JP2007008421A - 車両制御装置および車両制振方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 車両を良好に制振すると共に、ドライバーの要求とは別の条件に応じて目標制御量が設定される際の車両の安全性を容易かつ良好に確保する。
【解決手段】駆動制御ECU10は、ドライバーの要求に応じて第1の目標駆動力を設定する目標駆動力取得部112と、第1の目標制御量を車両1のバネ上振動が抑制されるように補正可能なフィルタ114とを有し、ECBECU20は、ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標駆動力を設定する要求駆動力算出部21と、第1の目標制御量と第2の目標制御量とを調停するためのVDIM調停器22とを有し、駆動制御ECU10には、要求駆動力算出部21により第2の目標制御量が算出された場合に、フィルタ114を介することなく第1の目標制御量をVDIM調停器22に直接入力させる第2切換器SW2が設けられている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、車両の走行に関連する所定の目標制御量を設定し、この目標制御量に基づいて少なくとも車両を制御する車両制御装置および車両のバネ上振動を低減させるための車両制振方法に関する。
従来から、車両を制振するための装置として、ドライバーによるアクセル操作、ステアリング操作およびブレーキ操作の少なくとも一つに対応する物理量を入力指令として、当該入力指令に対応するエンジンおよびブレーキの少なくとも何れかを制御する車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両制御装置は、車両を制振するために、ドライバーによる入力指令に起因して発生する振動、すなわち、タイヤが受ける路面反力による上下あるいは/および捻りの振動、サスペンションにおける車体バネ下の振動、および車体自体が受ける車体バネ上の振動の少なくとも1つに関する運動モデルを用いてドライバーによる入力指令を補正する。
特開2004−168148号公報
ところで、近年では、車両走行時の安全性を向上させる観点から、車両の挙動を安定化させたり、車両の衝突等を回避したりするために、走行状態や走行環境等を把握してドライバーの意図とは無関係に目標制御量を設定し、この目標制御量とドライバーの要求に応じた目標制御量とを調停しながら車両を制御する車両制御装置の普及が進みつつある。このような車両制御装置を備えた車両においても、上述のような制振補正処理が実行されると好ましいが、当該制振補正処理が実行されると車両の動特性が変化することから、ドライバーの要求とは別の条件に従って設定された目標制御量を制振補正したり、制振補正された目標制御量と別に設定された目標制御量とを調停したりすると、却って車両の振動を助長させて、車両の挙動を不安定にしてしまうおそれもある。その一方で、車両制御装置に制振補正のための手段を組み込むに際して、制振補正手段に合わせて車両制御装置を設計することは、開発負担やコスト面からみて望ましいものとはいえない。
そこで、本発明は、車両を良好に制振可能であると共に、ドライバーの要求とは別の条件に応じて目標制御量が設定される際の車両の安全性を容易かつ良好に確保可能とする車両制御装置および車両制振方法の提供を目的とする。
本発明による車両制御装置は、車両の走行に関連する目標制御量を設定し、この目標制御量に基づいて車両を制御する車両制御装置において、ドライバーの要求に応じて第1の目標制御量を設定する第1目標制御量設定手段と、第1目標制御量設定手段により設定された第1の目標制御量を車両のバネ上振動が抑制されるように補正可能な補正手段と、ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定する第2目標制御量設定手段と、第1の目標制御量と第2の目標制御量とを調停するための調停手段とを備え、第2目標制御量設定手段によって第2の目標制御量が設定された場合に、補正手段による第1の目標制御量の補正が禁止され、かつ、調停手段は、補正手段による補正がなされていない第1の目標制御量と第2の目標制御量とを調停することを特徴とする。
この車両制御装置は、ドライバーの要求に応じて第1の目標制御量を設定する第1目標制御量設定手段と、ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定する第2目標制御量設定手段と、調停手段とを備え、調停手段により第1目標制御量と第2目標制御量との調停を図りつつ車両を制御するものである。また、この車両制御装置は、第1目標制御量設定手段により設定された第1の目標制御量を車両のバネ上振動が抑制されるように補正可能な補正手段を備えている。これにより、ドライバーの要求に応じた第1の目標制御量が補正手段によって補正されれば、車両は良好に制振されることになる。更に、この車両制御装置においては、ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量が設定された場合、補正手段による第1の目標制御量の補正処理が禁止され、調停手段により、補正されていない第1の目標制御量と第2目標制御量設定手段からの第2の目標制御量との調停が図られる。
このように、第1および第2の目標制御量の調停が実行される際に補正手段による制振補正処理を禁止することにより、制振補正処理や第1および第2の目標制御量の調停により車両の振動を助長させて車両の挙動を不安定にしてしまうことが抑制される。また、車両制御装置に補正手段を組み込むに際して、補正手段に合わせて第2目標制御量設定手段等を設計する必要も無くなる。この結果、この車両制御装置によれば、車両を良好に制振すると共に、ドライバーの要求とは別の条件に応じて目標制御量が設定された際の車両の安全性を容易かつ良好に確保することが可能となる。
また、本発明による車両制御装置は、第1目標制御量設定手段により設定された第1の目標制御量の出力先を補正手段と調停手段とで選択的に切り換える切換手段を更に備え、この切換手段は、第2目標制御量設定手段によって第2の目標制御量が設定された場合に、補正手段を介することなく第1の目標制御量を調停手段に直接入力させると好ましい。
更に、第2目標制御量設定手段による第2の目標制御量の設定が解除された際に、補正手段には、第2の目標制御量の設定が解除されたときの調停手段の最終出力値が入力されると好ましい。
上述のように、第2の目標制御量が設定された場合に切換手段によって第1の目標制御量の補正手段に対する入力が断たれると、第2の目標制御量の設定が解除されて補正手段に第1の目標制御量が再度入力されるようになった時点の前後で、車両制御装置から出力される最終的な目標駆動力が不連続となって車両の振動を助長させてしまうおそれがある。これに対して、第2目標制御量設定手段による第2の目標制御量の設定が解除された際に、補正手段に第2の目標制御量の設定が解除されたときの調停手段の最終出力値が入力されるようにすれば、第2目標制御量設定手段による第2の目標制御量の設定が解除された際の車両制御装置における最終的な目標駆動力の連続性を保って、車両の挙動を安定化させることが可能となる。
