本発明は、燃料電池システムおよびそのシステムを作動する方法に関する。
本発明のある態様では、ある物質の放出が抑制される燃料電池システム、および燃料電池システムからの放出物を低減することの可能な、システムを作動する方法が提供される。直接メタノール型燃料電池システムのような燃料電池システムでは、ある有機物質が生成される。これらの有機物質は、例えばメタノール、蟻酸および/またはホルムアルデヒドであって、環境に放出されると有害な物質である。物質の放出を低減させることによって、これらの物質によって引き起こされる、健康および安全上のリスクを抑制することができる。
本発明の別の態様では、出口、該出口に連通した燃料電池スタック、該燃料電池スタッに連通した有機燃料、および前記出口に連通した放出制御システム、を有する燃料電池システムが提供される。制御システムは、出口からの有機物の放出量を低減することができる。放出有機物は、メタノール、蟻酸および/またはホルムアルデヒドを含む。
いくつかの実施例は、以下の1または2以上の特徴を有しても良い。出口は、アノード出口および/またはカソード出口である。放出制御システムは、活性炭素、過マンガン酸カリウム、エルミンまたは酸化ランタン等を含む充填床を有する。放出制御システムは、基材および該基材上に設置された第1の材料を有し、第1の材料は、有機物放出量を低減することができる。第1の材料には、活性炭素、カリウムマンガネート、エルミンまたはランタン酸化物等が含まれる。有機燃料および放出制御システムは、モジュラーシステムの構成物である。
さらに燃料電池システムは、例えば燃料電池スタックに連通された出口および/または入口を通って、燃料電池スタックに流れるガスを低減するように適合された機構を有する。この機構は、スリットバルブ等の感圧式バルブで構成される。この代わりに、あるいはこれに加えて、前記機構は、形状記憶材料で構成されても良い。
有機燃料には、メタノール等のアルコールが含まれる。
燃料電池スタックは、第1の材料を有するガス拡散層を備える燃料電池を有し、前記第1の材料は、該第1の材料と接触する有機物の放出量を低減することが可能である。第1の材料は、白金、パラジウムおよび/またはルテニウムを含む。
本発明の別の態様では、燃料電池システムは、第1の材料が分散されたガス拡散層を備える燃料電池を有し、前記第1の材料は、該第1の材料と接触する有機物の放出量を低減することが可能である。
いくつかの実施例は、以下の1または2以上の特徴を有しても良い。第1の材料は、約0.1mg/cm2以下、例えば約0.05mg/cm2または約0.01mg/cm2で、ガス拡散層に分散される。第1の材料は、白金、パラジウムまたはルテニウムを含む。第1の材料は、酸化白金、酸化ルテニウム、酸化マンガンまたは酸化クロム等の酸化物を含む。放出有機物は、メタノール、蟻酸および/またはホルムアルデヒドである。
本発明の別の態様では、燃料電池システムは、カソード触媒と、該カソード触媒に連通された通路とを有する燃料電池スタック、および通路を流れるガスを抑制するように適合された機構を有する。
いくつかの実施例は、以下の1または2以上の特徴を有しても良い。通路は、カソード入口である。通路はカソード出口である。機構は、スリットバルブのような感圧式バルブを有する。機構は、形状記憶材料を有する。
本発明の別の態様では、燃料電池システムを作動する方法が提供される。当該方法は、燃料電池システム内の燃料電池の触媒に、有機燃料を接触させるステップと、燃料電池システムの出口からの有機物放出量を低減させるステップとを有する。
いくつかの実施例は、以下の1または2以上の特徴を有しても良い。当該方法は、出口からの放出物を、炭素等の第1の材料と接触させるステップを有し、前記第1の材料は、出口からのメタノール、蟻酸および/またはホルムアルデヒドの量を低減することができる。出口はアノード出口であり、アノード出口からの放出物は、メタノールを含み、さらにアノード出口から燃料電池にメタノールを導入するステップを有する。出口はカソード出口であっても良い。放出有機物は、メタノール、蟻酸および/またはホルムアルデヒドを含む。有機燃料は、メタノール等のアルコールを含む。
