混合する必要がなく、そのままの状態で塗布して用いることができる。この際、1液型であるので、2液型とは異なり、使用に際して配合や混合、計量などを行う必要がないので、配合ぶれや混合不良などの人為的なミスを効果的に防止することができ、優れた再現性を発揮させることができる。
従って、1液型の硬化性組成物は、硬化成分(樹脂成分)と硬化剤とによる2液型の樹脂組成物に比べて、優れた作業性で使用することができるとともに、作業時間を大幅に短縮することができる。さらに、硬化の際には、加熱を必要とせず、常温であっても硬化させることができ、また、加熱により硬化を促進させることも可能である。
また、本発明の硬化性組成物(1液型または2液型の硬化性組成物)は、前述のように、幅広い用途で利用することができ、しかも、幅広い基材に対して密着性(付着性や接着性など)を発揮させることができるとともに、各種物性(柔軟性、接着性、光沢性など)を向上させることができ、各種用途において優れた作業性で用いることができる。特に、硬化触媒(F)を用いることにより、優れた速硬化性も発揮させることができ、例えば、接着剤として用いた場合、収まり性を良好にすることができるので、接着に際しての養生や仮押さえに要する時間が短く、被着体同士を接着させる作業性が良好であり、作業時間を大幅に短縮することができ、一方、コーティング剤として用いた場合、塗布層(塗膜)の形成に際しての養生に要する時間が短く、この場合も、被塗布体に塗布層を形成させる作業性が良好であり、作業時間を大幅に短縮することができる。
なお、本発明において、硬化性組成物を接着剤として利用する場合は、被着体(適用基材)としては、両被着体は多孔質、非多孔質のいずれであってもよいが、少なくとも一方が多孔質であることが好ましい。このような被着体としては、同一の素材からなる被着体同士であってもよく、異なる素材からなる被着体であってもよい。また、硬化性組成物をコーティング剤として利用する場合は、塗布層を形成させる被塗布体(適用基材)は、特に制限されず、多孔質、非多孔質のいずれであってもよい。
より具体的には、本発明における硬化性組成物は、アミン反応性化合物(D)がエポキシ基含有化合物(エポキシ樹脂など)であっても、無機材料(コンクリート等)や金属材料(アルミニウム、ステンレス等)の他、各種プラスチック材料などに対しても良好な密着性(付着性や接着性等)を発揮することができる。特に、アクリル系ポリマー(C)を用いることにより、より一層、プラスチック材料等に対する密着性(付着性や接着性等)を向上させることができる。従って、本発明における硬化性組成物(1液型又は2液型の硬化性組成物)は、種々の用途(接着や塗膜形成など)において、例えば、無機材料(例えば、コンクリート、モルタル、タイル、石など)、金属材料(例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレスなど)、木質材料(例えば、木材、チップボード、パーチクルボード、ハードボード、MDFなどの木質ボード、合板など)、紙質材料(例えば、段ボール紙、板紙、クラフト紙等の紙や、紙類似物質、防湿紙等の加工紙など)、繊維材料(例えば、不織布、織布など)、革材料、ガラス材料、磁器材料、各種プラスチック材料[例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体等)、ポリウレタン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等)、ポリカーボネート系樹脂など]、ゴム材料[例えば、天然ゴム;オレフィン系ゴム(エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等)、スチレン系ゴム(スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム等)、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコンゴム等の合成ゴムなど]などの各種の基材に対して適用することができる。これらの基材の形状は、特に制限されず、フィルム又はシート状、板状、角柱状、円柱状などどのような形状であってもよい。また、基材が、プラスチック材料により形成されている場合は、発泡体等であってもよい。
なお、これら基材に適用する際には、刷毛やローラー等による塗布、噴霧、浸漬等の公知乃至慣用の方法を採用することができる。また、本発明における硬化性組成物を、基材(被着体や被塗布体など)に塗布した後は、各種乾燥条件(自然乾燥、強制乾燥等)で乾燥を行うことができる。
[イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法]
本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法は、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)とともに、不純物としてアミン系化合物(a)が含まれている溶液中に、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を添加し、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させて、アミン系化合物(a)をイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に転化させる工程[「精製工程(α)」と称する場合がある]を具備することを特徴としている。このように、本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を用いているので、系内に含まれている水をアミン非反応型水反応性液状化合物(B)との反応により消費させて、系内から実質的に除去し、これにより、系内にアミン系化合物(a)が不純物として含まれていても、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との平衡反応が、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とが反応する方向に進行して、アミン系化合物(a)を系内から除去させて、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を効率よく精製して、純度を高めている。
しかも、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を精製する際に、不純物としてのアミン系化合物(a)を単に除去しているのではなく、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)に転化しているので、該イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を有効に高めることができるだけでなく、系内のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の含有量も増加させることができる。
このように、本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法では、除去が困難なアミン系化合物(a)を直接的に取り除いて除去させているのではなく、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応により生成する水をアミン非反応型水反応性液状化合物(B)と反応させて、実質的に除去させており、これにより、アミン系化合物(a)を、カルボニル系化合物(b)との反応によりイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に転化させて、実質的に除去することにより、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度を高めている。
