JP5353379B2 - 異方性形状の窒化アルミニウムフィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
放熱シートとしては、従来、熱伝導性のフィラーをマトリックス樹脂中に分散させたものなどが知られている。
窒化アルミニウムは、熱伝導率及び電気絶縁性に優れ、熱膨張係数がシリコンに近いことから、高放熱性の半導体実装用基板を始め、半導体封止用樹脂等の熱伝導性フィラー等として応用されることが期待されている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、窒化アルミニウムフィラーと等方性形状の粒子と熱硬化性樹脂とを含有する。
本発明に係る窒化アルミニウムフィラーは、異方性形状であり、球状粒子のような等方性形状であるものは含まれない。また、異方性形状であれば、その形状は特に限定されず、例えば、繊維状でも板状でもよいが、熱伝導性制御の観点から繊維状であるのが好ましい。なお、ここで規定する窒化アルミニウムフィラーの形状は、本発明の熱硬化性樹脂組成物とする前の状態での窒化アルミニウムフィラーの形状である。
本発明に係る窒化アルミニウムフィラーの長さは、本発明の効果を著しく損なわなければ制限はないが、熱伝導経路が効率的に成形されやすい点では長い方が好ましく、また、一方、フィラーの分散性、及び得られる熱硬化性樹脂組成物の流動性及び成形性の点では短い方が好ましい。具体的には、通常0.125μm以上、好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは2μm以上、特に好ましくは20μm以上、最も好ましくは50μm以上がよく、また、通常5000μm以下、好ましくは2000μm以下、更に好ましくは500μm以下、特に好ましくは100μm以下がよい。そして、特に、本発明に係る窒化アルミニウムフィラーが繊維状である場合は、好ましくは1.25μm以上、更に好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上、最も好ましくは50μm以上がよく、また、好ましくは3000μm以下、更に好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下、最も好ましくは100μm以下がよい。また、特に、本発明に係る窒化アルミニウムフィラーが板状である場合は、好ましくは1.25μm以上、更に好ましくは2μm以上、特に好ましくは10μm以上がよく、また、好ましくは1500μm以下、更に好ましくは60μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは15μm以下がよい。
本発明に係る窒化アルミニウムフィラーは、通常、窒化アルミニウムの単結晶と思しき粒子の集合体であり、すなわち、窒化アルミニウムの単結晶と思しき粒子が融着して繊維状になったものである。このような窒化アルミニウムフィラーの形状は、走査型電子顕微鏡等により確認することができる。
また、本発明に係る窒化アルミニウムフィラーは、熱伝導性などの本発明の効果を著しく損なわなければ、種々の表面処理などが施されていてもよい。具体的には、例えば、樹脂とフィラーとの界面の親和性や接合性を高める、窒化アルミニウムフィラー表面の疎水性を高めるなどを目的とした市販のカップリング剤などによる処理等が挙げられる。好適に用いられるカップリング剤としては、シラン系、チタネート系などが挙げられる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を高強度にするためには、本発明に係る窒化アルミニウムフィラーの強度が高いことが好ましい。
なお、本発明に係る窒化アルミニウムフィラーとしては、組成や形状が同一のもののみを用いても、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
本発明に係る窒化アルミニウムフィラーは、熱伝導性などの本発明の効果を著しく損なわなければ、どのような方法で製造されたものでもよいが、以下に特に好ましい製造方法の一例について説明する。この方法によれば、高いアスペクト比を有する窒化アルミニウムフィラーを実用的且つ安全に製造することができる。
この好ましい方法では、酸化アルミニウムフィラーと炭素源とを含む組成物を窒素雰囲気下で加熱することにより、窒化アルミニウムフィラーを製造する。
酸化アルミニウム(アルミナ)は、主成分として酸化アルミニウムを含有していれば、特に限定されない。酸化アルミニウムは、α、γ、θ、η等の何れの結晶構造を有するものでも構わないが、α型及びγ型が好ましい。
