JP3621441B2 - 皮膚用洗浄剤組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、皮膚に対する刺激が少なく、使用時の泡の腰が強く、すすぎ時にはぬめり感が少なく、乾燥後の皮膚にシットリとした感触を与える皮膚用洗浄剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、身体用の洗浄剤としては脂肪酸石鹸が長年の間使用されてきた。一般に脂肪酸石鹸は、洗浄後の皮膚にサッパリとした感触を残すが、そのもの自体がアルカリ性であるため皮膚にアルカリ障害を起こすことがあり、皮膚の弱い人や乳幼児には不適当である。そこで最近では、アルカリ障害がなく、かつ皮膚刺激の少ない界面活性剤としてN−アシルアミノ酸塩等のアミドカルボン酸型界面活性剤が広く用いられるようになってきた。しかし、これらのアミドカルボン酸型界面活性剤は、皮膚刺激が少ないものの、使用時の泡の腰が弱いこと、すすぎ時にぬめり感があり、乾燥後の皮膚や毛髪にシットリとした感触を与えることがないことなどから、身体用洗浄剤としては必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
また、近年になり、各種のペプタイドを配合して、洗浄剤や化粧料に様々な付加価値を付与しようとする試みがなされており、例えば、下記のような技術が開示されている。
【0004】
(a)水溶性シルクペプタイドとアニオン界面活性剤および両性界面活性剤とを組合わせた化粧料が開示され、刺激性の低減と泡の安定性の改良を試みている(特開平3−261706号公報)。
【0005】
(b)アニオン活性剤界面活性剤とキレート剤、これに平均分子量400〜1000のペプタイドを含有するシャンプー組成物が開示され、リンス効果とカルシウムの再沈着防止効果を有することが示されている(特開昭63−150212号公報)。
【0006】
しかし、(a)、(b)の従来技術とも、洗浄剤組成物のすすぎ時のぬめり感の解消や、乾燥後の皮膚のシットリ感の改善に関する検討はなされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、皮膚に対する刺激が少なく、使用時の泡の腰が強く、すすぎ時にはぬめり感が少なく、さらに乾燥後の皮膚にシットリとした感触を与える洗浄剤組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、皮膚に対する刺激が少なく、使用時の泡の腰が強く、すすぎ時にはぬめり感が少なく、乾燥後の皮膚にシットリとした感触を与える皮膚用洗浄剤組成物を得るべく鋭意検討を行った結果、アミドカルボン酸型界面活性剤と水溶性シルクペプタイドを組み合わせることにより、上記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるアミドカルボン酸型界面活性剤および下記一般式(2)で示される水溶性シルクペプタイドを、重量比で99:1〜70:30の範囲及びアミドカルボン酸型界面活性剤及び水溶性シルクペプタイドの合計含有量が15〜100%で、かつ卵白アルブミン変性率が10%未満であることを特徴とする皮膚用洗浄剤組成物に関するものである。
【0010】
〔アミドカルボン酸型界面活性剤〕
R1CO−R2−COOM(1)
(式中、R1は炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、塩基性アミノ酸またはアルカノールアミンのカチオン残基を表し、R2は下記式(a)〜(b)から選ばれる2価の置換基を表わす)
【0011】
【化3】
【0012】
〔水溶性シルクペプタイド〕
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R3はシルクより誘導されるフィブロインペプチドを構成するアミノ酸側鎖を表し、nは2〜50の整数を表す)
本発明の皮膚用洗浄剤組成物において、前記一般式(1)で示されるアミドカルボン酸型界面活性剤と、前記一般式(2)で示される水溶性シルクペプタイドの重量比は99:1〜70:30、好ましくは95:5〜85:15の範囲である。また、本発明の皮膚用洗浄剤組成物における、アミドカルボン酸型界面活性剤および水溶性シルクペプタイドの合計含有率は15〜100%であることが好ましい。本発明の皮膚用洗浄剤組成物におけるアミドカルボン酸型界面活性剤および水溶性シルクペプタイドの重量配合比および、両成分の合計含有率が、上記の範囲外になると、皮膚への刺激がないこと、すすぎの際にぬめり感がないこと、および乾燥後のシットリ感がすぐれていることの全てが満足されることはなくなる。また本来の洗浄力、泡質の改良効果についても不十分なものとなる。
【0015】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物における前記一般式(1)で示されるアミドカルボン酸型界面活性剤は、例えば炭素数8〜22の脂肪酸を出発物質として、これにアミノ酸類を反応させることによって製造できる。
