JP2006518600A - 複数のアンテナ構造を有する改変型糖タンパク質の生成 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2003年10月7日に出願された米国特許出願番号10/680,963の一部継続出願であり、この米国特許出願番号10/680,963は、2003年2月20日出願された米国特許出願番号10/371,877の一部継続出願であり、この米国特許出願番号10/371,877は、2001年6月27日に出願された米国特許出願番号09/892,591の一部継続出願であり、この米国特許出願番号09/892,591は、2000年6月28日に出願された米国仮出願番号60/214,358、2000年6月30日出願された米国仮出願番号60/215,638、および2001年3月30日に出願された米国仮出願番号60/279,997の米国特許法第119条(e)下の利益を主張する。これらの出願の各々は、その全体が、参考として本明細書中に援用される。
本発明は、非ヒト真核生物宿主細胞(例えば、真菌細胞または他の真核生物細胞)が、動物細胞(特に、ヒト細胞)によって生成される糖タンパク質のグリコシル化パターンと類似するグリコシル化パターンを有するグリコシル化タンパク質(糖タンパク質)を生成するように遺伝子改変され得る、方法および組成物に関する。これらは、ヒトまたは動物の治療剤として有用である。
(ヒトおよび下等真核生物におけるグリコシル化経路)
DNAが転写され、タンパク質に翻訳された後の、さらなる翻訳後プロセシングは、グリコシル化として知られるプロセスである、糖残基の結合を含む。異なる生物は、異なるグリコシル化酵素(グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ)を生産し、利用可能な異なる基質(ヌクレオチド糖)を有し、従って、同一タンパク質のものでさえ、グリコシル化パターンならびに個々のオリゴ糖の組成は、特定のタンパク質が発現される宿主系に依存して、異なる。細菌は、典型的には、タンパク質をグリコシル化せず、そしてグリコシル化する場合でも、非常に非特異的方法でのみグリコシル化する(MoensおよびVanderleyden,1997 Arch Microbiol.168(3):169−175)。糸状真菌および酵母のような下等真核生物は、主として、マンノースおよびマンノシルホスフェート糖を付加する。得られたグリカンは、「高マンノース」型のグリカンまたはマンナンとして知られている。植物細胞および昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)は、なお別の方法でタンパク質をグリコシル化する。対照的に、ヒトのような高等真核生物においては、発生期のオリゴ糖側鎖がトリミングされて、いくつかのマンノース残基が除去され得、下等真核生物のN−グリカンでは典型的には見られないさらなる糖残基で延長され得る。例えば、Bretthauerら,(1999)Biotechnology and Applied Biochemistory 30:193−200;Martinetら,(1998)Biotechnolgy Letters 20:1171−1177;Weikertら,(1999)Nature Biotechnology 17:1116−1121;M.Maliassardら,(2000)Biochemical and Biophysical Research Communications 267:169−173;Jarvisら,(1998)Current Opinion in Biotechnology 9:528−533;ならびにTakeuchi(1997)Trends in Glycoscience and Glycotechnology 9:S29−S35参照。
動物糖タンパク質のN−グリカンは、典型的には、ガラクトース、フコース、および末端シアル酸を含む。これらの糖は酵母および糸状真菌で生産される糖タンパク質では見出されない。ヒトにおいては、十分な範囲のヌクレオチド糖前駆体(例えば、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UDP−ガラクトース、GDP−フコースなど)が細胞質ゾルで合成され、ゴルジに輸送され、そこで、それらはグリコシルトランスフェラーゼによってコアオリゴ糖に結合される(SommersおよびHirschberg(1981)J.Cell Biol.91(2):A406−A406;SommersおよびHirschberg(1982)J.Biol.Chem.257(18):811−817;PerezおよびHirschberg(1987)Methods in Enzymology 138:709−715)。
糖トランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ(例えば、マンノシダーゼ)はERおよびゴルジ装置の内部(ルミナル)表面をライニングし、それにより、それがERおよびゴルジネットワークを進行するにつれ、糖タンパク質の順次のプロセシングを可能とする「触媒」表面を提供する。シスゴルジ、ゴルジ中間嚢およびトランスゴルジの多数区画ならびにトランス−ゴルジネットワーク(TGN)は、グリコシル化反応の順序だった系列が起こり得る異なる場所を提供する。糖タンパク質が後期ゴルジまたはTGNにおいてERにおける合成から十分な成熟まで進行するにつれ、それは、特定の炭水化物構造が合成され得るように、異なるグリコシダーゼ、マンノシダーゼおよびグリコシルトランスファラーゼに順次に暴露される。これらの酵素をその各細胞小器官に保持し、係留する正確な機構を明らかにするために、多くの研究が捧げられてきた。進化する図式は複雑であるが、証拠は、ステム領域、膜貫通領域および小胞体テイルは、個々に、あるいは共同して、酵素を個々の細胞小器官の膜に向け、それにより、関連する触媒ドメインをその遺伝子座に局在化することを示唆する(例えば、Gleeson(1998)Histochem.Cell Biol.109,517−532参照)。
ヒトまたは動物から単離されたかなりの数のタンパク質が翻訳後に修飾され、グリコシル化は最も重要な修飾のうちの一つである。全ての治療タンパク質の推定70%がグリコシル化され、従って、現在、ヒトと類似の様式でグリコシル化し得る生産系(すなわち、宿主細胞)に頼っている。いくつかの研究はグリコシル化が(1)免疫原性、(2)薬物動態学特性、(3)トラフィッキングおよび(4)治療タンパク質の効力を決定することにおいて重要な役割を演じることを示している。従って、製薬産業によるかなりの努力が、可能な限り「ヒューマノイド」または「ヒト様」である糖タンパク質を得るためのプロセスを開発することに向けられてきたことは、驚くべきことではない。現在まで、ほとんどの糖タンパク質は哺乳動物宿主系で作られる。これは、細胞によって発現されるタンパク質のシアル化(すなわち、シアル酸の末端添加)の程度を増強させるための、そのような哺乳動物細胞の遺伝子操作を含み得、これは、そのようなタンパク質の薬物動態学特性を改良することが公知である。あるいは、公知のグリコシルトランスフェラーゼおよびそのそれぞれのヌクレオチド糖(例えば、2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸)を用いるそのような糖のインビトロ付加によって、シアリル化の程度を改良し得る。
小胞体においてタンパク質に転移されるコアオリゴ糖構造は、基本的には、哺乳動物と下等真核生物とで同一であるが、かなりの差が、真菌および哺乳動物のゴルジ装置で起こるその後のプロセシング反応で見出されている。事実、異なる下等真核生物の間でさえ、かなり多様なグリコシル化構造が存在する。このことは、歴史的には、哺乳動物発現系よりも優れたその他の注目すべき利点にも拘らず、組換えヒト糖タンパク質の生産のための宿主としての下等真核生物の使用を妨げてきた。
α−1,2−マンノシダーゼ活性は、哺乳動物における複合N−グリカン形成のための主な中間体であるMan5GlcNAc2を形成するためのMan8GlcNAc2のトリミングのために必要である。以前の研究は、短縮型のマウスα−1,2−マンノシダーゼ、真α−1,2−マンノシダーゼ菌およびヒトα−1,2−マンノシダーゼが、メチロトロピック酵母P.pastorisで発現され得、Man8GlcNAc2からのMan5GlcNAc2へのトリミング活性を呈することができることを示した(Lalら(1998)Glycobiology 8(10):981−95;Tremblayら(1998)Glycobiology 8(6):585−95,Callewaertら(2001)FEBS Lett.503(2−3):173−8)。しかしながら、今日まで、P.pastorisから分泌された糖タンパク質でのMan8GlcNAc2からMan5GlcNAc2への高レベルのインビボトリミングを示す報告は存在しない。
N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(「GnT」)は、分泌経路においてN結合型オリゴ糖を修飾するグリコシル化酵素の別のクラスに属する。このようなグリコシルトランスフェラーゼは、特定の糖ヌクレオチドドナーに由来する単糖を、2つのあり得るアノマー結合のうちの1つ(αまたはβのいずれか)において、伸長しているグリカン鎖における単糖の特定のヒドロキシル位置へと転移することを触媒する。Dennisら(1999)Bioessays 21(5):412−21。特定のGnTは、N−アセチルグルコサミン(「GIcNAc」)を、N−グリカン基質(例えば、Man5GlcNAc2(「マンノース−5コア」)およびMan3GlcNAc2(「内部コア構造」))のManα1,6アームまたはManα1,3アームに付加する。その反応生成物(例えば、GlcNAcMan5GlcNAc2またはGlcNAc2Man3GlcNAc2)は、次いで、バイアンテナ(bi−antennary)N結合型オリゴ糖構造、トリアンテナ(tri−antennary)N結合型オリゴ糖構造、およびテトラアンテナ(tetra−antennary)N結合型オリゴ糖構造へと修飾され得る。
哺乳動物(特に、ヒト)における糖タンパク質のプロセシングを模倣する一連の酵素反応を行うことが可能な遺伝子改変されたグリコシル化経路を有する宿主細胞および細胞株を、開発した。これらの操作された宿主において発現される組換えタンパク質は、それらの哺乳動物に、実質的に同一ではないかもしれないが、より類似している糖タンパク質(例えば、ヒト対応物)を与える。本発明の宿主細胞(例えば、培養下で増殖される下等真核微生物および他の非ヒト真核生物宿主細胞)は、N−グリカン(例えば、二分型N−グリカン、またはヒトグリコシル化経路に沿って生成される他の構造)を生成するように改変される。この結果は、例えば、真菌糖タンパク質に特徴的な望ましくない構造を作り出す酵素を発現せず、かつ、例えば、「ヒト様」糖タンパク質を生成し得る異種酵素を発現する、株の操作および/または選択の組み合わせを使用して達成される。
本明細書中で他に規定されない限り、本発明に関係して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって通常理解される意味を有する。さらに、文脈上必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。本発明の方法および技術は、一般的には、当該分野で周知の従来法に従って行われる。一般的には、生化学、酵素学、分子生物学および細胞生物学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学、ならびに本明細書中に記載されるハイブリダイゼーションの技術に関連して用いられる命名法および技術は当該分野で周知であり、かつ一般に使用されるものである。
本発明は、非ヒト真核生物宿主細胞においてヒト様グリコシル化を有する糖タンパク質を生産する方法を提供する。後により詳細に記載するように、高マンノース構造の生産に関与する1以上の酵素を天然では発現しないか、またはそれを発現しないように操作されている真核生物宿主細胞が、出発宿主細胞として選択される。そのような選択された宿主細胞は、ヒト様糖タンパク質を生産するように必要な1以上の酵素、または他の因子を発現するように操作される。所望の宿主株は、一度に1つ以上の酵素を発現するように操作することができる。加えて、1以上の酵素または活性をコードする核酸分子を用いて、本発明の宿主株を操作することができる。好ましくは、潜在的に有用な酵素(例えば、異種細胞下標的化配列とインフレームにて連結された触媒的に活性な酵素フラグメントを含むキメラ酵素)をコードする核酸分子のライブラリーが(例えば、酵素フラグメントを含むサブライブラリーと細胞下標的化配列との連結によって)創製され、そして最適な活性を持つ1以上の酵素を有するか、または最も「ヒト様」の糖タンパク質を生産する株が、ライブラリーの1以上のメンバーで標的宿主細胞を形質転換することによって、選択され得る。
