図1(a)は本発明に係る記録ヘッドの実施形態の一例であるサーマルヘッドXの概略構成を示す平面図であり、(b)はサーマルヘッドXの側面図である。
図2(a)は図1に示したサーマルヘッドXの要部を拡大した図であり、(b)は(a)に示したIIb−IIb線に沿った断面図である。なお、図2(a)では、駆動IC、配線部材、放熱体、保護層を、(b)では放熱体を、便宜上省略した。
サーマルヘッドXは、ヘッド基体10と、駆動IC20と、配線部材30と、放熱体40とを含んで構成されている。
ヘッド基体10は、ヘッド基板11と、グレーズ層12と、電気抵抗層13と、電極配線14と、保護層15とを含んで構成されている。
ヘッド基板11は、グレーズ層12と、電気抵抗層13と、電極配線14と、保護層15と、駆動IC20とを支持する機能を有するものである。このヘッド基板11は、矢印D6方向視において矢印方向D1−D2に延びる矩形状に構成されており、主面が長方形状とされている。ヘッド基板11を形成する材料としては絶縁材料が挙げられ、例えばアルミナセラミックスなどのセラミックス、ガラス材料等の無機材料が好適に用いられる。
このヘッド基板11の厚み方向D5−D6におけるD5方向側の上面には、電気抵抗層13および電極配線14のフォトリソグラフィーを用いたマスクのパターニング形成が容易になるとともに、平滑性を高められるという理由、製造が容易であるという理由から、グレーズ層12が全体に渡って設けられている。
グレーズ層12は、電気抵抗層13の後述する発熱素子13aにおいて発生する熱の一部を一時的に蓄積する機能を有するものである。すなわち、グレーズ層12は、発熱素子13aの温度を上昇させるのに要する時間を短くして、サーマルヘッドXの熱応答特性を高める役割を担うものである。このグレーズ層12を形成する材料としては、例えばガラスが挙げられる。このグレーズ層12は、基部12aと、突出部12bとを有している。
基部12aは、ヘッド基板11の上面全体に渡って略平坦状に設けられており、その厚みは、20〜250μmとされている。突出部12bは、記録媒体を発熱素子13a上に位置する保護層15に対して良好に押し当てるのに寄与する部位である。この突出部12bは、基部12aより厚み方向D5−D6におけるD5方向に突出している。また、この突出部12bは、主走査方向D1−D2に延びる帯状に構成されている。この突出部12bは、主走査方向D1−D2に直交する副走査方向D3−D4における断面形状が略半楕円状に構成されている。本実施形態では、発熱素子13aの保持された状態での配列方向がサーマルヘッドXの主走査方向となる。なお、グレーズ層12は、ヘッド基板11上面の全面に形成する必要はない。
電気抵抗層13は、グレーズ層12上に形成されている。電気抵抗層13の厚みは、0.01〜0.5μmとされている。本実施形態では、電極配線14から電圧が印加される電気抵抗層13のうち電極配線14が形成されていない部位が発熱素子13aとして機能しており、発熱素子13aは、グレーズ層12の突出部12b上に形成されている。電気抵抗層13を形成する材料としては、例えばTaN系材料、TaSiO系材料、TaSiNO系材料、TiSiO系材料、TiSiCO系材料、またはNbSiO系材料が挙げられる。
発熱素子13aは、電極配線14からの電圧印加により発熱するものである。この発熱素子13aは、電極配線14からの電圧印加による発熱温度が、例えば200〜550℃の範囲となるように構成されている。
また、発熱素子13aは、矢印D1−D2方向に所定間隔をおいて一列に形成されており、発熱素子列を形成している。
電極配線14は、第1電極配線141と、第2電極配線142と、第3電極配線143とを含んで構成されている。
第1電極配線141は、その端部が複数の発熱素子13aの一端側、及び図示しない電源に対して接続されている。この第1電極配線141の一端部は、発熱素子13aの矢印D3方向側に位置している。
第2電極配線142は、各々の一端部が発熱素子13aの他端側に接続され、他端部が駆動IC20に接続されている。この第2電極配線142の一端部は、発熱素子13aの矢印D4方向側に位置している。