【0016】
前記一般式(1)の化合物中のアシル基(R1CO−)は、炭素数8〜22の直鎖あるいは分岐鎖の飽和脂肪酸または不飽脂肪酸の脂肪酸残基であり、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸残基あるいは、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等の混合脂肪酸の脂肪酸残基が挙げられる。
【0017】
前記一般式(1)におけるMは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アンモニウム基、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、あるいはリジンまたはアルギニン等の塩基性アミノ酸のカチオン残基を表す。
【0018】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物において、前記一般式(1)中のR2は前述の式(a)から(b)の2価の置換基から選ばれる。
【0019】
前記一般式(1)のアミドカルボン酸型界面活性剤においてR2が、式(a)の基である場合、一般式(1)の化合物としてはココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)において、R2が式(b)の基である場合、前記一般式(1)の化合物としては、ココイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、ミリストイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、パルミトイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、ステアロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンカリウム、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンカリウム、ラウロイル−N−メチル−β−アラニントリエタノールアミン等が挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる一般式(2)の水溶性シルクペプタイドは、シルク繊維を酸やアルカリ等で処理して化学的に分解する方法、あるいはプロテアーゼ等の酵素を使用して酵素的に分解する方法等により可溶化したものであれば使用可能であるが、特に平均分子量が約200〜5000程度の可溶化された水溶性シルクペプタイドあるいはその乾燥物が好ましい。平均分子量が200未満では、ペプタイド含量が少ない点で、5000を超えると溶解性が低下するため好ましくない。
【0025】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物には、必要に応じて更に脂肪酸ジエタノールアミドあるいは脂肪酸モノエタノールアミド等の増粘剤、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類、エステル油等のエモリエント剤、ヒアルロン酸、コラーゲン、キチン、キトサン等の保湿剤、アロエエキス、胎盤抽出エキス等の細胞賦活剤、アラントイン、グリチル酸塩等の消炎症剤、香料、色素等を加える事ができる。
【0026】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物の剤型は任意であり、液体、ペースト、ゲル状、粉状、固体等どのような剤型でも構わない。また用途も任意であるが、代表的なものとして、洗顔剤、クレンジングフォーム、ボディーシャンプー等が挙げられる。
【0027】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に詳細に説明する。実施例中の各試験方法は次のようにして行った。
【0028】
〈試験方法〉
1)ぬめり感試験
20〜40歳のパネラー20名に、試料5mlを浴用スポンジに取ったものを用いて約40℃の温水で手及び前腕部を3回ずつ洗浄させ、すすぎ後のぬめり感を下記基準により評価させ、その評点の平均値を求めた。
ぬめり感がない・・・・・・・・・・・4点
ぬめり感がほとんどない・・・・・・・3点
ぬめり感がややある・・・・・・・・・2点
ぬめり感が明らかにある・・・・・・・1点。
【0029】
2)シットリ感試験
前記洗浄及びすすぎの後、自然乾燥させた後の皮膚のシットリ感を下記基準により評価し、その評価点の平均値を算出した。
ぬめり感が全くなくてシットリしている・・・・・・・・4点
ほとんどぬめり感がなくてシットリしている・・・・・・3点
ぬめり感がややあり、シットリ感がうすい・・・・・・・2点
ぬめり感が明らかに残りシットリしない・・・・・・・・1点。