本発明の方法は、改変された、好ましくはヒト様N−グリカン構造を有する糖タンパク質を生産する宿主細胞の作製に関する。好ましい実施形態において、この方法は、オリゴ糖前駆体がMan5GlcNAc2で豊富である宿主細胞の作製に関する。好ましくは、高マンノース構造の生産に関与する1以上の酵素を発現しない真核生物宿主細胞が用いられる。そのような宿主細胞は、天然で見出すことができるか、例えば、酵母における既に記載された多くのそのような変異体の一つで出発して操作され得るか、あるいはこの変異体から誘導されて操作され得る。従って、選択された宿主細胞に応じて、非ヒトグリコシル化反応の特徴であることが既知である酵素をコードする1つまたは多数の遺伝子を、欠失しなければならない。そのような遺伝子およびその対応するタンパク質は、多数の下等真核生物(例えば、S.cerevisiae、T.reesei、A.nidulanaなど)において広く特徴付けられており、それにより、下等真核生物における公知のグリコシルトランスフェラーゼ、その活性およびその各遺伝子配列のリストを提供する。これらの遺伝子は、マンノシルトランスフェラーゼ(例えば、1,3マンノシルトランスフェラーゼ(例えば、S.cerevisiaeにおけるMNN1)(Graham、1991)、1,2マンノシルトランスフェラーゼ(例えば、S.cerevisiae由来のKTR/KREファミリー)、1,6−マンノシルトランスフェラーゼ(S.cerevisiae由来のOCH1)、マンノシルリン酸トランスフェラーゼおよびそれらのレギュレーター(S.cerevisae由来のMNN4およびMNN6))、ならびに異常な、すなわち、非ヒトグリコシル化反応に関与するさらなる酵素の群から選択されるようである。これらの遺伝子の多くは、事実、個々に欠失されており、改変されたグリコシル化プロフィールを持つ生きた表現型を生じる。その例は、表1に示される。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、開始α−1,6−マンノシルトランスフェラーゼ(すなわち、Man3GlcNAc2コア構造のα−1,3アーム上で外部鎖マンノシル化を開始する開始特異的酵素)活性が減少した、または枯渇した宿主細胞の作製または使用を含む。S.cerevisiaeにおいて、この酵素は、OCH1遺伝子によってコードされる。S.cerevisiaeにおけるOCH1遺伝子の破壊の結果、N結合型糖がポリ−マンノース外側鎖を完全に欠く表現型をもたらす。真菌株において哺乳動物型グリコシル化を得るための従前のアプローチは、OCH1の不活化を必要とした(例えば、Chibaら(1998)J.Biol.Chem.273:26298−304参照)。しかしながら、本発明の宿主細胞における開始α−1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性の破壊は、(選択された宿主細胞に応じて)、任意であり得る。なぜなら、Och1p酵素は、効率的なマンノース外側鎖開始のために、インタクトなMan8GlcNAc2を必要とするからである。従って、7以下のマンノース残基を有するオリゴ糖を蓄積する、本発明に従って選択されるかまたは生産された宿主細胞は、Och1pに対する貧弱な基質であるような低グリコシル化N−グリカンを生産し得る(例えば、Nakayamaら(1997)FEBS Lett.412(3):547−50参照)。
本発明は、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII活性(全長の酵素、そのホモログ、改変体、誘導体、および触媒的に活性なフラグメントを含む)を発現することによって、下等真核生物宿主細胞においてヒト様糖タンパク質を生成するための方法をさらに提供する。一実施形態において、宿主細胞(例えば、P.pastoris)は、例えば、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII活性の活性化によってかまたはN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII活性を核酸分子から発現することによって、よりヒト様のN−グリカンを生成するように操作される。当該分野で周知の技術を使用して、遺伝子特異的プライマーは、GnTIII遺伝子(好ましくは、哺乳動物GnTIII遺伝子(例えば、マウスGnTIII))の相同領域に相補的であるように設計される(図24)。これらの配列は、当該分野で容易に入手可能であり(例えば、Genbank登録番号L39373)、PCR増幅される。
本発明は、糖ヌクレオチドUDP−GlcNAcの存在下でオリゴ糖のManα1,6アームおよび/またはManα1,3アーム上でのGlcNAcβ1,4グリコシド結合またはGlcNAcβ1,6グリコシド結合の形成を触媒する、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性を有する新規な下等真核生物宿主を提供する。そのGlcNac残基の転移は、一般的には、UDP−GlcNAcトランスポーターの存在下が好ましい。本発明は、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする組換え核酸分子、および酵母分泌経路において活性な酵素を発現するための方法を提供する。さらに、本発明は、治療投与のために有用な形質転換細胞から生成されるオリゴ糖構造を提供する。N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性によりUDP−GlcNAcから上記オリゴ糖基質上へと糖GlcNAcを転移するのを触媒することによって、複数のアンテナを有する糖形態が、タンパク質上に形成され、その後、ガラクトシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼによって伸長される。
本発明の一局面において、下等真核生物が、オリゴ糖構造のGlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−AsnのManα1,3アーム上での糖残基β(1,4)N−アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)の付加を触媒する酵素N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV(「GnT IV」)をコードするヌクレオチド配列で形質転換される。アクセプター糖(例えば、GlcNAc2Man3GlcNAc2)のManα1,3アーム上への、GnT IVによるGlcNAcβ1,4の付加により、いわゆるトリアンテナN−グリカンが生じる。
本発明の別の局面において、下等真核生物宿主細胞が、トリアンテナオリゴ糖構造(例えば、GlcNAc3Man3GlcNAc2)を生成するように操作または選択され、この宿主細胞は、オリゴ糖構造のGlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4(GlcNAcβ1,2)Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−AsnのManα1,6アーム上での糖残基β(1,6)N−アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)の付加を触媒する酵素N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(「GnT V」)をコードする核酸配列で形質転換される。GlcNAc残基の存在下でのアクセプター糖(例えば、GlcNAc3Man3GlcNAc2)の、GnT VによるGlcNAcβ1,6の付加により、テトラアンテナN−グリカンであるGlcNAc4Man3GlcNAc2が生じる。好ましくは、本発明のGnT V活性が、トリアンテナグリカンを生成する下等真核生物宿主細胞(例えば、P.pastoris PBP43)において発現され、この宿主細胞において、オリゴ糖基質GlcNAcMan3GlcNAc2のManα1,6アーム上へGlcNAc残基を転移してGlcNAcβ1,6グリコシド結合を形成するのをGnT V活性が触媒する、
一実施形態において、本発明のコンビナトリアルDNAライブラリー方法を使用して、P.pastoris YSH−44が、GnTIVB/S.cerevisiae MNN2(s)融合構築物およびGnTV/S.cerevisiae MNN2(s)融合構築物で形質転換される。図49は、PBP46と呼ばれる形質転換株において発現されたクリングル3タンパク質から遊離されるN−グリカンのMALDI−TOFスペクトルを示す。これは、1747m/zにおいて優勢なピーク[z](このピークは、テトラアンテナN−グリカン構造GlcNAc4Man3GlcNAc2に対応する)および1543m/zにおける残基ピーク[y](このピークは、トリアンテナN−グリカン構造GlcNAc3Man3GlcNAc2に対応する)を示す。
本発明の別の実施形態において、GnTV活性をコードする核酸が、コアGlcNAc2Man3GlcNAc2構造を生成する宿主において発現されて、トリアンテナ構造GlcNAc3Man3GlcNAc2の形成がもたらされる。公知のGnTV配列が、図43において提供される。一実施形態において、本発明のコンビナトリアルDNAライブラリー方法を使用して、マウス由来の触媒的に活性なGnTVドメイン(GnTV Δ145)に融合したS.cerevisiae MNN2(s)リーダー(GenBank登録番号NP_009571)を含むpPB140構築物(図40B)が、P.pastoris株YSH−44(実施例15)において発現され、それにより、トリアンテナN−グリカンGlcNAc3Man3GlcNAc2を生成する(実施例25)。図48は、PBP32と呼ばれる形質転換株において発現されたクリングル3タンパク質から遊離されるN−グリカンのMALDI−TOFスペクトルを示す。これは、1559m/zにおいて優勢なピーク[y](このピークは、テトラアンテナN−グリカン構造に対応する)および1355m/zにおける第二ピーク[u](これは、トリアンテナN−グリカン構造GlcNAc3Man3GlcNAc2に対応する)(比較のために、GlcNAc2Man3GlcNAc2を生成するYSH−44において発現されるクリングル3タンパク質から遊離されるN−グリカンのMALDI−TOFスペクトルを示す、図29を参照のこと)。従って、特定の実施形態において、本発明の宿主細胞は、少なくとも40モル%のトリアンテナ構造GlcNAc3Man3GlcNAc2を示すN−グリカンを少なくとも一時的に生成する能力によって、特徴付けられる。好ましくは、本発明の宿主は、少なくとも50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%以上の、GnTVにより触媒されるトリアンテナ構造を生成する。
本発明はまた、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVI「GnTVI」)活性をコードする核酸で形質転換された下等真核生物宿主細胞も提供し、この活性は、オリゴ糖構造のGlcNAcβ1,4(GlcNAcβ1,2)Manα1,6(GlcNAcβ1,4(GlcNAcβ1,2)Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−AsnのManα1,6アーム上での糖残基β(1,4)N−アセチルグルコサミンの転移を触媒する。アクセプター糖(例えば、GlcNAc4Man3GlcNAc2)への、GnT VIによるGlcNAcβ1,4の付加により、いわゆるペンタアンテナN−グリカンが生じる。GlcNAc残基の付加により、オリゴ糖基質上にGlcNAcβ1,4グリコシド残基が形成される。一実施形態において、GnTVI活性をコードする核酸が、ペンタアンテナN−グリカン(例えば、GlcNAc5Man3GlcNAc2)を生成する宿主において発現される。別の実施形態において、GnTVI活性をコードするDNAフラグメント(例えば、図44において示される)を使用して、Gallus gallus由来の触媒的に活性なGnTVIドメインに融合したS.cerevisiae MNN2(s)リーダー(GenBank登録番号NP_009571)を含むプラスミド構築物が、P.pastoris株YSH−44において発現され、それにより、ペンタアンテナN−グリカンGlcNAc5Man3GlcNAc2を生成する。従って、本発明の宿主細胞は、検出可能な部分でペンタアンテナN−グリカン生成するN−グリカンを少なくとも一時的に生成する能力によって、特徴付けられる。
別の実施形態において、GnTIX活性をコードする核酸(例えば、GenBank AN NP_945193)が、宿主細胞において発現され、この宿主細胞において、GNTIVも、GNTVも、GnTVIもない状態で複合グリカンアクセプター基質(例えば、GlcNAc2Man3GlcNAc2)上へのGlcNAc残基の転移をGnTIX活性が触媒する。GnTIX活性をコードする核酸(これは、通常は、脳において独占的に発現されるようである)は、CHOマウス細胞において独特なN結合型オリゴ糖の合成を触媒することが示されている(Rajuら(1998)J Biol Chem 273,14090〜14098)。組換えヒトGnTIXの発現は、GnTV活性を示し、β1,6結合を介してオリゴ糖GlcNAc2Man3GlcNAc2−PAのα1,6結合マンノースアームの6−OH位置へのGlcNAcの転移を触媒し、それに加えて、α1,3結合マンノースアーム上で作用した(J Biol Chem.2003 Oct 31;278(44):43102〜9)。GnTIXは、配列GlcNAcβ1,2−Manα1におけるマンノースの6−OH位置へのGlcNAcの転移を触媒することが可能である。
本発明は、治療目的のために適切な種々の複数のアンテナを有するグリカンを生成するように適合される。同じGlcNAcβ結合を有するグリカンは、そのタンパク質の半減期を増加し得ることが、企図される。従って、本発明は、トリマンノースコアオリゴ糖中間体(例えば、Man3GlcNAc2)上に少なくとも2つのGlcNAC残基を有するN−グリカンを含む、下等真核生物宿主細胞を提供する。一実施形態において、その下等真核生物宿主は、トリマンノースコアオリゴ糖中間体(例えば、Man3GlcNAc2)のManα1,3およびManα1,6アーム上に少なくとも2つのGlcNAcβ1,4残基を含む。別の実施形態において、その下等真核生物宿主細胞は、トリマンノースコアオリゴ糖中間体(例えば、Man3GlcNAc2)のManα1,3およびManα1,6アーム上に少なくとも2つのGlcNAcβ1,6残基を含む。なお別の実施形態において、その下等真核生物宿主細胞は、トリマンノースコアオリゴ糖中間体(例えば、Man3GlcNAc2)のManα1,3およびManα1,6アーム上に少なくとも2つのGlcNAcβ1,2残基を含む。
本発明の好ましい宿主細胞は、下等真核生物細胞(例えば、酵母、単細胞および多細胞または糸状真菌)である。しかしながら、広範な種々の宿主細胞が、本発明の方法で有用であると考えられる。例えば、植物細胞または昆虫細胞は、本発明に従って、ヒト様糖タンパク質を発現するように操作され得る。同様に、本発明の方法を用い、種々の非ヒト哺乳動物宿主細胞を改変して、よりヒト様の、またはそうでなければ改変された糖タンパク質を発現させる得る。当業者が認識するように、(ヒト細胞を含めた)任意の真核生物宿主細胞は、本発明のライブラリーと組み合わせて用いて、1以上のキメラタンパク質を発現させることができ、これは、該タンパク質の活性が修飾され、好ましくは増強される宿主細胞における細胞下位置(例えば、オルガネラ)に標的化される。そのようなタンパク質は、好ましくは、本明細書中で例示したように、タンパク質グリコシル化に関与する酵素であるが、必ずしもそうではない。任意のタンパク質コード配列も、本明細書中に記載された方法を用いて、標的化され得、そして真核生物宿主細胞において修飾された活性について選択され得ることが予測される。
