JP5311337B2 - サーマルヘッド、サーマルプリンタ及びサーマルヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
発熱効率の高いサーマルヘッドとしては、例えば、特許文献1に開示された構造を有するものが知られている。
また、基板として熱膨張係数が3.3×10−6/℃の単結晶シリコン基板を用い、蓄熱層として高価で加工性は悪いが、熱膨張係数が3.2×10−6/℃のパイレックスガラスを用いた場合には、サーマルヘッドに反りや歪みは発生しなくなるが、製造コストが高騰し、製造工程が煩雑化してしまうといった問題点があった。
本発明に係るサーマルヘッドは、支持基板の表面に弾性材料からなる接着層を介して積層された蓄熱層の上に、複数の発熱抵抗体が間隔をあけて配列され、前記支持基板と前記蓄熱層との間の前記発熱抵抗体の発熱部に対向する領域に空洞部が形成され、前記接着層が、前記支持基板の表面に積層された第1の接着層と、前記蓄熱層の表面の積層された第2の接着層とにより構成され、前記蓄熱層の表面全体が前記第2の接着層で覆われて、前記空洞部に対向する前記蓄熱層の表面の少なくとも一部に、前記第2の接着層を構成する弾性材料が接着状態に配置され、前記空洞部に露出する前記支持基板の表面と対向する前記蓄熱層の表面の一部が、前記空洞部に露出している。
また、蓄熱層の表面が樹脂からなる第2の接着層によって覆われ、この第2の接着層によって蓄熱層が補強される(蓄熱層の機械的強度が増加(向上)する)こととなるので、その分、蓄熱層の板厚を(20μm以下に)減少させることができ、蓄熱層に十分な熱が蓄熱されるまでの時間を短縮させることができて、印字開始時に印字濃度が薄くなるといった不具合をなくすことができる。
さらにまた、蓄熱層の板厚が減少させられることにより、印刷開始時に蓄熱層に投入される熱量を減少させることができるので、サーマルヘッド全体に加わる熱負荷を減少させることができ、耐久性および信頼性を向上させることができる。
さらにまた、支持基板の材料として単結晶シリコン基板を採用した場合でも、蓄熱層の材料として安価で加工性の良いソーダガラスを採用することができるので、製造コストの低減化を図ることができて、製造工程の簡略化を図ることができる。
さらにまた、発熱抵抗体の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に、発熱効率を向上させるのに十分な高さ(深さ)を有する空洞部、すなわち、蓄熱層から支持基板への熱の流入を規制する断熱層が形成されることとなるので、発熱効率を向上させることができる。
本発明に係るサーマルプリンタによれば、少ない電力で感熱紙に印刷することができ、バッテリーの持続時間を長期化させることができるとともに、プリンタ全体の信頼性を向上させることができる。
また、蓄熱層の他面が樹脂からなる接着層によって覆われ、この接着層によって補強された(機械的強度が増加(向上)した)蓄熱層がハンドリングされることとなるので、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの低減化を図ることができる。
さらに、基板の材料として単結晶シリコン基板を採用した場合でも、蓄熱層の材料として安価で加工性の良いソーダガラスを採用することができるので、製造コストの低減化を図ることができて、製造工程の簡略化を図ることができる。
図1は本発明に係るサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタの縦断面図、図2は本実施形態に係るサーマルヘッドの平面図であり、保護膜を取り除いた状態を示す図、図3は図2のα−α矢視断面図、図4〜図11は本実施形態に係るサーマルヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
なお、基板11の他面(図3において下側の面)上には、図示しない放熱板が設けられている。
なお、発熱抵抗体14が実際に発熱する部分(以下、「発熱部」という。)は、個別電極17および共通電極18と重ならない部分である。
空洞部19は、発熱抵抗体14の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に形成された空間、すなわち、凹部(第1の凹部)20を形成する壁面(基板11の一面および蓄熱層13の他面と直交する面)20aおよび底面(基板11の一面および蓄熱層13の他面に平行な面)20bと、凹部(第2の凹部)21を形成する壁面(基板11の一面および蓄熱層13の他面と直交する面)21aおよび底面(基板11の一面および蓄熱層13の他面に平行な面)21bとで形成された(密閉された)空間である。そして、この空洞部19内の空間層は、発熱抵抗体14から基板11への熱の流入を規制する断熱層として機能する。