さらに当該方法は、燃料電池のガス拡散層内に設置された第1の材料に、放出有機物を接触させるステップを有し、前記第1の材料は、有機物放出量を低減することができる。第1の材料は、白金、パラジウム、ルテニウムおよび/または酸化物を含む。
本発明の別の態様では、燃料電池システムを作動する方法は、燃料電池システムの作動を停止するステップと、燃料電池システムへのガス流を低減させるステップとを有する。
ガス流を低減させるステップは、形状記憶材料を有する機構を作動させるステップを有し、このステップは、燃料電池システムの作動が停止されてから実行される。
ガス流を低減させるステップは、燃料電池システムのカソード入口および/または燃料電池システムのカソード出口を通るガス流について、行われる。ガス流を低減させるステップは、感圧式バルブを用いて通路を制限するステップを有する。
本発明の他の態様、特徴および利点は、以下の図面、記載および特許請求の範囲から明らかとなろう。
図1には、直接メタノール型燃料電池(DMFC)システムのような、有機燃料電池システム20が示されている。システム20は、燃料電池スタック22、燃料源(例えばメタノールカートリッジ)24、空気移動器(例えばファンまたはブロワ)26、2つの放出制御システム28、30、およびポンプ31を有する。燃料電池スタック22は、一つの燃料電池32(以下に示す)または複数の燃料電池32を有し、例えば直列または並列に配置される。燃料源24は、アノード入口34を介して燃料電池スタック22と連通しており、放出制御システム28は、アノード出口36を介して燃料電池スタックと連通している。空気移動器26は、カソード入口38を介して燃料電池スタック22と連通しており、放出制御システム30は、カソード出口40を介して燃料電池スタックと連通している。ポンプ31は、スタック22からの水をアノード入口34に供給する(例えば前述の反応式1)。前述のように、放出制御システム28、30は、燃料電池システム20で生成される有機物の放出量を減少(例えば消滅)させることができる。ホルムアルデヒド等の放出有機物は、有害であるが、有機物放出量を低減させることで、燃料電池システム20の作動によって生じる健康および安全上のリスクを抑制することができる。
理論に拘束されることは好ましくないが、直接メタノール型燃料電池システムでは、メタノールの不完全な酸化によって、有機物の放出が生じる場合がある。燃料電池システム20の作動中、燃料源24からのメタノールと水は、入口34を通って流れ、スタック22の燃料電池32のアノードと接する。完全な酸化が生じる場合、メタノールは酸化されて、多数の中間体(ホルムアルデヒド(HCHO)および蟻酸(HCOOH))を生成し、これらはさらに酸化されて、最終生成物として二酸化炭素が生成され、アノード出口36から環境側に放出される(反応式1)。アノードで生成された二酸化炭素の一部は、カソード側にも拡散し、カソード出口40から環境側に放出される。しかしながら、ある作動条件下では、メタノールは完全に酸化されない場合がある。その結果、中間生成物は、アノード出口36を通って流れ、有機物として環境側に放出される。
またある場合には、メタノールは電解質を通って拡散し、燃料電池32のカソードに至る。カソードでは、メタノールは、空気移動器26によって入口28から導入された酸素と反応する。メタノールと酸素が反応して、中間生成物が生成され、その後これは、カソード出口40を通り、有機物として環境側に放出される。また、未反応メタノールは、アノード出口36および/またはカソード出口40を通り、大気放出される。従ってある条件下では、DMFC等の燃料電池システムの作動によって、ホルムアルデヒド、蟻酸および/またはメタノール等の有機物が環境に放出される。
放出制御システム28、30は、燃料電池システムから環境側に放出される有機物放出量を低減(例えば消滅)するように適合される。前述のように、放出制御システム28、30として、多くの実施例を用いることができる。放出制御システム28および30は、実質的に同一または異なる、いずれの組み合わせであっても良い。ある実施例では、燃料電池システム20は、一つの放出制御システムを有する。単一の放出制御システムは、アノード出口36またはカソード出口40に連通させても良く、あるいは出口を組み合わせて、両方の出口36、40に連通させても良い。以下の放出制御システム28の説明は、放出制御システム30に適用することも可能である。
