JP2022082862A - 熱伝導性組成物及びこれを用いた熱伝導性シート - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性、耐熱性、耐湿性が良好な熱伝導性シートを形成できる熱伝導性組成物の提供。【解決手段】熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分2と、炭素繊維3と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラー4と、吸水剤と、分散剤とを含み、吸水剤がゼオライトを含み、吸水剤の含有量が、バインダ成分2を100質量部に対して2~15質量部である。熱伝導性シート1は、上記熱伝導性組成物からなる。【選択図】図3

Description

本技術は、熱伝導性組成物及びこれを用いた熱伝導性シートに関する。
電子部品等の発熱体と、放熱フィン等の放熱体との間に介在させる熱伝導材(例えば熱伝導性シート)が知られている。この種の熱伝導材は、発熱体から発生した熱を、放熱体側へ効率よく移動させるために利用される。このような熱伝導材は、主として、母材となる樹脂成分と、この樹脂成分中に分散させる熱伝導性フィラーとを含む。
熱伝導材には、耐久性を付与する観点から、樹脂成分としてシリコーン樹脂が用いられることが多い(例えば、特許文献1,2を参照)。また、樹脂成分としてアクリル樹脂を用いた熱伝導材も知られている(例えば、特許文献3を参照)。
ところで、熱伝導性シートが低硬度であると、発熱部品及び放熱部材に密着し広い接触面積を得ることができるため、効率よく熱を伝達させることができる。また、熱伝導性シートが低硬度であると、高さの異なる発熱部品等が高密度で実装された場合でも、発熱部品等の高さに追従することができ、発熱部品等の高さの凹凸を熱伝導性シートが吸収することで、熱伝導性シートと発熱部品等とが密着し、広い接触面積を得ることができる。このような低硬度の熱伝導性シートには、通常、柔軟性が高いシリコーン樹脂(ゴム状やゲル状)が用いられる。しかし、シリコーン樹脂を使用した熱伝導性組成物からは、シロキサンガス(例えば、環状シロキサンガスなどの低分子シロキサンガス)が発生してしまう。このシロキサンガスは、電子機器の接点不良等を引き起こす原因となりうる。そのため、シロキサンガスを発生しない非シリコーン樹脂を用いた熱伝導性組成物が望まれている。
特開2015-216387号公報 特開2011-241403号公報 特許第6692512号
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、柔軟性、耐熱性、耐湿性が良好な熱伝導性シートを形成できる熱伝導性組成物及びこれを用いた熱伝導性シートを提供することを目的とする。
本技術に係る熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分と、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーと、吸水剤と、分散剤とを含み、上記吸水剤がゼオライトを含み、上記吸水剤の含有量が、上記バインダ成分100質量部に対して2~15質量部である。
本技術に係る熱伝導性シートは、上記熱伝導性組成物からなる。
本技術によれば、柔軟性、耐熱性、耐湿性が良好な熱伝導性シートを提供できる。
図1は、絶縁被膜によって被覆された炭素繊維の一例を示す斜視図である。 図2は、熱伝導性シートの一例を示す断面図である。 図3は、熱伝導性シートの一例を示す断面図である。 図4は、半導体装置の一例を示す断面図である。
<熱伝導性組成物>
本技術に係る熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分と、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーと、吸水剤と、分散剤とを含み、吸水剤がゼオライトを含み、吸水剤の含有量が、バインダ成分100質量部に対して2~15質量部である。
本技術に係る熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分を用いているため、バインダ成分としてシリコーン樹脂を用いた場合と比較して、シリコーン樹脂に起因したシロキサンガス、例えば、接点障害を発生させうる低分子シロキサンガスの発生を防止できる。また、本技術に係る熱伝導性組成物は、分散性と硬化性も良好である。このような熱伝導性組成物を用いることにより、柔軟性、耐熱性、耐湿性が良好な熱伝導性シートが得られる。
<ウレタン樹脂からなるバインダ成分>
本技術に係る熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分を含む。ウレタン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。バインダ成分としてのウレタン樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートからなる。
ポリオールとしては、例えば、アルキレン型、ポリカーボネート型、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、10,000~100,000の範囲とすることができる。
バインダ成分中、ウレタン樹脂の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。
<熱伝導性フィラー>
熱伝導性組成物は、熱伝導性フィラーとして、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーとを含む。
[炭素繊維]
炭素繊維は、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成された炭素繊維を用いることができる。これらの中でも、熱伝導性の観点では、ピッチ系炭素繊維が好ましい。
