JP2007059838A - プリプレグ用エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、多層プリント配線板 - Google Patents

プリプレグ用エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、多層プリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】燃焼時に有害な物質を生成することがなく、難燃性、吸湿後の半田耐熱性に優れ、かつ、熱時剛性が優れているプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】リン含有エポキシ樹脂(予備反応エポキシ樹脂)、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂、硬化剤、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を必須成分として含有するプリプレグ用エポキシ樹脂組成物に関する。上記予備反応エポキシ樹脂をエポキシ樹脂全体に対して20質量%以上60質量%未満となるように配合する。上記熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して20質量部以上180質量部未満となるように配合する。全無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して110質量部以上200質量部未満となるように配合する。上記硬化剤として多官能フェノール系化合物を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、プリプレグの製造に用いられるプリプレグ用エポキシ樹脂組成物、プリント配線板(多層プリント配線板を含む)の製造に用いられるプリプレグ、多層プリント配線板に関するものであり、特に、プラスチックパッケージ用プリント配線板やカード用プリント配線板に関するものである。
難燃性エポキシ樹脂は、自己消火性、機械的特性、耐湿性、電気的特性に優れる等の理由で様々な電気絶縁材料に使用されている。
従来の難燃性エポキシ樹脂は、難燃性を付与するために臭素を主としたハロゲン系化合物を含有しており、このことによって成形物が自己消火性を有するものである。ところが、このような成形物が火災等で燃焼する際には、ポリ臭素化されたジベンゾダイオキシン及びフラン等の人体に悪影響を及ぼす化合物が形成されるおそれがある。しかも臭素を含有した化合物は、加熱される際に臭素が分解して長期における耐熱性が悪くなるものである。そのため、ハロゲン系化合物を添加せずに、優れた難燃性や耐熱性を有する成形物の開発が要請されていた。
この要請に対しては、主としてリン元素(リン化合物)を使用した難燃化が検討されている。例えば、リン酸エステル系の化合物であるトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)等の添加型リン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物中に適正量配合することによって、難燃性を確保することが可能となる。ところが、このような添加型リン系難燃剤は、エポキシ樹脂と反応することがないために、得られた成形物の吸湿後の半田耐熱性や耐アルカリ性等の耐薬品性が大幅に低下するなどといった別の問題が新たに生ずることとなった。
上記問題に対しては、特開平4−11662号公報(特許文献1)、特開平11−166035号公報(特許文献2)、特開平11−124489号公報(特許文献3)等で開示されているように、リン化合物として、エポキシ樹脂と反応する反応型リン系難燃剤を用いることが提案されている。ところが、このようなリン化合物を用いると、得られた成形物の吸湿率がハロゲン系化合物を用いて得られた成形物よりも大きくなると共に、成形物が硬くて脆くなり、やはり吸湿後の半田耐熱性が低下するものであった。
また、これまで半田材料としては鉛が用いられてきたが、近年、廃棄された電気・電子製品からこの鉛が自然環境へ流出して深刻な問題が生じており、その対応策として、鉛を含まない半田いわゆる鉛フリー半田の利用が開始されている。今後は鉛フリー半田の利用は増加するものと考えられるが、この鉛フリー半田の処理温度は、従来の鉛を含む半田の処理温度よりも一般に約10〜20℃高いものであるため、特に優れた半田耐熱性が要求されるものである。
以上の問題点を踏まえ、本発明者らは、特許第3412585号公報(特許文献4)に開示してあるように、2官能エポキシ樹脂とリン含有2官能フェノール化合物とを反応させることによって、ハロゲン系化合物を含有することなく、難燃性を確保すると共に、半田耐熱性等の諸特性と、高いガラス転移温度(Tg)との両立を図る方法を見出した。
しかし、近年の更なる電子機器の軽薄短小化により、これらに用いられているプリント配線板材料も薄い材料が求められ、支持体としての役目が重要となり、より強い剛性が求められている。特に、上述したように鉛フリー半田の使用により、従来のリフロー温度から高温になるため、基板の反り低減対策として、熱時剛性の優れた材料が求められているが、上記のような従来の方法では、優れた熱時剛性と半田耐熱性の両立が困難であって、いずれも求められているようなレベルには達していない。
特許第3412585号公報(特許文献4)や特開2001−348420号公報(特許文献5)では、従来の添加型のリン化合物による難燃化において問題とされていた成形後の吸湿後の半田耐熱性や耐薬品性の低下を抑えることができた。しかしながら、予備反応エポキシ樹脂をエポキシ樹脂全体に対して60質量%以上用いなければ吸湿後の半田耐熱性が低下するといった問題があった。
また、基板の剛性の改善方法としては、無機充填剤を多く樹脂中に充填する方法があるが、予備反応エポキシ樹脂は粘度が高く(150℃での溶融粘度が約80〜800ps)、特許第3412585号公報(特許文献4)の方法では、樹脂固形分100質量部に対して100質量部以上の無機充填剤を添加しようとすると、均一に分散させることが困難となり、樹脂流れが悪くなり、成形しにくくなっていた。
また、無機充填剤が100質量部では、基板の剛性は未だ不十分であり、基板の剛性を改善するためには、それ以上の添加が必要であったが、上記の方法では、粘度の高い予備反応エポキシ樹脂の割合が高く、エポキシ樹脂全体の粘度が高くなるため、より多くの無機充填剤の添加は困難であった。
