JP2007211080A - 塩素除去剤それを用いる塩素除去方法、及びそれを含有する組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(1)又は(2)の化合物を含む塩素除去剤。
R1:C10−C18アルキル基等、S:2又は3、m,n=1〜3、M1:アルカリ又はアルカリ土類金属原子又はアルカノールアミン残基、x=M1の価数、y:1又は2
【選択図】なし
Description
プールなどの遊泳施設では、厚生労働省環境衛生局長通知により遊離残留塩素濃度は「0.4mg/L(0.4ppm)であること。1.0mg/L(1.0ppm)以下であることが望ましい。」とされており、塩素が多すぎると皮膚に対する刺激が強いため、上限が定められているが、実際のプールにおいて全ての場所で遊離残留塩素濃度を一定に保つことは困難であり、このため場合によっては高濃度の遊離残留塩素が皮膚、毛髪などに接触することもある。
遊泳後のシャワーによる遊離塩素の除去、或いは遊離塩素と窒素化合物の縮合したクロラミン等の結合塩素の除去が不十分であれば、残留する遊離塩素及び結合塩素から放出される遊離塩素により身体が損傷を受ける可能性がある。
プールでの遊泳後、髪が切れやすくなるとか、或いは髪が変色するなどの症状が出ることがあるが、これは溶存塩素(主に遊離塩素)によるものである。髪は皮膚に比して塩素の影響が見えやすい部位である。
水道水の様に比較的低濃度の溶存塩素含有水であっても、これを長時間毛髪に接触したとき、或いは、溶存塩素と毛髪が接触した状態で毛髪に熱や物理的なストレスが付加されたとき、キューティクルの剥離等の損傷を毛髪に与えることを本発明者らは明らかにした。
毛髪のキューティクルにダメージを受けることによりコルテックスやメデュラが外部と接触しやすくなる。すると、例えば同層中にカルシウム等の多価金属が進入することにより、これらの構成タンパク質等と多価金属とが結びつき、毛髪は脆くなり切れ毛が発生しやすくなる。或いは溶存塩素等の酸化性物質が内部たんぱく質を変性させるなどの問題が発生し、毛髪のボリウム感が低下し、変色するなどの問題が発生すると推定される。
溶存塩素を捕捉する効果のある物質として、特公平06−041409号公報(特許文献1)にプールにおける遊泳中に塩素殺菌剤によって起こる眼組織の障害に有効なタウリン含有眼科用液剤に関する記載がある。
その結果、添加塩素量に対してより多量のタウリンの添加により一定の効果は見られたが、温水下や物理的ストレスを与えた系、即ち洗髪時の条件下では、タウリンの塩素捕捉能力はいまだ十分ではないことを見出した。
更に前記特定の界面活性剤が溶存塩素を捕捉することによって、生成された水不溶性物質はそれに有効な可溶化剤を用いることにより水中に可溶化し得ることを見出し、それによって、塩素除去機能に優れた洗浄剤組成物の提供に成功した。
により表される物質の少なくとも1種を主成分として含むことを特徴とするものである。
本発明の塩素除去方法は、本発明の前記塩素除去剤を、溶存塩素を含有する水性液体中に添加し、それによって生成した塩素含有水不溶物を、前記水性液体から分離除去することを含むことを特徴とするものである。
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の前記塩素除去剤からなる塩素除去成分と、少なくとも1種の洗浄剤からなる洗浄成分とを含むことを特徴とするものである。
本発明の洗浄剤組成物は、塩素を含有する水不溶性物質を水中可溶化する成分をさらに含んでいてもよい。
本発明の洗浄剤組成物において、前記洗浄剤成分が、シャンプー用界面活性剤を含むものであり、かつ少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸を含む多価金属捕捉剤からなる成分をさらに含み、毛髪の塩素によるダメージを防止する効果を有するものであってもよい。
本発明の塩素漂白された物品用後処理剤は、本発明の塩素除去剤を含むことを特徴とするものである。
本発明の塩素除去剤は、洗浄剤組成物、及び塩素漂白された物品用後処理剤に利用することができる。前記本発明の洗浄剤組成物は多価金属捕捉剤成分、又は前記塩素除去剤が、塩素と結合して生成する水不溶性物質を可溶化する成分を含んでいてもよく、それによって、塩素除去剤含有組成物の機能を一層向上させることが可能になる。