なお、空洞部19の平面視における寸法は任意であって、発熱部の寸法に近ければ、本実施形態のように発熱部よりも大きくてもよく、また、発熱部よりも小さくてもよい。
また、空洞部19は、凹部20と凹部21とを合わせて接着することで形成される。
接着層12の材料としては、サーマルヘッド4の動作時に、200℃から300℃程度まで上昇する発熱抵抗体14の温度に耐え得る高耐熱性材料、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂材料が用いられる。
まず、図4に示すように、一定(2μm〜100μm程度)の厚さを有する蓄熱層13の他面上全体に、一定(10μm〜100μm程度)の厚さを有するペースト状、液状、フィルム状、またはシート状の接着層12bを積層(形成)する。
そして、図5に示すように、発熱抵抗体14の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に空洞部(中空断熱層)19が形成されるように、接着層12bの他面に、空洞部19を形成する凹部21を加工する。なお、発熱抵抗体14の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に位置する接着層12b(すなわち、凹部21が形成されている領域の接着層12b)は、一定の厚さ(2μm〜40μm程度)を有している。
そして、図7に示すように、発熱抵抗体14の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に空洞部(中空断熱層)19が形成されるように、接着層12aの一面に、空洞部19を形成する凹部20加工する。なお、発熱抵抗体14の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に位置する接着層12a(すなわち、凹部20が形成されている領域の接着層12a)は、一定の厚さ(2μm〜40μm程度)を有している。
これら発熱抵抗体層16、個別電極17、共通電極18、保護膜15は、従来のサーマルヘッドにおけるこれら部材の製造方法を用いて作製することができる。具体的には、スパッタリングやCVD(化学気相成長法)、蒸着等の薄膜形成法を用いて絶縁皮膜上にTa系やシリサイド系等の発熱抵抗体材料の薄膜を成膜し、この発熱抵抗体材料の薄膜をリフトオフ法やエッチング法等を用いて成形することにより所望の形状の発熱抵抗体を形成する。
このようにして発熱抵抗体層16、個別電極17、および共通電極18を形成した後、蓄熱層13の上にSiO2、Ta2O5、SiAlON、Si3N4、ダイヤモンドライクカーボン等の保護膜材料をスパッタリング、イオンプレーティング、CVD法等により成膜して、保護膜15を形成する。
また、蓄熱層13の他面全体が樹脂からなる接着層12bによって覆われ、この接着層12bによって蓄熱層13が補強される(蓄熱層13の機械的強度が増加(向上)する)こととなるので、その分、蓄熱層13の板厚を(20μm以下に)減少させることができ、蓄熱層13に十分な熱が蓄熱されるまでの時間を短縮させることができて、印字開始時に印字濃度が薄くなるといった不具合をなくすことができる。
なお、接着層12bの材料として、耐熱性に加えて高強度を有する樹脂(例えば、弾性率1〜2GPaを有するエポキシ樹脂、弾性率4GPaを有するポリイミド樹脂、弾性率26GPaを有するガラス繊維強化樹脂(GFRP)、弾性率26GPaを有する炭素繊維強化樹脂(CFRP)が用いられていると、蓄熱層13の機械的強度をさらに増加(向上)させることができて、さらに好適である。
さらにまた、サーマルヘッド4の動作時に、200℃から300℃程度まで上昇する発熱抵抗体14の温度によって基板11と蓄熱層13との間に発生する熱膨張差が、弾性材料からなる接着層12の弾性変形により吸収され、動作時におけるサーマルヘッド4の反りや歪みがなくなる(あるいは低減することとなる)ので、印字品質を常に最適な状態に維持することができる。
さらにまた、発熱抵抗体14の発熱部によって覆われる領域(発熱部と対向する領域)の下方に、発熱効率を向上させるのに十分な高さ(深さ)を有する空洞部19、すなわち、蓄熱層13から基板11への熱の流入を規制する断熱層が形成されることとなるので、発熱効率を向上させることができる。