無機充填剤の添加量を増加させるには、エポキシ樹脂全体に対して、予備反応エポキシ樹脂の割合を減らし、多官能エポキシ樹脂(150℃での溶融粘度約1〜10ps)を増やすことにより、エポキシ樹脂全体の粘度が低くなり、無機充填剤の増量が可能で、かつ、多官能成分が増えるため、高いガラス転移温度(Tg)が得られやすい。しかしながら、上記の方法では、予備反応エポキシ樹脂の割合がエポキシ樹脂全体の60質量%未満になると、吸湿後の半田耐熱性が低下するといった問題が生じていた。
特開平4−11662号公報 特開平11−166035号公報 特開平11−124489号公報 特許第3412585号公報 特開2001−348420号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、燃焼時に有害な物質を生成することがなく、難燃性、吸湿後の半田耐熱性に優れ、かつ、熱時剛性が優れているプリプレグ用エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係るプリプレグ用エポキシ樹脂組成物は、ノボラック型エポキシ樹脂を20質量%以上含有するエポキシ樹脂類と、キノン化合物とリン原子に結合した1個の活性水素を有するリン化合物とを上記キノン化合物の上記リン化合物に対するモル比を0より大きく1未満の化学量論量未満にて反応させて得られる活性水素を有する有機リン化合物を反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂(予備反応エポキシ樹脂)、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂、硬化剤、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を必須成分として含有するプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、上記予備反応エポキシ樹脂をエポキシ樹脂全体に対して20質量%以上60質量%未満となるように配合し、上記熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して20質量部以上180質量部未満となるように配合し、全無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して110質量部以上200質量部未満となるように配合すると共に、上記硬化剤として多官能フェノール系化合物を用いて成ることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1において、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤以外の無機充填剤として、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムのうちの一方又は両方を用いて成ることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤として、平均粒子径0.05μm以上5μm以下の球状シリカを用いて成ることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、無機充填剤として、カップリング剤で表面処理されたものを用いて成ることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、リン化合物として、下記(式1)と(式2)で表されるリン化合物のうちの一方又は両方を用いて成ることを特徴とするものである。
Figure 2007059838
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、リン元素成分の含有量がエポキシ樹脂全体に対して0.5質量%以上3.5質量%未満であることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、多官能エポキシ樹脂として、メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、多官能フェノール系化合物として、下記(式3)と(式4)で表される多官能フェノール系化合物のうちの一方又は両方を用いて成ることを特徴とするものである。
Figure 2007059838
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、黒色顔料と黒色染料のうちのいずれか一方又は両方を添加して黒色化して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項10に係るプリプレグは、請求項1乃至9のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、乾燥半硬化して製造して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項11に係る多層プリント配線板は、回路パターンを形成した内層用基板に請求項10に記載のプリプレグを積層成形して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項1に係るプリプレグ用エポキシ樹脂組成物によれば、燃焼時に発生する有害物質の原因となる臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないで難燃性を向上させることができるものである。また、特定の無機充填剤を特定の配合量で使用しているので、吸湿後の半田耐熱性及び熱時剛性の両方の特性が優れたプリント配線板の原材料として用いることができるものである。
請求項2の発明によれば、難燃化に寄与することができるものである。
請求項3の発明によれば、ワニス粘度の増粘を抑えながら、より多くの無機充填剤を充填させることができるものである。さらに、他の無機充填剤を用いる場合に比べて、充填による成形性への影響も少なくなるものである。
請求項4の発明によれば、無機充填剤の二次凝集を防止して均一に分散させ、樹脂との接着力をより強化することができると共に、無機充填剤自体の特性を改善することができるものである。具体的には、耐薬品性に乏しい無機充填剤については、その耐薬品性を向上させることができるものである。
請求項5の発明によれば、臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないでも難燃性を向上させることができると共に、エポキシ樹脂と反応して確実に高分子化合物を生成することができ、耐薬品性の低下を防止することができるものである。