炭素繊維の平均繊維長(平均長軸長さ)は、例えば、50~250μmとすることができ、75~200μmであってもよく、90~170μmであってもよい。また、炭素繊維の平均繊維径(平均短軸長さ)も、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4~20μmとすることができ、5~14μmであってもよい。炭素繊維のアスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、9~30とすることができる。炭素繊維の平均長軸長さ及び平均短軸長さは、例えば、マイクロスコープや走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することができる。
炭素繊維の具体例としては、例えば、日本グラファイトファイバー社製のXN-100-20M(平均繊維径9μm、平均繊維長200μmのピッチ系炭素繊維)が挙げられる。
図1は、絶縁被膜5によって被覆された炭素繊維3Bの一例を示す斜視図である。熱伝導性シート1の絶縁性を高める観点では、図1に示すように、炭素繊維3Bは、表面が絶縁被膜5によって被覆されていてもよい。このように、炭素繊維として、絶縁被覆炭素繊維を用いることができる。絶縁被覆炭素繊維6は、炭素繊維3Bと、炭素繊維3Bの表面の少なくとも一部に絶縁皮膜5とを有し、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
絶縁皮膜5は、電気絶縁性を有する材料からなり、例えば、酸化ケイ素や、重合性材料の硬化物で形成されている。重合性材料は、例えばラジカル重合性材料であり、重合性を有する有機化合物、重合性を有する樹脂などが挙げられる。ラジカル重合性材料は、エネルギーを利用してラジカル重合する材料であれば、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性2重結合を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性2重結合としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。ラジカル重合性2重結合を有する化合物におけるラジカル重合性2重結合の個数は、耐熱性や、耐溶剤性を含む強度の観点では、2つ以上が好ましい。ラジカル重合性2重結合を2つ以上有する化合物は、例えば、ジビニルベンゼン(Divinylbenzene:DVB)、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性材料の分子量は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50~500の範囲とすることができる。絶縁皮膜5が重合性材料の硬化物で形成されている場合、絶縁被膜5における重合性材料に由来する構成単位の含有量は、例えば、50質量%以上とすることができ、90質量%以上とすることもできる。
絶縁皮膜5の平均厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、高い絶縁性を実現する観点では、50nm以上とすることができ、100nm以上であってもよく、200nm以上であってもよい。絶縁被膜5の平均厚みの上限値は、例えば、1000nm以下とすることができ、500nm以下であってもよい。絶縁被膜5の平均厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めることができる。
絶縁皮膜5により炭素繊維3Bを被覆する方法としては、例えば、ゾルゲル法、液相堆積法、ポリシロキサン法、特開2018-98515号公報の段落0073~0089に記載された炭素繊維3Bの表面の少なくとも一部に重合性材料の硬化物からなる絶縁皮膜5を形成する方法等が挙げられる。
[炭素繊維以外の熱伝導性フィラー]
炭素繊維以外の熱伝導性フィラーは、所望とする熱伝導率や充填性を鑑み、公知の物から選択することができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、アルミニウム、銅、銀などの金属、アルミナ、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの金属窒化物、カーボンナノチューブ、金属シリコンが挙げられる。炭素繊維以外の熱伝導性フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性組成物は、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーとして、熱伝導性の観点から、少なくとも水酸化アルミニウムを含むことが好ましく、水酸化アルミニウムと水硬性アルミナとを併用してもよい。水酸化アルミニウムの平均粒径(D50)は、熱伝導性シートの比重の観点から、30μm未満が好ましく、0.1~10μmであってもよく、5~10μmであってもよい。また、水硬性アルミナの平均粒径(D50)は、熱伝導性シートの比重の観点から、1~30μmが好ましく、5~20μmであってもよく、10~20μmであってもよい。
本明細書において、熱伝導性フィラーの平均粒径とは、熱伝導性フィラーの粒子径分布全体を100%とした場合に、粒子径分布の小粒子径側から粒子径の値の累積カーブを求めたとき、その累積値が50%となるときの粒子径をいう。なお、本明細書における粒度分布(粒子径分布)は、体積基準によって求められたものである。粒度分布の測定方法としては、例えば、レーザー回折型粒度分布測定機を用いる方法が挙げられる。
炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの具体例としては、例えば、住友化学社製のBK-112(水硬性アルミナ)、日本軽金属社製のBF803(水酸化アルミニウム),BX053T(水酸化アルミニウム)が挙げられる。
熱伝導性組成物中、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの含有量の合計は、所望の熱伝導率などに応じて適宜決定することができる。例えば、熱伝導性組成物中における、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの含有量の体積含有量は、60~90体積%とすることができる。熱伝導性組成物中の熱伝導性フィラーの体積含有量を60体積%以上とすることで、十分な熱伝導率が得られやすい傾向にある。また、熱伝導性組成物中の熱伝導性フィラーの体積含有量を90体積%以下とすることで、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーをより確実に充填させることができる。なお、炭素繊維の熱伝導性と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの熱伝導性とを比較すると、炭素繊維の依存性が大きい。そのため、炭素繊維と炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの合計量に対する、炭素繊維以外の熱伝導性フィラー(例えば、水酸化アルミニウムや水硬性アルミナ)の割合は、大きな影響を及ぼさないと考えられる。
熱伝導性組成物中、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの含有量は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、例えば、80質量部以上とすることができ、150質量部以上とすることもでき、200質量部以上とすることもでき、250質量部以上とすることもでき、300質量部以上とすることもでき、350質量部以上とすることもでき、400質量部以上とすることもできる。また、熱伝導性組成物中、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの含有量は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、例えば、600質量部以下とすることができ、550質量部以下とすることもできる。
<分散剤>
熱伝導性組成物は、炭素繊維及び炭素繊維以外の熱伝導性フィラーの分散性を向上させるための分散剤を含む。分散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分を含み、このウレタン樹脂が高粘度のポリオールからなる場合、高粘度のポリオールに熱伝導性フィラーを高充填する際に、チタネート系分散剤が有用である。また、チタネート系分散剤は、熱伝導性フィラーとのカップリングも良好であり、更なる柔軟性向上にも寄与する。そのため、分散剤として、チタネート系の分散剤(チタネート系カップリング剤)を用いることが好ましい。
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等のカルボン酸型チタネート系カップリング剤;イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート等のピロリン酸型チタネート系カップリング剤;イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート等の硫酸型チタネート系カップリング剤;テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のホスファイト型チタネート系カップリング剤;イソプロピルトリ(N-アミノエチルアミノエチル)チタネート等のアミン型チタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、カルボン酸型チタネート系カップリング剤が好ましく、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートがより好ましい。
分散剤の市販品としては、味の素ファインテクノ社製のKR-TTS(チタネート系カップリング剤)が挙げられる。
熱伝導性組成物中、分散剤の含有量は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、1.0質量部以上とすることができ、1.5質量部以上であってもよく、2.0質量部以上であってもよく、2.3質量部以上であってもよく、2.4質量部以上であってもよく、2.8質量部以上であってもよい。また、熱伝導性組成物中、分散剤の含有量は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、10.0質量部以下とすることができ、8.0質量部以下であってもよく、6.0質量部以下であってもよく、4.0質量部以下であってもよい。また、分散剤の含有量は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、2.3~2.8質量部の範囲とすることもできる。
また、熱伝導性組成物は、シロキサンガスの発生を抑制する観点では、シラン系の分散剤(シランカップリング剤)を実質的に含まないことが好ましい。熱伝導性組成物中、シラン系の分散剤(シランカップリング剤)の含有量は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がよりさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
<吸水剤>
