JP2007144990A - 発熱抵抗素子、サーマルヘッド、プリンタ、及び発熱抵抗素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サーマルヘッド4を、基板11と、基板11の一面に形成されるガラス製の蓄熱層12と、蓄熱層12上に設けられた発熱抵抗体13とを有する構成とする。蓄熱層12の発熱抵抗体13に対向する領域には、発熱抵抗体13が形成される面から離間した位置に、フェムト秒レーザーを用いたレーザー加工によって空洞部26を複数形成する。
【選択図】 図3
Description
ここで、サーマルプリンタとは、サーマルヘッドによってインクを加熱溶融させて印刷対象に転写する熱転写型プリンタや、サーマルヘッドによって感熱紙を直接感熱させる直接感熱型プリンタ等の総称である。
サーマルプリンタは、サーマルヘッドの各発熱抵抗体に選択的に熱を発生させて、インクリボンや感熱紙等の加熱対象の所望の位置に熱を加えることで、インクを溶融させて所望のパターンで印刷対象に転写したり、感熱紙を所望のパターンで感熱させている。
このため、発熱抵抗体が発生させた熱を極力基板に伝達させずに印刷等の加熱処理に有効利用することで(すなわち発熱効率を高めることで)、発熱抵抗素子の省電力化を図ることが考えられている。
また、サーマルヘッドは、連続して印刷出力を行うと、基板に継続的に熱が伝達されるために基板の放熱が間に合わなくなり、サーマルヘッド全体がかなり高温になってしまう。この温度上昇は、印刷品位を落とす原因となるため、高品位な連続印刷を実現するためには、サーマルヘッドの発熱効率を高める必要がある。
第1に、発熱抵抗体の下に空洞部を設けることで、絶縁基板本体方向への断熱効果はあるものの、厚さ方向の中間位置に空洞部を形成するためにアンダーグレーズ層自体が比較的厚く形成される必要がある。このため、アンダーグレーズ層に伝達された熱量がアンダーグレーズ層内に蓄積されることとなり、発熱抵抗体の表面側への熱量の伝達量が少ないので、発熱効率が低い。
すなわち、本発明の第一の態様は、基板と、該基板の一面に形成されるガラス製の蓄熱層と、該蓄熱層上に設けられた発熱抵抗体とを有し、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体に対向する領域には、前記発熱抵抗体が形成される面から離間した位置に、フェムト秒レーザーを用いたレーザー加工によって複数の空洞部、もしくは蛇行した線状の空洞部が形成されている発熱抵抗素子を提供する。
この空洞部は、蓄熱層に対してフェムト秒レーザーを用いたレーザー加工を施すことによって形成される。
このため、本発明の発熱抵抗素子では、従来の空隙を有する発熱抵抗素子に比べて製造工程が単純となり、製造コストが低くて済む。
また、蓄熱層において複数の空洞部間、もしくは蛇行する空洞部間に残された部分は、蓄熱層において空洞部の上下部分を支持する支柱として機能するので、空洞部近傍においても蓄熱層の強度が十分に確保されている。
また、フェムト秒レーザーによるレーザー加工は、ワークがガラス等のレーザー光に対して透明な材質である場合には、ワーク内部にレーザー光を集光させることで、ワークの表面に損傷を与えることなく、ワーク内部を加工することができる。
また、フェムト秒レーザーによってガラスを加工した場合、加工部位が蒸発して、加工部位に空洞が形成される。このとき、加工部位を構成していたガラスは、加工部位の周辺に押しやられることになるので、ワークにおいて加工部位の周辺部分の材料密度が高まる。
このため、本発明の発熱抵抗素子では、ガラス製の蓄熱層には、その表面に損傷を与えずに空洞部が形成されており、さらに蓄熱層において空洞部の周囲の密度が高くなっているので、空洞部近傍においても蓄熱層の強度が十分に確保されている。
