JP2007106901A - 熱伝導性樹脂組成物、その構造体及びその用途 - Google Patents

熱伝導性樹脂組成物、その構造体及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】熱伝導率の異方性が小さく、かつ高い熱伝導率を有する熱伝導性樹脂組成物、該組成物を成形してなる構造体及び、その構造体を備えた電子機器等を提供する。
【解決手段】シリコーン樹脂やポリエーテルサルホンなどの樹脂に、塊状黒鉛及び/又は球状黒鉛と、鱗片状黒鉛とを混合、混練して熱伝導性樹脂組成物を得る。この樹脂組成物を成形して構造体を得る。この構造体を放熱体や熱伝導材などとして取り付けることによってインクジェットプリンタ、コンパクトディスクドライブ、デジタルバーサタイルディスクドライブ、電子機器を得る。
【選択図】なし。

Description

本発明は、熱伝導性樹脂組成物、その構造体及びその用途に関するものであり、詳細には、電気電子機器の各種半導体素子、電源、光源、ヒーター、部品などの熱源から発生する熱を効果的に放散若しくは拡散させるために熱源に接して用いられる、熱拡散性若しくは放熱性の構造体と、その構造体を得るための熱伝導性樹脂組成物と、前記構造体の用途に関するものである。
近年の電子機器においては、高性能化、小型化及び軽量化に伴い、様々な部品の集積度が高まっている。電気電子機器及び部品は、一般的に、廃熱を散逸させるために放熱体が設けられている。同様に個々の集積回路にも、熱を拡散若しくは放散して、ホットスポットの形成を防ぐための放熱体が設けられている。電子機器の集積度が高くなるに従って、より小さい区域により多くの部品や集積回路が組み込まれるので、廃熱の管理が不十分になると、電子機器の故障や誤動作を生じることがある。従って、これらの電子機器や電子部品から発生する熱を効果的に拡散させ、外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっている。
例えば、トランジスタやサイリスタなどの発熱性電子部品等に、熱伝導性の良好なシート材料(サーマルインターフェースマテリアル:以下「熱伝導性シート」という。)を介してヒートシンク等の放熱部材を取り付けるという対策が一般的に採られている。この種の熱伝導性シートは、一般に、発熱源となる発熱性電子部品等の被装着部位の凹凸に対して柔軟に追従させて、発熱性電子部品等に密着した状態で取り付けられる。そして、かかる熱伝導性シートは、発熱性電子部品等と放熱部材との接触熱抵抗を低減させ、発熱性電子部品等にて発生する熱を効率良く放熱部材に伝導させる機能を果たす。この際、熱は熱伝導シートの平面方向だけでなく厚み方向にも放熱させることが必要となるので、熱伝導率の異方性が小さく、且つ高い熱伝導率を有する熱伝導性シートが求められている。
また、コンパクトディスク(CD)ドライブやデジタルバーサタイルディスク(DVD)ドライブには半導体レーザーを利用したピックアップが使用されている。記録用のピックアップでは半導体レーザーの出力が100mWを超えるため、ピックアップの温度が高くなる。半導体レーザーは、その改良や光学系部品の集積化等により耐熱温度が約80℃に向上したが、その耐熱温度を超えないようにするためにピックアップベースの基材として放熱性の高い金属材料が使用されている。金属材料は、亜鉛ダイキャスト、アルミダイキャストなどであるが、機械加工が必要なためコストや量産性に課題があった。また、金属材料は、比重が重いため、アクチュエータなどの駆動機構に余分な強度アップや駆動出力アップが必要となる。そこで、近年、比重が軽い黒鉛を利用した熱伝導性樹脂組成物が使用されるようになってきている。
一方、熱による膨張等を利用して作動させる機器においては、熱を効率的に伝えることが重要である。そのために熱伝導材が設けられている。
例えば、インクジェットプリンターに用いられるサーマル式プリンタヘッドには、ノズル中のヒーターを加熱しインク貯蔵室を膨張させ、その内圧によりインクを噴出させるためのヒーターベースが使用されている。ヒーターベースは、ヒーターからの熱をインク貯蔵室に効率的に伝える必要があり、また構成部品の撓みによる圧損失をなくすため高剛性かつ寸法安定性、更にインクへの低汚染性が必要である。これまでヒーターベースにはセラミックス材料が使用されてきた。しかし、セラミックス製ヒーターベースは、部品の焼結、機械加工にコストがかかり、非常に重い。そこで、近年、低コスト化、軽量化の為に、黒鉛を利用した熱伝導性樹脂組成物が検討されている。