請求項6の発明によれば、ハロゲン系化合物を使用しないで十分な難燃性を確保することができると共に、吸湿性を抑えて耐熱性を向上させることができるものである。
請求項7の発明によれば、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物の粘度は低いものとなり、基材に含浸させる作業等を円滑に行うことができるものである。しかも粘度を低く抑えつつ架橋密度を上げることができるため、得られる成形物のガラス転移温度(Tg)を著しく高めることができるものである。
請求項8の発明によれば、高耐熱性で、かつ、ガラス転移温度(Tg)の高い成形物を得ることができるものである。さらに、上記(式3)で表される多官能フェノール系化合物を用いる場合には、成形物にUV遮蔽性の効果を付与することができるものである。
請求項9の発明によれば、プリント配線板の内層回路の検査を行う場合において、AOI検査の精度が向上して有用であると共に、成形物にUV遮蔽性を付与することもできるものである。
本発明の請求項10に係るプリプレグによれば、臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないで難燃性を向上させることができるものである。また、吸湿後の半田耐熱性及び熱時剛性の両方の特性が優れたプリント配線板の原材料として用いることができるものである。さらに、黒色化したものであれば、UV遮蔽性も高く得ることができるものである。
本発明の請求項11に係る多層プリント配線板によれば、臭素等のハロゲン系化合物を含有せずに優れた難燃性を示すと共に、吸湿後の半田耐熱性を低下させずに、熱時剛性が優れた特性を得ることができるものである。さらに、内層回路検査時のAOI検査の精度があがり、有用である。また、UV遮蔽性も付与されるものである。燃焼時に有害な物質を生成することがなく、難燃性、吸湿後の半田耐熱性に優れ、かつ、熱時剛性が優れているものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係るプリプレグ用エポキシ樹脂組成物は、リン含有エポキシ樹脂(予備反応エポキシ樹脂)、多官能エポキシ樹脂、硬化剤、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を必須成分として含有するものである。なお、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤とは、400℃以上の温度で加熱した場合に質量が5%減少するような無機充填剤のことをいい、また、熱分解温度はIPC法に準じて測定することができる。
本発明において予備反応エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂類と有機リン化合物とを反応させて得られるものを用いる。なお、この反応は、トルエン等の溶媒中においてトリフェニルフォスフィン等の硬化促進剤を添加することによって行うことができる。
ここで、予備反応エポキシ樹脂の原材料となるエポキシ樹脂類としては、ノボラック型エポキシ樹脂を20質量%以上(上限は100質量%)含有するものを用いる。ノボラック型エポキシ樹脂が20質量%よりも少ないと、難燃性の付与が困難となるだけでなく、耐熱性が悪化することから好ましくない。エポキシ樹脂類が混合物である場合のノボラック型エポキシ樹脂以外の樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂など1分子中に2個以上のエポキシ基を持つものを挙げることができるが、これらのものに限定されるものではない。
また、予備反応エポキシ樹脂の原材料となる有機リン化合物としては、キノン化合物とリン化合物とを反応させて得られるものを用いる。このようにして得られる有機リン化合物は活性水素を有している。
ここで、有機リン化合物の原材料となるキノン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、トルキノン、1,4−ナフトキノン等を用いることができる。キノン化合物は、1種のものを単独で用いたり、2種以上のものを混合して用いたりすることができる。
また、有機リン化合物の原材料となるリン化合物としては、リン原子に結合した1個の活性水素を有するものを用いる。特に、リン化合物としては、上記(式1)と(式2)で表されるリン化合物のうちの一方又は両方を用いるのが好ましい。これにより、臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないでも難燃性を向上させることができると共に、エポキシ樹脂と反応して確実に高分子化合物を生成することができ、耐薬品性の低下を防止することができるものである。
そして、有機リン化合物を合成するにあたっては、キノン化合物のリン化合物に対するモル比を0より大きく1未満の化学量論量未満にて、すなわち、0<(キノン化合物/リン化合物)(モル比)<1となるように、キノン化合物とリン化合物とを反応させるものである。ここで、キノン化合物を使用しないでリン化合物のみをエポキシ樹脂類と反応させた場合、すなわち、上記のモル比が0の場合、エポキシ樹脂の架橋点であるエポキシ基との反応が起こり、硬化物の架橋密度が低下するため、耐熱性等の物性に悪影響を及ぼす。また、キノン化合物とリン化合物とをモル比が1となるように反応させた場合、これらの反応が目的通りに進行せずにリン化合物又はキノン化合物が残存してしまう。特に昇華性のあるキノン化合物が残存した場合には、エポキシ樹脂と反応する反応基を有していないので、耐熱性等の物性に悪影響を及ぼす。
また、多官能エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上(上限は平均6個)含むものを用いる。1分子内におけるエポキシ基の平均個数が上記の範囲内であれば、その他の分子構造は特に制限されない。このような多官能エポキシ樹脂を1種のみ又は2種以上配合することにより、ガラス転移温度(Tg)を向上させることが可能となる。しかし、1分子内に含まれるエポキシ基が平均2.8個未満であると、成形物の架橋密度が不足し、ガラス転移温度(Tg)を高める効果が得られない。なお、1分子内に含まれるエポキシ基が平均6個を超えると、粘度が高くなり、樹脂流れが悪く、成形しにくくなるおそれがある。
