JP2007076990A - β型ゼオライト及びそれを用いた窒素酸化物の浄化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、低温から効率的に窒素酸化物を浄化する触媒性能を有し、且つ十分な耐熱性/耐久性を有するβ型ゼオライト、及びそれを用いた排ガス中の窒素酸化物の浄化方法を提供するところにある。
【解決手段】 29Si MAS NMRスペクトルで観測されるゼオライト骨格のQに帰属されるSi含有率が35〜47重量%であり、なおかつSiO/Alのモル比が20以上100未満であるβ型ゼオライトを用いる。β型ゼオライトは29Si MAS NMRスペクトルで観測されるゼオライト骨格のQに帰属されるSi含有率が全Si含有量の78%以上であることが特に好ましい。
【選択図】なし。

Description

本発明は、β型ゼオライト及びそれを用いた内燃機関から排出される窒素酸化物の浄化方法を提供するものである。
β型ゼオライトは一般に、大孔径かつ3次元の細孔構造を有することから細孔容積が大きいため、各種物質の吸着性能に優れ、更には酸性質を利用して、例えば、芳香族化合物の吸着剤や接触クラッキングの触媒として広範に利用されている。
その用途の一つとしての排ガス中の窒素酸化物の浄化に関し、これまでに様々な方法が提案、或いは実用化されている。ボイラーなどの固定発生源から排出される窒素酸化物の浄化方法として、排ガスにアンモニアを添加した処理ガスをV−TiO系触媒に接触させる選択的接触還元法が工業的に採用されている。
また、自動車等の移動発生源から排出される窒素酸化物の浄化方法として、例えばアルミナ担体に貴金属を担持した触媒によりストイキ雰囲気で窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素を同時に浄化する方法(三元触媒浄化)がガソリン自動車の排ガス浄化に広く採用されている。更には、リーンバーン燃焼排ガスやディーゼル燃焼排ガスに代表される酸素過剰排ガスの窒素酸化物の浄化に関し、固定発生源の排ガス浄化と同様なアンモニア、尿素(水)による選択的接触還元法、炭化水素、一酸化炭素、水素、アルコール、エーテル等を還元成分として利用した接触還元法、直接分解法、更には窒素酸化物の吸蔵成分を含む貴金属触媒を使用した吸蔵還元法が公知であり、多種多様の触媒が開示されている。これらの窒素酸化物の浄化技術において、吸着特性を有するゼオライトを触媒として使用されている。
例えば、特許文献1は少なくとも約10のシリカ対アルミナの比、及び少なくとも約7オングストロームの平均的動的細孔径を有する細孔が三次元構造で連結しているゼオライトに、触媒活性金属として鉄及び銅が少なくとも一種以上が担持された触媒を用いたアンモニアによる窒素酸化物の還元方法を開示されている。触媒性能を高める為の好ましいゼオライト種は、超安定化Y、βゼオライト及びZSM−20からなる群から選ばれる。
また、窒素酸化物の浄化触媒は耐硫黄性並びに耐熱性/耐久性を兼ね備える必要があり、βゼオライトが好適であることが知られている。例えば、特許文献2にはβゼオライトに鉄を担持させた触媒を使用して窒素酸化物をアンモニアで還元し、効率よく浄化する方法が開示されている。特許文献3ではアルコール、ケトンを窒素酸化物の還元剤として用いた場合、プロトン型βゼオライトは多量の硫黄酸化物の共存下で高い窒素酸化物の浄化活性を示す。更に、特許文献4、5では鉄、コバルト、銀、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも一種の金属を担持させたβゼオライトが同様に耐硫黄性に優れていることが開示されている。また特許文献6では金属で促進された水熱的に安定な窒素酸化物還元用のβゼオライトが開示されており、非骨格性の酸化アルミニウム鎖を水蒸気処理、或いは希土類金属で処理することによってゼオライト構造中に導入させたことを特徴とするβゼオライトが開示されている。
β型構造を有するゼオライトは、特許文献7で初めて提示された物質である。これに開示されている合成方法の特徴は、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水にテトラエチルアンモニウム(R)イオンをR2O/SiO2モル比として0.15以上共存させることにある。別の合成方法として、特許文献8は、テトラエチルアンモニウムイオンがR2O/SiO2モル比0.01〜0.1のように低い割合でもβゼオライトの合成が可能であることを示している。上記のようにβゼオライトの合成には構造指向剤と呼ばれる有機化合物が必須であるが、テトラエチルアンモニウム塩の代わりに、特許文献9にはジベンジル−1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン塩が、特許文献10にはテトラプロピルアンモニウム塩などが使用できることが示されている。また特許文献11には、反応混合物をスラリーではなく、50℃以上で乾燥させた粉末に水蒸気を接触させる製法が開示されている。
