JP2007111691A - タングステンの回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タングステン触媒の存在下に有機化合物と過酸化水素とを反応させた後、得られる反応混合物からタングステンを効率よく回収する方法を提供すること。
【解決手段】タングステン触媒の存在下に有機化合物と過酸化水素とを反応させた後、得られる反応混合物にガスを吹き込むことによりタングステン酸を析出させ、析出したタングステン酸を分離するタングステンの回収方法。本発明によれば、安価なガスを用いた簡便な操作により、良好な回収率でタングステンを回収することができる。すなわち、金属資源の有効利用が図られ、かつ廃棄物が削減されるため、工業的に有利である。
【選択図】なし

Description

本発明は、タングステンの回収方法に関する。
タングステン触媒の存在下に有機化合物を過酸化水素で酸化する種々の反応が知られている。かかる反応は、通常、水の存在下に実施され、タングステン触媒は水に溶解した状態で用いられるため、酸化反応後の混合物からタングステンを回収し、再利用する方法の開発が重要な課題となっている。かかる目的において、タングステン触媒に含まれるタングステンを、タングステン酸として回収する方法が種々検討されている。
かかるタングステンの回収方法としては、例えばイオン交換樹脂で酸化反応液を処理する方法(例えば特許文献1、特許文献2参照。)、例えば酸化反応液に水溶性有機溶媒を加えて析出させる方法(例えば特許文献3参照。)等が知られている。
しかしながら、これらの方法では、高価なイオン交換樹脂を多量に用いたり、回収が困難な水溶性有機溶媒を多量に用いたりする必要があり、必ずしも工業的に満足できるものではなかった。また、本発明者らも、シクロヘキサンを液相酸化する工程から排出される排水を、過酸化水素を酸化して得られる反応混合物からのタングステンの回収について報告(例えば特許文献4参照。)しているが、その回収率は必ずしも充分なものとはいえなかった。
特開平8−291104号公報 特公昭55−4459号公報 特公昭46−41526号公報 特開2004−217625号公報
このような状況のもと、本発明者は、タングステン触媒の存在下に有機化合物と過酸化水素とを反応させた後、得られる反応混合物からタングステンを回収する方法について、鋭意検討した結果、該反応混合物にガスを吹き込むことによりタングステン酸が析出し、これを分離することにより良好な回収率でタングステンが回収できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、タングステン触媒の存在下に有機化合物と過酸化水素とを反応させた後、得られる反応混合物にガスを吹き込むことによりタングステン酸を析出させ、析出したタングステン酸を分離するタングステンの回収方法を提供するものである。
本発明によれば、安価なガスを用いた簡便な操作により、良好な回収率でタングステンを回収することができる。すなわち、金属資源の有効利用が図られ、かつ廃棄物が削減されるため、工業的に有利である。
以下、本発明を詳細に説明する。
タングステン触媒としては、例えばタングステン金属、ホウ化タングステン、炭化タングステン、硫化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩等のタングステン類、これらタングステン類と過酸化水素とを反応させてなるタングステン酸化物等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。タングステン酸塩としては、例えばタングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム等のタングステン酸アルカリ金属塩、例えばタングステン酸カルシウム、タングステン酸マグネシウム等のタングステン酸アルカリ土類金属塩、タングステン酸アンモニウム等が挙げられる。タングステン類としては、通常市販されているものが用いられる。また、タングステン触媒として、タングステン酸を用いる場合は、例えばタングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩を硫酸等の酸で中和処理して調製されるタングステン酸を用いてもよいし、本発明の回収方法により取り出されたタングステン酸を用いてもよい。また、タングステン触媒として、タングステン酸塩を用いる場合には、例えばタングステン酸と対応する塩基を反応させて調製されるタングステン酸塩を用いてもよい。また、これらのタングステン類と過酸化水素とを反応させてなるタングステン酸化物をタングステン触媒として用いることもできる。かかるタングステン触媒のなかでも、タングステン酸、タングステン酸塩、タングステン酸塩を酸で中和処理して調製されるタングステン酸およびタングステン類と過酸化水素とを反応させてなるタングステン酸化物が好ましい。
タングステン類と反応させる過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いが容易であるという点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%程度の範囲である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行ったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
タングステン類と反応させる過酸化水素の使用量は、該タングステン類に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
タングステン類と過酸化水素とを反応させることにより、タングステン酸化物が調製されるが、かかる反応は、通常水溶液中でその両者を混合することにより実施される。例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、tert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中でタングステン類と過酸化水素とを反応させてもよい。
タングステン酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