このため、本発明の発熱抵抗素子では、蓄熱層における空洞部の形状及び位置を高精度に制御することができるので、空洞部を発熱抵抗体に対向する位置に正確にかつ所望の形状に正確に形成することができ、発熱抵抗体から基板への熱の流入を効果的に規制することができる。
このため、蓄熱層の発熱抵抗体が形成される面から空洞部までの距離は、1μm以上30μm以下に設定することが好ましい。
蓄熱層はガラス製であって透明なため、そのままでは表面形状を把握することは困難である。
そこで、蓄熱層の表面から離間した位置に、この表面に沿った反射層を設けることで、反射層の表面形状に基づいて蓄熱層の表面形状を予測することができ、蓄熱層の表面が平坦でない場合にも、蓄熱層の表面に沿って空洞部を形成することができる。
このように蓄熱層の各部において表面から空洞部までの距離を一定とすることで、蓄熱層の各部における強度や断熱性能を一定に保つことができ、品質が安定する。
例えば、蓄熱層をCVD(化学気相成長法)等の積層法を用いて作成すれば、上記のような反射層を有する蓄熱層は、積層過程の途中で積層済みのガラス層上に反射層を形成し、この反射層の上にさらにガラス層を形成することによって、容易に作成することができる。
この場合には、蓄熱層において空洞部間に残される部位の、蓄熱層の表面に沿った断面積が小さくなるので、この部分を通じた熱伝導が少なくなり、発熱抵抗体から基板への熱の流入を効果的に規制することができる。
この発熱抵抗素子では、蓄熱層において、空洞部の近傍が、他の部分よりも比重が大きい(すなわち密度が高い)ので、空洞部近傍においても蓄熱層の強度が十分に確保されている。
この発熱抵抗素子では、空洞部近傍においても蓄熱層の強度が十分に確保されているので、蓄熱層に空洞部が設けられた構成としながら、蓄熱層全体としての強度を確保することができる。
このように、蓄熱層において発熱抵抗体に対向する部位の、発熱抵抗体側の表面が、他の領域よりも盛り上がっていることで、蓄熱層からの発熱抵抗体の突出量がより大きくなる。このため、このような発熱抵抗素子をサーマルヘッドとして用いた場合には、印刷時に印刷対象に対する発熱抵抗体の押し圧力が高まるので、印刷効率が向上する。
このように、空洞部をレーザー加工によって形成することで、上記のように、発熱抵抗素子を、蓄熱層の表面に損傷を与えずに、蓄熱層において空洞部の近傍の密度や硬度が向上した構成とすることができる。
この場合には、蓄熱層において、蓄熱層を支持する基板から離間するにつれて蓄熱層の密度が高められているので、蓄熱層を空洞部が形成された構成としつつ、強度を確保することができる。
蓄熱層に形成される空洞部の大きさは、蓄熱層のレーザー加工に用いるフェムト秒レーザーの出力が大きいほど大きくなり、出力が小さいほど小さくなる。
このため、上記のように蓄熱層のレーザー加工に用いるフェムト秒レーザーの出力を、蓄熱層の発熱抵抗体が形成される面に近い部位ほど小さくすることで、発熱抵抗体が形成される面に近づくにつれて、蓄熱層に形成される空洞部の大きさが低減される。
これにより、蓄熱層において、蓄熱層を支持する基板から離間するにつれて蓄熱層の密度が高められるので、蓄熱層を空洞部が形成された構成としつつ、強度を確保することができる。
この場合には、蓄熱層において発熱抵抗体が形成される領域に対向する部位と基板との間には、接着層の凹部または開口部が位置している。すなわち、蓄熱層においてレーザー加工が行われる領域の基板側には、接着層の凹部または開口部が位置している。
このため、レーザー加工によってガラス製の蓄熱層に空洞部を形成する際に、レーザー加工部位の周囲のガラスが接着層の凹部内または開口部内に逃げることができるので、空洞部の形成が確実に行われることとなり、歩留まりが向上する。
このサーマルヘッドによれば、発熱効率が高く製造コストの低い発熱抵抗素子を用いているので、低消費電力を実現しながら低コストである。