本技術に係る熱伝導性組成物に、水分の多い熱伝導性フィラーが高充填されると、熱伝導性フィラーに起因する水分が、バインダ成分であるウレタン樹脂の原料であるポリオールとポリイソシアネートの硬化阻害を引き起こすおそれがある。また、ウレタン樹脂に起因する水分は、発泡剤としても作用しうるため、できる限り少ないことが好ましい。これらの点を考慮して、本技術に係る熱伝導性組成物は、吸水剤として少なくともゼオライトを含む。
ゼオライトの結晶構造は、特に限定されず、例えば、A型、X型、LSX型などを選択することができる。ゼオライトの形状は、球状(ビーズ状)、円筒状(ペレット状)、粉末状(パウダー状)等の形態から選択することができる。ゼオライトは、10μm以下のパウダー状が好ましい。ゼオライトの平均粒径が10μm以下であることにより、炭素繊維の配向に影響を及ぼすことや、熱伝導性の低下を抑制できる。ゼオライトの具体例としては、水分を選択的に吸着可能なものが好ましく、東ソー社製のゼオラム(登録商標)A-3シリーズ,A-4シリーズや、ユニオン昭和社製の3Aシリーズ,4Aシリーズなどが挙げられる。特に、高吸水タイプである、ユニオン昭和社製のモレキュラーシーブ3A-Bパウダーが好ましい。
また、吸水剤としては、ゼオライトに加えて、水硬性アルミナを併用してもよい。水硬性アルミナは、上述のように、熱伝導性フィラーとしても機能する。ただし、水硬性アルミナは、ゼオライトと比較すると吸水効果に劣る傾向にある。そのため、吸水剤として水硬性アルミナを単独で使用しようとすると、ゼオライトを単独で使用する場合と比べて、水硬性アルミナの使用量を多くする必要がある。また、熱伝導性組成物中に水硬性アルミナを添加しすぎると、熱伝導性組成物を熱伝導性シートとしたときの難燃性に影響を及ぼすおそれがある。このような理由から、吸水剤としては、ゼオライト単独か、ゼオライトと水硬性アルミナとを併用することが好ましい。
熱伝導性組成物中、吸水剤の含有量の合計は、バインダ成分100質量部に対して2~15質量部である。熱伝導性組成物中の吸水剤の含有量が、バインダ成分100質量部に対して2質量部以上であることで、硬化性が良好となる。また、熱伝導性組成物中の吸水剤の含有量が、バインダ成分100質量部に対して15質量部以下であることで、良好な熱伝導性を維持できる。
吸水剤としてゼオライトを単独で用いる場合、熱伝導性組成物中の吸水剤の含有量は、バインダ成分100質量部に対して2.1質量部以上であってもよく、2.2質量部以上であってもよく、2.31質量部以上であってもよく、2.35質量部以上であってもよい。ここで、ゼオライトは、一般的に多孔質であり熱伝導性に乏しいため、熱伝導性組成物中のゼオライトの量が多くなりすぎると、熱伝導性組成物の混錬性が悪化してしまい、熱伝導性組成物をシート化したときに、シートが硬くなりすぎるおそれがあり、また、シートの熱伝導性もが低下するおそれがある。また、ゼオライトは、難燃性ではないため、熱伝導性組成物中のゼオライトの量が多くなりすぎると、熱伝導性組成物をシート化したときの難燃性が低下するおそれがある。これらの点を考慮すると、吸水剤としてゼオライトを単独で用いる場合、熱伝導性組成物中の吸水剤の含有量は、例えば、バインダ成分100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましく、8質量部以下とすることもでき、6質量部以下とすることもでき、4質量部以下とすることもできる。
吸水剤としてゼオライトと水硬性アルミナとを併用する場合、熱伝導性組成物中の吸水剤の含有量の合計は、バインダ成分100質量部に対して9.0質量部以上であってもよく、10.0質量部以上であってもよく、11.0質量部以上であってもよい。また、吸水剤としてゼオライトと水硬性アルミナを併用する場合、熱伝導性組成物中の吸水剤の含有量の合計は、バインダ成分100質量部に対して14.0質量部以下であってもよく、13.0質量部以下であってもよく、12.0質量部以下であってもよく、11.5質量部以下であってもよい。
<難燃剤>
熱伝導性組成物は、シート化したときの難燃性を向上させるために、難燃剤をさらに含んでいてもよい。難燃剤としては、リン系の難燃剤が好ましい。リン系難燃剤は、リンを含む有機リン系難燃剤が挙げられる。リン系難燃剤は、例えば、リン酸エステル、ホスフィン酸金属塩、リン酸メラミン化合物、リン酸アンモニウム化合物等が挙げられる。これらのリン系難燃剤のなかでも、難燃性の観点では、ホスフィン酸金属塩からなる難燃剤が好ましく、ジアルキルホスフィン酸塩からなる難燃剤も好ましい。
ジアルキルホスフィン酸塩の具体例としては、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどが挙げられる。
難燃剤の平均粒径は、例えば1~100μmとすることができ、1~30μmとすることもできる。
難燃剤の製品例としては、クラリアント社製のEXOLIT(登録商標)OPシリーズ、具体的には、EXOLIT(登録商標)OP930、935、945TP、1230、1240、1312、1400等が挙げられる。
熱伝導性組成物が難燃剤を含む場合、熱伝導性組成物中の難燃剤の含有量は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、例えば、2.0質量部以上とすることができ、4.0質量部以上であってもよく、6.0質量部以上であってもよく、8.0質量部以上であってもよく、9.0質量部以上であってもよい。また、熱伝導性組成物が難燃剤を含む場合、熱伝導性組成物中の難燃剤の含有量の上限値は、バインダ成分の含有量を100質量部としたときに、例えば、20.0質量部以下とすることができ、16.0質量部以下であってもよく、12.0質量部以下であってもよく、10.0質量部以下であってもよい。
<酸化防止剤>
