JPH11144316A - 記憶部材 - Google Patents

記憶部材

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JPH11144316A
JPH11144316A JP9307421A JP30742197A JPH11144316A JP H11144316 A JPH11144316 A JP H11144316A JP 9307421 A JP9307421 A JP 9307421A JP 30742197 A JP30742197 A JP 30742197A JP H11144316 A JPH11144316 A JP H11144316A
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JP9307421A
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English (en)
Inventor
Tatsuo Fukano
達雄 深野
Yasuhiko Takeda
康彦 竹田
Naohiko Kato
直彦 加藤
Tomomi Motohiro
友美 元廣
Shoichi Kawai
川井  正一
Hironari Kuno
裕也 久野
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Denso Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Denso Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 外部エネルギーを付与することによって第1
の物質と第2の物質とが酸化還元反応し光学特性を変化
させて情報を記録する記憶部材において、低パワーの外
部エネルギーで記録できるようにする。 【解決手段】 記憶部材は、透明な基板10の上に、酸
素分子1mol量を解離するときに必要とするエネルギ
ーが550kJ以下であるWO3 からなるWO3膜2
0、酸素分子1mol量と結合するときに発生するエネ
ルギーが1000kJ以上であるAlに対してTiを3
0原子%未満含む合金からなるAl−Ti合金膜30、
紫外線硬化樹脂からなる保護膜40が順次積層されてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外部エネルギーを
付与することによって光学特性を変化させて情報を記録
する記憶部材に関し、例えば、追記型のコンパクトディ
スク(CD−R)等に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】この種の記憶部材として、例えば、コン
パクトディスク(CD)等に代表される光記録媒体があ
る。これは、一般に、基板上に有機色素等からなる記録
層(光吸収層)を設け、更にその上に金、銀等からなる
反射層を設けた構成とし、外部エネルギーとしてレーザ
光を照射することにより、上記記録層を変形或いは変性
させて光学特性を変化させ、情報を記録するものであ
る。そして、記録部分と未記録部分との反射率差を利用
して情報を光学的に再生する。
【0003】しかしながら、上記記録層は有機系材料で
あるため、材料自体のコスト及び製造の歩留り等の面か
らコストが高いという問題がある。これらの問題に対し
て、有機色素等に比べて安価な無機系材料を用い、蒸着
法やスパッタ法等のコスト的に優れた通常の成膜方法
で、記録層を構成するようにしたものが提案されてい
る。このような無機材料記録層を用いたものとしては、
例えば、金属硫化物(例えば、SnS)を用いたもの
(特開平4−193586号公報参照)や、硫黄やセレ
ンを用いたもの(特開平2−152029号公報参照)
が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、上記の
両公報における無機材料記録層を用いた記憶部材につい
て、検討を行った結果、以下のように耐環境性及び情報
の保持性等の面で問題があることを見出した。すなわ
ち、前者公報においては、記録層に情報記録したもの
