JP2007141417A5 - - Google Patents

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光記録媒体およびその製造方法
この発明は、光記録媒体およびその製造方法に関する。詳しくは、無機記録膜を有する光記録媒体およびその製造方法に関する。
光記録媒体は、例えばCD−R(Compact Disc-Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disc-Recordable)で広く知られているように、その記録層を構成する記録材料は、有機色素を用いたものが普及している。
一方、無機記録材料を用いる記録媒体の提案も、種々なされている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、現在、記録材料が無機材料による記録媒体(以下無機記録媒体という)に比し、記録材料が有機材料による記録媒体(以下有機記録媒体という)が広く用いられている。その理由は、無機材料を記録膜とした場合、反射率の自由度が狭いためROM(Read only Memory)との互換性が得られないという不都合があったこと、更に、記録特性や耐久性の向上を図ると、多層膜とせざるを得ず、その製造装置、例えばスパッタ装置への設備投資などが必要となることから、有機材料による場合に比して、コスト高となるなどの問題を有することである。
これに対して有機材料を記録材料とする光記録媒体においては、その記録層はスピンコート法により成膜することができるものであり、これに反射膜の成膜を行えば良い程度であることから、その製造方法は簡単で、製造装置の設備費用も低廉である。
一方、光ディスクの高密度化は、主として光源の波長の短波長化と対物レンズの開口数(N.A.)により実現されてきた。現在は短波長400nm近辺のブルーの半導体レーザが実用化されてきたため、このような波長の光源に適した有機色素の開発が必要となっている。
しかし、短波長光に対する光学的な特性を満たす有機色素は、色素分子のサイズが小さくなる方向であり、分子設計の自由度が小さくなり、結果として、得られるメディアの特性としても設計の自由度が少ない。
また、次世代光ディスクの規格として商品化されているブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標)、以下BD)においては、N.A.が、0.85であるため、スキューの許容度が小さいなどの問題から、記録層に対する記録再生のブルーレーザ光の照射は、記録層上に形成された厚さ0.1mmの光透過層側からなされる。有機色素を用いる場合、有機色素と光透過層が直接接すると光透過層に分子が拡散することを防ぐために誘電体膜を追加で成膜しなければならない。これらの状況から、有機色素に替わる、低廉な記録膜が求められている。
特開平11−144316号公報
CD−RやDVD−Rの光学系においても、記録再生特性の面で無機記録媒体が有機記録媒体より優位となる場合がある。しかしながら、例えば相変化型の記録媒体におけるように、スパッタ法によって記録層を形成する光記録媒体にあって、その構成膜数が多層である場合、製造の煩雑さや、コストの問題が生ずる。そこで、この光記録媒体の構成膜数は、3〜4層以下であること望まれる。
したがって、この発明の目的は、無機記録膜を有する光記録媒体において、記録再生特性や生産性に優れ、且つ、コストの低廉化を実現できる光記録媒体を提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
無機記録膜を有する光記録媒体であって、
無機記録膜が、
Geの酸化物からなる酸化物膜と、
酸化物膜と接するように設けられた、金属材料からなる隣接膜と
を備え、
酸化物膜の吸収係数kが、0.15≦k≦0.90の範囲であることを特徴とする光記録媒体である。
第2の発明は、
無機記録膜を有する光記録媒体の製造方法であって、
Tiからなる隣接膜を成膜する工程と、
Geの酸化物からなる酸化物膜を成膜する工程と
を備え、
酸化物膜および隣接膜の成膜工程では、酸化物膜と隣接膜とは隣接するように成膜され、
酸化物膜の吸収係数kが、0.15≦k≦0.90の範囲であることを特徴とする光記録媒体の製造方法である。
第1および第2の発明では、酸化物膜の膜厚が、10nm以上35nm以下であることが好ましい。また、第1および第2の発明では、隣接膜が酸化されており、該隣接膜の酸素の組成が9原子%以上38原子%以下であることが好ましい。隣接膜が、Tiからなることが好ましい。隣接膜が、Siをさらに含有させたTiSi合金からなることが好ましい。TiSi合金のSiの組成が、8原子%以上32原子%以下であることが好ましい。隣接膜が、Alからなることが好ましい。隣接膜が、Alと、希土類金属のTb,Gd,Dy,Ndのいずれか1種以上との合金膜であることが好ましい。
第1および第2の発明では、酸化物膜の隣接膜と接する側とは反対側の面に誘電体膜がさらに設けられていることが好ましい。誘電体膜が、SiNからなることが好ましい。誘電体膜が、ZnS−SiO2からなることが好ましい。誘電体膜が、酸化物膜に隣接する第1の誘電体膜と、該第1の誘電体膜上に形成された第2の誘電体膜とを備え、第1の誘電体膜がZnS−SiO2からなり、第2の誘電体膜がSiNからなることが好ましい。誘電体膜の膜厚が、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
第1および第2発明では、典型的には、ランド・グルーブの凹凸面が形成された基板上に、少なくとも酸化物膜および隣接膜が形成されて成る。
第1および第2の発明では、トラックピッチが0.29μm以上0.35μm以下の範囲の案内溝を有する基板上に形成されてなり、かつ、グルーブ深さが18nm以上21.5nm以下の範囲で形成されてなることが好ましい。この場合、案内溝のうち、記録・再生するグルーブ面からの、再生光学系における戻り検出光量をRON、他方のグルーブ面からの戻り検出光量をRINとしたとき、−0.01<2(RON−RIN)/(RON+RIN)であることが好ましい。また、ウォブル振幅が、9nm以上13nm以下であることが好ましい。
第1の発明では、識別情報が記録された識別情報記録領域を設けることが好ましい。この識別情報は、酸化物膜に識別情報に応じた記録マークを形成することにより記録される、または、無機記録膜を識別情報に応じたパターンで除去することにより記録されることが好ましい。
第2の発明では、波長350nm以上450nm以下のレーザ光を酸化物膜側から光記録媒体に対して照射することにより、識別情報を記録する工程をさらに備えることが好ましい。また、レーザ光を隣接膜側から光記録媒体に対して照射することにより、識別情報を記録する工程をさらに備えることが好ましく、この工程にて照射されるレーザ光は、光学ヘッドスキャンスピード5m/s以上9m/s以下、レーザパワー3400mW以上4000mW以下の条件で光記録媒体に照射されることが好ましい。
第1および第2の発明では、無機記録膜が、ゲルマニウムの酸化物からなる酸化物膜と、この酸化物膜に隣接する隣接膜とからなるので、光を無機記録膜に照射すると、隣接膜の光触媒効果により酸化物膜の酸素が隣接膜側で多くなるように分離する。これにより、酸化物膜が酸素濃度の高い層と酸素濃度の低い層とに分離し、酸化物膜の光学定数が大きく変化する。したがって、変調度の大きな再生信号が得られるので、良好な記録特性を実現できる。
以上説明したように、この発明によれば、無機記録膜を有する光記録媒体の記録再生特性や生産性を向上し、且つ、コストの低廉化を実現できる。
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
(1)第1の実施形態
光記録媒体の構成
図1は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この光記録媒体10は、基板1上に、無機記録膜6、誘電体膜4、光透過層5が順次積層された構成を有する。
この第1の実施形態による光記録媒体10では、光透過層5の側からレーザ光を情報信号部2に照射することにより、情報信号の記録および/または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層5の側から情報信号部2に照射することにより、情報信号の記録および/または再生が行われる。このような光記録媒体10としては、例えば追記型のBDが挙げられる。
以下、光記録媒体10を構成する基板1、無機記録膜6、誘電体膜4および光透過層5について順次説明する。
(基板)
基板1は、中央に開口(以下、センターホールと称する)1aが形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、凹凸面11となっており、この凹凸面11上に無機記録膜6が成膜される。以下では、基板1の一主面に対して窪んだ凹部をイングルーブ11G、基板1の一主面に対して突出した凸部をオングルーブ11Lと称する。
このイングルーブ11Gおよびオングルーブ11Lの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブ11Gおよび/またはオングルーブ11Lが、アドレス情報を付加するためのウォブル(蛇行)されている。
基板1の直径は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm〜1.3mmから選ばれ、より好ましくは0.6mm〜1.3mmから選ばれ、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホール1aの径(半径)は、15mmに選ばれる。
基板1の材料としては、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂若しくはアクリル系樹脂などのプラスチック材料、またはガラスなどを用いることができる。なお、コストを考慮した場合には、基板1の材料として、プラスチック材料を用いることが好ましい。
(無機記録膜)
無機記録膜6は、基板1の凹凸面11上に順次積層された金属膜2および酸化物膜3からなる。金属膜2は、TiまたはTiを主成分とする材料から構成される。Tiを主成分とする材料としては、例えばTiおよび添加物からなる材料を挙げることができる。Tiを主たる材料とすれば基本的に良好な記録特性を得ることができる。添加物は、光学特性、耐久性または記録感度などを向上させるためのものであり、このような添加物としては、例えばAl,Ag,Cu,Pd,Ge,Si,Sn,Ni,Fe,Mg,V,C,Ca,B,Cr,Nb,Zr,S,Se,Mn,Ga,Mo,W,Tb,Dy,Gd,Nd,Zn,Ta,Srを用いることができる。具体的には例えば、反射率を高めるための添加物としては、Alが好ましい。
