JP3995531B2 - ジチオカーボネート組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジチオカーボネート系化合物およびケチミン系化合物により構成されたジチオカーボネート組成物に関し、更に詳細には、貯蔵安定性が優れ、且つ良好な可使時間を有するとともに優れた速硬化性を有しているジチオカーボネート組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ジチオカーボネート系化合物は、ケチミン系化合物により硬化することが知られている。例えば、WO98/24849には、特定の5員環ジチオカーボナート基を少なくとも1つ含有する重合体又は化合物と、ケチミン誘導体、エナミン誘導体またはアルジミン誘導体からなる組成物が開示されている。該公報では、この組成物は貯蔵安定性に優れており、塗料や接着剤として使用できることが記載されている。
【0003】
また、特開2000−204159号公報では、特定の1,3−オキサチオラン−2−チオン基を2個以上含揺する化合物、および、アミン化合物からなる硬化性組成物が開示されている。該公報では、この硬化性組成物は、低温環境下でも硬化性に優れ、可使時間が長いと記載されている。
【0004】
さらにまた、特開2002−47424号公報には、特定のジチオカーボナート基を分子内に少なくとも1個有する化合物と、オキサゾリジン化合物、及び/又は、ケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有し、該ケチミン炭素又は窒素の少なくともα位に、分岐炭素又は環員炭素が結合した構造のケチミン化合物と、を含有する硬化性樹脂組成物が開示されている。この硬化性樹脂組成物は、ケチミン化合物のC−N結合近辺に立体障害を発揮する基が導入されているため、安定性が向上されている。
【0005】
しかしながら、従来のジチオカーボネート組成物は、その速硬化性が充分でなく、より一層速く硬化することが可能なものが求められている。また、可使時間も良好であることが重要であり、良好な可使時間と優れた速硬化性とを両立することが求められている。この際、貯蔵安定性が良好であることも必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、可使時間および速硬化性を優れたバランスで両立しているジチオカーボネート組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、貯蔵安定性が優れているジチオカーボネート組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、配合ぶれや混合不良などの人為的なミスが防止されていることにより、優れた作業性及び再現性で用いることができるジチオカーボネート組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のケチミン化合物を用いると、優れた貯蔵安定性が発揮され、しかも可使時間が良好であり、さらには速硬化性が優れているジチオカーボネート組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される基を有するジチオカーボネート系化合物(A)と、下記式(2c)で表されるケチミン系化合物(B)とにより構成され、前記ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)との配合割合が、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンの当量が、ジチオカーボネート系化合物(A)のエチレンジチオカーボネート基の当量に対して0.5〜2.0倍となる割合であることを特徴とするジチオカーボネート組成物である。
【化4】
Figure 0003995531
(式(1)において、 1 は酸素原子、X 2 は硫黄原子である。R1、R2、R3水素原子を示す。
【化5】
Figure 0003995531
(式(2c)において、R 6 は2価の炭化水素基を示す。nは2である。)
【0012】
本発明のジチオカーボネート組成物には、さらに、エポキシ系化合物(C)を含有していてもよい。該エポキシ系化合物(C)の割合は、非揮発分全量に対して50質量%未満であることが好ましい。
【0013】
また、さらに、下記式(3)で表される加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)を含有していてもよい。
【化6】
Figure 0003995531
(式(3)において、R7は炭化水素基を示し、R8は水素原子又は炭化水素基を示す。mは1又は2である。R7、R8は、それぞれ、同一又は異なる珪素原子に結合しているR7又はR8と結合していてもよい。)
【0014】
本発明のジチオカーボネート組成物は1液型の硬化型樹脂組成物であってもよい。
【0015】
本発明において、「1液型の硬化型樹脂組成物」等の「1液型」とは、エポキシ系接着剤の分野で一般的にいわれている「1液型エポキシ系接着剤や2液型エポキシ系接着剤」における「1液型」のことを意味している。具体的には、1液型の硬化型樹脂組成物とは、例えば、ポリマー成分やモノマー成分と、硬化剤とが1つの容器に入れられた状態(例えば、混合している状態)で、実質的に販売可能なものを意味し、室温で長期間貯蔵(又は保管)されても、ゲル化や硬化がほとんど又は全く生じず、実質的に初期状態(初期の分散状態)を長期間保持することができるものを意味している。従って、1液型の硬化型樹脂組成物は、使用する際に、ポリマー成分やモノマー成分を、他の成分(硬化剤など)と混合する必要がなく、そのまま所定部位に塗布することにより、用いることができる。なお、貯蔵に係る長期間としては、例えば、6月以上、1年以上、1年6月以上など適宜選択可能であるが、少なくとも6月以上であることが好ましい。
【0016】
一方、2液型の硬化型樹脂組成物とは、ポリマー成分やモノマー成分と、硬化剤又は助剤等の他の成分とが、それぞれ異なる容器に入れられている状態で販売され、使用する際に、これらのポリマー成分やモノマー成分と、該ポリマー成分やモノマー成分と異なる容器に入れられた硬化剤又は助剤等の他の成分とを混合し、この混合物を所定の部位に塗布して、使用されるものを意味している。従って、2液型の硬化型樹脂組成物は、使用する際に2液を混合して1液としているだけであって、1液にすると硬化又はゲル化が生じるため、実質的な貯蔵安定性がなく、1液型としては実質的に販売は不可能なものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
[ジチオカーボネート系化合物(A)]
ジチオカーボネート系化合物(A)は、下記式(1)で表される基を有している。
【化7】
Figure 0003995531
(式(1)において、 1 は酸素原子、X 2 は硫黄原子である。R1、R2、R3水素原子を示す。
【0026】
ジチオカーボネート系化合物は、分子中に、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ有していればよい。このようなジチオカーボネート系化合物は、公知乃至慣用の調製方法(例えば、WO98/24849に記載の調製方法、特開2000−204159号公報に記載の調製方法、特開2002−47424号公報に記載の調製方法など)により調製することができる。具体的には、エポキシ系化合物(A1)と、二硫化炭素(A2)とを、公知乃至慣用の反応に供することより調製することができる。該反応では、触媒として臭化リチウム等のアルカリ金属又はそのハロゲン化物などを用いることができる。また、溶媒としては、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒などを用いることができる。反応温度としては、10〜50℃程度の範囲から選択することができ、室温(例えば、20〜25℃程度)であってもよい。
【0027】
エポキシ系化合物(A1)と二硫化炭素(A2)との反応では、エポキシ系化合物(A1)のエポキシ基と、二硫化炭素(A2)との反応が生じており、該反応としては、例えば、下記の反応式(X)で示すことができる。
【化8】
Figure 0003995531
(反応式(X)において、X1、X2、R1、R2、R3は前記に同じ。)
【0028】
従って、ジチオカーボネート系化合物(A)は、エポキシ系化合物(A1)のエポキシ基が、前記式(1)で表されるようなエチレンジチオカーボネート基に変換されたものに相当している。
【0029】
ジチオカーボネート系化合物(A)を調製する際のエポキシ系化合物(A1)としては、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば特に制限されない。エポキシ系化合物(A1)としては、エポキシ樹脂を好適に用いることができる。具体的には、エポキシ系化合物(A1)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂やこれらの誘導体(例えば、水添化物や臭素化物など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えば、フタル酸グリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなど)の他、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、含窒素エポキシ樹脂(例えば、メタキシレンジアミンやヒダントイン等のアミンのエポキシ化物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンやトリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂など)、ゴム変性エポキシ樹脂(例えば、ゴム成分としてポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴムや天然ゴムを含有するエポキシ樹脂など)、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂(例えば、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