また、調停手段は、概ね同時に入力する第1の目標制御量と第2の目標制御量とのうちの小さい方を出力値とするとよく、概ね同時に入力する第1の目標制御量と第2の目標制御量とのうちの大きい方を出力値としてもよい。これらの態様によれば、車両の走行状態や走行環境状態等に応じて、ドライバーの要求に応じた第1の目標制御量と、ドライバーの要求とは別の条件に応じた第2の目標制御量とを適切に調停することが可能となる。
更に、第2目標制御量設定手段は、車両の走行状態および走行環境の少なくとも何れかに基づいて車両の挙動が安定化されるように第2の目標制御量を設定すると好ましい。
この態様のもとでは、ドライバーの要求に応じた第1の目標制御量と、ドライバーの意図に拘わらず車両の挙動を安定化させるべく第2目標制御量設定手段によって設定される第2の目標制御量とが調停されることになるので、車両走行時の安全性を良好に向上させることが可能となる。
本発明による車両制振方法は、ドライバーの要求に応じて車両の走行に関連する所定の目標制御量を設定すると共に、補正手段を用いて目標制御量を車両のバネ上振動が抑制されるように補正して車両を制振する車両制振方法であって、
(a)ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定するステップと、
(b)ステップ(a)で第2の目標制御量が設定された場合に、補正手段による目標制御量の補正を禁止するステップと、
(c)補正手段による補正がなされていない目標制御量と第2の目標制御量とを調停するステップとを含むものである。
また、この車両制振方法は、(d)第2の目標制御量の設定が解除された場合に、第2の目標制御量の設定が解除されたときのステップ(c)での最終調停結果を補正手段に入力させるステップを更に含むと好ましい。
本発明による他の車両制御装置は、車両の走行に関連する目標制御量を設定し、この目標制御量に基づいて車両を制御する車両制御装置において、ドライバーの要求に応じて第1の目標制御量を設定する第1目標制御量設定手段と、ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定する第2目標制御量設定手段と、第1目標制御量設定手段により設定された第1の目標制御量または第2目標制御量により設定された第2の目標制御量を車両のバネ上振動が抑制されるように補正可能な補正手段とを備え、第2目標制御量設定手段によって第2の目標制御量が設定された場合に、所定条件下で、第1の目標制御量が無効にされると共に補正手段による第2の目標制御量の補正が禁止されることを特徴とする。
この車両制御装置は、第1目標制御量設定手段により設定された第1の目標制御量または第2目標制御量により設定された第2の目標制御量を車両のバネ上振動が抑制されるように補正可能な補正手段を備えている。従って、ドライバーの要求に応じた第1の目標制御量またはドライバーの要求とは別の条件に応じた第2の目標制御量が補正手段によって補正されれば、車両は良好に制振されることになる。また、この車両制御装置は、第2目標制御量設定手段によって第2の目標制御量が設定された場合に、所定条件、例えば第2の目標制御量を第1の目標制御量に優先すべき条件が成立すると、第1の目標制御量を無効にすると共に補正手段による第2の目標制御量の補正を禁止する。
このように、所定条件下でドライバーの要求に応じた第1の目標制御量を無効にすると共にドライバーの要求とは別の条件に応じた第2の目標制御量を有効にし、かつ、補正手段による第2の目標制御量の制振補正処理を禁止することにより、当該制振補正処理により車両の振動を助長させて車両の挙動を不安定にしてしまうことが抑制される。また、車両制御装置に補正手段を組み込むに際して、補正手段に合わせて第2目標制御量設定手段等を設計する必要も無くなる。この結果、この車両制御装置によれば、車両を良好に制振すると共に、ドライバーの要求とは別の条件に応じて目標制御量が設定された際の車両の安全性を容易かつ良好に確保することが可能となる。
また、この車両制御装置は、第1目標制御量設定手段により設定された第1の目標制御量と第2目標制御量設定手段により設定された第2の目標制御量とのうちの何れかを選択的に有効にする第1の切換手段と、第1の切換手段からの第1の目標制御量または第2の目標制御量の補正手段に対する入力を選択的に許容する第2の切換手段とを更に備えると好ましい。
更に、第2目標制御量設定手段による第2の目標制御量の設定が解除された際に、補正手段には、第2の目標制御量の設定が解除されたときの第2目標制御量設定手段の最終設定値が入力されると好ましい。
上述のように、第1の目標制御量が無効にされた場合、補正手段に第1の目標制御量が再度入力されるようになった時点の前後で、車両制御装置から出力される最終的な目標駆動力が不連続となって車両の振動を助長させてしまうおそれがある。これに対して、第2目標制御量設定手段による第2の目標制御量の設定が解除された際に、補正手段に第2の目標制御量の設定が解除されたときの第2目標制御量設定手段の最終設定値が入力されるようにすれば、第2目標制御量設定手段による第2の目標制御量の設定が解除された際の車両制御装置における最終的な目標駆動力の連続性を保って、車両の挙動を安定化させることが可能となる。
また、第2目標制御量設定手段は、ドライバーの要求、車両の走行状態および走行環境の少なくとも何れかに基づいて車両の運転が支援または代行されるように第2の目標制御量を設定すると好ましい。
これにより、ドライバーによる車両の運転が車両制御装置によって適宜支援または代行されることになるので、車両走行時の安全性を良好に向上させることが可能となる。
本発明による他の車両制振方法は、ドライバーの要求に応じて車両の走行に関連する所定の目標制御量を設定すると共に、補正手段を用いて目標制御量を車両のバネ上振動が抑制されるように補正して車両を制振する車両制振方法であって、
(a)ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定するステップと、
(b)ステップ(a)で第2の目標制御量が設定された場合に、所定条件下で、目標制御量を無効にすると共に補正手段による第2の目標制御量の補正を禁止するステップとを含むものである。
また、この車両制振方法は、(c)第2の目標制御量の設定が解除された場合に、第2の目標制御量の設定が解除されたときのステップ(a)での最終設定値を補正手段に入力させるステップを更に含むと好ましい。