図2には、ある実施例として、充填床管42の形態の放出制御システム28を示す。充填床管42は、アノード出口36と連通された入口44と、例えば大気開放された出口46とを有する。図のように、充填床管42は、3つの材料48、50および52を含み、これらの材料は、アノード出口36から充填床管を通って流れる有機放出量を低減することができる。例えば、材料48は、メタノールを減少させ、材料50は、ホルムアルデヒドを減少させ、材料52は、蟻酸を減少させる。
材料48、50および52は、いかなる機構を用いて、有機物放出量を抑制しても良い。機構は、例えば吸収、吸着、触媒および/または放出物との反応(例えば分解)である。吸収/吸着によって放出ガスを減少させる材料の例は、アルミノケイ酸塩、ゼオライト、活性炭素またはカーボンブラック等の、高表面積の反応性および/または多孔質材料である。反応(例えば酸化および/または中性化)によって放出ガスを減少させる材料の例は、アルカリ、およびアルカリ土類酸化物、ランタン酸化物;過マンガン酸の無機および有機塩、重クロム酸塩およびルテニウム塩;塩素酸塩;亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩;およびCu、Co、Cr、Fe、AgおよびMn等の遷移金属酸化物である。触媒(例えば分解および/または酸化)によって放出ガスを減少させる材料の例は、Pt、Pd、Ni、Ru、Ir、Os、Ag、Au、Cu、Fe、Cr、Co、Mn、Tiおよび他の酸化物等である。メタノールを減少させる特定の材料例は、活性炭素である。ホルムアルデヒドを減少させる材料例は、過マンガン酸カリウム、エルミンまたはFORMASORB(登録商標)(Nuconインスツルメント社(オハイオ州コロンバス)から入手できる)等である。蟻酸を減少させる材料例は、ランタン酸化物または含浸活性炭素等の、塩基性材料である。
別の実施例も可能である。例えば材料48、50および/または52は、粒状多孔質媒体上に支持された、例えばアルミナまたはジルコニアのような不活性酸化物であっても良い。材料48、50および/または52は、いかなる順番で、管52内の別々の位置に設置され、または層状に設置されても良く、あるいは管に沿って設置されても良い。各材料を1層以上用いても良い。ある実施例では、材料48、50および52は、管42内で相互に混合される。充填床管42は、3材料未満の材料であっても良く、例えば2または単一の材料である。例えば充填床管42は、ホルムアルデヒドおよび蟻酸を減少させる材料を含んでも良い。管42内を流れるいかなる量のメタノールも減少させないようにして、このメタノールを、例えば出口46からアノード入口34に循環させても良い。
図3の別の実施例では、放出制御システム28は、触媒変換器の原理に基づく形態のハウジング54を有する。図に示すように、ハウジング54は、アノード出口36または燃料電池スタック22と嵌合するように配置された入口56と、通路57と、出口として機能する複数の通気口58とを有する。システム28は、ハウジング54内に、放出物が通過するフィルタ60(例えば多孔質材料)と、有機放出物を減少させる1または2以上の材料62とを有する。材料62(ハウジング54内部の配置を含む)は、前述の材料48、50および/または52と同一の材料であっても良い。
図4および5には、放出制御システム28の別の実施例を示す。図のように、システム28は、アノード出口36に連通された入口66と、出口68とを備えるハウジング64を有する。システム28は、ハウジング64内に、材料48、50および/または52に含浸または分散され、有機物放出量を低減させる1または2以上の物質70を有する。物質70は、例えば高表面積を提供する波型のフィルタペーパーであって、放出物質と材料48、50および/または52の接触確率が増大する。