【0030】
従って、ジチオカーボネート系化合物(A)としては、例えば、前記例示のエポキシ系化合物(A1)(エポキシ樹脂など)のエポキシ基を、前記式(1)で表されるエチレンジチオカーボネート基に変換したものが挙げられる。
【0031】
なお、ジチオカーボネート系化合物(A)は、公知乃至慣用の調製方法により調製することができ、例えば、特開平5−247027号公報などに記載の調製方法に準じて調製することができる。
【0032】
[ケチミン系化合物(B)]
ケチミン系化合物(B)は、下記式(2)で表される基を有している。本発明では、ケチミン系化合物(B)として、特に後述の式(2c)で表される化合物を用いる。
【化9】
Figure 0003995531
(式(2)において、R4は炭素数2又は3のアルキル基、R5は炭素数2以上の炭化水素基を示す。)
【0033】
式(2)において、R4の炭素数2又は3のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、エチル基が最適である。
【0034】
また、R5は炭素数2以上の炭化水素基としては、炭素数2以上の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0035】
5の炭素数2以上の脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルプロピル基、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数2〜20程度のアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、炭素数が2〜10のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数が2〜6のアルキル基(なかでも炭素数2〜4のアルキル基)が挙げられる。本発明では、アルキル基としては、特に炭素数が2又は3のアルキル基が好適であり、炭素数が2のアルキル基が最適である。
【0036】
また、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基の他、多環式炭化水素環(例えば、ノルボルナンにおける炭化水素環等の橋かけ環など)を有する基などが挙げられる。
【0037】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などのアリール基などが挙げられる。なお、芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環や縮合炭素環(例えば、ナフタレン環等の2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)が挙げられる。
【0038】
5としては、炭素数2以上の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0039】
なお、R4のアルキル基や、R5の炭化水素基は、置換基(例えば、他の炭化水素基など)を有していてもよい。なお、このような置換基としては、ジチオカーボネート系化合物(A)等との反応性を有しておらず、また、ケチミン系化合物(B)の加水分解性や、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成したアミンとジチオカーボネート系化合物(A)との反応性を損なわないものであることが重要である。
【0040】
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
ケチミン系化合物(B)は、分子中に、前記式(2)で表される基を少なくとも1つ有していればよい。従って、ケチミン系化合物(B)としては、例えば、下記式(2a)で表されるケチミン系化合物を用いることができる。
【化10】
Figure 0003995531
(式(2a)において、R6は1価若しくは多価の炭化水素基を示す。nは1以上の整数である。R4、R5は前記に同じ。)
【0042】
式(2a)において、R6の1価の炭化水素基としては、前記R5の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、アルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基、アリール基などの芳香族炭化水素基など)を用いることができる。
【0043】
また、R6の多価の炭化水素基としては、多価の脂肪族炭化水素基、多価の脂環式炭化水素基、多価の芳香族炭化水素基の他、これらの多価の炭化水素基が組み合わされた多価の基(「多価の複合炭化水素基」と称する場合がある)などが挙げられる。多価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基などの2価の脂肪族炭化水素基を用いることができる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状のアルキレン基の他、分岐鎖又は置換基を有するアルキレン基(例えば、プロピレン基など)などが挙げられる。
【0044】
多価の脂環式炭化水素基としては、単環式炭化水素環を有する多価の脂環式炭化水素基であってもよく、多環式炭化水素環を有する多価の脂環式炭化水素基であってもよい。多価の脂環式炭化水素基としては、2価の脂環式炭化水素基を好適に用いることができる。なお、前記単環式炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキレン環が挙げられる。また、多環式炭化水素環としては、例えば、橋かけ環などが挙げられる。該橋かけ環としては、例えば、二環式炭化水素環(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンなどにおける炭化水素環など)、三環式炭化水素環(例えば、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどにおける炭化水素環など)、四環式炭化水素環(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどにおける炭化水素環など)などが例示できる。このような橋かけ環としては、環を構成する炭素数が6〜16程度(特に炭素数6〜14程度)の二環式ないし四環式炭化水素環(例えば、ピナン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタンなどにおける炭化水素環など)を好適に用いることができる。
【0045】
具体的には、シクロヘキサン環を有する2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基が挙げられる。また、ノルボルナンにおける二環式炭化水素環を有する2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン−2,3−ジイル、ノルボルナン−2,5−ジイル、ノルボルナン−2,6−ジイルなどのノルボルナン−ジイル基などが挙げられる。
【0046】
多価の芳香族炭化水素基としては、アリレン基などの2価の芳香族炭化水素基を用いることができる。アリレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基など)などのベンゼン環を有する2価の芳香族炭化水素基や、ナフチレン基などのナフタレン環を有する2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。なお、多価の芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環やナフタレン環の他、アズレン、インダセン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレンなどの2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環なども挙げられる。
【0047】
さらにまた、これらの多価の炭化水素基が組み合わされた多価の基(多価の複合炭化水素基)としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(アルキレン基など)、単環式炭化水素環又は多環式炭化水素環を有する2価の脂環式炭化水素基(シクロアルキレン基やノルボルナン−ジイル基など)、ベンゼン環又は縮合炭素環を有する2価の芳香族炭化水素基(フェニレン基やナフチレン基など)が適宜組み合わされた2価の基(2価の複合炭化水素基)を好適に用いることができる。2価の複合炭化水素基としては、例えば、アルキレン−フェニレン基、アルキレン−フェニレン−アルキレン基などの脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが組み合わされた2価の複合炭化水素基;アルキレン−シクロアルキレン基、アルキレン−シクロアルキレン−アルキレン基、アルキレン−ノルボルナン−ジイル基、アルキレン−ノルボルナン−ジイル−アルキレン基などの脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが組み合わされた2価の複合炭化水素基などが挙げられる。これらの多価の複合炭化水素基が組み合わされた基において、アルキレン部位、フェニレン部位、シクロアルキレン部位、ノルボルナン−ジイル部位としては、前記例示のアルキレン基、フェニレン基、シクロアルキレン基、ノルボルナン−ジイル基などを用いることができる。従って、アルキレン部位としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレンなどが挙げられる。フェニレン部位としては、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレンなどが挙げられる。シクロアルキレン部位としては、例えば、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどが挙げられる。ノルボルナン−ジイル部位としては、例えば、ノルボルナン−2,3−ジイル、ノルボルナン−2,5−ジイル、ノルボルナン−2,6−ジイル等のノルボルナン−ジイルなどが挙げられる。
