JP2006294282A - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】充電時におけるガス発生に起因する電池の膨れを抑制できると共に、電池の充放電サイクル特性も向上できるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入する電解液注入工程を少なくとも2回有し、最終の電解液注入工程の後に、電解液注入口を封止する工程を有し、初回の電解液注入工程後、最終の電解液注入工程前に、少なくとも1回の充電工程を有し、初回の充電工程より前の電解液注入工程では、充電により負極表面に皮膜を形成し得る添加剤を含有する非水電解液を注入し、初回の充電工程より後の電解液注入工程では、初回の充電工程より前の電解液注入工程で使用する非水電解液よりも上記添加剤濃度が小さいか、または上記添加剤を含有しない非水電解液を注入することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、容量が大きく、且つ高電圧、高エネルギー密度を有することから、ますます需要が増える傾向にある。
リチウムイオン二次電池は、電解液の溶媒として有機溶媒を用いた非水電解液(有機電解液)を有する非水電解液電池である。この非水電解液の溶媒としては、これまで、エチレンカーボネートなどの環状エステルと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸メチルなどの鎖状エステルとが混合して用いられてきた。
ところが、上記のような鎖状エステルを主溶媒とする非水電解液を用いた二次電池は、充放電サイクルの増加に伴って容量低下や膨れが起こりやすい。この現象は、主に電気化学的還元性の高い負極が、非水電解液中の溶媒や電解質塩と反応することによるものである。そこで、こうした問題を解決するために、近年、充放電サイクル時における非水電解液成分と負極との反応による該成分の分解を抑制するための手法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の技術では、非水電解液中にビニレンカーボネートを添加している。このビニレンカーボネートは、初回充電時に負極と反応して負極表面に皮膜を形成する。この皮膜が負極と非水電解液成分との接触を防止するため、その後に充放電を行っても、非水電解液成分と負極との反応が抑制される。
特開2004−119350号公報
特許文献1のように、ビニレンカーボネートなどの、電池の初回充電時に負極表面に皮膜を形成し得る添加剤を非水電解液中に添加する方法によれば、充放電サイクルを繰り返した場合における電池膨れや容量低下の問題を良好に抑制できる。
しかしながら、上記のビニレンカーボネートのような添加剤が、電池の初回充電時に負極表面において皮膜を形成する際には、ガスの発生を伴う。近年のリチウムイオン二次電池では、更なる高容量化を達成する目的で、負極活物質の比表面積や電極の表面積が大きなものが用いられ、また、電極密度を増加させることが行われているが、こうした活物質の比表面積や電極面積、電極密度の増加に伴って、ビニレンカーボネートなどの添加剤による皮膜形成の際のガス発生量も増大しており、これによって電池の膨れが引き起される虞がある。
このように、特許文献1に開示されているような非水電解液成分の分解に伴う電池の膨れ抑制技術にも、未だ改善の余地があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、充電時におけるガス発生に起因する電池の膨れを抑制できると共に、電池の充放電サイクル特性も向上できるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成し得た本発明の製造方法とは、少なくとも電池缶と電池蓋を有して構成された外装体内に、正極、負極およびセパレータを備えた電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入する電解液注入工程を少なくとも2回有し、最終の電解液注入工程の後に、電解液注入口を封止する工程を有し、初回の電解液注入工程後、最終の電解液注入工程前に、少なくとも1回の充電工程を有し、初回の充電工程より前の電解液注入工程では、充電により負極表面に皮膜を形成し得る添加剤を、電池内に導入する該添加剤全量の50質量%を超えて含有する非水電解液を注入し、初回の充電工程より後の電解液注入工程では、電池内に導入する上記添加剤の残量を含有するか、または該添加剤を含有しない非水電解液を注入することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法である。
リチウムイオン二次電池の製法としては、例えば、有底筒形の電池缶内に、正極、負極およびセパレータで構成される電極体を装填し、電池缶の開口部を、電池蓋などにより封止した後に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入し、その後電解液注入口を封止する方法が採用されている。こうして完成されたリチウムイオン二次電池は、電池缶と電池蓋を有して構成された外装体により、発電要素が装填された空間が実質的に密閉されている密閉式電池である。そのため、充電時に、負極と非水電解液との接触による非水電解液成分の分解反応によって発生したガスは、電池内から排出されることはなく、その内圧を増大させて電池の膨れを引き起こす。こうした事情から、例えば特許文献1のように、充電の際に負極表面に皮膜を形成し得る添加剤を非水電解液に含有させ、初回充電時に該皮膜を負極表面に形成させて、以後の非水電解液と負極との接触を防止し、非水電解液の分解反応によるガスの発生を抑制して、電池の膨れを防止することが行われている。
しかしながら、上記の通り、上記添加剤による皮膜形成自体もガス発生を伴うため、このガスによる電池膨れの虞もある。そこで、本発明では、電解液注入口からの電解液注入を少なくとも2回にすると共に、初回の電解液注入工程後、最終の電解液注入工程前の段階で、少なくとも1回の充電工程を設け、初回の充電工程より前の電解液注入工程では、上記添加剤の濃度の大きな非水電解液を注入し、その後に初回の充電を行うこととした。すなわち、初回の充電工程の際には、電解液注入口が開いている状態であるため、上記添加剤の反応による皮膜形成に伴ってガスが発生したとしても、該ガスは電解液注入口から電池外装体外に排出できる。よって、初回の充電工程より前に注入する非水電解液における上記添加剤の濃度を大きくし、初回の充電工程で負極表面の皮膜形成をより進めておき、電解液注入口が開口している状況下で、多くのガスを発生させておく。そして、初回の充電工程より後の電解液注入工程では、上記添加剤濃度が小さいか、または上記添加剤を含有しない非水電解液を注入して、電解液注入口を封口してから充電を行っても、電池の膨れを生じさせない程度の量のガスしか発生しないようにしている。