本発明によれば、車両を良好に制振すると共にドライバーの要求とは別の条件に応じて目標制御量が設定される際の車両の安全性を容易かつ良好に確保することが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明による車両制御装置が適用された車両を示すブロック構成図である。同図に示される車両1は、走行駆動源として、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン等の図示されない内燃機関を含むものである。この内燃機関は、燃料噴射装置2、点火装置3、電子制御式スロットルバルブ4(以下、単に「スロットルバルブ4」という)等の機器を含む。また、車両1には、内燃機関が発生した動力を駆動輪に伝達する自動変速機または無段変速機といった変速機5が備えられている。更に、車両1には、ブレーキペダルの操作量に応じて電子制御されるブレーキアクチュエータ6等を含む電子制御式ブレーキシステムや、操舵ハンドルの操作量に応じて電子制御される可変ギヤ機構や電動アシストユニットといった操舵用アクチュエータ7等を含む操舵装置、更には、電子制御されて減衰力を変化させる複数のショックアブソーバ8等を含む電子制御式サスペンションが備えられている。
車両1の内燃機関および変速機5は、駆動制御用電子制御ユニット(以下、「駆動制御ECU」といい、電子制御ユニットはすべて「ECU」と称される。)10により制御される。本実施形態の駆動制御ECU10は、例えばマルチプロセッサユニットとして構成されており、各種演算処理を実行する複数のCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース、記憶装置等(何れも図示省略)を備えるものである。そして、駆動制御ECU10には、アクセルセンサ11、ブレーキセンサ12、および舵角センサ14が接続されている。
アクセルセンサ11は、ドライバーによるアクセルペダルの操作量を検知し、検知した値を示す信号を駆動制御ECU10に与える。また、ブレーキセンサ12は、ドライバーによるブレーキペダルの操作量を検知し、検知した値を示す信号を駆動制御ECU10に与える。更に、舵角センサ14は、ドライバーによる操作ハンドルの操舵量たる操舵角を検知し、検知した値を示す信号を駆動制御ECU10に与える。駆動制御ECU10は、各センサ11〜14からの信号に示されるドライバーの要求や図示されない他のセンサの検出値に応じて、ドライバーの要求が満たされるように上述の燃料噴射装置2、点火装置3、スロットルバルブ4および変速機5を制御する。
加えて、駆動制御ECU10には、走行特性(走行モード)決定手段としてのモードスイッチ15が接続されている。モードスイッチ15は、上述の電子制御式サスペンションシステムに含まれる複数のショックアブソーバ8の減衰力を切り換える際に用いられ、モードスイッチ15を操作することにより、車両1の走行特性すなわち走行モードを変化させることができる。本実施形態において、モードスイッチ15がドライバーによりOFFされた状態では、各ショックアブソーバ8の減衰力が標準に設定され、これにより、車両1の走行特性がノーマルモードに設定される。また、モードスイッチ15がONされると共に「モード1」に設定されると、各ショックアブソーバ8の減衰力が標準よりも硬めに設定され、これにより、車両1の走行特性がパワーモードに設定される。パワーモードのもとでは、車両1の制振よりも加速性能が優先される。更に、モードスイッチ15がONされると共に「モード2」に設定されると、各ショックアブソーバ8の減衰力が標準よりも柔らかめに設定され、これにより、車両1の走行特性がコンフォートモードに設定される。コンフォートモードのもとでは、車両1の加速性能よりも制振が優先される。
そして、駆動制御ECU10は、車内LANを介してあるいは無線通信により、ECBECU20、操舵ECU30、サスペンションECU40およびDSSECU50と接続されている。ECBECU20は、上述の電子制御式ブレーキシステムを制御するものであり、ブレーキセンサ12を始めとする各種センサの検出値に基づいてブレーキアクチュエータ6等を制御する。また、本実施形態のECBECU20は、駆動制御ECU10、操舵ECU30およびサスペンションECU40と協調しながら、車両1の挙動が安定するように車両1の駆動、操舵および制動の統合制御(VDIM:Vehicle Dynamics Integrated Management)を実行可能に構成されている。
操舵ECU30は、車両1の操舵装置を制御するものであり、舵角センサ14を始めとする各種センサの検出値に基づいて操舵用アクチュエータ7等を制御する。サスペンションECU40は、上述の電子制御式サスペンションを制御するものであり、ドライバーによるモードスイッチ15の操作に応じて各ショックアブソーバ8の減衰力を切換制御する。また、DSSECU50は、ドライバーに対する運転支援・代行を統括的に制御するものであり、クルーズコントローラ、ブレーキアシストユニット、および衝突予防システム(プリクラッシュセイフティ・システム)として機能するものである。なお、上述の駆動制御ECU10、ECBECU20、操舵ECU30、サスペンションECU40およびDSSECU50には、例えばスロットル開度センサ、車速センサ、前後加速度センサ、ヨーレートセンサ、レーダユニット、例えば車間距離を検出するためのモニタシステム、更には、ナビゲーションシステム、道路交通情報通信システム(VICS)、車間距離を取得する撮像ユニットまたは車間センサ等の車両1の走行環境を取得するための手段(環境情報取得手段)といった各種センサ等から制御に必要な情報が与えられることはいうまでもない。
図2は、車両1における内燃機関および変速機の制御手順を説明するための制御ブロック図である。同図からわかるように、車両1の内燃機関および変速機は、ECBECU20およびDSSECU50の少なくとも何れかと適宜協調することにより主として駆動制御ECU10により制御される。このため、駆動制御ECU10は、図2に示されるように、目標加速度取得部111、目標駆動力取得部112、第1切換器SW1、第2切換器SW2、フィルタ114、最終調停器115および制御量設定部116を有している。
目標加速度取得部111は、ドライバーによるアクセル操作量と車両1の目標加速度との関係を規定するマップ等を用いてアクセルセンサ11からの信号に示されるアクセル操作量に応じた車両1の目標加速度を取得し、取得した値を示す信号を目標駆動力取得部112に与える。目標駆動力取得部112は、車両1の目標加速度と内燃機関の目標駆動力との関係を規定するマップ等を用いて目標加速度取得部111により取得された目標加速度すなわちアクセル操作量に応じた内燃機関の目標駆動力を取得する。そして、目標駆動力取得部112の出力端子は、第1切換器SW1の一方の入力端子(ドライバー要求側)に接続されている。
第1切換器SW1は、図2に示されるように、2つの入力端子を有しており、その一方(ドライバー要求側)には、上述のように目標駆動力取得部112の出力端子が接続され、他方の入力端子(DSS側)は、DSSECU50と接続されている。第1切換器SW1は、DSSECU50等からの指令に応じて、目標駆動力取得部112からの信号とDSSECU50からの信号との何れか一方をその出力値とする。すなわち、第1切換器SW1は、目標駆動力取得部112からの信号とDSSECU50からの信号との何れか一方を有効な信号として出力する。そして、第1切換器SW1の出力端子は、第2切換器SW2の入力端子に接続されている。なお、第1切換器SW1は、基本的にドライバー要求側に設定されており、これにより、通常時は目標駆動力取得部112の出力信号が第2切換器SW2に入力される。