また、蓄熱層13の他面全体が樹脂からなる接着層12bによって覆われ、この接着層12bによって補強された(機械的強度が増加(向上)した)蓄熱層13がハンドリングされることとなるので、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの低減化を図ることができる。
さらに、基板11の材料として単結晶シリコン基板を採用した場合でも、蓄熱層13の材料として安価で加工性の良いソーダガラスを採用することができるので、製造コストの低減化を図ることができて、製造工程の簡略化を図ることができる。
また、蓄熱層13の他面上全体にフィルム状またはシート状の接着層12bを積層するには、例えば、プレス、貼り合わせ機、ラミネート等による方法を採用することができる。
図12に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッド31は、接着層12の代わりに接着層32を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。
その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、蓄熱層13の他面上にパターニングされた接着層(第2の接着層)33を積層した後、接着層12aの一面上に、接着層33の他面(蓄熱層13と対向する面と反対側の面)が接するように、図13で得た接着層33および蓄熱層13を、図7で得た接着層12aおよび基板11の上に重ねて置き、所定の温度と荷重を一定の時間均等に加えて、基板11と蓄熱層13とを接合(接着)する。
その他の作用効果は、上述した実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッド41は、接着層12,32の代わりに接着層42を備えているという点で上述した実施形態のものと異なる。
その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、蓄熱層13の他面上にパターニングされた接着層(第2の接着層)43を積層した後、接着層12aの一面上に、接着層43の他面(蓄熱層13と対向する面と反対側の面)が接するように、接着層43および蓄熱層13を、図7で得た接着層12aおよび基板11の上に重ねて置き、所定の温度と荷重を一定の時間均等に加えて、基板11と蓄熱層13とを接合(接着)する。
なお、ガラスの熱伝導率は0.9W/mK、空気の熱伝導率は0.02W/mK、エポキシ樹脂の熱伝導率は0.21W/mKである。
その他の作用効果は、上述した実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
図16に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッド51は、接着層12,32,42の代わりに接着層52を備えているという点で上述した実施形態のものと異なる。
その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、基板11の一面上にパターニングされた接着層(第1の接着層)53を積層した後、接着層53の一面上に、接着層12bの他面(蓄熱層13と対向する面と反対側の面)が接するように、図5で得た接着層12bおよび蓄熱層13を、図17で得た接着層53および基板11の上に重ねて置き、所定の温度と荷重を一定の時間均等に加えて、基板11と蓄熱層13とを接合(接着)する。
その他の作用効果は、上述した実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
図18に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッド61は、接着層12,32,42,52の代わりに接着層62を備えているという点で上述した実施形態のものと異なる。
その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、蓄熱層13の他面上にパターニングされた接着層33を積層した後、接着層12aの一面上に、接着層33の他面(蓄熱層13と対向する面と反対側の面)が接するように、図13で得た接着層33および蓄熱層13を、図17で得た接着層53および基板11の上に重ねて置き、所定の温度と荷重を一定の時間均等に加えて、基板11と蓄熱層13とを接合(接着)する。
その他の作用効果は、上述した実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
図19に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッド71は、接着層12,32、42,52,62の代わりに接着層72を備えているという点で上述した実施形態のものと異なる。