特開平2−293021号公報 特開2005−23895号公報 特開2004−261754号公報 特開2004−322077号公報 特開2004−358454号公報 特表2004−536756号公報 米国特許第3,308,069号 特開昭61−281015号公報 特開昭60−235715号公報 特開平7−247114号公報 特開平9−175818号公報
窒素酸化物の効率的な浄化が望まれる中で、これまで提案されている触媒は、特に高温の熱履歴による性能低下の改善が十分ではなかった。
本発明の目的は、低温から高温までの広い温度範囲で効率的に窒素酸化物を浄化する触媒性能を有し、且つ十分な耐熱性/耐久性を有する特定のβ型ゼオライト、及びそれを用いた窒素酸化物の浄化方法を提供するところにある。
本発明者らは、これらの状況に鑑み、ゼオライト触媒の脱硝性能、並びに脱硝性能に対するゼオライトの骨格構造の関連性を鋭意検討した結果、ある特定のβ型ゼオライトでは優れた窒素酸化物の浄化性能を有し、なおかつ優れた耐熱性/耐久性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のゼオライトはβ型ゼオライトであり、一般的にゼオライトは、
xM2/nO・Al・ySiO・zH
(但し、nは陽イオンMの原子価、xは0〜2.5の範囲の数、yは2以上、zは0以上の数である)
で示される。β型ゼオライトは、c軸方向の0.55×0.55nmサイズの細孔径を有する12員環細孔、a軸及びb軸方向に0.76×0.64nmサイズの細孔径を有する12員環細孔から構成され、それらの細孔が交差して3次元細孔を形成している。β型ゼオライトのX線回折パターンを表1に示す。
Figure 2007076990
次に本発明のβ型ゼオライトは、29Si MAS NMRスペクトルで観測されるゼオライト骨格のQに帰属されるSi含有率が35〜47重量%の骨格構造を有するものであり、特に35〜40%の範囲のものである。ここでいう、重量%は測定値においてはβ型ゼオライトのシリカとアルミナにカチオン及び微量の結晶水をベースとしたものであるが、カチオン、結晶水は微量であり計算上は誤差範囲内であるため、本発明の定義における重量%は便宜上はシリカとアルミナをベースとした重量%と同義である。
β型ゼオライトのQに帰属されるSi含有率は、固体NMR(核磁気共鳴)法が用いられ、例えば小野嘉夫、八嶋建明著,ゼオライトの科学と工学,p.61〜67(講談社)に記載がある。特にマジック角回転法を伴う29Siを核種とする固体高分解能NMR(29Si MAS NMR)を用いることにより、β型ゼオライトの骨格Siの縮重度Qの存在割合が評価できる。β型ゼオライト骨格のQに帰属されるSiは、MAS NMRスペクトルの測定において約−120〜−105ppmの範囲に化学シフトを有するピークとして検出される。Qに帰属されるSiは、Si原子に酸素原子を介して4個のSi原子と結合しているSiを指す。
例えば米国特許3308069、特開平2−293021号公報等に開示されているβ型ゼオライト、即ち有機指向剤及びアルカリ源を使用し高いアルカリ条件で結晶化する方法で得られるβ型ゼオライト、或いはフッ素化合物を用いないで結晶化するβ型ゼオライトでは上述のNMR法で評価した縮重度Qが35重量%未満にしかならない。その様なβ型ゼオライトは、実用性能を満足する触媒活性及び耐久性が得られない。また、全てがQに帰属される高純度シリカの場合、Qに帰属されるSi含有率は47重量%となり、β型ゼオライトにおいては理論上Qに帰属されるSiがこれを超えることはない。
本発明のβ型ゼオライトのSiO/Al比は、窒素酸化物の浄化活性、及び耐久性をより高めるためには20〜100の範囲であり、特に好ましくは20〜80である。
本発明のβ型ゼオライトは、29Si MAS NMRスペクトルで観測されるゼオライト骨格のQに帰属されるSi含有率が全Si含有量の78%以上であることが好ましい。
高純度シリカにおけるSi含有量は46.7%であるが、アルミナ及びシリカを含有するβ型ゼオライトのSi含有量は、概ね37.5重量%(SiO/Alモル比が7)から46.6%(SiO/Alモル比が1万以上)までの範囲である。本発明におけるβ型ゼオライトは、Qに帰属されるSi含有率がトータルで36〜47重量%の範囲であり、夫々の値が相当するSiO/Alモル比における理論Si量の78%以上、特に80%以上であることが好ましい。
