JP5317723B2 - 記録ヘッドおよびこれを備える記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、発熱素子、該発熱素子の制御素子、および該制御素子と前記発熱素子とを接続する制御配線を有する記録ヘッドおよびこれを備える記録装置に関する。
ファクシミリやレジスターなどのプリンタとしては、サーマルヘッドおよびプラテンローラを備え、感熱紙あるいは熱転写インクリボンおよび普通紙を記録媒体として印画するサーマルプリンタが用いられている。このようなサーマルプリンタに搭載されているサーマルヘッドとしては、基板上に配列されている複数の発熱素子と、この基板上に配置されているとともに発熱素子の駆動を制御する制御素子とを備えるものがある。プラテンローラは、例えば感熱紙などの記録媒体を発熱素子上に押し当てる機能を有するものである。このような構成のサーマルプリンタでは、所望の画像に応じて発熱素子を発熱させるともに、発熱素子上に記録媒体をプラテンローラで押圧することにより発熱素子の発する熱を記録媒体に対して良好に伝達させている。この処理を繰り返すことによって、記録媒体に対して所望の画像が印刷される。
このようなサーマルヘッドには、発熱素子を制御素子に電気的に接続されている制御配線と、制御配線上に流動性を有する前駆体で被覆して、これを硬化して形成された保護材とをさらに含んで構成されているものがある。このような構成のサーマルヘッドは、例えば特許文献1に開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されたサーマルヘッドでは、個別電極パターン(上述の「制御配線」に相当)間の離間距離を短くしていくと、保護層の前駆体を塗布した際に、この前駆体が個別電極パターンの間隙における下面まで十分に行き亘らない場合があった。このようにして、下面まで前駆体が行き亘らず、下面と保護層との間に空隙部が生じてしまい、保護層の密着力が低下してしまう場合がある。
特開平7−186428号公報
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、制御配線を保護材によって良好に被覆することが可能な記録ヘッドおよびこれを備える記録装置を提供することを目的とする。
本発明の記録ヘッドは、基板と、該基板上に設けられている蓄熱層と、該蓄熱層上に主
走査方向に沿って配列されている複数の発熱素子と、前記基板上に副走査方向において前記複数の発熱素子と離間して配置されている、前記複数の発熱素子を制御する制御素子と、前記基板上に設けられている、前記複数の発熱素子と前記制御素子とを電気的に接続する複数の制御配線と、前記複数の発熱素子および前記複数の制御配線における前記発熱素子側の一部を覆う保護層とを有しており、前記複数の制御配線は、主走査方向において隣り合う前記制御配線の側面の離間距離が厚み方向における下方から上方に向かって長くなっており、前記蓄熱層は、前記複数の制御配線の間隙に沿って延びている複数の窪み部を有するとともに、該複数の窪み部の表面粗さが前記制御配線の前記側面の表面粗さよりも小さくなっており、前記複数の制御配線の前記保護層に覆われていない部位および前記複数の制御配線間の前記間隙が、流動性を有する前駆体を硬化させて形成した保護材により覆われていることを特徴としている。
本発明の記録ヘッドにおいて、前記複数の窪み部は、主走査方向における幅が厚み方向における下方から上方に向かって広くなっていることが好ましい。
本発明の記録ヘッドにおいて、前記複数の制御配線は、前記側面に厚み方向に延びる溝を有していることが好ましい。
本発明の記録装置は、上記いずれかの記録ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送機構とを備えることを特徴とするものである。
本発明の記録ヘッドは、基板と、該基板上に設けられている蓄熱層と、該蓄熱層上に主走査方向に沿って配列されている複数の発熱素子と、前記基板上に副走査方向において前記複数の発熱素子と離間して配置されている、前記複数の発熱素子を制御する制御素子と、前記基板上に設けられている、前記複数の発熱素子と前記制御素子とを電気的に接続する複数の制御配線と、前記複数の発熱素子および前記複数の制御配線における前記発熱素子側の一部を覆う保護層とを有しており、前記複数の制御配線は、主走査方向において隣り合う前記制御配線の側面の離間距離が厚み方向における下方から上方に向かって長くなっており、前記蓄熱層は、前記複数の制御配線の間隙に沿って延びている複数の窪み部を有するとともに、該複数の窪み部の表面粗さが前記制御配線の前記側面の表面粗さよりも小さくなっており、前記複数の制御配線の前記保護層に覆われていない部位および前記複数の制御配線間の前記間隙が、流動性を有する前駆体を硬化させて形成した保護材により覆われていることを特徴としている。