従来、熱伝導性樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に開示されるような、ポリアリーレンスルフィドなどの樹脂に、板状、薄片状あるいは鱗片状の黒鉛を充填した熱伝導性樹脂組成物;特許文献2に開示されるような、ポリアリーレンスルフィド樹脂に、引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維と、鱗片状や土状などの黒鉛とを含有させた熱伝導性樹脂組成物;特許文献3に開示されるような、六方晶配向を有し、縦横比が少なくとも5〜1であるフレーク形態の高度に配向したグラファイト粒子と、重合体結合剤とを含んでなる複合材料組成物;特許文献4に開示されるような、シリコーンなどの高分子材料に、黒鉛化炭素繊維を500μm以下の長さに粉砕したもので、BET吸着法で測定される比表面積が0.5〜2.0m/gであるものを30%以下含有させた熱伝導性樹脂組成物;などが知られている。
炭素繊維や鱗片状黒鉛等はアスペクト比が5以上で、異方性が高い形状を持つ。これら異方性黒鉛微粉を樹脂に添加したこれまでの樹脂組成物を圧縮成形や射出成形等で溶融成形すると、黒鉛の長軸が樹脂の流動方向に配向する。そのため、得られた成形品は、黒鉛の配向方向に平行な方向の熱伝導率が高いけれど、黒鉛の配向方向に垂直な方向の熱伝導率が極端に低い。
例えば、インクジェットプリンターのヒーターベースの場合、成形時、溶融した樹脂は成形品の面方向に流動する。黒鉛は樹脂の流動方向に配向しやすいので成形品の面方向は熱伝導率が高く、厚み方向は熱伝導率が低くなる。成形品の面方向と厚み方向の両方で高熱伝導性となる成形品を得るための樹脂組成物は未だ見出されていない。
また、一般的に、板状、薄片状あるいは鱗片状黒鉛は、同じ粒子径分布の場合、塊状あるいは粒状の黒鉛よりもBET比表面積が大きい。比表面積が大きい微粉は樹脂への充填性が悪いので、板状、薄片状あるいは鱗片状黒鉛は樹脂への高充填が出来ず高い熱伝導率を達成することが出来ない。
特開2004−339290号公報 特開2002−129015号公報 特開平11−1621号公報 特開2002−97372号公報
本発明は、上記の従来の問題点を解決し、熱伝導率の異方性が小さく、かつ高い熱伝導率を有する熱伝導性樹脂組成物、該組成物を成形してなる構造体及び、その構造体を備えた電子機器等を提供するものである。
本発明者らは、このような事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、塊状または粒状の黒鉛微粉と鱗片状の黒鉛微粉とを併用することにより、熱伝導率の異方性が小さく、高い熱伝導性を有する熱伝導性樹脂組成物を得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成にするに至った。
かくして、本発明によれば、
(1)成分(A):塊状黒鉛及び/又は球状黒鉛と、成分(B):鱗片状黒鉛と、成分(C):樹脂 とを含有する熱伝導性樹脂組成物が提供され、
好適な態様として
(2)成分(A):塊状黒鉛及び/又は球状黒鉛と、成分(B):鱗片状黒鉛と、成分(C):樹脂 からなる熱伝導性樹脂組成物、
(3)成分(A)と成分(B)の総量に対して、成分(A)が20〜80質量%である前記の熱伝導性樹脂組成物、
(4)成分(A)と成分(B)と成分(C)の総量に対して、成分(C)が50質量%以下である前記の熱伝導性樹脂組成物、
(5)成分(A)及び成分(B)からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分のBET比表面積が10m/g以下である前記の熱伝導性樹脂組成物、
(6)成分(A)及び成分(B)からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分の平均粒子径(D50)が1μm以上300μm以下である前記の熱伝導性樹脂組成物、
(7)成分(A)及び成分(B)からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分の粒子径分布(D90/D10)が10以上である前記の熱伝導性樹脂組成物、
(8)成分(C)がシリコーン樹脂又はポリエーテルサルホンである前記の熱伝導性樹脂組成物、
(9)熱伝導率が3W/(m・K)以上である前記の熱伝導性樹脂組成物、及び/又は
(10)成分(A)と成分(B)と成分(C)の総量100質量部に対して、0.1〜3質量部の気相法炭素繊維をさらに含有する前記の熱伝導性樹脂組成物、が提供される。
また、本発明によれば、
(11)前記の熱伝導性樹脂組成物からなる熱伝導性構造体が提供され。
さらに本発明によれば、
(12)前記の構造体を備えた電子機器、
(13)前記の構造体を備えたインクジェットプリンター、
(14)前記の構造体を備えたコンパクトディスクドライブ、