【0048】
具体的には、多価の複合炭化水素基としては、例えば、メチレン−1,3−フェニレン−メチレン(m−キシリレン)基、メチレン−1,3−シクロヘキシレン−メチレン基、メチレン−ノルボルナン−2,5−ジイル−メチレン基、メチレン−ノルボルナン−2,6−ジイル−メチレン基や、これらの基においてメチレン部位が他のアルキレン部位(例えば、エチレン部位、トリメチレン部位、プロピレン部位など)となっている基などが挙げられる。
【0049】
なお、R6の炭化水素基は、置換基(例えば、炭化水素基など)を有していてもよく、該置換基としては、ジチオカーボネート系化合物(A)との反応性を有しておらず、また、ケチミン系化合物(B)の加水分解性や、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成したアミンとジチオカーボネート系化合物(A)との反応性を損なわないものであることが重要である。
【0050】
また、前記式(2a)において、nは1以上の整数である。nとしては、1以上の整数であれば特に制限されないが、例えば、1〜10(好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3)の整数から選択することができる。なお、nとしては、1又は2である場合が多い。
【0051】
このようなケチミン系化合物(B)としては、下記式(2b)で表されるケチミン系化合物を好適に用いることができる。
【化11】
Figure 0003995531
(式(2b)において、R4aはエチル基又はプロピル基を示し、R5aは炭素数2〜6のアルキル基を示す。R6、nは前記に同じ。)
【0052】
5aの炭素数2〜6のアルキル基としては、前記R5のアルキル基として例示したアルキル基の中から炭素数が2〜6のアルキル基を適宜選択して用いることができる。R4a、R5aとしては、前記R4、R5の項で例示したように、炭素数が2のアルキル基が最適である。すなわち、ケチミン系化合物(B)としては、下記式(2c)で表されるケチミン系化合物が特に好ましい。
【化12】
Figure 0003995531
(式(2c)において、R 6 は2価の炭化水素基を示す。nは2である。)
【0053】
このように、ケチミン系化合物(B)が前記式(2b)〜(2c)で表されるケチミン系化合物であると、ケチミン系化合物(B)の加水分解速度が一層速くなる。そのため、該加水分解により、アミンの生成速度が速まり、その結果、該アミンとジチオカーボネート系化合物(A)とが反応しやすくなり、優れた速硬化性、すなわち優れた初期密着性(初期接着性または初期付着性など)を発揮させることができる。特に、本発明では、R4が炭素数2又は3のアルキル基であり、R5は炭素数2以上の炭化水素基であるので、R4がメチル基または炭素数4以上のアルキル基である場合よりも、ケチミン系化合物(B)の加水分解速度が速くなっている。なお、ケチミン系化合物(B)の加水分解は、空気中の湿気によって容易に生じる。
【0054】
本発明では、ケチミン系化合物(B)としては、前記式(2b)や(2c)で示されるケチミン系化合物のなかでも、R6が1価の炭化水素基で且つnが1であるケチミン系化合物や、R6が2価の炭化水素基(例えば、2価の炭化水素基が組み合わされた2価の炭化水素基など)で且つnが2であるケチミン系化合物が好ましく、特にR6が2価の炭化水素基で且つnが2であるケチミン系化合物が最適である。
【0055】
本発明では、ケチミン系化合物(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
なお、ケチミン系化合物(B)は、例えば、カルボニル化合物(ケトン)とアミンとを反応させることにより調製することができる。具体的には、前記式(2a)で表されるケチミン系化合物(B)は、下記式(4)で表されるカルボニル化合物と、下記式(5)で表される第1級アミン系化合物とを反応させることにより得ることができる。
【化13】
Figure 0003995531
(式(4)において、R4、R5は前記に同じ。)
【化14】
Figure 0003995531
(式(5)において、R6、nは前記に同じ。)
【0057】
より具体的には、ケチミン系化合物(B)は、前記式(4)で表されるカルボニル化合物と、前記式(5)で表される第1級アミン系化合物とを無溶剤下、または非極性溶剤(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼンなど)の存在下で混合し、その後、加熱環流し、必要に応じて生成する水を共沸により除去することにより調製することができる。なお、カルボニル化合物や第1級アミン系化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用されていてもよい。なお、反応速度を速くするため、必要に応じて、酸触媒などの触媒を用いてもよい。
【0058】
なお、前記式(4)で表されるカルボニル化合物には、例えば、C2-3アルキル−C2-20アルキルケトン等が含まれ、具体的には、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソブチルケトン、エチルt−ブチルケトン、エチルs−ブチルケトン、エチルペンチルケトン、エチル−2−メチルブチルケトン、エチル−3−メチルブチルケトン、エチル−2,2−ジメチルプロピルケトン、エチル−2−エチルプロピルケトン、エチルヘキシルケトン、エチル−2−メチルペンチルケトン、エチル−3−メチルペンチルケトン、エチル−4−メチルペンチルケトン、エチル−2,2−ジメチルブチルケトン、エチル−2,3−ジメチルブチルケトン、エチル−3,3−ジメチルブチルケトン、エチル−2−エチルブチルケトン、エチル−3−エチルブチルケトン、エチルヘプチルケトン、エチルオクチルケトン、エチル2−エチルヘキシルケトン等のエチル−C2-20アルキルケトン;ジプロピルケトン、プロピルイソプロピルケトン、プロピルブチルケトン、プロピルイソブチルケトン、プロピルt−ブチルケトン、プロピルs−ブチルケトン、プロピルペンチルケトン、プロピルヘキシルケトン、プロピルヘプチルケトン、プロピルオクチルケトン、プロピル2−エチルヘキシルケトン等のプロピル−C2-20アルキルケトン;ジイソプロピルケトン、イソプロピルブチルケトン、イソプロピルイソブチルケトン、イソプロピルt−ブチルケトン、イソプロピルs−ブチルケトン、イソプロピルペンチルケトン、イソプロピルヘキシルケトン、イソプロピルヘプチルケトン、イソプロピルオクチルケトン、イソプロピル2−エチルヘキシルケトン等のイソプロピル−C2-20アルキルケトンなどが含まれる。
【0059】
また、前記式(5)で表される第1級アミン系化合物には、1価のアミン(モノアミン)や多価のアミン(ポリアミン)などが含まれる。モノアミンには、脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン、芳香族モノアミンなどが含まれる。具体的には、脂肪族モノアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、s−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等のモノC1-20アルキルアミンの他、ジC1-20アルキルアミン(2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい)、トリC1-20アルキルアミン(3つのアルキル基は部分的に又は全体的に同一であっても異なっていてもよい)などが挙げられる。脂環式モノアミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミン、ノルボルナン−2−アミンなどの橋かけ環を有するアミンなどが挙げられる。芳香族モノアミンとしては、例えば、アニリンなどが挙げられる。また、脂肪族モノアミンとして、ポリオキシアルキレン骨格を有するモノアミンや、アミノシランカップリング剤(例えば、3−アミノプロピルトリアルコキシシランなど)を用いることもできる。この場合、ケチミン系化合物(B)としては、前記式(2a)におけるR6が、ポリオキシアルキレン骨格を有する1価の基[例えば、「H−(R6a i−O)j−」(R6aはアルキレン基を示す。iは1以上の整数である。また、jは1以上の整数である。)など]や、アルコキシシラン基を有するアルキル基などであるケチミン化合物に相当する。
【0060】
また、ポリアミンには、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンなどが含まれる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、2,3−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンの他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。また、脂肪族ポリアミンとして、ポリオキシアルキレン骨格を有するジアミンなどのポリオキシアルキレン骨格を有するポリアミンを用いることもできる。この場合、ケチミン系化合物(B)としては、前記式(2a)におけるR6が、多価のポリオキシアルキレン基[例えば、「−(R6a i−O)j−」(R6aはアルキレン基を示す。iは1以上の整数である。また、jは1以上の整数である。)など]であるケチミン化合物に相当する。
【0061】
脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−3−アミノメチルシクロヘキサン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、メチル−2,3−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン{例えば、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンなど}等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。