熱伝導性組成物は、酸化防止剤をさらに含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール骨格として下記式1で表される構造を有するものが挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、下記式1で表される骨格を1つ以上有することが好ましく、下記式1で表される骨格を2つ以上有していてもよい。
(式1)
Figure 2022082862000002
式1中、R及びRがt-ブチル基を表し、Rが水素原子を表す場合(ヒンダードタイプ)、Rがメチル基を表し、Rがt-ブチル基を表し、Rが水素原子を表す場合(セミヒンダードタイプ)、Rが水素原子を表し、Rがt-ブチル基を表し、Rがメチル基を表す場合(レスヒンダードタイプ)が好ましい。高温環境下での長期熱安定性の観点からは、セミヒンダードタイプ又はヒンダードタイプが好ましい。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、1分子中に、上述した式1で表される骨格を3つ以上有し、3つ以上の式1で表される骨格が、炭化水素基、又は、炭化水素基と-O-と-CO-との組み合わせからなる基で連結された構造であることが好ましい。炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。炭化水素基の炭素数は、例えば3~8とすることができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量は、例えば300~850とすることができ、500~800とすることもできる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、その構造中に、エステル結合を有していてもよい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、テトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]などが挙げられる。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、その構造中に、エステル結合を有しないもの、例えば1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンなどを用いることもできる。
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、アデカスタブAO-30、アデカスタブAO-50、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80(以上、ADEKA社製)、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1135(以上、BASF社製)などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性組成物が酸化防止剤を含む場合、熱伝導性組成物中の酸化防止剤の含有量は、例えば、バインダ成分100質量部に対して、0.1質量部以上とすることができ、0.5質量部以上とすることもできる。また、熱伝導性組成物が酸化防止剤を含む場合、熱伝導性組成物中の酸化防止剤の含有量の上限値は、例えば、バインダ成分100質量部に対して、10質量部以下とすることができ、5質量部以下とすることもでき、3質量部以下とすることもできる。
以上のように、本技術に係る熱伝導性組成物は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分と、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーと、吸水剤と、分散剤とを含み、吸水剤がゼオライトを含み、吸水剤の含有量が、バインダ成分100質量部に対して2~15質量部であることにより、分散性と硬化性が良好である。また、本技術に係る熱伝導性組成物は、シート化したときの熱伝導性、柔軟性、耐熱性、耐湿性を良好にすることができる。
なお、熱伝導性組成物は、本技術の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。
熱伝導性組成物は、例えば、上述した各成分を混錬機(遊星式混錬機、ボールミル、ヘンシェルミキサーなど)を用いて混錬して得ることができる。
<熱伝導性シート>
図2は、熱伝導性シートの一例を示す断面図である。熱伝導性シート1は、上述した熱伝導性組成物の硬化物からなる。例えば、熱伝導性シート1は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、グラシン紙等から形成された剥離フィルム11上に、上述した熱伝導性組成物を所望の厚みで塗布し、加熱することで、バインダ成分を硬化させて得られる。熱伝導性シート1の厚み(剥離フィルム11を除くシート本体の厚み)は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.05~5mmとすることができる。
図3は、熱伝導性シートの一例を示す断面図である。熱伝導性シート1は、ウレタン樹脂からなるバインダ成分2と、熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向した炭素繊維3と、炭素繊維3以外の熱伝導性フィラー4と、吸水剤と、分散剤とを含む。
熱伝導性シート1は、上述した熱伝導性組成物を用いることで、熱伝導率を5.0W/m・K以上とすることができ、5.5W/m・K以上とすることもでき、6.0W/m・K以上とすることもでき、7.0W/m・K以上とすることもでき、10.0W/m・K以上とすることもでき、12.0W/m・K以上とすることもでき、14.0W/m・K以上とすることもでき、15.0W/m・K以上とすることもできる。熱伝導性シート1の熱伝導率の上限値は、特に限定されないが、例えば、17.0W/m・K以下とすることができる。熱伝導率は、後述する実施例の方法で測定できる。