本発明では、上記のようにして、上記添加剤由来の皮膜を負極表面に形成して、負極と非水電解液との反応に起因する電池の膨れを防止すると共に、該皮膜の形成に伴って発生する電池の膨れも防止している。なお、このようにして負極表面に形成される上記添加剤由来の皮膜によって、上記の通り、電池の充放電を繰り返しても、該電池内において、負極と非水電解液との接触が抑制され、非水電解液成分の分解が抑えられるため、かかる分解反応に伴うガス発生による電池の膨れが防止できると共に、非水電解液の分解に伴う電池特性の劣化も抑制できる。
本発明によれば、充電時における膨れの発生が抑制され、かつ充放電サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が提供できる。
次に、本発明の製造方法によって得られるリチウムイオン二次電池の構造を、図を示して説明する。
図1および図2は、リチウムイオン二次電池の一例を示しており。図1の(a)はリチウムイオン二次電池の平面図、(b)は部分縦断面図である。また、図2は、図1のリチウムイオン二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。なお、本発明に係るリチウムイオン二次電池は、図1および図2に示す角形(角筒形)のものに限定されず、例えば、円筒形などの筒形形状のものが含まれるが、図1や図2に示すような、内容積の小さな薄形の角形リチウムイオン二次電池の場合には、内部でのガス発生による影響を受けやすく、本発明の製法を採用することによる電池膨れの抑制効果が特に顕著となる。
図1の電池では、正極1、負極2およびセパレータ3を備えた電極体6が内填されている。図1の電池では、電極体6として、正極1と負極2とがセパレータ3を介して渦巻状に巻回された後、扁平状になるように加圧された扁平状巻回構造の積層電極体(巻回電極体)を示している。ただし、電極体は、図1で示す構造のものの他に、電池の形状に応じて、扁平状としていない巻回構造の巻回電極体であってもよく、また、正極と負極とをセパレータを介して積層した構造の積層電極体であっても構わない。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製に当たって使用した導電性基体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。
電池缶4は、電池の外装体の主要部分を構成するものであり、この電池缶4は正極端子を兼ねている。電池缶4の素材としては、例えば、鉄(表面にNiめっきなどを施したものが好ましい)、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などが好適である。そして、電池缶4の底部には、ポリテトラフルオロエチレンシートなどからなる絶縁体5が配置されている。また、電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。電池缶4の開口部を封口する電池蓋9には、ポリプロピレン製などの絶縁パッキング10を介して、ステンレス鋼製などの端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製などのリード板13が取り付けられている。電池蓋9の素材としては、電池缶4と同じものが挙げられる。
そして、この電池蓋9は、電池缶4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池缶4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。なお、図1では、電池の外装体が、電池缶4と電池蓋9で構成されているが、例えば、電池缶と電池蓋とがポリプロピレンなどの樹脂製の絶縁パッキングを介して封止された構造の外装体(すなわち、電池缶と電池蓋と絶縁パッキングで構成された外装体)であっても構わない。また、図1の電池では、電池蓋9に電解液注入口14が設けられており、この電解液注入口14には、封止部材(図示しない)が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている(従って、図1および図2の電池では、実際には、電解液注入口14は、電解液注入口の跡であるが、説明を容易にするために、電解液注入口14として示している)。なお、図1では、電解液注入口14が電池蓋9に設けられた例を示しているが、電解液注入口は、電池缶に形成されていても構わない。
また、図1の電池では、正極リード体7を電池蓋9に直接溶接することによって電池缶4と電池蓋9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池缶4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。なお、電池蓋9には、防爆用の安全弁15が設けられている。
図2は図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は上記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図2では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のもののみを示している。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。
次に、本発明の製造方法を、工程を追って説明する。
<電解液注入工程前の工程>
まず、有底筒形の電池缶内に、正極、負極およびセパレータを備えた電極体(上述の巻回電極体や積層電極体など)を装填し、正負極のリード体の溶接を行った後、電池蓋を用いて電池缶の開口部を封口し、電池外装体内に電極体が装填された電池前駆体とする。
本発明で用いる負極としては、例えば、負極活物質にバインダーなどを加えて調製した負極合剤を、溶剤に分散させて負極合剤含有ぺーストを調製し(ただし、バインダーはあらかじめ溶剤などに分散または溶解させておいてから、負極活物質などと混合してもよい)、得られた負極合剤含有ぺーストを銅箔などからなる負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて負極合剤層を加圧成形する工程を経由することによって作製されたものが挙げられる。ただし、負極の作製は、上記例示の方法のみに限られることなく、他の方法によってもよい。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、特開2004−119350号公報に開示されている炭素材料、すなわち、002面の面間隔(d002 )がd002 ≦0.3360nmであり、c軸方向の結晶子サイズ(Lc)がLc≧70nmであり、かつ波長514.5nmのアルゴンレーザーで励起させた時のラマンスペクトルのR値〔R=I1350/I1530(1350cm−1付近のラマン強度と1580cm−1付近のラマン強度との比)〕が0.01≦R≦0.3である炭素材料を用いることも好ましい。