作動時には、前述の放出制御システム(例えば図2乃至5)の1または2以上のいかなる実施例を、システム28および/または30に用いても良い。アノード側では、水および燃料(メタノール等)が燃料電池スタック22に導入され、酸化によって、電子、プロトンおよび二酸化炭素が生成する。二酸化炭素は、未反応燃料および部分酸化による生成物(例えばホルムアルデヒドおよび/または蟻酸)とともに、アノード出口36を通り、放出制御システム28に導入される。システム28は、部分酸化の生成物および/または未反応燃料の環境側への放出量を抑制することができる。カソード側では、酸素(例えば空気から得られる)は、空気移動器26によって燃料電池スタック22に導入される。酸素は、電子およびプロトンと反応して、水を生成し、この水は、ポンプ31によってアノード入口34に供給される。また酸素は、アノード側からカソード側に拡散してきたメタノールと反応する(例えば酸化させる)。酸化によって、部分的に酸化された生成物が形成され、この生成物は、未反応メタノールとともに、カソード出口40を通り、放出制御システム30に導入される。システム30は、環境側に放出される部分酸化の生成物および/または未反応燃料の量を減少させる。
さらに別の放出制御システムの実施例がある。
例えばある燃料電池システムでは、空気移動器は使用されず、空気の流れは、拡散に支配される。図6Aおよび6Bには、燃料電池スタックのカソード側と嵌合するフレーム74の形状の、放出制御システム72を示す。フレーム74は、フィルタ76を有し、このフィルタは、1または2以上の材料78に設置または含浸され、有機物の放出量を低減することができる。フィルタ76の面積は、燃料電池スタックのカソード触媒の露出表面面積に相当する。材料78は、前述の材料48、50および/または52と同一であっても良い。さらにフレーム74は、複数の開口80を有し、これらの開口は、カソード入口およびカソード出口の両方として機能する(すなわちカソード入口とカソード出口の区別はない)。
別の実施例では、燃料源24および放出制御システム28は、モジュラーシステムに一体化される。図7には、燃料電池スタック86と嵌合するように配置されたモジュラーシステム84を備えた、燃料電池システム82を示す。システム20の構成物と同様の、燃料電池システム82の他の構成物には、同一の参照符号が付されている。モジュラーシステム84は、液体メタノールタンクのような、出口90を備えた燃料源88と、入口94および出口96を備えた放出制御システム92とを有する。放出制御システム92は、充填床管にすることができ、触媒変換器型装置であっても、前述の波型物質を有しても良い。モジュラーシステム84は、スタック86と嵌合するように配置され、例えば、出口90はアノード入口34と、また入口94はアノード出口36と嵌合する。従って、例えば新たな燃料源を提供する場合等、モジュラーシステムを交換する際には、放出制御システムを交換することができる。
さらに別の方法によって、有機物放出量を制御することが可能である。ある実施例では、燃料電池システムは、燃料電池スタックが停止しているとき(すなわちスタックから負荷が取り出されないとき)に、燃料電池スタック内に流れる空気を低減させる(例えば消滅させる)機構を有する。ある場合には、燃料電池スタックの停止時に、空気は、自由にカソードに、またはカソードから(例えば入口38および/または出口40を通って)、およびアノードに、またはアノードから(例えば出口36を通って)、流れることができる。燃料電池スタックのアノード側にメタノールが存在する場合、および/またはメタノールが電解質を通ってカソードに流れる場合(例えば、寄生クロスオーバー)、メタノールが酸素(空気から得られる)と反応して、部分酸化生成物(ホルムアルデヒドおよび/または蟻酸等)が生じる可能性がある。しかし燃料電池スタックに通じる空気孔がある場合、スタック停止時でも酸素がメタノールと反応する可能性は、低下しない。従って部分酸化生成物(およびメタノール)を、環境側に放出することができる。また、スタックの作動中に生成したいかなる部分酸化生成物も、例えばカソード入口38を介して、環境側に自由に拡散させることができる。