ここで遊離塩素量とは、溶存ガス(Cl2)、次亜塩素酸(HOCl)、および次亜塩素酸イオン(OCl-)として水中に存在する残留塩素の濃度として定義され、この状態にある塩素はもっとも酸化力が強く毛髪損傷に大きく影響を与えるものである。
結合塩素量とは、天然の水すなわち汚染した水に存在するアンモニアあるいは有機アミンと化学的に結合して水中に存在する残留塩素の量と定義される。前述のタウリンによる遊離塩素の捕捉とは、遊離塩素とタウリンが反応してクロラミン様物質を形成しこの結合塩素として捕捉されていると考えられる。すなわち本発明においては、溶存塩素のうち遊離塩素を結合塩素に変換する機能を有する特定化合物を塩素除去剤として用いている。
結合塩素は、遊離塩素に比較すると、殺菌力などは低いが、周辺の化学的環境が変化することにより溶存塩素を放出することが知られている。総塩素量は遊離塩素量と結合塩素量の合計量である。
これは、一般式(1)及び(2)で示される界面活性剤と溶存塩素から形成される結合塩素含有化合物が、タウリンなどの通常の塩素捕捉剤に比較して、強く塩素を取り込んでおり、化学的環境の変化により遊離塩素を再放出しにくい性質を有することを示すものである。すなわち総塩素量の測定時に結合塩素を遊離塩素として再放出させるためにヨウ化カリウム溶液を添加しても、結合塩素が、遊離塩素として放出されることがなく、或いは少ないのである。
このことは一般式(1)及び(2)で示される界面活性剤が強力な溶存塩素除去剤であり、かつ溶存塩素再放出防止剤でもあることを示すものである。
この沈殿を分離回収することにより溶存塩素を捕獲回収することも可能である。
本発明の塩素除去剤を構成する一般式(1)及び(2)の界面活性剤に関して詳細に説明する。
一般式(1)及び一般式(2)の界面活性剤はアミドアミン型両性界面活性剤と称される両性界面活性剤の一種として市場に流通している。
これらは、通常イミダゾリニウムベタイン類と称される界面活性剤群を包含する。イミダゾリニウムベタイン型界面活性剤は、その合成経路の中間段階でイミダゾリン環が加水分解を起こし、上記一般式(1)乃至は(2)の構造を持つことが報告されている(例えば特公昭59−51532、特公昭35−4762、Cosmet Toiletries, Vol95, No11, p45-48, 1980)
この水不溶物は、各種界面活性剤によりミセル溶解することが可能であり、ミセル溶解させる界面活性剤の選択によっても異なるが、この疎水性物質をミセル可溶化するには、ミセル溶解に使用する界面活性剤を、そのcmc以上でかつ溶存塩素の10〜20倍モルの濃度、より確実には100倍モル以上の濃度で使用する。
一般式(1)及び(2)で示される塩素除去剤と溶存塩素により形成される水不溶物は、それが被塩素除去物質に吸着する場合が考えられる。一般式(1)及び(2)で示される塩素除去剤によって捕捉された塩素は、従来の塩素除去剤に比較して、強く本発明の塩素除去剤により束縛されているが、これを被塩素除去物質中に蓄積させることは好ましくない。そのため生成する水不溶物を被塩素除去物質から洗い流す必要がある。
一般式(1)及び(2)で示される塩素捕捉剤と溶存塩素により形成される水不溶物の溶解剤として用いられる界面活性剤の配合量は、そのcmc以上でかつ溶存塩素の10〜20倍モルの濃度、より好ましくは100倍モルの濃度以上である。
先に述べたように、水道水の様な低濃度の塩素含有水でも、それを毛髪と長期間接触させるとキューティクルの剥離などが観察される。この条件下ではタウリン等の従来から知られている塩素捕捉剤を水道水に配合することによりキューティクルの剥離はほぼ十分に防げる。タウリンの塩素捕捉能力は、水道水より高濃度の塩素含有水においても、短期間であれば、キューティクルの剥離を防げるほど有力ではある。しかし、水道水を40〜50度に保温した場合、及び洗髪操作中の物理ストレスとして、例えば振動状態に試験液を置くと、その塩素除去効果は失われ、キューティクルの剥離が発生するようになる。