第2切換器SW2は、図2に示されるように、出力端子としてフィルタ側端子とバイパス側端子とを有している。これら2つの出力端子のうち、フィルタ側端子にはフィルタ114の入力端子が接続される。また、バイパス側端子は、フィルタ114をバイパスするように、ECBECU20および最終調停器115と接続されている。第2切換器SW2は、ECBECU20からの指令等に応じて、第1切換器SW1からの信号の出力先をフィルタ側とバイパス側とで選択的に切り換える。また、フィルタ114の出力端子は、最終調停器115とECBECU20とに接続されている。
これにより、第2切換器SW2がフィルタ側に切り換えられた場合、フィルタ114を通過した信号が最終調停器115とECBECU20とに与えられる。一方、第2切換器SW2がバイパス側に切り換えられた場合、第1切換器SW1からの信号がフィルタ114を介することなく最終調停器115とECBECU20とに与えられる。なお、第1切換器SW1は、基本的にフィルタ側に設定されており、これにより、通常時は第1切換器SW1の出力信号がフィルタ114に入力される。
フィルタ114は、目標駆動力を車両1のバネ上振動が抑制されるように補正するものである。本実施形態では、フィルタ114として2次のノッチフィルタが用いられる。また、最終調停器115は、フィルタ114あるいは第2切換器SW2からの入力信号と、ECBECU20からの入力信号とを調停し、最終的な目標駆動力を設定する。本実施形態において、最終調停器115は、車両1の走行状態や走行環境状態等に応じて、入力信号の何れかを優先して出力させる優先処理か、概ね同時に入力する信号の最大値または最小値を出力値とするいわゆるミニマムセレクト処理またはマックスセレクト処理を実行する。
更に、制御量設定部116は、最終調停器115の出力値に基づいて内燃機関の燃料噴射装置2、点火装置3、スロットルバルブ4および変速機5の制御量を定める。そして、駆動制御ECU10は、制御量設定部116により定められた制御量に基づいて燃料噴射装置2、点火装置3、スロットルバルブ4および変速機5に対する制御信号を生成し、各機器に与える。これにより、車両1の内燃機関および変速機5は、ドライバーやECBECU20およびDSSECU50の要求に応じるように制御されることになる。
ここで、本実施形態の駆動制御ECU10に対して上述のような2次のノッチフィルタからなるフィルタ114が設けられているのは次のような理由による。すなわち、例えば車両1が後輪駆動車両である場合、車両の目標駆動力を入力とし、車両のリヤサスペンションストロークを出力とする伝達関数は、一般に、次の(1)式に示される2次/4次伝達関数として表わすことができる。
Figure 2007008421
かかる2次/4次伝達関数には、2つの2次伝達関数G(s)およびG(s)が含まれるが、(1)式を同定すると、左項の2次伝達関数G(s)の減衰比ζの値が振動的なものとなるのに対して右項の2次伝達関数G(s)の減衰比ζの値は非振動的なものとなる。このため、(1)式の右項の2次伝達関数G(s)は振動を誘発するものとならないが、左項の2次伝達関数G(s)は振動を誘発するものとなる。従って、(1)式の2次/4次伝達関数に含まれる振動を誘発する2次伝達関数G(s)の極をキャンセルする2次のノッチフィルタとして構成されたフィルタ114を用いて目標制御量としての目標駆動力Ptを補正することにより、車両1を制振することが可能となる。
(1)式の2次伝達関数G(s)の極をキャンセルする2次のノッチフィルタは、2次/2次伝達関数の形をとり、規範周波数をωmとし、規範減衰比をζmとし、プラントたる車両1の駆動系統のプラント周波数をωpとし、プラント減衰比をζpとすれば、次の(2)式のように表される。このため、駆動制御ECU10には、(2)式の補正式に基づいて目標駆動力を補正するように構成されたフィルタ114が設けられる。
Figure 2007008421
この場合、(2)式の規範周波数ωm、規範減衰比ζm、プラント周波数ωp、プラント減衰比ζpといったパラメータは、車両1の走行特性すなわち走行モード、車両1の走行環境や走行状態等が変化すれば、その変化に応じて異なる値となるものである。従って、フィルタ114の減衰特性を定めるための周波数および減衰比である規範周波数ωm、規範減衰比ζm、プラント周波数ωp、プラント減衰比ζpといったパラメータは、ドライバーにより設定される車両1の走行モードや、車両1の走行状態、走行環境に応じて変化させられるとよい。これにより、車両1を常時良好に制振することが可能となる。
また、1体のフィルタ114において規範周波数ωm、規範減衰比ζm、プラント周波数ωp、プラント減衰比ζpといったパラメータを変化させる代わりに、それぞれ異なる減衰特性をもった複数の2次のノッチフィルタからなるフィルタ群を採用してもよい。この場合、フィルタ群を構成する複数のフィルタ間で、規範周波数ωm、規範減衰比ζm、プラント周波数ωpおよびプラント減衰比ζpの値を異ならせておき、車両1の走行中に、ドライバーにより設定された走行モードや、各種センサやナビゲーションシステム等から得られる車両の走行状態や走行環境に応じて、フィルタ群の中から最適なフィルタが選択されるようにすると好ましい。このように、それぞれ異なる減衰特性を有する複数のフィルタを適宜切り換えていけば、例えば1体のフィルタのパラメータを走行モード等に応じて変更していく場合に比較して良好な応答性を確保することが可能となる。
一方、車両1の制御に際して上述の駆動制御ECU10と協調するDSSECU50は、図2に示されるように、ACCモジュール51、BAモジュール52、PCSモジュール53およびDSS調停器55を含む。ACCモジュール51は、ドライバーの要求に応じて車両1の運転を支援・代行するいわゆるクルーズコントローラとして機能するものである。ACCモジュール51は、ドライバーによりクルーズコントロールの実行要求がなされた場合、各種センサや環境情報取得手段等からの信号に基づいてクルーズコントロールに必要な駆動力を求め、求めた駆動力(要求駆動力)を示す信号をDSS調停器55に与える。
また、BAモジュール52は、いわゆるブレーキアシストユニットとして機能するものである。BAモジュール52は、ブレーキアシストが必要であると判断された場合に、各種センサや環境情報取得手段等からの信号に基づいてブレーキアシスト時に要求される駆動力を求め、求めた駆動力(要求駆動力)を示す信号をDSS調停器55に与える。更に、PCSモジュール53は、衝突予防システム(プリクラッシュセイフティ・システム)として機能するものである。PCSモジュール53は、車両1の衝突を回避する必要があると判断された場合に、各種センサや環境情報取得手段等からの信号に基づいて衝突回避に要求される駆動力を求め、求めた駆動力(要求駆動力)を示す信号をDSS調停器55に与える。