すなわち、酸化アルミニウムフィラーのアスペクト比は、上述の窒化アルミニウムフィラーのアスペクト比と同様の形状が好ましい。また、酸化アルミニウムフィラーの長さは、本発明の熱硬化性樹脂組成物において熱伝導経路が効率的に形成されやすいこと及び窒化反応時に酸化アルミニウムフィラー同士の融着凝集が起こりにくいことから長い方が好ましく、また、一方、酸化アルミニウムフィラーの分散性、及び本発明の熱硬化性樹脂組成物における流動性、成形性の点では短い方が好ましいため、上述の窒化アルミニウムフィラーの長さと同様の形状が好ましい。そして、酸化アルミニウムフィラーの長さ方向に垂直な方向の長さも、本発明の熱硬化性樹脂組成物において熱伝導経路が効率的に形成されやすく、窒化反応時の酸化アルミニウムフィラー同士の融着凝集が起こりにくいことから長い方が好ましく、また、一方、本発明の熱硬化性樹脂組成物における窒化アルミニウムフィラーの分散性及び加工性の点では短い方が好ましいため、上述の窒化アルミニウムフィラーの長さ方向に垂直な方向の長さと同様の形状が好ましい。
この好ましい方法で用いられる炭素源としては、固体炭素が好ましく、具体的には、カーボンブラック、黒鉛、及び高温で炭素源となり得るカーボン前駆体等が使用できる。カーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法などのカーボンブラック、及びアセチレンブラックなどを使用することができる。また、カーボン前駆体としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フランフェノール樹脂等の合成樹脂縮合物;ピッチ、タール等の炭化水素化合物及びセルロース、ショ糖、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンなどの有機化合物等が挙げられる。これらのうち、入手し易さ、作業性及び反応の安定性などの点から、カーボンブラック及びカーボン前駆体が好ましく、カーボンブラックが更に好ましい。また、カーボン前駆体の中では、フェノール樹脂、セルロース、ポリフェニレンなどの金属などの不純物が少ない樹脂が好ましい。
窒素気流中で加熱する原料には、窒化アルミニウムの生成を大幅に妨げなければ、酸化アルミニウムフィラー及び炭素源以外の成分が含まれていても構わない。酸化アルミニウムフィラー及び炭素源以外の成分が含まれている場合における、原料中に含まれる酸化アルミニウムフィラーと炭素源の合計量は、通常、50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上である。上限は、100重量%であるのが好ましい。
窒素雰囲気中には、酸化アルミニウムフィラーの窒化アルミニウムフィラーへの変化を大きく妨げなければ、窒素ガス以外の気体が混入されていても構わないが、通常、窒素99体積%以上の雰囲気で行う。なお、窒素雰囲気下での加熱は、通常、原料成分をアルミナ製ルツボや黒鉛ルツボに移し、窒素気流を流通させた状態で行う。
加熱時間は、原料組成及び酸化アルミニウムフィラーの形状などにより異なるが、上述の好ましい条件で反応を行う場合は、通常、48時間以内に反応が終了する。
本発明に係る等方性形状の粒子は、通常、アスペクト比が1.0以上2.5未満である。本発明に係る等方性形状の粒子のアスペクト比は、本発明に係る窒化アルミニウムフィラーの分散性の点では小さい方が好ましい。具体的には、アスペクト比が2.0未満であるのが好ましく、1.5未満であるのが更に好ましい。なお、下限は、1.0である。このアスペクト比に該当していれば、多面体形状でも、略球状でも構わないが、真球に近い形状が好ましい。
本発明に係る等方性形状の粒子の「長さ」及び「長さ方向に垂直な方向の長さ」は、アスペクト比が上述の範囲内であれば、特に制限はされないが、本発明の熱硬化性樹脂組成物中における窒化アルミニウムフィラーの分散性及び成形性の点では小さい方が好ましく、窒化アルミニウムフィラーの分散性制御の点では大きい方が好ましい。特に、等方性形状の粒子の「長さ方向に垂直な方向の長さ」は、この窒化アルミニウムフィラーの分散性制御の点では、窒化アルミニウムフィラーの長さの0.7倍以上であるのが好ましく、0.8倍以上であるのが更に好ましく、0.9倍以上であるのが特に好ましく、1.0倍以上であるのが最も好ましく、また、一方、2.5倍以下であるのが好ましく、2.0倍以下であるのが更に好ましく、1.7倍以下であるのが特に好ましく、1.5倍以下であるのが最も好ましい。具体的には、本発明に係る等方性形状の粒子の長さは、通常3μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上がよく、また、一方、通常300μm以下、好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下であるのがよい。そして、本発明に係る等方性形状の粒子の「長さ方向に垂直な方向の長さ」は、通常3μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上がよく、また、一方、通常300μm以下、好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下であるのがよい。