本発明のβ型ゼオライトの粒径は特に限定されないが、大粒子であることが好ましく1〜30μm、特に1〜5μmであることが好ましい。
次に本願発明のβ型ゼオライトの製造方法について説明する。
本発明のβ型ゼオライトは、フッ素化合物を含む原料混合物からβ型ゼオライトを合成する方法(例えば、特開平3−122009号公報、WO97/33830、WO99/40026などが例示される。)により、特に得られるβ型ゼオライトのSiO/Alモル比が20〜100の範囲の条件下で製造することができる。
β型ゼオライトの結晶化に対する原料混合物に含まれるフッ素の役割は完全に解明されていないが、原料中のフッ素又はフッ素イオンが構造規則性の高いネットワーク形成に寄与していると考えられる。本発明では、フッ素化合物を含む原料混合物から結晶化において、特に特定のSiO/Alモル比の範囲で合成されたβ型ゼオライトでは、適当な縮重度Qの含有率が得られ、触媒として用いた場合に高い性能を発揮する。
合成用原料は、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ源、有機指向剤(以下SDA)原料及びフッ素化合物原料と水から基本的に構成される。シリカ源としてコロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを、アルミナ源として硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウムなどを用いることができ、他の成分と十分均一に混合できる形態のものが望ましい。また、アルカリ源は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルミン酸ナトリウム及び珪酸ナトリウム中のアルカリ成分、アルミノシリケートゲル中のアルカリ成分などを用いることができる。SDA原料としてテトラエチルアンモニウムカチオンを有するテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、更にはオクタメチレンビスキヌクリジウム、α,α’−ジキヌクリジウム−p−キシレン、α,α’−ジキヌクリジウム−m−キシレン、α,α’−ジキヌクリジウム−o−キシレン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,3,3,N,N−ペンタメチル−6−アゾニウムビシクロ[3,2,1]オクタン又はN,N−ジエチル−1,3,3−トリメチル−6−アゾニウムビシクロ[3,2,1]オクタンカチオンを含む化合物の群の少なくとも一種以上を使用することができる。フッ素化合物原料としてフッ酸、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化珪素、フルオロ珪酸アンモニウム、フルオロ珪酸ナトリウムなどを使用することができ、更にはSDAのフッ素アニオンを利用しても良い。
原料混合物の組成は、β型ゼオライトの結晶化が十分に進行し、なおかつ最終的なSiO/Alモル比が20〜100の範囲に入る様に設定すればよい。また、種晶などの結晶化促進作用を有する成分を添加しても良い。具体的には、原料混合物の組成は、下記の範囲で任意に設定すればよい。
SiO/Alモル比 15〜30000
F/SiOモル比 0.1〜5
O/SiOモル比 5〜50
SDA/SiOモル比 0.1〜5
アルカリ/SiOモル比 0〜0.5
そして、水、シリカ、アルミナ、アルカリ成分、SDA及びフッ素化合物の原料混合物を密閉式圧力容器中で、100〜180℃の任意の温度で、十分な時間をかけて結晶化させることで本特許に係るβ型ゼオライトを得ることができる。結晶化の際、原料混合物は混合攪拌された状態でもよいし、静置した状態でも良い。結晶化終了後、十分放冷し、固液分離、十分量の純水で洗浄し、100〜150℃の任意の温度で乾燥して本発明に係るβ型ゼオライトが得られる。
得られたβ型ゼオライトはそのまま窒素酸化物の浄化触媒として使用することができる。また、得られたβ型ゼオライトは細孔内にSDA及びフッ素を含有しており、必要に応じてこれらを適切な処理で除去した後に窒素酸化物の浄化触媒として使用することもできる。SDA及び/又はフッ素の除去処理は、酸性溶液やSDA分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理を採用することができ、これらの処理を組合せても良い。更には、ゼオライトのイオン交換能を利用してH型やNH型に変換して用いることもでき、その方法は公知の技術を採用することができる。