第3電極配線143は、第2電極配線142と離間して形成されており、言い換えれば第3電極配線143は、第2電極配線142に近接して設けられている。この第3電極配線143は、複数の駆動IC20と配線部材30との間に設けられている。また、この第3電極配線143は、駆動IC20および配線部材30に接続されている。言い換えれば、第3電極配線143は、駆動IC20と配線部材30とを電気的に接続する機能を有しており、発熱素子13aの駆動に寄与している。ここで、「発熱素子の駆動に寄与する」とは、発熱素子13aの駆動または駆動制御にともなって電流が流れることをいう。この第3電極配線143は、その一端部に駆動IC20が接続され、その他端部に配線部材30が接続されている。
第1電極配線141、第2電極配線142、第3電極配線143を形成する材料としては、例えばアルミニウム、金、銀、銅のいずれか一種の金属、またはこれらの合金が挙げられる。その厚みは、0.7〜1.2μmとされている。
保護層15は、発熱素子13aと、電極配線14とを保護する機能を有するものである。この保護層15は、発熱素子13aと電極配線14の一部とを覆っている。保護層15を形成する材料としては、例えばダイヤモンドライクカーボン系材料、SiC系材料、SiN系材料、SiCN系材料、SiAlON系材料、SiO2系材料、またはTaO系材料が挙げられ、スパッタリング法等により形成される。ここで「ダイヤモンドライクカーボン系材料」とは、sp3混成軌道をとる炭素原子(C原子)の割合が1[原子%]以上100[原子%]未満の範囲であるものをいう。なお、保護層15は、見やすさの観点から、図2(a)では省略している。
駆動IC20は、複数の発熱素子13aへの電力供給を制御する機能を有するものである。この駆動IC20は、その接続端子がハンダからなる導電性接続部材49を介して、第2電極配線142上および第3電極配線143に接続されている。このような構成とすることにより、電極配線14を介して入力される電気信号に応じて発熱素子13aを選択的に発熱させることができる。
図3は、配線部材30の概略構成を表す分解斜視図である。配線部材30は、その接続端子が、ハンダからなる導電性接続部材49を介して、第1電極配線141、第3電極配線143に接続されている。この配線部材30は、外部から伝送される電気信号を駆動IC20および電極配線14に伝達する機能を有している。この電気信号としては、発熱素子13aおよび駆動IC20の供給電力と、発熱素子13aの電力供給状態を選択的に制御するための画像情報などが挙げられる。本実施形態の配線部材30は、配線体31と、外部接続端子32と、支持板33と、接着層34とを含んで構成されている。
配線体31は、第1配線体311と、第2配線体312と、配線部313とを有している。この配線体31としては、例えば可撓性を有するものが採用されている。ここで、可撓性とは、JIS規格K7171に規定される曲げ弾性率が例えば2.5×103〜4.5×103N/mm2であることをいう。
第1配線体311と第2配線体312とは、複数の配線部313を支持し、その電気的絶縁性を確保する機能を有している。この第1配線体311と第2配線体312とは、配線部313を挟持している。この第1配線体311と第2配線体312とを形成する材料としては、例えばポリイミド系樹脂と、エポキシ系樹脂と、アクリル系樹脂とを含む可撓性を有する樹脂材料が挙げられる。本実施形態において配線体31は、ポリイミド系樹脂により形成されており、その熱膨張係数は、約1.1×10−5K−1である。本実施形態における第1配線体311と第2配線体312との厚みとしては、例えば0.5〜2.0mmの範囲が挙げられる。
配線部313を形成する材料としては、金、銀、銅、アルミニウムのいずれか一種の金属またはその合金などが挙げられる。本実施形態において配線部313は、銅により形成されており、その熱膨張係数は、約1.7×10−5K−1である。
外部接続端子32は、外部から電気信号が入力される部位である。この外部接続端子32は、駆動IC20および電極配線14に電気的に接続されている。なお、外部接続端子32は、見やすさの観点から、図3において省略している。
