JP2006312426A - エアバッグ装置、エアバッグ装置付鞍乗り型車両 - Google Patents

エアバッグ装置、エアバッグ装置付鞍乗り型車両 Download PDF

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Abstract

【課題】 前方衝突の際の乗員拘束力をより高めることが可能なエアバッグ装置の構成技術、およびその関連技術を提供する。
【解決手段】 自動二輪車に装着されるエアバッグ装置120は、車両の前方衝突の際、展開膨張するエアバッグ122を有する。このエアバッグ122は、その展開膨張時に乗員Rを拘束する拘束面122aを形成するとともに、当該拘束面122aが乗員拘束に際し乗員Rの腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在しながら展開膨張するように構成される。
【選択図】 図5

Description

本発明は、車両に装着されるエアバッグ装置の構築技術に関するものである。
従来、オートバイ等の車両にエアバッグ装置を装着することによって乗員の拘束を図る種々の技術が知られている。例えば、自動二輪車において、前方衝突を起こした際に、車体フレームに取り付けられたケース内に収容されたエアバッグが膨張ガスによって展開膨張し、これにより乗員を拘束するという技術が公知である(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、エアバッグの拘束エリアを広く確保する可能性が提示されているが、オートバイのように乗員の周囲が開放された構成の車両に装着されるエアバッグ装置にあっては、前方衝突の際にエアバッグによって乗員を合理的に拘束するのに有効な技術を構築する要請が高い。
特開2002−137777号公報
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、前方衝突の際の乗員の拘束力をより高めることが可能なエアバッグ装置の構成技術、およびその関連技術を提供することを課題とする。
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、典型的には、各種の鞍乗り型車両に搭載されるエアバッグ装置の構成に適用することができる。なお、本明細書において、車両の典型例である「鞍乗り型車両」は、乗員がシートに跨って着座する形態の車両を広く含むものとし、例えば乗員シートの前方に燃料タンクが併設されたツーリングタイプの自動二輪車、乗員シートとハンドル支持用ヘッドパイプとの間に空間部が形成されたスクータータイプの自動二輪車のいずれも包含する。さらに自動二輪車以外に、三つ以上の走行輪を有しつつ乗員が鞍乗して着座する車両(例えば宅配等に用いられる三輪式バイク、悪路走破用の三輪ないし四輪バギー式バイク)、さらにはスノーモービル等のようにソリないし無限軌道帯によって走行しつつ乗員が鞍乗して着座する車両についても上記「鞍乗り型車両」に広く包含されるものとする。
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりのエアバッグ装置である。
請求項1に記載のエアバッグ装置は、少なくともエアバッグを備えるエアバッグ装置であり、鞍乗り型車両に装着される構成になっている。本発明において、エアバッグ装置は、各構成部材が一体状にモジュール化された状態で鞍乗り型車両に装着される構成であってもよいし、あるいは各構成部材が車両に順次組み込まれることによって構成されてもよい。
本発明のエアバッグは、車両の前方衝突の際、インフレータ等の膨張ガス供給手段によってその内部に膨張ガスが供給されて、乗員の前方側に形成されるエアバッグ展開領域に展開膨張する。典型的には、予め所定の形状に折り畳まれたエアバッグが、展開しつつ膨張する展開膨張動作を行う。展開膨張したエアバッグが拘束面を介して乗員を拘束することによって当該乗員の拘束が図られる。この乗員拘束領域の典型例としては、車両の上下方向に関し乗員の膝部(大腿部)よりも上方であり乗員の胸部よりも下方に形成される腰部周辺の領域がある。
特に、本発明のエアバッグは、その展開膨張時に乗員を拘束する拘束面が、乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在しながら展開膨張する構成になっている。すなわち、本発明では、エアバッグの展開膨張が完了した状態はもとより、当該エアバッグの展開膨張の過程においても当該エアバッグの拘束面が乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在することとなる。そして、車両の前方衝突の際には、乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在するこのエアバッグ拘束面が乗員の被拘束部を拘束する。このような構成のエアバッグは、乗員の被拘束部を拘束するための拘束面を広くとることができるとともに、当該拘束面を速やかに形成することができるという作用効果を奏する。