本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)を、90モル%を超える純度にまで精製することができ、例えば、91〜100モル%(好ましくは92〜99.9モル%、さらに好ましくは95〜99.8モル%)の純度にまで精製することが可能である。なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の純度は、前述のように、アミノ基を有していないイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と、アミン系化合物(a)[未反応のアミン系化合物(a)や、アミノ基を有しているイミン・オキサゾリジン系化合物(A)など]との総量(モル数)に対するアミノ基を有していないイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の量(モル数)の割合(モル%)を意味しており、前記と同様のガスクロマトグラフィー測定法により、同様にして求められる。
なお、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応は、前述のように、平衡反応であるので、両者を混合しただけでは、平衡に達した時点で止まってしまい、それ以上に反応率が上昇しない。また、生成した水を共沸等により除去しても、反応率は、前述のように、ある程度(70〜90%程度)までは上昇させることができるが、それ以上は極めて困難である。
精製工程(α)において、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、精製工程(α)を行う際に系内に存在していればよい。従って、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、精製工程(α)を行う際に系内に導入されてもよく、精製工程(α)の前に予め系内に導入されていてもよい。もちろん、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)は、一部を予め系内に導入し、残部を精製工程(α)の際に系内に導入する方法などの他の方法で用いることも可能である。
また、精製工程(α)の際には、系内にカルボニル系化合物(b)が存在していることが重要である。従って、カルボニル系化合物(b)は、精製工程(α)を行う際に、系内に添加されてもよく、精製工程(α)の前に、予め系内に添加されていてもよい。また、精製するためのイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含む系中に、カルボニル系化合物(b)が含まれている場合、このカルボニル系化合物(b)を用いることができる。
従って、精製工程(α)で利用されるカルボニル系化合物(b)としては、アミン系化合物(a)が含まれている溶液中に予め含まれていたカルボニル系化合物(b)であってもよく、またアミン系化合物(a)が含まれている溶液中に添加されたカルボニル系化合物(b)であってもよい。なお、アミン系化合物(a)が含まれている溶液中へのカルボニル系化合物(b)の添加は、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加前、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加後、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加時などのいずれの段階であってもよい。すなわち、アミン系化合物(a)が含まれている溶液中に添加されたカルボニル系化合物(b)としては、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加前に添加されたカルボニル系化合物(b)であってもよく、また、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加後に添加されたカルボニル系化合物(b)であってもよく、さらにまた、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加とともに添加されたカルボニル系化合物(b)であってもよい。本発明のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法では、カルボニル系化合物(b)は、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の添加前に少なくとも添加することが好ましい。
特に、本発明では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製に際しては、カルボニル系化合物(b)は、系内に含まれているアミン系化合物(a)に対して過剰な量で含まれていることが好ましい。系内にカルボニル系化合物(b)が、系内に含まれているアミン系化合物(a)を除去するのに十分な量で含まれていない場合、カルボニル系化合物(b)を系内に添加することができる。なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製後は、カルボニル系化合物(b)は、蒸留などの公知の除去方法を利用して、系内から除去させることができる。
もちろん、精製工程(α)では、不純物としてのアミン系化合物(a)を除去して、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製を行うため、精製するためのイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を含む系中には、アミン系化合物(a)が含まれている。
なお、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)、アミン系化合物(a)やカルボニル系化合物(b)などは前述の通りである。
このようなイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製は、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法に準じて行うことができる。
具体的には、精製工程(α)では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水とを反応させるために[すなわち、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)とを反応させるために]、必要に応じて、加熱することができる。このような加熱の際の温度としては、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造の場合と同様に、例えば、40〜100℃(好ましくは45〜80℃、さらに好ましくは50〜70℃)の範囲から適宜選択することができる。特に、本発明では、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)の存在下、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製[すなわち、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との反応]を行っているので、80℃未満の温度(特に70℃未満の温度、中でも60℃程度)であっても、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)と水との反応が迅速に進行し、アミン系化合物(a)とカルボニル系化合物(b)との平衡反応を、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)が生成する方向に迅速に進行させることができる。