具体的には、多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂等を用いるのが好ましい。これらの多官能エポキシ樹脂はいずれも1分子内にエポキシ基を平均3個以上5個未満含み、軟化温度が90℃以下のものである。このような多官能エポキシ樹脂を用いて調製されたプリプレグ用エポキシ樹脂組成物の粘度は低いものとなり、基材に含浸させる作業等を円滑に行うことができるものである。なお、軟化温度が90℃を超えると、高分子量タイプの樹脂であるために、粘度が高くなり、基材に含浸させる作業に不具合が生じたり、樹脂中において無機充填剤を均一に分散させることが困難となり、樹脂流れが悪く、成形しにくくなるおそれがある。
また、多官能エポキシ樹脂としては、メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂を用いるのも好ましい。このような多官能エポキシ樹脂を用いて調製されたプリプレグ用エポキシ樹脂組成物の粘度は低いものとなり、基材に含浸させる作業等を円滑に行うことができるものである。しかも粘度を低く抑えつつ架橋密度を上げることができるため、得られる成形物のガラス転移温度(Tg)を著しく高めることができるものである。
また、硬化剤としては、フェノールノボラック型フェノール等の多官能フェノール系化合物(多官能フェノール系樹脂)を用いる。これを用いると、良好な電気的特性を成形物に付与することができると共に、強靭性、可撓性、接着力、加熱時の応力緩和に優れた成形物を得ることができるものである。特に、多官能フェノール系化合物としては、上記(式3)と(式4)で表される多官能フェノール系化合物のうちの一方又は両方を用いるのが好ましい。このような多官能フェノール系化合物を用いると、高耐熱性で、かつ、ガラス転移温度(Tg)の高い成形物を得ることができるものである。さらに、上記(式3)で表される多官能フェノール系化合物を用いる場合には、成形物にUV遮蔽性の効果を付与することができるものである。
また、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤としては、特に限定されるものではないが、平均粒子径0.05μm以上5μm以下の球状シリカを用いるのが好ましい。このような無機充填剤を用いることにより、ワニス粘度の増粘を抑えながら、より多くの無機充填剤を充填させることができるものである。さらに、他の無機充填剤を用いる場合に比べて、充填による成形性への影響も少なくなるものである。しかし、平均粒子径が0.05μm未満であると、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物が増粘するおそれがあり、逆に、平均粒子径が5μmを超えると、積層板のドリル加工性(穴位置精度)が低下するおそれがある。
また、本発明においては、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤以外の無機充填剤(他の無機充填剤)を用いることができる。この他の無機充填剤としては、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムのうちの一方又は両方を用いるのが好ましい。このような無機充填剤を併用することによって、難燃化に寄与することができるものである。
また、無機充填剤としては、カップリング剤で表面処理されたものを用いるのが好ましい。このようにして無機充填剤に表面処理を施すことにより、無機充填剤の二次凝集を防止して均一に分散させ、樹脂との接着力をより強化することができると共に、無機充填剤自体の特性を改善することができるものである。具体的には、耐薬品性に乏しい無機充填剤については、その耐薬品性を向上させることができるものである。例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのような無機充填剤は、耐薬品性については不十分であるが、表面処理を施すことによって耐薬品性を向上させることができるものである。特に、エポキシシランカップリング剤とメルカプトシランカップリング剤のうちの一方又は両方を用いて表面処理を施せば、耐薬品性等の特性を大幅に向上させることができると共に、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物中において無機充填剤の二次凝集を抑制しつつ、これらの無機充填剤を均一に分散させることができるものである。ここで、エポキシシランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができ、また、メルカプトシランカップリング剤の具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。なお、表面処理は、乾式などで施すことができる。
また、本発明においては、上述した成分以外に、黒色剤等の添加剤、硬化促進剤、各種改質剤を必要に応じてプリプレグ用エポキシ樹脂組成物中に配合してもよい。特に、黒色剤として、黒色顔料と黒色染料のうちのいずれか一方又は両方を添加することによって、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を黒色化するのが好ましい。このようにして黒色化されたプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を用いてプリント配線板を製造すると、このプリント配線板の内層回路の検査を行う場合において、AOI(Automatic Optical Inspection)検査の精度が向上して有用であると共に、成形物にUV遮蔽性を付与することもできるものである。ここで、黒色顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック等を用いることができ、また、黒色染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジスアゾ系染料やアジン系染料等を用いることができる。なお、黒色剤は、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下添加することができる。
また、硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、三級アミン類やイミダゾール類等を用いることができる。
また、改質剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、SBR、BR、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム等のゴム成分を用いることができる。