を、高温高湿(例えば、温度90℃、相対湿度80%R
H)条件下で、長時間(例えば、240時間)保持した
場合、記録層が膨潤する等して再生不可となってしまう
こと、又、後者公報においては、記録時のみに反応すべ
き記録層(例えば、硫黄)と反射層(例えば、銀)との
反応(例えば、反応物は硫化銀)の反応性が高いため、
室温放置状態においても反応が徐々に進行して反応物を
形成し、情報の保持が不安定となること、という問題が
生じる。
【0005】そこで、本発明者等は、先に、特願平9−
285671号にて、耐環境性及び情報の保持性に優れ
た記憶部材を提供する提案を行った。これは、少なくと
も第1の物質および第2の物質の2種類の物質からな
り、外部エネルギーの付与により両物質が反応して両物
質のうち少なくとも一方の光学特性が変化することで情
報を記録する記憶部材において、実用的な範囲で外部エ
ネルギーを付与した場合に、上記問題を解決する両物質
を提案したものである。
【0006】すなわち、両物質の反応を、第2の物質か
ら第1の物質に酸素を供給する酸化還元反応とし、第1
の物質は、酸素分子1mol量と結合するときに発生す
るエネルギー(以下、酸素結合エネルギーという)が1
000kJ以上である金属、金属間化合物または窒化物
等を含むものであり、第2の物質は、酸素分子1mol
量を解離するときに必要とするエネルギー(以下、酸素
解離エネルギーという)が550kJ以下である酸化物
および酸素を構成要素とする物質のうちの少なくとも1
つを含むものとしている。
【0007】それによって、記録時になされる両物質の
酸化還元反応を発熱反応とすることができ、逆の反応が
より起こりにくくなるため、結果的に、記録情報保持の
熱的安定性及び湿気に対する安定性を向上させることが
できる。ところで、上記先願においては、耐環境性及び
情報の保持性の向上を目的としていたため、上記先願の
構成では、記録時に付与する外部エネルギー(例えばレ
ーザ光)のパワーが大きくなってしまい実用的範囲を越
えてしまう場合があり(例えば、レーザパワーが14m
W以上になる)、記録感度上の問題が生じる。そこで、
低パワーの外部エネルギーで効率良く記録できるような
記憶部材構成の検討が望まれる。
【0008】本発明は、この先願における問題に鑑みな
されたものであり、外部エネルギーを付与することによ
って第1の物質と第2の物質とが酸化還元反応し光学特
性を変化させて情報を記録する記憶部材において、低パ
ワーの外部エネルギーで記録できるようにすることを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく、各物質の表面積を大きくしてより反応性
を大きくするため、上記先願の記憶部材において、酸素
受取側(つまり自身は酸化される)の第1の物質と酸素
供給側(つまり自身は還元される)の第2の物質とがそ
れぞれ層をなす複数層構成とした上で、鋭意検討を行っ
た。
【0010】外部エネルギーとしてレーザ光を用い記録
・再生を行う反射型の記憶部材において、実験検討を行
った結果、以下に述べるように、記録レーザパワーのた
めには、TiあるいはTi化合物がこの添加物として好
適であることを見出した。なお、記録レーザパワーを調
べる理由は、記録レーザパワーは、第1の層をなす第1
の物質と第2の層をなす第2の物質とを酸化還元反応さ
せる、すなわち記録に要するレーザ光のパワーであるた
めである。本発明者等の検討によれば、実用レベルとし
ては、記録レーザパワー14mW未満が望ましい。
【0011】実験に用いた記憶部材は図1および図2に
示すようなものとした。ここでは、第1の物質を、上記
先願において第1の物質を構成する物質の1つであるA
lに対してTiが所望の割合で添加された合金であるA
l−Ti合金とし、第2の物質を、上記先願において第
2の物質を構成する物質の1つであるWO3 としてい
る。そして、両物質を積層構造として、レーザ光の付与
によりAl−Ti合金膜(第1の層)30とWO3
(第2の層)20とが酸化還元反応し、反射率変化とし
て記録再生するものとしている。
【0012】図1に示すように、記憶部材1は、中央部
に穴2が形成された全体として円盤状をなしたものとし
た。穴2の外周囲には情報記録が行われない平面部3が