タングステン類と過酸化水素とを水中、有機溶媒中もしくは該有機溶媒と水との混合溶媒中で反応させることにより、タングステン酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができ、該タングステン酸化物は、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、有機化合物と過酸化水素との反応に用いてもよいし、該タングステン酸化物を含む調製液をそのまま用いてもよい。
本発明に用いられる有機化合物としては、タングステン触媒の存在下で過酸化水素と反応し得る有機化合物であれば、特に限定されず、例えばオレフィン化合物、アルコール化合物、アミン化合物等の含窒素化合物、スルフィド化合物等が挙げられる。かかる有機化合物としては、市販のものを用いてもよいし、公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
かかる有機化合物と過酸化水素との反応は、通常、公知の方法に準じて実施される。有機化合物としてオレフィン化合物を用いる場合は、例えば、特開平8−291104号公報、特開2002−201147号公報等に記載の方法に準じて反応が実施され、対応するエポキシド化合物、ケトン化合物、アルデヒド化合物、カルボン酸化合物等の酸化生成物が得られる。有機化合物としてアルコール化合物を用いる場合は、例えば、特開2003−201266号公報、特開2003−96016号公報、特開2004−217625号公報等に記載の方法に準じて反応が実施され、対応するカルボン酸化合物等の酸化生成物が得られる。有機化合物として含窒素化合物を用いる場合は、例えば、特開昭59−164762号公報、特開2003−231677号公報、特開2003−261516号公報、特開2003−277329号公報、特開2003−277330号公報、特開2003−286243号公報等に記載の方法に準じて反応が実施され、対応するN−オキシド化合物、オキシム化合物、ニトロ化合物、ニトロン化合物等の酸化生成物が得られる。有機化合物としてスルフィド化合物を用いる場合は、例えば、J.Org.Chem.,28,1140(1963)、特開2003−300950号公報等に記載の方法に準じて反応が実施され、対応するスルホキシド化合物、スルホン化合物等の酸化生成物が得られる。
有機化合物と過酸化水素とを、タングステン触媒の存在下に反応させて得られた反応混合物には、通常酸化生成物、未反応の有機化合物、副生成物、未反応の過酸化水素等が含まれている。また、用いたタングステン触媒は、かかる反応により、通常タングステン酸(WO・HO)に変換され、該反応混合物中に溶解しているか、あるいはその一部が該反応混合物中に析出している。本発明には、タングステン酸が溶解した反応混合物であっても、タングステン酸の一部が析出した反応混合物であっても用いることができる。
本発明は、かかる反応混合物に、ガスを吹き込むことにより、溶解しているタングステン酸を析出させ、析出したタングステン酸を分離することにより、上述した有機化合物と過酸化水素との反応に用いたタングステン触媒中のタングステンを、タングステン酸として回収するものである。かかる反応混合物から、目的とする酸化生成物を、晶析等の手段により取り出した後、ガスを吹き込んでもよいし、酸化生成物を取り出すことなく、そのままガスを吹き込んでもよい。
ガスの吹き込みは、通常、水の存在下に実施する。水の使用量は、用いたタングステン触媒に対して、通常1重量倍以上であり、特に上限はない。有機化合物の酸化は、通常、水の存在下に実施するので、その場合は、反応混合物をそのまま用いればよい。また、分液処理後に用いる場合は、水層を分取してガスを吹き込めばよい。水層のpHが高すぎると、タングステン酸が塩として水に溶解して析出しないので、通常、pH0〜6の範囲でガスを吹き込む。pHが上記範囲内でない場合には、例えば硫酸、塩酸、硝酸等の酸や、例えば水酸化ナトリウム等の塩基を用いて、適宜pHを調整すればよい。
ガスとしては、有機化合物と過酸化水素とを反応させて得られる生成物(以下、酸化生成物と略記する。)と反応しないものであれば、特に限定されずに用いることができる。例えば水素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン等、および、それらの混合ガスが挙げられる。窒素、混合ガスである空気が好ましく用いられる。吹き込むガスの量は、通常、反応混合物に対して1容量%/分以上であればよく、上限は特にないが、操作性の点から、30容量%/分以下の範囲で実施される。
ガスを吹き込む温度は、溶媒や酸化生成物の種類等の条件により異なるが、通常20〜130℃、好ましくは50〜100℃の範囲である。通常、常圧条件下で実施されるが、加圧あるいは減圧条件下で実施してもよい。ガスを吹き込む時間は、通常1〜30時間、好ましくは3〜20時間である。
本発明の回収方法において、タングステン触媒が溶解している反応混合物にガスを吹き込むことにより、タングステン酸の析出が促進されるが、さらにタングステン酸の析出を促すために、少量のタングステン酸を加えてもよい。加えるタングステン酸の量は、有機化合物の酸化に用いたタングステン触媒に対して、通常0.01〜0.1重量%程度の範囲である。
析出したタングステン酸は、通常反応混合物をそのまま、もしくは必要に応じて冷却した後、濾過することにより取り出すことができる。酸化生成物を取り出すことなくガスを吹き込んだ場合には、ガスの吹き込み温度によって、反応混合物中に、タングステン酸とともに酸化生成物も結晶として析出するときがあり、そのようなときには、タングステン酸と酸化生成物が析出した反応混合物を加熱し、酸化生成物を溶解させた後、濾過することにより、タングステン酸を取り出すことができる。取り出したタングステン酸は、そのまま、必要に応じて乾燥した後、有機化合物と過酸化水素との反応における触媒として、再利用することができる。タングステン酸を取り出した後の反応混合物は、そのままもしくは未反応の過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮、晶析等することにより、酸化生成物を取り出すことができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、分析には、高速液体クロマトグラフ装置を用いた。また、シクロへキサン酸化排水を用いた実施例におけるアジピン酸収率は、反応液中に含まれるアジピン酸の量から原料として用いた排水中に含まれていたアジピン酸の量を差し引いた量を、本反応において生成したアジピン酸量とし、排水中のヒドロキシカプロン酸量基準で算出したものである。