また、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製は、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造の場合と同様に、攪拌した条件下で行ってもよく、攪拌をせずに静置した条件下で行ってもよい。
従って、精製工程(α)では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)とともに、アミン系化合物(a)を不純物として含む系内(反応容器内)に、必要に応じて、カルボニル系化合物(b)を導入(添加)した後、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)を導入(添加)し、必要に応じて加熱することにより、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製を行うことが好ましい。
なお、アミン非反応型水反応性液状化合物(B)や、カルボニル系化合物(b)を系内に導入(添加)する方法としては、特に制限されず、前記イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造の場合と同様に、一括的に導入する方法、滴下により導入する方法などの何れの方法であってもよい。
このようなイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、前述のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と同等の純度を有することができるので、前述のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)と同様にして用いることができる。具体的には、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、例えば、前述のアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法において、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に代えて用いることができる。また、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)は、例えば、前述の硬化性組成物(1液型又は2液型の硬化性組成物)において、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に代えて用いることができる。
従って、前述のアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に代えて又は併用して、前述のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)が用いられていてもよい。また、前述の硬化性組成物では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に代えて又は併用して、前述のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)が用いられていてもよい。さらに、前述の硬化性組成物では、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)として、イミン・オキサゾリジン系化合物(A)の製造方法により調製されたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)に代えて又は併用して、前述のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)の精製方法により得られたイミン・オキサゾリジン系化合物(A)を用いたアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物の製造方法により調製されたアクリル系ポリマー含有イミン系又はオキサゾリジン系組成物中のイミン・オキサゾリジン系化合物(A)が用いられていてもよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
[アミン系化合物(a)]
(1)ノルボルナンジアミン(商品名「NBDA」三井化学社製;「アミン(a1)」と称する場合がある)
(2)イソホロンジアミン(商品名「IPDA」ピィー・ティー・アイジャパン社製;「アミン(a2)」と称する場合がある)
(3)ジエタノールアミン(東京化成社製;「アミン(a3)」と称する場合がある)
[カルボニル系化合物(b)]
(1)ジエチルケトン(「カルボニル(b1)」と称する場合がある)
(2)メチルイソブチルケトン(「カルボニル(b2)」と称する場合がある)
(3)メチルエチルケトン(「カルボニル(b3)」と称する場合がある)
[脱水剤]
(1)商品名「TSL−8124」(GE東芝シリコーン社製;テトラエトキシシラン;「脱水剤(B1)」と称する場合がある)
(2)商品名「TSL−8114」(GE東芝シリコーン社製;テトラメトキシシラン;「脱水剤(B2)」と称する場合がある)
(3)商品名「MS−51」(三菱化学社製;テトラメトキシシランのオリゴマー(4〜5量体);「脱水剤(B3)」と称する場合がある)
(4)商品名「KBM1003」(信越化学工業社製;ビニルトリメトキシシラン;「脱水剤(B4)」と称する場合がある)
(5)商品名「シラザン」(東京化成社製;ヘキサメチルジシラザン;「脱水剤(B5)」と称する場合がある)
(6)商品名「テトラメチルチタネート」(東京化成社製;テトラメトキシチタン;「脱水剤(B6)」と称する場合がある)
(7)無水硫酸マグネシウム(試薬;東京化成社製;「脱水剤(B7)」と称する場合がある)
[アミン系化合物のケチミン化率又はオキサゾリジン化率の測定方法]
ケチミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物を含む反応混合物を、トルエンに溶解させて、ガスクロマトグラフィー測定法により、アミノ基を有していないケチミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物のモル数(M1)と、アミノ基を有している化合物(未反応のアミン系化合物や、アミノ基を有しているケチミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物など)のモル数(M2)とを求め、アミン系化合物のケチミン化率又はオキサゾリジン化率を次式を利用して算出する。
ケチミン化率又はオキサゾリジン化率(モル%)=[M1/(M1+M2)]×100
なお、ガスクロマトグラフィー測定における測定条件は下記の通りである。
(ガスクロマトグラフィーの測定条件)
・測定方法:FID法
・温度:80℃で1分間の後、10℃/minの温度上昇比率で温度を280℃まで上昇させ、280℃で1分間の条件
・カラム温度:280℃(Injection)、280℃(Detector)
・キャリアガス:ヘリウム(He)(流量:30ml/min)、水素(H2)(流量:30ml/min)、空気(流量:400ml/min)
(実施例1)
アミン(a1)(ノルボルナンジアミン):154部、およびカルボニル(b1)(ジエチルケトン):344部をフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、カルボニル(b1)が環流する温度(120〜150℃)で12時間環流して反応を行って、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(1a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(1a)をトルエンに溶解させて、前記の「アミン系化合物のケチミン化率又はオキサゾリジン化率の測定方法」により、ケチミン化率を測定したところ、89.66モル%であった。
