JP2016088984A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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有紀年 大眉
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義臣 堀口
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Abstract

【課題】熱伝導性、絶縁性、機械強度が要求される用途に有用なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して無機充填剤を100〜200重量部配合してなる樹脂組成物であって、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、およびタルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラーを40〜90重量部、ならびに黒鉛をポリフェニレンスルフィド樹脂組成物全量に対して3〜13重量%含有することを特徴とするポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は電子機器に搭載されるLSI(Large Scale Integration)等の電子部品や他の発熱性電気部品の冷却部材などの、熱伝導性、絶縁性、機械強度が要求される用途に有用なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下PPS樹脂と略す場合もある)は高耐熱性のスーパーエンジニアリングプラスチックに属し、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、電気特性および寸法安定性などを有していることから、射出成形用を中心として、各種電気・電子部品、家電部品、自動車部品および機械部品などの用途に幅広く使用されている。
一方、電子機器に搭載されるLSI等の電子部品は、発熱量が大きく、その熱によって電子部品が誤動作するおそれや、破損するおそれがある。そこで、電子部品にヒートシンク(放熱板)を取り付け、ヒートシンクによって電子部品からの発熱を吸熱し放熱することが行われている。
ヒートシンクは、アルミニウムなどの導電性を有する金属性材料により構成されるため、電子部品と電磁的に結合し、電子部品の内部で発生する電磁ノイズを外部に放射するアンテナとして機能することがある。電子部品から外部に輻射される電磁波は、一定レベル以上になると人体や他の電子機器に悪影響を与える電磁妨害(EMI:Electromagnetic Interference)を生じる。
EMI対策としてヒートシンクにセラミックスを用いる方法があるが、セラミック材料は部品を作製する際に、一つずつ切削、手間がかかるため、コストが高くなる課題がある。また、ヒートシンクは放熱効率を向上させるためフィン形状で製造されることが多いがセラミック材料は成形加工性が悪く、形状自由度が低い課題がある。
このため、上記電子部品用途放熱部材の課題に対し、熱伝導性、絶縁性、機械強度を有する、新たな樹脂材料が求められている。
発熱性電子部品用途の放熱部材として、特許文献1には、ポリフェニレンスルフィド樹脂、黒鉛、タルク、ガラス繊維を主成分とする、金属腐食性が少なく、成形加工性かつ熱伝導性に優れる熱可塑性樹脂組成物からなる放熱部材が開示されている。しかし、熱伝導性を有する絶縁性フィラーの配合量については開示されておらず、当樹脂組成物は電子部品に用いるには熱伝導性が不足しており、絶縁性を有しかつ、電子部品用途に適する熱伝導性を有した樹脂組成物を得る方法については記載されていない。
また、特許文献2には、ポリフェニレンスルフィド樹脂、水酸化マグネシウム、ガラス繊維およびオレフィン系樹脂を主成分とする、成形加工性、熱伝導性、成形品薄肉部への充填性と機械的強度に優れたLED放熱用部材が開示されている。しかし、当樹脂組成物は電子部品に用いるには熱伝導性が不足しており、絶縁性を有しかつ、電子部品用途に適する熱伝導性を有した樹脂組成物を得る方法については何ら記載されていない。
さらに、特許文献3にはポリフェニレンスルフィド樹脂、水酸化マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、ガラス繊維を主成分とする、成形加工性に優れ、特に成形時における金型などの金属部を腐蝕、汚染することがなく、又、金属材を組み合わせた成形部品における金属の対腐蝕性が改善され、しかも成形品の機械物性に優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物が開示されている。しかし、当樹脂組成物は電子部品に用いるには熱伝導性が不足しており、絶縁性を有しかつ、電子部品用途に適する熱伝導性を有した樹脂組成物を得る方法については何ら記載されていない。
特開2007−31611号公報 特開2011−228685号公報 特開平9−157523号公報
本発明は電子機器に搭載されるLSI等の電子部品や他の発熱性電気部品の冷却部材などの、熱伝導性、絶縁性、機械強度が要求される用途に有用なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることを課題とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂に水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラーと黒鉛を規定量配合することで、熱伝導性、絶縁性、機械強度が要求される用途に有用なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、下記を提供するものである。
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して無機充填剤を100〜200重量部配合してなる樹脂組成物であって、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、およびタルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラーを40〜90重量部、ならびに黒鉛をポリフェニレンスルフィド樹脂組成物全量に対して3〜13重量%含有することを特徴とするポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