請求項1の記載の発明のこのような構成によれば、鞍乗り型車両のように乗員の周囲が開放された構成の車両において、車両の前方衝突の際、乗員を拘束するのに有効な拘束面を速やかに形成させて乗員拘束を行うことが可能となる。これにより、乗員の拘束力をより高められる。
なお、本発明において、エアバッグの拘束面は、乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する成分を有することが有効である。従って、エアバッグの拘束面の形状や、エアバッグの拘束面と乗員の被拘束部との相対的な配置関係については種々変更可能である。本発明では、エアバッグの拘束面は、乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って直線状に延在してもよいし、あるいは曲線状に延在してもよい。また、本発明では、エアバッグの拘束面と、乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する延在面とが互いに平行状に延在してもよいし、あるいは交差状に延在してもよい。
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりのエアバッグ装置である。
請求項2に記載のエアバッグ装置では、請求項1に記載のエアバッグは、鞍乗り型車両側に取り付けられるエアバッグ収容体に収容されるとともに、その収容状態において当該エアバッグ収容体(リテーナー)の車両前方側へとロール状に折り畳まれる構成とされる。
請求項2の記載の発明のこのような構成によれば、展開初期の乗員との干渉を極力抑えたうえで、エアバッグを乗員拘束領域に円滑に展開膨張させることが可能となる。
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりのエアバッグ装置である。
請求項3に記載のエアバッグ装置では、請求項1または2に記載のエアバッグは、その拘束面が乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する延在面に対し平行状に延在しながら展開膨張する構成になっている。これにより、エアバッグは、その拘束面が、乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在しながら展開膨張することとなる。
請求項3の記載の発明のこのような構成によれば、エアバッグの拘束面のうち、乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する部位の領域を増やし、乗員の被拘束部を拘束するための拘束面を極力広くとることが可能となる。
(本発明の第4発明)
前記課題を解決する本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりのエアバッグ装置である。
請求項4に記載のエアバッグ装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の構成において、エアバッグが、乗員拘束領域のうち車体の上下方向に関する腰部領域において局所的に展開膨張するように構成されている。ここでいう、「腰部領域」とは、シートに着座した乗員の腰部付近の領域であって、当該乗員の腰部の前方、側方、周囲に形成される領域を広く含む主旨である。このような腰部領域は、乗員拘束領域のうち車体の上下方向(乗員の高さ方向)に関する局所(局部)となる。典型的には、シートに着座した乗員の膝部(ないし大腿部)よりも上方であり乗員の胸部よりも下方に形成される範囲の領域によって腰部領域を規定し、当該腰部領域の範囲内においてエアバッグを展開膨張させることができる。
エアバッグを乗員の膝部よりも上方であって、乗員の胸部よりも下方において展開膨張させることによって、車両の前方衝突の際の乗員の浮き上がりを妨げるのに有効である。すなわち、乗員の膝部よりも上方であり乗員の胸部よりも下方に形成される領域は乗員の重心とほぼ合致するため、少なくとも当該領域においてエアバッグを局所的に展開膨張させることによって、車両衝突時はもちろん車両のピッチング回動時等においても乗員の浮き上がりを極力妨げることに対して有効である。