支持板33は、配線体31を支持する機能を有するものである。この支持板33を形成する材料としては、例えばセラミックス、樹脂、セラミックスおよび樹脂の複合材が挙げられる。ここで、セラミックスとしては、例えばアルミナセラミックス、窒化アルミニウムセラミックス、炭化珪素セラミックス、窒化珪素セラミックス、ガラスセラミックス、ムライト質焼結体が挙げられ、樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、およびポリエステル系樹脂などの熱硬化型、紫外線硬化型、または化学反応硬化型のものが挙げられる。本実施形態において支持板33は、ガラス繊維にエポキシ系樹脂を含有させたものにより形成されており、その熱膨張係数は、約1.7×10−5K−1である。
接着層34は、配線体31と、支持板33とを接着する機能を有している。この接着層34の厚みとしては、例えば10〜35μmの範囲が挙げられる。
放熱体40は、発熱部13aを駆動することによって生じた熱を外部に伝達する機能を有するものである。また、本実施形態において放熱体40は、ヘッド基体10および配線部材30の支持母材として機能している。放熱体40を形成する材料としては、例えば銅またはアルミニウムを含む金属材料が挙げられる。ここで「熱伝導性の高い材料」とは、ヘッド基板11を構成する材料よりも高い熱伝導率を有するものを意味する。特に、熱伝導性の観点から金属材料、特にアルミニウムからなる放熱体40が望ましい。
記録ヘッドは、複数の発熱素子13aが一列に配列した発熱素子列を上面に有するヘッド基体10が放熱体40上に配置されており、ヘッド基体10の下面の発熱素子列と対向する部分が、言い換えると、発熱素子列の直下におけるヘッド基体10の面が、図4に示すように、発熱素子13aの配列方向(矢印D1−D2方向)に延びる帯状の熱伝導性の良好な接着剤層16を介して放熱体40の上面に接合され、さらに、ヘッド基体10の下面と、発熱素子13aの直下に位置する部分および凹溝18以外の放熱体40の上面との間は、両面テープ17にて接着されている。なお、支持板33と放熱体40との間も、両面テープ17にて接着されている。接着剤層16としては、例えばエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、およびポリエステル系樹脂などの熱硬化型または化学反応硬化型のものが挙げられる。
そして、本発明では、図4に示すように、接着剤層16のヘッド基体10側には複数の空気溜まり部19が形成されていることが特徴である。空気溜まり部19は、図4(a)に示すように、帯状の接着剤層16の幅方向(矢印D3−D4方向)の中央部に、発熱素子13aの配列方向(矢印D1−D2方向)に所定間隔をおいて形成され、空気溜まり部列を形成している。なお、図4(b)では、ヘッド基体10の上面には、理解を容易にするため、グレーズ層12の突出部12bのみ記載した。
空気溜まり部19は、ヘッド基体10を剥離して接着剤層16を平面視したときに円形状を有しており、その直径は、発熱素子13aからの接着剤層16による熱伝導をあまり阻害しない大きさとされており、空気溜まり部19の直径は直径30〜150μmとされ、グレーズ層12の突出部12bの矢印D3−D4方向における長さの5%以下とされている。
また、空気溜まり部19の間隔についても、発熱素子13aからの接着剤層16による熱伝導をあまり阻害しない間隔とされている。
空気溜まり部19は、接着剤層16のヘッド基体10側に形成されており、ヘッド基体10を剥離した時、空気溜まり部19は接着剤層16の上面に凹部となって現れる。
このような記録ヘッドでは、接着剤層16のヘッド基体側に空気溜まり部19を有するため、例えば、連続印刷する際に放熱体40が高温となった場合でも、空気溜まり部19により放熱体40の変形が吸収され、プラテンローラにより記録媒体を発熱素子13a側に押し当てる力が変動することが抑制され、印画かすれを抑制することができる。そして、図4(a)に示すように、空気溜まり部19が発熱素子13aの配列方向に所定間隔をおいて複数形成されている場合には、放熱体40の変形を空気溜まり部19でさらに吸収することができ、印画かすれをさらに抑制することができる。