(2)絶縁性フィラーが水酸化マグネシウムである(1)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)前記黒鉛のX線回折法による黒鉛層間の面間隔d(0.02)は0.3360nm未満であり、かつ黒鉛結晶の結晶子サイズLc(0.02)が100nm以上であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(4)前記黒鉛の平均粒子径が25〜60μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(5)樹脂組成物からなる成形品の体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上である(1)〜(4)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(6)樹脂組成物からなる成形品のホットディスク法スラブモードで計測した熱伝導率が1W/m・K以上である(1)〜(5)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品。
(8)成形品が、発熱部を有する電気部品の放熱部材である請求項7記載の成形品。
本発明によれば、電子機器に搭載されるLSI等の電子部品などの熱伝導性、絶縁性、機械強度が要求される用途に有用なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるポリフェニレンスルフィド樹脂の代表例としては、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリアリーレンスルフィドが特に好ましく使用される。かかるポリアリーレンスルフィドは、下記構造式で示される繰り返し単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%以上の場合には、耐熱性が優れる点で好ましい。
Figure 2016088984
また、かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
Figure 2016088984
かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。しかしながら、空気中加熱による架橋/高分子量化はポリアリーレンスルフィド樹脂の酸化着色を招くため、白色性の目標を達成するために、加熱による架橋/高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合に、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンスルフィド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンスルフィド樹脂と水との割合は、水の多い方がよく、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンスルフィド樹脂200g以下の浴比で使用される。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが用いられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明で用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた流動性を得る意味からその溶融粘度は低い方が好ましい。例えば1Pa・s以上(ダイス長10mm、ダイス孔直径1mm、310℃、剪断速度1216/s)が好ましく、より好ましくは2Pa・s以上である。上限は25Pa・s以下が好ましく、より好ましくは20Pa・s以下である。
なお、ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は東洋精機(株)社製キャピログラフを用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径1mm、310℃、剪断速度1216/sの条件により測定することができる。
また、流動性と機械特性を両立せしめる目的で、溶融粘度の異なる2種のポリアリーレンスルフィド樹脂を併用しても良い。例えば、低溶融粘度ポリアリーレンスルフィド樹脂として1Pa・s以上、より好ましくは2Pa・s以上、上限bは25Pa・s以下、より好ましくは20Pa・s以下(ダイス長10mm、ダイス孔直径1mm、310℃、剪断速度1216/s)のものと、高溶融粘度ポリアリーレンスルフィド樹脂として30Pa・s以上、より好ましくは40Pa・s以上、上限は90Pa・s以下、より好ましくは60Pa・s以下(ダイス長10mm、ダイス孔直径1mm、310℃、剪断速度1216/s)のものを併用するのが好ましい。低溶融粘度ポリアリーレンスルフィド樹脂/高溶融粘度ポリアリーレンスルフィド樹脂の併用比率(重量比)は30:70〜75:25であることが好ましく、より好ましくは、35:65〜70:30である。
本発明で用いる水酸化マグネシウムは、化学式Mg(OH)で示される無機物を80重量%以上含む比較的純度の高い水酸化マグネシウムが好ましく、熱伝導率、機械的強度や溶融粘度の点から、好ましくはMg(OH)で示される無機物を80重量%以上、CaO含量5重量%以下、塩素含量1重量%以下、より好ましくはMg(OH)2を95重量%以上含みかつ、CaO含量1重量%以下、塩素含量0.5重量%以下、さらに好ましくは、Mg(OH)98重量%以上含みかつ、CaO含量0.1重量%以下、塩素含量0.1重量%以下の高純度水酸化マグネシウムが適している。
本発明で用いる水酸化マグネシウムの形状は、粒子状、フレーク状、繊維状いずれでもよいが分散性などの観点から粒子状、フレーク状が最も好適である。また、その粒子径に関して特に限定はないが、樹脂組成物の機械的強度や溶融粘性のバランス上、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜4μmの範囲のものが適当である。
