図1は、トランスミッション・ベルハウジング22内のトルクコンバータ・アセンブリ20を概略的に図示している。トルクコンバータ・アセンブリ20は、タービン部24及びインペラ部26を有している。インペラ部26の外壁28は、エンドカバー30に固定されており、エンドカバー30には、この例では、当該技術で公知の方法でフライホイール・フレックス・プレート32が取り付けられている。
エンドカバー30はだいたい平板状であるが、必ずしもエンドカバー30の全面に渡って平坦ではない。例えば、図示したエンドカバー30のノーズパイロット34がエンドカバー30の他の部分に比べて軸方向に延びている。この例では、ノーズパイロット34が成形工程中にエンドカバー30の一部として形成される。後述するように、本発明の実施形態の別の例では、エンドカバー30に固定されている、このカバーとは別個の部品であるノーズパイロットを有する。ノーズパイロット部分は、例えば、エンジンのクランクシャフトと協同する(例えば、ドライブラインの組立中にその2つの部品の位置決めをする)ように従来通り作用する。
エンドカバー30は、好ましくは、トルクコンバータ・アセンブリ20内で支持されているクラッチ42の面40を越えて軸方向に延びない。インペラ部の外壁28は、好ましくは面40を越えて延びており、外壁28の端部はエンドカバー30の対応する部分に固定されている。
図2Aを参照すると、この発明に従って設計された接続構造の一例が示されており、ここでは、外壁28の端部50がエンドカバー30の外側部分52に固定されている。この例では、エンドカバー30の端面53が少なくとも部分的に外壁28の端部50における段部54で支えられている。エンドカバー30及び外壁28を互に相対的に適切に配置したら、これらをレーザ溶接56を用いて溶接する。もちろん、他の溶接技術もこの発明のこの実施形態の例の範囲内である。
この発明の大きな利点は、外壁28とエンドカバー30の間の接続部がタービン部24の近くになく、トルクコンバータ・アセンブリ20内で流体流との干渉(つまり、先行技術における溶接が引き起こした乱流)がないということである。さらに、トランスミッション・ベルハウジング及びインペラ部28の外側との間の径方向の間隔が大きくなっている。これは、コンバータ・アセンブリの半円部においてカバー及びインペラの間を重ね合わせる必要がないからである。発明による構造は、従来構造にあったような半円部での溶接接合をなくす。本発明による構造及び接続技術を利用した場合、トルクコンバータ・アセンブリのハウジングの外側面とベルハウジング22との間で干渉が生じる可能性はなくなる。したがって、この発明で、ベルハウジング22へのトルクコンバータのパッケージングを改善することが可能である(例えば、図1に示した間隔は、可能なものよりも誇張されている)。
本発明によるアセンブリにより、外壁28がエンドカバー30に接合されるところのコーナ半径をより精密なものにすることが可能になる。これは、この発明では、その位置での壁厚を(エンドカバーを軸方向に延びた部分を含むようにフローフォーミングする従来構造に比べて)厚くできるからである。さらに、カバープレートはこれまで実用的だったものよりも厚くすることができる。これは、本発明による構造の比較的平坦なカバープレートが従来構造を作るのに使用されてきた、比較的複雑なフローフォーミング技術を必要としないからである。この発明でカバープレートより厚い材料を使用できるということが、パイロットノーズの近くのトルクコンバータ・ハウジングの望ましくない膨らみに関連してこれまで経験された難点を最小限に抑制する又は解消する。さらに、インペラの外壁28はより薄い材料を使って作ることができ、このことは、この発明に従って設計されたアセンブリに材料及びコストの節減をもたらす。
外壁28をエンドカバー30に固定するための代替構造が図2Bに概略的に図示されている。この例では、外壁28の端部50における延長部58が、エンドカバー30の外側部分52における端面53の周りに変形されている。延長部58を変形した後、延長部はレーザ溶接部56’を用いてエンドカバー30に溶接される。
別の実施形態の例が図2Cに概略的に示されている。この実施形態では、エンドカバー30の外側部分52にはねじ部60があり、このねじ部60はインペラ外壁28の端部50におけるねじ部62と協同する。図示の例では、外側部分52の延長部64が端部50の協同面66(この例では、終端面)に密閉状態で当接している。ねじ部62及び60は、外側部分52における内側面68が端部50の段状面70に同時に当接するように合わせてある。