ある実施例では、燃料電池システムは、カソード入口38、カソード出口40および/またはアノード出口36に適合された、1または2以上の機構を有する。この機構は、燃料電池スタックに流れる空気を低減するように構成される。この機構は、例えば、入口または出口を横断して延びる感圧式バルブであって、高分子膜またはポップアップ式バルブで構成されるスリットバルブ等である。感圧式バルブは、例えば2002年9月6日に出願された、米国特許出願第10/236,126号に示されている。本機構は、入口または出口を横断して延びる重力駆動式蓋弁であっても良い。本機構には、電気機械式バルブ、または手動式の留め金またはバルブ等の機械式バルブが含まれる。
別の機構には、NITINOL(登録商標)(ニッケルチタン合金)または電流印加によって寸法が変化する他の材料の形状記憶材料を用いた、二重ラッチ機構が含まれる。図8Aおよび8Bでは、ラッチ機構111は、固定式被覆板113と、可動式被覆板115と、可動式板に接続された第1のワイヤ119と、可動式板に接続された第2のワイヤ121とを有する。板113および115は、燃料スタック入口または出口を横断するように設置され、ガス(例えば空気)が流れ、または制限されるように構成される。より具体的には、板113および115は、開口117を有し、これらの開口は、可動板115の位置に応じて、位置が揃えられ、あるいはずらされる。開口117が揃っている場合は、空気は、板113および115を通ることができる(図8A)。開口がずれている場合は、空気の流れは抑制されあるいは遮断される(図8B)。
可動板115の短軸に沿って平行に設置された2本のNITINOL(登録商標)ワイヤ等の、ワイヤ119および121は、可動板が選択位置に移動できるように構成される。例えばワイヤ119は、電気リード線(図示されていない)に接続され、(ワイヤを加熱する)電流が流れると、ワイヤの寸法が変化し(例えば収縮または膨張する)、板115が動いて開口117が揃えられ、これによりガスが流れるようになる。機構111は、板115および/またはワイヤ119をその位置に保持する留め金を有する。同様に、ワイヤ121は、電気リード線(図示されていない)に接続され、電流通電時には、ワイヤの寸法が変化し(また必要であれば、留め金に勝って)、板115が動いて開口117が揃わなくなり、これにより空気の流れが抑制される。機構111は、燃料電池システムに適合され、燃料電池システムの作動に合わせて作動される。電流は、燃料電池、再充電可能なバッテリー(例えば、ハイブリッド電源として燃料電池とともに設置される)、または燃料電池内の、もしくは燃料カートリッジ内の小型一次電池によって提供される。
以下、燃料電池32の一例について説明する。図9において燃料電池32は、電解質100と、電解質の第1の側に接着されたアノード102と、電解質の第2の側に接着されたカソード104とを有する。電解質100、アノード102およびカソード104は、2つのガス拡散層(GDL)106と108の間に設置される。
電解質100は、イオン伝導性を有するが、電子の移動に対しては実質的に抵抗となる。ある実施例では、電解質100は、固体高分子プロトン交換膜(例えば、スルホン酸基を含む固体高分子)等の固体高分子(例えば固体高分子イオン交換膜)である。そのような膜は、ジュポン(E. I. DuPont de Nemours)社(デラウエア州ウィルミントン)からNAFION(登録商標)と言う名称で市販されている。あるいは、電解質100は、W. L. Gore & Associate社(メリーランド州エルクトン)から市販されているGORE−SELECTから調製しても良い。
アノード102は、メタノールおよび水との相互作用によって、二酸化炭素、プロトンおよび電子を生成する触媒等の材料で構成される。そのような材料の一例は、例えば白金、白金合金(Pt−Ru、Pt−Mo、Pt−WまたはPt−Sn等)、カーボンブラック上に分散された白金等である。さらにアノード102は、例えばNAFIONのようなイオン伝導性電解質を有しても良く、この場合アノードは、プロトン伝導体となる。あるいは、固体電解質100に面するガス拡散層(以下に示す)の表面に懸濁液を塗布してから、懸濁液を乾燥させても良い。さらにアノード102を調製する方法には、圧力および熱を利用して接着させる方法がある。