負極の作製に当たって用いるバインダーとしては、例えば、セルロースエーテル化合物やゴム系バインダーなどが挙げられる。セルロースエーテル化合物の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、それらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。ゴム系バインダーの具体例としては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)などのスチレン・共役ジエン共重合体、ニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などのニトリル・共役ジエン共重合体ゴム、ポリオルガノシロキサンなどのシリコーンゴム、アクリル酸アルキルエステルの重合体、アクリル酸アルキルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸および/またはその他のエチレン性不飽和単量体との共重合により得られるアクリルゴム、ビニリデンフルオライド共重合体ゴムなどのフッ素ゴムなどが挙げられる。
そして、この負極用のバインダーとしては、特にセルロースエーテル化合物とゴム系バインダーとを併用することが好ましく、とりわけ、CMCとSBR、NBRなどのブタジエン共重合体系ゴムとを併用することが好ましい。これは、CMCなどのセルロースエーテル化合物が、主としてぺーストに対して増粘作用を発揮し、SBRなどのゴム系バインダーが、負極合剤に対して結着作用を発揮するからである。このように、CMCなどのセルロースエーテル化合物とSBRなどのゴム系バインダーとを併用する場合、両者の比率としては質量比で1:1〜1:15が好ましい。
なお、負極合剤層中における負極活物質の含有量は、90〜99質量%であることが好ましく、95〜98質量%であることがさらに好ましい。負極活物質の含有量が90質量%より少なくなると容量が小さくなり、99質量%より多くなると集電体との接着性、塗膜の強度が低下するからである。さらに、負極合剤層中におけるバインダーの含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、1.5〜6質量%であることがさらに好ましい。
バインダーの含有量が1質量%より少ないと、集電体との接着性、塗膜の強度が低下し、10質量%より多くなると活物質比率が少なくなり容量が小さくなるからである。負極活物質、バインダーともに2種類以上を混合して用いてもよく、導電助剤やフィラーを添加しても良い。
また、負極合剤層の密度は、1.20〜1.90g/cmであることが好ましく、1.40〜1.80g/cmであることがより好ましい。密度が1.20g/cmより低いと、負極の厚みによって電池空間内を大きく占めてしまうため電池容量が得られなくなり、1.90g/cmより高いと、活物質の圧壊によって容量が得られず、さらに電解液への濡れ性が低下するためである。
本発明に係る電池で用いる正極としては、例えば、正極活物質に必要に応じて導電助剤やバインダーを加えて混合して調製した正極合剤を、溶剤に分散させて正極合剤含有ぺーストを調製し(ただし、バインダーはあらかじめ溶剤などに分散または溶解させておいてから、正極活物質などと混合してもよい)、得られた正極合剤含有ぺーストをアルミニウム箔などからなる正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じて正極合剤層を加圧成形する工程を経由することによって作製されるものが挙げられる。ただし、正極の作製は、上記例示の方法のみに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極活物質としては、高容量化に適するという観点から、リチウム含有複合金属酸化物が好ましい。このようなリチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、LiMO(MはNi、Mn、CoおよびAlのうちの2種以上の元素を表し、0.9<x<1.2)で表されるリチウム含有複合金属酸化物などが好適に用いられる。
正極に用いる導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、鱗片状黒鉛などが挙げられる。そして、バインダーとしては、負極に用いるバインダーとして上で例示したものと同様のものを用いることができる。
正極合剤層中における組成としては、例えば、以下のようであることが好ましい。正極活物質の含有量は、90〜99質量%であることが好ましく、92〜98質量%であることがさらに好ましい。導電助剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがさらに好ましい。導電助剤の含有量が0.1質量%より少ないと、正極合剤の導電性を確保できず、電池の負荷特性が低下し、5質量%より多くなると活物質量低下により容量が低下するためである。また、バインダーの含有量は、0.5〜8質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがさらに好ましい。バインダーの含有量が0.5質量%より少ないと、正極合剤層の強度や、正極合剤層と集電体との接着性が低下し、8質量%より多くなると容量が小さくなるためである。
そして、正極集電体や負極集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼などの箔、網などを用いることができる。正極集電体、負極集電体共、その厚みは、例えば、5〜60μmであることが好ましく、8〜40μmであることがさらに好ましい。集電体の厚みが5μmより薄くなると、強度が小さくなるために、電池製造時や充放電サイクルの経過により電極が切断しやすくなり、また、60μmより厚くなると、電池内に占める集電体の割合が大きくなり、容量が低下するためである。
セパレータとしては、例えば、微孔性樹脂フィルムが用いられる。微孔性樹脂フィルムとしては、例えば、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルムなどが挙げられる。セパレータの厚みは、例えば、10〜30μmであることが好ましく、その開孔率は、例えば、30〜60%であることが好ましい。
<電解液注入工程および充電工程>
次に、電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から、非水電解液を、少なくとも2回(例えば、2回、3回、4回など)に分けて注入すると共に、充電を行う。非水電解液の電池前駆体への注入方法は特に制限は無く、外装体内を減圧して行う方法や、ガスの圧力を利用する方法など、従来公知の各種方法が採用できる。なお、電池の生産性向上の観点からは、電解液注入工程の回数は、より少ないことが好ましく、2回であることが特に好ましい。