本発明の塩素ダメージ防止性シャンプーにおいても、溶存塩素が存在する洗浄水中で洗髪中のストレス下においては、キューティクル層の開きなどは完全に防止することができない。これは、溶存多価金属等が毛髪内に進入し、毛髪内のタンパク分子間に架橋を形成し、熱やメカニカルなストレスをきっかけに組織の収縮が引き起こされ、空洞の形成が発生するのではないかと考えられている。
多価金属補足剤の配合量は、シャンプー全質量に対して0.1〜5%程度であることが好ましい。同時にシャンプー組成物のpHを4〜5.5に調整することが好ましい。
本発明の塩素除去剤含有洗浄剤組成物を含有する塩素ダメージ防止性シャンプーには、本発明の効果を妨げない限り、通常化粧料に使用される成分(例えば動物、植物、魚貝類、微生物由来の抽出物、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級アルコール、エステル類、シリコーン及びその誘導体、保湿剤、水溶性高分子、被膜剤、紫外線吸収剤、消炎剤、金属封鎖剤、低級アルコール、糖類、合成樹脂エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、抗菌剤、香料など)を含有できる。
また、近年漂白剤が配合された衣類洗浄剤或いは衣類の洗浄に漂白剤を用いることが多いが、漂白処理後に本発明塩素除去剤又はそれを含有する洗浄剤組成物を加えすすぐことにより、漂白剤の残留を防ぐことができる。
実施例1及び2並びに比較例1〜6の各々において、蒸留水1リットルに次亜塩素酸ナトリウム溶液(試薬1級、関東化学Assay(as active chlorine min. 5.0%)を溶解し、遊離塩素濃度が5mg/L(5ppm)になるように濃度を調整し、この溶液に表1に記載の塩素除去剤を主成分純分換算1.00gを添加し、(但し比較例1において、タウリン0.10gを添加)経過時間30分、60分、90分毎に塩素除去剤含有溶液中の総残留塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定した。
DPD(ジエチル−p−フェニレンジアミン法)法による遊離塩素及び総塩素量の測定、柴田科学株式会社 残留塩素測定用及び遊離残留塩素測定用の簡易水質キットを用い、その呈色を、標準カラーチャートの色と比較し判定した。
実施例1〜2において一般式(1)及び(2)の化合物は、時間の経過とともに遊離塩素量のみならず総塩素量が減少している。これは先に述べたように全残留塩素が減少したわけではなく、一般式(1)及び(2)の構造を有する化合物が捕捉した塩素が再放出されないために見掛け上全残留塩素量が減少した様に計測されているものと推定される。
このことは一般式(1)及び(2)の構造を有する化合物が、一度捕捉した塩素を放出しにくい性質があることを意味し、塩素捕捉固定性能に優れていることを示すものである。
毛髪に対する影響
実施例3及び比較例7〜11の各々において、蒸留水及び蒸留水に亜塩素酸ナトリウム溶液(試薬1級 関東化学Assay(as active chlorine min. 5.0%)を溶解して、遊離塩素濃度が5mg/L(5ppm)に調整された溶液に、表2に記載の塩素除去剤100mg/L(100ppm)を添加し、得られた処理液中に毛髪10gを温度25℃において、60分間浸漬した後、毛髪を1リットルのイオン交換蒸留水にて3回濯ぎ、自然乾燥させた。この毛髪の表面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。
1 キューティクル層が剥落している。
2 キューティクル層が所々剥落していることが認められる。
3 キューティクル層に損傷を認めない。
溶存塩素と本発明の塩素除去剤による白濁沈殿の発生
実施例4〜9の各々において、1リットルの蒸留水に7.29gの次亜塩素酸水溶液(塩素0.36g、約3600ppm)を溶解して試験溶液を調製した。この試験溶液は、それに固形純分10gの一般式(2)の化合物を添加すると(濃度約1%)、白濁し、沈殿が生成するものであった。