本発明のβ型ゼオライトに、触媒活性な金属種を担持させても良い。担持させる金属種は特に限定されるものでなく、触媒活性金属として公知のVIII族、IB族の元素が挙げられる。好ましくは鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金の群から選ばれる一種以上であり、更に好ましくは鉄、パラジウム、白金、銅、銀の一種以上である。また、希土類金属、チタン、ジルコニアなどの助触媒成分を付加的に加えることもできる。活性金属種を担持させる場合の担持方法も特に限定されない。担持方法として、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法、物理混合法等の一般的な方法を採用することができる。金属担持に用いる原料も硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物、複合酸化物など可溶性/不溶性に関わらず使用できる。またこれらの金属の担持量も限定されるものではなく、金属種に応じて適宜最適な組成とすれば良い。一般的には0.1〜10重量%の範囲で最適化すれば良い。
更に本発明のβ型ゼオライトからなる窒素酸化物の浄化触媒は、シリカ、アルミナ及び粘土鉱物等のバインダーと混合し成形して使用することもできる。成形する際に用いられる粘土鉱物として、カオリン、アタパルガイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン、セピオライトが例示できる。また、コージェライト製或いは金属製のハニカム基材にウォッシュコートして使用することもできる。
排ガスからの窒素酸化物の浄化は、上記のβ型ゼオライトから構成される触媒と該排ガスを接触させることにより行うことができる。本発明で浄化される窒素酸化物は、例えば一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、一酸化二窒素、及びそれらの混合物が例示される。好ましくは一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素である。ここで本発明が処理可能な排ガスの窒素酸化物濃度は限定されるものではない。
また該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれている場合にも有効であり、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていても良い。具体的には、本発明の方法ではディーゼル自動車、ガソリン自動車、ボイラー、ガスタービン等の多種多様の排ガスから窒素酸化物を浄化することができる。
本発明の方法は還元剤の存在下で窒素酸化物が浄化されるが、該排ガス中に含まれる炭化水素、一酸化炭素、水素等を還元剤として利用することができ、更には必要に応じて適当な還元剤を排ガスに添加して共存させても良い。排ガスに添加される還元剤は特に限定されず、アンモニア、尿素、有機アミン類、炭化水素、アルコール類、ケトン類、一酸化炭素、水素等が挙げられる。窒素酸化物の浄化効率をより高めるためには、反応選択性の高いアンモニア、尿素、有機アミン類が好適である。これらの還元剤の添加方法は特に限定されず、還元成分をガス状で直接添加する方法、水溶液などの液状を噴霧し気化させる方法、噴霧熱分解させる方法等を採用することができる。これらの還元剤の添加量は、十分に窒素酸化物が浄化できるように任意に設定すれば良い。
本発明の窒素酸化物の浄化方法において、本発明のβ型ゼオライトから成る触媒と排ガスを接触させる際の空間速度は特に限定されないが、好ましい空間速度は体積基準で500〜50万hr−1、更に好ましくは2000〜30万hr−1である。
本発明のβ型ゼオライトは、窒素酸化物の浄化触媒は耐熱性/耐久性が高く、特に触媒が高温に晒された後でも優れた窒素酸化物の浄化性能を維持する。
以下本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なおβ型ゼオライトの29Si MAS NMRの測定を以下の手順で行った。
NMR装置にはバリアン社製VXR−300Sを用いた。ゼオライトは予め温度25℃、相対湿度80%のデシケーター中で12時間以上水和処理を施した。ゼオライト約100mgと内部標準試料(テトラキストリメチルシラン)約15mgを精秤、十分に物理混合し測定試料とした。NMRの測定条件は、観測周波数59.6MHz、パルス幅1.5μs、測定待ち時間10秒、積算回数1500回、回数周波数4.0kHz、測定温度は室温である。β型ゼオライトのQに帰属されるピークは−116〜−108ppmに、また内部標準試料のSiピークは−135ppmと−10ppmに観測された。
