JP5734708B2 - 非水電解液二次電池およびその製造方法 - Google Patents

非水電解液二次電池およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Ni(ニッケル)量の多い正極活物質を有しつつ、高い安全性と高温貯蔵特性を備えた非水電解液二次電池と、その製造方法に関するものである。
近年、二次電池は、パソコンや携帯電話などの電源として、または電気自動車や出力貯蔵用の電源として、なくてはならない重要な構成要素の一つとなっている。そして、特に、携帯電話をはじめ、携帯ゲーム機、PDAなどの小型の移動体電子機器用途において、更なる小型化、軽量化が求められている。しかしながら、これらの機器は、液晶表示パネルのバックライトや描画制御に消費される電力が高いことや、二次電池の容量が現状ではまだ不十分であることなどから、システムのコンパクト化、軽量化が難しい状況にある。そのため、電力容量、特に単電池の電圧が3.3V以上における放電容量の増大が急務となっている。
リチウムイオン電池などの非水電解液二次電池で使用されている正極は、例えば、正極活物質、導電助剤および結着剤にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶剤を加えて混合することにより、ペースト状などの正極合剤層形成用スラリーを調製し、この正極合剤層形成用スラリーを集電体となる導電性基体の表面に塗布し、溶剤を乾燥除去すると共にプレス処理などを施し、厚みや密度の調整された正極合剤層を形成する工程を経て作製される。
このような正極を有する非水電解液二次電池の高容量化を達成する方法としては、例えば、正極の密度(正極合剤層の密度)を高めて、正極における正極活物質の充填量を増加させる方法や、充電電圧を高める方法などがある。しかしながら、前者の方法では、正極合剤層への電解液の浸透性が低下して、電池の製造上の問題や特性面の低下など不具合が発生する。更に後者の方法では、高電圧充電を伴う電池の安全性の低下などの問題がある。
また、非水電解液二次電池の正極活物質には、リチウム(Li)とコバルト(Co)とを含有するリチウム・コバルト複合酸化物が汎用されているが、これよりも単位質量あたりの容量が大きいNiを添加したリチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物を正極活物質に用いることで、電池の高容量化を図ることが検討されている。
しかしながら、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物のようにNi量の多いリチウム含有複合酸化物は、合成時の不純物として水酸化リチウムや炭酸リチウムといったアルカリが混入しやすく、これらが電池の化成時や充電時に分解して炭酸ガスや水素ガスが発生し、電池膨れの原因となる。また、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物のようなNi量の多いリチウム含有複合酸化物は、充電時のLiイオン引き抜き量が多く、そのために電池の高容量化を図り得る一方で、構造的に不安定であり、例えば電池が短絡して発熱した場合に分解し、酸素を放出してしまうため、これによる安全性の問題が生じやすい。
こうした問題を回避する技術の検討もなされている。例えば、特許文献1には、正極活物質の一部にNi量の多いリチウム含有複合酸化物を使用しつつ、正極活物質全体のアルカリ量を低減して構成した正極や、この正極を用いた非水電解液二次電池が提案されている。
特許文献1に記載の技術によれば、正極活物質中のアルカリに起因する電池膨れの問題を回避して高温貯蔵特性に優れ、また安全性も高めた非水電解液二次電池を得ることができる。
特開2009−151959号公報
ところで、非水電解液二次電池の今後の用途展開の際に、従来にも増して高い安全性が要求されることも予想され、その場合に備えて、高い高温貯蔵特性とともに、より高い安全性を確保し得る技術の開発も求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、Ni量の多いリチウム含有複合酸化物を使用しつつ、高い安全性と高温貯蔵特性とを備えた非水電解液二次電池と、その製造方法を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電解液二次電池は、正極活物質、導電助剤および結着剤を含有する正極合剤層を集電体の片面または両面に有する正極と、負極と、セパレータと、非水電解液とを備えた非水電解液二次電池であって、前記正極活物質の少なくとも一部に、一般式LiNiCo(1−x−y−z)Mn (0.5≦x≦0.9、0.005≦y≦0.3、0.003≦z≦0.05であり、元素MはLi、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む)で表される層状リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(A)を含有しており、下記の中和滴定法により求められる前記正極合剤層中の、前記正極活物質が含有する不純物であるアルカリの中和に必要な塩酸の滴定量が14ml以下であり、前記結着剤の少なくとも一部に、ポリフッ化ビニリデン以外の溶媒に溶解可能なポリマーを含有しており、前記溶媒に溶解可能なポリマーの含有量が、正極活物質100質量部に対して0.1〜0.5質量部であり、前記非水電解液に、シクロヘキシルベンゼンを.2〜1.5質量%の量で含有するものを用いたことを特徴とするものである。