カソード104は、酸素、電子およびプロトンとの相互作用によって、水を生成する触媒等の材料で構成することができる。そのような材料の一例は、例えば白金、白金合金(Pt−Co、Pt−CrまたはPt−Fe等)、カーボンブラック上に分散された貴金属等である。さらにカソード104は、例えばNAFIONのようなイオン伝導性電解質を有しても良く、この場合カソードは、プロトン伝導体となる。カソード104は、前述のアノード102と同様の方法で、調製しても良い。
ガス拡散層(GDL)106と108は、気体および液体の両方が透過する材料で構成される。好適なGDLは、マサチューセッツ州ナティックのエテック(Etek)社、カリフォルニア州バレンシアのSGL社、およびミズーリ州セントルイスのゾルテック(Zoltek)社など、各社から市販されている。GDL106と108は、電気伝導性であっても良く、この場合電子は、アノード102からアノード側流路板(図示されていない)に流れ、カソード側流路板(図示されていない)からカソード104に流れる。
ある実施例では、ガス拡散層106および/または108は、例えば燃料電池システムの作動条件下で、放出ガスを低減させることの可能な化学触媒等の材料を含む。例えばこの材料は、ホルムアルデヒド、蟻酸および/またはメタノールの酸化触媒として作用する。アノード102に隣接するガス拡散層106は、GDL材料上に設置され、ホルムアルデヒドおよび/または蟻酸の酸化触媒として作用する材料、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、銀、金、銅、鉄、クロム、コバルト、マンガン、チタンおよび/またはイリジウム等を含む。カソード104に隣接するガス拡散層108は、GDL材料の上に設置され、ホルムアルデヒド、メタノールおよび/または蟻酸の酸化触媒として作用する材料、例えば前述の材料の酸化物(例えば白金酸化物、ルテニウム酸化物、マンガン酸化物またはクロム酸化物)等を含む。ある実施例では、GDL106と108には、約0.1mg/cm2以下の材料が設置され、この量は、例えば0.09 mg/cm2以下、0.07mg/cm2以下、0.05mg/cm2以下、0.03mg/cm2以下または0.01mg/cm2以下等である。
直接メタノール型燃料電池および燃料電池システムの別の実施例は、例えばJ.Laraminie、A.Dicksの「解説燃料電池システム」、Wiley、ニューヨーク(2000年);C.Lamy、J.Leger、S.Srinivasanの「直接メタノール型燃料電池:20世紀の電気化学者のドリームから21世紀の新しい技術」、Modern Aspects of Electrochemistry、第34巻、p53−118、J.Bockrisら監修、Kluwer Academic/Plenum出版社、ニューヨーク(2001年);S.R.Narayanan、T.I.Valdez、F.Claraの「携帯用小型燃料電池の開発」、直接メタノール型燃料電池、S.R.Narayanan、S.Gottesfeld、T.Zawodzinski監修、Electrochemical Society Proceedings、2001−4(2001)Pennington、ニュージャージー、に示されている。これらは本願の参照文献として取り入れられている。
別の実施例では、別の燃料として、別のアルコール(例えばエタノール)、炭化水素(例えばプロパンまたはブタン)またはこれらの混合物等、さらにこれらの水溶液を含む燃料が使用される。
ある実施例では、出口36および/または40に沿って、1以上の放出制御システムが使用される。例えばアノード出口36は、2つの放出制御システムを有しても良い:第1のシステムは、ホルムアルデヒドの量を低減し、第2のシステムは、蟻酸の量を低減する。これらの放出制御システムは、前述のいかなる実施例であっても良く、いかなる組み合わせで使用しても良い。
スタック22は、「ストリップセルスタック」または一連の燃料電池が水平に接続されたスタックであっても良い。