【0030】
3)洗浄力試験
前記1)および2)の試験の際、市販固形石鹸と比較した洗浄力を以下の基準により評価した。
石鹸より良い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◎
石鹸と同等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○
石鹸より劣る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・△
石鹸よりかなり劣る・・・・・・・・・・・・・・・・・×。
【0031】
4)泡の感触試験
20〜40歳のパネラー20名に実際に洗顔、スポンジでの身体洗浄を行ってもらい、その際の泡の感触を以下の基準により評価した。
腰が強く、使用時の感触がかなり良い・・・・・・・・・◎
腰は普通、使用時の感触は良い・・・・・・・・・・・・○
腰はやや柔らかく、使用感もあまり良くない・・・・・・△
柔らかく、すぐ崩れてしまう、使用に耐えない・・・・・×。
【0032】
5)タンパク変成試験(刺激緩和作用の評価)
水系高速液体クロマトグラフィーを利用し、卵白アルブミンpH7緩衝溶液に、試料濃度1%になるように試料を加えた場合の卵白アルブミン変性率を、220nmの吸収ピークを用い、下記式から算出した。
【0033】
【数1】
【0034】
但し、
Ho:卵白アルブミンの220nm吸収ピークの高さ
Hs:卵白アルブミン緩衝溶液に試料を加えた時の220nmの吸収ピークの高さ
評価の基準を次のように設定した。
◎:卵白アルブミン変性率 10%未満
○:卵白アルブミン変性率 10〜29%
△:卵白アルブミン変性率 30〜49%
×:卵白アルブミン変性率 50%以上。
【0035】
実施例1〜3、比較例1〜4
実施例1〜3、比較例1〜4の各々において表1に示す組成を有するボディーシャンプー組成物を調製し、上記試験に供した。その結果を表1に示す。
なお、水溶性シルクペプタイドは、絹を濃厚塩溶液に溶解し、透析した後、酵素分解して得られる、前記一般式(2)において、n≒10、平均分子量1000、R3がシルクより誘導されるフィブロインペプタイドを構成するアミノ酸側鎖であるペプタイドを使用した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1の結果から明らかなように、アミドカルボン酸型界面活性剤と水溶性シルクペプタイドを特定の割合で含有する実施例1〜3の本発明の洗浄剤組成物は、ぬめり感、シットリ感、タンパク変性試験、洗浄力試験および泡の感触のすべて試験項目で優れているのに対し、アミドカルボン酸型界面活性剤単独の比較例1や、水溶性シルクペプタイド単独の比較例2や、アミドカルボン酸型界面活性剤と水溶性シルクペプタイドが本発明の範囲外の洗浄剤は、いずれかの評価項目で劣るものであった。
【0038】
実施例4
下記組成の洗顔剤を調製し、これを前記試験に供した。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の結果から明らかなように、本発明の皮膚用洗浄剤組成物は、ぬめり感、シットリ感、タンパク変性試験および泡の感触試験の全ての項目において優れたものであった。
【0042】
【発明の効果】
本発明の皮膚用洗浄剤組成物は使用時の泡質が良く、洗浄後のすすぎの際のぬめり感が少なく、乾燥後のシットリ感がすぐれていて、しかも皮膚刺激の少ない実用上きわめて有用なものである。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で示されるアミドカルボン酸型界面活性剤および下記一般式(2)で示される水溶性シルクペプタイドを、重量比で99:1〜70:30の範囲及びアミドカルボン酸型界面活性剤及び水溶性シルクペプタイドの合計含有量が15〜100%で含有し、かつ卵白アルブミン変性率が10%未満であることを特徴とする皮膚用洗浄剤組成物。
〔アミドカルボン酸型界面活性剤〕
R1CO−R2−COOM(1)
(式中、R1は炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、塩基性アミノ酸またはアルカノールアミンのカチオン残基を表し、R2は下記式(a)〜(b)から選ばれる2価の置換基を表わす)
- 一般式(1)で示されるアミドカルボン酸型界面活性剤が、N−アシルサルコシン塩であることを特徴とする請求項1記載の皮膚用洗浄剤組成物。
- 一般式(1)で示されるアミドカルボン酸型界面活性剤が、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩であることを特徴とする請求項1記載の皮膚用洗浄剤組成物。
- 一般式(2)の水溶性シルクペプタイドの平均分子量が、約200〜5000であることを特徴とする請求項1記載の皮膚用洗浄剤組成物。
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