また、発熱抵抗素子の蓄熱層に対して、所定量以上の高出力のフェムト秒レーザーを用いてレーザー加工を行うと、蓄熱層に空洞部が形成されるとともに、この空洞部の周囲にあるガラスが押しのけられる。このため、蓄熱層において、空洞部が形成される領域(すなわち発熱抵抗体に対向する部位)の発熱抵抗体側の表面が、他の領域よりも盛り上がる。これにより、蓄熱層からの発熱抵抗体の突出量がより大きくなる。このように発熱抵抗体の突出量が増大した発熱抵抗素子を用いたサーマルヘッドでは、印刷時に印刷対象に対する発熱抵抗体の押し圧力が高まるので、印刷効率が向上する。
このプリンタによれば、発熱効率が高く製造コストの低いサーマルヘッドを用いているので、低消費電力を実現しながら低コストである。
この発熱抵抗素子の製造方法では、空洞部は、蓄熱層に対してフェムト秒レーザーを用いたレーザー加工を施すことによって形成されるので、従来の空隙を有する発熱抵抗素子に比べて製造工程が単純となり、製造コストが低くて済む。
この場合には、蓄熱層において、蓄熱層を支持する基板から離間するにつれて蓄熱層の密度が高められているので、蓄熱層を空洞部が形成された構成としつつ、強度を確保することができる。
蓄熱層に形成される空洞部の大きさは、蓄熱層のレーザー加工に用いるフェムト秒レーザーの出力が大きいほど大きくなり、出力が小さいほど小さくなる。
このため、上記のように蓄熱層のレーザー加工に用いるフェムト秒レーザーの出力を、蓄熱層の発熱抵抗体が形成される面に近い部位ほど小さくすることで、発熱抵抗体が形成される面に近づくにつれて、蓄熱層に形成される空洞部の大きさが低減される。
これにより、蓄熱層において、蓄熱層を支持する基板から離間するにつれて蓄熱層の密度が高められるので、蓄熱層を空洞部が形成された構成としつつ、強度を確保することができる。
この発熱抵抗素子の製造方法では、空洞部は、蓄熱層に対してレーザー加工を施すことによって形成されるので、従来の空隙を有する発熱抵抗素子に比べて製造工程が単純となり、製造コストが低くて済む。
この場合には、空洞部近傍においても蓄熱層の強度を十分に確保することができるので、蓄熱層に空洞部が設けられた構成としながら、蓄熱層全体としての強度が確保された発熱抵抗素子を製造することができる。
この場合には、空洞部近傍においても蓄熱層の強度が十分に確保されるので、蓄熱層に空洞部が設けられた構成としながら、蓄熱層全体としての強度が確保された発熱抵抗素子を製造することができる。
このように、蓄熱層において発熱抵抗体に対向する部位の、発熱抵抗体側の表面を、他の領域よりも盛り上げることで、蓄熱層からの発熱抵抗体の突出量がより大きくなる。このため、サーマルヘッドとして用いた場合に、印刷時に印刷対象に対する発熱抵抗体の押し圧力が高く、印刷効率が向上した発熱抵抗素子を製造することができる。
このように、空洞部をレーザー加工によって形成することで、上記のように、蓄熱層の表面に損傷を与えずに、蓄熱層において空洞部の近傍の密度や硬度が向上した発熱抵抗素子を製造することができる。
この場合には、蓄熱層において発熱抵抗体が形成される領域に対向する部位と基板との間には、接着層の凹部または開口部が位置している。すなわち、蓄熱層においてレーザー加工が行われる領域の基板側には、接着層の凹部または開口部が位置している。
このため、レーザー加工によってガラス製の蓄熱層に空洞部を形成する際に、レーザー加工部位の周囲のガラスが接着層の凹部内または開口部内に逃げることができるので、空洞部の形成が確実に行われることとなり、歩留まりが向上する。
この場合には、蓄熱層の表面から離間した位置に設けられる反射層を加工位置の目印として蓄熱層に対してフェムト秒レーザーによるレーザー加工を行って、空洞部を形成するので、蓄熱層の表面が平坦でない場合にも、蓄熱層の表面に沿って空洞部を形成することができる。