(15)前記の構造体を備えたデジタルバーサタイルディスクドライブ、
(16)前記のコンパクトディスクドライブを備えた電子機器、及び/又は
(17)前記のデジタルバーサタイルディスクドライブを備えた電子機器が提供される。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、熱伝導率の異方性が小さく、高い熱伝導率を有する。そのため、本発明の熱伝導性樹脂組成物を成形してなる構造体を、コンパクトディスクドライブ、デジタルバーサタイルディスクドライブなどの電子機器に備えることによって、廃熱を効率的に放散又は拡散し、電子機器の誤動作を防ぎ、電子機器の寿命を長くすることができる。またインクジェットプリンターのサーマル式プリンタヘッドに備えることによって、ヒーターからの熱を効率的に伝えることができるので、低消費電力で、インク貯蔵室を膨張させインクを噴出させることができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、樹脂と、塊状及び/又は球状黒鉛と、鱗片状黒鉛とを含有するものである。
[熱伝導性樹脂組成物に用いる樹脂]
本発明の熱伝導性樹脂組成物を構成する樹脂(成分(C))は、特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などから適宜選択して用いることが出来る。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、α−オレフィンコポリマー、ポリブテン−1、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン系ブロックコポリマー樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリサルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、シンジオ型ポリスチレン、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物などを挙げることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、非熱可塑性ポリイミド、及びこれらの混合物などを挙げることができる。
これらの中で、耐熱性が高いという理由でポリエーテルサルホン、耐熱性と柔軟性が高いという理由でシリコーン樹脂が好ましい。
[黒鉛微粉]
本発明の熱伝導性樹脂組成物を構成する黒鉛微粉は、塊状黒鉛及び/又は球状黒鉛(成分(A))と、鱗片状黒鉛(成分(B))である。成分(A)と成分(B)とを併用することによって、厚み方向の熱伝導率を高くでき、熱伝導の異方性を小さくすることができる。
本発明を構成する成分(A)の塊状黒鉛としては、スリランカ等で天然に産出される天然の塊状黒鉛や、塊状の石油コークスを黒鉛化して得られる人造黒鉛などが挙げられる。天然の塊状黒鉛(Vein Graphite)は、鱗状黒鉛(Crystalline Graphite)の一種で鱗片状黒鉛(Flake Graphite)よりも粒子の厚みが厚い。天然の塊状黒鉛の製品例としては、伊藤黒鉛工業株式会社製の鱗状(塊状)黒鉛(スリランカ産)が挙げられる。また、人造の塊状黒鉛の製品例としては、日本黒鉛工業株式会社製のPAGシリーズ、HAGシリーズや、株式会社エスイーシー製のSGLシリーズや、昭和電工株式会社製のSCMGシリーズなどが挙げられる。
また、成分(A)の球状黒鉛としては、鱗片状黒鉛などの非球状の黒鉛微粉を球状化処理して得られた黒鉛微粉や、石油系または石油系のピッチを結晶化させた球状のカーボン粒子や熱硬化性樹脂を球状に硬化した粉末を黒鉛化した黒鉛微粉などが挙げられる。球状化処理の方法としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステムを用いた高速気流中衝撃法が挙げられる。球状化した黒鉛の製品例としては、伊藤黒鉛工業株式会社製の球状化黒鉛が挙げられる。さらに、本発明の熱伝導性樹脂組成物には、塊状黒鉛と球状黒鉛とを併用してもよく、塊状黒鉛と球状黒鉛との組成は特に限定されない。
本発明に用いる成分(A)のBET比表面積は、好ましくは10m/g以下、より好ましくは5m/g以下、特に好ましくは3m/g以下である。BET比表面積が小さくなると、黒鉛微粉の樹脂への充填性が高くなる。BET比表面積が10m/gを超える黒鉛微粉は、50質量%を超える樹脂への高充填が困難になる傾向がある。