【0062】
芳香族ポリアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、4,4´−ジフェニルジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、2,4´−ジフェニルメタンジアミン、4,4´−ジフェニルエ−テルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジアミン、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジアミン、4,4´−ジフェニルプロパンジアミン、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジアミン等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0063】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、ω,ω´−ジアミノ−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルアミノメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0064】
従って、前記式(2a)で表されるケチミン系化合物(B)におけるR6は、アミンの残基に相当する。
【0065】
なお、ケチミン系化合物(B)は互変異性を有している場合がある。そのため、本発明では、ケチミン系化合物(B)には、該ケチミン系化合物(B)の互変異構造を有する化合物に相当するエナミン形の化合物も含まれる場合がある。
【0066】
[エポキシ樹脂(C)]
本発明のジチオカーボネート組成物は、さらにエポキシ系化合物(C)を含有していてもよい。エポキシ系化合物(C)を用いることにより、エポキシ系化合物(C)による機械的特性等を付与することができる。エポキシ系化合物(C)としては、公知乃至慣用のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ系化合物(C)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
具体的には、エポキシ系化合物(C)としてのエポキシ樹脂には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂やこれらの誘導体(例えば、水添化物や臭素化物など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えば、フタル酸グリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなど)の他、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、含窒素エポキシ樹脂(例えば、メタキシレンジアミンやヒダントイン等のアミンのエポキシ化物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンやトリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂など)、ゴム変性エポキシ樹脂(例えば、ゴム成分としてポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴムや天然ゴムを含有するエポキシ樹脂など)、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂(例えば、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルなど)などが含まれる。
【0068】
エポキシ系化合物(C)の割合としては、例えば、ジチオカーボネート組成物中の非揮発分(不揮発分)全量に対して50質量%未満(好ましくは75質量%未満)程度であることが望ましい。エポキシ系化合物(C)の割合が、非揮発分全量に対して50質量%以上であると、硬化開始時間や硬化終了時間が遅くなり、速硬化性が低下する。
【0069】
なお、エポキシ系化合物(C)中のエポキシ基は、ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンとの反応により得られる化合物のチオール基や、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンなどと反応することができる。本発明では、エポキシ系化合物(C)は、主として、ジチオカーボネート系化合物(A)とアミンとの反応により得られる化合物(硬化物)のチオール基と反応していると推察される。なお、ジチオカーボネート系化合物(A)の方が、エポキシ系化合物(C)よりも硬化速度が速く、例えば、10倍以上の速さで硬化することも可能である。
【0070】
[シラン系化合物(D)]
ジチオカーボネート組成物は、さらにシラン系化合物(D)を含有していてもよい。シラン系化合物(D)は、反応性希釈剤や、ケチミン系化合物(B)の安定化剤としての機能を有している。具体的には、シラン系化合物(D)は、ケチミン系化合物(B)よりも水との反応性が高いため、例えば、系内に水分が極少量侵入しても、該水分をシラン系化合物(D)が自身の加水分解反応に利用して、ケチミン系化合物(B)の加水分解を抑制または防止することができる。そのため、ケチミン系化合物(B)の安定性を向上させることができ、ジチオカーボネート組成物が、1液型の組成物であっても、貯蔵安定性を高めることができる。一方、系内に多量の水分が侵入した際には、ケチミン系化合物(B)の加水分解反応が容易に素速く生じて、アミンが生成し、ジチオカーボネート系化合物(A)の硬化反応を進行させることができる。このように、シラン系化合物(D)を用いることにより、ジチオカーボネート組成物は、貯蔵安定性をより一層高いレベルで有することができる。
【0071】
シラン系化合物(D)は、下記式(3)で表される加水分解性珪素原子含有基を有している。
【化15】
Figure 0003995531
(式(3)において、R7は炭化水素基を示し、R8は水素原子又は炭化水素基を示す。mは1又は2である。R7、R8は、それぞれ、同一又は異なる珪素原子に結合しているR7又はR8と結合していてもよい。)
【0072】
前記式(3)において、R7やR8の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。R7やR8において、脂肪族炭化水素基には、前記R1、R2、R3の脂肪族炭化水素基などの項で例示の脂肪族炭化水素基が含まれ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基や、該アルキル基に対応するアルケニル基、アルカジエニル基、アルキニル基などが含まれる。R7、R8の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10(さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基を好適に用いることができる。
【0073】
また、R7、R8の脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基としては、前記R1、R2、R3の脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などの項で例示の脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0074】
7としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特に、アルキル基)が好適である。また、R8としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特に、アルキル基)が好適である。
【0075】
なお、R7、R8の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。また、該置換基等を介して、R7やR8の炭化水素基は、他の炭化水素基(例えば、他の珪素原子に結合しているR7やR8の炭化水素基など)と結合して環(芳香族性環や非芳香族性環)を形成していてもよい。
【0076】
また、R7は、同一又は異なる珪素原子に結合しているR7又はR8と結合していてもよく、R8は、同一又は異なる珪素原子に結合しているR7又はR8と結合していてもよい。R7やR8が、異なる珪素原子に結合しているR7又はR8と結合している場合、前記珪素原子は、同一の分子中の珪素原子であってもよく、異なる分子中の珪素原子であってもよい。互いに結合しているR7やR8の珪素原子が、同一の分子中にある場合は、環を構成することになり、異なる分子中にある場合は、架橋構造を構成することになる。
【0077】
mは1又は2であり、好ましくは2である。なお、mが2の場合は、R8が存在せず、式(3)中の珪素原子に2つのOR7が結合していることを意味している。
【0078】
シラン系化合物(D)は、分子中に、前記式(3)で表される加水分解性珪素原子含有基を少なくとも1つ有していればよい。シラン系化合物(D)としては、例えば、下記式(3a)で表されるシラン系化合物や、下記式(3b)で表されるシラン系化合物を用いることができる。
【化16】
Figure 0003995531
(式(3a)において、R9はOR7又はR8を示し、R10は有機基を示す。pは1以上の整数である。R7、R8、mは前記に同じ。)
【化17】
Figure 0003995531
(式(3b)において、R11、R12は、同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。qは1以上の整数である。R7、R8、mは前記に同じ。)
