JP2007176706A - 酸化物焼結体及びその製造方法並びにスパッタリングターゲット及び透明導電膜 - Google Patents

酸化物焼結体及びその製造方法並びにスパッタリングターゲット及び透明導電膜 Download PDF

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Abstract

【課題】スパッタリングターゲットとして使用した場合、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られ、また、有機ELや高精細LCD等に用いられるRaやRyの小さい透明導電膜を実現し得る酸化物焼結体及びその製造方法並びにスパッタリングターゲット及び透明導電膜を提供する。
【解決手段】酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体であり、相対密度が102%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明導電膜を形成するために、スパッタリング法やイオンプレーティング法に用いられるスパッタリングターゲットやタブレットに用いられる酸化物焼結体及びその製造方法並びにそれを用いたスパッタリングターゲットに関するものであり、特に、LCD(液晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)の透明電極形成に用いられて有用なものである。
酸化インジウム−酸化錫(In−SnOの複合酸化物、以下、「ITO」という)膜は、可視光透過性が高く、かつ導電性が高いので透明導電膜として液晶ディスプレイやガラスの結露防止用発熱膜、赤外線反射膜等に幅広く用いられている。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使われる透明導電膜は、低抵抗(抵抗率2×10−4Ω・cm程度)のものが選択される。
このような状況下、酸化インジウムを主成分として、これに酸化スズと酸化ケイ素または/および酸化アルミニウムとがドーピングされた透明導電膜が、高抵抗でかつ良好な透明性を有するものとして提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、かかる公報の実施例によると、透明導電膜を形成するスパッタリングターゲットは焼結体でなく圧粉体で、高抵抗であり、DCマグネトロンが使用できないものである。
一方、本出願人は、先に、DCマグネトロンスパッタリング装置で使用できる程度のバルク抵抗を有するが、形成される透明導電膜が高抵抗で且つ光透過率が高いスパッタリングターゲットとして、酸化珪素などの絶縁性酸化物を添加した高抵抗透明導電膜用スパッタリングターゲットを開発した(特許文献2参照)。また、酸化インジウム及び酸化スズを主成分とし、酸化ケイ素又は酸化チタンの少なくとも一方を含有するスパッタリングターゲットが開示されている(特許文献3参照)。さらに、酸化珪素を含有するが高抵抗物質の酸化シリコン相が存在しないスパッタリングターゲットにより低抵抗の透明導電膜を成膜する技術も提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、その後の研究により、長期に亘ってスパッタ放電を続けると、酸化シリコンのような絶縁層が存在するためか、異常放電が生じやすく、最後まで安定したスパッタ放電が維持できないという問題がある。
例えば、特許文献3に記載された技術は、高抵抗化を目的とした絶縁物である酸化シリコンの添加であるので、焼結体内部に酸化シリコンからなる絶縁物が存在し、チャージアップした電荷が引き起こす絶縁破壊による異常放電の原因となり長時間安定したスパッタ放電は得られないという問題がある。また、さらに異常放電によりパーティクルが発生し、デバイス等の生産性が低下するという問題もある。また、特許文献4の実施例に記載の焼結体も低密度でピンホールを多く含んでおり、長期に亘っては異常放電が発生し易いという問題がある。
また、従来、ITOに酸化ケイ素を添加したターゲットは、それを用いてスパッタリングして形成した透明導電膜がアモルファスとなり、ウェットエッチングによる残渣がITOと比較して良好とはなるが、未だ不十分であった。
さらに、このような従来のスパッタリングターゲットで形成した透明導電膜は表面平滑性が良好でないので、その先鋭部への過電流により表示装置への悪影響を及ぼす虞があるという問題がある。特に、表面平滑性において、最大高低差Ryが大きいと、過電流の起点になり易いという問題がある。