複合N−グリカン合成の形成は、それにより特異的糖残基が除去され、コアオリゴ糖構造に結合される連続的プロセスである。高等真核生物においては、これは、基質を種々のプロセシング酵素に連続的に暴露させることによって達成される。これらの酵素は、全プロセシングカスケード内のそれらの特定の位置に依存して、特異的反応を行う。この「組立てライン」はER、初期ゴルジ、ゴルジ中間嚢および後期ゴルジ、ならびにトランスゴルジネットワークよりなり、全てはその特異的プロセシング環境を持つ。下等真核生物のゴルジおよびERにおいてヒト糖タンパク質のプロセシングを再度創製するには、多数の酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ、ホスファターゼおよびトランスポーター)が発現され、これらのオルガネラへ、好ましくは、それらが、それらの環境ならびに経路における他の酵素に対して最も効率的に機能するような位置に特異的に標的化されなければならない。
DNA配列情報を用い、当業者はGnT活性をコードするDNA分子をクローン化することができる(例えば、実施例3、8、11、15および18)。当業者に周知である標準的な技術を用い、GnTI、GnTII、GnTIII、GnTIVまたはGnTVをコードする(またはその触媒的に活性なフラグメントをコードする)核酸分子を、本明細書中に記載されたように、プロモーター、および本発明の選択された宿主細胞(例えば、Pichia種、Kluyveromyces種およびAspergillus種のような真菌宿主)において転写を駆動することができる他の発現制御配列の転写制御下にある適当な発現ベクターに挿入することができ、従って、これらの哺乳動物GnT酵素の1以上を、ヒト様複合型糖タンパク質の生産のために選択された宿主細胞で活発に発現させることができる(例えば、実施例8、20、および21)。
グリコシルトランスフェラーゼがゴルジにおいて満足して機能するためには、酵素は、新成糖タンパク質に付加される糖部分の高エネルギードナーである適当なヌクレオチド糖の十分な濃度を必要とする。ヒトにおいては、十分な範囲のヌクレオチド糖前駆体(例えば、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UDP−ガラクトースなど)は、一般には、サイトゾルで合成され、ゴルジに輸送され、そこで、それらはグリコシルトランスフェラーゼによってコアオリゴ糖に結合される。
発現S配列タグデータベース(dbEST)における相同性サーチを介して認識された、ヒトUDP−N−アセチルグルコサミントランスポーターのcDNAがクローン化されている(Ishida(1999)J.Biochem.126(1):68−77)。UDP−N−アセチルグルコサミンについての哺乳動物ゴルジ膜トランスポーターは、上記ヌクレオチド糖のゴルジ輸送が欠乏した最近特徴付けられたKluyveromyces lactis変異体のイヌ腎臓細胞(MDCK)由来のcDNAでの表現型修正によってクローン化された(Guillenら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(14):7888−7892)。結果は、哺乳動物ゴルジUDP−GlcNAcトランスポーター遺伝子が、タンパク質が発現されて酵母のゴルジ装置へ機能的に標的化されるために必要な情報の全てを有すること、および非常に異なるアミノ酸配列を持つ2つのタンパク質が、同一ゴルジ膜内の同一溶質を輸送し得ることを示す(Guillenら.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(14):7888−7892)。
ラット肝臓ゴルジ膜GDP−フコーストランスポーターは、PuglielliおよびHirschberg(1999)J.Biol.Chem.274(50):35596−35600)によって同定され、精製されている。対応する遺伝子は同定されていないが、N末端配列決定は、対応する遺伝子に特異的なヌクレオチドプローブの設計で用いることができる。これらのオリゴヌクレオチドはプローブとして用いて、GDP−フコーストランスポーターをコードする遺伝子をクローン化することができる。
2つの異種遺伝子、Schizosaccharomyces pombe由来のα1,2−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1,2 GalT)をコードするgmal2(+)、およびヒトUDP−ガラクトース(UDP−Gal)トランスポーターをコードする(hUGT2)は、ガラクトシル化に必要な細胞内条件を調べるために、S.cerevisiaeにおいて機能的に発現されている。糖タンパク質ガラクトシル化とUDP−ガラクトース輸送活性との間の相関は、α1,2GalTよりはむしろUDP−Galトランスポーターの外因的供給がS.cerevisiaeにおける十分なガラクトシル化についての鍵となる役割を演じたことを示した(Kainuma(1999)Glycobiology 9(2):133−141)。同様に、S.pombe由来のUDP−ガラクトーストランスポーターが、クローニングされた(Segawa(1999)FEBS Letters 451(3):295−298)。
ヒトCMP−シアル酸トランスポーター(hCST)はクローン化され、Lec8 CHO細胞で発現されている(Aoki et al.(1999) J.Biochem.(Tokyo)126(5):940−50; Eckhardt et al.(1997)Eur.J.Biochem.248(1):187−92)。マウスCMP−シアル酸トランスポーターの機能的発現はSaccharomyces cerevisiaeで達成された(Berninsone et al.(1997)J.Biol.Chem.272(19):12616−9)。シアル酸はいくつかの真菌で見出されているが、選択された宿主系が十分なレベルのCMP−シアル酸を供給できるかは明らかでない。シアル酸は培地または、別法として、シアル酸合成に関与する真菌経路いずれかに供給することができ、また宿主ゲノムに組込むこともできる。
糖が糖タンパク質に移動されると、ヌクレオシド二リン酸または一リン酸いずれかが糖ヌクレオチド前駆体から遊離される。一リン酸はアンチポートメカニズムによってヌクレオシド三リン酸糖に代えての交換において直接的に輸出することができるが、ジホスホヌクレオシド(例えば、GDP)はホスファターゼ(例えば、GDPase)によって切断されて、輸出されるに先立ってヌクレオシド一リン酸および無機リン酸塩を生じなければならない。この反応は十分なグリコシル化のために重要であるようである。というのは、S.cerevisiaeに由来するGDPaseはマンノシル化で重要であることが判明しているからである。しかしながら、この酵素はUDPに向けての活性の10%を有するに過ぎない(Berninsone et al.(1994) J.Biol.Chem.269(1):207−211)。下等真核生物は、しばしば、ゴルジにおいてUDP特異的ジホスファターゼ活性を有しない。というのは、それらはゴルジにおける糖タンパク質合成のためにUDP−糖前駆体を利用しないからである。Schizosaccharomyces pombe(ガラクトース残基を(UDP−ガラクトースからの)細胞壁多糖に加える酵母)は、特異的UDPase活性を有することが判明しており、これは、さらに、そのような酵素についての要件を示唆する(Berninsone et al.(1994) J.Biol.Chem.269(1):207−211)。UDPはグリコシルトランスフェラーゼの強力な阻害剤であることが知られており、このグリコシル化副産物の除去は、ゴルジの腔におけるグリコシルトランスフェラーゼ阻害を妨げるのに重要である(Kharataら、(1974)Eur.J.Biochem.44:537−560)。
本発明は、さらに、非ヒト宿主細胞においてヒト様糖タンパク質を生産するための方法を提供し、この方法は、Man5GlcNAc2炭水化物構造の生産のための酵素または複数酵素をコードする1以上の核酸分子を、この細胞に導入する工程を包含する。1つの好ましい実施形態において、Man8GlcNAc2またはMan9GlcNAc2からのMan5GlcNAc2の生産に関与する1以上のマンノシダーゼ活性をコードする核酸分子を宿主に導入する。本発明は、加えて、1以上のグリコシル化酵素または活性をコードする核酸分子を宿主細胞に導入する工程を含む、宿主細胞において改変された糖タンパク質を作製する方法に関する。好ましい酵素活性はUDP−GlcNAcトランスフェラーゼ、UDP−ガラクトシルトランスフェラーゼ、GDP−フコシルトランスフェラーゼ、CMP−シアリルトランスフェラーゼ、UDP−GlcNAcトランスポーター、UDP−ガラクトーストランスポーター、GDP−フコーストランスポーター、CMP−シアル酸トランスポーター、およびヌクレオチドジホスファターゼよりなる群から選択される。特に好ましい実施形態において、宿主は、1つの活性の産物が別の活性、例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよび対応する糖トランスポーター、例えば、GnTIおよびUDP−GlcNAcトランスポーター活性の基質レベルを増加させる2以上の酵素活性を発現するように選択されるか、または操作される。別の好ましい実施形態において、宿主は、引き続いてのグリコシル化反応を阻害することができる産物を除去する活性、例えば、UDP特異的またはGDP特異的なジホスファターゼ活性を発現するように選択されるかまたは操作される。
本発明の1つの実施形態において、ヒト様糖タンパク質は、標的化細胞下区画において他の酵素のpH最適値と同様なpH最適値を有するように選択されたグリコシル化酵素を細胞の細胞下区画に導入することによって、非−ヒト真核生物宿主細胞において効率的に作製される。例えば、S.cerevisiaeのERおよびゴルジ装置において活性はほとんどの酵素は、約6.5と7.5との間にあるpH最適値を有する(表3参照)。タンパク質のグリコシル化は高度に進化しかつ効果的なプロセスである故に、ERおよびゴルジの内部pHもまた約6〜8の範囲にある。しかしながら、真菌宿主における組換えマンノシダーゼの作用によってマンノシル化を低下させる全ての従前のアプローチは、pH5.0程度のpH最適値を有する酵素を導入している(Martinet et al.(1998) Biotech.Letters 20(12):1171−1177、およびChiba et al.(1998)J.Biol.Chem.273(41):26298−26304)。pH7.0において、それらのマンノシダーゼのインビトロ決定活性はそれらの使用点、すなわち、N−グリカン上でのMan5GlcNAc2の効果的なインビボ生産のための、ERおよび初期ゴルジにおいて不十分な活性であるような10%未満まで低下される。
本発明のある種の方法は、好ましくは(必ずしも必要ではないが)、1以上の核酸ライブラリーを用いて行われる。本発明のコンビナトリアル核酸ライブラリーの例示的特徴は、それが、細胞標的化シグナルペプチドをコードする配列、および標的化すべきタンパク質(例えば、限定されるものではないが、グリコシル化を媒介するものを含めた酵素またはその触媒ドメイン)をコードする配列を含むことである。
融合構築物のコンビナトリアルDNAライブラリーは、一般に、(例えば、C末端欠失を作製することによって)天然タンパク質のN末端ドメインに由来する1以上の細胞標的シグナルペプチド(「標的化ペプチド」)を特徴とする。しかしながら、いくつかの標的化ペプチドは、天然タンパク質(例えば、SEC12)のC末端に由来する。ERまたはゴルジの膜結合タンパク質は、好ましくは、ペプチド配列を標的化するための源として用いられる。これらのタンパク質は、長さが変化する、サイトゾルテイル(ct)、膜貫通ドメイン(tmd)およびステム領域(sr)をコードする配列を有する。これらの領域はタンパク質配列整列および公知のホモログおよび/または他の局在化されたタンパク質との比較(例えば、疎水性プロットの比較)によって認識可能である。
いくつかの場合において、本発明のコンビナトリアル核酸ライブラリーは存在する遺伝子または野生型遺伝子から直接構築することができる。好ましい実施形態において、上記DNAライブラリーは、2以上のサブライブラリーの融合から構築される。サブライブラリーのインフレーム連結によって、有用な標的化されたタンパク質ドメイン(例えば、グリコシル化活性を有するもの)をコードする非常に多数の新規な遺伝子構築物を創製することが、可能である。
1つの有用なサブライブラリーは、グリコシダーゼ(例えば、マンノシダーゼ)、グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ)、GlcNAcトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼのような酵素をコードするDNA配列を含む。触媒ドメインは、操作されるべき宿主から、ならびに他の関連する生物または関連しない生物から選択され得る。哺乳類酵素、植物酵素、昆虫酵素、爬虫類酵素、藻類酵素または真菌酵素は、全て有用であり、これは、最適温度および最適pHに関して広いスペクトルの生化学特性を示すように選択されるべきである。好ましい実施形態において、遺伝子を切断し、そのいくつかがその酵素の触媒ドメインをコードするフラグメントを得る。内因性標的化配列を除去することによって、次いで、それらの酵素を再度方向付けし、他の細胞遺伝子座で発現させ得る。
別の有用なサブライブラリーは、ER、ゴルジ、またはトランスゴルジネットワーク内の特定の位置へのタンパク質の局在化をもたらす標的化シグナルペプチドをコードする、核酸配列を含む。これらの標的化ペプチドは、操作されるべき宿主生物から、ならびに他の関連する生物または関連しない生物から、選択され得る。一般に、そのような配列は、3つのカテゴリー:(1)一緒にかまたは個々に、タンパク質をゴルジの内膜(腔膜)に係留させる、サイトゾルテイル(ct)、膜貫通ドメイン(tmd)、およびステム領域(sr)の一部またはステム領域の全てをコードする、N末端配列;(2)HDELテトラペプチド(配列番号41)またはKDELテトラペプチド(配列番号42)のようなC末端で一般に見出される検索シグナル;および(3)ゴルジ中に局在化することが知られている種々のタンパク質(例えば、ヌクレオチド糖トランスポーター)由来の膜貫通領域;に分類される。
好ましいコンビナトリアルDNAライブラリーの構築が、図2に模式的に示され、実施例4に記載される。その融合構築物は、多数のベクター(例えば、当該分野で周知の発現ベクター)に作動可能に連結され得る。種々のそのような融合構築物が、表6に示したような代表的な活性を用いて組立てられた。標的化ペプチド/触媒ドメインの組合せは、本発明に従って、ER、ゴルジおよびトランスゴルジネットワークにおいて、標的化マンノシダーゼ活性、グリコシルトランスフェラーゼ活性およびグリコシダーゼ活性で用いるために組み立てられ得る。驚くべきことに、同じ触媒ドメインは、用いる標的化ペプチドのタイプに応じ、N−グリコシル化パターンに対する多大な影響に対して何の影響も有さないものであり得る(例えば、表7、実施例4)。