【0079】
前記式(3a)において、R9はOR7又はR8であり、同一の珪素原子に結合している複数のOR7やR8は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
10の有機基としては、例えば、炭化水素基や、該炭化水素基の主鎖中に炭素原子以外の原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子など)を有するヘテロ原子含有基などが挙げられる。R10に係る炭化水素基やヘテロ原子含有基は、1価又は多価のいずれの形態を有していてもよい。
【0081】
10の有機基としては、1価の炭化水素基を好適に用いることができる。該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基などの脂肪族炭化水素基;シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基;アリール基などの芳香族炭化水素基などが挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましい。具体的には、R10に係る脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基や、該アルキル基に対応するアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜20程度のアルケニル基)、アルカジエニル基、アルキニル基などが挙げられる。また、R10に係る脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基としては、前記R1、R2、R3やR6で例示の脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0082】
また、R10に係る炭化水素基やヘテロ原子含有基は、単数又は複数の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、エポキシ−オキシ基(グリシドキシ基)、エポキシ−アルコキシ基、エポキシ−アリールオキシ基、エポキシ−シクロアルキルオキシ基、イソシアネート基、ケチミン基、メルカプト基、アミノ基(置換アミノ基又は無置換アミノ基)、他の炭化水素基、アルコキシカルボニル基、カルボニル基などが挙げられる。置換基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。なお、2種以上の置換基が組み合わされている場合は、該2種以上の置換基は、それぞれ、同一又は異なる原子(炭素原子など)に結合していてもよく、また、いずれか1つの置換基が必要に応じて他の基を介して他の置換基に結合していてもよい。
【0083】
pは1以上の整数であれば特に制限されないが、好ましくは1〜4の整数(さらに好ましくは1又は2、特に1)である。なお、pが2以上の整数である場合、R10の有機基に、2つ以上の加水分解性珪素原子含有基が結合していることを意味している。なお、R10が多価の有機基である場合、通常、pは2以上の整数であり、例えば、R10が多価の有機基で且つpが2の場合は、R10の多価の有機基の両末端に、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物が挙げられる。
【0084】
前記式(3a)で表されるシラン系化合物としては、具体的には、R10がアルキル基である場合は、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランや、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するトリアルキルアルコキシシランなどが挙げられ、ビニル基である場合は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。
【0085】
また、R10が置換基を有するアルキル基である場合、具体的には、置換基がグリシドキシ基である場合は、例えば、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等のグリシドキシアルキルトリアルコキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のグリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するグリシドキシアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。また、イソシアネート基である場合は、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリプロポキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリブトキシシラン等のイソシアネートアルキルトリアルコキシシランや、これらに対応するイソシアネートアルキルアルキルジアルコキシシランやイソシアネートアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。さらにまた、アミノ基である場合は、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシランや、β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するアミノアルキルジアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。また、他の置換基(ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、ケチミン基、メルカプト基、他の炭化水素基、アルコキシカルボニル基、カルボニル基など)を有するシラン系化合物としては、前記例示のシラン系化合物に対応するものが挙げられる。
【0086】
一方、前記式(3b)において、R11、R12の炭化水素基としては、R7の炭化水素基と同様の炭化水素基が挙げられ、R11、R12の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好適であり、さらに好ましくはR11とR12とは、同一の又は異なるアルキル基が挙げられる。また、R11やR12は、R7と同一の炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基であってもよい。
【0087】
qは1以上の整数である。前記式(3b)で表されるシラン系化合物は、qが1の場合は、単量体であることを意味しており、qが2以上の整数の場合は、オリゴマー又はポリマー等の多量体であることを意味している。
【0088】
前記式(3b)で表されるシラン系化合物において、単量体の形態のシラン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシランや、メトキシトリエトキシシラン等のアルコキシトリアルコキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のジアルコキシジアルコキシシランなどが挙げられる。また、多量体の形態のシラン系化合物としては、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン、ポリテトラプロポキシシラン、ポリテトライソプロポキシシラン、ポリテトラブトキシシラン等のポリテトラアルコキシシラン;ポリ(メトキシエトキシシラン)等のポリ(アルコキシアルコキシシラン);ポリ(メトキシシラン)、ポリ(エトキシシラン)、ポリ(プロポキシシラン)、ポリ(イソプロポキシシラン)、ポリ(ブトキシシラン)等のポリ(アルコキシシラン);ポリ(メトキシメチルシラン)、ポリ(メトキシエチルシラン)、ポリ(エトキシメチルシラン)等のポリ(アルコキシアルキルシラン)などが挙げられる。
【0089】
なお、前記式(3a)や(3b)で表されるシラン系化合物には、前記例示のアルコキシ基含有シラン系化合物のアルコキシ基がヒドロキシル基に変換されたものに相当するヒドロキシル基含有シラン系化合物も含まれる。
【0090】
また、前記式(3a)で表されるシラン系化合物と、前記式(3b)で表されるシラン系化合物とに、同一のシラン系化合物が包含される場合があるが、その場合は、式(3a)又は式(3b)のうちいずれか一方の式で表されるシラン系化合物に適宜分類することができる。
【0091】
シラン系化合物(D)の割合としては、例えば、ジチオカーボネート組成物中の非揮発分全量に対して50重量%以下(例えば、0.1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは20〜40質量%)程度の範囲から選択することができる。シラン系化合物(D)の割合が組成物中の非揮発分全量に対して50質量%を超えると、硬化物が脆くなる。なお、シラン系化合物(D)の割合が少なすぎると、シラン系化合物(D)による貯蔵安定性の効果が低下する。
【0092】
[ジチオカーボネート組成物]
ジチオカーボネート組成物は、ジチオカーボネート系化合物(A)と、ケチミン系化合物(B)とを少なくとも含有している。ケチミン系化合物(B)は、空気中の湿気等により加水分解して、アミンが生成する。例えば、ジチオカーボネート系化合物(A)が前記式(1a)で表されるジチオカーボネート系化合物である場合、ジチオカーボネート系化合物(A)は、下記の反応式(Y)で示されるように、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンと反応して、硬化することができる。
【化18】
Figure 0003995531
(反応式(Y)において、R1、R2、R3は前記に同じ。)
【0093】
すなわち、本発明のジチオカーボネート組成物の硬化には、湿気等によるケチミン系化合物(B)の加水分解反応と、該反応によるアミンおよびジチオカーボネート系化合物(A)の反応との2つの反応が少なくとも関与していると推察される。この際、ケチミン系化合物(B)の加水分解反応における反応速度(k1)と、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生じたアミンと、ジチオカーボネート系化合物(A)との反応の反応速度(k2)とでは、圧倒的に反応速度(k2)の方が大きく、前記加水分解反応が律速段階となっていると推察される。