この透明導電膜の表面平滑性は、特に有機ELの分野において重要な膜特性であり、LCDに用いられるITO膜で実現されるLCD用の膜特性、例えば、Ra=0.74nm、Ry=11.3nmという表面平滑性では、有機EL用の膜特性としては満足できない。
また、LCDにおいては、現状のITO膜の表面平滑性で十分であるが、Ra、Ryが小さくなると、エッチング残渣が減少し、さらに高精細なウェットエッチングによるパターン加工が可能となる。
そのため、有機ELや高精細LCD等に用いられるRaやRyの小さい透明導電膜及びそれを実現し得るスパッタリングターゲットの出現が要望されている。
特開平4−206403号公報(課題を解決するための手段など) 特開2003−105532号公報(課題を解決するための手段など) 特開2003−277921号公報(特許請求の範囲など) 特開2004−123479号公報(発明の実施の形態など)
本発明は、上述した事情に鑑み、スパッタリングターゲットとして使用した場合、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られ、また、有機ELや高精細LCD等に用いられるRaやRyの小さい透明導電膜を実現し得る酸化物焼結体及びその製造方法並びにスパッタリングターゲット及び透明導電膜を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体であり、相対密度が102%以上であることを特徴とする酸化物焼結体にある。
かかる第1の態様では、相対密度が102%以上の酸化物焼結体とすることにより、例えば、スパッタリングターゲットとした場合には、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られ、また、表面が平滑な透明導電膜が得られる。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の酸化物焼結体において、当該焼結体内におけるフェレー径2μm以上のピンホール数が単位面積当たり50個/mm以下であることを特徴とする酸化物焼結体にある。
かかる第2の態様では、焼結体内のピンホール数が少ないので、例えば、スパッタリングターゲットとした場合には、異常放電の発生が生じ難い。
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の酸化物焼結体において、当該焼結体の任意の断面を顕微鏡観察した際の析出相の割合が面積比で40%以上であることを特徴とする酸化物焼結体にある。
かかる第3の態様では、析出相の割合が40%以上と大きいので、例えば、スパッタリングターゲットとした場合には、使用末期まで特性が安定した膜を得ることができる。
本発明の第4の態様は、酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体の製造方法において、酸化シリコン原料粉の平均粒径を0.2μm〜0.6μmとして他の原料粉と混合した後、焼成温度1400℃以上で焼結したことを特徴とする酸化物焼結体の製造方法にある。
かかる第4の態様では、酸化シリコン原料粉末を所定の粒径として焼結するので、焼結体の焼結密度が著しく向上し、例えば、スパッタリングターゲットとした場合には、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られ、また、表面が平滑な透明導電膜が得られる酸化物焼結体が得られる。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の酸化物焼結体の製造方法において、得られた酸化物焼結体の相対密度が102%以上であることを特徴とする酸化物焼結体の製造方法にある。
かかる第5の態様では、相対密度が102%以上の酸化物焼結体が得られ、例えば、スパッタリングターゲットとした場合には、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られ、また、表面が平滑な透明導電膜が得られる。
本発明の第6の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の酸化物焼結体をバッキングプレートにボンディングしたことを特徴とするスパッタリングターゲットにある。
かかる第6の態様では、スパッタリングターゲットとした場合には、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られる。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載のスパッタリングターゲットにおいて、ガラス基板上にスパッタリングにより膜厚200nmで形成した透明導電膜の表面平滑性が、最大高低差Ryが6.0nm以下となることを特徴とするスパッタリングターゲットにある。