β型ゼオライトのQに帰属されるSi原子の含有率は以下の方法で算出した。まず内部標準試料のトリメチルシリル基に帰属される−10ppmのピークと測定に使用した内部標準の重量から、ピークの積分面積に相当するSi量(mol)を求める。次いで、トリメチルシリル基に帰属されるピークとβゼオライトのQに帰属されるピークの積分強度比から、β型ゼオライトのQに帰属されるSi量(mol)を求め、このQのSi量にSi原子量を乗じた後に、測定に使用したβ型ゼオライトの重量で除したものをQに帰属されるSi原子の含有率とした。
実施例1
水酸化テトラエチルアンモニウム35%水溶液(以下TEAOH)220gに、水酸化アルミニウム3.6g、フッ化アンモニウム17.4g、東ソーシリカ製の無定形シリカ粉末(商品名:ニップシールVN−3)79.4gを加え、十分に攪拌混合した。反応混合物の組成はSiO:0.04Al(OH):0.45TEAOH:0.40NHF:7.2HOであった。この反応混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、140℃で158時間加熱して結晶化した。結晶化後のスラリー状混合物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。その乾燥粉末を空気流通下、600℃で焼成し、β型ゼオライト−1を得た。β型ゼオライト−1は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が48であった。
上述の方法でβ型ゼオライト−1のQに帰属されるSi含有率を求めたところ、35.8重量%で、総Si量の79.4%がQに帰属されるSi原子であった。表2にSiO/Alモル比及びQに帰属されるSi含有率を示した。
β型ゼオライト−1を触媒1として触媒反応試験に供した。
実施例2
結晶化させる反応混合物の組成比をSiO:0.03Al(OH):0.45TEAOH:0.40NHF:7.2HOに変えたこと以外はβゼオライト−1と同様の操作で反応混合物を調製した。その反応混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、140℃で158時間加熱して結晶化した。結晶化後のスラリー状混合物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。その乾燥粉末を空気流通下、600℃で焼成し、β型ゼオライト−2を得た。β型ゼオライト−2は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が71の組成であった。
実施例1と同様にして、β型ゼオライト−2の29Si MAS NMRの測定を行ったところ、β型ゼオライト−2のQに帰属されるSi含有率は37重量%で、総Si量の81.3%がQに帰属されるSi原子であった。
β型ゼオライト−2を触媒2として触媒反応試験に供した。
実施例3
東ソーシリカ製の無定型シリカ粉末を日本アエロジル製の無定形シリカ粉末(商品名:アエロジル300CF)に変えたこと以外は、β型ゼオライト−1の場合と同様の操作で、SiO:0.04Al(OH):0.45TEAOH:0.40NHF:7.2HOの組成の反応混合物を調製した。その反応混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、140℃で158時間加熱して結晶化した。結晶化後のスラリー状混合物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。その乾燥粉末を空気流通下、600℃で焼成し、β型ゼオライト−3を得た。β型ゼオライト−3は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が47の組成であった。
実施例1と同様にして、βゼオライト−3の29Si MAS NMRの測定を行ったところ、β型ゼオライト−3のQに帰属されるSi含有率は38.1重量%で、総Si量の84.6%がQに帰属されるSi原子であった。
β型ゼオライト−3を触媒3として触媒反応試験に供した。
実施例4