酸化物膜3は、例えば、ゲルマニウムの酸化物であるGeOからなる。酸化物膜3の吸収係数kは、好ましくは0.15以上0.90以下、より好ましくは0.20以上0.70以下、更により好ましくは0.25以上0.60以下の範囲である。また、酸化物膜3の膜厚は、好ましくは10nm〜35nmの範囲である。0.15以上0.90以下の範囲を満たすことで、例えば良好な変調度およびキャリア対ノイズ比(以下、C/N比)を得ることができる。0.20以上0.70以下の範囲を満たすことで、例えばより良好な変調度およびC/N比を得ることができる。0.25以上0.60以下の範囲を満たすことで、例えば更により良好な変調度およびC/N比を得ることができる。
なお、この明細書における吸収係数は波長410nmにおけるものである。また、その測定には、エリプソメータ(ルドルフ社製、商品名:Auto EL-462P17)を用いた。
また、酸化物膜3に対して添加物を加えるようにしてもよく、この添加物としては、例えばTe,Pd,Pt,Cu,Zn,Au,Ag,Si,Ti,Fe,Ni,Sn,Sbなどを用いることができる。このような添加物を加えることで、耐久性および/または反応性(記録感度)を向上することができる。なお、耐久性を向上させるためには、特にPd,Pt,Si,Sbが特に好ましい。
(誘電体膜)
誘電体膜4は、無機記録膜6上に接して設けられ、無機記録膜6の光学的、機械的保護、すなわち耐久性の向上や、記録時の無機記録膜6の変形、すなわちふくらみの抑制等を行うためのものである。この誘電体膜4としては、例えばSiN,ZnS−SiO2,AlN,Al23,SiO2,TiO2、SiCなどを用いることができる。誘電体膜4の厚さは、例えば10nm〜100nmの範囲である。
(光透過層)
光透過層5は、例えば、円環形状を有する光透過性シート(フィルム)と、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とから構成される。接着層は、例えば紫外線硬化樹脂または感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)からなる。光透過層5の厚さは、好ましくは10μm〜177μmの範囲内から選ばれ、例えば100μmに選ばれる。このような薄い光透過層5と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
光透過性シートは、記録および/または再生に用いられるレーザ光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えばポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))が挙げられる。
また、光透過性シートの厚さは、好ましくは0.3mm以下に選ばれ、より好ましくは3〜177μmの範囲内から選ばれる。また、光透過層5の内径(直径)は、例えば22.7mmに選ばれる。
光記録媒体の製造方法
次に、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の製造方法について説明する。
(基板の成形工程)
まず、一主面に凹凸が形成された基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いることができる。
(金属膜の成膜工程)
次に、基板1を、例えばTiまたはTiを主成分とする金属材料からなるターゲットが備えられた真空チャンバ内に搬送し、真空チャンバ内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバ内にプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、基板1上に金属膜2を成膜する。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.1〜0.6Pa
投入電力:1〜3kW
ガス種:Arガス
ガス流量:10〜40sccm
(酸化物膜の成膜工程)
次に、基板1を、例えばGeからなるターゲットが備えられた真空チャンバ内に搬送し、真空チャンバ内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバ内にプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、基板1上に酸化物膜3を成膜する。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.1〜0.6Pa
投入電力:1〜3kW
ガス種:ArガスおよびO2ガス
Arガス流量:24sccm
2ガス流量:9sccm
(誘電体膜の成膜工程)
次に、基板1を、例えばSiからなるターゲットが備えられた真空チャンバ内に搬送し、真空チャンバ内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバ内にプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、基板1上に誘電体膜4を成膜する。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.1〜0.6Pa
投入電力:1〜4kW
ガス種:Arガスおよび窒素ガス
Arガス流量:50sccm
窒素ガス流量:37sccm
(光透過層の形成工程)
次に、円環形状の光透過性シートを、例えば、このシート一主面に予め均一に塗布された感圧性粘着剤(PSA)を用いて、基板1上の凹凸面11側に貼り合わせる。これにより、基板1上に形成された各膜を覆うように、光透過層5が形成される。
以上の工程により、図1に示す光記録媒体10が得られる。
この発明の第1の実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
金属膜2、酸化物膜3、誘電体膜4、光透過層5を基板1上に順次積層するだけで光記録媒体を形成できるので、単純な膜構成を有した高記録密度の光記録媒体10、すなわち、低廉な高記録密度の光記録媒体10を提供することができる。
無機記録膜6を構成する酸化物膜3の吸収係数kを、0.15≦k≦0.90の範囲に規定することで、記録再生特性に優れた光記録媒体10を提供することができる。
この第1の実施形態による光記録媒体10では、記録の際には金属膜2は記録前後でほとんど物理的特性が変化することはなく、酸化物膜3との界面での反応を促進する、いわば触媒的作用が生じる。記録後には、酸化物膜3の酸素が分離し、金属膜2の界面に酸素組成の多いGe層が形成される。こうして、酸化物膜3が光学定数の異なる保存安定性の高い安定な2層に分離し、再生光を照射した際に反射光量が変化し、良好な信号が得られる。
また、この第1の実施形態による光記録媒体10は、安定した記録感度の向上、記録特性の向上(ジッターの減少)を得ることができる。また、誘電体膜4としてZnS−SiO2を設けることで、記録信号のS/Nを向上し、良好な特性を得ることができる。
(2)第2の実施形態
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。
図2は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体10の一構成例を示す概略断面図である。この光記録媒体10は、基板1上に、無機記録膜6、第1の誘電体膜4a、第2の誘電体膜4b、光透過層5が順次積層された構成を有する。無機記録膜6は、基板1上に順次積層された金属膜2および酸化物膜3からなる。
金属膜2、第1の誘電体膜4aおよび第2の誘電体膜4b以外のことは、上述の第1の実施形態と同様であるので、以下では金属膜2、第1の誘電体膜4aおよび第2の誘電体膜4bについて説明する。
金属膜2は、Tiの酸化物またはTiを主成分とする材料の酸化物から構成される。Tiを主成分とする材料としては、例えばTiおよび添加物からなる材料を挙げることができる。Tiを主たる材料とすれば基本的に良好な記録特性を得ることができる。添加物は、光学特性、耐久性または記録感度などを向上させるためのものであり、このような添加物としては、例えばAl,Ag,Cu,Pd,Ge,Si,Sn,Ni,Fe,Mg,V,C,Ca,B,Cr,Nb,Zr,S,Se,Mn,Ga,Mo,W,Tb,Dy,Gd,Nd,Zn,Taを用いることができる。
この金属膜2の酸素の含有量は、好ましくは9原子%以上38原子%以下の範囲とされる。この金属膜2がTiSiを含有する場合には、Si組成が、好ましくは8原子%以上32原子%以下の範囲とされる。8原子%未満であると、ジッター値が規格値を越えてしまう。32原子%を越えると、記録感度が規格値を越えてしまう。
第1の誘電体膜4aは、例えばZnS−SiO2より構成される。この第1の誘電体膜4aの厚さは、好ましくは10nm以上58nm以下、より好ましくは23nm〜53nmの範囲とされる。膜厚を10nm以上にすることで、良好なジッターを得ることができる。例えば光記録媒体10がBD−Rである場合には、膜厚を10nm以上にすることで、BD−Rの規格であるジッター6.5%以下を満足することができる。一方、膜厚を58nm以下にすることで、良好な反射率を得ることができる。例えば光記録媒体10がBD−Rである場合には、膜厚を58nm以下にすることで、BD−Rの規格で要求される反射率12%以下を満足することができる。
また、膜厚を23nm以上にすることで、より良好なジッターを得ることができる。一方、膜厚を53nm以下にすることで、より良好な反射率を得ることができる。
第2の誘電体膜4bは、例えばSiNより構成される。この第2の誘電体膜4bの厚さは、好ましくは35nm以下の範囲から選ばれる。膜厚を35nm以下にすることで、良好なジッターを得ることができる。例えば光記録媒体10がBD−Rである場合には、膜厚を35nm以下にすることで、BD−Rの規格であるジッター6.5%以下を満足することができる。また、上述のように、第1の誘電体膜4aと第2の誘電体膜4bとを積層することで、変調度を大きくでき、且つ、C/N比を高くできる。
(3)第3の実施形態
光記録媒体の構成
この第3の実施形態による光記録媒体10は、上述の第1の実施形態と同様に、基板1上に、無機記録膜6、誘電体膜4、光透過層5が順次積層された構成を有する。基板1およびその上に積層された各層を構成する材料および厚さなどは、上述の第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
図3は、この発明の第3の実施形態による光記録媒体を示す平面図である。図3に示すように、この光記録媒体10の内周部には、リードイン領域12が設けられ、このリードイン領域12の外周側にユーザデータ領域13が設けられている。また、リードイン領域12には、識別情報記録領域であるBCA(Burst Cutting Area)14が設けられている。
ユーザデータ領域13は、ユーザが所望のデータを記録するための領域である。リードイン領域12は、例えば識別情報(ID)、暗号鍵および複合鍵などの情報を記録するための領域であり、これらの情報は、光記録媒体10の製造時に記録される。BCA14は、光記録媒体10の製造時に識別情報を記録するための領域である。識別情報は、各媒体に固有な情報であり、例えば、不正コピーの防止などを目的とするものである。
光記録媒体の製造方法
基板の成形工程から光透過層の形成工程までは、上述の第1の実施形態と同様であるので説明を省略し、以下では光透過層の形成工程の次工程である識別情報の記録工程について説明する。