図2Cの例では、エンドカバー30が外壁28にねじ部60及び62の間のねじ結合を利用して固定されている。一方で面64及び66の間の接触が、また他方で面68及び70の間の接触が、流体をトルクコンバータ・アセンブリ・ハウジング内に保つように、また、汚染物質をハウジングに入れないように密閉する。
この発明は、トルクコンバータ・アセンブリの改造及び周囲部品の選択的変更をできるようにする。例えば、図3Aは、外壁28の端縁72が、端面72周りに形成されているエンドカバー30の部分74に当てて固定されている実施形態を概略的に図示している。この例では、エンドカバー30が56においてインペラ外壁28にレーザ溶接されてもいる。
この例のエンドカバー30は、前の例に示したものに比べて形をいくぶん変えてエンドカバー30の外縁周りに歯面を付けてある。このような歯面は、通常は、図1の例に示したフライホイール・フレックス・プレート32のようなフライホイール・フレックス・プレートに付けられている。この発明では、エンドカバー30を歯面80を含むように変えることができ、このことは、従来のアセンブリにおける1つ以上の部品の機能を統合し、さらなる材料節減、コスト削減、及び省スペース化をもたらす。
図3Bの実施形態の例もエンドカバー30の外縁に歯面80を有している。この例では、エンドカバー30に段部76があり、この段部76は、エンドカバー30をインペラ外壁28に相対的に配置するために、インペラ外壁28の段部78と協同する。レーザ溶接部56がエンドカバー30を外壁28に固定している。
実施形態の他の例が図4に示されている。この実施形態と、前述した実施形態との違いの一つは、エンドカバー30が径方向外側へ広がるフランジ90を有するということである。エンドカバー30の遠位端92は、インペラ部28の最大外寸と比べて、径方向外方へ間隔をおいて配置されている。このフランジ90は、フライホイール・フレックス・プレート32をエンドカバー30に従来構造でのそれより簡単な方法で固定できるようにしており、このことは特定の自動車又はエンジンの形態にとって重要となることがある。図4の例では、従来のボルトのようなねじ付き留め具96を入れるために、開口部94が、エンドカバー30のフランジ90を貫通するように機械加工されている。フライホイール・フレックス・プレート32には、従来の方法で形成されたねじ付き開口部98があり、フライホイール・フレックス・プレートを特定状況下での必要に応じてエンドカバーに固定できるようにしている。
この実施形態は、この発明に従って設計されたトルクコンバータ・ハウジングを使った場合に、より柔軟にドライブライン部品を組み立てられるようにする。この例に従って設計された実施形態は、トルクコンバータの、ハウジングを確立する包囲部分の外側にフライホイール取り付け位置及び面を有している。
図4の実施形態の改良が図5に示されている。この例では、ねじ付き留め具96’が100においてエンドカバー30に溶接されている。
さらに別の例が図6に示されており、ここでは、エンドカバー30のフランジ90に、ねじ部材を入れて、例えばフライホイール・フレックス・プレートを適切に取り付けるためのねじ付き開口部102がある。
図7は、実施形態の別の例を図示しており、ここでは、ねじ部材110が、例えばフライホイール・フレックス・プレートをコンバーターハウジングに対して適切な位置に固定するのに用いられている。この例では、ねじ部材110がエンドカバー30の一部分として一体に形成されている。このような構造は、余計な部品をなくし、ドライブライン組立工程を簡素化するという利点を有する。図7の部分図には一つのねじ部材110しか示していないが、好ましくは、複数のこのようなねじ部材がエンドカバーの縁周りに間隔をおいて配置される。
図8Aから8Cまでは、エンドカバー30の一部として一体に形成されたねじ部材110である留め具を作る一方法を概略的に図示している。図8Aに示すように、エンドカバー30は、例えば従来のプレス工程を用いて作られる。エンドカバー材の外縁には、ほぼ平坦な拡張部110’がある。拡張部110’のかなりの部分が巻かれる又はそれ自身に折り重ねられて、ほぼ円筒形の部分110’’が確立される。この例の円筒形部分には続いて機械加工を施して外周面にねじを付け、ねじ部材110を形成する。図8Cにおいて、ねじ部材110はまだエンドカバー30の面に平行である。この後の成形段階でねじ部材110をエンドカバー30の主面に対してほぼ垂直なアライメントに動かす。ある例では、コネクタを確立するのに用いる材料を実際に円筒体やねじに形成する前に、ねじ部材110を形成するのに用いる材料をほぼ垂直な向きに動かす。この説明から利益を得られる当業者には、図7の実施形態の例に示したような留め具を作るのに、適量の材料をどのように扱うべきか、また、従来の成型技術をどのように利用すべきかが分かるであろう。