その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、蓄熱層13の他面上にパターニングされた接着層43を積層した後、接着層53の一面上に、接着層43の他面(蓄熱層13と対向する面と反対側の面)が接するように、接着層43および蓄熱層13を、図17で得た接着層53および基板11の上に重ねて置き、所定の温度と荷重を一定の時間均等に加えて、基板11と蓄熱層13とを接合(接着)する。
なお、ガラスの熱伝導率は0.9W/mK、空気の熱伝導率は0.02W/mK、エポキシ樹脂の熱伝導率は0.21W/mKである。
その他の作用効果は、上述した実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
例えば、上述した実施形態では、空洞部19,34,54,64が、発熱抵抗体14と同じ数だけ形成されたものを説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら空洞部19,34,54,64は、発熱抵抗体14の配列方向に沿って、発熱抵抗体14を跨ぐように形成されたもの、すなわち、一つの空洞部であってもよい。
このような空洞部が形成されたサーマルヘッドによれば、隣接して配置された空洞部同士が互いに連通状態とされ、発熱抵抗体14で発生した熱(熱量)の、基板11内への流出経路の一部が遮断されることとなるので、発熱抵抗体14で発生した熱(熱量)が、基板11内へ流出してしまうことをさらに抑制することができ、発熱抵抗体14の発熱効率をさらに向上させることができて、消費電力の低減化をさらに図ることができる。
例えば、発熱抵抗素子部品としては、熱によってインクを吐出するサーマル式またはバルブ式のインクジェットヘッドを始めとした用途に応用できる。また、サーマルヘッドと略同様の構造である熱消去ヘッドや、熱定着を必要とするプリンタ等の定着ヒータ、光導波路型光部品の薄膜発熱抵抗素子等、他の膜状の発熱抵抗素子部品を保有する電子部品でも同様の効果を得ることができる。
4 サーマルヘッド
11 基板(支持基板)
12 接着層
12a 接着層(第1の接着層)
12b 接着層(第2の接着層)
13 蓄熱層
14 発熱抵抗体
19 空洞部
31 サーマルヘッド
32 接着層
33 接着層(第2の接着層)
34 空洞部
41 サーマルヘッド
42 接着層
43 接着層(第2の接着層)
51 サーマルヘッド
52 接着層
53 接着層(第1の接着層)
54 空洞部
61 サーマルヘッド
62 接着層
64 空洞部
71 サーマルヘッド
72 接着層
Claims (5)
- 支持基板の表面に弾性材料からなる接着層を介して積層された蓄熱層の上に、複数の発熱抵抗体が間隔をあけて配列され、
前記支持基板と前記蓄熱層との間の前記発熱抵抗体の発熱部に対向する領域に空洞部が形成され、
前記接着層が、前記支持基板の表面に積層された第1の接着層と、前記蓄熱層の表面の積層された第2の接着層とにより構成され、
前記蓄熱層の表面が前記第2の接着層で覆われて、前記空洞部に対向する前記蓄熱層の表面の少なくとも一部に、前記第2の接着層を構成する弾性材料が接着状態に配置され、前記空洞部に露出する前記支持基板の表面と対向する前記蓄熱層の表面の一部が、前記空洞部に露出しているサーマルヘッド。 - 請求項1に記載のサーマルヘッドを備えるサーマルプリンタ。
- 支持基板の表面に弾性材料からなる接着層を介して積層された蓄熱層の上に、複数の発熱抵抗体が間隔をあけて配列され、
前記支持基板と前記蓄熱層との間の前記発熱抵抗体の発熱部に対向する領域に空洞部が形成されたサーマルヘッドの製造方法であって、
前記支持基板の表面全体に弾性材料からなる第1の接着層を積層する段階と、
該第1の接着層の表面に、第1の凹部を形成する段階と、
前記蓄熱層の表面全体に弾性材料からなる第2の接着層を積層する段階と、
該第2の接着層の表面に、第2の凹部を形成する段階と、
これら第1の接着層および第2の接着層に形成された前記第1の凹部と前記第2の凹部とを合わせて両接着層どうしを相互に接着させる段階とを含むサーマルヘッドの製造方法。 - 前記第1の凹部内に、前記支持基板の一部を露出させる段階を含む請求項3に記載のサーマルヘッドの製造方法。
- 前記第2の凹部内に、前記蓄熱層の一部を露出させる段階を含む請求項3に記載のサーマルヘッドの製造方法。
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