まず、図4を参照しながら、識別情報の記録に用いられる記録装置について説明する。図4に示すように、この記録装置は、モータ21、光ピックアップ22および制御回路23を備える。
光ピックアップ22は、光記録媒体10に対してレーザ光24を照射して識別情報をバーコードとして記録するための光学系である。レーザ光24の波長は、ユーザデータの記録または再生に用いられるレーザ光とほぼ等しい波長とするこことが好ましい。例えば、光記録媒体10が波長405nmなどの青色レーザ光によりユーザデータの記録または再生が行われる媒体である場合には、光ピックアップ22のレーザ光22の波長を、波長350nm以上450nm以下の範囲に設定すること好ましい。この波長範囲のレーザを用いることで、ユーザデータの記録と同様の原理に基づき、識別情報に対応する記録マークを良好に無機記録膜6に記録することができる。
制御回路23は、記録装置全体を制御する。例えば、レーザ光24のフォーカス制御、光ピックアップ22の位置制御、モータ21の回転制御、識別情報の生成などを行う。モータ21は、図示を省略したターンテーブルに載置された光記録媒体10を回転させる。
次に、上述の記録装置を用いた識別情報の記録工程について説明する。
まず、光記録媒体10を、その光透過層5の側が光ピックアップ22に対向するようにして、図示を省略したターンテーブルに載置する。次に、モータ21を駆動して光記録媒体10を所定速度で回転させる。
そして、光ピックアップ22を光記録媒体10の内周部に設けられたBCA14まで移動させた後、光ピックアップ22を駆動させて、例えば識別情報に応じてパルス状に変調されたレーザ光を光透過層5側から照射する。これにより、無機記録膜6のうちレーザ光24が照射された部分では、酸化物膜3の酸素が分離して、酸素濃度が高い層が金属膜2の側に形成され、酸素濃度が低い層が誘電体膜4の側に形成される。その結果、識別情報に応じた記録マークが例えばバーコード状に形成され、識別情報がBCAに記録される。なお、この記録マークの形成に用いられるレーザ光の波長は、上述のように350nm〜450nmの範囲にすることが好ましい。以上により、目的とする光記録媒体10が得られる。
図5(a)は、BCAに形成された記録マークの一例を示す。図5(b)は、BCAに記録された識別情報を再生したときの再生信号の波形の一例を示す。なお、図5(a)において斜線を付した部分が記録マークを示し、この記録マークは、パルス状に変調されたレーザ光を照射することにより形成される。
図5(a)に示すように、識別情報は、バーコード状の縞模様としてBCAに記録される。また、記録マークの部分では反射率が低下するために、再生信号は、図5(b)に示すように、パルス状の波形となる。
この第3の実施形態では、例えば波長350nm〜450nmのレーザ光を用いて光記録媒体10のBCA14に識別情報を記録するので、ユーザデータの記録と同様の原理により識別情報を無機記録膜6に記録できる。したがって、識別情報の再生信号の乱れを抑制し、所望の再生信号を得ることができる。また、光透過層5の側からレーザ光を照射して基板1上の積層膜を溶融除去して識別情報を記録する場合と比べて、基板1の変形などによって引き起こされる信号の不具合を抑制することができる。また、積層膜の腐食を招く恐れが少ないので、優れた保存安定性を得ることができる。
(4)第4の実施形態
光記録媒体の構成
この第4の実施形態による光記録媒体10はBCA14を有し、このBCA14には識別情報が記録されている。この識別情報は、レーザ光を基板1側から照射することにより、基板1上に積層された積層膜を溶融除去することにより形成される。これ以外の光記録媒体10の構成に関しては上述の第3の実施形態と同様であるので説明を省略する。
光記録媒体の製造方法
基板の成形工程から光透過層の形成工程までは、上述の第3の実施形態と同様であるので説明を省略し、以下では光透過層の形成工程の次工程である識別情報の記録工程について説明する。また、識別情報の記録に用いられる記録装置は、光路長補償素子を光ピックアップ22に備える以外のことは上述の第3の実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、光ピックアップ22に備えられる光路長補償素子は、上述の第3の実施形態とは異なる基板1側からレーザ光を照射することを考慮して設けたものである。
まず、光記録媒体10を、その基板1の側が光ピックアップ22に対向するようにして、図示を省略したターンテーブルに載置する。次に、モータ21を駆動して光記録媒体10を所定速度で回転させる。
そして、光ピックアップ22を光記録媒体10の内周部に設けられたBCA14まで移動させた後、光ピックアップ22を駆動させて、例えば識別情報に応じてパルス状に変調されたレーザ光を基板1側から照射する。これにより、無機記録膜6のうちレーザ光24が照射された部分では、基板1上に積層された金属膜2、酸化物膜2、誘電体膜5が溶融除去される。その結果、識別情報に応じたマークが例えばバーコード状に形成され、識別情報がBCA14に記録される。
なお、レーザ光は、近赤外レーザ光または赤外レーザ光であることが好ましく、例えば波長800nmのレーザ光である。また、レーザ光照射時の光学ヘッドスキャンスピードを5m/s〜9m/s、レーザパワーを3400mW〜4000mWの範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで、記録マークエッジ部分における急激な反射率の上昇を抑制することができる。したがって、識別情報の再生信号のノイズを低減することができる。
この第4の実施形態では、ユーザデータの記録再生時とは異なる基板1側からレーザ光をBCA14に照射して識別情報を記録するため、光透過層5の側からレーザ光を照射した場合とは光吸収特性などが異なるので、マークの境界部分に変形が生じることを抑制きる、BCA14の内部に積層膜の一部が残留することを抑制できる、基板1の変形を抑制できるなどの利点を得ることができる。すなわち、再生信号の乱れを抑制し、所望の再生信号を得ることができる。
また、金属膜2に直接レーザ光を照射できるので、基板1上の積層膜を効果的に破壊除去できる。なお、光透過層5側からレーザ光を照射した場合には、酸化物膜3での吸収発熱などの影響で熱が拡散するために、基板1上の積層膜をきれいに破壊除去できないと考えられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、上述の実施形態と対応する部分には同一の符号を付す。
本発明の実施例として、ブルーレイディスクの光学系である、開口数0.85の2群対物レンズと波長405nmの青紫色半導体レーザ光源とを用いた光ディスク記録再生装置に合わせて設計した光記録媒体10について示す。
実施例1〜6は、第1の実施形態に対応する実施例である。実施例7〜14は、第2の実施形態に対応する実施例である。実施例15〜16は、第3の実施形態に対応する実施例である。実施例17〜36は、第4の実施形態に対応する実施例である。
まず、第1の実施形態に対応する実施例1〜6について以下の検討の順序で説明する。
(1−1)光記録媒体の膜構成の検討
(1−2)酸化物膜の酸素組成の検討
(1−3)酸化物膜の膜厚の検討
(1−4)誘電体膜の膜厚の検討
(1−1)膜構成の検討
まず、C/N、変調度および反射率に基づき、光記録媒体10の膜構成について検討した。
実施例1
図6は、実施例1による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。なお、図6においては、基板1に設けられたイングルーブ11Gおよびオングルーブ11Lの図示を省略している。
まず、射出成形法により、一主面にイングルーブ11Gおよびオングルーブ11Lが設けられた基板1を成形した。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂を用いた。また、イングルーブ・オングルーブのピッチ、すなわちトラックピッチは、0.32μm(BD仕様)とし、イングルーブ11Gの深さを20nmとし、オングルーブ11Lをウォブル(蛇行)させてアドレス情報を付加した。
次に、成膜装置(Unaxis社製、商品名:Cube)を用いて、Ti膜2、GeO膜3、SiN膜4を基板1上に順次積膜した。なお、ターゲットサイズは、直径φ200mmとした。以下、成膜装置による各層の成膜工程について順次説明する。
まず、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスを導入しながら、Tiターゲットをスパッタリングして、膜厚30nmのTi膜2を基板1上に成膜した。なお、成膜時におけるArガス流量を24sccmとし、スパッタパワーを3.0kWとした。
次に、大気暴露せず別の真空チャンバに搬送し、真空チャンバ内にArガスとO2ガスとを導入しながら、Geターゲットを反応性スパッタリングして、膜厚20nmのGeO膜3を成膜した。なお、成膜時におけるArガス流量を24sccm、O2ガス流量を9sccm、スパッタパワーを2kWとした。
次に、大気暴露せず別の真空チャンバに搬送し、真空チャンバ内にArガスとN2ガスとを導入しながら、Siターゲットを反応性スパッタリングして、膜厚60nmのSiN膜4をGeO膜3上に成膜した。なお、成膜時におけるArガス流量を50sccm、N2ガス流量を37sccm、スパッタパワーを4kWとした。また、このSiN膜4の組成を原子比で3:4、屈折率を2.0、吸収係数を0とした。
次に、円環形状のポリカーボネートシートを、このシート一主面に予め塗布されたPSAにより基板1上に貼り合わせて、厚さ0.1mmの光透過層5を形成した。以上により、目的とする光記録媒体10が得られた。
次に、上述のようにして得られた光記録媒体10のGeO膜3の酸素組成を調べるために、光記録媒体10の光透過層5を剥離し、記録領域から2cm×2cmのエリアを切り取り、分析用サンプルを得た。次に、上述のようにして得られた分析用サンプルの酸素組成をRBS(Rutherford Backscattering)分析法により測定した。その結果、GeO膜の組成比(原子数比)は、1:1.7であることが分かった。なお、測定装置としては、ソニー株式会社内製の装置を用いた。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のGeO膜3の吸収係数を調べるために、分析用のサンプルを以下のようにして作製した。
すなわち、上述の各光記録媒体10のGeO膜3の成膜工程と同様の条件において、2cm×2cmのSiウェーハ上にGeO膜を100nm程度成膜して、分析用のサンプルを得た。
次に、上述のようにして得られた分析用サンプルの410nmの波長における吸収係数を、エリプソメータにより測定した。その結果、GeO膜の吸収係数は、0.40であることが分かった。なお、エリプソメータとしては、ルドルフ社製のAuto EL-462P17を用いた。
なお、実際の光記録媒体10の構成であっても、光記録媒体10から光透過層5を剥離し、エリプソメータで測定し、各層の膜厚および組成を別途分析して、各層の光学定数を換算することにより、GeO膜3の吸収係数を求めることができる。