本発明のコンビナトリアルDNAライブラリーに由来するマンノシダーゼ融合構築物の代表的な例は、pFB8であり、これは、マウスα−マンノシダーゼIA(Genbank AN 6678787)の187N末端アミノ酸除去物に対してインフレーム連結した短縮型Saccharomyces SEC12(m)標的化ペプチド(SwissProt P11655からのSEC12の988〜1296ヌクレオチド)を有する。従って、本明細書中で用いる命名法は、グリコシル化酵素の標的化ペプチド/触媒ドメイン領域を、Saccharomyces SEC12(m)/マウスマンノシダーゼIAΔ187と呼ぶ。コードされた融合タンパク質は、そのマンノシダーゼ触媒ドメイン活性を保持しつつ、SEC12標的化ペプチド配列によってERに局在化し、Man5GlcNAc2構造を有するN−グリカンをインビボで生成可能である(実施例4;図6Fおよび7B)。
同様に、グリコシルトランスフェラーゼコンビナトリアルDNAライブラリーが、本発明の方法を用いて生成された。グリコシルトランスフェラーゼI(GnTI)活性に由来する配列のコンビナトリアルDNAライブラリーが、標的化ペプチドを用いて組み立てられ、マーカー糖タンパク質上でのGlcNAcMan5GlcNAc2N−グリカン構造の下等真核生物宿主細胞における効率的な生成についてスクリーニングされた。GlcNAcMan5GlcNAc2(Saccharomyces MNN9(s)/ヒトGnTI Δ38)を生じることが示された融合構築物(pPB104)、が同定された(実施例8)。多種多様なそのようなGnTI融合構築物を構築した(実施例8、表10)。標的化ペプチド/GnTI触媒ドメインの他の組合せは、コンビナトリアルDNAライブラリーを生成することによって容易に組み立て得る。また、グリコシルトランスフェラーゼ活性を示す他のそのような融合構築物は、実施例8に示すように生成され得ることが、当業者にとって明らかである。本明細書中に記載されたコンビナトリアルDNAライブラリー方法を用いて、特定の発現ベクターおよび宿主細胞系において選択された融合構築物を用い、GlnNAcMan5GlcNAc2生成を最適化することは、当業者にとって慣用的実験である。
本発明の方法およびライブラリーを用いて宿主細胞のグリコシル化を改変する別の例において、レポータータンパク質(K3)を発現するOCH1欠失を持つP.pastoris株を、本発明のコンビナトリアルライブラリーから単離された多重融合構築物で形質転換して、高マンノースN−グリカンをヒト様N−グリカンに変換した(実施例8)。まず、マンノシダーゼ融合構築物pFB8(Saccharomyces SEC12(m)/マウスマンノシダーゼIAΔ187)を、1,6開始マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くP.pastoris株(すなわち、och1欠失;実施例1)に形質転換した。第二に、UDP−GlcNAcトランスポーターをコードするK.lactis MNN2−2遺伝子(Genbank AN AF106080)を含むpPB103を構築して、GlcNAcMan5GlcNAc2のさらなる生成を増加させた。UDP−GlcNAcトランスポーターの付加は、図10Bに示すように、P.pastoris株においてGlcNAcMan5GlcNAc2の生成を有意に増加させた。第3に、Saccharomyces MNN9(s)/ヒトGnTI Δ38を含むpPB104を、この株に導入した。このP.pastoris株を「PBP−3」という(図36参照)。
好ましい例において、そのような標的化ペプチド/触媒ドメインライブラリーは、高等真核生物において、グリコシル化反応の連続的性質についての既存の情報を組み込むように設計される。糖タンパク質プロセシングの間に初期に起こることが公知の反応は、そのような反応を触媒する酵素をゴルジまたはERの初期部分に標的化する工程を必要とする。例えば、マンノシダーゼによるMan8GlcNAc2のMan5GlcNAc2へのトリミングは、複合N−グリカン形成における初期の工程である(図1Bおよび35A)。タンパク質プロセシングはERで開始され、次いで、初期ゴルジ、内側ゴルジおよび後期ゴルジを通じて進行するので、この反応はERまたは初期ゴルジで生じさせることが望ましい。従ってマンノシダーゼI局在化のためのライブラリーを設計する場合、例えば、ERおよび初期ゴルジ標的化シグナルをマンノシダーゼIの触媒ドメインと対応させるよう試みられる。
この実施形態の方法は、宿主中に形質転換された核酸(例えば、DNAライブラリー)が非常に多様な配列を含み、それにより、少なくとも1つの形質転換体が、望まれる表現型を示す確率を増加させる場合に、最も効果的である。単一アミノ酸変異は、例えば、糖タンパク質プロセシング酵素の活性を劇的に改変し得る(Romeroら(2000))。従って、形質転換に先立ち、DNAライブラリーまたは構成サブライブラリーが、1つ以上の技術に供されて、さらなる配列多様性が生成され得る。例えば、1回以上の遺伝子シャッフリング、エラープローンPCR、インビトロ変異誘発、または配列多様性を生じるための他の方法が、融合構築物のプール内により多様性の配列を得るために実施され得る。
上記したオープンリーディングフレーム配列に加えて、発現制御配列(例えば、プロモーター、転写ターミネーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、および宿主生物への融合構築物の形質転換に際して、融合タンパク質の効果的な転写および翻訳を確保する必要であり得るような他の機能的配列)を持つ各ライブラリー構築物を提供することが、一般には好ましい。
少なくとも1つの選択マーカー(薬物耐性を付与するためまたは宿主代謝障害を補完するための遺伝子)を、各構築物に提供することもまた、好ましい。そのマーカーの存在は、形質転換体のその後の選択において有用である。例えば、酵母においては、URA3遺伝子、HIS4遺伝子、SUC2遺伝子、G418遺伝子、BLA遺伝子、またはSH BLE遺伝子が、使用され得る。多数の選択マーカーが、公知であり、そして酵母宿主細胞、真菌宿主細胞、植物宿主細胞、昆虫宿主細胞、哺乳動物宿主細胞および他の真核生物宿主細胞で用いるために利用可能である。
次いで、上記核酸ライブラリーが、宿主生物中に形質転換される。酵母においては、DNA移入のための任意の簡便な方法(例えば、エレクトロポレーション、塩化リチウム法、またはスフェロプラスト法)が、使用され得る。繊維状真菌細胞および植物細胞において、従来の方法としては、粒子ボンバードメント(bombardment)、エレクトロポレーションおよびアグロバクテリウム媒介形質転換が挙げられる。高密度培養(例えば、酵母における発酵)に適した安定な株を生成するために、上記DNAライブラリー構築物を、宿主染色体中に組込むことが、望ましい。好ましい実施形態において、組込みは、当該分野で周知の技術を用いて、相同組換えを介して生じる。例えば、DNAライブラリーのエレメントに、宿主生物の配列に対して相同な隣接配列を設ける。このようにして、組込みは、所望される遺伝子も必須遺伝子も破壊することなく、宿主ゲノムにおいて規定された部位で起こる。
DNAライブラリーを用いて宿主株を形質転換した後、所望のグリコシル化表現型を示す形質転換体が、選択される。選択は、単一工程で、または種々のアッセイもしくは検出方法のいずれかを用いる一連の表現型の富化および/または除去工程によって行われ得る。表現型特徴付けは、手動により、または自動高スループットスクリーニング機器を用いて、行なわれ得る。通常、宿主微生物は、種々の糖タンパク質が局在化される細胞表面上にタンパク質N−グリカンを提示する。
この遺伝子工学の試みの1つの最終的な目標は、産業的醗酵プロセスにおいて首尾よく実行し得る頑強なタンパク質生産株であるので、宿主(例えば、真菌)染色体への複数遺伝子の組込みは、好ましくは、注意深い設計を含む。操作された株は、ある範囲の異なる遺伝子で形質転換されなければならないようであり、これらの遺伝子は、安定に形質転換されて、所望の活性が醗酵プロセスを介して維持されることを確実としなければならないであろう。本明細書中に記載されたように、種々の所望の酵素活性(例えば、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシダーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、GlcNAcトランスフェラーゼ、ERおよびゴルジ特異的トランスポーター(例えば、UDP−ガラクトースおよび他の前駆体についてのsynおよび交互輸送トランスポーター)、オリゴ糖のプロセシングに関与する他の酵素、およびUDP−ガラクトース、CMP−N−アセチルノイラミン酸のような活性化されたオリゴ糖前駆体の合成に関与する酵素)のいずれかの組合せを真菌タンパク質発現宿主中に作製し得る。Pichia pastorisのような下等真核生物宿主細胞においてグリコシル化を改変するための好ましい方法の例を表6に示す。
(表6.下等真核微生物におけるグリコシル化を改変するためのいくつかの好ましい実施形態)
本明細書中に記載された方法は、糖タンパク質、特に、ヒトにおいて治療的に用いられる糖タンパク質を生成するのに有用である。特異的グリコ形態を有する糖タンパク質は、例えば、治療タンパク質の標的化において特に有用であり得る。例えば、マンノース−6−リン酸は、タンパク質を、少数を挙げればゴーシェ病、ハンター病、フルラー病、シャイエ病、ファブリー病およびテイ−サックス病のようなリソソーム貯蔵障害に関連する数種の酵素の適切な機能に必須であり得るリソソームに指向することが示されている。同様に、グリカン側鎖への1以上のシアリン酸残基の付加は、投与後に、インビボで治療糖タンパク質の寿命を増大させ得る。従って、宿主細胞(例えば、下等真核生物または哺乳動物)は、細胞中で発現された糖タンパク質における末端シアリン酸の程度を増加させるように遺伝的に操作され得る。あるいは、シアリン酸は、シアリン酸トランスフェラーゼおよび適切な基質を用いて投与の前に、インビトロで目的のタンパク質に結合され得る。増殖培地組成における変化を、ヒト様グリコシル化に関与する酵素活性の発現に加えて使用して、ヒト形態により密接に似ている糖タンパク質を生成し得る(Weikertら、(1999)Nature Biotechnology 17,1116−1121;Wernerら、(1998)Arzneimittelforschung 48(8):870−880;YangおよびButler(2000)Biotechnol.Bioengin.68(4):370−380)。モノクローナル抗体への特異的グリカン修飾(例えば、二分されたGlcNAcの付加)は、抗体依存性細胞傷害性を改良することが示されており(Umanaら、(1999)Nat.Biotechnoil.17(2):176−80)、これは、抗体または他の治療タンパク質の生成に望ましくあり得る。
N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIおよびアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIによるGlcNAcMan3GlcNAc2構造へのN−アセチルグルコサミン残基の付加は、いわゆる二分型N−グリカンであるGlcNAc3Man3GlcNAc2を生じる(図15)。この構造は、より大きな抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に関与していた(Umanaら(1999)Nat.Biotechnol.17(2):176−80)。哺乳類細胞により発現される免疫グロブリンのグリコ形態の再操作は、単調として進まず、かつ煩わしい仕事である。特にGnTIIIの場合(この酵素の過剰発現が増殖阻害に関与している場合)、調節された(誘導性の)遺伝子発現を含む方法が、二分型N−グリカンを有する免疫グロブリンを生成するために使用されなければならなかった(Umanaら(1999)Biotechnol Bioeng.65(5):542−9;Umanaら(1999)Nat.Biotechnol.17(2):176−80;Umanaら WO03/011878;米国特許第6,602,684号)。
テトラアンテナ構造の合成は、種々のタンパク質(例えば、EPOおよびα1−酸性糖タンパク質)のインビボでの生物学的活性にとって重要であることが見出されている。Takeuchiら、Proc Natl Acad Sci USA 1989 Oct;86(20):7819〜22;Borisら、Inflammation(199014,315〜323。薬物動態研究によって、テトラアンテナ分岐の嵩高い構造は、EPOが尿中へろ過されるのを防ぐことが示された。タンパク質を、例えば、化学結合体(例えば、ポリエチレングリコール)で改変すると、潜在的な治療糖タンパク質のクリアランスを遅らせることが考案された。従って、一実施形態において、本発明は、下等真核生物(P.pastoris)において複数のアンテナ構造を含む糖タンパク質を合成するための方法を提供し、この糖タンパク質は、より良好なインビボの生物学的活性を有し、そして減少したアンテナを有する同じ糖タンパク質よりも迅速には排泄されない。本質的には、本発明の方法に従って生成される糖タンパク質(また、本明細書中に援用されるWO02/00879およびWO03/056914を参照のこと)は、治療効力を改善している。
(P.pastorisにおけるOCH1遺伝子のクローニングおよび破壊)
(P.pastorisのOCH1変異体の作製)
P.pastoris OCH1配列(日本国特許出願公開番号8−336387号)に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド
を用いて、推定α−1,6マンノシルトランスフェラーゼをコードするP.pastoris OCH1遺伝子の1215bp ORFを、P.pastorisゲノムDNA(X−33株、Invitrogen、Carlsbad、CA)から増幅した。その後、OCH1遺伝子における内部オリゴヌクレオチド
(Man5GlcNAc2含有IFN−β前駆体を生成するためのP.pastorisのα―1,2−マンノシダーゼを用いた操作)