再び図4を参照すると、本発明のいくつかの実施形態は独特なパイロット構造を有している。図4の例では、パイロット120は、図1のパイロット34のようにエンドカバー30の一部として形成されているのではない。この例では、パイロット120は、別個の筒形部品であり、エンドカバー30に122において溶接されている。別個の、溶接されたノーズパイロットは、エンドカバー30の構造を簡素にするという利点をもたらす。パイロット120を確立するのに複雑な成形工程を必要とすることなく、エンドカバー30はより厚い材料から作ることができ、このことは、エンドカバーの強度を増大させ、膨らむこと又は変形の可能性を減らす。エンドカバー30は、比較的簡単なプレス操作を用いて作ることができる。図示した例で示したように溶接されたパイロットを使用すると、いくつかのおし型又はプレス装置(stamping station)がなくなり、大きな機械プレス(machine press)の必要が無くなる。このような構造は、従来技術と比べて、いろいろな節約及びコスト削減をもたらす。さらに、補強リブをエンドカバー30の構造に導入して、膨らむ可能性をさらに減らすことができる。
図4の実施形態のもう一つの特徴は、パイロット120に内部中空部124があり、この内部中空部120にエンジンのクランクシャフトの適当な部分が従来の方法で入れることである。エンジンのクランクシャフト及びトルクコンバータ・ハウジングの組み立て中に排気ができるように、少なくとも一つの通気孔126が設けられている。図では、通気孔がパイロット管を貫通している。別の例では、通気用導管がエンドカバーに形成されている。
図4は、カバー30の実施形態の一例における別の特徴を示している。中央部分128が、アセンブリの外側から(つまり、図の左から)見たときに、ほぼ凹状の輪郭を有している。中央部分128は、加圧下にあり、さもなければアセンブリ内の圧力によって生じる外方への(つまり、図面で左方向への)変形を阻止している。
図4の実施形態の例の別の特徴は、平坦な環状部130がインペラ28の頂部に形成されていることである。この平坦な環状部130は、ハウジング部品の正確な測定及び機械加工のための精確な位置決め面を与えるものである。
平坦な環状部130は、同軸の位置合わせを正確に達成されるようにパイロット120をハブ132に対して正確に配置可能にする。ある例では、設置面130が、パイロットをエンドカバー30に溶接する前にパイロット120を位置決めするのに使用される。別の例では、設置面130が、その後にパイロット120を所望の大きさ及び場所に機械加工して所望の位置合わせを達成するのに使用される。本発明による構造は、トルクコンバータ・ハウジングをより正確にバランスさせることを可能にする。これにより、いわゆる「NVH」及びインペラハブ132に対するカバーパイロット120の同心性が改善される。
さらに、インペラ部28の構造により、インペラ部の末端縁と環状部130の反対側のインペラスラスト面134との間の距離を測ることにより、端部間隔が仕様通りかどうか正確に検査することが可能になる。本発明による構造では、エンドカバー30がインペラ部28の端部50に正確に配置されるので、端部間隙を、インペラ部分の内側で機械的な測定器を用いて予め測定することができる。従来技術による構造では、このような端部間隙をトルクコンバータ・ハウジングの内側で正確に測定することは、ハウジングを組み立てるのに使用する部品の性質及び関連する溶接方法から、決してできない。測定器をハウジングの内側にはめてこのような測定を行うことは不可能であった。
図9及び10は、カバー30の実施形態の別の例を示している。この例では、補強リブ200が、そのリブの最も外側の面202がインペラハウジング26の外壁28に接して収まるように形成されている。環状形状リブ200は、例としてあげたエンドカバーの強度をある程度向上させる。これは、環状形状リブ200が、トルクコンバーターのカバーを膨らませる傾向にある外方への力のモーメントを短くするからである。リブ200の湾曲が逆さまなのでエンドカバー30の強度が増し、トルクコンバータ・アセンブリの耐用年数が増す。