次に、前記反応混合物(1a):41.35部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を2.34部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(1b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(1b)をトルエンに溶解させて、前記の「アミン系化合物のケチミン化率又はオキサゾリジン化率の測定方法」により、ケチミン化率を測定したところ、98.48モル%であった。なお、反応混合物(1b)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例2)
アミン(a2)(イソホロンジアミン):170部、およびカルボニル(b1)(ジエチルケトン):344部をフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、カルボニル(b1)が環流する温度(120〜150℃)で24時間環流して反応を行って、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(2a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(2a)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、68.85モル%であった。
次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を4.15部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(2b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(2b)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、95.84モル%であった。なお、この反応混合物(2b)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例3)
アミン(a1)(ノルボルナンジアミン):154部、およびカルボニル(b2)(メチルイソブチルケトン):400部をフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、カルボニル(b2)が環流する温度(120〜150℃)で12時間環流して反応を行って、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(3a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(3a)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、85.83モル%であった。
次に、前記反応混合物(3a):35.06部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を0.80部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b2)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(3b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(3b)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、96.45モル%であった。なお、この反応混合物(3b)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例4)
アミン(a1)(ノルボルナンジアミン):154部、およびカルボニル(b3)(メチルエチルケトン):288部と、トルエン:200部とをフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、トルエンとカルボニル(b3)とが環流する温度(120〜150℃)で12時間環流して反応を行った。その後、トルエンを蒸留により取り除き、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(4a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(4a)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、83.94モル%であった。
次に、前記反応混合物(4a):37.26部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を3.68部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b3)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(4b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(4b)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、99.77モル%であった。なお、この反応混合物(4b)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例5)
アミン(a3)(ジエタノールアミン):103部、およびカルボニル(b1)(ジエチルケトン):344部と、トルエン:200部とをフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、トルエンとカルボニル(b1)とが環流する温度(120〜150℃)で24時間環流して反応を行った。その後、トルエンを蒸留により取り除き、オキサゾリジン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(5a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(5a)をトルエンに溶解させて、前記の「アミン系化合物のケチミン化率又はオキサゾリジン化率の測定方法」により、オキサゾリジン化率を測定したところ、90.69モル%であった。
次に、前記反応混合物(5a):38.80部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を2.13部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、オキサゾリジン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(5b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(5b)をトルエンに溶解させて、前記の「アミン系化合物のケチミン化率又はオキサゾリジン化率の測定方法」により、オキサゾリジン化率を測定したところ、99.77モル%であった。なお、この反応混合物(5b)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例6)