そのため、本発明の記録ヘッドでは、保護材の前駆体を制御配線の間隙に塗布する際に、当該間隙の上方に比べて下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。したがって、本発明の記録ヘッドでは、当該間隙の下面にまで前駆体を良好に行き亘らせ、制御配線を保護材によって良好に被覆することができる。また、複数の制御配線が、主走査方向における隣り合う制御配線の側面の離間距離が厚み方向における下方から上方に向かって長くなっているため、保護材の前駆体を塗布する際に、制御配線の間隙の下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。
本発明の記録ヘッドにおいて、複数の窪み部が、主走査方向における幅が厚み方向における下方から上方に向かって広くなっている場合、保護材の前駆体を塗布する際に、窪み部の下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。したがって、この記録ヘッドでは、制御配線を保護材によってより良好に被覆することができる。
本発明の記録ヘッドにおいて、複数の制御配線は、側面に厚み方向に延びる溝を有している場合、例えば制御配線が延びる方向に記録媒体を摺動させた場合でも制御配線に対して保護材を良好に被着させ、剥離を低減することができる。そのため、この記録ヘッドでは、制御配線を保護材によって、より良好に被覆することができる。
本発明の記録装置は、本発明の記録ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送機構とを備える。そのため、本発明の記録装置は、上述した記録ヘッドの有する効果を享受することができる。したがって、本発明の記録装置によれば、制御配線を保護材によって良好に被覆することができることにより、外雰囲気中による影響を低減することができ、長期に渡り安定的に駆動させることができる。
本発明の記録ヘッドの実施形態の一例であるサーマルヘッドの概略構成を示す、保護層を省略した平面図である。 図1に示したサーマルヘッドの要部を拡大した平面図である。 図1に示したサーマルヘッドの要部を拡大し、保護層を省略した平面図である。 図2に示したIV−IV線に沿った断面図である。 (a)が図2に示したVa−Va線に沿った断面図であり、(b)が図2に示したVb−Vb線に沿った断面図である。 (a)〜(d)は、図1に示したサーマルヘッドの製造工程を示す説明図である。 (a)〜(c)は、図6に示したサーマルヘッドの製造工程の続きを示す説明図である。 本発明の記録装置の実施形態の一例であるサーマルプリンタの概略構成を示す図である。 図3に示したサーマルヘッドの変形例の概略構成を示す図である。 図3に示したサーマルヘッドの変形例の概略構成を示す断面を含む斜視図である。
<記録ヘッド>
図1に示した本発明の記録ヘッドの実施形態の一例であるサーマルヘッド10は、基板20と、蓄熱層30と、電気抵抗層40と、導電層50と、保護層60と、制御素子としての制御IC70とを含んで構成されている。
基板20は、蓄熱層30と、電気抵抗層40と、導電層50と、保護層60と、制御IC70とを支持する機能を有するものである。この基板20は、平面視において主走査方向D1,D2に延びる矩形状に構成されている。ここで、「平面視」とは、厚み方向D5,D6におけるD6方向視のことをいう。この基板20を形成する材料としては、例えばセラミックスと、シリコンと、サファイアとが挙げられる。これらの材料の中でも、印画の高密度化の観点からは、シリコンと、サファイアとが好ましい。さらに、印画の高速化の観点からは、サファイアがより好ましい。また、この基板20の厚み方向D5,D6におけるD5方向側の上面には、蓄熱層30が全体に渡って設けられている。
蓄熱層30は、電気抵抗層40の後述する発熱部41において発生する熱の一部を一時的に蓄積する機能を有するものである。すなわち、蓄熱層30は、発熱部41の温度を上昇させるのに要する時間を短くして、サーマルヘッド10の熱応答特性を高める役割を担うものである。本実施形態の蓄熱層30を形成する材料としては、例えばSiOを主成分とするガラスが挙げられる。この蓄熱層30をSiOを主成分とするガラスで形成した場合の熱伝導率は、例えば0.99/m・K程度となる。この蓄熱層30は、基部31と、突出部32とを有している。