次に、上述のようにして得られた光記録媒体10のキャリア対ノイズ比(以下、C/N)、変調度および反射率を測定した。
以下に、C/N、変調度および反射率の測定に用いた装置およびその測定条件について示す。
評価装置としては、パルステック製DDU−1000を用い、線速度5.28m/s、チャンネルビット長80.0nmで特性評価した。これらは、BDの23.3GB密度の規格に準拠したものである。また、変調方式は17PP、最短マーク長は2T(0.16μm)、最長マーク長は8T(0.64μm)とした。
C/N評価には、スペクトルアナライザ(Takeda Riken製、商品名:TR4171)を用いた。RBW(Resolution Band Width)の設定は30kHzとした。
8TマークのC/Nは、61dBという高い値を示した。また、2Tマークについても45dBを超える値を得ることができた。なお、およその実用レベルとしては、2TマークのC/Nが43dB以上、8TマークのC/Nは55dB以上であることが望まれる。
変調度は80%であり、きわめて良好な記録再生特性を示した。なお、この変調度の定義は、8Tマークのスペース部分の戻り光量をI8H、マーク部分の戻り光量をI8Lとしたとき、(I8H−I8L)/I8Hである。
反射率は10%であった。ここでは、詳細な説明を省略するが、Ti膜2に対してAlを添加する以外のことは上述の実施例1と同様にして、光記録媒体10を作成し、この光記録媒体10の反射率を上述の実施例1と同様にして測定した。その結果、Ti金属膜に対してAlを添加することで、反射率を20%以上の反射率を得ることができた。
上述の評価結果より、Ti膜2、GeO膜3、SiN膜4の3層のみの少ない膜総数で、良好なC/N、変調度および反射率を有する高記録密度に対応した光記録媒体10を実現できることが分かる。すなわち、安価で生産性に優れ、且つ、高記録密度に対応した光記録媒体10を提供することができることが分かる。
比較例1
上述した実施例1では、GeO膜3に接してTi膜2を設けた場合について説明したが、比較例1では、GeO膜3とTi膜2との間に、誘電体膜をさらに設けた場合について説明する。
図7は、比較例1による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。Ti膜2とGeO膜3との間に、膜厚5nmのSiN膜7を成膜する以外のことは上述の実施例1とすべて同様にして光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた光記録媒体10のC/N、変調度および反射率を測定した。なお、C/N、変調度および反射率の測定に用いた装置およびその測定条件については、上述の実施例1と同様である。
マーク長8TのC/Nは44dB、マーク長2TのC/Nは31dBとなり、記録特性が悪化した。この結果より、Ti膜2とGeO膜3とは実施例1におけるように互いに接している必要があると考えられる。すなわち、Ti膜2とGeO膜3とが界面で反応していることが記録原理であると考えられる。したがって、GeO膜3に隣接して活性の高い金属材料や金属酸化物等があった場合に良好な記録が行われるものであり、比較例1におけるように、GeO膜3の両面を安定な材料の誘電体膜4,6で保護した構成とする場合、良好な記録が行われないことが分かる。
膜厚5nmの誘電体膜7の介在では、熱的・光学的特性に与える影響は殆どないが、この誘電体膜7はTi膜2とGeO膜3とを隔離することになる。その結果、記録後の反射率が記録前よりも高い、いわゆるlow to high記録となり、変調度は−13%という実施例1に比して、非常に小さな値となった。
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて断面TEM観察により記録前後の膜厚分布を調べたところ、Ti膜2の膜厚に変化は見られず、GeO膜3が酸素richな層とGe−richな層とに分離しており、Ti膜2側に酸素richな層が形成されていることが分かった。したがって、本発明は、金属を酸化させることを記録原理とする上述の特許文献1に記載のものとは全く異なる、新規の記録原理を用いるものである。
実施例2
図8は、実施例2による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。金属膜2としてAl膜を用い、誘電体膜4であるSiN膜の厚さを20nmとする以外のことは上述の実施例1と同様にして光記録媒体10を得た。
この実施例2において、SiN膜4の膜厚を実施例1の場合より薄くしたのは、光学的理由による。すなわち、金属膜2として用いたAlは、Tiとは光学定数が大きく異なるためにSiNによる多重干渉の効果が違うため、SiN膜4の膜厚の最適化により所望の反射率が得られるよう調整したためである。
次に、上述のようにして得られた光記録媒体10のC/Nおよび反射率を評価した。なお、C/Nおよび反射率の測定に用いた装置およびその測定条件については、上述の実施例1と同様である。
この実施例2の光記録媒体10は、記録マークの戻り光は記録前よりも高くなった。いわゆるlow to high記録である。また、8TのC/Nは、55dBであり、2TのC/Nも42dBであり、記録特性自体は良好であった。
実施例2の光記録媒体10は、BDの規格を満たさないが、高密度記録を実現できる。したがって、BDの規格によることがない光記録媒体10として充分使用可能であり、また、製造条件の選定によってBDの規格にあわせることも可能であることは、充分推測できるものである。
また、実施例2の光記録媒体10では、金属膜2としてAl膜を用いることによって、耐久性を向上することができた。また、実施例2の光記録媒体10は、金属膜2、酸化物膜3、誘電体膜4の3層のみの構成で高密度記録を実現できるという点でも、また、SiN膜4の膜厚が薄いという点でも、工業的に有利な光記録媒体10である。
実施例3
図9は、実施例3による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。Alと希土類金属であるGdとの合金であるAlGd合金により金属膜2を形成し、そのAlGdの組成を組成比(原子数比)Al:Gdで7:3とする以外のことは上述の実施例2とすべて同様にして光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた光記録媒体10のC/N、変調度および反射率を評価した。なお、C/N、変調度および反射率の測定に用いた装置およびその測定条件については、上述の実施例1と同様である。
この実施例3では、記録後の反射率が記録前よりも低い、いわゆるhigh to low記録になった。記録前の反射率は約10%、変調度は50%であった。Alを用いて、光学的にhigh to low記録である必要がある場合は、このように、添加元素を加えることが有効であることがわかる。
希土類金属は、酸化されやすい材料であり、また、熱伝導率が低いが、希土類金属をAlと合金化することにより記録感度を調整することができるものである。希土類金属としては、Gdの他にTb,Dy,Ndが上げられるが、これらの特性は非常に類似しており、この実施例3において、これらの希土類金属を用いてもほぼ同じ特性が得られる。
また、酸化されやすい他の材料としては、Fe,Mg,V,Ca,B,Nb,Zr,S,Se,Mn,Ga,Mo,Wがあげられ、これらの材料を用いても同様の効果が得られる。これらは熱伝導率を下げて記録感度を向上させる効果があり、かつ、材料によっては耐久性の向上に寄与する。また、AlまたはTiからなる金属膜2の耐久性向上のための添加物としては、Cu,Pd,Si,Ni,C,Cr,などが有効である。
(1−2)酸化物膜の酸素組成の検討
次に、酸化物膜3の酸素組成を変えて、酸化物膜3の酸素組成について検討した。
実施例4
GeO膜3の酸素組成を変える以外のことは上述の実施例1とすべて同様にして、複数の光記録媒体10を得た。なお、GeO膜3の成膜工程では、酸素ガス流量を6sccm〜9sccmの範囲で変化させた。また、GeO膜3の膜厚が20nmになるようにスパッタ時間を適宜調整した。
そして、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のC/Nを測定した。なお、C/Nの測定に用いた装置およびその測定条件については、上述の実施例1と同様である。
また、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のGeO膜3の酸素組成を調べるために、光記録媒体10の光透過層5を剥離し、記録領域から2cm×2cmのエリアを切り取り、分析用サンプルを得た。次に、上述のようにして得られた分析用サンプルの酸素組成をRBS(Rutherford Backscattering)分析法により測定した。その結果、GeO膜の組成比(原子数比)は、1:1.7であることが分かった。なお、測定装置としては、ソニー株式会社内製の装置を用いた。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のGeO膜3の吸収係数を調べるために、分析用のサンプルを以下のようにして作製した。
すなわち、上述の各光記録媒体10のGeO膜3の成膜工程と同様の条件において、2cm×2cmのSiウェーハ上にGeO膜を100nm程度成膜して、分析用の複数のサンプルを得た。
次に、上述のようにして得られた分析用サンプルの410nmの波長における吸収係数を、エリプソメータにより測定した。なお、エリプソメータとしては、ルドルフ社製のAuto EL-462P17を用いた。
なお、実際の光記録媒体10の構成であっても、光記録媒体10から光透過層5を剥離し、エリプソメータで測定し、各層の膜厚および組成を別途分析して、各層の光学定数を換算することにより、GeO膜3の吸収係数を求めることができる。
そして、上述のようにして測定されたC/N、酸素組成および吸収係数に基づき、図10に示すグラフを作成した。図10は、酸素組成および吸収係数と、C/Nとの関係を示すグラフである。横軸が酸素組成および吸収係数を示し、縦軸がC/Nを示す。一般に、吸収係数kと酸素組成xの関係は材料や相が同一であれば一意に決定されるものである。
図10から以下のことが分かる。
まず、変調度に着目すると、吸収係数kが0.2未満になると変調度が急激に低下し、
吸収係数kが0.9を越える変調度が40%以下となってしまう。
次に、2TのC/Nに着目すると、吸収係数kが0.15未満になるとC/Nが低下し、0.9を越えるとC/Nが40dB以下になってしまう。
また、ここでは詳細な説明は省略するが、吸収係数が0.15未満になると、急激に記録感度が悪化し、情報信号の記録を行うことができなくなった。これは、吸収が十分でなかったことと、酸素が多く安定な組成であるためと考えられる。
以上の点を考慮すると、GeO膜3の吸収係数kの範囲は、好ましくは0.15以上0.90、より好ましくは0.20以上0.70以下、更により好ましくは0.25以上0.6以下の範囲である。
また、GeO膜3の酸素濃度の範囲は、好ましくは0.9以上2.0以下、より好ましくは1.2以上1.9以下、更により好ましくは1.4以上1.8以下の範囲である。