α−1,2−マンノシダーゼは、Man8GlcNAc2をトリミングして、複合N−グリカン形成のための必須の中間体であるMan5GlcNAc2を得るのに必要である。Man5GlcNAc2前駆体の生成は必須であるが、それは、ハイブリッドおよび複合体グリカンの生成に必ずしも十分ではない。なぜなら、Man5GlcNAc2の特異的異性体は、GnTIについての基質であってもなくてもよいからである。P.pastorisのoch1変異体は、aoxプロモーターの制御下で分泌されるヒトインターフェロンβを発現するように操作される。DNAライブラリーは、ヒトマンノシダーゼIB(α−1,2−マンノシダーゼ)の触媒ドメインと、初期ゴルジおよびER局在化ペプチドをコードする配列を含むサブ−ライブラリーとのインフレーム連結によって構築される。次いで、DNAライブラリーを宿主生物に形質転換し、その結果、個々の形質転換体が各々、インターフェロンβならびにライブラリーからの合成マンノシダーゼ遺伝子を発現する遺伝的に混合された集団が生じる。個々の形質転換体コロニーを培養し、インターフェロンの生成をメタノールの添加によって誘導する。これらの条件下で、分泌されたタンパク質の90%より多くはグリコシル化インターフェロンβである。
(ヒト様糖タンパク質の生成のためのα−1,2−マンノシダーゼ、GnTIおよびGnTIIを発現するoch1変異体株の作製)
P.pastoris OHC1遺伝子の1215bpのオープンリーディングフレームならびに2685bp上流および1175bp下流をPCRによって増幅し(WO 02/00879も参照のこと)、pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen)にクローン化し、これをpBK9と命名した。複数の栄養要求性マーカーを含むoch1ノックアウト株を作製するために、100μgのpJN329、SfiI制限部位が隣接したoch1::URA3変異体対立遺伝子を含むプラスミドをSfiIで消化し、これを用いて、エレクトロポレーションによって、P.pastoris株JC308(Cereghinoら、Gene 263(2001)159−169)を形質転換した。室温における10日間の、ウラシルを欠く規定された培地上でのインキュベーションに続き、1000のコロニーを選択し、再度画線培養した。37℃では増殖できないが、室温では増殖したURA+クローンをコロニーPCRに供して、och1::URA3変異体対立遺伝子の正しい組込みについて試験した。予測されたPCRパターンを呈した1つのクローンをYJN153と命名した。ヒトプラスミノーゲン(K3)のクリングル3ドメインをモデルタンパク質として用いた。K3遺伝子を含むNeoRでマークしたプラスミドを株YJN153に形質転換し、K3を発現する得られた株をBK64−1と命名した。
MOPS、カコジル酸ナトリウム、塩化マンガン、UDP−ガラクトースおよびCMP−N−アセチルノイラミン酸は、Sigma製であった。トリフルオロ酢酸(TFA)は、Sigma/Aldrich,Saint Louis,MO製であった。Spodoptera frugiperda由来の組換えラットα2,6−シアリルトランスフェラーゼ、および牛乳由来のβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは、Calbiochem(San Diego,CA)製であった。タンパク質N−グリコシダーゼF、マンノシダーゼ、およびオリゴ糖は、Glyko(San Rafael,CA)製であった。DEAE ToyoPearl樹脂は、TosoHaas製であった。金属キレート化「HisBind」樹脂は、Novagen(Madison,WI)製であった。96ウェル溶解−清浄化プレートは、Promega(Madison,WI)製であった。タンパク質結合96ウェルプレートは、Millipore(Bedford,MA)製であった。塩および緩衝剤は、Sigma(St.Louis,MO)製であった。MALDIマトリックスは、Aldrich(Milwaukee,WI)製であった。
クリングル(Kringle)3を、96ウェル形式で、Beckman BioMek 2000サンプル取り扱いロボット(Beckman/Coulter Ranch Cucamonga,CA)で精製した。Kringle 3を、C末端ヘキサヒスチジンタグを使用して、発現培地から精製した。このロボットによる精製は、Novagenによって、そのHisBind樹脂について提供されるプロトコルの適合である。簡単に言えば、150uL(μL)の沈降した体積の樹脂を、96ウェルの溶解−結合プレートのウェルに注ぎ、3倍体積の水で洗浄し、そして5倍体積の50mM NiSO4を充填し、そして3倍体積の結合緩衝液(5mMイミダゾール、0.5M NaCl、20mM Tris−HCL(pH7.9))で洗浄する。このタンパク質発現培地を、3:2で、培地/PBS(60mM PO4,16mM KCl、822mM NaCl(pH7.4))で希釈し、そしてカラムに充填する。排液後、このカラムを、10倍体積の結合緩衝液および6倍体積の洗浄緩衝液(30mMイミダゾール、0.5mM NaCl、20mM Tris−HCl(pH7.9))で洗浄し、そしてタンパク質を、6倍体積の溶出緩衝液(1Mイミダゾール、0.5M NaCl、20mM Tris−HCl(pH7.9))で溶出する。溶出した糖タンパク質を、凍結乾燥によって、蒸発乾固させる。
グリカンを、以前に報告された方法(Papacら、A.J.S.(1998)Glycobiology 8,445−454)の改変によって、糖タンパク質から遊離させ、そして分離する。96ウェルのMultiScreen IP(Immobilon−P膜)プレート(Millipore)のウェルを、100uLのメタノールで湿らせ、3×150uLの水および50uLのRCM緩衝液(8M尿素、360mM Tris,3.2mM EDTA(pH8.6))で洗浄し、各添加後に、穏やかな減圧で排液する。乾燥したタンパク質サンプルを、30uLのRCM緩衝液に溶解し、そして10uLのRCM緩衝液を含むウェルに移す。これらのウェルを排液し、そしてRCM緩衝液で2回洗浄する。RCM緩衝液中60uLの0.1M DTTの添加によって、37℃で1時間、タンパク質を還元する。これらのウェルを、300uLの水で3回洗浄し、そして60uLの0.1Mヨード酢酸の添加によって、室温で暗所で30分間カルボキシメチル化する。これらのウェルを、水で再度3回洗浄し、そしてその膜を、水中1%のPVP 360(100uL)の添加によって、室温で1時間ブロックする。これらのウェルを排液し、そして300uLの水で3回洗浄し、そして1ミリ単位のN−グリカナーゼ(Glyko)を含有する10mM NH4HCO3(pH8.3)の30μLの添加によって、脱グリコシル化する。37℃で16時間後、このグリカンを含有する溶液を遠心分離によって除去し、そして蒸発乾固させた。
グリカンの分子量を、Voyager DE PRO線形MALDI−TOF(Applied Biosciences)質量分析計を使用して、遅延抽出を用いて決定した。各ウェルからの乾燥したグリカンを、15uLの水に溶解し、そして0.5uLをステンレス鋼サンプルプレート上にスポットし、そして0.5uLのS−DHBマトリックス(1:1の水/アセトニトリル0.1%TFA中9mg/mLのジヒドロキシ安息香酸、1mg/mLの5−メトキシサリチル酸)と混合し、そして乾燥させた。
(コンビナトリアルDNAライブラリーを用いる優勢なN−グリカン構造としてのMan5GlcNAc2を生成するためのP.pastorisの操作)
誘導性AOXIプロモーターの制御下で、ヒトプラスミノーゲンのクリングル3ドメイン(K3)のようなタンパク質を発現し、それを分泌するように、P.pastorisのoch1変異体(実施例1および3を参照のこと)を作成した。ヒトプラスミノーゲンのクリングル3ドメイン(K3)をモデルタンパク質として用いた。Pfu turboポリメラーゼ(Strategene,La Jolla,CA)を用いて、K3をコードするDNAフラグメントを増幅し、pPICZαA(Invitrogen,Carlsbad,CA)のEcoRIおよびXbaI部位にクローン化し、C−末端6−Hisタグを得た。K3のN−結合グリコシル化効率を改良する(Hayesら、1975 J.Arch.Biochem.Biophys.171,651−655)ために、部位特異的変異誘発を用いてPro46をSer46で置き換えた。得られたプラスミドをpBK64と命名した。PCR構築物の正確な配列を、DNA配列決定によって確認した。
+最高程度のMan5GlcNAc2トリミング(30/51)を有するクローンを、培地の上清中のマンノシダーゼ活性についてさらに分析した。大部分(28/30)は、上清中に検出可能なマンノシダーゼ活性を示した(例えば図4B)。2つの構築物のみが培地中のマンノシダーゼ活性を欠如するが、高いMan5GlcNAc2レベルを示した(例えば、図4C)。
より好ましい構築物である、pBC18−5(80アミノ酸N−末端欠失を有するC.elegansマンノシダーゼIB(Saccharomyces Van1(s)/C.elegansマンノシダーゼIB Δ80)(Genbank AN CAA98114)にインフレーム連結したS.cerevisiae VAN1(s)標的化ペプチド配列(SwissProt23642由来))、を示す。この融合構築物はまた、図5Eに示すように、優勢なMan5GlcNAc2構造を生成する。この構築物は、50%を超えるMan5GlcNAc2を生成することが示された(+++++)。
標的化ペプチドに融合したα−1,2−マンノシダーゼ触媒ドメインのコンビナトリアルDNAライブラリーの作製は、多数の生物からの種々の長さのN−末端欠失を含むマンノシダーゼドメインの増幅を必要とした。この目的にアプローチするために、α−1,2−マンノシダーゼの全長オープンリーディングフレーム(ORF)を、以下の源:Homo sapiens,Mus musculus.Drosophila melanogaster,Caenorhabditis elegans、Aspergillus nidulansおよびPenicillium citrinumから得られたcDNAまたはゲノムDNAのいずれかからPCR増幅した。各場合において、PCR反応を行うのに必要な試薬に加え、所望のマンノシダーゼ配列に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの存在下でDNAをインキュベートした。例えば、M.musculus α−1,2−マンノシダーゼIAのORFを増幅するために、5’−プライマー
プラスミド構築における最初の工程は、ノックアウトすべき遺伝子の5’および3’領域についてのスペースホールダー(space holder)としての、P.pastoris(Boehmら、Yeast 1999年5月;15(7):563−72)のKEX1遺伝子のDNA領域を含むユニバーサルプラスミドの組を作製する工程を包含した。プラスミドはまた、栄養要求性マーカーについてのスペースホールダーとしてのS.cerevisiae Ura−ブラスター(Alaniら(1987)、Genetics 116,541−545)、および外来性遺伝子の挿入用の多重クローニング部位を有する発現カセットを含んだ。P.pastoris KEX1−5’領域の0.9kbのフラグメントは、プライマー
P.pastorisゲノムへのマンノシダーゼ構築物の組込みを確認するためにコロニーPCRによってスクリーニングした陽性形質転換体(実施例4)を、1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、1.34%酵母窒素ベース、4×10−5%ビオチン、および1%グリセロールよりなる増殖培地としての50mlのBMGY緩衝化メタノール−複合培地中で、室温にて、引き続いてOD600nm2−6まで増殖し、その時点で、5mlのBMMY中での室温での24時間のレポータータンパク質の誘導に先立ち、10mlのBMMY(増殖培地としての1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、1.34%酵母窒素ベース、4×10−5ビオチン、および1.5%メタノールよりなる緩衝化メタノール−複合培地)で洗浄した。その結果、レポータータンパク質を単離し、実施例3に記載される通りに分析して、そのグリカン構造を特徴付けた。表6中の標的化ペプチドを用い、ERまたはゴルジいずれかに局在化されたマンノシダーゼ触媒ドメインは、Man5GlcNAc2を主に含有するグリカンに対してMan8GlcNAc2を主に含有するグリカンのトリミングのかなりのレベルを示した。これは、レポーター糖タンパク質のグリカン構造を、図5Cおよび6CにおけるP.pastoris och1ノックアウトのそれと、図5D、5E、6D〜6Fに示したM.musculusマンノシダーゼ構築物で形質転換された同株との間で比較する場合で明らかである。図5および6は、P.pastirisにおいて有意なマンノシダーゼ活性を示すコンビナトリアルDNAライブラリーから創製された構築物の発現を示す。pGC5(Saccharomyces MNS1(m)/マウスマンノシダーゼIBΔ99(図5Dおよび6E)の発現は、Man5GlcNAc2にトリミングされた全てのグリカンのほぼ30%を有するタンパク質を生じ、他方、pF8(Saccharomyces SEC12(m)/マウスマンノシダーゼIAΔ187)(図6F)の発現はほぼ50%のMan5GlcNAc2を生じ、pBC18−5(Saccharomyces VAN1(s)/C.elegansマンノシダーゼIBΔ80)(図5E)の発現は70%のMan5GlcNAc2を生じた。
(α−1,2−マンノシダーゼによるインビボでのトリミング)
実施例4の新規な操作された株が、事実、インビボにて所望のMan5GlcNAc2構造を生じたことを確実にするために、細胞上澄みをマンノシダーゼ活性につきテストした(図7〜9を参照のこと)。後記した各構築物/宿主株については、HPLCを1.0ml/分の流量にて、Altechの4.0mm×250mmカラム(Avondale,PA,USA) Econosil−NH2樹脂(5μm)を用いて30℃にて40分間行った。図7および8において、標準的なMan9GlcNAc2[b]の分解は、Man8GlcNAc2に対応するピークを生じるように起こることが示された。図7において、Man9GlcNAc2[b]標準は24.61分で溶出し、Man5GlcNAc2[a]は18.59分で溶出した。図8において、Man9GlcNAc2は21.37分で溶出し、Man5GlcNAc2は15.67分で溶出した。図9において、標準Man8GlcNAc2[b]は20.88分で溶出することが示された。