従って、請求項4に記載の発明によれば、車両の事故の際の乗員の拘束をより効果的に行うことができる。なお、本発明では、乗員の膝部よりも上方であり乗員の胸部よりも下方に形成される腰部領域の境界において上下方向に関する多少のずれは許容する。
(本発明の第5発明)
前記課題を解決する本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりのエアバッグ装置付鞍乗り型車両である。
請求項5に記載のエアバッグ装置付鞍乗り型車両は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエアバッグ装置が装着された鞍乗り型車両として特定される。
従って、請求項5に記載の発明によれば、車両の前方衝突の際、乗員をより効果的に拘束することが可能なエアバッグ装置が搭載された鞍乗り型車両が提供される。
以上のように、本発明によれば、エアバッグの拘束面が、乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在しながら展開膨張するように構成することによって、前方衝突の際の乗員の拘束を効果的に図ることが可能とされる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1および図2を用いて自動二輪車100およびエアバッグ装置120の構成を説明する。ここで、図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車100を側面から視た図であって、自動二輪車100にエアバッグ装置120を搭載した様子を示す。図2は図1中のエアバッグ装置120の構成を示す図である。なお、本実施の形態の自動二輪車100は、本発明における「車両」ないし「鞍乗り型車両」の一例に相当する。
図1に示すように、自動二輪車100は、エンジンやメインフレーム等により構成される車体構成部101、乗員Rが跨って着座可能なシート103、ハンドル104、前輪111および後輪112等を主体とする、いわゆるツーリングタイプのオートバイとして構成される。
自動二輪車100の車体構成部101上方であって、乗員Rの前方側領域は、自動二輪車100が前方衝突を起こした際の乗員拘束領域130として規定される。本実施の形態において「前方衝突」には、自動二輪車100が前方側の衝突対象物(便宜上得に図示しない)に衝突する形態を広く包含する。また、本実施の形態における「乗員拘束領域130」は、本発明における「乗員拘束領域」に対応する領域であり、前方衝突時の運動エネルギーによって乗員Rが自動二輪車100前方に向かって移動しようとする場合に、乗員Rの前方移動方向上に延在し、自動二輪車100の前方に移動しようとする乗員Rを拘束するための空間として定義される。
車体構成部101のうち車体の前方側のフロント部102には、ヘッドライト、各種のメーター類、スイッチ類等が設けられており、当該フロント部102の後方に配置された燃料タンク部105の後部にエアバッグ装置120が配置されている。このエアバッグ装置120は、典型的には各構成部材が一体状にモジュール化された状態で車体に装着される構成になっている。また、本実施の形態のエアバッグ装置120は、乗員Rの乗員拘束領域130を臨むように配置されている。このエアバッグ装置120が、本発明における「エアバッグ装置」に対応している。
また、本実施の形態では、エアバッグ装置120を構成するエアバッグ122(後述する)の突出(展開膨張)方向が、乗員拘束領域130のうち腰部領域132に向けて配置されている。この腰部領域132は、乗員拘束領域130のうち車体の上下方向(乗員の高さ方向)に関する局所(局部)であり、シート103に着座した乗員Rの膝部(ないし大腿部)よりも上方であり、当該乗員Rの胸部よりも下方に形成される領域によって規定される。この腰部領域132が、本発明における「腰部領域」に対応している。
エアバッグ装置120は、図2に示すように、オートバイ側に取り付けられるエアバッグ収容体(本発明における「エアバッグ収容体」に相当する)としてのリテーナー128と、当該リテーナー128内に折り畳まれた状態で収容されるエアバッグ122と、リテーナー128のインフレータ収容部128aに収容されてエアバッグ122がリテーナー128から展開して膨張するよう膨張ガスをエアバッグ122の内部に供給するインフレータ129を主体として構成される。本実施の形態では、エアバッグ122は、リテーナー128の車両前方側へとロール状に折り畳まれた状態、すなわち図2中の矢印13方向へ向けてロール状に折り畳まれた(巻き取られた)状態で、当該リテーナー128に収容(収納)されている。なお、エアバッグ122が、本発明における「エアバッグ」に対応している。図2では、このエアバッグ122の突出(展開)方向を矢印12で示している。