設けられ、さらに平面部3の外周囲には情報記録及び再
生が行われる記録部4が設けられている。記録部4につ
いて図1のB−B断面である図2を参照して述べる。円
盤(例えば厚さ1.2mm)状に形成されたポリカーボ
ネート製の透明な基板10の面12上には、Wターゲッ
トを用いたRFマグネトロンスパッタ法により、WO3
膜20が膜厚190nmで成膜され、WO3 膜20上に
は、Al−Ti合金膜30が、Al−Ti合金ターゲッ
トを用いたRFマグネトロンスパッタ法により、膜厚5
0nmに成膜されている。Al−Ti合金膜30の上に
は、紫外線硬化樹脂により保護膜40が形成されてい
る。
【0013】そして、記憶部材1に、基板10の面11
側(図1に示す矢印A方向)から、波長=780nmの
レーザ光を、NA(開口数)=0.50の対物レンズを
通して、Al−Ti合金膜30面上に集光させ記録を行
う。このとき、両膜20および30の両物質が反応して
記録が行われる際のレーザ光のパワーを記録レーザパワ
ーとした。
【0014】この記憶部材1において、Al−Ti合金
膜30のTi量(原子%)を変えて記録レーザパワー
(mW)を調べた結果を図3のグラフに示す。これか
ら、Ti量が0のとき、すなわちAl単独では記録レー
ザパワーが14mWと実用レベルを越えてしまうが、T
iの添加によって記録レーザパワー14mW未満とで
き、Tiの添加量の増加とともに記録レーザパワーを低
減させていくことができることがわかった。
【0015】このTiの添加効果は、Ti自体が活性金
属であるため表面が酸化しやすいこと、及び記録レーザ
光(例えば波長780nm)を吸収しやすいため熱を吸
収しやすいこと等から、Tiの添加により反応性が高く
なるためと考えられる。従って、Al以外の物質に添加
しても同様の添加効果が得られ、また、この添加効果は
TiでなくともTi化合物であっても発揮されると考え
られる。
【0016】そして、上記実験検討と同様に、上記先願
において第1の物質を構成する種々の物質に対してTi
あるいはTi化合物を添加して、記録レーザパワーを調
べたところ、TiあるいはTi化合物の添加により記録
レーザパワーを低減できることがわかった。請求項1記
載の発明は上記知見に基づいてなされたもので、第1の
物質からなる第1の層と第2の物質からなる第2の層と
を備える複数層からなり、外部エネルギーを付与するこ
とによって第2の物質から第1の物質に酸素を供給する
酸化還元反応を行うことで、両物質のうち少なくとも一
方の光学特性を変化させて情報を記録する記憶部材であ
って、第2の物質は、酸素分子1mol量を解離すると
きに必要とするエネルギーが550kJ以下である酸化
物および酸素を構成要素とする物質のうちの少なくとも
1つを含むものであり、第1の物質は、酸素分子1mo
l量と結合するときに発生するエネルギーが1000k
J以上である金属、金属間化合物、窒化物およびこれら
を含む化合物のうち少なくとも1つからなる物質(以
下、前段物質という)に対して、TiあるいはTi化合
物(以下、Ti等という)が含まれたものであることを
特徴とする。
【0017】ここで、「前段物質に対してTi等が含ま
れたもの」とは、Ti等が前段物質との合金、若しくは
金属間化合物、窒化物等の前段物質との化合物として、
または、前段物質との混合物として含まれていることを
意味する。また、前段物質がTi等であってもよく、そ
の場合には第1の物質全体がTi等の物質からなるもの
となる。そして、Ti化合物としては、TiN(窒化チ
タン)またはTiNを含む物質にすることができる。
【0018】それによって、第1の層における第1の物
質の反応性を高め、記録時に付与する外部エネルギー
(例えばレーザ光)を実用的範囲の低パワー(例えば、
レーザパワー14mW未満)としても、第1の物質と第
2の物質との酸化還元反応が行われる。従って、低パワ
ーの外部エネルギーで記録可能な記憶部材を提供するこ
とができる。
【0019】さらに、Ti等の添加により光吸収性が大
きくなって、光透過率が低下し記憶部材の光学特性(例
えば反射率等)に影響が出ることも予測されるため、T
i等の添加量と記憶部材の光学特性との関係についても