(操作されたα−1,2−マンノシダーゼのpH最適アッセイ)
プラスミドpBB27−2((SwissProt50108からの)Saccharomyces MNN10(s)/C.elegansマンノシダーゼIB Δ31)を含むP.pastoris細胞を室温にてBMGY中でOD600=約17まで増殖させた。これらの細胞の約80μLを600μLのBMGY中に接種し、一晩増殖させた。引き続いて、細胞を遠心分離によって収穫し、BMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下のK3(ヒトプラスミノーゲンからのクリングル3)の生産を誘導した。24時間のインキュベーションの後、細胞を遠心分離によって除去して、実質的に透明な上澄(pH6.43)を得た。上澄をマンノシダーゼpH最適アッセイのために取り出した。蛍光標識Man8GlcNAc2(0.5μg)を、種々のpHに調整された20μLの上澄に加え(図11)、室温にて8時間インキュベートした。インキュベーションの後、Econosil NH2 4.6×250mm、5ミクロンビーズ、アミノ−結合シリカカラム(Altech,Avondane,PA)を用いるHPLCによって試料を分析した。流量は40分間で1.0ml/分であり、カラムを30℃に維持した。3分間のイソクラフィック溶出(68%A:32%B)の後、直線溶媒勾配(68%A:32%B〜40%A:60%B)を27分間にわたって使用して、グリカン(18)を溶出させた。溶媒A(アセトニトリル)および溶媒B(ギ酸アンモニウム、50mM、pH4.5)。カラムを実施している(run)間の20分間、溶媒(68%A:32%B)で平衡化した。
(構造GlcNAcMan5GlcNAc2を持つN−グリカンを生産するためのP.pastorisの操作)
GlcNAcトランスフェラーゼI活性は、複合N−グリカンおよびハイブリッドN−グリカンの成熟化に必要である(米国特許第5,834,251号)。Man5GlcNAc2は単にマンノシダーゼIIによってトリミングされ得、これは、GlcNAcトランスフェラーゼIによるN−アセチルグルコサミンの、トリマンノースステムの末端α−1,3マンノース残基への付加の後における、ヒトグリコ形態の形成に必要な工程である(Schachter, 1991 Glycobiology 1(5):453−461)。従って、C.elegansおよびHomo sapiensからのGlcNAcトランスフェラーゼI遺伝子の適切に標的化された触媒ドメインと;KTRホモログであるS.cerevisiae:D2、D9およびJ3からの相同性に基づき、S.cerevisiaeおよびP.pastorisの推定α−1,2−マンノシルトランスフェラーゼからのGLS、MNS、SEC、MNN9、VAN1、ANP1、HOC1、MNN10、MNN11、MNT1、KTR1、KTR2、MNN2、MNN5、YUR1、MNN1、およびMNN6からの局在化配列とをコードするDNAフラグメントを含むコンビナトリアルDNAライブラリーを調製した。表10は、限定されるものではないが、P.pastorisおよびK.lauctis GnTIからのSECおよびOCH1のような標的化ペプチド配列を含む(表6および表10参照)。
K3は、Beckman BioMek 2000試料−取扱ロボットにて96ウェルフォーマットを用いてNiアフィニティークロマトグラフィーにより、培地から精製した。ロボット精製は、そのHisBind樹脂についてNovagenによって供されたプロトコルの適合であった。別のスクリーニング方法は、特異的末端GlcNAc結合抗体または末端GlcNAcに結合するレクチン(例えば、Griffonia simplificolia由来のGSIIレクチン)(EY Laboratories,San Mateo,CA)を使用して行われ得る。これらのスクリーニングは、FITCのような蛍光標識で改変されたレクチンまたは抗体を使用することによって自動化し得るか、あるいはMALDI−TOFによって分析され得る。
K3を発現するP.pastoris株(Δoch1、arg−、ade−、his−)を、順次、以下のベクターで形質転換した。まず、pFB8(Saccharomyces SEC12(m)/マウスマンノシダーゼIA Δ187)を、エレクトロポレーションによって、P.pastoris株において形質転換した。第二に、BamHI酵素およびBglII酵素で消化されたpBLADX−SXプラスミド(Cereghinoら(2001),Gene 263159−169)にクローン化された(UDP−GlcNAcトランスポーターをコードする)Kluyveromyces lactis MNN2−2遺伝子(Genbank AN AF106080)を含有するpPB103を、P.pastoris株において形質転換した。第三に、NotI−PacIフラグメントとしてpJN336にクローン化された遺伝子をコードするSaccharomyces MNN9(s)/ヒトGnTI Δ38を含むpPB104を、P.pastoris株に形質転換した。
(構造Man5GlcNAc2を持つN−グリカンを生産するためのK.lactis細胞の操作)
(K.lactis OCH1遺伝子の同定および破壊)
出芽酵母S.cerevisiaeのOCH1遺伝子は、分泌されたタンパク質上のMan8GlcNAc2N−グリカン構造への第一のゴルジ局在化マンノース付加を担う1,6−マンノシルトランスフェラーゼをコードする(Nakanishi−Shindoら(1993),J.Biol.Chem.;268(35):26338−45)。このマンノース転移は、一般には、N−グリカン構造の真菌特異的ポリマンノシル化における鍵となる最初の工程として認識される(Nakanishi−Shindoら(1993)J.Biol.Chem.268(35):26338−26345;Nakayamaら(1992)EMBO J.11(7):2511−19;Morin−Ganetら,Traffic 1(1):56−68)。S.cerevisiaeにおけるこの遺伝子の欠失の結果、かなり短いN−グリカン構造がもたらされ、これは、高温におけるこの典型的なポリマンノシル化も増殖欠損も含まない(Nakayamaら(1992) EMBO J.11(7):2511−9)。
S.cerevisiae MNN1は、ゴルジα−1,3−マンノシルトランスフェラーゼについての構造遺伝子である。MNN1の産物は、762アミノ酸タイプII膜タンパク質である(Yipら(1994),Proc Natl Acad Sci USA.91(7):2723−7)。mnn1変異体から単離されたN結合オリゴ糖およびO結合オリゴ糖双方はα−1,3−マンノース結合を欠く(Raschkeら(1973),J Biol Chem.,248(13):4660−6)。
(P.pastorisおよびK.lactisにおけるALG3遺伝子の同定、クローニングおよび欠失)
縮重プライマーを、S.cerevisiaeに由来するAlg3タンパク質配列、H.sapiensに由来するAlg3タンパク質配列、およびD.melanogasterに由来するAlg3タンパク質配列のアラインメントに基づいて作製し、これを用いて、P.pastorisゲノムDNAから83bp生成物を増幅した:
S.cerevisiaeに由来するALG3p配列、Drosophila melanogasterに由来するALG3p配列、Homo sapiensなどに由来するALG3p配列を、K.lactis配列と整列させた(PENDANT ESTデータベース)。共通するホモログに存在するが、そのホモログとは正確な配列においては異なる高い相同性の領域を使用して、K.lactis株MG1/2(Bianchiら,1987)に由来するゲノムDNAに対する1対の縮重プライマーを作製した。ALG3の場合、プライマーKAL−1
(ヒト様糖タンパク質の生成のためのα−1,2−マンノシダーゼ、GnTIおよびGnTIIを発現する、alg3 och1変異株の生成)
P.pastoris alg3::KANR欠失構築物を、実施例10に記載のように生成した。約5μgの得られたPCR生成物を、株PBP−3(実施例3を参照のこと)に形質転換し、コロニーを、200μg/ml G418を含むYPD培地で選択した。PCRによってスクリーニングした20株のうちの1株が、そのalg3::KANR変異対立遺伝子の正確な組み込みを含み、野生型対立遺伝子を欠いていることを、確認した。この株を、RDP27(図36)と名付けた。
S.cerevisiae MNN9遺伝子のN末端部分と融合したヒトGnTI遺伝子を含むGnTI発現ベクター(pNA15)の構築は、Choiら(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(9):5022−27に記載される。同様の様式において、ラットGnTII遺伝子をクローニングした。そのラットGnTII遺伝子(GenBank登録番号U21662)を、Takara EX TaqTMポリメラーゼ(Panvera)を用いて、ラット肝臓cDNAライブラリー(Clontech)から以下のプライマー:RAT1
(抗体機能性を高める二分しているGlcNAcを生成するためのGnTIIIのクローニングおよび発現)
N−アセチルグルコサミンをGlcNAc2Man3GlcNAc2構造へN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIにより付加することにより、いわゆる二分型N−グリカンが生じる(図15を参照のこと)。この構造は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に大きく関与していた(Umanaら(1999)Nat.Biotechnol.17(2):176−80)。
TMドメインを欠いているマウスGnTIIIタンパク質の部分をコードするDNAフラグメントを、マウス(または他の哺乳動物)のゲノムDNAから、順方向プライマー
抗体の可変領域のクローニングのためのプロトコル(プライマー配列を含む)は、以前に公開されている。抗体源およびコード遺伝子は、とりわけ、インビトロで免疫されたヒトB細胞(例えば、Borrebackら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3995−3999を参照のこと)、末梢血リンパ球または単一のヒトB細胞(例えば、Lagerkvistら(1995)Biotechniques 18:862−869;およびTernessら(1997)Hum.Immunol.56:17−27を参照のこと)およびヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックマウス(これは、ハイブリドーマ細胞株の作製を可能にする)であり得る。
(酵母株YSH−1(Δoch1,α1,2−マンノシダーゼ,GnTI)の生成)
以前に報告されたP.pastoris株BK64(Choiら(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100(9):5022−7)(OCH1ノックアウトを有し、ヒトプラスミノゲンのクリングル3ドメイン(K3)を発現する三重栄養要求株(ADE、ARG、HIS))を、宿主株として使用した。BK64を、制限酵素EcoNIで線状にしたプラスミドpPB103で形質転換して、K.lactis UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーターを宿主細胞に導入し、このようにして、株PBP−1を作製した。マウスMnsIを、制限酵素EcoNIで線状にしたプラスミドpFB8で形質転換することによってこの株に導入し、株PEP−2を生成した。株PBP−2から単離されたタンパク質のK3グリカン分析により、存在する主な糖形態がMan5GlcNAc2であることが実証された。
(酵母株YSH−37(P.pastoris発現マンノシダーゼII)の作製)
YSH−1(実施例13)を、制限酵素ApaIで線状化したD.melanogasterマンノシダーゼIIΔ74/S.cerevisiae MNN2(s)プラスミド(pKD53)で形質転換し、株YSH−37(図36)を作製した。YSH−37において産生されたK3グリカン構造の分析(図25(下))は、1140m/zにおいて支配的な糖形態が、GlcNAcMan3GlcNAc2[b]の質量に対応すること、ならびに1303m/zにおける他の糖形態GlcNAcMan4GlcNAc2[c]、および1465m/zにおけるGlcNAcMan5GlcNAc2[d]を示した。
(酵母株YSH−44の作製)
株YSH−37(実施例14)を、制限酵素EcoRIで線状化したラットGnTII/MNN2(s)リーダーをコードするプラスミド(pTC53)で形質転換した。得られた株のYSH−44(図36)は、ポジティブモードのMALDI−TOF質量分析によって1356m/z(これは、GlcNAc2Man3GlcNAc2[x]の質量に対応する)における単一の糖形態を有する、K3 N−グリカンを産生した(図29)。
YSH−44由来のグリカンを、糖タンパク質から、以前に報告された方法(Papacら.A.J.S.(1998)Glycobiology 8,445−454)の改変によって、遊離させ、そして分離した。これらのタンパク質を還元し、そしてカルボキシメチル化し、そしてその膜をブロックした後に、ウェルを水で3回洗浄した。このタンパク質を、1ミリ単位のN−グリカナーゼを含有する10mMのNH4HCO3(pH8.3)(Glyko,Novato,CA)(30μl)の添加によって、脱グリコシル化した。37℃で16時間の消化後、このグリカンを含有する溶液を遠心分離によって除去し、そして蒸発乾固させた。次いで、これらのグリカンを、aSC210A speed vac(Thermo Savant,Halbrook,NY)で乾燥させた。この乾燥させたグリカンを、37℃で50mM NH4Ac(pH5.0)中に一晩置き、そして1mUのヘキソース(hexos)(Glyco,Novato,CA)を添加した。
(プラスミドpJN 348の構築)
プラスミドpBLURA−SX(Jim Creggから)を、BamHIおよびBglIIで消化して、AOX発現カセットを遊離した。次いで、pJN261由来のGAPDH/CYC1発現カセットを含有するBamHIフラグメント(図4B)(実施例4)を、pBLURA−SX骨格に連結して、pJN338を作製した。プラスミドpJN338を、NotIおよびPacIで切断し、そしてインビトロでアニーリングされた2つのオリゴヌクレオチド
(組込みプラスミドpRCD259の構築)