このように蓄熱層の各部において表面から空洞部までの距離が一定となった発熱抵抗素子では、蓄熱層の各部における強度や断熱性能が一定に保たれるので、品質が安定する。
また、本発明に係る発熱抵抗素子の製造方法によれば、低消費電力の発熱抵抗素子を低コストで製造することができる。
[第一実施形態]
本実施形態では、本発明を、サーマルプリンタに適用した例を示す。
図1に示すように、本実施形態に係るサーマルプリンタ1は、本体フレーム2と、水平配置されるプラテンローラ3と、プラテンローラ3の外周面に対向配置されるサーマルヘッド4(発熱抵抗素子)と、プラテンローラ3とサーマルヘッド4との間に感熱紙5を送り出す紙送り機構6と、サーマルヘッド4を感熱紙5に対して所定の押圧力で押し付ける加圧機構7とを備えている。
本実施形態では、発熱抵抗体13は、サーマルヘッド4においてプラテンローラ3の長手方向に沿って複数配列されている。
ここで、後述するように、蓄熱層12がガラスによって構成されているので、基板11として蓄熱層12の材質に性質の近いシリコン基板を用いた場合には、サーマルヘッド4が熱膨張した際に生じる歪みが少なくて済む。
また、アルミナセラミクス基板は、サーマルヘッドの基板として一般的に用いられるものであって、ガラスやシリコン基板よりもヤング率が大きく、機械的強度が高いので、後述するように発熱抵抗体13となる各種の薄膜を形成した際に、膜応力による歪みが生じにくい。
発熱抵抗体13は、蓄熱層12上に所定パターンで形成される発熱抵抗体層21と、蓄熱層12上に発熱抵抗体層21と接して設けられる個別電極22及び共通電極23とを有している。
空洞部26の設置領域の大きさを発熱抵抗体13の発熱有効面積よりも大きくした場合には、発熱抵抗体13と基板11との間の断熱性能が大きくなる。一方、空洞部26の設置領域の大きさを発熱抵抗体13の発熱有効面積よりも小さくした場合には、シリコン基板11の機械的強度を向上することができる。
また、本実施形態では、図4に示すように、空洞部26は、隣接する空洞部26との間隔が極力少なくなるように千鳥状に配置されており、これによって、蓄熱層12は、発熱抵抗体13の発熱有効面積全体に対して、ほぼ均一な断熱性能を有している。
まず、基板11(シリコンウェハ)の一面に、CVD等の積層法によって蓄熱層12を形成する。
このようにして形成された蓄熱層12に対して、フェムト秒レーザーを用いたレーザー加工によって空洞部26を形成する。
ここで、フェムト秒レーザーとしては、出力が1×108Wから1×1010W、パルス長が1×10−14secから1×10−12secの超高強度の超極短パルスレーザーが用いられる。
また、このレーザー加工は、例えば焦点位置を予め設定した領域に自動的に移動させて、複数箇所の加工を連続的に行う構成のレーザー加工装置を用いることで、自動化することができる。
これら発熱抵抗体層21、個別電極22、共通電極23、保護膜層14は、従来のサーマルヘッドにおけるこれら部材の製造方法を用いて作成することができる。
同様に、蓄熱層12上にAl、Al−Si、Au、Ag、Cu、Pt等の配線材料をスパッタリングや蒸着法等により成膜してこの膜をリフトオフ法もしくはエッチング法を用いて成形したり、配線材料をスクリーン印刷した後に焼成するなどして、所望の形状の個別電極22及び共通電極23を形成する。
本実施の形態では、一つの発熱抵抗体13に対して二つの独立した個別電極22を設け、共通電極23を一方の個別電極22上にかぶせて設けることで、共通電極23の配線抵抗値の低減を図っている。
これにより、図1に示されるサーマルヘッド4が製造される。