そして、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を調製するにあたっては、上述した必須成分、必要に応じてその他の成分を混合することによって行うことができるが、このとき、上述した予備反応エポキシ樹脂をエポキシ樹脂全体に対して20質量%以上60質量%未満となるように配合する。ここで、予備反応エポキシ樹脂がエポキシ樹脂全体に対して20質量%未満であると、難燃性の効果が薄れるものであり、逆に60質量%以上であると、予備反応エポキシ樹脂の粘度が高いため、無機充填剤を十分に充填することができず、基板の剛性を高く得ることができなくなる。
また、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を、樹脂固形分100質量部に対して、20質量部以上180質量部未満となるように配合し、かつ、全無機充填剤を、樹脂固形分100質量部に対して、110質量部以上200質量部未満となるように配合する。このように、特定の無機充填剤を特定の配合量で用いることにより、予備反応エポキシ樹脂がエポキシ樹脂全体に対して60質量%未満であっても、吸湿後の半田耐熱性を高く確保しつつ、熱時の剛性を高く得ることができるものである。しかし、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤が、樹脂固形分100質量部に対して、20質量部未満であると、吸湿後の半田耐熱性を改善する効果が乏しく、逆に、180質量部以上であると、接着力等が低下するものである。また、全無機充填剤が、樹脂固形分100質量部に対して、110質量部未満であると、熱時剛性が低下し、逆に、200質量部以上であると、接着力等が低下するものである。なお、樹脂固形分には無機充填剤は含まれない。
上記のようにして得られるプリプレグ用エポキシ樹脂組成物にあって、リン元素成分の含有量はエポキシ樹脂全体に対して0.5質量%以上3.5質量%未満であることが好ましい。これにより、ハロゲン系化合物を使用しないで十分な難燃性を確保することができると共に、吸湿性を抑えて耐熱性を向上させることができるものである。しかし、リン元素成分の含有量が0.5質量%未満であると、十分な難燃性を得ることができないおそれがあり、逆に3.5質量%以上であると、成形物が吸湿しやすくなったり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
上記のようにして得られたプリプレグ用エポキシ樹脂組成物によれば、燃焼時に発生する有害物質の原因となる臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないで難燃性を向上させることができるものである。また、特定の無機充填剤を特定の配合量で使用しているので、吸湿後の半田耐熱性及び熱時剛性の両方の特性が優れたプリント配線板の原材料として用いることができるものである。
次に、上記のようにして得られたプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を必要に応じて各種溶媒に溶解して希釈することによってワニスを調製することができる。そして、このワニスを基材に含浸し、例えば、乾燥機中で120〜190℃程度の温度で3〜15分間程度この基材を乾燥させることによって、半硬化状態(B−ステージ)にしたプリプレグを製造することができる。ここで、基材としては、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等のガラス繊維布のほか、クラフト紙、天然繊維布、有機合成繊維布等も用いることができる。
上記のようにして得られたプリプレグによれば、臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないで難燃性を向上させることができるものである。また、吸湿後の半田耐熱性及び熱時剛性の両方の特性が優れたプリント配線板の原材料として用いることができるものである。さらに、黒色化したものであれば、UV遮蔽性も高く得ることができるものである。
その後、上記のようにして得られたプリプレグを所要枚数重ね、例えば、140〜200℃、0.98〜4.9MPaの条件下で、このプリプレグを加熱加圧して積層成形することによって、積層板を製造することができる。この際、所要枚数重ねたプリプレグの片面又は両面に金属箔を重ね、プリプレグと金属箔とを共に加熱加圧して積層成形することによって、金属箔張積層板を製造することができる。金属箔としては、銅箔、銀箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等を用いることができる。また、あらかじめ回路パターン(内層回路)を形成した内層用基板の片面又は両面に所要枚数のプリプレグを介して金属箔を重ね、これを加熱加圧して積層成形することによって、多層プリント配線板を製造することができるものである。
上記のようにして得られた多層プリント配線板によれば、臭素元素等を含むハロゲン系化合物を使用しないで難燃性を向上させることができると共に、吸湿後の半田耐熱性及び熱時剛性の両方の特性を高く得ることができるものである。さらに、黒色化したものであれば、内層回路の検査を行う場合において、AOI検査の精度が向上して有用であると共に、UV遮蔽性も高く得ることができるものである。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
まず、使用したエポキシ樹脂、硬化剤、リン化合物、キノン化合物、無機充填剤、硬化促進剤、溶媒、黒色剤を以下に順に示す。
エポキシ樹脂は以下の7種類のものを使用した。
エポキシ樹脂1:フェノールノボラック型エポキシ樹脂
東都化成株式会社製「エポトートYDPN−638」
エポキシ樹脂2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
東都化成株式会社製「エポトートYDCN−701」
エポキシ樹脂3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
東都化成株式会社製「YDF−170」
エポキシ樹脂4:メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂
日本化薬株式会社製「EPPN502H」
(150℃における溶融粘度約5ps)
(エポキシ基平均7.0個、エポキシ当量170)
エポキシ樹脂5:メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂
三井化学石油工業株式会社製「VG3101」
(エポキシ当量219)
(150℃における溶融粘度約4ps)
エポキシ樹脂6:メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂
住友化学株式会社製「FSX−220」
(エポキシ当量220)
(150℃における溶融粘度約4ps)
エポキシ樹脂7:フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂
大日本インキ化学工業株式会社製「EPICLON−N740」
(エポキシ当量180)
(150℃における溶融粘度約3ps)
また、硬化剤は以下の3種類のものを使用した。
硬化剤1:多官能フェノール系樹脂((式3)で表されるもの)
明和化成株式会社製「MEH7600」
(フェノール性水酸基当量100)
硬化剤2:多官能フェノール系樹脂((式4)で表されるもの)
明和化成株式会社「MEH7500H」
(フェノール性水酸基当量100)
硬化剤3:多官能フェノール系樹脂(フェノールノボラック型フェノール)
大日本インキ化学工業株式会社製「TD−2093Y」
(フェノール性水酸基当量105)
また、リン化合物は以下のものを使用した。
リン化合物1:三光株式会社「HCA」((式1)で表されるもの)
(リン含有量約14.3質量%)
また、キノン化合物は以下のものを使用した。
キノン化合物1:1,4−ナフトキノン
また、無機充填剤は以下の8種類のものを使用した。
無機充填剤1:水酸化アルミニウム
住友化学株式会社製「C302A」
(平均粒子径:約2μm、熱分解温度:280℃)
無機充填剤2:水酸化アルミニウム
住友化学株式会社製「C305」
(平均粒子径:約5μm、熱分解温度:270℃)
無機充填剤3:水酸化マグネシウム
協和化学工業株式会社製「キスマ5」
(平均粒子径:約1μm、熱分解温度:360℃)
無機充填剤4:球状シリカ
株式会社龍森製「キクロスMSR−04」
(平均粒子径:約4.1μm、熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤5:球状シリカ
電気化学工業株式会社製「FB−1SDX」
(平均粒子径:約1.5μm、熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤6:球状シリカ
電気化学工業株式会社製「SFP−30M」
(平均粒子径:約0.72μm、熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤7:球状シリカ
株式会社アドマテックス製「SO−C2」
(平均粒子径:約0.5μm、熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤8:無機充填剤2(100質量部)をエポキシシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである信越化学工業株式会社製「KBM403」、約1.5質量部)で乾式によって表面処理したもの
また、硬化促進剤は以下のものを使用した。
硬化促進剤1:四国化成工業株式会社製「2−エチル−4−メチルイミダゾール」
また、溶媒は以下の3種類のものを使用した。
溶媒1:メチルエチルケトン(MEK)
溶媒2:メトキシプロパノール(MP)
溶媒3:トルエン
また、黒色剤(黒色顔料)は以下のものを使用した。
黒色剤1:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「アダルライトDW−07」 次に、使用した予備反応エポキシ樹脂を示す。予備反応エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂1〜3、リン化合物1、キノン化合物1等を使用して、以下に示すようにして5種類調製した。
(予備反応エポキシ樹脂1)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、「HCA」(リン化合物1)155質量部とトルエン(溶媒3)330質量部を仕込み、加熱して溶解させた。その後、1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)99.0質量部を分割投入し、有機リン化合物を合成した。このとき、モル比は1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)/「HCA」(リン化合物1)=0.87であった。反応後、「エポトートYDPN−638」(エポキシ樹脂1)746.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルフォスフィンを0.25質量部添加して150℃で4時間反応させた。これにより得られた予備反応エポキシ樹脂1のエポキシ当量は360.3g/eq、リン含有量は2.2質量%であった。
(予備反応エポキシ樹脂2)
「HCA」(リン化合物1)141質量部、1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)25.7質量部、トルエン(溶媒3)300質量部、「エポトートYDCN−701」(エポキシ樹脂2)833.3質量部、トリフェニルフォスフィン0.17質量部とした以外は、予備反応エポキシ樹脂1の場合と同じ操作を行った。モル比は1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)/「HCA」(リン化合物1)=0.25であった。これにより得られた予備反応エポキシ樹脂2のエポキシ当量は316.6g/eq、リン含有量は2.0質量%であった。
(予備反応エポキシ樹脂3)
「HCA」(リン化合物1)141質量部、1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)96.3質量部、トルエン(溶媒3)300質量部、「エポトートYDPN−638」(エポキシ樹脂1)262.7質量部、「YDF−170」(エポキシ樹脂3)409.6質量部、トリフェニルフォスフィン0.24質量部とした以外は、予備反応エポキシ樹脂1の場合と同じ操作を行った。モル比は1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)/「HCA」(リン化合物1)=0.93であった。これにより得られた予備反応エポキシ樹脂3のエポキシ当量は323.0g/eq、リン含有量は2.0質量%であった。
(予備反応エポキシ樹脂4)