(1−3)酸化物膜の膜厚の検討
次に、酸化物膜3の膜厚を変えて、酸化物膜3の膜厚について検討した。
実施例5
GeO膜3の膜厚を変化させる以外のことは、上述の実施例1と同様にして複数の光記録媒体10を得た。そして、このようにして得られた光記録媒体10のC/Nおよび変調度を測定した。なお、C/Nおよび変調度の測定に用いた装置およびその測定条件については、上述の実施例1と同様である。
図11は、GeO膜3の膜厚と、C/Nおよび変調度との関係を示すグラフである。図11から以下のことが分かる。すなわち、GeO膜3の膜厚が20nm程度の場合に、変調度および8T、2Tの各C/Nが最も高く、GeO膜3の膜厚が20nmより厚くまたは薄くなると、変調度および8T、2Tの各C/Nが低下する。
また、GeO膜3の膜厚が10nm未満になると、変調度が40%を下回るとともに、2TのC/Nが40dB未満となり、記録特性が劣化してくる。また、2TのC/Nは、膜厚35nmまでは40dB以上である。8TのC/Nは、測定した全膜厚範囲で50dB以上である。
以上の点を考慮すると、GeO膜3の膜厚は、好ましくは10nm以上35nm以下の範囲であり、最も好ましくは20nmであることが分かる。
(1−4)誘電体の膜厚の検討
次に、誘電体膜4の膜厚を変えて、誘電体膜4の膜厚について検討した。
実施例6
SiN膜4を10nmとする以外のことは、上述の実施例2とすべて同様にして光記録媒体10を得た。そして、この光記録媒体10のC/Nを測定した。なお、C/Nの測定に用いた装置およびその測定条件については、上述の実施例1と同様である。その結果、記録ノイズが大きく上昇し、8TのC/Nが40dB程度に低下した。これはSiN膜4の剛性が不足したためと考えられる。したがって、SiN膜4の膜厚は、10nm以上であることが好ましい。
また、このSiN膜4は、GeO膜3の保護膜としても機能しているため、保護の観点からはなるべく厚い方が好ましいが、量産性の観点からは100nm以下であることが好ましい。また、このような膜厚範囲であれば、実施例6と同様の効果が得られる。
但し、最適な誘電体膜4の膜厚は、金属膜2の材料、誘電体膜4の材料によって変わるものであり、一意的には決定されない。例えば実施例1の場合は、60nmが最適膜厚であり、実施例2の場合には、20nmが最適膜厚であった。更に、誘電体膜4がSiO2である場合、屈折率が基板1や光透過層5とほぼ同じであるため、光学的には膜厚はどの厚さでも構わず、耐久性、量産性、記録特性の観点のみから最適化することが可能である。
また、誘電体膜4は、単一層である必要は無く、たとえばSiN/SiO2やZnS−SiO2/SiNのように2層以上に分けることも可能であり、この場合にも実施例6と同様の効果を得ることができる。
次に、この発明の第2の実施形態に対応する実施例7〜14について以下の検討の順序で説明する。
(2−1)金属膜のSi組成の検討
(2−2)第1および第2の誘電体膜の膜厚の検討
(2−3)誘電体膜の層数の検討
(2−4)酸化物膜の光吸収係数の検討
(2−5)金属膜および酸化物膜の膜厚の検討
(2−6)金属膜の酸素濃度の検討
(2−7)グルーブ深さおよびウォブル振幅の検討
いずれの実施例も、BD(ブルーレイディスク)の光記録媒体10であり、金属膜2の酸素濃度を21原子%とした。
また、その光学系は、開口数0.85の2群対物レンズと波長405nmの青紫色半導体レーザ光源を用いた光ディスク記録再生装置による。
評価装置はパルステック工業株式会社製のBDディスク検査機、ODU−1000を用いた。光源の波長は405.2nmである。
再生信号のC/N測定は(独)Rohde-Schwartz社製のスペクトラムアナライザー、FSP3を用いて測定した。
また、ジッター測定はパルステック工業株式会社製のイコライザーボードを通して、横河電機株式会社製のタイムインターバルアナライザー、TA720を用いて測定した。
その他、振幅、変調度などの測定にはテクトロニクス社製のデジタルオシロスコープ、TDS7104を用いた。
記録の線速度は9.83m/s(2倍速記録)、再生時の線速度は4.92m/s(1倍速)、チャンネルビット長は74.50nm(直径12cmの光ディスクに25GBの記録密度)で行った。
変調方式は17PPであり、最短マークである2Tマークのマーク長は0.149μm、8Tマークのマーク長は0.596μmである。トラックピッチは、0.32μmである。
(2−1)金属膜のSi組成の検討
まず、金属膜2の組成を変えて、金属膜2の組成について検討した。
実施例7
図12は、実施例7による光記録媒体10の構成を示す模式的断面図である。
まず、射出成形により、厚さ1.1mmのPC基板1を作成した。なお、図示を省略するが、このPC基板1上には、イングルーブ11Gおよびオングルーブ11Lを有する凹凸面11を形成した。このイングルーブ11Gの深さは21nmとし、トラックピッチは0.32μmとした。
次に、成膜装置(Unaxis社製、商品名:Sprinter)を用いて、膜厚25nmのTiSiO膜2、膜厚22nmのGeO膜3、膜厚45nmのZnS−SiO24a、膜厚10nmのSiN膜4bを基板1上に順次成膜した。その後、感圧性粘着材(PSA)によりポリカーボネートシートを基板1の凹凸面11側に貼り合せて、SiN膜4b上に光透過層5を形成した。この光透過層5の厚さは、PSAおよびポリカーボネートシートを含めて100μmとした。以上により、目的とする光記録媒体10を得た。
成膜手順は以下の通りである。
まず、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスおよび酸素ガスを導入しながら、TiSiターゲットをスパッタリングして、膜厚25nmのTiSiO膜2を基板1上に成膜した。このTiSiターゲット中のSiの組成比を20原子%とし、このTiSiO膜2における酸素組成を21原子%とした。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.2Pa
投入電力:3kW
Arガス流量:30sccm
酸素ガス流量:5sccm
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスおよびO2ガスを導入しながら、Geターゲットを反応性スパッタリングして、膜厚22nmのGeO膜3をTiSi膜2上に成膜した。なお、GeO膜3の酸素組成は、吸収係数kが0.4となる組成とした。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.2Pa
投入電力:2kW
Arガス流量:30sccm
酸素ガス:46sccm
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にプロセスガスを導入しながら、ZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚45nmのZnS−SiO2膜4aをGeO膜3上に成膜した。ZnS−SiO2膜4aの組成比(原子比)ZnS:SiO2が80:20となるようにした。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.1Pa
投入電力:1kW
Arガス流量:6sccm
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスおよびN2プロセスガスを導入しながら、Siターゲットをスパッタリングして、膜厚10nmのSi34膜4bを基板1上に成膜した。
この成膜工程における成膜条件の一例を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.3Pa
投入電力:4kW
Arガス流量:50sccm
2ガス流量:37sccm
次に、TiSiO膜2の組成を変える以外のことは、上述の光記録媒体10とすべて同様にして、複数の光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のジッターおよびパワーPw(記録感度)を測定した。
図13は、TiSiO膜のSiの組成と、ジッターおよびパワーPwとの関係を示すグラフである。図13から以下のことが分かる。すなわち、BDにおける光記録媒体(BD−R)10の規格によれば、2倍速記録、記録密度25GBにおいてジッターが6.5%以下、記録感度が7.0mWが要求されるが、この実施例7では、TiSiO膜2の組成を選択することで、BD規格を満たせることが分かる。
具体的には、BDのジッターの規格を満たすためには、TiSiのSi組成を8原子%以上とし、記録感度を満たすのためには32原子%以下とすれば良いことが分かる。すなわち、Siの組成は8原子%〜32原子%とすることで、良好な特性を有するBD−Rを作製できることが分かる。
なお、上述の構成において、Si34によるSiN膜4bは、ZnS−SiO2膜4aと、光透過層5のPSAとが反応して劣化することを防止するための隔離層として設けられるものである。このため、このSiN膜4bの膜厚は、この隔離層としての機能を有する範囲でできるだけ薄くすることが好ましい。ここでは、詳細な説明は省略するが、このSiN膜4bの厚さを4nmまで薄くしても、記録感度、ジッター、共に全く変化がなく、耐久性にも問題がないことを確認した。
このSiN膜4bは、上述のPSAとの反応のおそれがない場合、例えば光透過層5をPSAを用いずに、UVレジンにより形成するときには、あるいは短時間利用等の条件下においては、その形成を省略することができる。
(2−2)第1および第2の誘電体膜の膜厚の検討
次に、第1の誘電体膜4aおよび第2の誘電体膜4bの膜厚を変えて、第1の誘電体膜4aおよび第2の誘電体膜4bの膜厚について検討した。
実施例8
ZnS−SiO2膜4aの膜厚T1を10nm〜43nmの範囲で変化させ、SiN膜4bの膜厚T2を0〜35nmの範囲で変化させる以外のことは、上述の実施例7とすべて同様にして複数の光記録媒体10を得た。
比較例2
ZnS−SiO2膜4aを成膜せず(膜厚T1=0)、SiN膜4bの膜厚を60nmとする以外のことは上述の実施例7とすべて同様にして光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた実施例8および比較例3の記録マークの前端側のジッター(Leading jitter)と後端側のジッター(Trailing jitter)を測定した。
図14に、記録マークの前端側および後端側のジッターとの測定結果を示す。図14から以下のことが分かる。すなわち、ZnS−SiO2膜4aの膜厚を10nm〜43nmの範囲とし、SiN膜4bの膜厚を0〜35nmの範囲とするとき、記録マークの前端側および後端側のジッターを6.5%以下とすることができることが分かる。