ここで、蓄熱層12において発熱抵抗体13が形成される面から空洞部26までの距離が1μmよりも小さいと、空洞部26と発熱抵抗体13との間の領域における蓄熱層12の厚みが小さすぎて、強度を確保することが困難となる。また、蓄熱層12において発熱抵抗体13が形成される面から空洞部26までの距離が30μmよりも大きいと、発熱抵抗体13から蓄熱層12に伝達された熱が空洞部26の周囲を伝わって基板11に伝達されてしまうので、発熱抵抗体13と基板11との間の断熱性能が低下する。
このため、蓄熱層12の発熱抵抗体13が形成される面から空洞部26までの距離は、1μm以上30μm以下に設定することが好ましく、1μm以上10μm以下に設定することがより好ましい。
このため、このサーマルヘッド4は、従来の空隙を有する発熱抵抗素子を用いたサーマルヘッドに比べて製造工程が単純となり、製造コストが低くて済む。
また、蓄熱層12において複数の空洞部26間に残された部分は、蓄熱層12において空洞部26の上下部分を支持する支柱として機能するので、空洞部26近傍においても蓄熱層12の強度が十分に確保されている。
また、フェムト秒レーザーによるレーザー加工は、ワークがガラス等のレーザー光に対して透明な材質である場合には、ワーク内部にレーザー光を集光させることで、ワークの表面に損傷を与えることなく、ワーク内部を加工することができる。
また、フェムト秒レーザーによってガラスを加工した場合、加工部位が蒸発して、加工部位に空洞が形成される。このとき、加工部位を構成していたガラスは、加工部位の周辺に押しやられることになるので、ワークにおいて加工部位の周辺部分の材料密度が高まる。
すなわち、本実施形態に示すサーマルヘッド4では、ガラス製の蓄熱層12には、その表面に損傷を与えずに空洞部26が形成されており、さらに蓄熱層12において空洞部26の周囲の密度が高くなっているので、空洞部26近傍においても蓄熱層12の強度が十分に確保されている。
このため、本実施形態に示すサーマルヘッド4では、蓄熱層12における空洞部26の形状及び位置を高精度に制御することができるので、空洞部26を発熱抵抗体13に対向する位置に正確にかつ所望の形状に正確に形成することができ、発熱抵抗体13から基板11への熱の流入を効果的に規制することができる。
また、このように発熱抵抗体13が発生させた熱が基板11に伝わりにくいので、連続して印刷出力を行ってもサーマルヘッド4全体の温度が上昇しにくい。このため、本実施形態に係るサーマルプリンタ1は、高品位な連続印刷が可能である。
このため、このサーマルヘッド4を用いるサーマルプリンタ1は、低消費電力を実現しながら低コストである。
ここで、本実施形態では、空洞部26を球状とした例を示したが、これに限られることなく、図5に示すように、空洞部26を、蓄熱層12の厚み方向の寸法が蓄熱層12の表面に沿った方向の寸法よりも大きくしてもよい。
この場合には、空洞部26をより密に配置することができ、蓄熱層12において空洞部26間に残される部位の、蓄熱層12の表面に沿った断面積が小さくなるので、この部分を通じた熱伝導が少なくなり、発熱抵抗体から基板への熱の流入を効果的に規制することができる。
また、空洞部26の、蓄熱層12の表面に沿った方向の断面形状は任意であって、例えば空洞部26の断面を略六角形として、平面視においてハニカム形状となるように配置することで、空洞部26をより密に配置することができる。
以下、本発明の第二実施形態について、図7を用いて説明する。
本実施形態に示すサーマルプリンタは、第一実施形態に示したサーマルプリンタ1において、サーマルヘッド4の代わりに、サーマルヘッド31を用いたものである。
以下、第一実施形態で示すサーマルヘッド4と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
蓄熱層32は、蓄熱層12において、発熱抵抗体13が形成される表面から離間した位置に、この表面に沿った反射層33を設けたものである。
ここで、反射層33は、金属層や有機層、有色ガラス層等によって構成することができる。