等方性形状の粒子としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の絶縁性のセラミック粒子;炭化珪素、窒化珪素等の導電性のセラミック粒子;銅、アルミニウム等の金属粒子などが好適に用いられる。これらのなかで、電気又は電子機器用の放熱シートとしては、熱伝導率と電気絶縁性を兼ね備えた絶縁性のセラミック粒子が好ましく、酸化アルミニウム粒子が特に好ましい。
本発明に係る等方性形状の粒子には、本発明の効果を著しく損なわなければ、上述の絶縁性のセラミック、導電性のセラミック又は金属等好適な成分以外のその他の成分が含まれていてもよい。但し、本発明に等方性形状の粒子中にその他の成分が含まれている場合でも、等方性形状の粒子中にこれらの好適な成分は、通常、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上含まれているのがよい。ここで、上限は、100重量%である。
本発明に係る等方性形状の粒子としては、組成や形状が同一のもののみを用いても、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
本発明に係る熱硬化性樹脂は、熱エネルギーの付与により、その分子構造が3次元化する樹脂である。ここで、熱エネルギーと同等のエネルギーの付与により3次元化されるのであれば、光などの熱以外のエネルギーの付与によりその分子構造が3次元化する樹脂も含まれる。具体的には、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等が成形加工時の自由度が高いことから好ましい。また、これらのうち、特に、耐熱性を必要とする用途には、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂が好ましく、シリコーン樹脂が特に好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の優れた効果を著しく損ねない範囲で、窒化アルミニウムフィラー、等方性形状の粒子及び熱硬化性樹脂以外の成分が含まれていてもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれていてもよい成分としては、例えば、各種安定剤、着色剤、可塑剤、滑材、離型剤、酸化防止剤、硬化剤、難燃剤、粘度調整剤等の添加剤及び熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらのその他成分が含まれる場合における、熱硬化性樹脂組成物中における窒化アルミニウムフィラーと等方性形状の粒子と熱硬化性樹脂の合計量は、本発明の優れた効果を発現しやすいことから高い方が好ましく、通常、70重量%以上であるのが好ましく、80重量%以上であるのが更に好ましく、90重量%以上であるのが特に好ましく、95重量%以上であるのが最も好ましい。又、上限は高い方が好ましいので、100重量%が好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の組成について説明する。窒化アルミニウムフィラーは、熱伝導性の点では多い方が好ましいが、成形加工性の点では少ない方が好ましい。また、等方性形状の粒子は窒化アルミニウムフィラーに対する相対量として多い方が窒化アルミニウムフィラーの分散性が向上しやすいために熱伝導性の点で好ましいが、成形加工性の点では熱硬化性樹脂組成物中の絶対量が少ない方が好ましい。具体的には、等方性形状の粒子は、本発明の熱硬化性樹脂組成物中における窒化アルミニウムフィラー100重量部に対して、通常100重量部以上、好ましくは300重量部以上、更に好ましくは400重量部以上であるのがよく、通常750重量部以下、好ましくは700重量部以下、更に好ましくは650重量部以下であるのがよい。また、熱硬化性樹脂は、本発明の熱硬化性樹脂組成物中における窒化アルミニウムフィラー100重量部に対して、通常40重量部以上、好ましくは80重量部以上、更に好ましくは100重量部以上であるのがよく、通常200重量部以下、好ましくは170重量部以下、更に好ましくは150重量部以下がよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも窒化アルミニウムフィラーと等方性形状の粒子と熱硬化性樹脂とが含有されていれば、これらの各成分を混合しても、敢えて混合操作を行わなくても構わないが、各成分を混合する方が窒化アルミニウムフィラーの分散性の点で好ましい。