DSS調停器55は、ACCモジュール51、BAモジュール52およびPCSモジュール53からの信号を調停することにより、DSSECU50からの目標駆動力を設定する。このように、DSS調停器55は、ドライバーの要求、車両1の走行状態および走行環境の少なくとも何れかに基づいて車両1の運転が支援または代行されるように目標駆動力(第2の目標制御量)を設定する手段(第2目標制御量設定手段)として機能する。これにより、車両1の運転が適宜支援または代行されることになるので、車両走行時の安全性を良好に向上させることが可能となる。なお、DSS調停器55における調停処理には、各モジュール51〜53からの信号の何れかを優先して出力させる優先処理や、各モジュール51〜53から概ね同時に入力する信号の最大値または最小値を出力値とするいわゆるミニマムセレクト処理およびマックスセレクト処理等が含まれる。
更に、DSSECU50は、図2に示されるように、DSS調停器55の出力値を保持するメモリ54を含み、このメモリ54は、スイッチ56を介してフィルタ114の入力端子に接続されている。これにより、スイッチ56がONされると、メモリ54に保持されたDSS調停器55の出力値がフィルタ114に与えられることになる。
一方、車両1の制御に際して上述の駆動制御ECU10と協調するECBECU20は、上述のように、車両1の挙動を安定化させるための制御をも実行するものであり、要求駆動力算出部21と、VDIM調停器22とを含む。要求駆動力算出部21は、車両1の挙動が不安定になったと判断された場合に、各種センサや環境情報取得手段等からの信号に基づいて、車両1の挙動を安定化させるのに要求される駆動力を求め、求めた駆動力(目標駆動力)を示す信号をVDIM調停器22に与える。このように、要求駆動力算出部21は、車両1の走行状態および走行環境の少なくとも何れかに基づいて車両1の挙動が安定化されるように目標駆動力(第2の目標制御量)を設定する手段(第2目標制御量設定手段)として機能する。
VDIM調停器22は、車両1の走行状態や走行環境状態等に応じて、基本的に、上記フィルタ114あるいは第2切換器SW2からの目標駆動力と要求駆動力算出部21からの要求駆動力とのうちの大きい方(最大値:マックスセレクト)あるいは小さい方(最小値:ミニマムセレクト)をその出力値である目標駆動力として設定する。これにより、ドライバーの要求に応じた目標駆動力やDSSECU50による目標駆動力と、ドライバーの意図に拘わらず車両の挙動を安定化させるべく要求駆動力算出部21によって設定される目標駆動力とが車両1の走行状態や走行環境状態等に応じて適切に調停されることになるので、車両走行時の安全性を良好に向上させることが可能となる。なお、VDIM調停器22の調停処理には、入力信号の何れかを優先して出力させる優先処理も含まれる。
また、ECBECU20は、図2に示されるように、VDIM調停器22の出力値を保持するメモリ23を含み、このメモリ23は、スイッチ24を介してフィルタ114の入力端子に接続されている。これにより、スイッチ24がONされると、メモリ23に保持されたVDIM調停器22の出力値がフィルタ114に与えられることになる。
上述のように構成される車両1では、駆動制御ECU10の第1切換器SW1および第2切換器SW2が車両1の走行状態や走行環境等に応じて適宜切り換えられ、それにより、ドライバーの要求に応じて設定される目標駆動力(第1の目標駆動力)と、ECBECU20やDSSECU50により設定される目標駆動力(第2の目標駆動力)との適切な調停が図られる。以下、図3から図9を参照しながら、第1切換器SW1および第2切換器SW2の切換手順について説明する。
図3は、DSSECU50により目標駆動力が設定された場合における第1切換器SW1および第2切換器SW2の切換手順を説明するためのフローチャートである。図3に示されるルーチンは、車両1の走行中に所定時間おきに繰り返し実行されるものである。本ルーチンの実行タイミングになると、駆動制御ECU10は、DSSECU50において車両1の衝突予防処理が必要であると判断された際にONされるPCSフラグがONされているか否かを判定する(S10)。
PCSフラグがONされていると判断されると(S10におけるYes)、駆動制御ECU10において第1切換器SW1がDSS側(図2における破線側)に切り換えられると共に、第2切換器SW2がバイパス側(図2における破線側)に切り換えられる(S12)。これにより、第1切換器SW1を介してDSSECU50のDSS調停器55と第2切換器SW2とが接続されることになるので、目標駆動力取得部112から出力されるドライバーの要求に応じた目標駆動力が無効にされると共に、DSSECU50からの目標駆動力(この場合、PCSモジュールにより衝突を回避すべく設定された目標駆動力)が第2切換器SW2に与えられる。また、第2切換器SW2がバイパス側に切り換えられることにより、フィルタ114がバイパスされ、DSSECU50からの目標駆動力は、フィルタ114を介することなく、ECBECU20のVDIM調停器22および最終調停器115に与えられる。
なお、本実施形態では、DSSECU50により衝突予防要求がなされると共に、ECBECU20により挙動安定化要求がなされた場合には、VDIM調停器22において、DSSECU50からの衝突予防要求が優先される。従って、VDIM調停器22および最終調停器115からは、DSSECU50により設定された目標駆動力が出力され、最終調停器115によって設定される最終的な目標駆動力は、DSSECU50により設定された目標駆動力となる。
このように、車両1では、DSSECU50による衝突予防要求がなされ、DSSECU50により設定された目標駆動力をドライバーの要求に応じた目標駆動力に優先すべき条件が成立すると、ドライバーの要求に応じた目標駆動力が無効にされると共にドライバーの要求とは別の条件に応じたDSSECU50による目標駆動力が有効にされ、かつ、フィルタ114によるDSSECU50からの目標駆動力の制振補正処理が禁止される。これにより、フィルタ114の制振補正処理により車両1の振動を助長させて車両1の挙動を不安定にしてしまうことが抑制されると共に、駆動制御ECU10にフィルタ114を組み込むに際して、フィルタ114に合わせてDSSECU50のDSS調停器55等を設計する必要が無くなる。この結果、車両1を良好に制振すると共に、ドライバーの要求とは別の条件に応じて目標駆動力が設定された際の車両1の安全性を容易かつ良好に確保することが可能となる。
S12の処理が実行されると、駆動制御ECU10において、上述のPCSフラグがONされているか否かが判定される(S14)。PCSフラグがONされていると判断された場合(S14におけるYes)、上述のS12以降の処理が繰り返し実行され、第1切換器SW1がDSS側に保持されると共に、第2切換器SW2がバイパス側に保持されることになる。そして、S12およびS14の処理が繰り返し実行される間に、車両1の衝突が回避されたことによりPCSフラグがOFFされたと判断すると(S14におけるNo)、DSSECU50においてスイッチ56がONされ、PCSフラグのOFF時、すなわちDSSECU50による目標駆動力の設定が解除されたときのDSS調停器55の最終出力値がフィルタ114に入力される(S16)。