反射層33は、例えば、積層済みのガラス層32a上に、積層法によって形成されていてもよく、積層済みのガラス層32a上に反射材料を貼りつけることによって形成されていてもよい。また、反射層33は、積層済みのガラス層32aの表面に着色を施して、この着色部分によって構成してもよい。
このため、この反射層33を加工位置の目印として、フェムト秒レーザーによるレーザー加工によって、蓄熱層32の表面に沿って空洞部26を形成することができる。
このため、このサーマルヘッド31では、基板11がセラミックス製である場合など、基板11上に形成される蓄熱層32の表面を完全な平坦面とすることが困難な場合にも、蓄熱層32の各部において表面から空洞部26までの距離を一定とすることができる。
このように蓄熱層32の各部において表面から空洞部26までの距離を一定とすることで、蓄熱層32の各部における強度や断熱性能を一定に保つことができ、品質が安定する。
以下、本発明の第三実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態に示すサーマルプリンタは、第一実施形態に示したサーマルプリンタ1において、サーマルヘッド4の代わりに、サーマルヘッド51を用いたものである。
以下、第一実施形態で示すサーマルヘッド4と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
蓄熱層52は、蓄熱層12において、空洞部26を、蓄熱層12の厚み方向にも分布させたものである。具体的には、蓄熱層52では、発熱抵抗体13が形成される面に近くなるにつれて空洞部26の密度が低減されている。図8では、蓄熱層52の面に沿って配列された空洞部26の組を、それぞれ密度を変えて、蓄熱層52の厚み方向に沿って三組設けた例を示している。
このような蓄熱層52は、空洞部26をレーザー加工によって形成する際に、蓄熱層52におけるレーザー加工部位を、蓄熱層52の厚み方向にも移動させるとともに、蓄熱層52において発熱抵抗体が形成される面に近づくほど、蓄熱層52の面に沿った方向におけるレーザー加工部位の間隔を大きく確保することで形成される。
このため、このサーマルヘッド51を用いるサーマルプリンタは、耐久性に優れている。
以下、本発明の第四実施形態について、図9を用いて説明する。
本実施形態に示すサーマルプリンタは、第一実施形態に示したサーマルプリンタ1において、サーマルヘッド4の代わりに、サーマルヘッド61を用いたものである。
以下、第一実施形態で示すサーマルヘッド4と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
蓄熱層62は、蓄熱層12において、空洞部26を、蓄熱層12の厚み方向にも分布させたものである。具体的には、蓄熱層62では、発熱抵抗体13が形成される面に近い部位ほど低い出力のフェムト秒レーザーを用いたレーザー加工によって空洞部26が形成されている。
蓄熱層62に形成される空洞部26の大きさは、蓄熱層62のレーザー加工に用いるフェムト秒レーザーの出力が大きいほど大きくなり、出力が小さいほど小さくなる。
このため、上記のように蓄熱層62のレーザー加工に用いるフェムト秒レーザーの出力を、蓄熱層62の発熱抵抗体13が形成される面に近い部位ほど小さくすることで、発熱抵抗体13が形成される面に近づくにつれて、蓄熱層62に形成される空洞部26の大きさが低減される。
このため、このサーマルヘッド61を用いるサーマルプリンタは、耐久性に優れている。
以下、本発明の第五実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。ここで、図10は、本実施形態に係るサーマルヘッド71の製造過程を示す縦断面図であり、図11は、本実施形態に係るサーマルヘッド71の完成品の構成を示す縦断面図である。