また、熱伝導性シート1は、上述した熱伝導性組成物を用いるため、柔軟性が良好であり、例えば、45℃、荷重1kgf/cmで圧力をかけたときの圧縮率(熱伝導性シートの初期厚みからの変化量)を熱伝導性シートの初期厚みで除した比率を5%以上とすることができる。圧縮率の上限値は、特に限定されないが、例えば、20%以下とすることができる。圧縮率は、後述する実施例の方法で測定できる。
ところで、バインダ成分としてウレタン樹脂を用いた熱伝導性組成物は、バインダ成分としてシリコーン樹脂を用いた熱伝導性組成物に比べて、耐熱性や耐湿耐熱性が劣る傾向にある。そのため、信頼性が悪い熱伝導性シートは、例えば、125℃でのエージング処理で劣化して石膏のように硬く柔軟性がなくなってしまうことがあり、また、85℃、相対湿度85%の条件でのエージング処理で水分によって溶解(加水分解)して溶け出してしまうことがある。一方、上述した本技術に係る熱伝導性組成物を用いた熱伝導性シート1は、耐熱信頼性が良好であり、熱伝導性シートが固化、液化せず、エージング処理後も熱伝導性を維持できる。具体的には、エージング処理後の熱伝導性シート1の熱伝導率は、初期熱伝導率(エージング処理前の熱伝導性シート1の熱伝導率)に対して60%以上とすることができ、65%以上とすることもでき、70%以上とすることもでき、75%以上とすることもでき、80%以上とすることもでき、85%以上とすることもでき、90%以上とすることもできる。耐熱信頼性は、後述する実施例の方法で測定できる。
<熱伝導性シートの製造方法>
熱伝導性シート1は、例えば、下記工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する方法で得ることができる。
<工程A>
工程Aでは、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する。熱伝導性シート形成用の樹脂組成物は、少なくとも、ウレタン樹脂からなるバインダ成分2と、炭素繊維3と、炭素繊維3以外の熱伝導性フィラー4と、ゼオライトを含む吸水剤と、分散剤とを、公知の手法により均一に混合することにより調製できる。
<工程B>
工程Bでは、調製された熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する。成形体ブロックの形成方法としては、押出成形法、金型成形法などが挙げられる。押出成形法、金型成形法としては、特に制限されず、公知の各種押出成形法、金型成形法の中から、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物の粘度や熱伝導性シートに要求される特性等に応じて適宜採用することができる。
例えば、押出成形法において、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは金型成形法において、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を金型へ圧入する際、バインダ成分が流動し、その流動方向に沿って炭素繊維3が配向する。
成形体ブロックの大きさ・形状は、求められる熱伝導性シート1の大きさに応じて決めることができる。例えば、断面の縦の大きさが0.5~15cmで横の大きさが0.5~15cmの直方体が挙げられる。直方体の長さは必要に応じて決定すればよい。
<工程C>
工程Cでは、成形体ブロックをシート状にスライスして、熱伝導性シート1を得る。スライスにより得られるシートの表面(スライス面)には、炭素繊維が露出する。スライスして得られた熱伝導性シート1は、表面が平滑化されるため、他の部材との密着性を向上させることができ、熱伝導性をより良好にすることができる。また、スライスして得られた熱伝導性シート1は、表面が平滑化されるため、熱抵抗をより小さくすることができる。スライスする方法としては特に制限はなく、成形体ブロックの大きさや機械的強度により公知のスライス装置の中から適宜選択することができる。成形体ブロックのスライス方向としては、成形方法が押出成形法である場合、押出し方向に炭素繊維が配向しているものもあるため、押出し方向に対して60~120度であることが好ましく、70~100度の方向であることがより好ましく、90度(垂直)の方向であることがさらに好ましい。
熱伝導性シートの製造方法は、上述した例に限定されず、例えば、工程Cの後に、スライス面をプレスする工程Dをさらに有していてもよい。熱伝導性シートの製造方法がプレスする工程Dを有することで、工程Cで得られるシートの表面がより平滑化され、他の部材との密着性をより向上させることができる。プレスの方法としては、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用することができる。また、ピンチロールでプレスしてもよい。プレスの際の圧力としては、例えば、0.1~100MPaとすることができる。プレスの効果をより高め、プレス時間を短縮するために、プレスは、バインダ成分2のガラス転移温度(Tg)以上で行うことが好ましい。例えば、プレス温度は、0~180℃とすることができ、室温(例えば25℃)~100℃の温度範囲内であってもよく、30~100℃であってもよい。
以上のように、熱伝導性シート1は、上述した熱伝導性組成物からなるため、熱伝導性、柔軟性、耐熱信頼性、難燃性が良好である。このように、熱伝導性シート1は、熱伝導性や柔軟性が良好であるため、発熱体と放熱部材との間に熱伝導性シート1を挟持させた放熱構造に適用できる。発熱体としては、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの集積回路素子、トランジスタ、抵抗器など、電気回路において発熱する電子部品等が挙げられる。また、発熱体には、通信機器における光トランシーバー等の光信号を受信する部品も含まれる。放熱部材としては、発熱体から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、ヒートシンクやヒートスプレッダなど、集積回路素子やトランジスタ、光トランシーバー筐体などと組み合わされて用いられるものが挙げられる。また、放熱部材としては、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等も挙げられる。