また、本発明の塩素除去剤が、塩素による蛋白質変性を防ぐ機能があるか否かを検証するために水溶性蛋白質としてOVA(オボアルブミン)試薬(SIGMA社)を用い、それと表3に記載の塩素除去剤とを、表3に記載の濃度になるように、混合し、この混合液に前記塩素含有試験溶液又は水を加え、前記試験溶液又は水の混合5分後と24時間後とに、HPLC法によりOVA含量を測定し、下記式:
OVA変性率(%)=100−〔(試験液のピーク高さ/OVA標準液のピーク高さ) ×100〕
に従いOVA変性率を算出した。
HPLC法条件
カラム:Shodex PROTEIN KW-803+KW-G
溶離液:50mM リン酸バッファー(pH7.0)+150mM硫酸ナトリウム
流速:0.8ml/min
温度:40度
検出:UV220nm
実施例10〜13の各々において、下記の処方で、塩素ダメージ防止性シャンプーを調製した。実施例3に記載の方法により、毛髪のキューティクルの状態を観察したところ、キューティクルの損傷は見られなかった。
透明タイプ塩素ダメージ防止用シャンプー 固形純分質量%
実施例1に記載の、一般式(1)の化合物 10.00
ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩 7.00
ラウリルグリコールヒドロキシプロピルエーテル 2.00
トリイソステアリン酸PEG−160ソルビタン 0.80
POE(50)硬化ひまし油モノイソステアレート 1.00
グルコシルトレハロース 2.00
カチオン化セルロース 0.20
オクトピロックス 0.75
サリチル酸 0.20
タウリン 0.20
サクシニル化カルボキシメチルキトサン 0.50
クエン酸 0.50
リンゴ酸 0.30
香料 0.50
精製水 to 100%
パール状塩素ダメージ防止性シャンプー 固形純分質量%
実施例1に記載の一般式(1)の化合物 5.00
実施例1に記載の一般式(2)の化合物 5.00
POE(2)ラウリルエーテルサルフェートNa塩 6.50
ラウリン酸ナトリウム塩 1.50
POE(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド 2.50
グリセリン 2.00
エチレングリコールジステアレート 1.00
タウリン 0.10
グリコール酸 0.20
センブリエキス 0.01
ニンジンエキス 0.01
香料 0.30
精製水 to 100%
透明タイプ塩素ダメージ防止性シャンプー 固形純分質量%
実施例に記載の一般式(1)の化合物 12.00
ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン 4.00
アルキルグルコシドを主成分とする界面活性剤 8.00
(ラウリル/ミリスチル)グリコールヒドロキシプロピルエーテル 1.70
トリイソステアリン酸PEG−160ソルビタン 0.50
グルコシルトレハロース 2.00
カチオン化セルロース 0.20
カチオン化グァー 0.20
タウリン 0.20
サリチル酸 0.20
オクトピロックス 0.75
クエン酸 0.50
香料 0.50
精製水 to 100%
Claims (6)
- 下記一般式(1)及び(2):
により表される物質の少なくとも1種を主成分として含む塩素除去剤。 - 請求の範囲第1項に記載の塩素除去剤を、溶存塩素を含有する水性液体中に添加し、それによって生成した塩素含有水不溶物を、前記水性液体から分離除去することを含む、塩素除去方法。
- 請求の範囲第1項に記載の塩素除去剤からなる塩素除去成分と、少なくとも1種の洗浄剤からなる洗浄成分とを含む、洗浄剤組成物。
- 塩素を含有する水不溶性物質を水中可溶化する可溶化剤からなる成分をさらに含む、請求の範囲第3項に記載の洗浄剤組成物。
- 前記洗浄成分が、シャンプー用洗浄剤を含むものであり、かつ少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸を含む多価金属捕捉剤からなる成分をさらに含み、毛髪の塩素によるダメージを防止する効果を有する、請求の範囲第3又は4項に記載の洗浄剤組成物。
- 請求の範囲第3又は4項に記載の洗浄剤組成物を含む、塩素漂白された物品用後処理剤。
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