ここで、上記構成のエアバッグ装置120の作動形態を、図3〜図9等を参照しながら説明する。
自動二輪車100が前方衝突により、エアバッグ122の展開膨張が開始された状態を車両側方から視た図が図3に示される。
図3に示すように、自動二輪車100が、その進行方向側にて衝突事故を起こした場合、乗員Rは自動二輪車100の車両前方方向(例えば図3中の矢印10方向)へ向けて移動しようとする。本実施の形態では、この前方衝突の検知により、インフレータ129が作動し、乗員拘束領域130のうちの腰部領域132に向かってエアバッグ装置120(リテーナー128)からエアバッグ122の突出(展開)が開始される。そして、エアバッグ122内に膨張ガスが送り込まれ続けることにより、エアバッグ122にリテーナー128側から順次膨張部が形成されていくことになる。このように、エアバッグ122は、展開しつつ膨張していく展開膨張動作を行う。このとき、本実施の形態のエアバッグ122は、図2に示すようにリテーナー128の車両前方側へとロール状に折り畳まれた状態で当該リテーナー128に収容されているため、展開初期の乗員Rとの干渉を抑えたうえたうえで、エアバッグ122を腰部領域132に円滑に展開膨張させることが可能となる。
かくして、エアバッグ122が完全に展開され膨張した状態が形成されることとなる。ここで、エアバッグ122の展開膨張時の状態を車両側方から視た図が図4に示される。
図4に示すように、エアバッグ122の展開膨張時においては、膨張したエアバッグ122が腰部領域132に局所的(局部的)に充溢する。すなわち、本実施の形態のエアバッグ122は、乗員拘束領域130全体にわたって広範囲に展開膨張するのではなく、腰部領域132という局所(局部)において集中的に展開膨張するようになっている。
また、展開膨張時における図4中のエアバッグ122の拡大図が図5に示される。
図5に示すように、展開膨張時においてエアバッグ122は、乗員Rと対向する部位に当該乗員Rを拘束する拘束面122aを形成するともに、リテーナー128よりも車両前方側に燃料タンク部105に当接する当接面122bを形成するようになっている。展開膨張が完了したエアバッグ122は、側面視で三角、四角、円など種々の形状を形成する。
また、本実施の形態では、展開膨張したエアバッグ122とリテーナー128との相対的な位置関係については、展開膨張したエアバッグ122の車両後方側にリテーナー128が位置する構成になっている。
本実施の形態では、展開膨張時においてエアバッグ122の拘束面122aは、延在方向線L1に沿ってほぼ直線状に延在するとともに、乗員拘束に際し乗員Rの腹部と胸部とを結ぶ方向線L2に沿って延在する乗員前面142に対し略平行状となる構成になっている。すなわち、展開膨張過程及び展開膨張完了時においてエアバッグ122の拘束面122aは、乗員Rの乗員前面142(被拘束面)に沿って形成されるようになっている。エアバッグ122は、展開膨張過程において、その拘束面122aが乗員Rの腹部と胸部とを結ぶ方向線L2に沿って延在する乗員前面142に対し略平行状に延在しながら展開膨張することとなる。
なお、エアバッグ122の拘束面122aが本発明における「拘束面」に対応しており、乗員Rの乗員前面142が本発明における「延在面」に対応している。また、このような構成の拘束面122aを有するエアバッグ122の態様が、本発明における「エアバッグは、その展開膨張時に乗員を拘束する拘束面を形成するとともに、当該拘束面が乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在しながら展開膨張する。」との態様、及び「エアバッグは、その拘束面が乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する延在面に対し平行状に延在しながら展開膨張する。」との態様に相当する。
このように、展開膨張時において拘束面122aを形成するエアバッグ122によれば、拘束面122aのうち、乗員拘束に際し乗員Rの腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する部位の領域を増やし、車両前方方向へ移動しようとする乗員Rを拘束するための拘束面を極力広くとることができ、乗員Rを拘束するのに有効である。また、車両の前方衝突の際、乗員Rを拘束するのに有効な拘束面122aを速やかに形成させて乗員拘束を行うのに有効である。