基部31は、基板20の上面全体に渡って略平坦状に設けられている。この基部31は、厚み方向D5,D6におけるD6方向に窪んでいる窪み部31aを有している。この窪み部31aは、副走査方向D3,D4に延びている。また、この窪み部31aは、主走査方向D1,D2における内側面31aが傾斜している。つまり、この窪み部31aは、内側面31a間の主走査方向D1,D2に沿った離間距離d31aが、厚み方向D5,D6におけるD5方向側からD6方向側に向かうにつれて長くなるように構成されている。
突出部32は、記録媒体を発熱部41上に位置する保護層60に対して良好に押し当てるのに寄与する部位である。この突出部32は、基部31より厚み方向D5,D6におけるD5方向に突出している。また、この突出部32は、主走査方向D1,D2に延びる帯状に構成されている。この突出部32は、主走査方向D1,D2に直交する副走査方向D3,D4における断面形状が略半楕円状に構成されている。
電気抵抗層40は、電力供給によって発熱する発熱素子として機能する発熱部41を有している。この電気抵抗層40は、単位長さ当たりの電気抵抗値が導電層50の単位長さ当たりの電気抵抗値に比べて大きくなるように構成されている。この電気抵抗層40を形成する材料としては、例えばTaN系材料と、TaSiO系材料と、TaSiNO系材料と、TiSiO系材料と、TiSiCO系材料と、NbSiO系材料とが挙げられる。ここで「〜を主とする材料」とは、主とする材料が全体に対して50質量%以上であるものをいい、例えば添加物を含んでいてもよい。この電気抵抗層40は、蓄熱層30上に設けられており、一部が突出部32上に設けられている。本実施形態では、導電層50から電圧が印加される電気抵抗層40のうち導電層50が上に形成されていない部位が発熱部41として機能している。
発熱部41は、電力供給により発熱する発熱素子として機能する部位である。この発熱部41は、導電層50からの電力供給による発熱温度が例えば200℃以上550℃以下の範囲となるように構成されている。この発熱部41は、蓄熱層30の突出部32上に位置しており、主走査方向D1,D2に沿って略同一の離間距離d41で配列されている。また、この発熱部41は、平面視において、各々が矩形状に構成されている。さらに、発熱部41は、各々の主走査方向D1,D2に沿う幅W41が略同一の長さに構成されている。また、発熱部41は、各々の副走査方向D3,D4に沿う長さL41が略同一の長さに構成されている。ここで、「略同一」とは、一般的な製造誤差範囲内のものが含まれ、例えば各部位の長さの平均値に対する誤差が10%以内の範囲が挙げられる。ここで、一つの発熱部41の中心と該発熱部41に隣接する他の発熱部41の中心との離間距離dC41の値としては、例えば5.2μm以上84.7μm以下の範囲が挙げられる。
導電層50は、発熱部41に対して電力を供給するのに寄与するものである。この導電層50は、電気抵抗層40上に位置している。導電層50を主として形成する材料としては、例えばアルミニウム、金、銀、および銅のいずれか一種の金属、またはこれらの合金が挙げられる。また、この導電層50は、第1導電層51と、第2導電層52と、第3導電層53とを含んで構成されている。本実施形態の導電層50は、例えば、第1導電層51と、第2導電層52と、第3導電層53となる領域を含む導電膜を形成し、当該導電膜の上面に第1導電層51と、第2導電層52と、第3導電層53となる領域を覆うマスクを形成し、当該マスクから露出した領域をスパッタリング方などによってエッチングして形成することができる。
第1導電層51は、厚み方向D5,D6でのD6方向側における下層に位置する電気抵抗層40と併せて制御配線として機能しており、発熱部41への電力を供給するのに寄与している。この第1導電層51は、第1配線部511と、第2配線部512と、第3配線部513とを有している。
第1配線部511は、副走査方向D3,D4でのD3方向側の一端部が発熱部41のD4方向側の一端部に接続されている。第1配線部511は、主走査方向D1,D2に沿った幅W11が発熱部41の幅W41と略同一の長さに構成されている。また、第1配線部511は、その主走査方向D1,D2に沿った互いの離間距離d11が発熱部41の離間距離d41と略同一の長さに構成されている。第1配線部511の幅W11および離間距離d11をそれぞれ略同一の長さに構成することで、保護層60の発熱部41近傍の表面形状の均一性を高めている。