この水酸化マグネシウムを、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールで表面処理して使用することは好ましく、特にエポキシシラン化合物、アミノシラン化合物で表面処理した水酸化マグネシウムの適用は熱伝導性向上効果、機械的強度の点で好適である。
本発明で使用される炭酸マグネシウムは化学式MgCOで示される結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩、または化学式xMgCO・Mg(OH)・yHO(Mg(OH)に対して、xは3〜5、yは3〜7の比となる)で表される塩基性炭酸マグネシウムが挙げられる。結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩は熱可塑性樹脂組成物の溶融混練時に質量減少に伴うガスの発生および質量減少成分(結晶水の脱離)による熱可塑性樹脂組成物の配合成分の分解および発泡等が発生しにくいため、機械的物性、熱伝導性の特性バランスが向上する傾向にある。
また、化学式MgCOで示される結晶水を含まない炭酸マグネシウム無水塩は、天然品および合成品が存在する。天然品は不純物量が多いため、湿熱時の金属および熱硬化性樹脂への密着性にバラツキが発生する可能性がある。このため、炭酸マグネシウム無水塩は、合成品であることが好ましい。
本発明で使用される炭酸マグネシウムは平均粒子径が0.1〜40μmの範囲にあることが好ましく、1〜35μmがより好ましい。平均粒子径が0.1μm以下であると成形加工時の流動性、熱伝導率が低下する傾向にある。また平均粒径が40μm以上であると、組成物中への炭酸マグネシウムの分散性が低下し、機械的強度、熱伝導率にバラツキが生じる傾向にある。
本発明で使用される炭酸マグネシウムの形状は、粒子状、フレーク状、多面体状、繊維状いずれでも良いが、分散性などの観点から、粒子状、多面体状が最も好適である。
本発明で使用する炭酸マグネシウムを、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロキシシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールで表面処理することが好ましく、特にエポキシシラン化合物、アミノシラン化合物で表面処理した炭酸マグネシウムの適用は、ポリアリーレンスルフィド樹脂との親和性を向上させ、機械的強度の点で好適である。
本発明に用いる酸化マグネシウムは、硬焼マグネシアが好ましい。マグネシアの製造方法には、炭酸マグネシウム(マグネサイトともいう)を焼成する方法と、海水あるいは塩化マグネシウム水溶液(苦汁またはかん水)に水酸化カルシウムを加えて水酸化マグネシウムを生成させ、これを濾過、乾燥した後、焼成する方法とがある。
上記の水酸化マグネシウムを焼成して製造されるマグネシアは、焼成温度によって水酸化マグネシウムを1500℃以上の高温で焼成したものを硬焼(重焼、死焼ともいう)マグネシアまたはマグネシアクリンカーと呼ばれる。本マグネシアは、粒子表面活性基が少なく、耐水性に優れる。
マグネシアを充填材として使用する場合、水と接触した場合や高湿度環境に曝された場合に水酸化マグネシウムに変換されやすい性質を有している。とりわけ、高温高湿度環境下では、著しく水酸化マグネシウムに変換され、樹脂組成物の重量増加および寸法変化に伴う強度保持率の低下を引き起こす。
本発明に用いる酸化マグネシウムにおいて、マグネシア間の空隙率を低下させ、より密に充填することで熱伝導性と高温高湿度処理後の強度保持率を高位でバランス化させるため、粒径が特定の範囲内に分布していることが好ましく、具体的にはレーザー光回折によって測定されたレーザー光回折法によって得られた酸化マグネシウムの平均粒子径が0.5〜60μmであることが好ましく、1〜50μmがより好ましい。
平均粒子径0.5μm以上の酸化マグネシウムを用いることで、樹脂組成物の溶融混練時の負荷が増大を抑制することができ、マグネシア微細粒子により誘発される水酸化マグネシウム変換因子の増大による高温高湿度環境下での耐水性悪化を防ぐことができるので好ましい。粒子径が60μm以下の酸化マグネシウムを用いることで、樹脂組成物中での分散性が悪化を防ぎ、高温高湿度環境下での強度保持性の低下を防ぐことができるので好ましい。
本発明で使用されるタルクは化学式3MgO・4SiO・HOで表される化学的に安定な珪酸塩化合物である。通常はその他の不純物も含んでおり、その種類・量はタルク原石の産地によって異なるが、本発明で用いられるタルクとしては、それらの点で特に限定されるものではない。
熱伝導性と機械強度を高位でバランス化させるため、粒径が特定の範囲内に分布していることが好ましく、レーザー光回折によって測定されたレーザー光回折法によって得られたタルクの平均粒子径が0.1〜40μmのものが好ましく用いられ、1〜30μmのものがより好ましく用いられる。
本発明において、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、酸化チタン以外の充填材を配合することは機械的強度向上などの点で好ましい。かかる無機充填材の具体例としてはガラス繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいは、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウムなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、およびシリカなどの非繊維状充填材が用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。機械的強度向上の観点から、ガラス繊維を用いるのが好ましい。
また、これらの無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
本発明に用いる黒鉛はX線回折法による黒鉛層間の面間隔d(002)が0.3360nm未満であり、かつ黒鉛結晶の結晶子サイズLc(002)が100nm以上である黒鉛は、以下のような構造の指標を備えている。