本実施形態に示すサーマルプリンタは、第一実施形態に示したサーマルプリンタ1において、サーマルヘッド4の代わりに、サーマルヘッド71を用いたものである。
以下、第一実施形態で示すサーマルヘッド4と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
接着層73には、蓄熱層72の発熱抵抗体13が形成される領域に対向する部位に凹部または開口部が形成されている。本実施形態では、接着層73には、蓄熱層72の発熱抵抗体13が形成される領域に対向する部位に、基板11まで通じる開口部74が形成されている。
さらに、蓄熱層72には、図10に示すように基板11との貼り合わせ処理を終えた後に、レーザー加工が行われることによって、図11に示すように、空洞部26が形成されている。
このため、レーザー加工によってガラス製の蓄熱層72に空洞部26を形成する際に、レーザー加工部位の周囲のガラス72aが接着層73の開口部74内に逃げることができるので、空洞部26の形成が確実に行われることとなり、歩留まりが向上する。
このため、このサーマルヘッド71を用いるサーマルプリンタは、製造コストを低減することができる。
この場合にも、空洞部26aが、発熱抵抗体13から基板11への熱の流入を規制する断熱層として機能する。また、蓄熱層12(または蓄熱層32)において蛇行する空洞部26a間に残された部分(空洞部26aに挟まれた領域)は、蓄熱層12(または蓄熱層32)において空洞部26aの上下部分を支持する支柱として機能するので、空洞部26a近傍においても蓄熱層12(または蓄熱層32)の強度が十分に確保される。
なお、この場合の蛇行には、縦横に整然と幾何学的に屈曲する形態も含まれるものとする。
また、本発明は、直接感熱型と言われる感熱紙を用いるものや、溶融型や昇華型の熱転写リボンを用いたものや、最近では、いったんフィルム状の媒体に印字後、硬質の媒体に再転写するものなど、全ての形式のサーマルプリンタに適用することができる。
4,31,51,61,71,81 サーマルヘッド(発熱抵抗素子)
11 基板
12,32,52,62,72,82 蓄熱層
13 発熱抵抗体
26,26a 空洞部
33 反射層
73 接着層
74 開口部
Claims (23)
- 基板と、
該基板の一面に形成されるガラス製の蓄熱層と、
該蓄熱層上に設けられた発熱抵抗体とを有し、
前記蓄熱層の前記発熱抵抗体に対向する領域には、前記発熱抵抗体が形成される面から離間した位置に、フェムト秒レーザーを用いたレーザー加工によって複数の空洞部、もしくは蛇行した線状の空洞部が形成されている発熱抵抗素子。 - 前記蓄熱層の前記発熱抵抗体が形成される面から前記空洞部までの距離が、1μm以上30μm以下に設定されている請求項1記載の発熱抵抗素子。
- 前記蓄熱層には、前記発熱抵抗体が形成される表面から離間した位置に、該表面に沿った反射層が設けられている請求項1または2に記載の発熱抵抗素子。
- 前記空洞部は、前記蓄熱層の厚み方向の寸法が前記蓄熱層の表面に沿った方向の寸法よりも大きい請求項1から3のいずれかに記載の発熱抵抗素子。
- 基板と、
該基板上に設けられた蓄熱層と、
該蓄熱層上に設けられた発熱抵抗体とを有し、
前記蓄熱層の前記発熱抵抗体に対向する領域に空洞部を有し、
前記蓄熱層の前記空洞部の近傍は前記蓄熱層の他の部分より比重が大きく設定されている発熱抵抗素子。 - 前記蓄熱層の前記空洞部の近傍は前記蓄熱層の他の部分より硬くされている請求項5に記載の発熱抵抗素子。
- 前記蓄熱層の表面の前記空洞部に対向する部分が凸状に形成されている請求項5または6に記載の発熱抵抗素子。
- 前記空洞部はレーザー加工によって形成されている請求項5から請求項7のいずれかに記載の発熱抵抗素子。