第2配線部512は、D3方向側の一端が第1配線部511の他端に接続されている。この第2配線部512は、主走査方向D1,D2に沿った幅W12の寸法がD5方向に向かうにつれて漸次狭くなるように構成されている。また、この第2配線部512は、下面512bにおける幅W12がD4方向に(発熱部41側から制御IC70側に)向かうにつれて広くなっている。そのため、この第2配線部512の下面512bにおける幅W12は、第1配線部511の幅W11に比べて広くなっている。また、第2配線部512は、その主走査方向D1,D2に沿った下面512b間の離間距離d12がD4方向に向かうにつれて長くなるように構成されている。
本実施形態の第2配線部512は、主走査方向D1,D2において隣り合う他の第2配線部512と対向する側面512aが傾斜している。つまり、この第2配線部512の側面512aは、隣り合う第2配線部512の側面512a間の主走査方向D1,D2に沿った離間距離d12が、D6方向側からD5方向側に向かうにつれて長くなるように構成されている。また、この第2配線部512間の間隙には、間隙に沿って蓄熱層30の窪み部31aが設けられており、側面512aが窪み部31aに続いている。この側面512aは、窪み部31aに比べて表面粗さが大きくなるように構成されている。
第3配線部513は、D3方向側の一端が第2配線部512の他端に接続されており、他端部が制御IC70に接続されている。本実施形態の第3配線部513は、主走査方向D1,D2に沿った幅W13が第1配線部511の幅W11に比べて広くなっている。本実施形態では、各部位の主走査方向D1,D2に沿った幅として、各部位のD6方向に位置する部材の形成面における幅を採用する。
第2導電層52は、端部が複数の発熱部41のD4方向側の他端、および図示しない電源に対してそれぞれ電気的に接続されている。
第3導電層53は、第1導電層51と離間して配置されている。この第3導電層53は、その一端部が制御IC70に接続されている。
ここで、本実施形態の蓄熱層30の窪み部31aの製造方法について、図6を参照しつつ、例示する。まず、図6(a)に示すように、蓄熱層30上に、抵抗体膜40xを形成する。この抵抗体膜40xの形成は、スパッタリングや蒸着などの成膜技術によって行なう。次に、図6(b)に示すように、抵抗体膜40x上に位置するようにして導電膜50xを形成する。この導電膜50xの形成は、スパッタリングや蒸着などの成膜技術によって行なう。次に、図6(c)に示すように、フォトリソグラフィなどの微細加工技術により導電膜50xに第1マスク81を形成し、当該第1マスク81で導電層50および第3導電層53となる部位を被覆する。次に、図6(d)に示すように、この第1マスク81から露出した導電膜50xおよび抵抗体膜40xをエッチングして、導電層50を形成する。この導電層50の形成時に、抵抗体膜40xの一部を残すことで発熱部41を形成する。次に、図7(a)に示すように、フォトリソグラフィなどの微細加工技術により導電層50上に第2マスク82を形成し、第2配線部512の側面512aおよび上面512cの主走査方向D1,D2における端部を露出させる。このとき、上面512cの露出面積を副走査方向D3,D4におけるD3方向からD4方向に向かうにつれて大きくする。次に、図7(b)に示すように、第2配線部512間より露出している蓄熱層30を選択的にエッチングして、窪み部31aを形成するとともに、導電層50に比べて第2配線部512の側面512aの傾斜角度θをD3方向からD4方向に向かうにつれて大きくなるように構成する。次に、図7(c)に示すように、第2配線部512間より露出している蓄熱層30を例えばエッチング液で選択的にエッチングして、窪み部31aを形成するとともに、導電層50に比べて表面を滑らかにする。以上のようにして、本実施形態の蓄熱層30の窪み部31aを第2配線部512の間隙に形成することができる。
保護層60は、第1保護層61と、第2保護層62と、第3保護層63とを含んで構成されている。なお、図1および図3において、見やすさの観点から保護層60は省略されている。
第1保護層61は、発熱部41と、導電層50の一部とを保護する機能を有するものである。第1保護層61は、発熱部41と、導電層50の第1導電層51の第1配線部511の一部および第2配線部512とを覆っている。第1保護層61を主として形成する材料としては、例えばダイヤモンドライクカーボン材料と、SiC系材料と、SiN系材料と、SiCN系材料と、SiON系材料と、SiONC系材料と、SiAlON系材料と、SiO系材料と、Ta系材料と、TaSiO系材料と、TiC系材料と、TiN系材料と、TiO系材料と、TiB系材料と、AlC系材料と、AlN系材料と、Al系材料と、ZnO系材料と、BC系材料と、BN系材料とが挙げられる。ここで「ダイヤモンドライクカーボン材料」とは、sp混成軌道をとる炭素原子(C原子)の割合が1原子%以上100原子%未満の範囲である膜をいう。また、ここで「〜を主とする材料」とは、主とする材料が全体に対して50質量%以上であるものをいい、例えば添加物を含んでいてもよい。