考慮して検討を進めた。ここで光学特性としては、記録
感度の点から重要な特性である未記録部反射率について
調べた。
【0020】ここで、未記録部反射率を調べる理由は、
未記録部反射率は、記録された部分以外の部分の再生時
における反射率であり、第1の層の光透過性すなわち第
1の層の膜厚に大きく影響されるためである。本発明者
等の検討によれば、実用レベルとしては、未記録部反射
率が60%以上が望ましい。上記実験検討と同様の記憶
部材、すなわち図1および図2に示す記憶部材1におい
て、Al−Ti合金膜30中の前段物質であるAlに対
するTi量(原子%)を変えて、未記録部反射率を調べ
た。未記録部反射率は、記録済みの記憶部材1を再生レ
ーザパワー=0.7mW(波長=780nm)で、記録
部4の未記録部における反射率を測定することで求め
た。その結果を図4に、Alに対するTiの量(原子
%)と未記録部反射率(%)との関係を表すグラフとし
て示す。
【0021】図4から、Alに対するTiの量が30原
子%未満であれば、実用レベルである未記録部反射率6
0%以上を満足することがわかる。同様に上記先願にお
いて第1の物質を構成する種々の物質に対しても調べた
ところ、Alに対するTiの量が30原子%未満で未記
録部反射率60%以上となることがわかった。従って、
請求項1記載の第1の物質に含まれるTi等は、Ti原
子として30原子%未満であれば、記憶部材の光学特性
を実用レベル(例えば未記録部反射率60%以上)に維
持しつつ、低パワーの外部エネルギー(例えば記録レー
ザパワー14mW未満)で記録可能とできる。
【0022】ところで、第2の層を構成する第2の物質
としては、第1の物質を酸化して自身が還元されるもの
が好ましいが、そのようなものとして、次のようなもの
が挙げられる。すなわち、第2の物質は、周期律表にお
ける6族、8族、9族、11族、及び、Ti、V、M
n、Ni、Re、Ge、Sn、Pb、As、Sb、B
i、Se、Te、Ce、Pr、Tbの中から選ばれた少
なくとも1つの元素を含む酸化物、及び酸素を構成要素
とする物質のうちの少なくとも1つを含む物質であるも
のにできる。ここで、例えば、6族元素としてはCr、
Mo、W等、8族元素としてはFe、Ru等、9族元素
としてはCo、Rh、Ir等、11族元素としてはC
u、Ag、Au等が挙げられる。
【0023】なお、第1の物質と第2の物質とを、上記
のような無機材料とすれば、有機色素等の有機材料を用
いた記憶部材に比べて、材料自体が安価であり、又、蒸
着法やスパッタ法等の公知の方法にて製造できるため、
コスト的に有利な記憶材料とすることができる。さら
に、第1の層と第2の層とが接しているものにすれば、
外部エネルギーを付与した際に、上記した第1の物質と
第2の物質との酸化還元反応がより起こりやすくなり記
憶部材の感度を向上させることができる。
【0024】また、第1の層と第2の層との間に、分解
温度が300℃以下の第3の物質が介在しているものに
すれば、熱に対する情報の保持性がより優れたものとで
きる。ここで分解温度とは、第3の物質が分解、昇華、
溶融等する温度であり、分解温度が300℃以下の第3
の物質としては、例えば、ハイドロカーボン等を用いる
ことができる。
【0025】すなわち、外部エネルギーによって分解温
度以上に加熱することで、第3の物質が分解、昇華、溶
融等され、第1の物質と第2の物質とが反応可能とな
り、情報の記録が可能となる。記録前は、第3の物質が
第1の物質と第2の物質との間に介在する形となるた
め、分解温度以下での両物質の反応が抑止される。従っ
て、光学特性を実用レベルに維持して低パワーの外部エ
ネルギーで記録可能としつつ、熱に対する保持性能を向
上できる。
【0026】なお、介在する第3の物質の分解温度を3
00℃以下としたのは、300℃より高い温度であると
記録時に与える外部エネルギーを非常に大きくしなけれ
ばならず、実用的でないためである。
【0027】
【発明の実施の形態】本実施形態では、上述した図1お
よび図2に示す記憶部材1において、Al−Ti合金膜
30のTi量を25原子%としたものについて説明す
る。記憶部材1は、図1に示すように、中央部にCDプ