かかる第7の態様では、最大高低差Ryが6.0nm以下の透明導電膜が得られ、過電流の発生が防止される。
本発明の第8の態様は、第6又は7の態様に記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより形成した透明導電膜であって、ガラス基板上にスパッタリングにより膜厚200nmで形成した透明導電膜の表面平滑性が、最大高低差Ryが6.0nm以下であることを特徴とする透明導電膜にある。
かかる第8の態様では、最大高低差Ryが6.0nm以下の透明導電膜となり、過電流の発生が防止される。
本発明は、例えば、スパッタリングターゲットとして使用した場合、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られ、また、有機ELや高精細LCD等に用いられるRaやRyの小さい透明導電膜を実現し得る酸化物焼結体及びその製造方法並びにスパッタリングターゲット及び透明導電膜を提供するという効果を奏する。
本発明に係る酸化物焼結体は、酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体であり、相対密度が102%以上であることを特徴とし、例えば、スパッタリングターゲットとして使用した場合、使用初期から末期まで安定したスパッタ放電が得られるというものである。
ここで、安定したスパッタ放電とは、異常放電が極力発生せず、それによるパーティクル及びターゲットの割れやひびや欠けが発生しないこと及びスパッタで形成されるスパッタ膜の特性が使用初期から末期まで経時変化が小さいことをいう。
このように相対密度が102%以上の酸化物焼結体は、機械的強度が向上し、割れや欠けが発生し難く、安定したスパッタ放電が得られる。また、このような酸化物焼結体をスパッタした場合、得られるスパッタ膜は表面が非常に平滑であるという利点がある。
なお、相対密度が102%未満の場合には、機械的強度が102%以上より低く、割れや欠けが発生し易く、また、スパッタ膜の表面平滑性が劣化する傾向にある。
ここで、平滑であるとは、例えば、表面平滑性の最大高低差Ryが10.0nm以下、好ましくは6.0nm以下であることである。このように最大高低差Ryが10.0nm以下、好ましくは6.0nm以下となるほど平滑であり、スパッタ膜の先鋭部への過電流を防止することができ、先鋭部への過電流による有機EL表示素子への悪影響を排除することができる。また、高精細LCDの製造工程におけるウェットエッチングによる残渣を低減することができる。
また、相対密度とは、理論密度に対して相対的に算出した密度である。理論密度の算出の一例を示す。各原料であるInの密度を7.179g/cm、SnOの密度を6.950g/cm、SiOの密度を2.200g/cmとし、加重平均より算出した密度が理論密度であり、これを100%とする。例えば、85wt%In−10wt%SnO−5wt%SiOの場合の理論密度は6.43g/cmであり、その組成で相対密度100%の場合の実際の密度は6.43g/cmとなる。
また、このように相対密度が著しく高い酸化物焼結体は、ピンホール数が小さく、異常放電が発生し難いが、好ましい場合には、当該焼結体内におけるフェレー径2μm以上のピンホール数が単位面積当たり50個/mm以下となる。このように焼結体内部のフェレー径2μm以上のピンホールが50個/mm以下だと、ターゲット使用初期から末期まで異常放電を抑制でき、また、得られるスパッタ膜は非常に平滑である。
なお、焼結体内部のフェレー径2μm以上のピンホール数が50個/mmより多いと、ターゲット使用初期から末期までに異常放電が多発する傾向になって好ましくなく、また、得られるスパッタ膜の平滑性も低下する傾向にある。
ここで、フェレー径とは、ピンホールを粒子として見立てた場合に、粒子を挟むある一定方向の平行線間隔のことをいう。例えば、倍率100倍のSEM像による観察で計測できる。具体的には、当該焼結体の任意の破断面を鏡面状態になるまで研磨し、倍率100倍のSEM像を2値化処理することにより、ピンホールを特定し、画像処理ソフト(粒子解析III:エーアイソフト社製)により、フェレー径2μm以上のピンホール数をカウントした。
また、本発明の酸化物焼結体は、好ましい場合には、当該焼結体の任意の断面を顕微鏡観察した際の析出相の割合が面積比で40%以上である。このように析出相が40%以上となると、例えば、スパッタリングターゲットとした場合には、ターゲット使用初期から末期において、スパッタ膜の特性が安定し、また、スパッタ膜がより平滑になる傾向となる。
なお、析出相の割合が面積比で40%未満の場合には、スパッタリングターゲットとして使用した場合、ターゲット使用初期から末期において、スパッタ膜の特性が大きく変化する傾向が大きく好ましくなく、また、スパッタ膜の平滑性が低下する傾向となる。