図4は、半導体装置の一例を示す断面図である。実使用時には、例えば、図2に示す剥離フィルム11を剥離した熱伝導性シート1を、半導体装置等の電子部品や、各種電子機器の内部に実装することができる。熱伝導性シート1は、例えば図4に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に実装され、発熱体と放熱部材との間に挟持される。すなわち、電子機器は、発熱体と、放熱部材と、発熱体と放熱部材との間に配置された熱伝導性シート1とを備える。図4に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導性シート1とを少なくとも有し、熱伝導性シート1がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持されている。熱伝導性シート1を用いることによって、半導体装置50は、高い放熱性を有する。また、熱伝導性シート1は、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。熱伝導性シート1の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間や、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に限らず、電子機器や半導体装置の構成に応じて、適宜選択できる。
本技術は、上述した放熱構造を備えた物品にも適用することができる。このような放熱構造を備える物品としては、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ機器、携帯電話、無線基地局、自動車等輸送機械のエンジン、動力伝達系、操舵系、エアコンなど電装品の制御に用いられるECU(Electronic Control Unit)が挙げられる。
以下、本技術の実施例について説明する。本実施例では、表1に示す原料からなる熱伝導性組成物を得た。この熱伝導性組成物について、分散性と硬化性の評価を行った。そして、熱伝導性組成物から得られた熱伝導性シートについて、表1に示す各評価を行った。なお、本技術は、以下の実施例に限定されるものではない。
<熱伝導性組成物の作製>
本実施例で用いた原料は、以下の通りである。
<バインダ成分>
ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物)と、ポリオールとからなるウレタン樹脂
<熱伝導性フィラー>
炭素繊維(平均繊維径9μm、平均繊維長200μmのピッチ系炭素繊維、製品名:XN-100-20M、日本グラファイトファイバー社製)
水硬性アルミナ(平均粒径17.5μm、製品名:BK-112、住友化学社製)
水酸化アルミニウム(平均粒径10μm、製品名:BF803、日本軽金属社製)
水酸化アルミニウム(平均粒径6.9μm、製品名:BX053T、日本軽金属社製)
<吸水剤>
ゼオライト(製品名:3AB、ユニオン昭和社製)
<分散剤>
チタネート系カップリング剤(製品名:KR-TTS、味の素ファインテクノ社製)
<難燃剤>
リン系難燃剤(平均粒径10μm、製品名:OP930、クラリアント社製)
<酸化防止剤>
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:AO-80、ADEKA社製)
各実施例及び比較例では、表1に示す成分を混合し、熱伝導性組成物を調製した。押出成形法により、熱伝導性組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。得られた成形体ブロックの長さ方向に直交する方向に、成形体ブロックをスライサーで所望の厚みにスライスすることにより、炭素繊維がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。表1中の数値は、特に明記した場合を除いて質量部を表す。
[分散性]
炭素繊維及び炭素繊維以外の熱伝導性フィラーを除く成分を混合した熱伝導性組成物中に、炭素繊維及び炭素繊維以外の熱伝導性フィラーを一種ずつ添加して20分間攪拌し、熱伝導性組成物中に炭素繊維及び炭素繊維以外の熱伝導性フィラーが分散したかどうかを目視で評価した。攪拌には、プラネタリーミキサー(装置名:プライミクス社製 ハイビスディスパー)を用い、回転数を20rpmとした。熱伝導性組成物中に炭素繊維及び炭素繊維以外の熱伝導性フィラーが分散したときを〇(OK)と評価し、分散しなかったときを×(NG)と評価した。結果を表1に示す。
[硬化性]
得られた熱伝導性シートの硬化性を評価した。具体的には、熱伝導性組成物が硬化してシート化できたときを〇(OK)と評価し、それ以外のとき(例えば、熱伝導性組成物が硬化せずシート化できなかったときや、極端に硬化が弱く、シート状に加工する段階で変形してしまい、取扱いが困難な状態であったとき)を×(NG)と評価した。結果を表1に示す。
[圧縮率]
得られた熱伝導性シートの圧縮率(初期圧縮率)を評価した。具体的には、熱伝導性シートを、所定の大きさ(20mmφ×厚み2000μm)にカットし、熱伝導性シートの平均温度が45℃になるようにし、1kgf/cmの荷重をかけ、安定した後の厚み(初期圧縮厚[μm])を測定し、下記式2に従って圧縮率(%)を求めた。結果を表1に示す。