[実施例1]
シクロヘキサンを液相酸化し、水洗浄し、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得るとともに、ヒドロキシカプロン酸含量が7.5重量%である排水を得た。
該排水には、ヒドロキシカプロン酸以外に、アジピン酸、グルタル酸、ε−カプロラクトン、アジピン酸のエステル、ヒドロキシカプロン酸のエステル等が含まれていた。
還流冷却管を付した2L四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム・2水和物26g、水30g及び69重量%硝酸68gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、上記のヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)1200gを仕込み、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水248gを6時間かけて滴下した後、2時間保温攪拌した。この反応液に、80℃で攪拌しながら、窒素ガスを150ml/分で24時間吹き込み、黄色粉末を析出させた。該反応液を、内温70℃で静置すると該黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに該黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、黄色粉末を、ろ別し、水20gとアセトン20gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、アジピン酸含量を分析し収率を算出した。(アジピン酸収率:74%)
得られた黄色粉末を乾燥させた後、粉末X線回折法にて分析したところ、全量がタングステン酸(WO・HO)であり、酸化タングステン(WO)は含まれていなかった。
回収タングステン酸量:19.5g、回収率:99.0%。
[実施例2]
還流冷却管を付した2L四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム・2水和物26g、水30g及び69重量%硝酸68gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)1200gを仕込み、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水248gを6時間かけて滴下した後、4時間保温攪拌した。反応混合物のpHは2.1であった。この反応液に、80℃で攪拌しながら、水素ガスを150ml/分で12時間吹き込み、黄色粉末を析出させた。このときの反応混合物のpHは2.0であった。該反応液を、内温70℃で静置すると該黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに該黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、黄色粉末を、ろ別し、水20gとアセトン20gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、アジピン酸含量を分析し収率を算出した。(アジピン酸収率:70%)
得られた黄色粉末を乾燥させた後、粉末X線回折法にて分析したところ、全量がタングステン酸(WO・HO)であり、酸化タングステン(WO)は含まれていなかった。
回収タングステン酸量:19.3g、回収率:98.0%。
[実施例3]
還流冷却管を付した2L四つ口フラスコに、実施例1で回収したタングステン酸9.9gと実施例2で回収したタングステン酸9.8g、水30g及び69重量%硝酸58gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)1200gを仕込み、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水271gを6時間かけて滴下した後、4時間保温攪拌した。この反応液に、80℃で攪拌しながら、窒素ガスを150ml/分で8時間吹き込み、黄色粉末を析出させた。該反応液を、内温70℃で静置すると該黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに該黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、黄色粉末を、ろ別し、水20gとアセトン20gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、アジピン酸含量を分析し収率を算出した。(アジピン酸収率:75%)
得られた黄色粉末を乾燥させた後、粉末X線回折法にて分析したところ、全量がタングステン酸(WO・HO)であり、酸化タングステン(WO)は含まれていなかった。
回収タングステン酸量:19.6g、回収率:99.5%。
[比較例1]
還流冷却管を付した2L四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム・2水和物26g、水30g及び69重量%硝酸68gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)1200gを仕込み、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水271gを6時間かけて滴下した後、4時間保温攪拌した。この反応液を、80℃で攪拌しながら、さらに24時間保温した。該反応液を、内温70℃で静置すると淡黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに淡黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、淡黄色粉末を、ろ別し、水20gとアセトン20gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、アジピン酸含量を分析し収率を算出した。(アジピン酸収率:82%)
得られた淡黄色粉末を乾燥させた後、粉末X線回折法にて分析したところ、タングステン酸(WO・HO)が66%、酸化タングステン(WO)が34%、それぞれ含まれていた。
回収淡黄色粉末重量:15.0g、
回収率:タングステン酸(WO・HO)50.3%、
酸化タングステン(WO)27.9%。