ここで、析出相とは、酸化物焼結体の内部で結晶相として析出したものであり、任意の断面を顕微鏡観察することにより検出できる。例えば、倍率5000倍のSEM像の観察により検出できる。本発明では、任意断面における析出相の面積比を規定し、40%以上が好ましいとしている。
具体的には、任意断面を出すために、破断面を鏡面状態になるまで研磨し、さらに、酸でエッチングし、その後、断面を、例えば、倍率5000倍のSEM像を観察することにより、析出相の面積比を算出することができる。なお、この析出相は、後述するように、X線回折の結果、InSi相であると考えられる。
本発明の酸化物焼結体は、必要に応じて、錫(Sn)が含有されている。錫が含有される場合には、インジウム1モルに対して0.001〜0.3モル、好ましくは、0.01〜0.15モル、より好ましくは0.05〜0.1モルの範囲で含有されるのが望ましい。この範囲内であれば、スパッタリングターゲットのキャリア電子の密度並びに移動度を適切にコントロールして導電性を良好な範囲に保つことができる。また、この範囲を越えて添加すると、スパッタリングターゲットのキャリア電子の移動度を低下させると共に導電性を劣化させる方向に働くので好ましくない。
本発明の酸化物焼結体の製造方法を以下に説明する。
酸化物焼結体を構成する出発原料としては、一般的にIn、SnO、SiOの粉末を用いるが、これらの単体、化合物、複合酸化物等を原料としてもよい。単体、化合物を使う場合はあらかじめ酸化物にするようなプロセスを通すようにする。なお、ここで、重要なのは、酸化シリコン原料粉の平均粒径を0.2μm〜0.6μmとすることである。
すなわち、本発明の酸化物焼結体の好適な製造方法は、酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体の製造方法において、酸化シリコン原料粉の平均粒径を0.2μm〜0.6μmとして他の原料粉と混合した後、焼成温度1400℃以上で焼結するというものである。さらに詳細には、まず、酸化インジウムと必要に応じて好ましくは5〜15wt%の酸化錫を含有すると共に好ましくは2〜8wt%の酸化シリコンを含有する酸化物焼結体の製造方法において、酸化シリコン原料粉の平均粒径を0.2μm〜0.6μmとして他の原料粉と乾式ボールミルにより5〜48時間混合した後、得られた混合粉に#1500PVAバインダーを混合粉の重量に対して3〜8wt%添加し乳鉢等により混合する。これを20〜30meshの篩などにより篩い分けした後、金型に均一に充填しコールドプレス法などにより500kg/cm〜5ton/cmの圧力でプレス成形する。500kg/cm未満だと成形密度が低下し、焼結の進行は不十分となり焼結密度が低下する。5ton/cmより大きいと設備が大掛かりとなり好ましくない。この成形体を焼成温度1400℃以上で大気焼成するが、昇温については、室温〜800℃までは40〜100℃/hrで昇温し、焼成体内の温度分布を均一にするために焼成体サイズにより必要に応じて800℃で4時間以上保持し、800〜1300℃までは50〜450℃/hrで昇温し、1300℃〜設定温度(例えば1450℃)までは50〜100℃/hrで昇温し、設定温度にて4時間以上保持する。降温については、室温まで50〜400℃/hrで冷却する。
このように、酸化シリコン原材料粉の平均粒径を0.2〜0.6μmとし、焼成温度を1400℃以上とすることにより、酸化物焼結体密度が著しく向上し、焼結体内部のピンホールが減少し、析出相を増加させることができる。
なお、酸化シリコン原料粉の平均粒径が0.2μmより小さく、特に平均粒径0.05μm以下となると、焼成後の密度が低下して好ましくなく、また、平均粒径が0.6μmより大きくなると、焼結密度が低下したり、析出相が減少したりするため、好ましくない。
ここで、酸化シリコン原料以外の原料粉の粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.3〜1.5μm程度のもの、好ましくは、0.4〜1.1μm程度のものを用いることができる。
焼結温度は、1400℃以上とすると相対密度が向上し好ましく、また、スパッタ膜の平滑性が向上するので好ましいが、さらに相対密度が向上し、焼成による焼結体の反りを小さくするためには、1450℃〜1550℃とするのがより好ましい。なお、1550℃を越え、特に1600℃以上で焼成しても、効果の向上は顕著ではなく、焼成炉の設備費やランニングコストが高価となり、好ましくない傾向となる。一方、1400℃より低いと、相対密度が低下して好ましくない。