一方、展開膨張が完了したエアバッグ122の当接面122b(当接部)が燃料タンク部105等の車体部材に当接することによって、当該エアバッグ122のリテーナー128を中心とした車両前方側への回転動作が規制されることとなる。すなわち、乗員Rの前方側の乗員拘束領域に展開膨張したエアバッグ122は、乗員拘束時に乗員Rから受ける車両前方方向の荷重によりリテーナー128を中心として車両前方方向に回転動作しようとするが、本実施の形態によれば当該エアバッグ122の回転動作を規制することによって当該エアバッグ122の動作を安定させ、これにより乗員Rの拘束性を安定化させることが可能となる。
特に、本実施の形態では、展開膨張したエアバッグ122の車両後方側にリテーナー128が位置する構成であるため、展開膨張したエアバッグ122のうちリテーナー128よりも車両前方側を燃料タンク部105等の車体部材との当接部として広くとることができる。これにより、展開膨張したエアバッグ122の当接面122bと、燃料タンク部105等の車体部材の被当接部と当接によって、乗員Rを拘束する際のエアバッグ122の動作がより安定することとなる。
そして、自動二輪車100の前方衝突により衝撃を受けた乗員Rは、展開膨張したエアバッグ122の拘束面122aによって拘束される。ここで、展開膨張したエアバッグ122によって乗員Rが拘束される状態を車両側方から視た図が図6に示され、展開膨張したエアバッグ122によって乗員Rが拘束される状態を車両後方から視た図が図7に示され、エアバッグ122が腰部領域132において局所的に展開膨張して乗員Rを拘束する様子を示す図が図8に示される。
図6及び図7に示すように、自動二輪車100の前方衝突により衝撃を受けた乗員Rは、腰部領域132に充溢したエアバッグ122によって拘束されることとなる。このとき、腰部領域132に充溢したエアバッグ122は、乗員Rの腰部および下大腿部周辺を前方、側方、および上方から効果的に拘束する。また、当該エアバッグ122の当接面122bが燃料タンク部105に当接するため、当該エアバッグ122の車両前方側への回転動作が規制され、乗員Rの拘束性が安定化する。
特に、図8に示すように、エアバッグ122を乗員Rの膝部(大腿部)よりも上方において展開膨張させることによって、車両の前方衝突の際の当該乗員Rの図8中の矢印14方向への浮き上がりを防止するのに有効である。このように、展開膨張したエアバッグ122により少なくとも腰部領域132において乗員Rを拘束することができれば、当該乗員Rの拘束力を高めることが可能である。また、エアバッグ122による乗員拘束時においては、当該エアバッグ122の当接面122bが燃料タンク部105に当接し当該エアバッグ122の車両前方側への回転動作が規制されるため、腰部領域132に局所的に展開膨張するエアバッグ122であっても、有効な乗員拘束性が確保されることとなる。
なお、自動二輪車100の前方衝突により衝撃を受けた乗員Rは、衝突時の運動エネルギーによって、例えば図8中の二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで車両前方方向(図8中に黒塗り矢印で示す方向)へと移動する。これにより、乗員Rとリテーナー128との相対的な位置が変化することとなる。すなわち、乗員Rに対するリテーナー128の位置は、車両前方衝突前には乗員Rの膝部近傍(図5参照)にある一方、車両前方衝突によって乗員Rが車両前方方向へ移動したときには当該乗員Rに近接して、車両の前後方向に関し当該乗員Rの膝部と腹部との間の領域(図8中の乗員近傍領域140)へと変化する。この乗員近傍領域140は、乗員Rの車両前方側に形成される領域のうち、車両の前後方向に関し乗員Rに近接した領域として特定される。このような構成によれば、リテーナー128に収容されているエアバッグ122は、車両の前方衝突の際、車両の前後方向に関し乗員Rの膝部と腹部との間に形成される乗員近傍領域140において展開膨張することとなる。従って、乗員近傍に展開膨張したエアバッグ122によって乗員Rを拘束することが可能となる。
なお、車両前方衝突によって乗員Rが車両前方方向へ移動したときにおけるリテーナー128の位置は、乗員近傍領域140内において適宜設定され得る。
また、本実施の形態では、展開膨張したエアバッグ122とリテーナー128との相対的な位置関係については、展開膨張したエアバッグ122の車両後方側にリテーナー128が位置する構成になっている。すなわち、本実施の形態では、リテーナー128を極力乗員近傍に配置しつつ、しかも展開膨張時におけるエアバッグ122の拘束面122aが乗員Rに近づき過ぎないように配慮した構成としている。このような構成によれば、車両の前方衝突の際に、乗員近傍に展開膨張したエアバッグ122によって乗員Rを円滑に拘束することが可能となる。