アミン(a1)(ノルボルナンジアミン):154部、およびカルボニル(b1)(ジエチルケトン):344部をフラスコに入れ、60℃で1時間、静置の条件下で放置したところ、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(6a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(6a)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、56.18モル%であった。なお、この反応混合物(6a)中には、アミン(a1)とカルボニル(b1)との反応により生成した水がすべて残存している。
次に、前記反応混合物(6a):33.20部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を10.05部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(6b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(6b)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、91.23モル%であった。なお、この反応混合物(2b)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例7)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B3)(テトラメトキシシランのオリゴマー)を2.07部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(7)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(7)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、87.76モル%であった。なお、この反応混合物(7)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例8)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B1)(テトラエトキシシラン)を5.02部添加し、60℃で24時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(8)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(8)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、95.84モル%であった。なお、この反応混合物(8)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例9)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B2)(テトラメトキシシラン)を3.67部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(9)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(9)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、93.37モル%であった。なお、この反応混合物(9)中には、コロイド状のものが含まれていた。
(実施例10)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B4)(ビニルトリメトキシシラン)を4.15部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(10)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(10)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、95.43モル%であった。なお、この反応混合物(10)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(実施例11)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B5)(ヘキサメチルジシラザン)を7.81部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(11)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(11)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、85.39モル%であった。なお、この反応混合物(11)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(実施例12)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B6)(テトラブトキシチタン)を8.10部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(12)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(12)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、96.08モル%であった。なお、この反応混合物(12)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして、反応混合物(1a)(ケチミン化率:89.66モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(1a):41.35部に、脱水剤として脱水剤(B7)(無水硫酸マグネシウム)を1.09部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置した後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去したところ、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(13)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(13)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、85.79モル%であった。
(比較例2)
実施例2と同様にして、反応混合物(2a)(ケチミン化率:68.85モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(2a):32.15部に、脱水剤として脱水剤(B7)(無水硫酸マグネシウム)を1.93部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置した後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去したところ、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(14)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(14)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、63.65モル%であった。
(比較例3)