ZnS−SiO2膜4aの膜厚に対しては非常に広い膜厚範囲でジッターが6.5%を下回っており、良好な記録ができており、特に23nm以上の膜厚で特性が安定していることがわかる。したがって、ZnS−SiO2膜4aの膜厚は、好ましくは10nm以上、より好ましくは23nm以上の範囲とする。また、上限については、図14ではZnS−SiO2膜4aとSiN膜4bの合計膜厚が約50nmになるようにしたため、限定される数値があたえられない。上限は、反射率によって決定される。つまり、ZnS−SiO2膜4aが厚すぎると反射率が低下することにより限度が与えられる。例えば、BD−Rの単層メディアの規格では反射率は12%以上と規定されている。この実施例の形態で、SiN膜の膜厚を4nmとしたとき、ZnS−SiO2膜4aが丁度58nmの時に12%の反射率となり、58nm以上の膜厚ではBD−Rの規格を満たさなくなった。従って、ZnS−SiO2膜4aの上限は好ましくは58nm以下である。しかし、反射率の制限がより緩い光ディスク規格が策定されればそれに適用する場合や、BD−Rであっても2層(Dual Layer)規格であれば反射率は4%以上であれば良いため、58nmの膜厚を超えても本発明の記録特性の効果は何ら損なわれることは無く有効なものである。
そして、このように、ZnS−SiO2膜4aの膜厚を広い範囲から選定することができることから、この膜厚は、反射率の面から、光学的に最適な膜厚を選ぶことができる。
一方、ZnS−SiO2膜4aを形成することなく、SiN膜4bのみとするときは、ジッターが、0.5%低下することから、規格の6.5%を満たす範囲が狭くなる。つまり、通常の膜厚範囲であれば、膜厚によらずZnS−SiO2を誘電体膜4として用いることが記録再生特性向上に有効である。
(2−3)誘電体膜の層数についての検討
次に、誘電体膜4の層数を変えて、誘電体膜4の層数について検討した。
実施例9
図15は、実施例9による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。
TiSiO膜2におけるSiの含有率を10原子%、TiSiO膜2の膜厚を30nm、GeO膜3の膜厚を20nm、ZnS−SiO2膜4aの膜厚を30nmとする以外のことは、上述の実施例7とすべて同様にして光記録媒体10を得た。
実施例10
図16は、実施例10による光記録媒体の構成を模式的に示す断面図である。
ZnS−SiO2膜4aの成膜を省略し、膜厚60nmのSiN膜4bのみを誘電体膜として成膜する以外のことは、上述の実施例7とすべて同様にして光記録媒体10を得た。
なお、上述の実施例9および10において、その反射率は共に15%程度とし、GeO膜3、TiSiO膜2への光の吸収量はほぼ同じになるように設計した。
次に、上述のようにして得られた実施例9および10の光記録媒体10に対して記録パワーPwを変化させて情報信号を記録した後、C/Nおよび変調度を測定した。
図17、図18にそれぞれ、実施例9、10の光記録媒体10における記録感度(記録パワーPw)とC/Nおよび変調度との関係を示す。
図17および図18から以下のことが分かる。すなわち、ZnS−SiO2膜4aとSiN膜4bとを形成した場合には、SiN膜4bのみを形成した場合に比して、その変調度を大きくでき、かつ、C/Nを高くできることが分かる。
また、金属膜2のTiSiに対する他の添加物は、耐久性、記録特性を向上するものとして、Cu,Pd,Ni,C,Cr,Fe,Mg,V,Ca,B,Nb,Zr,S,Se,Mn,Ga,Mo,Tb,Dy,Ndが挙げられる。
(2−4)酸化物膜の光吸収係数についての検討
酸化物膜3の吸収係数を変えて、酸化物膜3の吸収係数について検討を行った。
実施例11
GeO膜3の酸素濃度を変化させる以外のことは上述の実施例7とすべて同様にして複数の光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10それぞれの光吸収係数およびジッターを測定した。なお、このジッター測定においては、上述のように、記録線速度は2×(9.83m/s)とした。
図19に、酸素濃度および吸収係数に対するジッターの変化を示す。図19から以下のことが分かる。GeO膜の酸素濃度および吸収係数には最適範囲が存在することがわかる。例えば、BD−Rのジッター規格値である6.5%以下を満たすためには、吸収係数kを0.15≦k≦0.90の範囲にすることが好ましいことが分かる。したがって、GeO膜3の吸収係数kが0.15≦k≦0.90となるように、GeO膜3の酸素濃度を調整することにより、良好な特性を有する光記録媒体10を得ることができる。
(2−5)金属膜および酸化物膜の膜厚の検討
次に、金属膜2および酸化物膜3の膜厚を変えて、金属膜2および酸化物膜3の膜厚について検討を行った。
実施例12
図20に、TiSiO膜2およびGeO膜3の膜厚、ならびにジッター値の測定結果を示す。TiSiO膜2およびGeO膜3の膜厚を、図20に示すように変える以外のことは上述の実施例7とすべて同様にして複数の光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10に対して評価装置により情報信号を記録した。そして、記録マークの前端側および後端側のジッターを測定した。なお、膜厚によって記録膜の熱特性が変わり、最適な記録パルスの形状(幅、タイミング、パワー)が変わることから、それぞれの光記録媒体10に応じて記録パルス形状を最適化して、最も良いジッターのみに注目した。このジッターが、図20には示されている。
図20から以下のことが分かる。
金属膜2の膜厚範囲を20nm以上27nm以下、また酸化物膜3の膜厚範囲を16nm以上22.5nm以下にすることで、BD−Rのジッター規格値である6.5%をはるかに下回る値とすることができる、すなわち、膜厚に対するマージンを非常に大きくできることが分かる。また、酸化物膜は、その吸収係数が低ければ膜厚がより厚くても同様の結果を得ることができ、35nm以下であれば良好な結果が得られることは実施例5に示したとおりである。
(2−6)金属膜の酸素濃度の検討
次に、金属膜2の酸素濃度を変えて、金属膜2の酸素濃度について検討した。
実施例13
Arガスと酸素ガスを真空チャンバ内に導入しながら、TiSi合金のターゲットを反応性スパッタリングして、TiSiO膜2を基板1上に成膜した。なお、TiSiO膜2のTiSi合金の組成は、Si組成を20原子%とし、各サンプル毎に真空チャンバ内に導入する酸素ガス流量を調整して、TiSiO膜2中の酸素濃度を変えた。そして、このようにして成膜されたTiSiO膜2上に、吸収係数k=0.4を有するGeO膜3を成膜した。これ以外のことは上述の実施例1とすべて同様にして複数の光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10に対して評価装置により情報信号を記録した後、BD評価装置によってジッター値を測定した。この評価装置は、パルステック工業(株)製ODU−1000(BD仕様)である。光源の波長は、405.2nm、対物レンズの開口数N.A.は0.85である。
記録密度は、直径12cmのディスクに25GB容量相当とし、記録線速度は2倍速記録の規格に相当する9.83m/sとした。
この記録密度では、リミットイコライザーを通したジッターレベルとして6.5%以下で、記録媒体として良好な特性を有するという判断の指標とすることができる。
そして、上述のようにして測定された各光記録媒体10のジッターおよび酸素濃度に基づき、図21に示すグラフを作成した。
図21は、金属膜の酸素濃度とジッター特性との関係を示すグラフである。図21から以下のことが分かる。すなわち、金属膜2をTiSiの酸化物により構成することで、ジッターを改善できることが分かる。これはノイズ成分の低下およびGeO膜3の反応性の向上が原因と考えられる。また、酸素濃度が高すぎるとジッターが悪くなるが、これはTiSiの吸収係数が低下し感度が徐々に悪くなり、記録時の温度分布が理想的ではなくなることが原因と考えられる。
したがって、酸素を金属膜2に含有させることは光記録媒体10の特性改善に非常に有効であり、また、その酸素濃度には最適な範囲が存在し、例えば酸素濃度を9原子%以上38原子%の範囲にすることで、BDの規格値であるジッター6.5%以下にできる。
この場合においても、SiのTiに対する組成比としては、8原子%以上32原子%以下の範囲が良好である。
(2−7)グルーブ深さおよびウォブル振幅の検討
次に、グルーブの深さが異なる複数の光記録媒体10を作製して、グルーブ深さについての検討を行った。
実施例14
図22は、実施例14による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。まず、射出成形法により、一主面にイングルーブ11Gおよびオングルーブ11Lが設けられた基板を、イングルーブ11Gの深さを変えて複数成形した。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂を用いた。また、イングルーブ・オングルーブのピッチ、すなわちトラックピッチは、0.32μm(BD仕様)とした。
次に、成膜装置(Unaxis社製、商品名:Sprinter)を用いて、TiSi膜2、GeO膜3、ZnS−SiO2膜4a、SiN膜4bを基板1上に順次成膜した。それぞれの膜厚は、TiSi膜2の膜厚を25nm、GeO膜3の膜厚を25nm、ZnS−SiO2膜4aの膜厚を45nm、SiN膜4bの膜厚を10nmとした。また、TiSiの組成は、Siが27原子%とした。
その後、感圧性粘着材(PSA)によりポリカーボネートシートを基板1の凹凸面11に貼り合せて、SiN膜4b上に光透過層5を形成した。この光透過層5の厚さは、PSAおよびポリカーボネートシートを含めて100μmとした。以上により、目的とする複数の光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のジッター値を評価した。なお、評価装置としては、パルステック工業株式会社製、ODU−1000(ブルーレイディスク仕様)を用いた。この評価装置の光源の波長は405nmであり、対物レンズのNAは0.85である。
なお、情報信号の記録再生は、25GB密度、1倍速(4.92m/s)で行った。また、情報信号を連続して記録し、クロストークの影響がある状態にして10トラックを再生した。
そして、上述のようにして測定されたジッターに基づき、図23に示すグラフを作成した。図23は、イングルーブの深さとジッターとの関係を示すグラフである。なお、図23において、エラーバーの中心付近の点がジッターの平均値、エラーバーの上端および下端がジッターのばらつきの範囲を示す。
図23から以下のことが分かる。すなわち、グルーブ深さが22nm以上ではトラックごとのジッターのばらつきが多くなり、平均ジッター値も若干悪化している。これに対して、21.5nm以下ではジッターのばらつきが抑えられ、平均ジッター値も良好であり、良好な記録特性が得られる。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のウォブルC/Nを測定した。そして、測定されたC/Nに基づき、図24に示すグラフを作成した。図24は、ウォブルC/Nとグルーブ深さとの関係を示すグラフである。