GAPDH発現ベクターpJN348を含有するPpURA3を、XhoIで線状化し、そしてT4 DNAポリメラーゼで平滑化し、そしてウシ腸ホスファターゼ(CIP)で処理した。HYG耐性マーカーを、pAG32から、BgIIIおよびSacIで消化し、そして平滑化し、次いで、pJN348に連結して、pRCD259を作製した。このpRCD259は、PpURA3遺伝子座において組み込むHYG発現ベクターとして使用され得る。
(GnTIII融合構築物の作製)
哺乳動物GnTIIIと酵母標的化配列との間の融合構築物を、マウスMgat3遺伝子(GenBank登録番号L39373、Bhaumikら、1995)を使用して作製した。マウスGnTIII遺伝子のN末端決質Δ32、Δ86、およびΔ212に対応する3つのDNAフラグメントを、Pfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)を使用して、順方向プライマーMG3−B
(二分型GlcNAc2Man5GlcNAc2を生成するためのP.pastorisの操作)
GlcNAcMan5GlcNAc2を生成するP.pastoris株(PBP−3)(実施例8を参照のこと)を、5−FOAに対して対比選択し、それにより、URA3+マーカーおよびura3−表現型の遺伝子座について選択する。この株(YSH−1と名付けた(図36))を、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)触媒ドメインのライブラリー(ベクターpVA、pVB、およびpVC)ならびにリーダーで形質転換した。形質転換体を、BMGY中で、OD600=約10になるまで30℃で増殖させ、遠心分離によって採取し、BMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下で、K3(ヒトプラスミノゲンのクリングル3)の生成を誘導した。K3を、96ウェル形式を利用して、Beckman BioMek 2000実験ロボットでNi−アフィニティークロマトグラフィーによって培地から精製した。そのロボット精製は、Novagenによって提供される、彼らのHisBind樹脂についてのプロトコルの適合形である(実施例3)。そのN−グリカンを、PNGase消化によって遊離させた(実施例3)。N−グリカンを、MALDI−TOF MS(実施例3)で分析した。そのGnTIII活性を、表11に示す。(+)の数は、本明細書で用いられる場合、中性グリカン%のうちの二分型N−グリカン生成の相対レベルを示す。標的化ペプチド配列を、以下からなる群より選択した:Saccharomyces GLS1、Saccharomyces MNS1、Saccharomyces SEC12、Picha OCH1、Saccharomyces MNN9、Saccharomyces VAN1、Saccharomyces ANP1、Saccharomyces HOC1、Saccharomyces MNN10、Saccharomyces MNN11、Saccharomyces MNT1、Pichia D2、Pichia D9、Pichia J3、Saccharornyces KTR1、Saccharomyces KTR2、Kluyveromyces GnTI、Saccharomyces MNN2、Saccharomyces MNN5、Saccharornyces YUR1、Saccharomyces MNN1、およびSaccharomyces MNN6。二分しているGlcNAc(例えば、GlcNAc2Man5GlcNAc2)を示すそのpVA53形質転換体を、PBP26と名付けた(図36)。
(二分型GlcNAc3Man3GlcNAc2を生成するためのP.pastoris YSH−44の操作)
株YSH−44におけるGnTIIIの発現のために(図36)、ベクターpVA53、pVB53、pVA54、およびpVB54からのGnTIII構築物を、NotI−PacIフラグメントとしてpRCD259に移して、ベクターpPB135、pPB137、pPB136、およびpPB138を作製した。そのベクターは、HYG耐性マーカーおよびP.pastoris URA3遺伝子を、ゲノム組み込みのための標的化タンパク質として含む。プラスミドをSalIで線状にし、株YSH−44にエレクトロポレーションによって形質転換し、ハイグロマイシンを含む培地で選択し、得られた株を、精製K3から遊離されたグリカンの分析によりスクリーニングする。形質転換体を、BMGY中、OD600=約10になるまで24℃で増殖させ、遠心分離によって採取し、BMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下で、K3(ヒトプラスミノゲンのクリングル3)の生成を誘導した。K3を、96ウェル形式を利用して、Beckman BioMek 2000実験ロボットでNi−アフィニティークロマトグラフィーによって培地から精製した(実施例3)。そのロボット精製は、Novagenによって提供される、彼らのHisBind樹脂についてのプロトコルの適合形である(実施例3)。そのN−グリカンを、PNGase消化によって遊離させた(実施例3)。N−グリカンを、MALDI−TOF MSで分析した(実施例3)。二分しているGlcNAc(例えば、GlcNAc2Man5GlcNAc2)を示すpPB135形質転換体を、YSH−57と名付けた(図36)。表11は、マウスGnTIIIの活性を示す。
(二分型GlcNAc3Man3GlcNAc2を生成するためのP.pastoris PBP6−5の操作)
そのP.pastoris PBP6−5(実施例11)を、S.cerevisiae MNN2に由来する標的化ペプチドにインフレームで連結したマウスGnTIII触媒ドメイン(A32)をコードするプラスミドpPB135(表11)で形質転換した。形質転換体を、BMGY中で、OD600が約10になるまで30℃で増殖させた。細胞を遠心分離によって採取し、BMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下で、K3(ヒトプラスミノゲンのクリングル3)の生成を誘導した。K3を、96ウェル形式を利用して、Beckman BioMek 2000実験ロボットでNi−アフィニティークロマトグラフィーによって培地から精製した。そのロボット精製は、Novagenによって提供される、彼らのHisBind樹脂についてのプロトコルの適合形である(実施例3)。そのN−グリカンを、PNGase消化によって遊離させた(実施例3)。二分しているGlcNAc(例えば、GlcNAc2Man3GlcNAc2)を示す形質転換体を、PBP−38と名付けた(図36)。表11は、マウスGnTIIIの活性を示す。
(操作されたP.pastoris株YSH−57において基質GlcNAcMan5GlcNAc2を使用する、インビトロGnTIII活性のアッセイ)
P.pastoris株YSH−57におけるあらゆる潜在的なエキソビボGnTIII活性を試験するために、細胞培養上清を、GnTIII活性について試験した。P.pastoris YSH−57細胞を、BMGY中で24℃でOD600=約10まで増殖させた。細胞を遠心分離によって採取し、そしてBMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下で、K3(ヒトプラスミノーゲン由来のクリングル3)の産生を誘導した。24時間の誘導後、細胞を遠心分離によって回収して、本質的に透明な上清を得た。この上清のアリコートを、GnTIIIアッセイのために取り出し、そして残りを、分泌された可溶性K3の回収のために使用した。K3を、Beckman BioMek 2000実験室ロボットでの96ウェル形式を利用するNiアフィニティークロマトグラフィーによって、培地から精製した。このロボットによる精製は、Nobagenによって、そのHisBind樹脂に対して提供されるプロトコルの適合形である(実施例3)。これらのN−グリカンを、PNGase消化(実施例3)によって遊離させた。先に取り出した上清のアリコートを、分泌されたGnTIII活性の存在について、さらに試験した。PBP−3株において発現されたK3から精製されたGlcNAcMan5GlcNAc2を、以下に添加した:BMMY(A);BMMY中の1mM UDP−GlcNAc(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO))(B);pVA53で形質転換したYSH−44[YSH−57]の上清(C);YSH−57の上清+1mM UDP−GlcNAc;(D)。室温で8時間のインキュベーション後、サンプルを、アミノシリカHPLCによって分析して、GnTIII活性の程度を決定した。
(操作されたP.pastoris株YSH−57における、基質GlcNAc2Man3GlcNAc2を用いるインビトロGnTIII活性アッセイ)
P.pastoris株YSH−57におけるあらゆる潜在的なエキソビボGnTIII活性を試験するために、細胞培養上清を、GnTIII活性について試験した。P.pastoris YSH−57細胞を、BMGY中で24℃でOD600=約10まで増殖させた。細胞を遠心分離によって採取し、そしてBMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下で、K3(ヒトプラスミノーゲン由来のクリングル3)の産生を誘導した。24時間の誘導後、細胞を遠心分離によって回収して、本質的に透明な上清を得た。この上清のアリコートを、GnTIIIアッセイのために取り出し、そして残りを、分泌された可溶性K3の回収のために使用した。K3を、Beckman BioMek 2000実験室ロボットでの96ウェル形式を利用するNiアフィニティークロマトグラフィーによって、培地から精製した。このロボットによる精製は、Nobagenによって、そのHisBind樹脂に対して提供されるプロトコルの適合形である(実施例3)。これらのN−グリカンを、PNGase消化(実施例3)によって遊離させた。先に取り出した上清のアリコートを、分泌されたGnTIII活性の存在について、さらに試験した。YSH−44株において発現されたK3から精製されたGlcNAc2Man3GlcNAc2を、以下に添加した:BMMY(A);BMMY中の1mM UDP−GlcNAc(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO))(B);pVA53で形質転換したYSH−44[YSH−57]の上清(C)。室温で8時間のインキュベーション後、サンプルを、アミノシリカHPLCによって分析して、GnTIII活性の程度を決定した。
(P.pastorisにおけるGnTIVのクローニングおよび発現)
ヒトGnTIVタンパク質アイソエンザイムA(MGAT4A)の、TMドメインを欠く部分をコードするDNAフラグメントを、ヒトcDNAから、順方向プライマーHGIV−2
(トリアンテナグリカン構造を生成するP.pastoris)
複合グリカン構造を生成するP.pastoris YSH−44株(実施例15)を、S.cerevisiae MNN2(s)[ヌクレオチド1〜108]標的化ペプチドにインフレームで連結されたヒトGnTIVB触媒ドメイン(Δ104)をコードする遺伝子フラグメントを含むプラスミドpPB144(表12)で形質転換した。プラスミドpPB144はまた、HYG耐性マーカーと、ゲノム組み込みのための標的化配列としてのP.pastoris URA3遺伝子とを含む。1μgプラスミドを、SalIを用いて線状化し、エレクトロポレーションによって株YSH−44中に形質転換し、ハイグロマイシンを含む培地上で選択した。生じた株を、精製K3から遊離されたグリカンの分析によってスクリーニングした。形質転換体を、BMGY中で30℃にてOD600=約100まで増殖させ、遠心分離によって収集し、そしてBMMYに移して、AOX1プロモーターの制御下でのK3(ヒトプラスミノゲン由来のクリングル3)の生成を誘導した。K3を、Beckman BioMek 2000実験室ロボットにて96ウェル形式を使用するNiアフィニティクロマトグラフィーによって、培地から精製した。このロボット精製は、そのHisBand樹脂についてNovagenによって提供されるプロトコル(実施例3)の適合形である。そのN−グリカンを、PNGアーゼ消化(実施例3)によって遊離させた。そのN−グリカンを、MALDI−TOF MS(実施例3)を用いて分析した。オリゴ糖(例えば、GlcNAc2Man3GlcNAc2)のManα1,3アーム上へのGlcNAc残基の転移を示す形質転換体を、PBP43(図47)と名付けた。N−グリカンの分析により、1543m/zにおける優勢なピーク[y]が提供され、これは、グリカンGlcNAc3Man3GlcNAc2の質量と一致する。
(P.pastorisにおけるGnTVのクローニングおよび発現)
TMドメインを欠くマウスGnTVタンパク質の一部(MGAT45)をコードするDNAフラグメントを、順方向MGV−2プライマー
(GnTVを発現するP.pastoris)
複合グリカン構造を生成するP.pastoris YSH−44株(実施例15)を、S.cerevisiae MNN2(s)に由来する標的化ペプチドにインフレームで連結されたマウスGnTV触媒ドメイン(Δ45)をコードする遺伝子フラグメントを含むプラスミドpPB140(表12)で形質転換した。培養条件は、実施例25と同じであった。2つの形質転換体由来のK3レポータータンパク質を、MALDI−TOFを使用して分析した。1559m/zにおけるピーク[y]は、グリカンGlcNAc3Man3GlcNAc2の質量と一致する(図48)。1355m/zにおけるピーク[u]は、グリカンGlcNAc2Man3GlcNAc2の質量と一致する。
(糖タンパク質上でテトラアンテナ構造を生成するためのP.pastoris)
テトラグリカン構造(例えば、GlcNAc3Man3GlcNAc2)を生成するP.pastoris PBP43株(実施例25)を、マウスGnTVをコードするプラスミドpPB140(図40B)で形質転換した。このベクターpPB140は、KAN耐性マーカーと、ゲノム組み込みのための標的化配列としてのP.pastoris HIS3遺伝子とを含む。1μgのプラスミドを、KpnIを用いて線状化し、エレクトロポレーションによって株PBP43中に形質転換し、カナマイシンを含む培地上で選択した。生じた株を、精製K3から遊離されたグリカンの分析によってスクリーニングした。培養条件は、実施例25と同じであった。MALDI−TOFによるK3レポータータンパク質の分析は、1747m/zにおける優勢なピーク[z]を示した。これは、テトラアンテナグリカンGlcNAc4Man3GlcNAc2の質量と一致する(図49)。生じたグリカンのヘキソサミニダーゼ消化(実施例15参照)によって、Man3GlcNAc2に対応するピークの質量が示された(データは示さない)。