レーヤー等に取り付けるための穴2が形成された全体と
して円盤状をなし、上記のように平面部3および記録部
4が設けられている。
【0028】記録部4の断面構造について、図2に基づ
いて上述した部分については本実施形態では説明を省略
する。なお、基板10のレーザ光入射側である一方の面
11は鏡面であり、他方の面12にはレーザ光を導くた
めのスパイラル又は同心円状の案内溝(図示せず)が形
成されている。なお、光情報の記録、再生のためのレー
ザ光は、基板10から矢印Aのように入射し、後述する
ようにAl−Ti合金膜30にて矢印Aと反対方向に反
射する。
【0029】次に、記憶部材1の製造方法について述べ
る。片面を鏡面とし残りの片面に案内溝を形成したポリ
カーボネート製円盤である基板10の案内溝が形成され
ている面12上に、RFマグネトロンスパッタ法によ
り、先ず、WO3 膜20を、ガス種(圧力比):O2
(Ar+O2 )=0.1、スパッタガス圧:3.0×1
-3Torr、投入電力:100〜300Wの成膜条件
により、Wターゲットを用いて190nm形成する。
【0030】引き続き、真空を破らずに、RFマグネト
ロンスパッタ法により、Al−Ti合金膜30を、ガス
種Ar、スパッタガス圧:3.0×10-3Torr、投
入電力:100〜200Wの成膜条件により、Al−2
5原子%Ti合金ターゲットを用いて50nm形成す
る。最後に、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗
布し、高圧水銀灯を用いて該紫外線硬化樹脂を硬化させ
て樹脂膜を形成し、保護膜40を成膜する。こうして、
記憶部材1が完成する。
【0031】次に、この記憶部材1の性能について、次
のように実験を行った。記憶部材1に、基板10の面1
1(鏡面)側から、波長=780nmのレーザ光を、N
A(開口数)=0.50の対物レンズを通して、Al−
Ti合金膜30面上に集光し記録を行った。このとき、
線速度=2.8m/sec、記録周波数=400kH
z、記録レーザ波形=デューティー比50%の矩形波と
し、記録レーザパワー=10mWであった。
【0032】この記録済みの記憶部材1を再生レーザパ
ワー=0.7mW(波長=780nm)で、C/N(c
arrier to noise ratio)、未記
録部及び記録部(記録ピット)の反射率を測定した。そ
の結果、C/N=50dB、未記録部反射率=68%、
記録部反射率=11%であった。このように、記憶部材
1は良好な光学特性を示すことが確認できた。
【0033】ここで、レーザ光には実用上半導体レーザ
光等が用いられるが、記録レーザパワーは、通常実用レ
ベルとしては14mWより小さい範囲であることが望ま
れる。本例では、未記録部反射率60%以上の実用レベ
ルを維持しつつ、記録レーザパワーは10mWと実用レ
ベル範囲内とでき、低パワーで記録可能とできる。さら
に、この記録済みの記憶部材1を、耐環境試験として、
温度90℃、相対湿度80%RHの環境下で240時間
保持した後、再度、C/Nと、未記録部反射率、記録部
反射率の反射率を測定したところ、測定誤差範囲内でい
ずれの特性も変化が認められなかった。このように、記
憶部材1は、記録情報の保持性能が熱および湿気に対し
ても安定であることが確認できた。
【0034】ところで、記憶部材1では、記録レーザ光
を、主にWO3 膜20とAl−Ti合金膜30との界面
付近で吸収して光エネルギーを熱に換え、このエネルギ
ーでWO3 膜20とAl−Ti合金膜30との間に反応
を誘起させる。その反応は、WO3 膜20からAl−T
i合金膜30へ酸素が供給され、Al−Ti合金膜30
の全部または一部が、Al2 3 膜およびTiO膜の少
なくとも一方に変化し、一方、WO3 膜20の全部また
は一部が、酸素欠損構造をとりWO2.96膜に変化する。
本実施形態では、記録部4において両膜20および30
の変化した部分が記録部分として構成される。
【0035】つまり、WO3 膜20は、Al−Ti合金
膜30を酸化して自身は還元され、Al−Ti合金膜3
0は、WO3 膜20を還元して自身は酸化されたことに
なる。このとき、WO3 膜20とAl2 3 膜とTiO
膜は光吸収性の膜であり、Al−Ti合金膜30は金属