「HCA」(リン化合物1)141質量部、1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)96.3質量部、トルエン(溶媒3)300質量部、「エポトートYDPN−638」(エポキシ樹脂1)292質量部、「YDF−170」(エポキシ樹脂3)292質量部、トリフェニルフォスフィン0.24質量部とした以外は、予備反応エポキシ樹脂1の場合と同じ操作を行った。モル比は1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)/「HCA」(リン化合物1)=0.93であった。これにより得られた予備反応エポキシ樹脂4のエポキシ当量は337.0g/eq、リン含有量は2.0質量%であった。
(予備反応エポキシ樹脂5)
「HCA」(リン化合物1)41質量部、1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)92質量部、トルエン(溶媒3)320質量部、「エポトートYDPN−638」(エポキシ樹脂1)467質量部、「YDF−170」(エポキシ樹脂3)300質量部、トリフェニルフォスフィン0.23質量部とした以外は、予備反応エポキシ樹脂1の場合と同じ操作を行った。モル比は1,4−ナフトキノン(キノン化合物1)/「HCA」(リン化合物1)=0.89であった。これにより得られた予備反応エポキシ樹脂5のエポキシ当量は320.1g/eq、リン含有量は2.0質量%であった。
そして、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物は、次のようにしてワニスとして調製した。すなわち、下記[表1]に示す配合量(質量部)で、予備反応エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を溶媒(ワニス固形分濃度が50〜70質量%となるように、溶剤1、2を約1:1で配合して得た混合溶媒)に投入し、特殊機化工業株式会社製「ホモミキサー」で約1000rpmにて約120分間混合し、さらに2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤1)を配合して(樹脂固形分100質量部に対して硬化促進剤1を0.03〜0.06質量部添加)、再度30分間攪拌し、その後、浅田鉄工株式会社製「ナノミル」にて、無機充填剤を分散させることによって、ワニスを得た。
その後、上記のようにして得られたワニスを用いて、以下のようにしてプリプレグ、銅張積層板、多層積層板を製造した。
<プリプレグの製造方法>
上記のようにして得られたワニスをガラスクロス(日東紡株式会社製「WEA116E」厚さ0.1mm)に含浸させ、これを乾燥機中で120〜190℃の範囲で5〜10分間程度乾燥させることによって、半硬化状態(B−ステージ)のプリプレグを製造した。なお、実施例8では、樹脂固形分100質量部に対して黒色剤1を10質量部添加して黒色化したものを用いた。
<銅張積層板の製造方法>
上記のようにして得られたプリプレグを用いて、次のようにして3種類の銅張積層板を製造した。すなわち、1枚のみのプリプレグ、2枚重ねのプリプレグ、8枚重ねのプリプレグのそれぞれの両面に銅箔を重ね、これらのものを140〜180℃、0.98〜3.9MPaの条件下で、加熱加圧して積層成形することによって、厚さ約0.1mm、約0.2mm、約0.8mmの銅張積層板を製造した。ここで、加熱時間は、プリプレグ全体が160℃以上となる時間が少なくとも90分間以上となるように設定した。また、この際、プレス内が133hPa以下の減圧状態となるようにした。このようにしておくと、プリプレグの吸着水を効率よく除去することができ、成形後に空隙(ボイド)が残存するのを防止することができるからである。なお、銅箔は古河サーキットフォイル株式会社製「GT」(厚さ0.018mm)を使用した。
<多層積層板の製造方法>
上記のようにして得られたプリプレグ及び厚さ約0.2mmの銅張積層板を用いて、次のようにして多層積層板を製造した。まず、銅張積層板に回路パターンを形成して内層用基板を製造した後、この回路パターンの銅箔(厚さ18μm)に内層処理を施した。次に、この内層用基板の両面に1枚のプリプレグを介して銅箔を重ね、銅張積層板の場合と同様の成形条件で積層成形することによって、多層積層板を製造した。
そして、上記のようにして得られた各成形品について、以下に示すような物性評価を行った。
<難燃性(FR性)、消炎平均秒数>
厚さ約0.2mm(0.2t)の銅張積層板の表面の銅箔をエッチングにより除去し、これを長さ125mm、幅13mmに切断し、UnderWritersLaboratoriessの「Test for Flammability of Plastic Materials−UL94」に従って燃焼挙動のテストを実施した。また、消炎性の差異をみるため、着火から消炎までの平均時間を計測した。
<ガラス転移温度(Tg)>
厚さ約0.8mmの銅張積層板の表面の銅箔をエッチングにより除去し、これを長さ30mm、幅5mmに切断し、JIS C6481に準じて、粘弾性スペクトロメータ装置でtanδを測定してそのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
<煮沸半田耐熱性>
多層積層板の表面の銅箔をエッチングにより除去し、これを50mm角に切断したものを5枚ずつ準備した。これらのものを100℃で、2時間、4時間、6時間煮沸した後、288℃の半田浴に20秒間浸漬し、その後、フクレ等の外観異常を観察した。なお、観察結果は、フクレのないものを「○」、小さなフクレが生じたものを「△」、大きなフクレが生じたものを「×」とした。
<熱時曲げ弾性率>
厚さ約0.8mmの銅張積層板の表面の銅箔をエッチングにより除去し、これを長さ100mm、幅25mmに切断し、JIS C6481に準じて、250℃の雰囲気下で熱時曲げ弾性率の測定を行った。
<UV遮蔽率>
厚さ約0.1mmの銅張積層板の表面の銅箔をエッチングにより除去し、これをサンプルとして用いた。まず初めに超高圧水銀ランプより発生したUV光についてUVセンサー(測定波長は420nm)にてUV量を測定(初期値)した。次に、上記のサンプルをその間に挟み、同様の方法にてUV量を測定(サンプル値)した。そして、下記式にてUV遮蔽率を求めた。
UV遮蔽率(%)=(サンプル値/初期値)×100
<耐熱性>
厚さ約0.2mmの銅張積層板を50mm角に切断したものを準備して、JIS C6481に準じて耐熱性の測定を行った。