また、従来、感熱メディア表面に付着する異物が保護層15表面と接触し、プレスすることになるが、メディアやプラテンローラでその大きさの異物を吸収できない分、サーマルヘッド側の保護層15表面で異物の段差を吸収することになり、吸収できない分は保護層15を介して発熱素子13aや電極配線14に機械的ダメージが発生し易いが、本発明では、発熱素子13aの直下の接着剤層16に空気溜まり部19が形成されているため、接着剤層16が弾力性を有することになり、機械的ストレスに対して耐久性を向上できる。
なお、ヘッド基体10のヘッド基板11は、熱伝導性の観点から薄く(1mm以下)に形成された場合には、ヘッド基板11が変形し易くなるため、本発明を好適に用いることができる。また、ヘッド基板11の長さが100mm以上ある場合、すなわち、発熱素子列が長い場合にも、ヘッド基板11が変形し易くなるため、本発明を好適に用いることができる。さらにヘッド基板11の幅(矢印D3−D4方向の長さ)が10mm以下の場合にも、ヘッド基板11が変形し易くなるため、本発明を好適に用いることができる。
特に、画像用、医療用の記録ヘッドでは、ヘッド基板11が長くなる傾向にあるため、本発明を好適に用いることができる。
図5(a)、(b)は、空気溜まり部列を2列形成したもので、このような記録ヘッドでも、図4の記録ヘッドと同様に、空気溜まり部19により、例えば、連続印刷する際に放熱体40が高温となった場合でも、空気溜まり部19により放熱体40の変形がさらに吸収され、ヘッド基体10の変形を抑制でき、印画かすれを抑制することができる。さらに、グレーズ層12の突出部12bの中央部に形成された発熱素子13aの直下は、空気溜まり部19間に位置することになり、図4よりも発熱素子13aからの放熱性を向上できる。
図5(c)は、細長い空気溜まり部19を複数所定間隔をおいて形成し、(d)は、細長い空気溜まり部19を一本形成したもので、放熱体40の変形をさらに吸収でき、印画かすれを抑制することができる。空気溜まり部19の矢印D3−D4方向の幅は、グレーズ層12の突出部12bの矢印D3−D4方向における長さの5%以下とされている。
<記録ヘッドの製造方法>
次に、本発明の記録ヘッドの製造方法を記録ヘッドの一例である上述のサーマルヘッドXを例に挙げて示す。
まず、素体準備工程を行う。具体的には、複数のヘッド基板領域を有する母基板を準備する。次に、グレーズ層形成工程を行う。具体的には、母基板の上面全面にグレーズ層12を形成する。この形成方法としては、例えば印刷法および焼成法などの周知のものが挙げられる。
次に、各ヘッド基板領域上に形成されたグレーズ層12の上面全面に抵抗体膜を成膜する。この成膜方法としては、例えばスパッタリング技術および蒸着技術を含む従来周知のものが挙げられる。次に、抵抗体膜の上面全面に導電膜を成膜する。この導電膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング技術および蒸着技術を含む従来周知のものが挙げられる。
次に、導電膜を所定パターンにエッチングし、電極配線14を形成するとともに、電極配線14から抵抗体膜の一部を露出させて発熱素子13aとして機能させる。このとき、複数の発熱素子13aからなる素子列を矢印方向D1、D2に沿って配列させる。このエッチング方法としては、例えばフォトレジスト技術およびウェットエッチング技術の組み合わせを含む従来周知のものが挙げられる。
次に、抵抗体膜をエッチングし、電気抵抗層13を形成する。このエッチング方法としては、例えばフォトレジスト技術およびウェットエッチング技術の組み合わせを含む従来周知のものが挙げられる。
次に、保護層15形成工程を行う。具体的には、スパッタリング法により発熱部13aと電極配線14の一部とを覆うように保護層15を形成する。
次に、母基板分割工程を行う。具体的には、母基板をヘッド基板領域ごとに分割し、複数のヘッド基板11を得る。