式2:圧縮率(%)=((熱伝導性シートの初期厚み-熱伝導性シートの初期圧縮厚)/熱伝導性シートの初期厚み)×100
[初期熱伝導率]
ASTM-D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、荷重1kgf/cmをかけて熱伝導性シートの厚み方向の初期熱伝導率(W/m・K)を測定した。測定時のシート温度は45℃であった。結果を表1に示す。
[耐熱信頼性]
得られた熱伝導性シートの耐熱信頼性を評価した。具体的には、熱伝導性シートを所定の大きさ(2mm厚、30mm×30mm)にカットし、125℃、500時間のエージング(超加速試験)処理、または、85℃、相対湿度85%、500時間のエージング(超加速試験)処理をしたときに、熱伝導性シートが固化、液化せず、熱伝導性が維持できるかを評価した。熱伝導性が維持できているかどうかは、エージング処理後の熱伝導性シートの熱伝導率の値が、初期(エージング処理前)の熱伝導率の値の60%以上であるかどうかを評価した。すなわち、下記式3で求められる熱伝導性維持率が60%以上であるときを、熱伝導性が維持できていると評価した。結果を表1に示す。
式3:熱伝導性維持率(%)=(エージング処理後の熱伝導性シートの熱伝導率)/(熱伝導性シートの初期熱伝導率)×100
[難燃性]
得られた熱伝導性シートについて、UL-94規格に準拠した難燃試験を行い、難燃性を評価した。すなわち、UL-94で示される試験片を作製し、得られた試験片について、UL-94Vの垂直燃焼試験方法に基づき、燃焼試験を行った。なお、燃焼時間は2回着火の和で、試験片5片の平均である。得られた結果が、以下のUL-94「V-2」の等級の基準を満たしたときを〇(OK)と評価し、それ以外を×(NG)と評価した。結果を表1に示す。
UL-94「V-2」:点火炎を取り除いた後の平均燃焼時間が30秒間以下、かつ脱脂綿に着火する微粒炎を落下した。
Figure 2022082862000003
実施例1~3の熱伝導性シートは、ウレタン樹脂からなるバインダ成分と、炭素繊維と、炭素繊維以外の熱伝導性フィラーと、吸水剤と、分散剤とを含み、吸水剤がゼオライトを含み、吸水剤の含有量がバインダ成分100質量部に対して2~15質量部である熱伝導性組成物を用いたため、組成物の分散性、組成物の硬化性、シートの圧縮率、シートの耐熱性、シートの耐湿性、シートの初期熱伝導率、シートの難燃性がいずれも良好であることが分かった。
比較例1,2では、熱伝導性組成物の硬化阻害が起こり、熱伝導性組成物をシート化することが困難であることが分かった。そのため、比較例1,2では、シートの圧縮率、シートの耐熱信頼性、シートの初期熱伝導率、シートの難燃性について評価することができなかった。
比較例3では、熱伝導性組成物の分散性が悪く、熱伝導性組成物をシート化することが困難であることが分かった。そのため、比較例3では、シートの圧縮率、シートの耐熱信頼性、シートの初期熱伝導率、シートの難燃性について評価することができなかった。
1 熱伝導性シート、2 バインダ成分、3 炭素繊維、3B 炭素繊維、4 炭素繊維以外の熱伝導性フィラー、5 絶縁被膜、6 絶縁被覆炭素繊維、11 剥離フィルム、50 半導体装置、51 電子部品、52 ヒートスプレッダ、53 ヒートシンク

Claims (9)

  1. ウレタン樹脂からなるバインダ成分と、
    炭素繊維と、
    炭素繊維以外の熱伝導性フィラーと、
    吸水剤と、
    分散剤とを含み、
    上記吸水剤がゼオライトを含み、
    上記吸水剤の含有量が、上記バインダ成分100質量部に対して2~15質量部である、熱伝導性組成物。
  2. 上記分散剤がチタネート系カップリング剤である、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
  3. 上記吸水剤が水硬性アルミナをさらに含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物。
  4. 上記炭素繊維以外の熱伝導性フィラーが水酸化アルミニウムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
  5. 難燃剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物からなる熱伝導性シート。
  7. 45℃、荷重1kgf/cmで圧力をかけたとき、下記式2で表される圧縮率が5%以上である、請求項6に記載の熱伝導性シート。
    式2:圧縮率(%)=((当該熱伝導性シートの初期厚み-当該熱伝導性シートの初期圧縮厚)/当該熱伝導性シートの初期厚み)×100
  8. 炭素繊維をウレタン樹脂からなるバインダ成分に分散させることにより、熱伝導性組成物を調製する工程Aと、
    上記熱伝導性組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
    上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
    上記熱伝導性組成物は、上記ウレタン樹脂からなるバインダ成分と、上記炭素繊維と、上記炭素繊維以外の熱伝導性フィラーと、吸水剤と、分散剤とを含み、上記吸水剤がゼオライトを含み、
    上記熱伝導性組成物中の上記吸水剤の含有量が、上記バインダ成分100質量部に対して2~15質量部である、熱伝導性シートの製造方法。
  9. 発熱体と、
    放熱部材と、
    上記発熱体と上記放熱部材との間に配置された請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物からなる熱伝導性シートとを備える、電子機器。
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