第2保護層62は、第2配線部512の一部を保護する機能を有するものである。第2保護層62は、第1配線部511の一部と、第2配線部512とを覆っている。第2保護層62を形成する材料としては、例えばエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂などの熱硬化型または紫外線硬化型などの樹脂が挙げられる。本実施形態における第2保護層62は、第1保護層61の形成後に、第2配線部512上に流動性を有する第2保護層62の前駆体を塗布し、当該前駆体を硬化することによって形成されている。この前駆体としては、例えば有機溶媒を用いて上述の樹脂材料を希釈したものが挙げられる。この第2保護層62は、第3配線部513の副走査方向D3,D4におけるD4方向側の端部を含む領域を覆っておらず、第3配線部513の一部は、第2保護層62から露出している。この第2保護層62の前駆体としては、導電層50を形成する材料に比べて蓄熱層30を形成する材料に対する濡れ性を示す接触角が小さいものが採用されている。ここで、「接触角」とは、当該前駆体、対象となる部材、および気体(空気)の接点における前駆体の表面と、前駆体および対象となる部材の接触面との間の角度をいう。また、この第2保護層62を形成する際に、発熱部41の中心間の離間距離dC41の値が21.2μm以下になると、複数の第1導電層51の間隙上に延びている当該第2保護層62の前駆体に毛細管現象が顕著に生じ、当該前駆体を良好に伸ばすことができる。
第3保護層63は、第1導電層51の第3配線部513と、制御IC70とを保護する機能を有するものである。第3保護層63は、第3配線部513と、制御IC70とを覆っている。第3保護層63を形成する材料としては、例えばエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂などの熱硬化型または紫外線硬化型などの樹脂が挙げられる。本実施形態における第3保護層63は、第2保護層62の形成後に、制御IC70上に流動性を有する第3保護層63の前駆体を塗布し、当該前駆体を硬化することによって形成されている。
制御IC70は、複数の発熱部41の発熱を制御する機能を有するものである。この制御IC70は、副走査方向D3,D4において、発熱部41と離間して配されている。この制御IC70は、複数の第1導電層51の第3配線部513の他端部と、第3導電層53の一端部とに接続されている。このような構成とすることにより、発熱部41に供給される電力を選択的に制御し、発熱を制御することができる。なお、図3において、制御IC70は省略されている。
外部接続用部材71は、発熱部41を駆動するための電気信号を供給する機能を有するものである。この外部接続用部材71としては、例えばフレキシブルケーブルおよびコネクタの組み合わせが挙げられる。この外部接続用部材71は、第3導電層53を介して制御IC70に対して電気的に接続されている。
サーマルヘッド10は、基板20と、基板20上に設けられている蓄熱層30と、蓄熱層30上に主走査方向D1,D2に沿って配列されている複数の発熱部41と、基板20上に副走査方向D3,D4において複数の発熱部41と離間して配置されている、複数の発熱部41を制御する制御IC70と、基板20上に設けられている、複数の発熱部41と制御IC70とを電気的に接続する複数の第1導電層51と、複数の発熱部41および複数の導電層における発熱部41側の一部を覆う保護層60とを有しており、蓄熱層30は、複数の導電層50の間隙に沿って延びている複数の窪み部31aを有するとともに、当該複数の窪み部31aの表面粗さが第1導電層51の第2配線部512の側面512aの表面粗さよりも小さくなっており、複数の第1導電層51の第1保護層61に覆われていない部位および複数の第1導電層51間の間隙が、流動性を有する前駆体を硬化させて形成した第2保護層62により覆われている。そのため、サーマルヘッド10では、第2保護層62の前駆体を第2配線部512の間隙に塗布する際に、当該間隙の上方に比べて下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。したがって、サーマルヘッド10では、当該間隙の下面にまで前駆体を良好に行き亘らせ、第2導電層52を第2保護層62によって良好に被覆することができる。