第1の指標として、X線回折装置を用い、日本学術振興会法に準拠して求められた黒鉛層間の面間隔(以下、層面間距離)d(002)が0.3360nm未満の範囲であり、より好ましくは0.3358以下である。層面間距離d(002)は、X線回折パターン の002回折から得られた層面間距離を示す。黒鉛は、常温、常圧下で安定した炭素の結 晶であり、黒鉛結晶の理論層面間距離d(002)0.3354nmに近い程黒鉛化が発 達している。つまり、層面間距離d(002)の測定値によって、黒鉛化の程度を推定することができる。d(002)が0.3360nm以上になると、黒鉛化が十分になっているとはいえない。
第2の構造指標として、X線回折装置を用い、日本学術振興会法に準拠して求められた黒鉛結晶の結晶子サイズLc(002)が100nm以上である。結晶子サイズLc(0 02)は、X線回折パターンの002回折線から得られた002方向、すなわち厚み方向 の結晶子の大きさを示す。黒鉛結晶の結晶子サイズは、黒鉛化の発達に伴って大きくなる 。つまり結晶子サイズの測定値によっても、黒鉛化の程度を推定することができる。すな わち、結晶子サイズLc(002)が100nm未満である場合、黒鉛化が十分になっているとはいえない。黒鉛結晶の厚み方向のサイズが大きくなることで、熱を伝える体積が増える。このように第1の構造指標の層面間距離d(002)が0.3360nm未満であり、かつ第2の構造指標である黒鉛結晶の結晶子サイズLc(002)が100nm以 上であれば、黒鉛化が十分に進んでおり、熱伝導率の高い黒鉛であるといえる。
本発明で使用される黒鉛の平均粒子径が25〜60μmであることが、熱伝導性と成形加工性の観点から好適である。好ましくは、35〜50μmであり、平均粒子径が25μm以上とすることで、成形加工時の流動性低下、熱伝導率低下を防ぐことができるので好ましい。また平均粒径が60μm以下とすることで、組成物中への黒鉛の分散性低下、機械的強度や熱伝導率のバラツキを防ぐことができるので好ましい。黒鉛の平均粒子径は、レーザー回折法によって測定する。
本発明で使用される黒鉛の形状は、粒状、繊維状、フレーク状、鱗片状いずれでもよいが分散性などの観点から粒子状、鱗片状が好適であり、組成物中で黒鉛同士が接触しやすく、高い熱伝導率向上効果が得られることから、鱗片状が最も好ましい。
なお、本発明に使用する上記の黒鉛は、その表面を公知のカップリング剤、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリ シドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、 β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラ ン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2 −アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシ シランなどのアミノシラン化合物や、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリ ルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールで表面処理して使用すること は好ましく、特にエポキシシラン化合物、アミノシラン化合物で表面処理した、上記黒鉛 は、機械的強度の向上に有効である。
本発明の樹脂組成物は、機械的強度および熱伝導性を向上せしめる目的で、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラーと黒鉛を含む無機充填材をポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、100重量部以上含有することが必須であり、好ましくは120重量部以上である。上限は200重量部以下含有することが必須であり、好ましくは180重量部以下含有するものである。100重量部未満では、熱伝導率が低くなり、電子部品の温度上昇による放熱効果が低くなるため、機器の性能低下や、寿命低下を招くため好ましくなく、200重量部を超えて配合すると、押出加工性が悪くなり、ペレタイズが困難であり、好ましくない。また、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラーをポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、40重量部以上含有することが必須であり、好ましくは45重量部以上である。上限は90重量部以下含有することが必須であり、好ましくは85重量部以下含有するものである。40重量部未満では、熱伝導率が低くなり、電子部品の温度上昇による放熱効果が低くなるため、機器の性能低下や、寿命低下を招くため好ましくなく、90重量部を超えて配合すると、押出加工性が悪くなり、ペレタイズが困難であり、好ましくない。
ここで、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、100重量部以上200重量部以下の無機充填剤を配合するために、絶縁性フィラー、黒鉛とは異なる無機充填剤を併用することができる。ここで用いられる水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラー、黒鉛以外の無機充填剤としてはガラス繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、アルミナ、酸化ジルコニウムなどの金属化合物、炭酸カルシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、およびシリカなどの非繊維状充填材が用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。機械的強度向上の観点から、ガラス繊維を用いるのが好ましい。
また、これらの無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