光沢を有する膜であり、WO2.96膜は可視域で青く着色
して見える光吸収性の膜である。
【0036】従って、上記実験において記録前では、A
l−Ti合金膜30の反射層としての効果により、再生
レーザ光は記録部4の未記録部分では68%反射され
る。しかし、記録レーザ光が入射した記録部4の記録部
分ではWO3 膜20が還元されてWO2.96膜となり光を
吸収することにより、再生レーザ光は11%しか反射さ
れない。つまり、主として第2の物質であるWO3 の光
学特性変化によって情報が記録される。これが、本実施
形態においてデータ等の情報が記憶できる作用である。
【0037】また、上記反応全体が発熱反応であること
から、記録レーザ光によって一度反応が進行すれば、記
録レーザ光による供給エネルギーを抑えることができ、
結果的に記憶部材1の感度を上昇させることができる。
同時に、反応の発熱エネルギーの大きな材料の組み合わ
せを選択することにより、逆の反応がより起こりにくく
なる。従って、結果的に、記録情報保持の熱的安定性及
び湿気に対する安定性を向上させることができる。
【0038】また、Alが酸素分子1mol量と結合す
るときに発生するエネルギー(酸素結合エネルギー)
は、室温でおよそ1128kJすなわち1000kJ以
上であるが、Tiとの合金化により、上記酸化還元反応
の反応エネルギーが低下し、熱の拡散を抑制することに
より、必要な記録レーザパワーをさせるものと考えられ
る。なお、WO3 が酸素分子1mol量を解離してWO
2.96に変化するときに必要とするエネルギー(酸素解離
エネルギー)は、室温でおよそ413kJであり500
kJ以下である。
【0039】このTiの添加効果は、Ti自体が活性金
属であるため表面が酸化しやすいこと、及び記録レーザ
光(例えば波長780nm)を吸収しやすいため熱を吸
収しやすいこと、熱の拡散を抑制すること等から、Ti
の添加により反応性が高くなるためと考えられる。ま
た、逆にTiの添加により光吸収性が大きくなって光透
過率が低下するが、添加量を30原子%未満としている
ことで、未記録部反射率60%以上を確保出来る程度の
光透過率の低下に抑えることができると考えられる。
【0040】なお、上述の図3および図4におけるAl
−Ti合金膜30のAlに対するTiの量を種々変えた
記憶部材1においても、上記の反応メカニズムにより情
報記憶がなされ、Ti量を30原子%としたものにおい
て、未記録部反射率を実用レベルに維持しつつ、低パワ
ーの記録レーザで記録可能な記憶部材1を提供できる。
【0041】このように、第1の層に金属膜としてAl
−Ti合金膜30を用いることにより、Al単独膜に比
べて記録感度を上昇(本実施形態では記録レーザパワー
の低減)させることができるとともに、Ti単独膜に比
べて記憶部材1の光学特性(本実施形態では未記録部反
射率)を上昇させることができる。なお、本実施形態に
おいては、第1の層であるAl−Ti合金膜30と第2
の層であるWO3 膜20とが互いに接しているため、記
録レーザ光を入射した時に、両層を構成する両物質の酸
化還元反応がより起こりやすくなり記憶部材1の記録感
度を向上させることができるという効果も有している。
【0042】また、本実施形態によれば、記録レーザ光
付与時の反応において酸化される第1の物質と還元され
る第2の物質とが、共に層をなして基板10上に積層さ
れた複数層構造をとっているため、体格を薄型とでき、
例えば追記型コンパクトディスク(CD−R)等に好適
とできる。 (他の実施形態)なお、上記実施形態において、第1の
層(Al−Ti合金膜30)と第2の層(WO3 膜2
0)との間に、分解温度(分解、昇華、溶融温度)が3
00℃以下の第3の物質(例えば、ハイドロカーボン
等)からなる第3の層が介在されていると、以下の理由
によって、熱に対する記録情報の保持性能が向上する。
【0043】すなわち、記録レーザ光によって分解温度
以上に加熱することで、第3の物質が分解、昇華、溶融
等され、第1の物質と第2の物質とが反応可能となり、
情報の記録が可能となる。記録前は、分解温度以下とす
ることで、第1の物質と第2の物質との間に介在する形