サーマルヘッド10において、複数の窪み部31aが、主走査方向D1,D2における間隔が厚み方向D5,D6におけるD6方向側からD5方向側に向かって長くなっているので、第2保護層62の前駆体を塗布する際に、窪み部31aの下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。したがって、このサーマルヘッド10では、第2配線部512を第2保護層62によってより良好に被覆することができる。
サーマルヘッド10において、複数の第2配線部512は、主走査方向D1,D2における隣り合う第2配線部512の側面512a間の離間距離d12が厚み方向D5,D6におけるD6方向側からD5方向側に向かって長くなっているので、第2保護層62の前駆体を塗布する際に、第2配線部512の間隙の下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。したがって、このサーマルヘッド10では、第2配線部512を第2保護層62によって、より良好に被覆することができる。
サーマルヘッド10において、第2保護層62の前駆体に対する蓄熱層30を形成する材料の濡れ性を示す接触角が、当該前駆体に対する第2配線部512を形成する材料の接触角より小さいので、第2保護層62の前駆体を塗布する際に、窪み部31aの下方において毛細管現象を良好に生じさせることができる。したがって、このサーマルヘッド10では、第2配線部512を第2保護層62によってより良好に被覆することができる。
<記録装置>
図7は、本発明の記録媒体の実施形態の一例であるサーマルプリンタ1の概略構成を示す図である。
サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド10と、搬送機構11と、制御機構12とを有している。
搬送機構11は、副走査方向D3,D4におけるD3方向側に記録媒体Pを搬送しつつ、当該記録媒体Pをサーマルヘッド10の発熱部41上に位置する保護層70に接触させる機能を有するものである。この搬送機構11は、プラテンローラ111と、搬送ローラ112,113,114,115とを含んで構成されている。この搬送機構11は、記録媒体Pを第3保護層63に摺接させて搬送するように構成されている。
プラテンローラ111は、記録媒体Pを発熱部41側に押し付ける機能を有するものである。このプラテンローラ111は、発熱部41上に位置する第1保護層61に接触した状態で回転可能に支持されている。このプラテンローラ111は、円柱状の基体の外表面を弾性部材により被覆した構成を有している。この基体は、例えばステンレスなどの金属により形成されており、この弾性部材は、例えば厚みの寸法が3mm以上15mm以下の範囲ブタジエンゴムにより形成されている。
搬送ローラ112,113,114,115は、記録媒体Pを搬送する機能を有するものである。すなわち、搬送ローラ112,113,114,115は、サーマルヘッド10の発熱部41とプラテンローラ111との間に記録媒体Pを供給するとともに、サーマルヘッド10の発熱部41とプラテンローラ111との間から記録媒体Pを引き抜く役割を担うものである。これらの搬送ローラ112,113,114,115は、例えば金属製の円柱状部材により形成してもよいし、例えばプラテンローラ111と同様に円柱状の基体の外表面を弾性部材により被覆した構成であってもよい。
制御機構12は、制御IC70に画像情報を供給する機能を有するものである。つまり、制御機構12は、外部接続用部材71を介して発熱部41を選択的に駆動する画像情報を制御IC70に供給する役割を担うものである。
サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド10を備えることを特徴としている。そのため、サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド10の有する効果を享受することができる。したがって、サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド10の第1導電層51が第2保護層62によって良好に被覆されることにより、外雰囲気中による影響を低減し、長期に渡り安定的に駆動することができる。
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
本実施形態では、記録ヘッドの一例としてサーマルヘッド10を記載したが、本発明はサーマルヘッドに限るものでない。本発明の構成を例えばインクジェットヘッドまたはLEDヘッドなどの発熱する素子に採用した場合でも、同様の効果を奏することができる。