ここで、目標駆動力取得部112から出力されるドライバーの要求に応じた目標駆動力が図4(a)に示されるようなものであり、DSSECU50から出力される目標駆動力が図4(b)に示されるようなものであり、かつ、時刻tにてPCSフラグがOFFされたとすると、時刻tまでは図4(b)に示されるDSSECU50からの目標駆動力が有効にされる。この場合、PCSフラグがOFFされた時刻tに直ちに第1切換器SW1および第2切換器SW2を切り換えて目標駆動力取得部112からの出力信号がフィルタ114に入力されるようにすると、時刻tまでフィルタ114に対する信号の入力が断たれていた関係上、フィルタ114に目標駆動力取得部112からの目標駆動力が再度入力されるようになった時点(時刻t)の前後で、最終調停器115から出力される最終的な目標駆動力が不連続となってしまうおそれがある。
これに対して、PCSフラグがOFFされたと判断された時点(時刻t)で、図4(c)に示されるようにPCSフラグのOFF時すなわちDSSECU50による目標駆動力の設定が解除されたときのDSS調停器55の最終出力値がその時点(時刻t)における初期値としてフィルタ114に入力されるようにすれば、図4(d)に示されるように、最終調停器115から出力される目標駆動力の連続性を保つことが可能となる。これにより、上述のようにしてフィルタ114による制振補正処理が禁止されても、それに伴って車両1の挙動が不安定になってしまうことを良好に抑制することが可能となる。
S16の処理が実行されると、駆動制御ECU10において、第1切換器SW1がドライバー要求側(図2における実線側)に切り換えられると共に、第2切換器SW2がフィルタ側(図2における実線側)に切り換えられる(S18)。これにより、ドライバーの要求に応じた目標駆動力に対してフィルタ114による制振補正処理が施されることになるので、車両1を良好に制振することが可能となる。そして、S18の処理が実行されると、再度S10以降の処理が繰り返し実行されることになる。なお、S10にてPCSフラグがOFFされていると判断された場合(S10におけるNo)、S18にて第1切換器SW1がドライバー要求側に保持されると共に、第2切換器SW2がフィルタ側に保持されることになる。
図5は、ECBECU20により目標駆動力が設定された場合における第2切換器SW2の切換手順を説明するためのフローチャートである。図5に示されるルーチンも、車両1の走行中に所定時間おきに繰り返し実行されるものである。本ルーチンの実行タイミングになると、駆動制御ECU10は、ECBECU20において車両1の挙動を安定化させる必要があると判断された際にONされるVDIMフラグがONされているか否かを判定する(S20)。
VDIMフラグがONされていると判断されると(S20におけるYes)、駆動制御ECU10において第2切換器SW2がバイパス側(図2における破線側)に切り換えられる(S22)。これにより、フィルタ114がバイパスされ、第1切換器SW1からの信号は、フィルタ114を介することなく第2切換器SW2からECBECU20のVDIM調停器22および最終調停器115に与えられることになる。そして、VDIM調停器22は、フィルタ114による制振補正がなされていない目標駆動力取得部112あるいはDSSECU50からの目標駆動力と、要求駆動力算出部21により算出された目標駆動力との調停を実行する。また、最終調停器115は、フィルタ114による制振補正がなされていない目標駆動力取得部112あるいはDSSECU50からの目標駆動力と、ECBECU20のVDIM調停器22により設定された目標駆動力との調停を実行する。
ここで、本実施形態のVDIM調停器22は、ECBECU20において車両1の駆動力を抑制する要求がなされた場合に、駆動制御ECU10からの目標駆動力と要求駆動力算出部21からの目標駆動力とのうちの小さい方(ミニマムセレクト)をその出力値である目標駆動力として設定する。また、VDIM調停器22は、ECBECU20において車両1の駆動力を増大化させる要求がなされた場合に、駆動制御ECU10からの目標駆動力と要求駆動力算出部21からの要求駆動力とのうちの大きい方(マックスセレクト)をその出力値である目標駆動力として設定する。このような調停処理が実行される場合、仮にフィルタ114による制振補正処理が施された目標駆動力と、要求駆動力算出部21からの目標駆動力とが調停されると、却って車両1の振動を助長させて、車両1の挙動を不安定にしてしまうおそれもある。
すなわち、ECBECU20において車両1の駆動力を抑制する要求がなされた場合に、フィルタ114による制振補正処理が施された目標駆動力取得部112あるいはDSSECU50からの目標駆動力が図6(a)において一点鎖線で示されるようなものであり、要求駆動力算出部21により算出された目標駆動力が図6(a)において二点鎖線で示されるようなものであるとき、ミニマムセレクトによる調停処理が実行されると、調停後の目標駆動力は、図6(b)において実線で示されるようなものとなる。そして、図6(b)において実線で示されるような目標制御量に基づいて車両1が制御された場合、結局フィルタ114による制振効果が得られないばかり、却って車両1の振動を助長させてしまうおそれがある。
同様に、ECBECU20において車両1の駆動力を増大化させる要求がなされた場合に、フィルタ114による制振補正処理が施された目標駆動力取得部112あるいはDSSECU50からの目標駆動力が図7(a)において一点鎖線で示されるようなものであり、要求駆動力算出部21により算出された目標駆動力が図7(a)において二点鎖線で示されるようなものであるとき、マックスセレクトによる調停処理が実行されると、調停後の目標駆動力は、図7(b)において実線で示されるようなものとなる。そして、図7(b)において実線で示されるような目標制御量に基づいて車両1が制御された場合も、結局フィルタ114による制振効果が得られないばかり、却って車両1の振動を助長させてしまうおそれがある。
このような点に鑑みて、本実施形態では、上述のようにドライバーの要求とは別の条件に基づいてECBECU20の要求駆動力算出部21により目標駆動力(第2の目標制御量)が設定された場合、フィルタ114による目標駆動力取得部112あるいはDSSECU50からの目標駆動力(第1の目標制御量)の補正処理が禁止され、補正されていない目標駆動力取得部112あるいはDSSECU50からの目標駆動力と、要求駆動力算出部21からの目標駆動力との調停が図られることになる。これにより、フィルタ114による制振補正処理やVDIM調停器22における目標駆動力の調停により車両1の振動を助長させて車両1の挙動を不安定にしてしまうことが抑制される。また、上述のようにしてフィルタ114による制振補正処理を禁止することにより、駆動制御ECU10にフィルタ114を組み込むに際して、フィルタ114に合わせてECBECU20のVDIM調停器22等を設計する必要が無くなる。この結果、車両1を良好に制振すると共に、ドライバーの要求とは別の条件に応じて目標駆動力が設定された際の車両1の安全性を容易かつ良好に確保することが可能となる。