本発明に用いる成分(A)の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。しかし、平均粒子径が300μmを超える塊状又は球状黒鉛微粉は成形品の外観を損ねるので、成分(A)の平均粒子径は300μm以下が好ましい。また、平均粒子径が1μm未満の場合には、樹脂に添加したときに樹脂の流動性を大きく下げてしまうので、成分(A)の平均粒子径は1μm以上が好ましい。
本発明に用いる成分(A)の粒子径分布は、特に限定されないが、黒鉛微粉の樹脂への充填性を高めるために広い粒子径分布を有する黒鉛微粉が好ましい。成分(A)の好ましい粒子径分布は、累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上である。このような粒子径分布を持つ成分(A)を用いると、成形加工時に樹脂組成物が高い流動性を示し、公知の成形方法によって容易に構造体を形成することができる。粒子径分布の広い成分(A)は、大きな平均粒子径を有する塊状及び/又は球状の黒鉛微粉と小さい平均粒子径を有する塊状及び/又は球状の黒鉛微粉とを混合したものであってもよい。
本発明の熱伝導性樹脂組成物を構成する成分(B)の鱗片状黒鉛としては、天然黒鉛と人造黒鉛があるが、鱗片状黒鉛である限り特に限定されない。鱗片状黒鉛は、その黒鉛化度が高く、樹脂に充填した場合に高い熱伝導率が得られるという理由で、人造黒鉛が好ましい。鱗片状黒鉛の好ましい黒鉛化度は、X線回折法により測定される黒鉛結晶の(002)面の面間隔d002で評価される値で、好ましくは0.337以上である。鱗片状黒鉛は、そのアスペクト比(鱗片状黒鉛主面の面積の平方根を厚みで割った値)が、通常5以上、好ましくは10以上のものである。
本発明に用いる成分(B)のBET比表面積は、好ましくは10m/g以下、より好ましくは5m/g以下、特に好ましくは3m/g以下である。BET比表面積が小さくなると、黒鉛微粉の樹脂への充填性が高くなる。BET比表面積が10m/gを超える黒鉛微粉は、50質量%を超える樹脂への高充填が困難になる傾向がある。
本発明に用いる成分(B)の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。しかし、平均粒子径が300μmを超える鱗片状黒鉛微粉は成形品の外観を損ねるので、成分(B)の平均粒子径は300μm以下が好ましい。また、平均粒子径が1μm未満の場合には、樹脂に添加したときに樹脂の流動性を大きく下げてしまうので、成分(B)の平均粒子径は1μm以上が好ましい。
本発明に用いる成分(B)の粒子径分布は、特に限定されないが、黒鉛微粉の樹脂への充填性を高めるために広い粒子径分布を有する黒鉛微粉が好ましい。成分(B)の好ましい粒子径分布は、累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上である。このような粒子径分布を持つ成分(B)を用いると、成形加工時に樹脂組成物が高い流動性を示し、公知の成形方法によって容易に構造体を形成することができる。粒子径分布の広い成分(B)は、大きな平均粒子径を有する鱗片状黒鉛微粉と小さい平均粒子径を有する鱗片状黒鉛微粉とを混合したものであってもよい。
成分(A)と成分(B)の比は、成分(A)と成分(B)の総量に対して成分(A)が好ましくは20〜80質量%の範囲、より好ましくは30〜70質量%の範囲である。この発明の効果が最も顕著に現れるという理由で、40〜60質量%が特に好ましい。成分(A)の量が20質量%未満又は80質量%を超えると、本発明の効果が低くなる傾向になる。
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、上述の樹脂と塊状及び/又は球状の黒鉛と、鱗片状の黒鉛とが含有されてなる。樹脂の含有率は、樹脂と黒鉛微粉(成分(A)と成分(B))の合計100質量%を基準として、50質量%以下の範囲が好ましい。さらに、40質量%以下が特に好ましい。樹脂の含有率が50質量%を超える場合は、熱伝導率が低下傾向になる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)と成分(C)の総量100質量部に対し、0.1〜3質量部の気相法炭素繊維をさらに含有していてもよい。気相法炭素繊維は、例えば、ベンゼン等の有機化合物を原料とし、触媒としてのフェロセン等の有機遷移金属化合物をキャリアーガスとともに高温の反応炉に導入し生成し、続いて熱処理して製造される(特開昭60−54998号公報、特許2778434号公報等参照)。その繊維径は、0.01〜0.5μmで、アスペクト比10〜500程度のものである。気相法炭素繊維の市販品としては、昭和電工株式会社製のVGCF(登録商標)等が挙げられる。気相法炭素繊維を少量添加することにより、熱伝導率が大きく増加する効果がある。