テトラエチルオルトシリケート50.7gにTEAOH35%水溶液51.2gを加え、室温で6時間攪拌し、エタノールと水を蒸発させ、更に水酸化アルミニウム0.56g、フッ化水素酸(47%)5.2gを加え、得られた粘性混合物を乳鉢で混練した。この時の反応混合物の組成はSiO:0.03Al(OH):0.50TEAOH:0.50HF:8.0HOとした。その反応混合物をステンレス製オートクレーブに密閉し、140℃で227時間加熱して結晶化した。結晶化後のスラリー状混合物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。その乾燥粉末を空気流通下、600℃で焼成し、β型ゼオライト−4を得た。β型ゼオライト−4は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が65の組成であった。
実施例1と同様にして、β型ゼオライト−4の29Si MAS NMRの測定を行ったところ、β型ゼオライト−4のQに帰属されるSi含有率は36.5重量%で、総Si量の80.2%がQに帰属されるSi原子であった。
β型ゼオライト−4を触媒4として触媒反応試験に供した。
実施例5
Fe金属担持量が3重量%になるように精秤されたFe(NO・9水和物の水溶液を用いて、実施例1で得られたβ型ゼオライト−1に鉄を含浸担持した。500℃で空気焼成した鉄担持β型ゼオライト−1を触媒5として触媒反応試験に供した。
実施例6
Fe金属担持量が7重量%になるように精秤されたFe(NO・9水和物の水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行って、鉄担持β型ゼオライト−1を調製し、触媒6として触媒反応試験に供した。
実施例7
実施例1で得られたβ型ゼオライト−1:10gを、酢酸銅1水和物:1.5gを純水100gに溶解した酢酸銅水溶液に添加し、更にアンモニア水を加えてスラリーpHを10.5に調整し、30℃で20時間のイオン交換操作行った。その後、固液分離し、純水で洗浄し、110℃で20時間乾燥して、銅担持担持β型ゼオライト−1を得た。ICP分析で、銅の担持量は4重量%であった。500℃で空気焼成した銅担持β型ゼオライト−1を触媒7として触媒反応試験に供した。
比較例1
特開平2−293021号公報に開示されている方法を参照して、フッ素化合物を用いることなくβ型ゼオライトを合成した。攪拌状態にあるオーバーフロータイプの反応槽(実容積4.8リットル)に珪酸ソーダ水溶液(SiO;130g/l、NaO;41.8g/l、Al;0.05g/l)及び硫酸アルミニウム水溶液(Al;21.3g/l、SO;240g/l)をそれぞれ18.2リットル/Hr及び4.5リットル/Hrの流量で同時に供給し、攪拌下で反応させ、スラリー状生成物を得た。この時スラリーの平均滞在時間は12.5分であった。また、反応中反応槽のpHは6〜8となるように、珪酸ソーダ水溶液の供給方量を調整した。反応槽からオーバーフローしたスラリー状生成物は、ヌッチェで脱水した後、水洗して粒状無定型アルミノ珪酸塩を得た。
その粒状無定型アルミノ珪酸塩;189g、固形水酸化ナトリウム;1.4g、固形水酸化カリウム;3.5g及び20重量%テトラエチルアンモニウム水溶液;480gを30分攪拌混合し、β型ゼオライトの原料とした。その原料スラリーを容積1リットルの密閉式圧力容器に移し、周速0.8m/sで攪拌しながら、150℃で96時間結晶化した。結晶化後のスラリー状混合物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。その得られた乾燥粉末を空気気流下、600℃で焼成し、β型ゼオライト−5を得た。βゼオライト−5は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が36の組成であった。
実施例1と同様にして、β型ゼオライト−5の29Si MAS NMRの測定を行ったところ、β型ゼオライト−5のQに帰属されるSi含有率は30.1重量%で、総Si量の67.6%がQに帰属されるSi原子であった。SiO/Alモル比は範囲内にあったがQに帰属されるSi含有率は低いものでしかなかった。
このβゼオライト−5を比較触媒1として触媒反応試験に供した。
比較例2
SiO/Alモル比が40の東ソー製β型ゼオライト(商品名:HSZ−940NHA)を乾燥空気気流下、600℃で焼成し、β型ゼオライト−6を得た。β型ゼオライト−6は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が40の組成であった。
実施例1と同様にして、β型ゼオライト−6の29Si MAS NMRの測定を行ったところ、β型ゼオライト−6のQに帰属されるSi含有率は34.1重量%で、総Si量の76.3%がQに帰属されるSi原子であった。
このβ型ゼオライト−6を比較触媒2として触媒反応試験に供した。
比較例3