- 前記空洞部はフェムト秒レーザーを用いたレーザー加工によって形成されている請求項5から請求項7のいずれかに記載の発熱抵抗素子。
- 前記蓄熱層は、前記発熱抵抗体が形成される面に近くなるにつれて前記空洞部の密度が低減されている請求項1から9のいずれかに記載の発熱抵抗素子。
- 前記蓄熱層には、前記発熱抵抗体が形成される面に近い部位ほど低い出力の前記フェムト秒レーザーを用いた前記レーザー加工によって前記空洞部が形成されている請求項1から5、または請求項9のいずれかに記載の発熱抵抗素子。
- 前記基板と前記蓄熱層とは、互いの間に設けられた接着層によって貼り合わせられており、
前記接着層には、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体が形成される領域に対向する部位に凹部または開口部が形成されており、
前記蓄熱層には、前記基板との貼り合わせ処理後に前記レーザー加工が行われることによって前記空洞部が形成されている請求項11に記載の発熱抵抗素子。 - 請求項1から12のいずれかに記載の発熱抵抗素子を備えたサーマルヘッド。
- 請求項13記載のサーマルヘッドを用いたプリンタ。
- 基板と、該基板上に形成されるガラス製の蓄熱層と、該蓄熱層上に設けられた発熱抵抗体とを有する発熱抵抗素子の製造方法であって、
フェムト秒レーザーによるレーザー加工によって、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体に対向する領域に空洞部を形成する発熱抵抗素子の製造方法。 - 前記蓄熱層には、前記発熱抵抗体が形成される面に近くなるにつれて前記空洞部の密度が低くなるように前記空洞部を形成する請求項15に記載の発熱抵抗素子の製造方法。
- 前記レーザー加工時には、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体が形成される面に近い部位ほど低い出力の前記フェムト秒レーザーを用いて前記空洞部を形成する請求項15または16に記載の発熱抵抗素子の製造方法。
- 基板と、該基板上に形成される蓄熱層と、該蓄熱層上に設けられた発熱抵抗体とを有する発熱抵抗素子の製造方法であって、
レーザー加工によって、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体に対向する領域に空洞部を形成する発熱抵抗素子の製造方法。 - 前記レーザー加工によって、前記蓄熱層の前記空洞部の近傍を前記蓄熱層の他の部分より比重を大きく加工する請求項18に記載の発熱抵抗素子の製造方法。
- 前記レーザー加工によって、前記蓄熱層の前記空洞部の近傍を前記蓄熱層の他の部分より硬く加工する請求項18に記載の発熱抵抗素子の製造方法。
- 前記レーザー加工によって、前記蓄熱層の表面の前記空洞部に対向する部分を凸状に形成する請求項18から20のいずれかに記載の発熱抵抗素子の製造方法。
- 前記基板と前記蓄熱層とを、互いの間に設けられた接着層によって貼り合わせるとともに、
前記接着層を、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体が形成される領域に対向する部位に凹部または開口部が形成された構成とし、
前記基板と前記蓄熱層との貼り合わせ処理後に前記レーザー加工によって前記蓄熱層に前記空洞部を形成する請求項15から21のいずれかに記載の発熱抵抗素子。 - 前記蓄熱層を、前記発熱抵抗体が形成される表面から離間した位置に、該表面に沿った反射層が設けられた構成とし、
該反射層を加工位置の目印として、フェムト秒レーザーによるレーザー加工によって、前記蓄熱層の前記発熱抵抗体に対向する領域に空洞部を形成する請求項15から22のいずれかに記載の発熱抵抗素子の製造方法。
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