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じて、硬度、強度、導電性、成形性、耐久性、耐候性、耐水性等を改良する目的で、更にガラスファイバー、ウィスカー、金属酸化物、有機繊維、紫外線安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、撥水剤、増粘剤、低収縮剤、親水性付与剤等の添加剤を添加することができる。
なお、本発明の熱伝導性樹脂組成物は、用途に応じて、上述の添加剤を含まないもの、すなわち、樹脂と、塊状又は球状黒鉛微粉と、鱗片状黒鉛微粉とだけからなるものであってもよい。このような組成物の用途としては、例えば添加剤が成形体からブリードアウトして流出すると不都合が生じる分野、具体的には半導体製造工程などで使われる機器や部材、医薬品や食品の加工、包装などに使われる機器や部材などが挙げられる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法は特に制限されない。上記した各成分をロール、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー(登録商標)、ヘンシェルミキサー(登録商標)、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般的に用いられている混合機、混練機を使用し、なるべく均一に混合させるのが好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は後述するように成形して構造体を得てもよいし、半導体などの発熱性部品の封止材や、コーティング材として用いてもよい。
[構造体]
本発明の構造体は、上記の熱伝導性樹脂組成物を成形してなる。本発明の熱伝導性樹脂組成物はいかなる成形法によっても熱伝導率の異方性が小さい構造体を得ることができるので、成形方法は、特に限定されない。例えば、射出成形、射出圧縮成形、プレス成形、押出成形等の樹脂成形の分野で一般的に用いられている成形方法を使用することが出来る。成形法は、用いる樹脂、黒鉛微粉の含有量、成形品の形などを総合的に判断して選択すればよい。
構造体の形状は、用途に応じて適宜選択でき、特に限定されない。構造体の基本形状として、例えば、シート状、板状、棒状、直方体、立方体、球状などが挙げられる。放熱性を考慮すると、表面積の大きくなるシート状又は板状などが好適である。また、構造体を箱状に成形して、携帯電話等の電子機器の筐体としても用いることができる。
本発明の構造体は、熱伝導率の異方性が小さく高い熱伝導性を有するので、放熱の方向に異方性がないことを要求される分野において有用である。また本発明の構造体は、高剛性で、寸法安定性に優れ、またインク等によって汚染されにくいので、このような特性が要求される分野においても有用である。
例えば、発熱性の高い半導体素子、抵抗などの封止用樹脂、あるいは軸受けなどの高い摩擦熱が発生する部品;発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、ソケット、リレーケースなどの電気機器部品用途;センサー、LEDランプ、コネクター、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板など)、DVD部品(光ピックアップなど)、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などの家庭用若しくは事務用電気製品部品;
オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどの機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの光学機器若しくは精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品に適用できる。
これら種々の用途のうち、本発明の熱伝導性樹脂組成物又は構造体は、インクジェットプリンタ、コンパクトディスク(CD)ドライブ、デジタルバーサタイルディスク(DVD)ドライブに好適である。
本発明のインクジェットプリンタは、本発明の構造体を備えている。本発明のインクジェットプリンタの一態様例は、構造体をサーマル式プリンタヘッドのヒーターベースとして備えているものである。インクジェットプリンタのサーマル式プリンタヘッドは、インクを貯留するタンク(インク貯留室)と、タンクを加熱し膨張させるためのヒーターと、ヒーターからの熱をタンクに伝えるヒーターベースと、インクを噴出させるノズルとを少なくとも備えている。すなわち、このインクジェットプリンタの態様例では、このヒーターベースを本発明の構造体で構成しているのである。