非水電解液としては、非水溶媒にリチウム塩などの電解質塩を溶解させることで調製されたものが使用できる。
電解液溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン(DME)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種または2種以上の混合溶媒として用いることができ、特にECやPCなどの環状カーボネートと、DMCやMECなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒が好適に用いられる。また、充放電サイクル寿命を長くするためには、ECやPCなどの環状カーボネートを全溶媒中で10体積%以上用いることが好ましい。そして、電解質塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)などが挙げられ、それらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
非水電解液の成分組成(電解液溶媒の種類、電解質塩の種類、その他の添加剤の有無)は、全ての電解液注入工程で、同じであってもよく、工程毎に異なっていても構わない。
また、本発明では、充電によって負極表面で反応して、該表面に皮膜を形成し得る添加剤を含有する非水電解液を使用する。このような添加剤としては、ビニレンカーボネートまたはその誘導体(ジメチル−1,3−ジオキソル−2−オンなど)やブタジエンスルフォンなどの二重結合を有する重合性の物質;プロパンスルトン;などが挙げられる。これらの添加剤の中でも、上記の二重結合を有する重合性の物質は、負極表面における皮膜が、これらの物質から形成されるポリマーにより構成されることとなるため、負極表面をより広範囲に覆うことができる点でより適している。中でも、ビニレンカーボネートは、皮膜形成の際に酸素原子を含有するポリマーとなるため、充放電が繰り返されることによる負極の繰り返し膨張収縮に適した柔軟な皮膜を形成できることから、特に好ましい。充電によって負極表面に皮膜を形成し得る上記添加剤は、既に調製済みの非水電解液に添加することによって非水電解液中に含有させてもよいし、また、非水電解液の調製時に加えることによって、非水電解液を、上記添加剤を含有した状態で調製してもよい。
なお、上記の通り、本発明では、初回の充電工程より前の電解液注入工程で電池前駆体に注入する非水電解液中の上記添加剤量を、電池内に導入する該添加剤全量の50質量%を超え100質量%以下とし、初回の充電工程より後の電解液注入工程では、上記添加剤の残量、すなわち、電池内部に導入する全添加剤から、初回の充電工程より前の電解液注入工程で注入した非水電解液中に含有される該添加剤量を除いた量を含有する非水電解液を電池前駆体に注入する(ただし、初回の充電工程より前の電解液注入工程で電池前駆体に注入した非水電解液が、電池内部に導入する上記添加剤の全量を含有している場合には、初回の充電工程より後の電解液注入工程では、上記添加剤を含有しない非水電解液を電池前駆体内に注入する)。
例えば、初回の充電工程より前の電解液注入工程で注入する非水電解液が、負極表面の皮膜形成に必要な上記添加剤の全量(すなわち、電池内部に導入される該添加剤の全量)を含有しており、初回の充電工程より後の電解液注入工程で注入する非水電解液は、上記添加剤を含有していないことが好ましい。このようにすることで、初回の充電工程の際に、上記添加剤由来の皮膜を形成させておき、電解液注入口を封止した後の充電の際には、上記添加剤の反応によるガス発生を防止することで、耐久性に優れた皮膜を形成しつつ、該皮膜形成に伴う電池の膨れを防止することができる。
他方、初回の充電工程より後の電解液注入工程で注入する非水電解液に、電解液注入口を封止した後に充電しても、電池の膨れを実質的に引き起こさない程度に上記添加剤を含有させておいてもよい。このようにすることで、初回の充電工程において形成された負極表面の皮膜が、その後の充電の際に生じる上記添加剤の反応によって補強されるため、より耐久性に優れた皮膜とすることができる。
以上のような観点から、初回の充電工程より前の電解液注入工程で注入する非水電解液には、上記添加剤を、電池内に導入する該添加剤全量の50質量%を超え(好ましくは75質量%を超え)100質量%以下含有させる。初回の充電工程より前に、電解液注入工程を複数回設ける場合には、各電解液注入工程で注入する非水電解液における上記添加剤の濃度は、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。また、初回の充電工程より後に、電解液注入工程を複数回設ける場合には、各電解液注入工程で注入する非水電解液における上記添加剤の濃度は、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。
なお、上記添加剤として、ビニレンカーボネートまたはその誘導体を使用する場合では、電池内に導入する非水電解液溶媒とビニレンカーボネートまたはその誘導体との合計を100質量%とするとき、ビニレンカーボネートまたはその誘導体が、0.5質量%以上、より好ましくは、1.2質量%以上であって、5質量%以下、より好ましくは4質量%以下であることが望ましい。電池内に導入するビニレンカーボネートまたはその誘導体の量が少なすぎると、電池の充電時における負極と非水電解液との接触による非水電解液成分の分解反応の抑制効果が小さくなることがある。また、電池内に導入するビニレンカーボネートまたはその誘導体の量が多すぎると、例えば、電池を高温で貯蔵するような場合に電池が膨れやすくなって、貯蔵特性が低下することがある。
また、非水電解液中の電解質塩濃度は、全ての電解液注入工程で、同じであってもよく、工程毎に異なっていても構わないが、初回の電解液注入工程で用いる非水電解液には、それ以外(2回目以降)の電解液注入工程で用いる非水電解質よりも、電解質塩濃度が小さいものを用いることが好ましい。非水電解液の電解質塩濃度が小さいほど、電極やセパレータ中への浸透性が良好であり、より短時間で非水電解液が含浸する。そのため、初回の電解液注入工程で用いる非水電解液の濃度を小さくしておくことで、電極やセパレータ中への非水電解液の含浸速度を高めて、より生産性を向上させることができる。初回の電解液注入工程で電解質塩濃度の小さな非水電解液を用いることによる効果は、電解液が含浸し難い構成のリチウムイオン二次電池、例えば、電極体に係る正負極の面積が大きく、該電極体が高密度に巻回などされている薄形の角形リチウムイオン二次電池や、高密度電極(正極合剤層密度が高い正極や負極合剤層密度が高い負極)を有する筒形リチウムイオン二次電池の場合に、特に顕著となる。なお、電解液注入工程を3回以上とする場合であって、初回の電解液注入工程で用いる非水電解液を、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液の電解質塩濃度よりも小さくするときには、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液の電解質塩濃度は、全ての工程で同じであってもよく、異なっていても構わない。