となるため、分解温度以下での両物質の反応が抑止され
る。
【0044】ここで、介在する第3の物質の分解温度を
300℃以下としたのは、300℃以上であると記録時
に与えるレーザ光のパワーを非常に大きくしなければな
らず、記憶部材として実用的でないためである。また、
PETフィルム(基板)上の片面に、Al−Ti合金膜
(第1の層)、WO3 膜(第2の層)、透明な保護膜、
粘着層を順次形成した記憶部材として、レーザ光にてデ
ータと画像を記憶させた後、任意な場所に張り付ける構
成としてもよい。
【0045】また、基板の無いものとして、例えば、T
iドープしたAl箔(第1の層)上にMoO3 膜(第2
の層)を形成した記憶部材として、レーザ光にて描画す
ることにより、描画像を記憶できるものとしてもよい
し、TiをドープしたMg箔(第1の層)上にPrO2
斜め蒸着膜(第2の層)を形成した記憶部材として、超
音波でドット画を描画することにより、描画像を記憶で
きるものとしてもよい。
【0046】また、第1の物質は、Tiを含むものとし
て合金等の金属または金属間化合物に限らず、TiN
(窒化チタン)等の窒化物を含むものでも良い。例え
ば、PETフィルム(基板)上の片面に、TiN膜(第
1の層)、WO3膜(第2の層)、透明な保護膜、粘着
層を順次形成した記憶部材として、レーザ光にてデータ
と画像を記憶させた後、任意な場所に張り付けるように
したものとしてもよい。
【0047】ところで、上記各実施形態において、反応
を誘起させるための外部エネルギーはレーザ光、超音波
あるいは熱に限定されるものではなく、光全般、電磁
波、音波、放射線、衝撃力、歪み等であってもよい。ま
た、上記各実施形態を適宜組み合わせたものとして良い
ことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記憶部材の全体構成を示す構成図
である。
【図2】図1のB−B断面図である。
【図3】Al−Ti合金膜の膜厚と記録レーザパワーと
の関係を示すグラフである。
【図4】Al−Ti合金膜の膜厚と未記録部反射率との
関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…記憶部材、2…穴、3…平面部、4…記録部、10
…基板、11、12…基板の面、20…WO3 膜、30
…Al−Ti合金膜、40…保護膜。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹田 康彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 加藤 直彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 元廣 友美 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 川井 正一 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 久野 裕也 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の物質からなる第1の層と第2の物
    質からなる第2の層とを備える複数層からなり、外部エ
    ネルギーを付与することによって前記第2の物質から前
    記第1の物質に酸素を供給する酸化還元反応を行うこと
    で、両物質のうち少なくとも一方の光学特性を変化させ
    て情報を記録する記憶部材であって、 前記第2の物質は、酸素分子1mol量を解離するとき
    に必要とするエネルギーが550kJ以下である酸化物
    および酸素を構成要素とする物質のうちの少なくとも1
    つを含むものであり、 前記第1の物質は、酸素分子1mol量と結合するとき
    に発生するエネルギーが1000kJ以上である金属、
    金属間化合物、窒化物およびこれらを含む化合物のうち
    少なくとも1つからなる物質に対して、TiあるいはT
    i化合物が含まれたものであることを特徴とする記憶部
    材。
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