混合する場合の混合方法は、本発明の効果を著しく損なわなければ制限はなく、窒化アルミニウムフィラー、等方性形状の粒子及び熱硬化性樹脂を同時に混合してもよいし、何れか2成分を混合後に残り1成分を加えてもよいが、これらの必須3成分を同時に混合するのが操作の簡便性から好ましい。また、窒化アルミニウムフィラー、等方性形状の粒子及び熱硬化性樹脂以外の成分を含む場合も同様に、敢えて混合操作を行わなくても構わないが、各成分を混合する方が窒化アルミニウムフィラーの分散性の点で好ましく、混合を行う場合は、全成分を同時に混合してもよいし、任意の複数成分を混合後に残りの成分を混合してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、窒化アルミニウムフィラーと等方性形状の粒子と熱硬化性樹脂とが含有されている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱伝導率は、本発明の効果を著しく損なわなければ制限は無いが高い方が好ましい。そして、上述の好ましい窒化アルミニウムフィラーと等方性形状の粒子と熱硬化性樹脂を、上述の好ましい熱硬化性樹脂組成物の製造方法に従って熱硬化性樹脂組成物とし、これを成形すれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱伝導率は、通常非常に高くなる。具体的には、通常1W/m・K以上、好ましくは2W/m・K以上、更に好ましくは3W/m・K以上とすることが可能である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱伝導率が高い理由は明かではないが、以下のように推定される。すなわち、熱硬化性樹脂組成物中で、異方性形状の窒化アルミニウムフィラーが、等方性形状の粒子の存在により、折れ曲がりが少ない状態で存在しているために熱伝導経路が確保されやすくなった可能性が高いと思われる。
ここで、本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱拡散率は、上述の窒化アルミニウムフィラーの熱伝導率と同様の方法で求めることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、高価な窒化アルミニウムフィラーが少量でも高い熱伝導性を発現できるため、経済性及び成形加工性に優れる。
成形加工性は、「押出し式流れ試験金型測定法」等による流動性測定により評価することができる。具体的には、以下の手順による流動性により評価する。円筒形金型の上部に、固定しない押し型をはめ込み、側面のゲートから加熱・加圧した樹脂を注入する。金型内に充填された樹脂は、押し型を押し上げるが、やがて化学反応による硬化が進行し、樹脂をそれ以上金型内に注入できなくなる。このときまでに注入された樹脂量(流出量[g])及び流出速度[g/min]と、時間[min]との相関曲線で流動性を表す。
本発明の成形体は、上述の熱硬化性樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
本発明の成形体を成形する成形方法は、特に制限は無く、射出成形、トランスファ成形、押出成形、バルクモールディングコンパウンド成形及び圧縮成形などの従来公知の各種熱硬化性樹脂の成形方法などが適用可能である。これらのうち、成形のしやすさ、特にシート状の成形体としやすいことから、圧縮成形が好ましい。
本発明の成形体の形状は、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はない。具体的には、具体的には、シート状、フィルム状、円盤状、矩形状等が挙げられる。本発明に係る窒化アルミニウムフィラーは、熱伝導性と強度のバランス及び成形加工性に優れることから、本発明の熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形したシート及びフィルムは、各種用途に特に好適に用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物及びこれを成形して得られる成形体は、熱伝導率の高さを利用することで、各種の電子部品用放熱部品として用いることができる。また、絶縁性を要求されるOA機器部品や電気電子部品、精密機器及び自動車関連部品等にも幅広く用いることが可能である。中でもOA機器や電気電子機器の内部部品に好適であり、例えば、パソコン部材や携帯電話、プリンター、コピー機、スキャナー、テレビ等の用途が挙げられる。また、例えば、耐衝撃性のある熱硬化性樹脂を選択するなどすれば、耐衝撃性が要求されるような自動車部品用との用途にも好適に用いることができる。
<物性測定> 各実施例中の物性測定は、以下のように行った。
<熱伝導率>
熱伝導率は、熱拡散率と樹脂組成物の比熱、密度の積として求めた。熱拡散率は、株式会社アルバック製全自動レーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TC−7000H/SB」を用いて、JIS R1611−1997「ファインセラミックのレーザフラッシュ法による、熱拡散率・比熱容量・熱伝導率試験方法」で規定される熱拡散率試験方法に従って測定した。