以上の物性評価の結果を下記[表1]にまとめて示す。
Figure 2007059838
比較例1,2のものは、予備反応エポキシ樹脂が60質量%を超え、無機充填剤の配合量が少ない系であるため、実施例1〜8のものに比べて、熱時剛性(熱時曲げ弾性率)が低いことが確認される。
また、比較例3のものは、予備反応エポキシ樹脂が60質量%未満であり、無機充填剤(水酸化アルミニウム)の量を増加させた系であるが、熱時剛性(熱時曲げ弾性率)は増加するものの、煮沸半田耐熱性が低下することが確認される。
一方、実施例1〜8のものは、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して20質量部以上180質量部未満配合した系であるので、熱時剛性と煮沸半田耐熱性がいずれも優れており、両立していることが確認される。
また、比較例4のものは、比較例2のものよりも無機充填剤の量を増加させた系であるが、予備反応エポキシ樹脂が60質量%以上であるため、エポキシ樹脂全体の粘度が高くなり、積層板等の基板の剛性が得られる量(樹脂固形分100質量部に対して100質量部以上)の無機充填剤を添加すると、ボイドが残ってしまい、銅張積層板を製造することができなかった。
また、実施例1,5,7のものは、硬化剤として(式3)で表される多官能フェノール系化合物を用いた系であり、他の実施例に比べて、UV遮蔽性が向上していることが確認される。さらに、フェノールノボラック型多官能フェノールを硬化剤として用いた実施例4のものに比べて、耐熱性が優れていることが確認される。
また、実施例2,6,8のものは、硬化剤として(式4)で表される多官能フェノール系化合物を用いた系であり、フェノールノボラック型多官能フェノールを硬化剤として用いた実施例4のものに比べて、耐熱性が優れていることが確認される。さらに、実施例8のものは、黒色剤を用いた系であり、他の実施例に比べて、UV遮蔽性が向上していることが確認される。
また、実施例1,2,4〜8のものは、多官能エポキシ樹脂としてメチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂を用いた系であり、フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂を用いた実施例3のものに比べて、ガラス転移温度(Tg)が向上していることが確認される。
また、実施例8のものは、無機充填剤として水酸化アルミニウムを併用した系であり、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムのいずれも用いていない実施例6のものに比べて、難燃性が高いことが確認される。

Claims (11)

  1. ノボラック型エポキシ樹脂を20質量%以上含有するエポキシ樹脂類と、キノン化合物とリン原子に結合した1個の活性水素を有するリン化合物とを上記キノン化合物の上記リン化合物に対するモル比を0より大きく1未満の化学量論量未満にて反応させて得られる活性水素を有する有機リン化合物を反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂(予備反応エポキシ樹脂)、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂、硬化剤、熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を必須成分として含有するプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、上記予備反応エポキシ樹脂をエポキシ樹脂全体に対して20質量%以上60質量%未満となるように配合し、上記熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して20質量部以上180質量部未満となるように配合し、全無機充填剤を樹脂固形分100質量部に対して110質量部以上200質量部未満となるように配合すると共に、上記硬化剤として多官能フェノール系化合物を用いて成ることを特徴とするプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  2. 熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤以外の無機充填剤として、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムのうちの一方又は両方を用いて成ることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  3. 熱分解温度(5%質量減)が400℃以上の無機充填剤として、平均粒子径0.05μm以上5μm以下の球状シリカを用いて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  4. 無機充填剤として、カップリング剤で表面処理されたものを用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  5. リン化合物として、下記(式1)と(式2)で表されるリン化合物のうちの一方又は両方を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007059838
  6. リン元素成分の含有量がエポキシ樹脂全体に対して0.5質量%以上3.5質量%未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  7. 多官能エポキシ樹脂として、メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  8. 多官能フェノール系化合物として、下記(式3)と(式4)で表される多官能フェノール系化合物のうちの一方又は両方を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007059838
  9. 黒色顔料と黒色染料のうちのいずれか一方又は両方を添加して黒色化して成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、乾燥半硬化して製造して成ることを特徴とするプリプレグ。
  11. 回路パターンを形成した内層用基板に請求項10に記載のプリプレグを積層成形して成ることを特徴とする多層プリント配線板。
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