【0094】
一方、ケチミン系化合物(B)は、前記式(2)で表される基を有しているので、加水分解反応の反応速度が、他のケチミン化合物よりも極めて速い。従って、本発明のジチオカーボネート組成物は、より速く硬化が生じて、優れた速硬化性を発揮していると思われる。
【0095】
また、湿気等の水分により加水分解が生じている状況下(例えば、接着剤として使用する際の一般的な状況下)では、瞬間的に加水分解が生じるわけではないので、硬化開始時間が適度になっており、良好な可使時間を有している。従って、本発明のジチオカーボネート組成物は、相反する特性である可使時間と、速硬化性とを優れたバランスで有することができる。
【0096】
このように、本発明のジチオカーボネート組成物は、硬化型樹脂組成物として好適に利用することができる。特に、ケチミン系化合物(B)自体は、ジチオカーボネート系化合物(A)に対する反応性を有していないので、ケチミン系化合物(B)が加水分解されない状態では、ジチオカーボネート組成物は安定であり、硬化反応が生じない。そのため、ジチオカーボネート系化合物(A)と、ケチミン系化合物(B)とは、同一の容器中(混合状態)で(ジチオカーボネート組成物として)保存して、使用時に容器から取り出すような形態であってもよく、異なる容器(分離状態)中で保存して、使用時に混合して(ジチオカーボネート組成物として)用いるような形態であってもよい。すなわち、本発明のジチオカーボネート組成物は、1液型の硬化型樹脂組成物であってもよく、2液型の硬化型樹脂組成物であってもよい。
【0097】
例えば、ジチオカーボネート組成物が1液型の硬化型樹脂組成物(1液型のジチオカーボネート組成物)の場合、湿気が遮断されている容器中では、1液型のジチオカーボネート組成物は安定的に存在しており、硬化反応が生じない。しかし、1液型のジチオカーボネート組成物が一旦容器から取り出されると、空気中の湿気によって、ケチミン系化合物(B)の加水分解が生じてアミンが生成し、該アミンがジチオカーボネート系化合物(A)と反応して架橋構造の形成等により硬化が進行し、優れた機械的強度及び密着性(接着性や付着性等)が発現される。しかも、ケチミン系化合物(B)として適宜選択することにより、空気中の湿気によって容易に加水分解を進行させてアミンを生成させて、このアミンをジチオカーボネート系化合物(A)と反応させることができるので、密着性を極めて迅速に発現させ、しかも優れた機械的強度を発現させることも可能である。
【0098】
このように、本発明のジチオカーボネート組成物は、実質的に1液型の硬化型樹脂組成物であっても、貯蔵安定性が優れ、接着剤やコーティング剤等として利用する際には、優れた初期密着性(初期接着性や初期付着性など)を発揮させることができ、実用的に極めて優れた貯蔵安定性、および速硬化性等の硬化特性を有している。
【0099】
特に、ジチオカーボネート組成物が、シラン系化合物(D)を含有していると、より一層ケチミン系化合物(B)の安定性を向上させることができるので、実質的に1液型の硬化型樹脂組成物であっても、極めて優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
【0100】
また、前述のように、ジチオカーボネート組成物に、エポキシ系化合物(C)を配合することにより、具体的には、エポキシ系化合物(C)を、ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンとの反応により得られる化合物のチオール基と反応させることにより、エポキシ系化合物(C)による機械的特性を、ジチオカーボネート系化合物(A)の硬化物に付与することができ、接着剤やコーティング剤等としてより一層有用となる。
【0101】
ジチオカーボネート系化合物(A)と、ケチミン系化合物(B)との配合割合としては、ジチオカーボネート系化合物(A)の式(1)で表される基(エチレンジチオカーボネート基)の当量と、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンの当量とに応じて適宜選択することができる。具体的には、ジチオカーボネート系化合物(A)と、ケチミン系化合物(B)との配合割合としては、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンの当量が、ジチオカーボネート系化合物(A)のエチレンジチオカーボネート基の当量に対して0.5〜2.0倍となるような割合であることが好ましい。この配合割合よりもケチミン系化合物(B)の割合が少ない場合には、ジチオカーボネート系化合物(A)が過剰となり、ジチオカーボネート組成物の硬化物において満足する程度の架橋反応が進まず、実質的な機械的強度が得られなくなる場合がある。一方、ケチミン系化合物(B)の割合が前記例示の配合割合よりも多い場合には、加水分解により生成するアミンが過剰となり、前記ケチミン系化合物(B)の割合が少ない場合と同様に、実質的な機械的強度が得られなくなる場合がある。このように、実質的な機械的強度が得られる架橋構造を形成するためには、ジチオカーボネート系化合物(A)と、ケチミン系化合物(B)との配合割合は前記例示の配合割合であることが好ましく、特に、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンの当量が、ジチオカーボネート系化合物(A)のエチレンジチオカーボネート基の当量に対して0.8〜1.2倍となるような割合であると、理想的な架橋構造を形成することができ、接着剤組成物又はコーティング剤組成物として優れた機械的強度を発揮させることができるようになる。
【0102】
なお、本発明では、ジチオカーボネート系化合物(A)が、芳香族系のエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂など)を用いて調製された芳香族系のジチオカーボネート系化合物である場合、ケチミン系化合物(B)としては、芳香族系のアミン(例えば、メタキシリレンジアミンなど)を用いて調製された芳香族系のケチミン系化合物を好適に用いることができる。また、ジチオカーボネート系化合物(A)が、脂肪族系のエポキシ樹脂や脂環式のエポキシ樹脂(例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなど)を用いて調製された脂肪族系や脂環式のジチオカーボネート系化合物である場合、ケチミン系化合物(B)としては、脂肪族系のアミンや脂環式のアミン(例えば、エチレンジアミンや1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなど)を用いて調製された脂肪族系や脂環式のケチミン系化合物を好適に用いることができる。
【0103】
ジチオカーボネート組成物には、必要に応じて、充填剤、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、各種安定化剤、難燃剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、接着付与剤、粘性改良剤、分散剤、チクソトロピー付与剤、香料、消泡剤、増量剤、粘度調整剤、改質剤(カップリング剤など)、各種タッキファイヤー、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤などの各種添加剤又は成分、反応性希釈剤、溶剤の他、他の潜在性硬化剤(例えば、他のケチミン系化合物、アルジミン系化合物、オキサゾリジン系化合物など)や樹脂(変性シリコーン、シリル基末端ウレタンポリマー、シリル基を有し且つ主鎖がポリオキシアルキレン骨格を有しているポリマーなど)などが含まれていてもよい。また、これらの配合割合は、公知乃至慣用の割合の中から適宜選択することができる。なお、添加剤などによる水分の影響を可能な限り除去することが、1液型のジチオカーボネート組成物の貯蔵安定性に好結果を与えるため好ましい。
【0104】
なお、前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウムや各種処理が施された炭酸カルシウム、フュームドシリカ、クレー、タルク、各種バルーン、ノイブルシリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。また、可塑剤には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族カルボン酸エステルなどが含まれる。タッキファイヤーとしては、例えば、安定化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペンフェノール、石油系樹脂等のエマルジョンタッキファイヤーなどが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、コロイダルシリカなどを用いることができる。
【0105】
また、金属酸化物や金属塩化物などの金属化合物、有機過酸化物などを用いると、ジチオカーボネート系化合物(A)の開環によって生成するチオール基(−SH)をジスルフィド化(−S−S−)する触媒となりポリマーの架橋密度の向上およびチオール基由来の臭気の低減を可能にすることができる。具体的には、このような金属化合物としては、例えば、二酸化鉛、二酸化マンガン、酸化チタンなどの金属酸化物;塩化鉄(FeCl3)等の金属塩化物の他、硫酸の金属塩、硝酸の金属塩などが挙げられる。また、有機過酸化物には、例えば、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、クメンヒドロペルオキシドなどが含まれる。
【0106】