なお、本発明においては、原料粉の所望の配合割合、混合方法、成形する方法は特に限定されず、従来から公知の各種湿式法又は乾式法を用いることができる。
乾式法としては、コールドプレス(Cold Press)法やホットプレス(Hot Press)法等を挙げることができる。コールドプレス法では、混合粉を成形型に充填して成形体を作製し、大気雰囲気下または酸素雰囲気下で焼成・焼結させる。ホットプレス法では、混合粉を成形型内で直接焼結させる。
湿式法としては、例えば、濾過式成形法(特開平11−286002号公報参照)を用いるのが好ましい。この濾過式成形法は、セラミックス原料スラリーから水分を減圧排水して成形体を得るための非水溶性材料からなる濾過式成形型であって、1個以上の水抜き孔を有する成形用下型と、この成形用下型の上に載置した通水性を有するフィルターと、このフィルターをシールするためのシール材を介して上面側から挟持する成形用型枠からなり、前記成形用下型、成形用型枠、シール材、およびフィルターが各々分解できるように組立てられており、該フィルター面側からのみスラリー中の水分を減圧排水する濾過式成形型を用い、混合粉、イオン交換水と有機添加剤からなるスラリーを調製し、このスラリーを濾過式成形型に注入し、該フィルター面側からのみスラリー中の水分を減圧排水して成形体を作製し、得られたセラミックス成形体を乾燥脱脂後、焼成する。
各方法において、焼結後は、所定寸法に成形・加工のための機械加工を施し、例えば、ターゲットとする。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
平均粒径が0.48μmの酸化インジウム粉末と平均粒径が0.91μmの酸化スズ粉末と平均粒径が0.2μmの酸化シリコン粉末とを、重量比で85:10:5の割合で調合した。これを樹脂製ポットに投入し、乾式ボールミルにより21時間混合した。この乾式ボールミルの際、メディアにはジルコニア製ボールを用いた。篩い分けによりメディアと原料粉とを分級し、得られた混合粉に濃度4%PVAバインダーを所定量添加し混合した。この粉を236×440サイズの金型に充填し、コールドプレス法により800kg/cmの圧力で成形した。この成形体を大気雰囲気にて次のように焼結した。室温から1400℃まで60℃/時間で昇温し、1400℃にて5時間保持し、1200℃まで200℃/時間で降温し焼結体を得た。この焼結体を直径6インチ(15.24cm)で厚さ5mmに加工し、無酸素銅製のバッキングプレートにメタルボンディングしてスパッタリングターゲットを得た。加工の際、スパッタリング面は♯170砥石により平面研削を行った。
(実施例2)
成形体の焼成条件を以下の方法に変えた以外、実施例1と全く同様の方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
室温から800℃まで50℃/時間で昇温し、800℃にて4時間保持した後、1300℃まで400℃/時間で昇温し、1450℃まで50℃/時間で昇温し、1450℃にて8時間保持し後、800℃まで50℃/時間で降温した。焼成は大気雰囲気で行った。
(実施例3)
酸化シリコン粉末の平均粒径を0.6μmとし、成形体の焼成条件を以下の方法に変えた以外、実施例1と全く同様の方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
室温から800℃まで50℃/時間で昇温し、800℃にて4時間保持した後、1300℃まで400℃/時間で昇温し、1450℃まで50℃/時間で昇温し、1450℃にて8時間保持し後、800℃まで50℃/時間で降温した。焼成は大気雰囲気で行った。
(比較例1)
酸化シリコン粉末の平均粒径を0.05μmとしたこと以外は実施例1と全く同じ方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
(比較例2)
酸化シリコン粉末の平均粒径を0.9μmとしたこと以外は実施例1と全く同じ方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
(比較例3)
酸化シリコン粉末の平均粒径を1.5μmとしたこと以外は実施例1と全く同じ方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
(比較例4)
酸化シリコン粉末の平均粒径を1.5μmとし、成形体の焼成条件を以下の方法に変えた以外、実施例1と全く同様の方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
室温から800℃まで50℃/時間で昇温し、800℃にて4時間保持した後、1300℃まで400℃/時間で昇温し、1450℃まで50℃/時間で昇温し、1450℃にて8時間保持し後、800℃まで50℃/時間で降温した。焼成は大気雰囲気で行った。