密度は、メトラー・トレド株式会社製精密天秤「XS−204」を用い、置換液に蒸留水を用いてアルキメデス法にて測定した。比熱は、株式会社パーキンエルマー製の示差走査熱量計「DSC7」を用い、結晶化条件が200℃で3分放置後10℃/分で−10℃まで降温、昇温条件が−10℃で5分放置後10℃/分で81℃まで昇温し、4分放置にて測定した場合の25℃における比熱とした。
電気絶縁性は、体積抵抗率の値で評価した。体積抵抗率は、ダイヤインスツルメント株式会社製「ハイレスタUP(URS端子)」を使用し、1000V、10秒の条件にて測定し、得られた体積抵抗率の3点の平均値で評価した。
(製造例1)
繊維状の酸化アルミニウムフィラー(酸化アルミニウム:シリカ=95重量%:5重量%、直径(フィラーの長さ方向に垂直な方向の長さ)が6μm、繊維軸方向の平均長さが60μm、アスペクト比が10)8g、カーボンブラック(キシダ化学株式会社製、透過型電子顕微鏡観察による平均粒径30nm)3.42g(対酸化アルミニウム3.6倍モル)及び純水75cm3をカッターミル容器(大阪ケミカル株式会社社製アブソリュートミル)に入れ、37,000rpmで3分間粉砕しながら混合した。
スラリー状の混合物を取り出し、通風式乾燥器内で120℃で10時間乾燥させた後、乳鉢中で乳棒を用いて混ぜ、酸化アルミニウム製の坩堝に20g入れてから高温雰囲気炉中にセットした。窒素(純度99.9体積%)を0.5リットル/minで流通させながら、常圧下で、昇温速度200℃/時間で1600℃まで昇温し、その温度で35時間保持した後、自然冷却させ、タングステンカーバイド製の乳鉢を使って軽く解砕した。
粉砕品を、マッフル炉を用いて、大気下、650℃で3時間加熱した後に、700℃で1時間熱処理を施した。
この繊維状窒化アルミニウムフィラーを加圧成形後、2000℃で焼結させた成形体の熱伝導率は100W/m・Kで、電気絶縁性は1.31×1014Ω・cm超であった。
板状の酸化アルミニウムフィラー(キンセイマテック株式会社製「セラフ10030」(カタログ値で酸化アルミニウム成分99.3重量%、フィラーの長さ方向に垂直な方向の長さが1μm、長さが10μm、アスペクト比が10)8g、カーボンブラック(キシダ化学株式会社製、透過型電子顕微鏡観察による平均粒径30nm)3.42g(対酸化アルミニウム3.6倍モル)及び純水75cm3をカッターミル容器(大阪ケミカル株式会社社製アブソリュートミル)に入れ、37,000rpmで3分間粉砕しながら混合した。
スラリー状の混合物を取り出し、通風式乾燥器内で120℃で10時間乾燥させた後、乳鉢中で乳棒を用いて混ぜ、酸化アルミニウム製の坩堝に20g入れてから高温雰囲気炉中にセットした。窒素(純度99.9体積%)を0.5リットル/minで流通させながら、常圧下で、昇温速度200℃/時間で1600℃まで昇温し、その温度で35時間保持した後、自然冷却させ、タングステンカーバイド製の乳鉢を使って軽く解砕した。
粉砕品を、マッフル炉を用いて、大気下、650℃で3時間加熱した後に、700℃で1時間熱処理を施した。
この板状窒化アルミニウムフィラーを加圧成形後、2000℃で焼結させた成形体の熱伝導率は100W/m・Kで、電気絶縁性は8.7×1013Ω・cm超であった。
製造例1で得られた窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、株式会社マイクロン製の球状の酸化アルミニウム粒子「AW−70−120」(カタログ値で平均粒子径70μm、アスペクト比1.0、熱伝導性32W/m・K、電気絶縁性1×1014Ω・cm超)591重量部と東レ・ダウコーニング社製シリコーン樹脂(主剤と硬化剤を重量比1:1で混合)127重量部を加え、アルミナ製容器内で混合し、樹脂組成物を得た。これを株式会社東洋精機製作所製ミニホットプレスを用いて、成形部のサイズが30mm×30mm×2mmの直方体型の金型にてプレス温度150℃、プレス圧力15MPa、保持時間30分の条件で成形し、30mm×30mm×2mmの直方体型の成形体を得た。
実施例1で、窒化アルミニウムフィラーと球状の酸化アルミニウム粒子とシリコーン樹脂の割合を、窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、球状の酸化アルミニウム粒子を473重量部、シリコーン樹脂を159重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその成形体を得た。
実施例1で、窒化アルミニウムフィラーと球状の酸化アルミニウム粒子とシリコーン樹
脂の割合を、窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、球状の酸化アルミニウム粒
子を118重量部、シリコーン樹脂を42重量部とした以外は、実施例1と同様にして、