非水電解液中の電解質塩濃度は、例えば、0.6〜1.6mol/lであることが好ましい。また、初回の電解液注入工程の非水電解液の電解質塩濃度を、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液よりも小さくする場合には、初回で用いる非水電解液の電解質塩濃度を0.5〜1.0mol/lとし、2回目以降に用いる非水電解液の電解質塩濃度を1.0〜2.0mol/lとすることが好ましい。
また、初回の電解液注入工程の後、最終の電解液注入工程前のいずれかの段階(すなわち、電解液注入工程が2回の場合には、初回の電解液注入工程と2回目の電解液注入工程の間)で、少なくとも1回充電を行う。この充電によって、電解液注入口を封止した後の充電による上記皮膜形成に伴うガス発生量を抑え、電池の膨れを抑制する。
電解液注入口封止前の充電は、1回であってもよく、2回以上であっても構わないが、電池の生産性向上の観点からは、1回であることが好ましい。なお、充電工程を複数回設ける場合には、最終の充電工程は、少なくとも最終の電解液注入工程の前とすることが好ましい。この充電の際には、上記の通り、ガスが発生するが、最終の電解液注入工程後では、電池に必要な非水電解液が完全に電池前駆体内に注入された状態であるため、その後に充電すると、発生したガスによって、非水電解液が電解液注入口から噴き出すことがある。このような非水電解液の噴き出しが生じると、電池の生産装置が汚染されて洗浄の必要が生じるなど、電池の生産性を損なうことがあり、また、噴き出した非水電解液が電池外装体に付着することで、電池の外観が損なわれることがある。よって、上記充電が終了した後に、更に電池前駆体内に非水電解液を注入して、電池に必要な非水電解液の量を満足させるための電解液注入工程を設けることが好ましいのである。電池の生産性の向上を更に高める観点からは、上記充電工程が、少なくとも、初回の電解液注入工程と2回目の電解液注入工程との間に設けられることが好ましい。電解液注入工程を2回とし、電解液注入口封止前の充電工程を1回として、初回の電解液注入工程と、2回目の電解液注入工程との間に、上記充電工程を設けることが、最も好ましい。
電解液注入口封止前の充電工程における充電電気量としては、例えば、電池の容量の2〜80%相当であることが好ましく、5〜35%相当であることがより好ましい。充電電気量が2%より少ないと、負極と非水電解液や上記添加剤との反応が不十分となることがあり、80%より多いと、負極表面の皮膜形成のための充電時間が長くなるためである。また、その際の充電条件としては、例えば、電流レートが0.01C〜1C(1Cは電池の定格容量を1時間で放電する電流値)であることが好ましく、0.05〜0.5Cであることがより好ましい。この充電は、上記の電流値と電圧の範囲内にあれば、定電流充電であっても、定電圧充電であってもよい。また、所定電圧となるまで定電流充電を行い、その後定電圧で所定時間充電を行うなどのように、定電流充電と定電圧充電とを組み合わせて行っても構わない。上記充電工程を2回以上設ける場合には、最終の充電工程終了時点での充電の容量が、上記好適値にあればよい。また、充電条件は、全ての充電工程で同じとしてもよく、上記範囲内で充電工程毎に異なる条件を選択してもよい。
なお、電解液注入口封止前の充電の際には、電池前駆体内の非水電解液量が、少なくとも充電を実施できる程度でなければならない。上記充電の実施時における電池外装体内の非水電解液量は、例えば、電池内空隙の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。よって、上記充電工程(かかる充電工程を2回以上設ける場合には、少なくとも初回の充電工程)の直前の電解液注入工程終了時点で、電池前駆体内の非水電解液量が、上記下限値以上となるように、注入する非水電解液量を調整することが好ましい。すなわち、例えば、初回の電解液注入工程の後に、上記充電工程(2回以上設ける場合には、初回の充電工程)を設ける場合には、初回の電解液注入工程において、上記下限値以上の非水電解液を注入するようにすることが好ましく、また、2回目の電解液注入工程の後に、上記充電工程(2回以上設ける場合には、初回の充電工程)を設ける場合には、初回の電解液注入工程で注入する非水電解液量と、2回目の電解液注入工程で注入する非水電解液量の合計が、上記下限値以上となるようにすることが好ましい。
また、上記充電工程時(2回以上設ける場合には、最終の充電工程時)における電池前駆体内の非水電解液量は、最終的に得られる電池の有する電池内空隙の100%以下とする。なお、上述した上記充電時における非水電解液の噴き出しを防止するためには、上記充電工程時において、非水電解液量を、電池内空隙の80%以下、より好ましくは75%以下とし、上記充電工程後の電解液注入工程で、電池の必要とする非水電解液量を満たすように、各電解液注入工程での非水電解液の注入量を調整することが望ましい。
なお、上記充電工程においては、充電と同時に、電池前駆体内のガス抜きを行い、充電によって発生したガスを、強制的に電池前駆体外へ排出させることが好ましい。ガスが外部に排出しやすいように、電池の厚みを規制する枠を設けたり、充電後に電池幅広面を押さえるなどの方法を行うことができる。
<電解液注入口の封止工程およびその後の工程>
電解液注入工程および上記充電工程の全てが完了した後に、電解液注入口を封止する。電解液注入口の封止方法は、特に制限は無く、例えば、封止栓などの封止部材を挿入してレーザー溶接などの溶接手段により封止する方法など、従来公知の封止方法が採用できる。電解液注入口の封止後には、必要に応じてエイジングや予備充電を行って、製品(リチウムイオン二次電池)とする。
本発明の製造方法により得られるリチウムイオン二次電池は、従来公知のリチウムイオン二次電池(例えば、筒形リチウムイオン二次電池)と同様の用途に用い得るが、その一例としては、携帯情報端末、ノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器、携帯電話、デジタルカメラなどの電源としての用途が挙げられる。
実施例1