ジチオカーボネート組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、ジチオカーボネート系化合物(A)と、ケチミン系化合物(B)と、必要に応じて、エポキシ系化合物(C)やシラン系化合物(D)、他の成分(添加剤など)とを、好ましくは窒素雰囲気下及び/又は減圧下で、混合ミキサー等の攪拌機を用いて充分に混練して製造することができる。なお、ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)などとを混合させる際の混合の順序は特に制限されない。また、ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)などとの混合時には[特に、ジチオカーボネート系化合物(A)が高粘度体や固体である場合には]、溶剤(例えば、有機系溶剤や無機系溶剤など)を用いることができ、前記溶剤は混合後に除去してもよい。さらにまた、ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)との混合に際しては、ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)との相溶化剤(例えば、エポキシ樹脂やシランカップリング剤など)を用いることもできる。前記溶剤や相溶化剤は、ジチオカーボネート系化合物(A)やケチミン系化合物(B)等の種類に応じて適宜選択することができる。
【0107】
具体的には、1液型のジチオカーボネート組成物の場合は、例えば、ジチオカーボネート系化合物(A)に、必要に応じて、エポキシ系化合物(C)、シラン系化合物(D)、充填剤、希釈剤等を添加し、脱水しながら攪拌機で均一に混合されるように攪拌し、その後、窒素雰囲気下で、ケチミン系化合物(B)、必要に応じて、シラン系化合物(D)、他の成分(各種添加剤など)等を添加し、攪拌機で均一に混合されるように攪拌することにより、全成分が混合されている組成物(1液型のジチオカーボネート組成物)として調製することができる。そして、窒素置換を施した容器に、前記1液型のジチオカーボネート組成物を収納(例えば、密閉充填)することにより、製品(市販品)としての1液型のジチオカーボネート組成物を含有する各種製品が製造される。
【0108】
一方、2液型のジチオカーボネート組成物の場合は、例えば、ジチオカーボネート系化合物(A)に、必要に応じて、エポキシ系化合物(C)、シラン系化合物(D)、充填剤、希釈剤等を添加し、攪拌機等で均一に混合されるように攪拌することにより、ジチオカーボネート系化合物(A)を含有する主剤を調製することができ、また、ケチミン系化合物(B)に、必要に応じて、シラン系化合物(D)、充填剤、安定化剤等を添加、攪拌機等で均一に混合されるように攪拌することにより、ケチミン系化合物(B)を含有する硬化剤を調製することができる。前記主剤は、窒素置換が施されていてもよい容器に収納(密閉充填等)し、硬化剤は、窒素置換を施した容器に収納(密閉充填等)することにより、製品(市販品)としての2液型のジチオカーボネート組成物の各種製品(主剤と硬化剤とが別の容器に収納されている製品)を製造することができる。なお、2液型のジチオカーボネート組成物は、主剤と硬化剤とを混合した後、使用することができる。また、ジチオカーボネート組成物が、2液型の場合、ケチミン系化合物(B)とともに、他の硬化剤(例えば、アミン系化合物など)が含まれていてもよい。このような他の硬化剤は、ジチオカーボネート組成物の可使時間等に悪影響を及ぼさない範囲の使用量で用いることが好ましい。
【0109】
なお、添加剤などに水分が含まれている場合には、貯蔵中に硬化が生じて貯蔵安定性が低下する場合があるので、添加剤などの水分を脱水除去していることが好ましく、該水分の脱水処理は、添加剤を配合する前に行っていてもよく、ジチオカーボネート系化合物(A)などに添加剤を配合した後に行ってもよい。このような水分の脱水処理方法としては、例えば、加熱及び/又は減圧による脱水処理方法などが挙げられる。
【0110】
本発明のジチオカーボネート組成物は、前述のように、接着剤やコーティング剤等として利用することができる。具体的には、接着剤[例えば、自動車内装用接着剤、各種車両用接着剤(例えば、電車等の車両に用いられる接着剤)、建築内装工事用接着剤、建材用接着剤、電気・電子部品用接着剤、家具用接着剤、家庭用接着剤など]、コーティング剤[例えば、塗料(例えば、コンクリート用塗料、金属用塗料、木材用塗料、タイル用塗料、プラスチック用塗料、重防食塗料など)、トップコート剤、フロアポリッシュなど]、アンダーコート剤(下塗り剤)の他、バインダ(例えば、インキ、顔料プリント、セラミック材料、不織布、繊維収束剤、ゴム、木粉等におけるバインダ)、シーリング材、封止材(シーラー)、ポッティング材、パテ材、プライマー材、ラミネート材、サイジング剤等として用いることができる。
【0111】
このように、本発明のジチオカーボネート組成物は、幅広い用途で利用することができ、しかも、幅広い基材に対して密着性を有しているとともに、速硬化性を有しているので、従来のジチオカーボネート組成物に比べて、作業時間を大幅に短縮して優れた密着性を発揮することができる。具体的には、接着剤の場合、接着に際しての養生や仮押さえに要する時間が短く、被着体同士を接着させる作業性が良好であり、作業時間を大幅に短縮することができる。一方、コーティング剤の場合、塗布層(塗膜)の形成に際しての養生に要する時間が短く、この場合も、被塗布体に塗布層を形成させる作業性が良好であり、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0112】
しかも、1液型であっても貯蔵安定性が優れているので、1液型とすることにより、配合ぶれや混合不良などの人為的なミスを効果的に防止することができ、優れた再現性を発揮させることができる。さらに、1液型のジチオカーボネート組成物は、その可使時間も良好であり、各処理剤の塗布作業中又は作業前における増粘が効果的に防止されているので、この点からも、可使時間が長いことにより、塗布する際の作業性が優れており、しかも、増粘による密着性の低下が防止され、再現性が優れている。
【0113】
また、1液型のジチオカーボネート組成物では、液状又は低粘度の組成物として調製することができ、この点からも優れた作業性で使用することができる。しかも、硬化させる際に、加熱を必要とせず、常温であっても硬化させることができる。
【0114】
本発明のジチオカーボネート組成物は、種々の用途(接着や塗膜形成など)において、例えば、無機材料(例えば、コンクリート、タイル、石など)、金属材料(例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレスなど)、木質材料(例えば、木材、MDFなどの木質ボード、合板など)、紙質材料(例えば、紙、紙類似物質など)、繊維材料(例えば、不織布、織布など)、革材料、ガラス材料、磁器材料、各種プラスチック材料[例えば、ポリ塩化ビニル;ポリアミド(ナイロン);ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)等のスチレン系樹脂;ポリウレタン;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂など]、ゴム材料(例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴムなど)などの各種の基材に対して適用することができる。なお、これら基材に適用する際には、刷毛やローラー等による塗布、噴霧、浸漬等の方法を採用することができる。
【0115】
【発明の効果】
本発明のジチオカーボネート組成物によれば、前記構成を有しているので、可使時間および速硬化性を優れたバランスで両立している。また、貯蔵安定性が優れており、1液型とすることができる。さらには、1液型のジチオカーボネート組成物とすることにより、配合ぶれや混合不良などの人為的なミスを防止することができ、優れた作業性及び再現性で用いることができる。
【0116】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0117】
(ケチミン系化合物の調製例1)
アミンとしての1,3−キシリレンジアミン(商品名「MXDA」三井化学社製;メタキシリレンジアミン):136部と、カルボニル化合物としてのジエチルケトン:258部(ジエチルケトン/1,3−キシリレンジアミン(モル比)=3/1)と、トルエン:100部とをフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら、トルエンとジエチルケトンとが環流する温度(120〜150℃)で20時間環流して反応を行った。その後、過剰のジエチルケトンとトルエンとを蒸留により取り除き、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物A」と称する場合がある)を得た。
【0118】
(ケチミン系化合物の調製例2)
カルボニル化合物としてジプロピルケトン:342部(ジプロピルケトン/1,3−キシリレンジアミン(モル比)=3/1)を用いたこと以外は、前記ケチミン系化合物の調製例1と同様にして、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物B」と称する場合がある)を調製した。
【0119】
(ケチミン系化合物の調製例3)
カルボニル化合物としてエチルブチルケトン:342部(エチルブチルケトン/1,3−キシリレンジアミン(モル比)=3/1)を用いたこと以外は、前記ケチミン系化合物の調製例1と同様にして、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物C」と称する場合がある)を調製した。
【0120】
(ケチミン系化合物の調製例4)
アミンとしてノルボルナンジアミン(商品名「NBDA」三井化学社製):154部(ジエチルケトン/ノルボルナンジアミン(モル比)=3/1)を用いたこと以外は、前記ケチミン系化合物の調製例1と同様にして、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物D」と称する場合がある)を調製した。
【0121】
(ケチミン系化合物の調製例5)