実施例3と同様にして、反応混合物(3a)(ケチミン化率:85.83モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(3a):35.06部に、脱水剤として脱水剤(B7)(無水硫酸マグネシウム)を0.37部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置した後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b2)を除去したところ、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(15)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(15)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、85.83モル%であった。
(比較例4)
実施例4と同様にして、反応混合物(4a)(ケチミン化率:83.94モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(4a):37.26部に、脱水剤として脱水剤(B7)(無水硫酸マグネシウム)を1.71部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置した後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b3)を除去したところ、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(16)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(16)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、81.78モル%であった。
(比較例5)
実施例5と同様にして、反応混合物(5a)(オキサゾリジン化率:90.69モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(5a):38.80部に、脱水剤として脱水剤(B7)(無水硫酸マグネシウム)を0.99部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置した後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去したところ、オキサゾリジン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(17)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(17)について、実施例5と同様にしてオキサゾリジン化率を測定したところ、90.40モル%であった。
(比較例6)
実施例6と同様にして、反応混合物(6a)(ケチミン化率:56.18モル%)を調製した。次に、前記反応混合物(6a):33.20部に、脱水剤として脱水剤(B7)(無水硫酸マグネシウム)を4.67部添加し、60℃で2時間、静置の条件下で放置した後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去したところ、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(18)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(18)について、実施例1と同様にしてケチミン化率を測定したところ、46.19モル%であった。
(評価)
実施例1〜12及び比較例1〜6において、最終的に得られた反応混合物について、下記の可使時間の評価方法、貯蔵安定性の評価方法により、可使時間、貯蔵安定性をそれぞれ評価した。なお、それぞれの評価結果を表1及び表2に示した。
(可使時間の評価方法)
反応混合物中に、イソホロンジイソシアネートを、反応混合物中に含まれているケチミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物におけるケチミン基[前記式(2)で表される基]またはオキサゾリジン環のモル数と等量となる割合で添加し、その際の混合物の状態を目視により観察し、下記の評価基準により、可使時間を評価した。
評価基準
○:イソホロンジイソシアネートを添加した後、溶液の状態を5分以上保持しており、イソシアネート系化合物を添加しても塗布可能な条件を満たしている。
×:イソホロンジイソシアネートを添加した際に、瞬間的にゲル化する。
(貯蔵安定性の評価方法)
反応混合物中に含まれているケチミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物:40部に対して、エポキシ樹脂(商品名「エピコート828」ジャパンエポキシレジン社製):100部と、エポキシシラン系化合物(商品名「KBM403」信越化学工業社製;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):40部とを加え、混合した直後の粘度(混合直後の粘度)と、混合後にカートリッジに充填密封して、23℃の環境下で24時間放置した後の粘度(放置後の粘度)とを測定し、放置前後での粘度の値を比較して、下記の評価基準により、貯蔵安定性を評価した。なお、粘度測定は、23℃且つ65%RHの環境下で、BH型粘度計(10r/min)の条件で行った。
評価基準
○:[(放置後の粘度)/(混合直後の粘度)]が1.5未満である。
×:[(放置後の粘度)/(混合直後の粘度)]が1.5以上である。
表1などより、実施例では、脱水剤として、23℃において液状であり、且つ水に対して反応性を有しているとともに、アミン系化合物に対して反応性を有していないアミン非反応型水反応性液状化合物を用いることにより、ケチミン化率又はオキサゾリジン化率が、いずれも、向上していることが確認された。一方、比較例では、脱水剤として、アミン系化合物に対して反応性を有していない水和が可能な固形状の化合物(無水硫酸マグネシウム)が用いられているので、ケチミン化率又はオキサゾリジン化率が低下しているか、又は同等を維持しており、アミン系化合物とカルボニル系化合物との反応が、イミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物が生成する方向に進行してないことが確認された。
また、実施例により得られたイミン系化合物(ケチミン系化合物又はアルジミン系化合物)や、オキサゾリジン系化合物は、可使時間が良好であり、該イミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物を用いて2液型の硬化性組成物を調製した際には、該2液型の硬化性組成物を、優れた作業性で使用することができることが確認された。
さらに、実施例により得られたイミン系化合物や、オキサゾリジン系化合物は、貯蔵安定性が良好であり、該イミン系化合物又はオキサゾリジン系化合物を用いて1液型の硬化性組成物を実質的に調製することが可能であることが確認された。
一方、比較例により得られたイミン系化合物や、オキサゾリジン系化合物は、可使時間や、貯蔵安定性が低く、2液型の硬化性組成物を調製した際には、使用時の作業性が低く、また、1液型の硬化性組成物を調製した際には、経時で、使用不可能な程度にまで粘度変化が生じてしまうことが確認された。
(実施例13)
実施例2と同様にして、反応混合物(2b)(ケチミン化率:95.84モル%)を調製し、該反応混合物(2b)を、アクリル系ポリマーを調製する際の溶媒として用いた。またアクリル系ポリマーを調製する際の重合性不飽和単量体を含むモノマー滴下物として、アクリル酸n−ブチル:18.0部、メタクリル酸メチル:14.4部、およびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM503」信越化学工業社製):3.6部の混合物に、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):1.0部を配合したモノマー液を用いた。
窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、窒素を容器内に導入して、窒素雰囲気下、溶媒として前記反応混合物(2b)を仕込み、攪拌しながら85℃に昇温させた。その後、窒素雰囲気下、同温度(85℃)を保持させながら攪拌下、前記モノマー滴下物を1時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、同温度(85℃)を保持させながら攪拌を行った。その後、さらに、重合開始剤を反応容器内に、モノマー液中の量に対して0.2倍(1/5倍)の量を追加し、さらに2時間、同温度(85℃)を保持させながら攪拌を行って重合を進行させた後、室温まで冷却して、反応混合物(「反応混合物(19)」と称する場合がある)を得た。
前記反応混合物(19)に、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながら、アミン反応性化合物としてのエポキシ樹脂(商品名「エピコート828」ジャパンエポキシレジン社製):71部と、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM403」信越化学工業社製):29部とを配合して、樹脂組成物を得た。
なお、前記樹脂組成物には、ケチミン系化合物と、アクリル系ポリマーと、アミン反応性化合物としてのエポキシ樹脂と、シラン系化合物とが含まれている。また、アクリル系ポリマーは、ケチミン系化合物の存在下で重合させて得られている。
(実施例14)
アミン(a2)(イソホロンジアミン):170部、およびカルボニル(b1)(ジエチルケトン):344部をフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、カルボニル(b1)が環流する温度(120〜150℃)で24時間環流して反応を行った。その後、過剰のカルボニル(b1)を蒸留により取り除き、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(20a)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(20a)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、79モル%であった。
前記反応混合物(20a):200部に、カルボニル(b1):85.0部を添加した後、さらに、脱水剤として脱水剤(B4)(ビニルトリメトキシシラン):97.5部を添加し、40℃で24時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(20b)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(20b)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、99.7モル%であった。なお、この反応混合物(20b)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(実施例15)
実施例14と同様にして、反応混合物(20a)(ケチミン化率:79モル%)を調製した。前記反応混合物(20a):200部に、カルボニル(b1):85.0部を添加した後、さらに、脱水剤として脱水剤(B4)(ビニルトリメトキシシラン):48.8部を添加し、40℃で24時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(21)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(21)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、98.5モル%であった。なお、この反応混合物(21)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(実施例16)
実施例14と同様にして、反応混合物(20a)(ケチミン化率:79モル%)を調製した。前記反応混合物(20a):200部に、カルボニル(b1):85.0部を添加した後、さらに、脱水剤として脱水剤(B4)(ビニルトリメトキシシラン):24.4部を添加し、40℃で24時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(22)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(22)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、94.3モル%であった。なお、この反応混合物(22)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(実施例17)
実施例14と同様にして、反応混合物(20a)(ケチミン化率:79モル%)を調製した。前記反応混合物(20a):200部に、カルボニル(b1):42.5部を添加した後、さらに、脱水剤として脱水剤(B4)(ビニルトリメトキシシラン):48.8部を添加し、40℃で24時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(23)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(23)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、97.8モル%であった。なお、この反応混合物(23)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(実施例18)
実施例14と同様にして、反応混合物(20a)(ケチミン化率:79モル%)を調製した。前記反応混合物(20a):200部に、カルボニル(b1):21.2部を添加した後、さらに、脱水剤として脱水剤(B4)(ビニルトリメトキシシラン):24.4部を添加し、40℃で24時間、静置の条件下で放置することにより反応を行った後、エバポレータを用いて減圧蒸留によりカルボニル(b1)を除去して、ケチミン系化合物を含む反応混合物(「反応混合物(24)」と称する場合がある)を得た。この反応混合物(24)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、90.8モル%であった。なお、この反応混合物(24)は、各成分が溶解しており、液状の状態であった。
(比較例7)
実施例14と同様にして、反応混合物(20a)(ケチミン化率:79モル%)を調製した。前記反応混合物(20a)を、カルボニル系化合物や脱水剤を加えずに、そのままの状態で、40℃で24時間、静置の条件下で放置した後、該放置後の反応混合物(20a)について、ケチミン化率を、実施例1と同様にして求めたところ、79モル%であった。
実施例14〜18および比較例7より、水を共沸させながら、アミン系化合物とカルボニル系化合物との反応を行い、その後、カルボニル系化合物を除去して得られたケチミン系化合物を含有する混合物について、アミン系化合物に対して反応性を有していないアミン非反応型水反応性液状化合物を用いることにより、ケチミン系化合物の純度を向上させるために精製することが可能であることが確認された。なお、実施例14〜18では、再度、カルボニル系化合物を導入しているが、カルボニル系化合物が残存している場合は、再度、カルボニル系化合物を導入する必要がないことは明らかである。
なお、実施例14〜18および比較例7において、最終的に得られた反応混合物について、前記と同様にして、貯蔵安定性を評価したところ、表3に示す結果が得られた。