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO(比表面積:0.5m/g、平均粒径:10μm):96質量部と、導電助剤であるカーボンブラック(粒径:3μm):2質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF):2質量部との割合で、N−メチル−2−ピロリド(NMP)の存在下で混合してスラリー状の正極合剤含有ぺーストを調製した。得られた正極合剤含有ぺーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、ローラーで正極合剤層を所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるように切断して正極を作製した。得られた正極の正極合剤層密度は、3.60g/cmであった。
<負極の作製>
負極活物質として、黒鉛〔(002)面の面間隔(d002):0.3365nm、平均粒径20μm、c軸方向の結晶子サイズ(Lc):100nm〕を用いた。また、バインダーには、CMCとSBRとを、CMC/SBR=1/0.5(質量比)の割合で用いた。この負極活物質:98.5質量部とバインダー:1.5質量部を、水の存在下で混合してスラリー状の負極合剤含有ぺーストを調製した。得られた負極合剤含有ぺーストを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、ローラーで負極合剤層が所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるようにして切断して負極を作製した。得られた負極の負極合剤層密度は、1.60g/cmであった。
<非水電解液の調製>
1回目の電解液注入工程用の非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを0.7mol/lの濃度となるように溶解させ、更に添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)を、該混合溶媒とVCとの合計100質量%に対して、4.0質量%の濃度となるように添加し溶解させて調製したものを用意した。また、2回目の電解液注入工程用の非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを1.67mol/lの濃度となるように溶解させ、添加剤(VC)を加えないで調製したものを用意した。
<リチウムイオン二次電池の組み立て>
上記の正極および負極に集電用のリード体を溶接した。この正極と負極とを、厚みが20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを介して積層し、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体をアルミニウム合金製角形電池缶に挿入し、正負極のリード体の溶接と、電池缶の開口端部への電池蓋のレーザー溶接を行って、非水電解液を除く発電要素が内填された電池前駆体を得た。
次に、この電池前駆体内部を真空減圧し、1回目の電解液注入工程として、電池蓋に設けられた電解液注入口から、上記の1回目の電解液注入工程用の非水電解液:1.45mlを注入した。続いて、168mA(0.2C)の電流で、30分間充電し、電池前駆体内に注入した電解液を正負極およびセパレータ中に均一に含浸させつつ、ガス抜き(負極と非水電解液との反応生成ガス)を行った。その後、電池前駆体内部を真空減圧し、2回目(最終)の電解液注入工程として、電池蓋に設けられた電解液注入口から、上記の2回目の電解液注入工程用の非水電解液:0.47mlを注入した。その後、電解液注入口にアルミニウム製の封止部材を挿入し、レーザー溶接して電解液注入口の封止を行って、図1に示す構造と図2に示す外観を有し、厚み(図1中、t)が4mm、幅(図1中、w)が34mm、高さが50mmで、薄形の角形(角筒形)リチウムイオン二次電池を得た。なお、1回目の電解液注入工程で電池前駆体内に注入した非水電解液量は、電池内空隙の75%に相当する。また、充電工程での充電電気量は、電池容量の約10%に相当する。更に、電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約3.0質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの100質量%を含有するようにした。
実施例2
1回目の電解液注入工程における非水電解液のLiPF濃度を0.8mol/l、および2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のLiPF濃度を1.4mol/lとした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約3.0質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの100質量%を含有するようにした。
実施例3
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、2.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約1.5質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの100質量%を含有するようにした。
実施例4
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、6.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約4.5質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの100質量%を含有するようにした。
実施例5
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、1.0質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、2.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約1.2質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの60.7質量%を含有するようにした。
実施例6
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、3.0質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、3.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約3.0質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの75.5質量%を含有するようにした。
実施例7