さらに本発明の樹脂組成物には、絶縁性を低下させることなく熱伝導性を向上せしめる目的で、黒鉛をポリフェニレンスルフィド樹脂組成物全量に対して、3重量%以上含有することが必須であり、好ましくは5重量%以上である。上限は13重量%以下含有することが必須であり、好ましくは10重量%以下含有するものである。3重量%未満では、熱伝導率が低くなり、電子部品の温度上昇による放熱効果が低くなるため、機器の性能低下や、寿命低下を招くため好ましくなく、13重量%を超えて配合すると、絶縁性が低下するため、ヒートシンクが電子部品の内部で発生する電磁ノイズを外部に放射するアンテナとして機能し、人体や他の電子機器に悪影響を与えるおそれがあり好ましくない。
本発明の樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、無機微粒子、有機リン化合物、金属酸化物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、モンタン酸ワックス類、モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素、ポリエチレンワックス、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン、ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の酸化防止剤、耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、発泡剤、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせ等)などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明の樹脂組成物には、通常公知の方法で製造される。例えば、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラー成分、黒鉛成分、ポリフェニレンスルフィド樹脂成分および必要に応じて無機充填材やその他の必要な添加剤を予備混合して、または予備混合することなく押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。具体的には原料の混合物を単軸あるいは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常公知の溶融混練機に供して260〜400℃の温度で混練する方法などを例として挙げることができる。また、原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を溶融混練する方法、あるいは一部の原料を単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明の樹脂組成物は、成形品としたときに、体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上、1017Ω・cm以下のものであり、電子部品の内部で発生する電磁ノイズを外部に放射するアンテナとして機能しないため、発熱源を有する電気部品の放熱部材として好適である。さらに好ましくは1012Ω・cm以上、1017Ω・cm以下のものである。
本発明の樹脂組成物、成形品としたときに、ホットディスク法スラブモードで計測した熱伝導率が1W/m・K以上、20W/m・K以下のものであり、熱伝導性に優れることから、発熱源を有する電気部品の放熱部材として好適である。さらに好ましくは3W/m・K以上、20W/m・K以下のものである。
本発明の樹脂組成物は通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形ができ、得られる成形品は発熱性電子部品用途の放熱部材として適している。なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形により成形することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性、絶縁性、機械強度に優れているため、
EMI対策が必要となる電子機器に搭載されるLSI等の電子部品や他の発熱性電気部品、その発生した熱を放散する部材、構成部品、周辺部品、筐体に適している。特に、LSI、CPU(Central Processing Unit)、LED(Light Emitting Diode)ランプ、レーザープリンタの定着器などの発熱源を有する電気部品の放熱部材に有用である。具体的にはデスクトップパソコン、ノートパソコン、ゲーム機、ディスプレー装置(CRT(Cathode Ray Tube)、液晶、プラズマ、プロジェクタ、および有機EL(Electroluminescence)など)、並びにプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)などのハウジングおよびシャーシ成形品において好適である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その他幅広い用途に有用であり、例えば、携帯情報端末、携帯電話、携帯書籍、携帯テレビ、記録媒体(CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、次世代高密度ディスク、ハードディスクなど)のドライブ、記録媒体(IC(Integrated Circuit)カード、スマートメディア、メモリースティックなど) の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR(Videotape recorder)、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、およびタイプライターなどを挙げることができ、これらのハウジング成形品やその他の部品に本発明の熱可塑性樹脂組成物から形成された樹脂製品を使用することができる。またその他の樹脂製品としては、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピューター部品などの車両用部品を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