次に、配線部材を準備する。具体的には、まず、第1配線体311と、第2配線体312と、配線部313とを含んで構成される配線体31を準備する。次に、支持板33の上面に接着剤34を塗布し、配線体31を支持板33に接合する。
次に、配線部材接着工程を行う。具体的には、まず、ヘッド基体10の第1電極配線141上、第3電極配線143上に導電性接続部材49となるハンダペーストを塗布する。次に、第1電極配線141、第3電極配線143と配線部材30の接続端子とをハンダペーストを介して対向させ、加熱し、第1電極配線141、第3電極配線143と配線部材30の接続端子とを熱溶融したハンダにより固着する。
次に、駆動IC搭載工程を行う。具体的には、まず、第2電極配線142と第3電極配線143に導電性接続部材49となるハンダペーストを塗布し、第2電極配線142および第3電極配線143にハンダペーストを介して駆動IC20の接続端子を対向させ、次に、ハンダペーストを熱溶融させ、第2電極配線142および第3電極配線143と、駆動IC20の接続端子とを接続する。
次に、放熱体40上にヘッド基体10および配線部材30を接合する。具体的に説明する。矢印D1−D2方向に凹溝18が形成された放熱体40の前記凹溝18間の突出面に、ディスペンサ等の塗布装置を用い矢印D3−D4方向の中央部が凹となるように接着剤を塗布する。このような形状に接着材を塗布するには、例えば、一つのディスペンサを用いる場合には、凹溝18間の突出面にディスペンサの吐出口を押しつけるようにしてディスペンサの吐出口から接着剤を吐出させながら、例えばD2方向にディスペンサを移動させることにより形成する。または、2本のディスペンサを用いて、矢印D3−D4方向の中央部が凹となるように接着剤を吐出させながら、例えばD2方向にディスペンサを移動させ、中央部が凹となるように接着剤を塗布できる。
一方、凹溝18間の突出面以外の放熱体40の上面には、両面テープを貼り付ける。そして、接着剤が塗布され、両面テープが貼り付けられた放熱体40の上面に、ヘッド基体10を配置し、両面テープ17にヘッド基体10の下面を接着するとともに、接着剤を硬化させた接着剤層16でヘッド基体10を接合し、図4に示すような空気溜まり部19を有する記録ヘッドを作製することができる。すなわち、ヘッド基体10で凹形状の接着剤が放熱体40側に押圧され、接着剤の流動等により、平面視円形の空気溜まり部19が形成される。
なお、接着剤を、例えば加熱して硬化させる場合には、加熱後冷却する際においても、空気溜まり部19によりヘッド基体10の変形が抑制され、記録ヘッドの製造歩留まりを向上できる。
また、図5(a)に示すような2列の空気溜まり部列は、凹溝18間の突出面にディスペンサ等の塗布装置を用い、矢印D3−D4方向に2つの凹が形成されるように接着剤を塗布する。例えば、矢印D3−D4方向に配列されたディスペンサの3つの吐出口から接着剤を塗布しながら、例えばD2方向にディスペンサを移動させ、2列の凹が形成されるように接着剤を塗布し、ヘッド基体10で凹形状の接着剤を放熱体40側に押しつけ、硬化させることで形成することができる。
図5(c)(d)に示すような細長い空気溜まり部列は、図3で用いた接着剤の粘度、接着剤塗布時の凹形状を調整することにより作製することができる。
以上のようにして、サーマルヘッドXが形成される。
<記録装置>
図6は、本発明の記録装置の実施形態の一例であるサーマルプリンタYの概略構成を示す図である。
サーマルプリンタYは、サーマルヘッドXと、搬送機構59と、制御機構69とを有している。
搬送機構59は、記録媒体Pを矢印D3方向に搬送しつつ、該記録媒体PをサーマルヘッドXの発熱素子13aに接触させる機能を有するものである。この搬送機構59は、プラテンローラ61と、搬送ローラ62、63、64、65とを含んで構成されている。
プラテンローラ61は、記録媒体Pを発熱素子13a側に押し付ける機能を有するものである。このプラテンローラ61は、発熱素子13a上に位置する保護層15に接触した状態で回転可能に支持されている。このプラテンローラ61は、円柱状の基体の外表面を弾性部材により被覆した構成を有している。この基体は、例えばステンレスなどの金属により形成されており、この弾性部材は、例えば厚みの寸法が3〜15mmの範囲のブタジエンゴムにより形成されている。