さらに、前方衝突した自動二輪車100が衝突時のエネルギーによりピッチング回動を生じる場合があり得る。ここで、ピッチング回動時の乗員拘束の状態を車両側方から視た図が図9に示される。
図9に示すように、自動二輪車100のピッチング回動時においては、膨張したエアバッグ122によって乗員Rの拘束状態が維持される。特に、エアバッグ122を乗員Rの胸部よりも下方の腰部領域132において展開膨張させ、図8中の矢印14方向へ浮き上がろうとする乗員Rの大腿部を上方から押さえつける構成であるため、展開膨張したエアバッグ122に大腿部が引っかかることとなり、車両のピッチング回動時等において当該乗員Rを上方から拘束するのに有効である。また、このとき、エアバッグ122の当接面122bが燃料タンク部105に当接した状態が維持されるため、当該エアバッグ122の車両前方側への回転動作が引き続き規制されることとなり、これにより乗員Rの拘束性が安定化された状態が維持される。
以上のように、本実施の形態によれば、展開膨張時においてエアバッグ122の拘束面122aが、乗員拘束に際し乗員Rの腹部と胸部とを結ぶ方向に延在する乗員前面142に対し略平行状に延在する構成としたため、拘束面122aのうち、乗員拘束に際し乗員Rの腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する部位の領域を増やし、車両前方方向へ移動しようとする乗員Rを拘束するための拘束面を極力広くとることができ、乗員Rを拘束することが可能となる。また、車両の前方衝突の際、乗員Rを拘束するのに有効な拘束面122aを速やかに形成させて乗員拘束を行うことが可能となる。
また、本実施の形態によれば、乗員拘束領域130のうち少なくとも腰部領域132において局所的にエアバッグ122を展開膨張させることによって、乗員Rを拘束することができ、当該乗員Rの拘束力を高めることができる。すなわち、乗員Rの膝部よりも上方であり乗員Rの胸部よりも下方に形成される腰部領域132は乗員Rの重心とほぼ合致し、少なくとも当該腰部領域132において局所的に展開膨張したエアバッグにて乗員の大腿部を上方より押さえることによって、車両衝突時はもちろん車両のピッチング回動時等においても乗員の浮き上がりを防止することができるのである。
また、本実施の形態では、エアバッグ122を腰部領域132において局所的に展開膨張させるため、乗員拘束領域130全体にわたって広範囲にエアバッグ122を展開膨張させる構成に比して、エアバッグ122および当該エアバッグ122を収容するリテーナー128等を小型化するのに有効である。また、例えば、乗員の肩部に対応する領域においてエアバッグ122を局所的に展開膨張させることも考えられるが、このような構成では、エアバッグを広範囲に充溢させる必要がありエアバッグを小型化するのに限界がある。本実施の形態では、エアバッグ装置120の設置位置から近い腰部領域132へ向けてエアバッグ122を展開膨張させるため、エアバッグ122およびリテーナー128等をより小型化することができる。また、エアバッグ122およびリテーナー128等を小型化したうえで、乗員の拘束性は維持することが可能となる。
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記実施の形態では、展開膨張時においてエアバッグ122の拘束面122aは、ほぼ直線状に延在するとともに、乗員前面142に対し略平行状となる場合について記載したが、本発明では、展開膨張時におけるエアバッグの拘束面は、乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する成分を有していれば足りる。本発明では、展開膨張時におけるエアバッグ122の拘束面122aは、直線状に延在してもよいし、あるいは曲線状に延在してもよい。また、本発明では、展開膨張時においてエアバッグ122の拘束面122aと乗員前面142とが互いに平行状に配置されてもよいし、あるいは交差状に配置されてもよい。また、本発明において、展開膨張時においてエアバッグ122は少なくとも拘束面122aのような拘束部位を有していれば良く、エアバッグ122全体として側面視で三角、四角、円など種々の形状を形成することができる。
また、上記実施の形態では、乗員拘束領域のうち腰部領域132において展開膨張するエアバッグ122を備えたエアバッグ装置120について記載したが、乗員拘束領域のうち腰部領域132以外の領域において展開膨張するエアバッグを備えたエアバッグ装置の構成に本発明を適用することもできる。