参考例1 ポリフェニレンスルフィド樹脂の調整(PPS−1)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.48kg(71.27モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPS−1を得た。得られたPPS−1は、溶融粘度が10Pa・sであった。なお、溶融粘度は東洋精機(株)社製キャピログラフを用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径1mm、310℃、剪断速度1216/sの条件で測定した値である。
参考例2 ポリフェニレンスルフィド樹脂の調整(PPS−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p-ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が50Pa・s(ダイス長10mm、ダイス孔直径1mm、310℃、剪断速度1216/s)であった。
原材料
水酸化マグネシウム
協和化学工業社製“KISUMA5EU”、比重 2.4、平均粒子径 0.7μm,塩素含量 400ppm
炭酸マグネシウム
神島化学製“合成マグネサイトMSPS” 平均粒子径 20μm
酸化マグネシウム
神島化学製“マグシーズEP1−A” 平均粒子径 2.7μm
タルク
林化成製“PK−S” 平均粒子径 10μm
無機充填材 ガラス繊維
日本電気硝子社製“ECS03T−747H” 平均繊維直径10.5μm
黒鉛
ユニオンカーボン社製“CFW−50A”、層面間距離d(002)0.3355nm、結晶子サイズLc(002)100nm以上、平均粒子径50μm。
実施例1〜7
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示す参考例1および参考例2のポリフェニレンスルフィド樹脂、絶縁性フィラーおよび、黒鉛を原料供給口から投入し、ガラス繊維を中間添加口から投入し、樹脂温度320℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。押出加工性は○×で評価を行った。ついで130℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016088984
比較例1〜8
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−44)を用いて、表1に示す参考例1および参考例2のポリフェニレンスルフィド樹脂、絶縁性フィラーおよび、黒鉛を原料供給口から投入し、ガラス繊維を中間添加口から投入し、樹脂温度320℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。結果を表2に示す。比較例7はストランドが脆く、ペレタイズが出来なかった。
Figure 2016088984
(1)成形品の体積固有抵抗値測定
射出成形機(住友重機械工業社製SE100DU)を用い、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の温度条件で、角形成形品(80mm×80mm×3mm厚み、フィルムゲート)を作製し、超絶縁計R―503(川口電気製作所製)により、ASTM D257に準拠し、体積固有抵抗値を求めた。
(2)熱伝導率
射出成形機(住友重機械工業社製SE100DU)を用い、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の温度条件で、角形成形品(80mm×80mm×3mm厚み、フィルムゲート)を作製し、ホットディスク法熱伝導率測定装置(京都電子工業製TPS−2000)により、ISO22007−2(SLABモード)に準拠し、熱伝導率を測定した。この値が高いほど、熱伝導性に優れる。実施例1〜7は1.0W/m・K以上の値を示し、放熱効果が高くなるため、発熱性電子部品の寿命が向上する。
本発明の樹脂組成物は、優れた熱伝導性、絶縁性、機械強度を有する。従って、形状、構造上も機械的強度の上でも自由度の多い発熱性電気部品用の放熱部材を作ることができ、本発明によって製造した発熱性電気部品用の放熱部材は軽量化や製造工程の簡素化に役立つものである。

Claims (8)

  1. ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して無機充填剤を100〜200重量部配合してなる樹脂組成物であって、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、およびタルクから選ばれる1種以上の絶縁性フィラーを40〜90重量部、ならびに黒鉛をポリフェニレンスルフィド樹脂組成物全量に対して3〜13重量%含有することを特徴とするポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
  2. 絶縁性フィラーが水酸化マグネシウムである請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記黒鉛のX線回折法による黒鉛層間の面間隔d(0.02)は0.3360nm未満であり、かつ黒鉛結晶の結晶子サイズLc(0.02)が100nm以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記黒鉛の平均粒子径が25〜60μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 樹脂組成物からなる成形品の体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上である請求項1〜4のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 樹脂組成物からなる成形品のホットディスク法スラブモードで計測した熱伝導率が1W/m・K以上である請求項1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品。
  8. 成形品が、発熱部を有する電気部品の放熱部材である請求項7記載の成形品。
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