本実施形態の第1導電層51は、第1配線部511および第3配線部513を含んで構成されているが、このような構成に限るものでなく、例えば第1導電層51が第2配線部512のみからなる構成とされていてもよい。
本実施形態の第1導電層51は、厚み方向D5,D6におけるD6方向に位置する電気抵抗層40と併せて制御配線として機能しているが、このような構成に限るものでなく、例えば第1導電層51のみを制御配線として機能させていてもよい。
本実施形態の第1導電層51において、第2配線部512の側面512aに、図10に示したような矢印方向D5,D6に延びている側溝512aが設けられていてもよい。このような側溝512aは、例えば、第2配線部512の形成時に側溝512aとなる領域を上述のマスクから露出させてエッチングすることで形成することができる。この側溝512aを有するサーマルヘッド10Bでは、例えば第2配線部512が延びる方向に記録媒体を摺動させた場合でも第2配線部512に対して第2保護層62を良好に被着させることができ、第2配線部512を第2保護層62によって、より良好に被覆することができる。
本実施形態の第2導電層52では、3つ以上の発熱部41に接続されているが、このような構造に限るものでなく、例えば図8に示したように第2導電層52Aが2つの発熱素子に接続されるように構成されていてもよい。
本実施形態の第1保護層61は、第2保護層62と別体として構成されているが、このような構成に限るものでなく、第1保護層61と第2保護層62とが一体的に構成されていてもよい。
1 サーマルプリンタ
10 サーマルヘッド
11 搬送機構
111 プラテンローラ
112,113,114,115 搬送ローラ
12 駆動機構
20 基板
30 蓄熱層
31 基部
31a 窪み部
31a 内側面
32 突出部
40 電気抵抗層
40x 抵抗体膜
41 発熱部
50 導電層
50x 導電膜
51 第1導電層(制御配線)
511 第1配線部
512 第2配線部
512a 第2配線部の側面
513 第3配線部
52 第2導電層
53 第3導電層
60 保護層
61 第1保護層
62 第2保護層(保護材)
63 第3保護層
70 制御IC(制御素子)
71 外部接続用部材
81 第1マスク
82 第2マスク
P 記録媒体
11 第1配線部間の離間距離
12 第2配線部間の離間距離
13 第3配線部間の離間距離
31a 窪み部の側面間の離間距離(窪み部の幅)
41 発熱部間の離間距離
c41 発熱部の中心間の離間距離
41 発熱部の副走査方向に沿う長さ
11 第1配線部の主走査方向に沿う幅
12 第2配線部の主走査方向に沿う幅
13 第3配線部の主走査方向に沿う幅
41 発熱部の主走査方向に沿う幅

Claims (4)

  1. 基板と、
    該基板上に設けられている蓄熱層と、
    該蓄熱層上に主走査方向に沿って配列されている複数の発熱素子と、
    前記基板上に副走査方向において前記複数の発熱素子と離間して配置されている、前記複数の発熱素子を制御する制御素子と、前記基板上に設けられている、前記複数の発熱素子と前記制御素子とを電気的に接続する複数の制御配線と、
    前記複数の発熱素子および前記複数の制御配線における前記発熱素子側の一部を覆う保護層とを有しており、
    前記複数の制御配線は、主走査方向において隣り合う前記制御配線の側面の離間距離が厚み方向における下方から上方に向かって長くなっており、
    前記蓄熱層は、前記複数の制御配線の間隙に沿って延びている複数の窪み部を有するとともに、該複数の窪み部の表面粗さが前記制御配線の前記側面の表面粗さよりも小さくなっており、
    前記複数の制御配線の前記保護層に覆われていない部位および前記複数の制御配線間の前記間隙が、流動性を有する前駆体を硬化させて形成した保護材により覆われていることを特徴とする記録ヘッド。
  2. 前記複数の窪み部は、主走査方向における幅が厚み方向における下方から上方に向かって広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
  3. 前記複数の制御配線は、前記側面に厚み方向に延びる溝を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の記録ヘッド。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の記録ヘッドと、前記発熱素子上に記録媒体を搬送する搬送機構とを備えることを特徴とする記録装置。
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