カルボニル化合物としてメチルイソブチルケトン:300部(メチルイソブチルケトン/1,3−キシリレンジアミン(モル比)=3/1)を用いたこと以外は、前記ケチミン系化合物の調製例1と同様にして、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物E」と称する場合がある)を調製した。
【0122】
(ケチミン系化合物の調製例6)
カルボニル化合物としてメチルプロピルケトン:258部(メチルプロピルケトン/1,3−キシリレンジアミン(モル比)=3/1)を用いたこと以外は、前記ケチミン系化合物の調製例1と同様にして、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物F」と称する場合がある)を調製した。
【0123】
(ケチミン系化合物の調製例7)
カルボニル化合物としてジブチルケトン:426部(ジブチルケトン/1,3−キシリレンジアミン(モル比)=3/1)を用いたこと以外は、前記ケチミン系化合物の調製例1と同様にして、ケチミン系化合物(「ケチミン系化合物G」と称する場合がある)を調製した。
【0124】
(実施例1)
ジチオカーボネート系化合物として、下記式(6)で表されるジチオカーボネート系化合物(ビスフェノールF型骨格を有するジチオカーボネート系化合物;ビスフェノールF型タイプ)」:100部と、ケチミン系化合物としてケチミン系化合物A:60部とを減圧下で攪拌して、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物A」と称する場合がある)を調製した。
【化19】
Figure 0003995531
【0125】
なお、前記式(6)で表されるジチオカーボネート系化合物は、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「エピコート806」ジャパンエポキシレジン社製)165部を、室温(20〜25℃)で且つ窒素雰囲気下でテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、さらに臭化リチウムを1g添加し溶解させた後、二硫化炭素200gを室温(20〜25℃)でゆっくりと滴下しながら攪拌を行い、滴下終了後さらに12時間室温(20〜25℃)で攪拌を続け、その後、溶媒であるTHFを減圧除去して取り除くことにより、調製することができる。
【0126】
参考例1
ケチミン系化合物としてケチミン系化合物B:60部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物B」と称する場合がある)を調製した。
【0127】
参考例2
ケチミン系化合物としてケチミン系化合物C:60部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物C」と称する場合がある)を調製した。
【0128】
(実施例
ジチオカーボネート系化合物として、前記式(6)で表されるジチオカーボネート系化合物(ビスフェノールF型タイプ):50部と、ケチミン系化合物としてケチミン系化合物A:50部と、エポキシ系化合物として商品名「エピコート828(油化シェルエポキシ社製)」:50部とを減圧下で攪拌して、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物D」と称する場合がある)を調製した。
【0129】
(実施例
ケチミン系化合物としてケチミン系化合物D:50部を用いたこと以外は実施例と同様にして、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物E」と称する場合がある)を調製した。
【0130】
(実施例
ジチオカーボネート系化合物として、前記式(6)で表されるジチオカーボネート系化合物(ビスフェノールF型タイプ):100部と、ケチミン系化合物としてケチミン系化合物A:70部と、シラン系化合物として商品名「KBM403(信越化学工業社製)」:40部とを減圧下で攪拌して、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物F」と称する場合がある)を調製した。
【0131】
(比較例1)
ケチミン系化合物としてケチミン系化合物E:60部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物G」と称する場合がある)を調製した。
【0132】
(比較例2)
ケチミン系化合物としてケチミン系化合物F:60部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物I」と称する場合がある)を調製した。
【0133】
(比較例3)
ケチミン系化合物としてケチミン系化合物G:60部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、1液型のジチオカーボネート組成物(「ジチオカーボネート組成物J」と称する場合がある)を調製した。
【0134】
なお、実施例、参考例及び比較例により得られた1液型のジチオカーボネート組成物は、それぞれ、カートリッジに密封充填し30日間保管した後、使用した。
【0135】
(評価)
実施例1〜4、参考例1〜2および比較例1〜3により得られたジチオカーボネート組成物A〜Kについて、下記の硬化性試験方法、接着性試験方法、安定性試験方法により、硬化性(硬化開始時間、硬化終了時間)、接着性、安定性を評価した。評価結果は、表1に示した。
【0136】
(硬化性試験方法)
ジチオカーボネート組成物を、ガラス板上に、硬化後の塗膜厚さが0.2mmとなるように塗布し、ドライングレコーダーを用いて、温度25℃且つ湿度65%RHの条件で、建設省総合技術開発プロジェクトによる「コンクリートの耐久性向上技術の開発」(発行日:平成元年5月)に記載のドライングレコーダーを用いた方法に準拠して(塗膜の厚みが0.2mmであることが異なる)、硬化開始時間、硬化終了時間を測定した。
【0137】
(接着性試験方法)
被着体として、アサダ材/アサダ材(それぞれ、100mm×25mm×5mm)を用い、前記貯蔵安定性の評価を行った1液型のジチオカーボネート組成物を、片方の被着体の表面に塗布し(塗布面積:25mm×25mm;塗布量:約80g/m2)、直ちに他方の被着体を貼り合わせて固定し、温度:23℃、湿度:55%RHの条件下で6時間養生した後、引張せん断試験(JIS K 6850に準じる)を行って、接着強さの測定(単位:N/mm2)を行い、下記の評価基準により接着性を評価した。
(評価基準)
○:接着強度が2N/mm2以上である。
×:接着強度が2N/mm2未満である。
【0138】
なお、接着性試験では、ジチオカーボネート組成物は、カートリッジを開封してすぐに使用した。
【0139】
(安定性試験方法)
ジチオカーボネート組成物をカートリッジに充填密封して、23℃且つ65%RHの環境下で30日間放置した後に、ジチオカーボネート組成物の状態を目視により観察して、下記の評価基準により、安定性を評価した。
(評価基準)
○:ゲル化していない。
×:ゲル化している。
【0140】
【表1】
Figure 0003995531
【0141】
表1より、実施例1〜に係るジチオカーボネート組成物は、硬化開始時間が適度に速く良好であり、しかも、硬化終了時間が早い。すなわち、良好な可使時間と、優れた速硬化性とをバランスよく有している。特に、実施例1に係るジチオカーボネート組成物は、硬化開始時間は適度に早く且つ硬化終了時間が極めて早くなっており、可使時間および速硬化性を優れたバランスで両立していると言える。
【0142】
また、実施例1〜に係るジチオカーボネート組成物は、比較例1と比較して、同程度の強度と破壊状態を示している。従って、実施例1〜に係る1液型のジチオカーボネート組成物は、従来のものと同等の性能を有していることが確認された。
【0143】
さらにまた、1液型のジチオカーボネート組成物であるので、容器から取り出してすぐに使用することができ、配合ぶれや混合不良等の人為的なミスを防止して、優れた作業性および再現性で使用することができる。
【0144】
しかも、実施例1〜に係るジチオカーボネート組成物は、安定性は良好であり、長期間保存しても、ゲル化が生じず、粘度変化がほとんど又は全く生じていない。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される基を有するジチオカーボネート系化合物(A)と、下記式(2c)で表されるケチミン系化合物(B)とにより構成され、前記ジチオカーボネート系化合物(A)とケチミン系化合物(B)との配合割合が、ケチミン系化合物(B)の加水分解により生成するアミンの当量が、ジチオカーボネート系化合物(A)のエチレンジチオカーボネート基の当量に対して0.5〜2.0倍となる割合であることを特徴とするジチオカーボネート組成物。
    Figure 0003995531
    (式(1)において、 1 は酸素原子、X 2 は硫黄原子である。R1、R2、R3水素原子を示す。
    Figure 0003995531
    (式(2c)において、R 6 は2価の炭化水素基を示す。nは2である。)
  2. さらに、エポキシ系化合物(C)を含有している請求項1記載のジチオカーボネート組成物。
  3. エポキシ系化合物(C)の割合が、非揮発分全量に対して50質量%未満である請求項2記載のジチオカーボネート組成物。
  4. さらに、下記式(3)で表される加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)を含有している請求項1〜3の何れかの項に記載のジチオカーボネート組成物。
    Figure 0003995531
    (式(3)において、R 7 は炭化水素基を示し、R 8 は水素原子又は炭化水素基を示す。mは1又は2である。R 7 、R 8 は、それぞれ、同一又は異なる珪素原子に結合しているR 7 又はR 8 と結合していてもよい。)
  5. 1液型の硬化型樹脂組成物である請求項1〜4の何れかの項に記載のジチオカーボネート組成物。
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