なお、ECBECU20において車両1の駆動力を抑制する要求がなされ、VDIM調停器22においてミニマムセレクトによる調停処理が実行される場合、基本的に、最終調停器115においてもミニマムセレクトによる調停処理が実行される。更に、ECBECU20において車両1の駆動力を増大化させる要求がなされ、VDIM調停器22においてマックスセレクトによる調停処理が実行される場合、基本的に、最終調停器115においてもマックスセレクトによる調停処理が実行される。
また、本実施形態において、VDIM調停器22の後段に更に最終調停器115が設けられているのは、次のよう理由による。すなわち、上述のような最終調停器115が存在すれば、VDIM調停器22においてミニマムセレクトによる調停処理が実行される場合に、仮に駆動制御ECU10とECBECU20との間の通信異常が発生したとしても、最終調停器115においてミニマムセレクトによる調停処理が実行されることにより、目標駆動力が必要以上に大きくなってしまうことが抑制される。これにより、車両の走行安全性を良好に確保することが可能となる。そして、VDIM調停器22においてマックスセレクトによる調停処理が実行される場合に、仮に駆動制御ECU10とECBECU20との間の通信異常が発生したとしても、最終調停器115においてマックスセレクトによる調停処理が実行されることにより、最低限、ドライバーにより要求される目標駆動力を確保することが可能となる。
S22の処理が実行されると、駆動制御ECU10において、上述のVDIMフラグがONされているか否かが判定される(S24)。VDIMフラグがONされていると判断された場合(S24におけるYes)、上述のS22以降の処理が繰り返し実行され、第2切換器SW2がバイパス側に保持されることになる。そして、S22およびS24の処理が繰り返し実行される間に、車両1の挙動が安定化されたことによりVDIMフラグがOFFされたと判断すると(S24におけるNo)、ECBECU20においてスイッチ24がONされ、VDIMフラグのOFF時、すなわち要求駆動力算出部21による目標駆動力の設定が解除されたときのVDIM調停器22の最終出力値がフィルタ114に入力される(S26)。
ここで、目標駆動力取得部112から出力されるドライバーの要求に応じた目標駆動力が図8(a)に示されるようなものであり、ECBECU20において駆動力抑制要求がなされると共に要求駆動力算出部21から出力される目標駆動力(図8の例ではドライバーの要求に応じた目標駆動力よりも小さい)が図8(b)に示されるようなものであり、かつ、時刻tにてVDIMフラグがOFFされたとすると、時刻tまではミニマムセレクトにより図8(b)に示されるECBECU20からの目標駆動力が有効にされる。この場合、VDIMフラグがOFFされた時刻tに直ちに第2切換器SW2をフィルタ側に切り換えて目標駆動力取得部112からの出力信号がフィルタ114に入力されるようにすると、時刻tまでフィルタ114に対する信号の入力が断たれていた関係上、フィルタ114に目標駆動力取得部112からの目標駆動力が再度入力されるようになった時点(時刻t)の前後で、最終調停器115から出力される最終的な目標駆動力が不連続となってしまうおそれがある。
同様に、目標駆動力取得部112から出力されるドライバーの要求に応じた目標駆動力が図9(a)に示されるようなものであり、ECBECU20において駆動力増大化要求がなされると共に要求駆動力算出部21から出力される目標駆動力(図9の例ではドライバーの要求に応じた目標駆動力よりも大きい)が図9(b)に示されるようなものであり、かつ、時刻tにてVDIMフラグがOFFされたとすると、時刻tまではマックスセレクトにより図9(b)に示されるECBECU20からの目標駆動力が有効にされる。この場合、VDIMフラグがOFFされた時刻tに直ちに第2切換器SW2をフィルタ側に切り換えて目標駆動力取得部112からの出力信号がフィルタ114に入力されるようにすると、時刻tまでフィルタ114に対する信号の入力が断たれていた関係上、フィルタ114に目標駆動力取得部112からの目標駆動力が再度入力されるようになった時点(時刻t)の前後で、最終調停器115から出力される最終的な目標駆動力が不連続となってしまうおそれがある。
これに対して、VDIMフラグがOFFされたと判断された時点で(S24におけるNo)、図8(c)や図9(c)に示されるようにVDIMフラグのOFF時すなわちECBECU20による目標駆動力の設定が解除されたときのVDIM調停器22の最終出力値がその時点(時刻t)における初期値としてフィルタ114に入力されるようにすれば、図8(d)や図9(d)に示されるように、最終調停器115から出力される目標駆動力の連続性を保つことが可能となる。これにより、上述のようにしてフィルタ114による制振補正処理が禁止されても、それに伴って車両1の挙動が不安定になってしまうことを良好に抑制することが可能となる。
S26の処理が実行されると、駆動制御ECU10において、第2切換器SW2がフィルタ側(図2における実線側)に切り換えられる(S28)。これにより、ドライバーの要求に応じた目標駆動力に対してフィルタ114による制振補正処理が施されることになるので、車両1を良好に制振することが可能となる。そして、S28の処理が実行されると、再度S20以降の処理が繰り返し実行されることになる。なお、S20にてVDIMフラグがOFFされていると判断された場合(S20におけるNo)、S28にて第2切換器SW2がフィルタ側に保持されることになる。
本発明による車両制御装置が適用された車両を示すブロック構成図である。 本発明による車両制御装置による内燃機関および変速機の制御手順を説明するための制御ブロック図である。 本発明による車両制御装置による車両の制御手順を説明するためのフローチャートである。 (a)、(b)、(c)および(d)は、本発明による車両制御装置における目標駆動力の設定手順を説明するためのタイムチャートである。 本発明による車両制御装置による車両の制御手順を説明するためのフローチャートである。 フィルタによる制振補正処理がなされた目標制御量と、当該目標制御量とは別の条件に基づいて定められた目標制御量とを調停した場合の最終的な目標制御量を説明するためのタイムチャートである。 フィルタによる制振補正処理がなされた目標制御量と、当該目標制御量とは別の条件に基づいて定められた目標制御量とを調停した場合の最終的な目標制御量を説明するためのタイムチャートである。 (a)、(b)、(c)および(d)は、本発明による車両制御装置における目標駆動力の設定手順を説明するためのタイムチャートである。 (a)、(b)、(c)および(d)は、本発明による車両制御装置における目標駆動力の設定手順を説明するためのタイムチャートである。
符号の説明