1回目および2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のLiPF濃度を1.0mol/lとした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約3.0質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの100質量%を含有するようにした。
実施例8
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO(比表面積:0.5m/g、平均粒径:10μm):97質量部と、導電助剤であるカーボンブラック(粒径:3μm):1.5質量部と、バインダーであるPVDF:1.5質量部との割合で、NMPの存在下で混合してスラリー状の正極合剤含有ぺーストを調製した。得られた正極合剤含有ぺーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、ローラーで正極合剤層を所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるように切断して、高密度の正極合剤層を有する正極を作製した。得られた正極の正極合剤層密度は、3.90g/cmであった。
<負極の作製>
負極活物質として、黒鉛〔(002)面の面間隔(d002):0.3365nm、平均粒径20μm、c軸方向の結晶子サイズ(Lc):100nm〕を用いた。また、バインダーには、CMCとSBRとを、CMC/SBR=1/0.5(質量比)の割合で用いた。この負極活物質:98.5質量部とバインダー:1.5質量部を、水の存在下で混合してスラリー状の負極合剤含有ぺーストを調製した。得られた負極合剤含有ぺーストを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、ローラーで負極合剤層が所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるようにして切断して、高密度の負極合剤層を有する負極を作製した。得られた負極の負極合剤層密度は、1.75g/cmであった。
<リチウムイオン二次電池の組み立て>
正負極に、上記の高密度の正極合剤層を有する正極および高密度の負極合剤層を有する負極を用い、1回目の電解液注入工程において、実施例1で用いた1回目の電解液注入工程用の非水電解液と同じ非水電解液を1.32ml、2回目(最終)の電解液注入工程において、実施例1で用いた2回目の電解液注入工程用の非水電解液と同じ非水電解液を0.5ml注入し、更に、1回目の電解液注入工程後の充電工程における充電条件を、180mA(0.2C)で30分間とした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。なお、1回目の電解液注入工程で電池前駆体内に注入した非水電解液量は、電池内空隙の75%に相当する(本実施例では、1回目の電解液注入工程での注液量が、実施例1より少ないにも関わらず、電池内空隙に占める非水電解液量が実施例1と同じになっているが、これは、本実施例に係る電池の電極が高密度であり、該電極内に浸入する非水電解液量が、実施例1に係る電池よりも少ないためである)。また、充電工程での充電電気量は、電池容量の約10%に相当する。更に、電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約2.9質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの100質量%を含有するようにした。
実施例9
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、2.0質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、1.0質量%とした以外は、実施例8と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約1.7質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの84.1質量%を含有するようにした。
実施例10
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、3.0質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、3.0質量%とした以外は、実施例8と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約3.0質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの72.5質量%を含有するようにした。
実施例11
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、0.4質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、1.0質量%とした以外は、実施例8と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約0.56質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの51.4質量%を含有するようにした。
比較例1
1回目の電解液注入工程で用いる非水電解液にVCを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。すなわち、比較例1のリチウムイオン二次電池では、VCを一切用いていない。
比較例2
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、0.5質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、3.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約1.11質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの34.0質量%を含有するようにした。
比較例3
1回目と2回目の電解液注入工程の間に、充電工程を設けなかった他は、実施例1と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作成した。
比較例4
1回目の電解液注入工程で用いる非水電解液にVCを添加しなかった以外は、実施例8と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。すなわち、比較例1のリチウムイオン二次電池では、VCを一切用いていない。
比較例5