[実施例4]
還流冷却管を付した500mL四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム・2水和物3.0g、水350g及び98重量%硫酸5.0gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。この混合液を90℃に昇温し、テトラヒドロ無水フタル酸100gをすこしづつ仕込み、完溶させた。同温度で、60重量%過酸化水素水188.1gを3時間かけて滴下した後、5時間保温攪拌した。この反応液に、80℃で攪拌しながら、窒素ガスを100ml/分で24時間吹き込み、黄色粉末を析出させた。該反応液を、内温60℃で静置すると該黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに該黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、黄色粉末を、ろ別し、水10gとアセトン10gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸含量を分析し収率を算出した。(1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸収率:85.2%)
得られた黄色粉末を乾燥させた後、粉末X線回折法にて分析したところ、全量がタングステン酸(WO・HO)であり、酸化タングステン(WO)は含まれていなかった。
回収タングステン酸量:2.26g、回収率:99.6%。
[比較例2]
実施例4において、窒素ガスのバブリングを行わないこと以外は、実施例4と同様に操作をして、タングステン酸の回収を行った。
淡黄色粉末が回収され、重量は980mgであった。
[実施例5]
シクロヘキサンを液相酸化し、水洗浄し、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得るとともに、ヒドロキシカプロン酸含量が7.5重量%である排水を得た。
該排水には、ヒドロキシカプロン酸以外に、アジピン酸、グルタル酸、ε−カプロラクトン、アジピン酸のエステル、ヒドロキシカプロン酸のエステル、バレロラクトン、ギ酸等が含まれていた。
還流冷却管を付した2L四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム・2水和物26.1g、水100g及び60重量%硝酸78.2gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、上記のヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)1200gを仕込み、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水270.4gを6時間かけて滴下した後、2時間保温攪拌した。この反応液に、80℃で攪拌しながら、窒素ガスを150ml/分で12時間吹き込み、黄色粉末を析出させた。該反応液を、内温70℃で静置すると該黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに該黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、黄色粉末を、ろ別し、水20gとアセトン20gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、アジピン酸含量を分析し収率を算出した。(アジピン酸収率:33%)
回収タングステン酸量:18.8g、回収率:95.4%。
[実施例6]
還流冷却管を付した2L四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム・2水和物22.5g、水100g及び60重量%硝酸78.2gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例5で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)1200gを仕込み、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水270.4gを6時間かけて滴下した後、2時間保温攪拌した。この反応液に、80℃で攪拌しながら、空気を150ml/分で12時間吹き込み、黄色粉末を析出させた。該反応液を、内温70℃で静置すると該黄色粉末が沈降したため、デカンテーションにて上澄み液を分離し、さらに該黄色粉末の沈降したスラリー液をろ過処理し、黄色粉末を、ろ別し、水20gとアセトン20gで洗浄した。得られた上澄み液と、ろ液を合一して、アジピン酸含量を分析し収率を算出した。(アジピン酸収率:36%)
回収タングステン酸量:16.2g、回収率:95.2%。

Claims (7)

  1. タングステン触媒の存在下に有機化合物と過酸化水素とを反応させた後、得られる反応混合物にガスを吹き込むことによりタングステン酸を析出させ、析出したタングステン酸を分離するタングステンの回収方法。
  2. 水の存在下、水層のpHが0〜6の範囲でガスの吹き込みを実施する請求項1に記載のタングステンの回収方法。
  3. ガスが、窒素又は空気である請求項1に記載のタングステンの回収方法。
  4. ガスの吹き込み温度が、20〜130℃の範囲である請求項1に記載のタングステンの回収方法。
  5. ガスを吹き込む時間が、1〜30時間の範囲である請求項1に記載のタングステンの回収方法。
  6. タングステン触媒が、タングステン金属、ホウ化タングステン、炭化タングステン、硫化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸及びタングステン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のタングステン類又は該タングステン類と過酸化水素とを反応させてなるタングステン酸化物である請求項1〜5のいずれかに記載のタングステンの回収方法。
  7. タングステン触媒の存在下に、有機化合物を過酸化水素で酸化する有機化合物の酸化方法において、得られる反応混合物にガスを吹き込み、タングステン酸を析出させ、析出したタングステン酸を分離することを特徴とする有機化合物の酸化方法。
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