本発明のコンパクトディスクドライブ若しくはデジタルバーサタイルディスクドライブ又はこれらディスクドライブを備える電子機器は、本発明の構造体を備えている。本発明のコンパクトディスクドライブ若しくはデジタルバーサタイルディスクドライブ又はこれらディスクドライブを備える電子機器の一態様例は、構造体をピックアップベースの基材として備えているものである。コンパクトディスクドライブやデジタルバーサタイルディスクドライブには半導体レーザーを利用したピックアップが備わっている。このピックアップには、半導体レーザーが発する熱を放散させるためのピックアップベース基材が備わっている。すなわち、このコンパクトディスクドライブ若しくはデジタルバーサタイルディスクドライブ又はこれらディスクドライブを備える電子機器の一態様例では、このピックアップベース基材を本発明の構造体で構成しているのである。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、部及び%は特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例で用いた黒鉛及び樹脂は以下のとおりである。
成分(A):塊状黒鉛(人造黒鉛微粉SCMG−A:昭和電工株式会社製、BET比表面積2.2m/g)
成分(B):鱗片状黒鉛(人造黒鉛微粉ショーカライザー:昭和電工株式会社製、BET比表面積1.6m/g)
成分(C):ポリエーテルサルホン(レーデルA−300A:ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)
実施例1
成分(A)65%、成分(B)22%、及び成分(C)13%の混合物をラボプラストミル(東洋精機工業株式会社製)にて320℃、40回転/分で、10分間溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、50t圧縮成形機(NIPPO ENGINEERING社製 E−3013)を用いて、温度320℃、圧力15MPaで2分間加圧して、100mm×100mm×2mm厚の平板状構造体に成形した。この構造体の熱伝導率を下記のレーザーフラッシュ法により測定した。評価結果を表1に示した。
実施例2
成分(A)43.5%、成分(B)43.5%、及び成分(C)13%の混合物をラボプラストミルにて320℃、40回転/分で、10分間溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、50t圧縮成形機を用いて、温度320℃、圧力15MPaで2分間加圧して、100mm×100mm×2mm厚の平板状構造体に成形した。この構造体の熱伝導率を下記のレーザーフラッシュ法により測定した。評価結果を表1に示した。
実施例3
成分(A)22%、成分(B)65%、及び成分(C)13%の混合物をラボプラストミルにて320℃、40回転/分で、10分間溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、50t圧縮成形機を用いて、温度320℃、圧力15MPaで、2分間加圧して、100mm×100mm×2mm厚の平板状構造体に成形した。この構造体の熱伝導率を下記のレーザーフラッシュ法により測定した。評価結果を表1に示した。
比較例1
成分(A)87%、及び成分(C)13%の混合物をラボプラストミルにて320℃、40回転/分で、10分間溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、50t圧縮成形機を用いて、温度320℃、圧力15MPaで2分間加圧して、100mm×100mm×2mm厚の平板状構造体に成形した。この構造体の熱伝導率を下記のレーザーフラッシュ法により測定した。評価結果を表1に示した。
比較例2
成分(B)87%、及び成分(C)13%の混合物をラボプラストミルにて320℃、40回転/分で、10分間溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、50t圧縮成形機を用いて、温度320℃、圧力15MPaで2分間加圧して、100mm×100mm×2mm厚の平板状構造体に成形した。この構造体の熱伝導率を下記のレーザーフラッシュ法により測定した。評価結果を表1に示した。
Figure 2007106901
なお、本実施例等で行った評価方法は以下のとおりである。
(熱拡散率)
熱伝導性樹脂組成物の平板から直径10mmの円盤を切り出し、20℃において、その円盤の表面に、Laser Flash TC−7000(真空理化株式会社製)を用いてレーザを照射し、円盤の裏面の温度変化を計測し、その円盤の厚み方向の熱拡散率を算出した。