1回目の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、0.5質量%とし、2回目(最終)の電解液注入工程における非水電解液のVCの含有量を、非水電解液溶媒とVCの合計100質量%中、3.0質量%添加した以外は、実施例8と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作製した。電池内に導入したVCは、非水電解液溶媒全量との合計100質量%に対して、約1.19質量%に相当し、1回目の電解液注入工程で用いた非水電解液が、電池内に導入したVCの30.6質量%を含有するようにした。
比較例6
1回目と2回目の電解液注液工程の間に、充電工程を設けなかった他は、実施例8と同様にして角形リチウムイオン二次電池を作成した。
実施例1〜11および比較例1〜6のリチウムイオン二次電池について、下記の電池特性(放電容量、負荷特性およびサイクル特性)並びに下記の2種類の電池膨れを評価した。結果を表1および表2に示す。
<放電容量評価>
実施例1〜11および比較例1〜6のリチウムイオン二次電池について、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.3Vになるまで充電した後、0.2C相当の電流で3.0Vになるまで放電し、放電容量を求めた。
<負荷特性評価>
上記放電評価に用いたものと別の電池について、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.3Vになるまで充電した後、2C相当の電流で3.0Vになるまで放電し、放電容量を求めた。この2Cでの放電容量を、上記の放電容量評価で求めた0.2Cでの放電容量で除して、負荷特性を評価した。
<充放電サイクル特性評価>
上記放電容量評価および上記負荷特性評価に用いたものと別の電池について、それぞれ1Cの電流で充電し、続いて1C相当の電流で3.0Vまで放電したする工程を1サイクルとする試験を400サイクル行った。この400サイクル時での放電容量を、1サイクル目での放電容量で除して、容量維持率として充放電サイクル特性を評価した。
<電池膨れ評価>
上記の各電池特性評価に用いたものとは別の電池について、電解液注入口封止後に、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電した後、電池の厚み測定を行った。
<貯蔵試験時の膨れ評価>
上記の各評価に用いたものとは別の電池について、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電した後電池の厚みを測定し、60℃の温度に設定した恒温槽内に20日間保存した後、取り出して室温に2時間放置した際の厚みを測定し、この厚みから60℃での保存前の厚みを引いて、貯蔵試験による電池の膨れの量を評価した。
Figure 2006294282
Figure 2006294282
表1および表2から以下のことが分かる。初回の充電工程より前の1回目の電解液注入工程で用いる非水電解液に、電池内に導入するVC量の50質量%よりも多い量を含有させておく製法により製造した実施例1〜11のリチウムイオン二次電池では、電解液注入口封止後に行った充電の後の電池の膨れが小さく、また、400サイクル時の容量維持率が高く、良好な充放電サイクル特性を有している。更に、実施例1〜11の電池では、放電容量、負荷特性も良好である。
これに対し、比較例1〜6のリチウムイオン二次電池では、電解液注入口封止後に行った充電の後の電池の膨れが大きく、また、400サイクル時の容量維持率が低く充放電サイクル特性が劣っている。
なお、電池内にVCを多量に導入した実施例4の電池では、400サイクル後の容量維持率が特に優れており、電解液注入口封止後に充電を行っても、電池の膨れが非常に抑制されていると共に、非常に良好な充放電サイクル特性が確保されている一方で、貯蔵試験における電池の膨れ量が、実施例1〜3および実施例5〜11の各電池によりも劣っている。これは、電池内にVCを多量に導入したことにより、電解液注入口封止前の充電工程後において未反応のVCが多く残存していたためと考えられる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の一例を模式的に示す図で、(a)はその平面図、(b)はその部分縦断面図である。 図1に示すリチウムイオン二次電池の斜視図である。
符号の説明
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池缶
5 絶縁体
6 電極積層体
7 正極リード体
8 負極リード体
9 電池蓋
10 絶縁パッキング
11 端子
12 絶縁体
13 リード板
14 電解液注入口
15 安全弁

Claims (7)

  1. リチウムイオン二次電池を製造する方法であって、
    少なくとも電池缶と電池蓋を有して構成された外装体内に、正極、負極およびセパレータを備えた電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入する電解液注入工程を少なくとも2回有し、
    最終の電解液注入工程の後に、電解液注入口を封止する工程を有し、
    初回の電解液注入工程後、最終の電解液注入工程前に、少なくとも1回の充電工程を有し、
    初回の充電工程より前の電解液注入工程では、充電により負極表面に皮膜を形成し得る添加剤を、電池内に導入する該添加剤全量の50質量%を超えて含有する非水電解液を注入し、初回の充電工程より後の電解液注入工程では、電池内に導入する上記添加剤の残量を含有するか、または該添加剤を含有しない非水電解液を注入することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
  2. 上記添加剤としてビニレンカーボネートまたはその誘導体を含有する非水電解液を使用する請求項1に記載の製造方法。
  3. 電池内に導入する非水電解液溶媒とビニレンカーボネートまたはその誘導体との合計を100質量%とするとき、ビニレンカーボネートまたはその誘導体が0.5〜5質量%である請求項2に記載の製造方法。
  4. 上記充電工程では、充電と同時に電池前駆体内のガス抜きを行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 上記充電工程では、電池容量の2〜80%の電気量を充電する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 初回の電解液注入工程で注入する非水電解液には、初回以外の電解液注入工程で注入する非水電解液よりも、電解質塩濃度の小さなものを使用する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 電解液注入工程が2回であり、充電工程が1回である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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