図24から以下のことが分かる。すなわち、グルーブ深さに対しての特性変化は緩やであるが、19nm以下になると徐々にC/Nが低下する。ブルーレイディスクのC/Nの規格では、最適パワーで記録後にC/Nが26dB以上確保されることとなっている。この実施例14の光記録媒体10では、最適パワーから10%高いパワーで記録してもほぼ26dBを満たしているが、グルーブ深さが18nmまで浅くなると、20dB強まで低下し、規格値よりも大幅にC/Nが下回るためにアドレス情報が読めなくなる恐れがある。したがって、グルーブ深さは18nm以上であることが望ましい。
次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10のうち、グルーブ深さ20nmを有するものについて、CTSを変化させたときのウォブル振幅とウォブルC/Nとの関係を調べた。情報信号の記録再生は、ブルーレイ評価装置により、オングルーブ(ランド)11Lに対して行った。
CTSは下記の式により定義される。
CTS=2(RON−RIN)/(RON+RIN
但し、RON:オングルーブ(ランド)11Lにトラッキングをかけたときのブルーレイ評価装置の戻り光量
IN:イングルーブ(グルーブ)11Gにトラッキングをかけたときのブルーレイ評価装置の戻り光量
図25に、CTSを変化させたときのウォブル振幅とウォブルC/Nとの関係を示す。
CTSはグルーブの幅のパラメータを表すものであり、記録グルーブの幅が広いほどCTSは大きくなる。なお、図25では、ブルーレイディスクの規格値である26dBを破線で示しており、システム耐性を高くとるためには、この破線で示される26dBよりもウォブル振幅を十分高い値とすることが好ましい。
図25から以下のことが分かる。すなわち、図25で規格値を下回っているのは、CTSが−0.012、−0.03と小さい場合に、高パワー(1.1xPwo)で記録したときのC/Nである。CTSに対しては、未記録の状態では殆ど差が見られないが(図25中、「■」参照)、高パワーで記録を行い、記録マークがグルーブ幅方向に広がったときに大きな差が現れる(図25中、「●」参照)。
最適パワー(1.0倍のパワー)での測定結果に着目すると(図25中、「○」参照)、CTSが−0.03以上の場合には、上述の規格範囲を満たすことが分かる。そして、1.1倍での測定結果に着目すると(図25中「●」参照)、CTSが−0.01の場合には、上述の規格範囲を満たすことが分かる。なお、OPCをとるときには、±10%で記録感度を見ることが推奨されているので、1.1倍のパワーで情報信号の記録を行った場合にも、規格値26dB以上であることが望まれる。以上により、CTSの値としては、好ましくは−0.03以上、より好ましくは−0.01以上である。
この挙動はブルーレイのリライタブルメディアには見られないものである。リライタブルメディアでは高パワーで記録した場合でも、横に広がったマークを隣のトラックを記録する際に消去・再記録するためである。本発明に代表されるメディアの場合、一度記録されたマークは消去されることが無いため、従来のリライタブルメディアとは異なるところに良好な条件があり、本発明はそれを明確に示すものである。ウォブル振幅に対しては、高パワーでの記録後のウォブルC/Nは大きな違いが見られない。ウォブルC/Nについては、CTSの最適化が重要なパラメータとなる。
次に、同様の光記録媒体10について、CTSを変化させたときのウォブル振幅とNWSとの関係を調べた。
NWSは下記の式により定義される。
NWS=Iwpp/Ipp
但し、Iwpp:トラッキングをかけたときのプッシュプル信号の振幅(ウォブル信号の振幅)
Ipp:トラッキングをかけずに案内溝を横切るときに発生するプッシュプル信号の振幅
図26に、CTSを変化させたときのウォブル振幅とNWS(Normalized Wobble Signal)の値との関係を示す。ブルーレイディスクの規格ではNWSは0.20以上0.55以下の範囲であり、図26では、この範囲を破線で示している。高パワーで記録した後もこの破線で示した0.20以上0.55以下の範囲にNWSが入っていることが好ましい。
図26によると、CTSが大きいほど、またウォブル振幅が大きいほどNWSが大きくなり、この図26の中に規格外となる点が存在している。NWSはCTSよりもウォブル振幅の依存性が大きく、また、NWSには最小値、最大値が設定されているために、良好な値を得るためにはウォブル振幅に良好な範囲が存在する。ウォブルC/Nを上げるためにCTSを大きくする場合は、ウォブル振幅は9nmから12nm、また、CTSが−0.01程度であれば11nmから13nmが好ましい。
これらを総合して、ウォブル振幅としては9nmから13nmが好ましい。
次に、第3の実施形態に対応する実施例15〜16について説明する。
(3)青色レーザによるBCAの形成方法の検討
次に、青色レーザによるBCAの形成方法について検討を行った。以下に、この検討内容について説明する。
実施例15
この実施例15の光記録媒体10は、TiSi膜2、GeO膜3、ZnS−SiO2膜4a、SiN膜4b、光透過層5を基板1上に順次積層した構成を有する。
以下、実施例15の光記録媒体10の製造方法について説明する。まず、射出成形法により、一主面にイングルーブ11Gおよびオングルーブ11Lが設けられた基板1を成形した。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂を用いた。また、トラックピッチを0.32μmとし、イングルーブ11Gの深さを21nmとし、オングルーブ11Lをウォブル(蛇行)させてアドレス情報を付加した。
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスを導入しながら、TiSiターゲットをスパッタリングして、膜厚27nmのTiSi膜2を基板1上に成膜した。このTiSi膜2におけるSiの組成比を27原子%とした。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.2Pa
投入電力:3kW
Arガス流量:30sccm
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスを導入しながら、Ge酸化物ターゲットをスパッタリングして、膜厚26nmのGeO膜3をTiSi膜2上に成膜した。なお、Ge酸化物ターゲットの酸素組成は、GeO膜3の吸収係数kが0.40となるように調整した。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.2Pa
投入電力:2kW
Arガス流量:30sccm
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスを導入しながら、ZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚45nmのZnS−SiO2膜4aをGeO膜3上に成膜した。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.1Pa
投入電力:1kW
Arガス流量:6sccm
次に、真空チャンバ内を真空引きした後、真空チャンバ内にArガスおよびN2ガスを導入しながら、Siターゲットをスパッタリングして、膜厚7nmのSiN膜4bを基板1上に成膜した。
この成膜工程における成膜条件を以下に示す。
真空到達度:5.0×10-5Pa
雰囲気:0.3Pa
投入電力:4kW
Arガス流量:50sccm
2ガス流量:37sccm
次に、円環形状のポリカーボネートシートを、このシート一主面に予め塗布された感圧性粘着材(PSA)により基板1上に貼り合わせて、厚さ0.1mmの光透過層5を形成した。
次に、波長405nmのレーザ光をパルス状に変調して、光透過層5の側からBCAに照射した。これにより、BCAにバーコード状の記録マークが形成された光記録媒体10を得た。なお、ビーム幅を約5μm、線速度を10m/s、レーザ照射パワーを160mW、1回転あたりのビーム送り量を2μmとした。
実施例16
次に、波長800nm帯のレーザ光を照射して記録マークを形成する以外のことは上述の実施例15とすべて同様にして、BCAにバーコードが形成された光記録媒体10を得た。
次に、上述のようにして得られた実施例15〜16のBCAに記録された信号を再生し、この再生信号を評価した。
図27(a)は、BCAに形成される記録マークのイメージを示す。図27(b)は、実施例15の再生信号の波形を示す。図27(c)は、実施例16の再生信号の波形を示す。なお、図27(b)および図27(c)では、実施例15および実施例16の比較を容易にするため微少なノイズの図示は省略している。
図27(b)および図27(c)を比較すると以下のことが分かる。すなわち、実施例16では、記録マークの境界部分に急激に反射率の高くなる領域があるのに対して、実施例15では、記録マークの境界部分に急激に反射率が高くなる領域がないことが分かる。これは、800nm帯のレーザでは波長依存性があるため、400nm帯での記録再生に最適化された光記録媒体10ではBCAに対する情報信号の記録が困難であるためと考えられる。また、図示は省略するが、実施例15では、BCA部の全体の信号レベルも比較的均一であった。
次に、第4の実施形態に対応する実施例17〜36について説明する。
(4)赤外レーザによるBCAの形成方法の検討
次に、赤外レーザによるBCAの形成方法について検討を行った。以下に、この検討内容について説明する。
実施例17〜21
まず、上述の実施例15とすべて同様にして複数の光記録媒体10を得た。次に、上述のようにして得られた複数の光記録媒体10ごとに光学ヘッドスキャンスピードを3m/s〜11m/sの範囲で変えて、出力パワー4000mW、波長810nmのレーザ光をパルス状に変調して、基板1側からBCAに照射した。これにより、TiSi膜2、GeO膜3、ZnS−SiO2膜4aおよびSiN膜4bを溶融除去され、BCAにバーコード状のマークが形成された複数の光記録媒体10を得た。なお、ビーム幅を約30μm、レーザ照射パワーを4000mW、1回転あたりのビーム送り量を10μmとした。
実施例22〜26
出力パワー3400mWにする以外のことは上述の実施例17〜21とすべて同様にして、BCAにバーコード状のマークが形成された複数の光記録媒体10を得た。
実施例27〜31
光透過層側からBCAにレーザ光を照射する以外のことは実施例17〜21とすべて同様にして、BCAにバーコード状のマークが形成された複数の光記録媒体10を得た。
実施例32〜36
光透過層側からBCAにレーザ光を照射する以外のことは実施例22〜26とすべて同様にして、BCAにバーコード状のマークが形成された複数の光記録媒体10を得た。
上述の実施例17〜36では、実用上の観点から、波長810nmの赤外レーザを用いたが、レーザ光の波長は適宜選択できるものであり、赤外レーザは、波長810nmのものに限定されるものではなく、例えば720nm〜2500nmの波長範囲のものを用いることができる。上述の実施例17〜36において波長810nmのレーザ光を用いたのは具体的には以下の理由による。すなわち、基板1上の積層膜を破壊除去することが可能なレーザパワーを、波長810nm程度以外のレーザでは得ることが困難である。すなわち、650nm帯や400nm帯のレーザではレーザパワーが不足であるため、積層膜を破壊除去することは困難である。