(P.pastorisにおけるGnTIXのクローニングおよび発現)
ヒトGnTIX(AB109185.1)の核酸配列およびアミノ酸配列が、図45に示される。TMドメインを欠く(Δ43)ヒトGnTIXの一部をコードするコドンを最適化したDNAフラグメントを、PCRを使用してオリゴヌクレオチドから合成した(図46)。GnTIX触媒ドメインをコードするDNAフラグメントを、S.cerevisiae MNN2(s)に由来する標的化ペプチドにインフレームで連結した。生じたプラスミドpPB176(図40C)を、KpnIを用いて線状化し、P.pastoris YSH−44株(実施例15)中に形質転換して、複合テトラアンテナグリカン構造を生成した。培養条件は、実施例25と同じであった。形質転換体由来のK3レポータータンパク質を、MALDI−TOF MSを使用して分析した。
Claims (51)
- 下等真核生物宿主細胞中で糖タンパク質を生成するためのプロセスであって、
該細胞中に、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV活性、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV活性、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVI活性、およびN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIX活性からなる群より選択されるN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性を導入する工程、
を包含し、該糖タンパク質は、トリマンノースコア上に少なくとも3つのアンテナを含む、プロセス。 - 下等真核生物宿主細胞中で糖タンパク質を生成するためのプロセスであって、
該細胞において、GlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−Asn構造、GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNacβ1,4−GlcNAcβ1,4−Asn構造;およびGlcNAcβ1,6GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−Asn構造を含む、複数のアンテナを有するN−グリカンを生成する1つ以上の酵素活性を発現させる工程、
を包含する、プロセス。 - 請求項1または2に記載のプロセスであって、前記活性は、実質的に細胞内活性である、プロセス。
- 請求項1または2に記載のプロセスであって、前記宿主細胞から前記糖タンパク質を単離する工程をさらに包含する、プロセス。
- 請求項1または2に記載のプロセスであって、前記宿主細胞は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minutia、Ogataea minuta、Pichia lindneri、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、およびNeurospora crassaからなる群より選択される、プロセス。
- 請求項5に記載のプロセスであって、前記宿主細胞は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minutia、Ogataea minuta、Pichia lindneri、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、およびPichia sp.からなる群より選択される、プロセス。
- 請求項6に記載のプロセスであって、前記宿主細胞は、Pichia pastorisである、プロセス。
- 請求項1または2に記載のプロセスであって、前記糖タンパク質は、治療タンパク質である、プロセス。
- 請求項8に記載のプロセスであって、前記治療タンパク質は、ヒトプラミノゲンのクリングルドメイン、エリスロポエチン、サイトカイン、凝固因子、可溶性IgEレセプターα鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、インターロイキン、ウロキナーゼ、カイメース、尿素トリプシンインヒビター、IGF結合タンパク質、上皮増殖因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、脈管内皮増殖因子2、骨髄前駆体阻害因子1、オステオプロテゲリン、α1アンチトリプシン、DNアーゼII、α−フェトタンパク質、FSH、およびペプチドホルモンからなる群より選択される、プロセス。
- 下等真核生物宿主細胞であって、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV活性、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV活性、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVI活性、またはN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIX活性を含む、宿主細胞。
- 下等真核生物宿主細胞であって、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV活性およびN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV活性を含む、宿主細胞。
- 請求項10または11に記載の宿主細胞であって、前記活性は、実質的に細胞内活性である、宿主細胞。
- 請求項10または11に記載の宿主細胞であって、該細胞は、GnT IV活性、GnT V活性、またはGnT VI活性と反応可能であるGlcNAc2Man3GlcNAc2構造を含むN−グリカンを生成する、宿主細胞。
- 下等真核生物宿主細胞であって、Man3GlcNAc2オリゴ糖上に少なくとも3つのGlcNAcを含むN−グリカンを含む、宿主細胞。
- 請求項14に記載の宿主細胞であって、前記N−グリカンは、少なくとも50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%以上のトリアンテナグリカンを含む、宿主細胞。
- 請求項14に記載の宿主細胞であって、前記N−グリカンは、少なくとも70モル%、80モル%、90モル%以上のトリアンテナグリカンを含む、宿主細胞。
- 下等真核生物宿主細胞であって、GlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−Asn構造、GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNacβ1,4−GlcNAcβ1,4−Asn構造;およびGlcNAcβ1,6GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2−Manα1,6(GlcNAcβ1,4GlcNAcβ1,2Manα1,3)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1,4−Asn構造を含む、複数のアンテナを有するN−グリカンを含む、宿主細胞。
- 請求項10、11、14、または17に記載の宿主細胞であって、該宿主細胞は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minutia、Ogataea minuta、Pichia lindneri、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、およびNeurospora crassaからなる群より選択される、宿主細胞。
- 請求項18に記載の宿主細胞であって、該宿主細胞は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minutia、Ogataea minuta、Pichia lindneri、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、およびPichia sp.からなる群より選択される、宿主細胞。
- 請求項19に記載の宿主細胞であって、該宿主細胞は、Pichia pastorisである、宿主細胞。
- 下等真核生物宿主細胞であって、GlcNAcβ1,4トランスフェラーゼもしくはGlcNAcβ1,6トランスフェラーゼによって改変された、トリマンノースコア(GlcNAc2Man3GlcNAc2)構造もしくはMan5コア構造(GlcNacMan5GlcNAc2)を含む、宿主細胞。
- 請求項21に記載の宿主細胞であって、該細胞は、70モル%を超える前記改変型構造を生成する、宿主細胞。
- 請求項21に記載の宿主細胞であって、該細胞は、90モル%を超える前記改変型構造を生成する、宿主細胞。
- 下等真核生物宿主細胞であって、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI活性およびN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIV活性を含む、宿主細胞。
- 請求項24に記載の宿主細胞であって、前記活性は、実質的に細胞内活性である、宿主細胞。
- 請求項24に記載の宿主細胞であって、該細胞は、GnT V活性、GnT VI活性、またはGnT IX活性と反応可能であるGlcNAc2Man3GlcNAc2を含むN−グリカンを生成する、宿主細胞。
- 請求項24に記載の宿主細胞であって、前記N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ活性は、複数のアンテナを有するグリカンを生成する、宿主細胞。
- 下等真核生物宿主細胞であって、GnT IV活性、GnT V活性、GnT VI活性またはGnT IX活性と、マンノシダーゼII活性とを含む、宿主細胞。
- 請求項28に記載の宿主細胞であって、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI活性をさらに含む、宿主細胞。
- 請求項29に記載の宿主細胞であって、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII活性をさらに含む、宿主細胞。
- 請求項28に記載の宿主細胞であって、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI活性およびN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII活性をさらに含む、宿主細胞。
- 請求項10、11、24、または28のうちのいずれか1項に記載の宿主細胞であって、1,6マンノシルトランスフェラーゼ活性が欠損している、宿主細胞。
- 請求項10、11、24、または28のうちのいずれか1項に記載の宿主細胞であって、Dol−P−Man:Man5GlcNac2−PP−Dolマンノシルトランスフェラーゼ活性が欠損している、宿主細胞。
- 請求項10、11、24、または28のうちのいずれか1項に記載の宿主細胞であって、α−1,2−マンノシダーゼI活性をさらに含む、宿主細胞。
- 請求項10、11、24、または28のうちのいずれか1項に記載の宿主細胞であって、UDP−GlcNAcトランスポーターをさらに含む、宿主細胞。
- 請求項1に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 請求項2に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 請求項5に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 請求項6に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 請求項7に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 請求項8に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 請求項9に記載のプロセスによって生成される糖タンパク質。
- 糖タンパク質であって、下等真核生物宿主細胞において生成されたGlcNAc2Man3GlcNAc2コア構造上に、少なくとも3つのGlcNAcβ1,4残基または少なくとも3つのGlcNAcβ1,6残基を含む、糖タンパク質。
- 糖タンパク質であって、下等真核生物宿主細胞において生成された基質GlcNAc2Man3GlcNAc2コア構造、基質GlcNAc3Man3GlcNAc2コア構造、基質GlcNAcMan3GlcNAc2コア構造、基質Man3GlcNAc2コア構造、基質GlcNAcMan5GlcNAc2コア構造、または基質Man5GlcNAc2コア構造のManα1,3アームもしくはManα1,6アームのうちのいずれかに結合している、GlcNAcβ1,4残基を含む、糖タンパク質。
- 請求項44に記載の糖タンパク質であって、前記コア構造のうちの70モル%より多くが、GnT IVによって改変されている、糖タンパク質。
- 請求項44に記載の糖タンパク質であって、前記コア構造のうちの50モル%より多くが、GnT Vによって改変されている、糖タンパク質。
- 請求項36〜46のうちのいずれか1項に記載の糖タンパク質を含む、薬学的組成物。
- 下等真核生物宿主においてGnT IV活性、GnT V活性、GnT VI活性、GnT IX活性を発現可能である、ベクター。
- 下等真核生物宿主細胞であって、トリマンノースコアオリゴ糖中間体のManα1,3アームまたはMan1,6アームのいずれかにて少なくとも2つのGlcNAc残基を有するN−グリカンを含む、宿主細胞。
- 請求項49に記載の下等真核生物宿主細胞であって、前記トリマンノースコアオリゴ糖中間体のManα1,3アームおよびMan1,6アームにて2つのGlcNAcβ1,4残基をさらに含む、宿主細胞。
- 請求項49に記載の下等真核生物宿主細胞であって、前記トリマンノースコアオリゴ糖中間体のManα1,3アームおよびMan1,6アームにて2つのGlcNAcβ1,6残基をさらに含む、宿主細胞。
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