(比熱容量)
熱伝導性樹脂組成物の粉末の比熱容量は、示差走査熱量計DSC7(パーキンエルマー社製)を用いて、JIS K 7123に準拠して測定した。
具体的には、熱伝導性樹脂組成物約10mgをアルミニウムパンに封入した。このパンをホルダーにセットした。0℃で15分間保持し、次いで10℃/分の昇温速度で50℃まで昇温し、熱伝導性樹脂組成物のDSC曲線を得た。同様の温度プロファイルで、基準物質であるα−アルミナ約10mgのDSC曲線を得た。熱伝導性樹脂組成物とα−アルミナのDSC曲線から熱伝導性樹脂組成物の比熱容量を算出した。
(密度)
熱伝導性樹脂組成物の平板から、20mm×20mm×2mm厚の試験片を切り出し、DENSI METER(東洋精機工業株式会社製)を用いて、JIS K 7112に準拠して測定した。
(構造体の厚さ方向熱伝導率の測定)
構造体の厚さ方向熱伝導率は、上記方法で求められた熱拡散率、比熱容量、及び密度により以下の式を用いて算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱容量×密度
以上の結果から、塊状黒鉛と鱗片状黒鉛とを併用した樹脂組成物を成形したもの(実施例1〜3)は、厚み方向の熱伝導率が高くなり、構造体の熱伝導の異方性が小さくなることがわかる。これに対して、塊状黒鉛だけを用いた樹脂組成物を成形したもの(比較例1)、及び鱗片状黒鉛だけを用いた樹脂組成物を成形したもの(比較例2)では、厚さ方向の熱伝導率が小さく、熱伝導の異方性が大きいことがわかる。

Claims (17)

  1. 成分(A):塊状黒鉛及び/又は球状黒鉛と、
    成分(B):鱗片状黒鉛と、
    成分(C):樹脂
    とを含有する熱伝導性樹脂組成物。
  2. 成分(A):塊状黒鉛及び/又は球状黒鉛と、
    成分(B):鱗片状黒鉛と、
    成分(C):樹脂
    からなる熱伝導性樹脂組成物。
  3. 成分(A)と成分(B)の総量に対して、成分(A)が20〜80質量%である請求項1又は2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  4. 成分(A)と成分(B)と成分(C)の総量に対して、成分(C)が50質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  5. 成分(A)及び成分(B)からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分のBET比表面積が10m/g以下である請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  6. 成分(A)及び成分(B)からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分の平均粒子径(D50)が1μm以上300μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  7. 成分(A)及び成分(B)からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分の粒子径分布(D90/D10)が10以上である請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  8. 成分(C)がシリコーン樹脂又はポリエーテルサルホンである請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  9. 熱伝導率が3W/(m・K)以上である請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  10. 成分(A)と成分(B)と成分(C)の総量100質量部に対して、0.1〜3質量部の気相法炭素繊維をさらに含有する請求項1〜9のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物からなる熱伝導性構造体。
  12. 請求項11に記載の熱伝導性構造体を備えた電子機器。
  13. 請求項11に記載の熱伝導性構造体を備えたインクジェットプリンター。
  14. 請求項11に記載の熱伝導性構造体を備えたコンパクトディスクドライブ。
  15. 請求項11に記載の熱伝導性構造体を備えたデジタルバーサタイルディスクドライブ。
  16. 請求項14に記載のコンパクトディスクドライブを備えた電子機器。
  17. 請求項15に記載のデジタルバーサタイルディスクドライブを備えた電子機器。
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