図9から最もよく分かるように、この例でのインペラハウジング26の外壁28は、204においてエンドカバー30にレーザ溶接されている。従来のレーザ溶接具206をハウジングの壁28に対して角度Aに配置することによりレーザ溶接部204を確立する。ある例では、角度Aは7°に等しい。この例でのレーザ溶接は、エンドカバー30及び外壁28の材料が溶接部204を確立し、充填材又は他の溶接補助剤が必要ないことから、都合がよいと思われる。
図9及び10に図示した例には、もう一つの補強リング208があり、この補強リング208はリブ200よりカバー30の中央に近い。この例にはフランジ210もあり、フランジ210は外壁28の外側を越えて外方へ伸びている。フランジ210は、いろいろな目的に使用でき、このような使用例の一つは上記に説明され、かつ、図7及び8A−8Cに概略的に示されている。このようなフランジの他の使用例を以下に説明する。
図11を参照すると、図9及び10と比べて変形されたバージョンのエンドカバー30が示されている。この例では、補強部材212が補強部材214と互い違いに配置されている。この例では、図面から分かるように、補強部材は、異なる平面に位置を合わせた面である。補強部材212及び214は、エンドカバー30の剛性をかなり増大させ、膨らもうとするあらゆる傾向をよりいっそう防ぐ。
図12は、他の例を図示しており、ここでは、補強部材216及び218が内側リング208及び外側リブ200の間に広がっている。図13は、もう一つの例を図示しており、ここでは、補強部材212及び214が内側リング208の径方向内側に設けられており、補強部材218及び216が内側リング208及び外側リブ200の間に広がっている。図11−13の各例において、補強部材の各組みは、エンドカバー30の対応する部分の表面積の約50%にわたって広がっている。例えば、図11の実施形態における補強部材212は、カバー30における内側リング208の径方向内側の部分の表面積の50%にわたって広がっている。同様に、補強部材214は、図面に示すように別の平面においてではあるが、その表面積の約50%にわたって広がっている。
図14は、実施形態の別の例を示しており、ここでは、フランジ210に成形部分220があり、この成形部分220は、エンドカバー30全体の平面に対してほぼ垂直な方向に延びている。この例では、環状歯車222がフランジ部分220にレーザ溶接部224を用いて固定されている。この例は、本発明に従って設計されたトルクコンバータ・アセンブリを用いた場合に部品を一体化するもう一つの方法を示すものである。
図15は、実施形態の別の例を図示しており、ここでは、ハウジング26の外壁部分28’が、エンジンの出力部を車のトラスミッションと選択的に連結させるためのクラッチを収容するように改造されている。従来、クラッチは別個のハウジング内に保持されていた。この実施形態では、クラッチをトルクコンバータ・アセンブリに導入できる。図15に示すように、外壁28’には複数のスプライン250があり、この複数のスプライン250は複数の溝252によって間に間隔をおいて配置されている。スプライン250及び溝252は、一般に知られている方法で設計されているクラッチプレートを収容するように配置され、かつ、そのような大きさに作られている。トルクコンバータ・ハウジング26はたいていのクラッチハウジングよりも大きいので、対応するクラッチプレートは、従来のクラッチプレートと同様な構造及び機能を有しながら、寸法がより大きくなる。
この例では、外壁28’の端部254が、エンドカバー30に、前述した例に関連して記載した技術の一つ以上を用いて固定される。ある例では、端部254が、図9に示したのと同様な方法でエンドカバー30にレーザ溶接される。
ある例においてスプライン250に収容されたクラッチプレートは、エンドカバー30及びトルクコンバータのクラッチ部分42の間に配置される。図15に示すように設計されたインペラハウジング26内で所望の位置にクラッチプレートを固定するのに、いろいろな公知技術を使用することができる。
本発明の実施形態のいろいろな例を説明した。本発明の本質から必ずしも逸脱しない、開示した例の変形や部分的変更は当業者にとって明らかであろう。この発明に与えられる法的保護の範囲は、特許請求の範囲を検討することによってのみ定めることができる。