また、上記実施の形態では、腰部領域132において展開膨張したエアバッグ122が、乗員Rの腰部および大腿部周辺を前方、側方、および上方から拘束する場合について記載したが、更にエアバッグ122が乗員Rの腰部の後方に回りこむように構成することもできる。
また、腰部領域132を、シート103に着座した乗員Rの膝部(ないし大腿部)よりも上方であり、当該乗員Rの胸部よりも下方に形成される領域として規定したが、この領域は必要に応じて上下方向に関し適宜変更(拡大ないし縮小)可能である。
また、上記実施の形態では、いわゆるツーリングタイプの自動二輪車100について記載したが、ハンドルとシートの間に空間を有するスクータータイプのような他の種類のオートバイ、更には自動二輪車100以外の車両に本発明を適用することもできる。
また、上記実施の形態では、エアバッグ装置120(リテーナー128)を燃料タンク部105の後部に配置する場合ついて記載したが、エアバッグ装置120(リテーナー128)を配置する位置は、オートバイの種類や仕様等に応じて適宜変更可能である。例えば、スクータータイプの自動二輪車においては、車体のうちシートの下部やフロント部にエアバッグ装置120(リテーナー128)を配置することができる。
本発明の一実施の形態に係る自動二輪車100を車両側方から視た図であって、自動二輪車100にエアバッグ装置120を搭載した様子を示す。 図1中のエアバッグ装置120の構成を示す図である。 エアバッグ122の展開膨張が開始された状態を車両側方から視た図である。 エアバッグ122の展開膨張時の状態を車両側方から視た図である。 図4中のエアバッグ122の拡大図である。 展開膨張したエアバッグ122によって乗員Rが拘束される状態を車両側方から視た図である。 展開膨張したエアバッグ122によって乗員Rが拘束される状態を車両後方から視た図である。 エアバッグ122が腰部領域132において局所的に展開膨張して乗員Rを拘束する様子を示す図である。 ピッチング回動時の乗員拘束の状態を車両側方から視た図である。
符号の説明
100…自動二輪車
101…車体構成部
102…フロント部
103…シート
104…ハンドル
105…燃料タンク部
120…エアバッグ装置
122…エアバッグ
122a…拘束面
122b…当接面
128…リテーナー
128a…インフレータ収容部
129…インフレータ
130…乗員拘束領域
132…腰部領域
140…乗員近傍領域
142…乗員前面
R…乗員

Claims (5)

  1. 鞍乗り型車両に装着されるエアバッグ装置であって、
    前記鞍乗り型車両の前方衝突の際、乗員の前方側に形成される乗員拘束領域に展開膨張するエアバッグを備え、
    前記エアバッグは、その展開膨張時に乗員を拘束する拘束面を形成するとともに、当該拘束面が乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在しながら展開膨張する構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 請求項1に記載のエアバッグ装置であって、
    前記エアバッグは、鞍乗り型車両側に取り付けられるエアバッグ収容体に収容されるとともに、その収容状態において当該エアバッグ収容体の車両前方側へとロール状に折り畳まれる構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  3. 請求項1または2に記載のエアバッグ装置であって、
    前記エアバッグは、その拘束面が乗員拘束に際し乗員の腹部と胸部とを結ぶ方向に沿って延在する延在面に対し平行状に延在しながら展開膨張する構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ装置であって、
    前記エアバッグは、前記乗員拘束領域のうち車体の上下方向に関する腰部領域において局所的に展開膨張するように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
  5. 車両の前方衝突の際、エアバッグが展開膨張する構成のエアバッグ装置が装着されたエアバッグ装置付鞍乗り型車両であって、
    前記エアバッグ装置として請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ装置が用いられていることを特徴とするエアバッグ装置付鞍乗り型車両。
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