(比較例5)
成形体の焼成条件を以下の方法に変えた以外、実施例1と全く同様の方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
1100℃まで60℃/時間で昇温し、1100℃にて5時間保持し、1000℃まで200℃/時間で降温し焼結体を得た。焼成は大気雰囲気で行った。
(比較例6)
成形体の焼成条件を以下の方法に変えた以外、実施例1と全く同様の方法にて焼結体を作製しスパッタリングターゲットを得た。
1100℃まで60℃/時間で昇温し、1100℃にて5時間保持し、1000℃まで200℃/時間で降温し焼結体を得た。焼成は酸素雰囲気で行った。
(相対密度評価)
実施例1〜比較例6の焼結体について電子秤により計測した重量およびアルキメデス法により計測した体積より相対密度を算出した。この際、各原料であるInの密度を7.179g/cm、SnOの密度を6.950g/cm、SiOの密度を2.200g/cmとし加重平均より算出した密度を100%とした。例えば、In 85wt%とSnO 10wt%とSiO 5wt%の原料比の場合、6.430g/cmが相対密度100%となる。相対密度の結果を表1に示す。
(機械的強度評価)
実施例1〜比較例6の焼結体について、抗折試験器を用いJIS R1601に基づいて抗折強度の評価を行った。抗折強度の結果を表1に示す。
(ピンホール評価)
実施例1〜比較例6の焼結体について粉砕し、破断面を♯2000サンドペーパーを用い回転研磨器により鏡面状態になるまで研磨を行い、倍率100倍のSEM像を2値画処理して、画像処理ソフトを用いて視野内に存在するフェレー径2μm以上のピンホール数をカウントした。ピンホール評価結果を表1に示す。
(析出相の面積比評価)
実施例1〜比較例6の焼結体について粉砕し、破断面を♯2000サンドペーパーを用い回転研磨器により鏡面状態になるまで研磨を行い、40℃に保持した酸(HCl:HO:HNO=1:1:0.08 重量比)に9分間浸し、焼結体表面をエッチングした後、倍率5000倍にてSEM像を撮った。評価結果の例として、実施例1、2と比較例2、5のSEM像を図1〜図4に示す。エッチング残渣により図1〜図3のように析出相が現れた。
このSEM像を画像処理して2値画し、画像処理ソフトにより、析出相の全体に対する面積比を算出した。面積比の結果を表1に示す。また、これらの焼結体について、X線回折装置により分析した結果、比較例5と6以外については、In相とInSi相のピークが出現した。比較例5と6についてはInSi相のピークは出現しなかった。これらのSEMとXRDの結果より、上記の析出相はInSi相であると考えられる。
(異常放電評価)
実施例1〜比較例6のターゲットについて、デポダウン方式の直流マグネトロンスパッタ装置およびアーク(異常放電)カウンターを用いて異常放電をカウントした。以下のスパッタ条件にて、73時間の連続スパッタ放電中に発生した異常放電の積算回数を表1に示す。但し、比較例5のターゲットについては、放電から38時間後に異常放電の頻度が急激に増えたため、放電を中止し大気開放してターゲットを観察したところターゲットの割れを確認し、割れ部に異常放電痕があった。比較例5以外のターゲットについて、73時間放電後のターゲット残厚について三次元測定器を用いて測定したところ、何れも0.5mmt以下であり、ターゲットライフ末期まで使用したことを確認した。また、目視にてターゲットを観察したところ、何れのターゲットにも割れやひびや欠けは無かった。
(スパッタ条件)
到達圧力 1×10−4Pa
加熱温度 100℃
導入アルゴン分圧 0.5Pa
導入酸素分圧 5×10−3Pa
直流電力 300W
放電時間 73時間
ガラス基板 コーニング社製#1737(両面研磨品)
(膜特性の経時変化)
上記の連続放電中において、放電開始から10時間、40時間、70時間経過後に、200nmのITO膜をガラス基板上へ成膜した。これを四探針法にてシート抵抗値を測定し、経時変化を評価した。結果を表1に示す。
(膜の表面平滑性)
実施例1〜3及び比較例1、2、4、5について、前述の40時間経過後に成膜した200nmの膜について表面形状測定器AFMにより10μm□内の表面粗さを評価した。結果を表1に示す。
(評価機器)
電子秤 GP3400IP Sartorius社製
SEM JSM−6380A JEOL社製
画像処理ソフト 粒子解析III エー・アイ・ソフト社製
X線回折装置 MXP3 MAC Science社製
X線回折 測定条件
線源 CuKα λ=1.5405
管電圧 40kV
管電流 30mA
測定範囲 20〜40゜
サンプリング間隔 0.02゜
スキャン速度 4゜/min.