次に、上述のようにして得られた実施例17〜36のBCAに記録された信号を再生し、この再生信号を評価した。
図28は、実施例17〜21のBCAの再生信号の評価結果を示す。図29は、実施例22〜26の再生信号のBCAの評価結果を示す。図30は、実施例27〜31の再生信号のBCAの評価結果を示す。図31は、実施例32〜36の再生信号のBCAの評価結果を示す。図32は、実施例17〜21の再生信号を示す。図33は、実施例22〜26の再生信号を示す。図34は、実施例27〜31の再生信号を示す。図35は、実施例32〜36の再生信号を示す。なお、図28〜図31の評価結果の欄において、「○」は、BCA部の信号レベルが比較的均一で、且つ、マークの境界部分に急激に反射率が高くなる領域がない再生信号を示し、「×」は、BCA部の信号レベルが均一でなく、且つ、マークの境界部分に急激に反射率が高くなる領域がある再生信号を示している。また、図32〜図35のA〜Eの各図において、下部に示された信号波形は、上部に示された信号波形の一部を拡大したものである。A〜Eはそれぞれ、スキャンスピード3m/s〜11m/sにてBCAを形成した光記録媒体10の信号波形に対応する。
図28〜図31から、光透過層5側からレーザ光を照射した場合には、光学ヘッドスキャンスピードおよびレーザパワーに関わらず、BCA部の信号レベルが均一でなく、且つ、マークの境界部分に急激に反射率が高くなる領域があることが分かる。
これに対して、基板1側からレーザ光を照射した場合には、光学ヘッドスキャンスピードを5m/s〜9m/s、レーザパワーを3400mW〜4000mWの範囲とすることにより、BCA部の信号レベルが比較的均一で、且つ、マークの境界部分に急激に反射率が高くなる領域がないことが分かる。
上述したところから明らかなように、本発明によれば、反射率、感度、光学系等に合わせて、本発明の膜構成をもってすぐれた光記録媒体10が実現できる。
短波長、高開口数によるブルーレイ対応の高密度記録を行うBD−Rとしてもすぐれた特性の光記録媒体10を構成することができるものである。
そして、無機記録膜6の構成において、その層数を3層ないしは4層にとどめることができ、製造コストの低廉化を図ることができるものである。
また、その光透過層5は、実施例におけるように、PSA/樹脂シート構成としても、すぐれた特性を有することができるものであり、安定した保存性、耐久性にすぐれた光記録媒体10、例えばBD−Rを構成することができる。
上述したように、本発明構成によれば、記録特性、耐久性にすぐれた光記録媒体10が得られる。
また、金属膜2、酸化物膜3、誘電体膜4の3層というきわめて少ない膜層数で、良好な記録特性が得られることから、量産性にすぐれ、また、層数が少ないことから、不良品の発生率を低減できるなどコストの低減化を図ることができる。
このように、本発明においては、基本的には、上述した3層を設けることによって、良好な記録再生が良好に行われるが、使用態様、目的応じて反射率を更に上げる場合や、耐久性を上げるなどの理由により、この3層以外にも金属膜、誘電体膜を設けることもできる。
以上、この発明の第1〜第4の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の第1〜第4の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の第1〜第4の実施形態では、光透過性シートを基板に対して貼り合わせることにより光透過層5を形成する場合について説明したが、光透過層5を紫外線硬化樹脂により形成するようにしてもよい。この場合の光透過層5の形成方法としては、例えばスピンコート法が挙げられる。
また、上述の第1〜第4の実施形態では、金属膜3をTiから構成する場合について説明したが、Ti以外の光触媒効果を発現する金属材料などから金属膜3を構成しても、上述の第1〜第4の実施形態と同様に情報信号を記録可能な光記録媒体が得られると考えられる。
この発明の第1の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第2の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。 この発明の第3の実施形態による光記録媒体を示す平面図である。 この発明の第3の実施形態による光記録媒体に対する固有情報の記録に用いられる記録装置の構成を示すブロック図である。 図5(a)は、BCAに形成された記録マークの一例を示す略線図、図5(b)は、BCAに記録された固有情報を再生したときの再生信号の波形の一例を示す略線図である。 実施例1による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 比較例1による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 実施例2による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 実施例3による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 酸素組成および吸収係数と、C/Nとの関係を示すグラフである。 GeO膜3の膜厚と、C/Nおよび変調度との関係を示すグラフである。 実施例7による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 金属膜のSiの組成と、ジッターおよびパワーPwとの関係を示すグラフである。 記録マークの前端側および後端側のジッターとの測定結果を示す表である。 実施例9による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 実施例10による光記録媒体の構成を模式的に示す断面図である。 実施例9の光記録媒体における記録感度(記録パワーPw)に対するC/Nおよび変調度の依存性の測定結果を示すグラフである。 実施例の光記録媒体における記録感度(記録パワーPw)に対するC/Nおよび変調度の依存性の測定結果を示すグラフである。 酸素濃度および吸収係数に対するジッターの変化を示すグラフである。 TiSiO膜およびGeO膜の膜厚の膜厚、ならびにジッター値の測定結果を示す表である。 金属膜の酸素濃度とジッター特性との関係を示すグラフである。 実施例14による光記録媒体の構成を示す模式的断面図である。 実施例14による光記録媒体におけるグルーブ深さとジッターとの関係を示すグラフである。 実施例14による光記録媒体におけるウォブルC/Nとグルーブ深さとの関係を示すグラフである。 CTSを変化させたときのウォブル振幅とウォブルC/Nとの関係を示すグラフである。 CTSを変化させたときのウォブル振幅とNWSの値との関係を示すグラフである。 図27(a)は、BCAに形成される記録マークのイメージを示す略線図、図27(a)は、実施例15の再生信号の波形を示す略線図、図27(b)は、実施例16の再生信号の波形を示す略線図である。 実施例17〜21のBCAの再生信号の評価結果を示す表である。 実施例22〜26のBCAの再生信号の評価結果を示す表である。 実施例27〜31のBCAの再生信号の評価結果を示す表である。 実施例32〜36のBCAの再生信号の評価結果を示す表である。 実施例17〜21の再生信号を示す略線図である。 実施例22〜26の再生信号を示す略線図である。 実施例27〜31の再生信号を示す略線図である。 実施例32〜36の再生信号を示す略線図である。
符号の説明
1 基板
2 金属膜
3 酸化物膜
4 誘電体膜
5 光透過層
6 無機記録膜
10 光記録媒体

Claims (12)

  1. 無機記録膜を有する光記録媒体であって、
    上記無機記録膜が、
    Geの酸化物からなる酸化物膜と、
    上記酸化物膜と接するように設けられた、金属材料からなる隣接膜と
    を備え、
    上記酸化物膜の吸収係数kが、0.15≦k≦0.90の範囲であることを特徴とする光記録媒体。
  2. 上記隣接膜が、TiまたはAlからなることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 上記隣接膜が、Siをさらに含有させたTiSi合金からなることを特徴とする請求項に記載の光記録媒体。
  4. 上記酸化物膜の上記隣接膜と接する側とは反対側の面に誘電体膜がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  5. 上記誘電体膜が、上記酸化物膜に隣接する第1の誘電体膜と、該第1の誘電体膜上に形成された第2の誘電体膜とを備え、
    上記第1の誘電体膜がZnS−SiO2からなり、上記第2の誘電体膜がSiNからなることを特徴とする請求項に記載の光記録媒体。
  6. トラックピッチが0.29μm以上0.35μm以下の範囲の案内溝を有する基板上に形成されてなり、かつ、グルーブ深さが18nm以上21.5nm以下の範囲で形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  7. 上記案内溝のうち、記録・再生するグルーブ面からの、再生光学系における戻り検出光量をRON、他方のグルーブ面からの戻り検出光量をRINとしたとき、
    −0.01<2(RON−RIN)/(RON+RIN
    であることを特徴とする請求項に記載の光記録媒体。
  8. 識別情報が記録された識別情報記録領域を有し、
    上記識別情報は、上記酸化物膜に上記識別情報に応じた記録マークを形成することにより記録されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  9. 識別情報が記録された識別情報記録領域を有し、
    上記識別情報は、上記無機記録膜を上記識別情報に応じたパターンで除去することにより記録されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  10. 無機記録膜を有する光記録媒体の製造方法であって、
    Tiからなる隣接膜を成膜する工程と、
    Geの酸化物からなる酸化物膜を成膜する工程と
    を備え、
    上記酸化物膜および上記隣接膜の成膜工程では、上記酸化物膜と上記隣接膜とは隣接するように成膜され、
    上記酸化物膜の吸収係数kが、0.15≦k≦0.90の範囲であることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
  11. 波長350nm以上450nm以下のレーザ光を上記酸化物膜側から上記光記録媒体に対して照射することにより、識別情報を記録する工程をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の光記録媒体の製造方法。
  12. レーザ光を上記隣接膜側から上記光記録媒体に対して照射することにより、識別情報を記録する工程をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の光記録媒体の製造方法。
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