比較例1で得られたβ型ゼオライト−5を特開昭58−208131号公報に開示されている塩酸処理を参照し、SiO/Alモル比を高めた。β型ゼオライト−5;20gを、0.2規定の塩酸水溶液;100gに添加し、80℃で2時間攪拌した。その後、固液分離、十分量の純水で洗浄し、100℃で一晩乾燥し、βゼオライト−7を得た。βゼオライト−7は粉末X線回折から表1と同じX線回折パターンを有し、ICP発光分析の測定からSiO/Alモル比が445の組成であった。
実施例1と同様にして、βゼオライト−7の29Si MAS NMRの測定を行ったところ、β型ゼオライト−7のQに帰属されるSi含有率は30.8重量%で、総Si量の66.2%がQに帰属されるSi原子であった。SiO/Alモル比が本発明の範囲を外れ、なおかつQに帰属されるSi含有率は低いものでしかなかった。
このβ型ゼオライト−7を比較触媒3として触媒反応試験に供した。
比較例4
β型ゼオライト−6を用いたこと以外は、実施例5と同様な操作を行って、鉄担持β型ゼオライト−6を調製し(鉄担持量3重量%)、比較触媒4として触媒反応試験に供した。
比較例5
β型ゼオライト−6を用いたこと以外は、実施例7と同様な操作を行って、銅担持β型ゼオライト−6を調製し(銅担持量4.1重量%)、比較触媒5として触媒反応試験に供した。
Figure 2007076990
<触媒反応試験>
実施例1〜7及び比較例1〜5で調製した触媒をプレス成形後、破砕して12〜20メッシュに整粒した。整粒した各触媒1.5ccを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に表3の組成のガスを1500cc/minで流通させながら、100〜500℃の任意の温度で定常的な窒素酸化物の除去活性を評価した。
Figure 2007076990
窒素酸化物の除去活性は下式で表される。
Figure 2007076990
ここで、XNOxは窒素酸化物の浄化率(%)、[NOx]inは入りガスの窒素酸化物濃度、[NOx]outは出ガスの窒素酸化物濃度を示す。
表4にはβ型ゼオライト触媒、表5には鉄担持β型ゼオライト触媒、表6には銅担持β型ゼオライトにおける任意の温度での窒素酸化物除去率(%)を示す。
Figure 2007076990
Figure 2007076990
Figure 2007076990
更に、各触媒;3ccを常圧固定床流通式反応管に充填し、700℃で20時間、HO=10vol%を含む空気を300cc/minで流通させて処理した(耐久処理)。この耐久処理後の各触媒に関し、上述の触媒反応試験と同様な条件で窒素酸化物の除去活性を評価した。β型ゼオライト触媒、鉄担持β型ゼオライト触媒、及び銅担持β型ゼオライトのそれぞれの評価結果を表7〜9に示す。
Figure 2007076990
Figure 2007076990
Figure 2007076990
以上の結果より、本発明のβ型ゼオライトは優れた窒素酸化物の浄化性能及び高い耐久性を有しており、触媒が高温に晒された後でも効率的に窒素酸化物を浄化することができる。

Claims (9)

  1. 29Si MAS NMRスペクトルで観測されるゼオライト骨格のQに帰属されるSi含有率が35〜47重量%である骨格構造を有し、SiO/Alのモル比が20以上100未満であるβ型ゼオライト。
  2. 29Si MAS NMRスペクトルで観測されるゼオライト骨格のQに帰属されるSi含有率が全Si含有量の78%以上である請求項1に記載のβ型ゼオライト。
  3. 周期律表のVIII族、IB族の元素群から少なくとも一種の金属が担持された請求項1〜2に記載のβ型ゼオライト。
  4. VIII族が鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、IB族が銅、銀、金である請求項3に記載のβ型ゼオライト。
  5. 担持される金属の含有量が0.1〜10重量%である請求項3〜4に記載のβ型ゼオライト。
  6. 請求項1〜5のいずれかのβ型ゼオライトを含んでなる窒素酸化物の浄化触媒。
  7. 窒素酸化物を含有する排ガスを還元剤の存在下で請求項1〜5に記載のβ型ゼオライトから成る触媒に接触させることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法。
  8. 排ガス中に含有される窒素酸化物が一酸化窒素、二酸化窒素及び亜酸化窒素の少なくとも一種である請求項7に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  9. 還元剤がアンモニア、尿素、有機アミン類の群から選ばれる少なくとも一種である請求項7〜8に記載の窒素酸化物の浄化方法。
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