発散スリット 1゜
散乱スリット 1゜
受光スリット 0.3mm
抗折試験器 オートグラフ 島津社製
アークカウンター Arc Monitor ランドマーク社製
三次元測定器 GJ1000D 東京精密
シート抵抗測定器 MCP−TP06P ダイアインスツルメント社製
表面形状測定器 AFM SPI3700(SII社製)
Figure 2007176706
(試験結果)
表1に示す結果から明らかなように、酸化シリコン原材料粉の平均粒径を0.2〜0.6μmとし、焼成温度を1400℃以上とした実施例1〜3は、焼結体密度が向上すると共に焼結体内部のピンホールが減少し、また、析出相が増加することがわかった。
このように焼結体密度が向上することにより機械的強度が大きくなり、異常放電発生時や熱衝撃時の焼結体の割れや欠けを抑制し、更にはスパッタによりRa、Ryの小さな平滑な膜が得られることも確認された。また、ピンホール減少によってスパッタリング時における異常放電を抑制し、更にはスパッタによりRa、Ryの小さな平滑な膜が得られることも確認された。さらに、析出相増加により、スパッタ膜の特性がターゲット使用初期から末期まで経時変化が小さくなり、更にはスパッタによりRa、Ryの小さな平滑な膜が得られることが確認された。
一方、酸化シリコン原料粉末の平均粒径が0.05μmの比較例1や、平均粒径が0.9μmや1.5μmの比較例2、4の場合には、相対密度が102%未満となり、また、ピンホール数も多く、析出相も40%未満であり、Ryの大きな膜となった。また、酸化シリコン原料粉末の平均粒径が0.2μmの場合でも焼成温度が1100℃と低い場合には、相対密度が著しく小さいと共にピンホール数も著しく多くなり、また、異常放電が著しく多くなり、Ra、Ryの大きな膜となることがわかった。
実施例1のSEM像を示す写真である。 実施例2のSEM像を示す写真である。 比較例2のSEM像を示す写真である。 比較例5のSEM像を示す写真である。

Claims (8)

  1. 酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体であり、相対密度が102%以上であることを特徴とする酸化物焼結体。
  2. 請求項1に記載の酸化物焼結体において、当該焼結体内におけるフェレー径2μm以上のピンホール数が単位面積当たり50個/mm以下であることを特徴とする酸化物焼結体。
  3. 請求項1又は2に記載の酸化物焼結体において、当該焼結体の任意の断面を顕微鏡観察した際の析出相の割合が面積比で40%以上であることを特徴とする酸化物焼結体。
  4. 酸化インジウムと必要に応じて酸化錫を含有すると共に酸化シリコンを含有する酸化物焼結体の製造方法において、酸化シリコン原料粉の平均粒径を0.2μm〜0.6μmとして他の原料粉と混合した後、焼成温度1400℃以上で焼結したことを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  5. 請求項4に記載の酸化物焼結体の製造方法において、得られた酸化物焼結体の相対密度が102%以上であることを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  6. 請求項1〜3の何れかに記載の酸化物焼結体をバッキングプレートにボンディングしたことを特徴とするスパッタリングターゲット。
  7. 請求項6に記載のスパッタリングターゲットにおいて、ガラス基板上にスパッタリングにより膜厚200nmで形成した透明導電膜の表面平滑性が、最大高低差Ryが6.0nm以下となることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  8. 請求項6又は7に記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより形成した透明導電膜であって、ガラス基板上にスパッタリングにより膜厚200nmで形成した透明導電膜の表面平滑性が、最大高低差Ryが6.0nm以下であることを特徴とする透明導電膜。

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