1 車両、2 燃料噴射装置、3 点火装置、4 電子制御式スロットルバルブ、5 変速機、6 ブレーキアクチュエータ、7 操舵用アクチュエータ、8 ショックアブソーバ、10 駆動制御、11 アクセルセンサ、12 ブレーキセンサ、14 舵角センサ、15 モードスイッチ、20 ECBECU、21 要求駆動力算出部、22 VDIM調停器、23 メモリ、24 スイッチ、30 操舵ECU、40 サスペンションECU、50 DSSECU、51 ACCモジュール、52 BAモジュール、53 PCSモジュール、54 メモリ、55 DSS調停器、56 スイッチ、111 目標加速度取得部、112 目標駆動力取得部、114 フィルタ、115 最終調停器、116 制御量設定部。

Claims (14)

  1. 車両の走行に関連する目標制御量を設定し、この目標制御量に基づいて前記車両を制御する車両制御装置において、
    ドライバーの要求に応じて第1の目標制御量を設定する第1目標制御量設定手段と、
    前記第1目標制御量設定手段により設定された前記第1の目標制御量を前記車両のバネ上振動が抑制されるように補正可能な補正手段と、
    ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定する第2目標制御量設定手段と、
    前記第1の目標制御量と前記第2の目標制御量とを調停するための調停手段とを備え、
    前記第2目標制御量設定手段によって前記第2の目標制御量が設定された場合に、前記補正手段による前記第1の目標制御量の補正が禁止され、かつ、前記調停手段は、前記補正手段による補正がなされていない前記第1の目標制御量と前記第2の目標制御量とを調停することを特徴とする車両制御装置。
  2. 前記第1目標制御量設定手段により設定された前記第1の目標制御量の出力先を前記補正手段と前記調停手段とで選択的に切り換える切換手段を更に備え、この切換手段は、前記第2目標制御量設定手段によって前記第2の目標制御量が設定された場合に、前記補正手段を介することなく前記第1の目標制御量を前記調停手段に直接入力させることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
  3. 前記第2目標制御量設定手段による前記第2の目標制御量の設定が解除された際に、前記補正手段には、前記第2の目標制御量の設定が解除されたときの前記調停手段の最終出力値が入力されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
  4. 前記調停手段は、概ね同時に入力する前記第1の目標制御量と前記第2の目標制御量とのうちの小さい方を出力値とすることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車両制御装置。
  5. 前記調停手段は、概ね同時に入力する前記第1の目標制御量と前記第2の目標制御量とのうちの大きい方を出力値とすることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車両制御装置。
  6. 前記第2目標制御量設定手段は、前記車両の走行状態および走行環境の少なくとも何れかに基づいて前記車両の挙動が安定化されるように前記第2の目標制御量を設定することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の車両制御装置。
  7. ドライバーの要求に応じて車両の走行に関連する所定の目標制御量を設定すると共に、補正手段を用いて前記目標制御量を前記車両のバネ上振動が抑制されるように補正して前記車両を制振する車両制振方法であって、
    (a)ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定するステップと、
    (b)ステップ(a)で前記第2の目標制御量が設定された場合に、前記補正手段による前記目標制御量の補正を禁止するステップと、
    (c)前記補正手段による補正がなされていない前記目標制御量と前記第2の目標制御量とを調停するステップとを含む車両制振方法。
  8. (d)前記第2の目標制御量の設定が解除された場合に、前記第2の目標制御量の設定が解除されたときのステップ(c)での最終調停結果を前記補正手段に入力させるステップを更に含む請求項7に記載の車両制振方法。
  9. 車両の走行に関連する目標制御量を設定し、この目標制御量に基づいて前記車両を制御する車両制御装置において、
    ドライバーの要求に応じて第1の目標制御量を設定する第1目標制御量設定手段と、
    ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定する第2目標制御量設定手段と、
    前記第1目標制御量設定手段により設定された前記第1の目標制御量または前記第2目標制御量により設定された第2の目標制御量を前記車両のバネ上振動が抑制されるように補正可能な補正手段とを備え、
    前記第2目標制御量設定手段によって前記第2の目標制御量が設定された場合に、所定条件下で、前記第1の目標制御量が無効にされると共に前記補正手段による前記第2の目標制御量の補正が禁止されることを特徴とする車両制御装置。
  10. 前記第1目標制御量設定手段により設定された前記第1の目標制御量と前記第2目標制御量設定手段により設定された前記第2の目標制御量とのうちの何れかを選択的に有効にする第1の切換手段と、前記第1の切換手段からの前記第1の目標制御量または前記第2の目標制御量の補正手段に対する入力を選択的に許容する第2の切換手段とを更に備えることを特徴とする請求項9に記載の車両制御装置。
  11. 前記第2目標制御量設定手段による前記第2の目標制御量の設定が解除された際に、前記補正手段には、前記第2の目標制御量の設定が解除されたときの第2目標制御量設定手段の最終設定値が入力されることを特徴とする請求項9または10に記載の車両制御装置。
  12. 前記第2目標制御量設定手段は、ドライバーの要求、前記車両の走行状態および走行環境の少なくとも何れかに基づいて前記車両の運転が支援または代行されるように前記第2の目標制御量を設定することを特徴とする請求項9から11の何れかに記載の車両制御装置。
  13. ドライバーの要求に応じて車両の走行に関連する所定の目標制御量を設定すると共に、補正手段を用いて前記目標制御量を前記車両のバネ上振動が抑制されるように補正して前記車両を制振する車両制振方法であって、
    (a)ドライバーの要求とは別の条件に基づいて第2の目標制御量を設定するステップと、
    (b)ステップ(a)で前記第2の目標制御量が設定された場合に、所定条件下で、前記目標制御量を無効にすると共に前記補正手段による前記第2の目標制御量の補正を禁止するステップとを含む車両制振方法。
  14. (c)前記第2の目標制御量の設定が解除された場合に、前記第2の目標制御量の設定が解除されたときのステップ(a)での最終設定値を前記補正手段に入力させるステップを更に含む請求項13に記載の車両制振方法。
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