搬送ローラ62、63、64、65は、記録媒体Pを搬送する機能を有するものである。すなわち、搬送ローラ62、63、64、65は、サーマルヘッドXの発熱素子13aとプラテンローラ61との間に記録媒体Pを供給するとともに、サーマルヘッドXの発熱素子13aとプラテンローラ61との間から記録媒体Pを引き抜く役割を担うものである。これらの搬送ローラ62、63、64、65は、例えば金属製の円柱状部材により形成してもよいし、例えばプラテンローラ61と同様に円柱状の基体の外表面を弾性部材により被覆した構成であってもよい。
制御機構69は、駆動IC20に画像情報を供給する機能を有するものである。つまり、制御機構69は、外部接続端子32を介して発熱部13aを選択的に駆動する画像情報を駆動IC20に供給する役割を担うものである。
サーマルプリンタYは、サーマルヘッドXと、記録媒体Pを搬送する搬送機構59とを備える。そのため、サーマルプリンタYは、サーマルヘッドXの有する効果を享受することができる。したがって、サーマルプリンタYは、印画かすれを抑制し、画質を高めることができる。
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
上面に複数の発熱素子が一列に配列した発熱素子列を有するヘッド基体10、配線部材30、放熱体40を準備した。
ヘッド基体10は、幅9mm、長さ168mm、厚み1mmであり、長さ方向に発熱素子列が形成されていた。放熱体40はAlからなり、幅20mm、長さ170mm、厚み4mmであり、発熱素子列と対応する部分に2条の凹溝が形成されている。
放熱体40の凹溝間の突出面にディスペンサを用い矢印D3−D4方向の中央部が凹となるように、ディスペンサの吐出口を突出面に押し当てながらD2方向に、熱硬化性の接着剤を塗布した。また、凹溝間の突出面以外の放熱体40の上面に両面テープを貼り付けた。そして、ヘッド基体10を接着剤および両面テープの上面に配置するとともに、両面テープの上面に配線部材30を配置し、90℃で1時間加熱し、接着剤を硬化させ、本発明のサーマルヘッドAを作製した。
作製したサーマルヘッドAについて、オーブンで25℃および80℃に10分間保持後、それぞれ平坦度を測定した。平坦度は、発熱素子13a直上の保護層15表面に接触式の測定ヘッドを接触させて測定したもので、ヘッド基体10の両端を結んだ線分を基準に、この線分からの突出高さで示した。その結果を図7(a)に示した。
このグラフに示した結果から、本発明のサーマルヘッドAでは温度変化によるヘッド平坦度に大きな変化がみられないことがわかる。これにより、放熱体40に温度変化が生じたとしても、プラテンローラにより記録媒体を発熱素子13a側に押し当てる力が変動することが抑制され、印画かすれのない良好な画像が得られることがわかる。
ヘッド基体10を放熱体40から剥離し、接着剤層16を平面視したところ、図4に示すように、平面視円形状で、直径30〜150μmの空気溜まり部19が、発熱素子13aの配列方向に複数0.01〜1mmの間隔をおいて形成されていた。
比較例として、接着剤層に空気溜まり部ができないように、矢印D3−D4方向の中央部が凸となるように接着剤を塗布し、上記と同様にして、比較例のサーマルヘッドBを作製し、本発明と同様に25℃と80℃におけるヘッド基板の平坦度を測定し、その結果を図7(b)に示した。このグラフから、比較例のサーマルヘッドBでは、温度変化によりヘッド基板の平坦度が大きく変化し、これにより、プラテンローラにより記録媒体を発熱素子13a側に押し当てる力が変動し、印画かすれが発生することがわかる。
ヘッド基体10を放熱体4から剥離し、接着剤層16を平面視したところ、本発明のような空気溜まり部は形成されていなかった。
従って、接着剤層16に空気溜まり部19を形成することにより、放熱体40が高温となった場合でも、空気溜まり部19により放熱体40の変形が吸収され、ヘッド基体10の変形を抑制でき、プラテンローラにより記録媒体を発熱素子13a側に押し当てる力が変動することが抑制され、印画かすれを抑制できることがわかる。