樹脂組成物及びその成形体を得た。
実施例1で、窒化アルミニウムフィラーとして、製造例2で得られた窒化アルミニウムフィラーを用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその成形体を得た。
実施例1で、窒化アルミニウムフィラーの代わりに、窒化アルミニウムフィラーの製造例1で窒化アルミニウムフィラーの原料として用いた繊維状の酸化アルミニウムフィラー(酸化アルミニウム:シリカ=95重量%:5重量%)、直径(フィラーの長さ方向に垂直な方向の長さ)が6μm、繊維軸方向の平均長さが60μm、アスペクト比が10)を用いて、繊維状酸化アルミニウムフィラーと球状酸化アルミニウム粒子とシリコーン樹脂の割合を、繊維状酸化アルミニウムフィラー100重量部に対し、球状酸化アルミニウム粒子を500重量部、シリコーン樹脂を108重量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその成形体を得た。
実施例1で、球状酸化アルミニウム粒子を用いずに、窒化アルミニウムフィラーとシリコーン樹脂の割合を、窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、シリコーン樹脂を21重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその成形体を得た。
実施例1で、窒化アルミニウムフィラーの代わりに球状の窒化アルミニウム(株式会社トクヤマ製「Hグレード」、カタログ値で長さが75μm、長さ方向に垂直な方向の長さが75μm、アスペクト比が1.0、熱伝導率96W/m・K)を用いて、球状酸化アルミニウム粒子を用いずに、球状窒化アルミニウムフィラーとシリコーン樹脂の割合を、球状窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、シリコーン樹脂を21重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその成形体を得た。
実施例2で、球状酸化アルミニウム粒子を用いずに、窒化アルミニウムフィラーとシリコーン樹脂の割合を、球状窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、シリコーン樹脂を21重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその成形体を得た。
上述の実施例及び比較例で得られた成形体の厚み方向の熱伝導率及び電気絶縁性を測定した結果を表1に示す。
Claims (8)
- 窒化アルミニウムフィラーと、熱伝導性で等方性形状の酸化アルミニウム粒子と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該窒化アルミニウムフィラーが異方性形状であり、該窒化アルミニウムフィラー100重量部に対し、該等方性形状の酸化アルミニウム粒子を100重量部以上750重量部以下、熱硬化性樹脂を100重量部以上200重量部以下、含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 前記窒化アルミニウムフィラーのアスペクト比が2.5以上100以下であることを特徴とする、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記窒化アルミニウムフィラーの長さが0.125μm以上5000μm以下であり、フィラーの長さ方向に垂直な方向の長さが0.05μm以上50μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記窒化アルミニウムフィラーが、酸化アルミニウムフィラーと炭素源とを含む組成物を窒素雰囲気下で加熱することにより製造された窒化アルミニウムフィラーであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記窒化アルミニウムフィラーの熱伝導率が5W/m・K以上320W/m・K以下であり、前記等方性形状の酸化アルミニウム粒子の熱伝導率が5W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、熱伝導率が1W/m・K以上であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1乃至6の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
- 請求項1乃至6の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物を成形して得られる熱伝導性シート。
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