前記中和滴定法:正極から採取し、0.0gに計り取った正極合剤層と、イオン交換法によって精製されたpHが7で電気伝導度が2μS/cm以下の水100mlとを入れた容器内に窒素ガスを充満させてから、前記容器を密封し、マグネティックスターラで60分撹拌しながら前記容器内の水に前記正極合剤層を浸潰させる。その後、前記容器内の水と正極合剤層との混合物をろ過して得られる上澄み液25.0mlを計り取り、ここに0.1質量%濃度のメチルオレンジ溶液を数滴加えて試料溶液を調製し、マグネティックスターラで撹拌しながら前記試料溶液に0.02mol/lの塩酸を間欠滴定し、前記試料溶液の色が黄色から橙色に変わるまでに前記試料溶液に投入した塩酸の量を、前記正極合剤層中のアルカリの中和に必要な塩酸の滴定量とする。
また、本発明の製造方法は、前記本発明の非水電解液二次電池を製造する方法であって、正極活物質、導電助剤、結着剤および溶媒を含有する正極合剤層形成用スラリーを調製し、前記正極合剤層形成用スラリーを用いて、集電体の片面または両面に正極合剤層を有する正極を作製する工程と、シクロヘキシルベンゼンの含有量が〜1.5質量%の非水電解液を調製する工程と、前記正極、負極、セパレータおよび前記非水電解液を用いて電池を組み立てる工程とを少なくとも有しており、前記正極合剤層形成用スラリーの調製にあたり、結着剤であるポリフッ化ビニリデン以外の溶媒に溶解可能なポリマーを、正極合剤層形成用スラリーに用いる前記溶媒に溶解させた溶液を使用することを特徴とする。
本発明によれば、Ni量の多いリチウム含有複合酸化物を使用しつつ、高い安全性と高温貯蔵特性とを備えた非水電解液二次電池を提供することができる。
本発明の非水電解液二次電池の一例を模式的に示す図で、(a)はその平面図、(b)はその部分縦断面図である。 図1に示す非水電解液二次電池の斜視図である。
本発明の非水電解液二次電池に係る非水電解液には、例えば、非水系溶媒中に、リチウム塩を溶解させた溶液を使用する。そして、前記非水電解液には、シクロヘキシルベンゼンを含有させる。これにより、電池の高温貯蔵特性および安全性を高めることができる。
電池を充電状態で高温下に貯蔵した際には、非水電解液中のシクロヘキシルベンゼンが正極側で分解して、その分解生成物が正極表面で皮膜を形成し、これにより正極合剤層中のアルカリの分解によるガス発生を抑制でき、電池の膨れを抑えることができると考えられる。
また、電池が非常に高い温度に曝されたり、過充電状態となったり、釘などの金属製の異物が刺さったり、短絡したりした場合にも、内部の温度上昇によってシクロヘキシルベンゼンが分解し、その分解生成物が正極表面に皮膜を形成することで内部抵抗が増大して非水電解液との反応を抑制するため、電池の熱暴走や発火、破裂などが抑えられて、安全性が向上すると考えられる。
電池に使用する非水電解液におけるシクロヘキシルベンゼンの含有量は、前記の各効果を良好に確保する観点から、.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上とする。ただし、非水電解液中のシクロヘキシルベンゼンは、電池の通常の使用時においても徐々に分解して、正極の抵抗増大やセパレータの目詰まりを引き起こし、これによって電池の充放電サイクル特性や負荷特性といった電池特性を低下させる原因となることがある。よって、本発明の電池では、使用する非水電解液におけるシクロヘキシルベンゼンの含有量を、.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下とし、更に後述するように、正極合剤層に係る結着剤の一部に、溶媒に溶解可能なポリマー(ポリフッ化ビニリデン以外のポリマー)を特定量で使用することで、シクロヘキシルベンゼンによる電池特性の低下を抑制している。
非水電解液に係る溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γ-BL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で、または2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
非水電解液に係る無機イオン塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO[ここでRfはフルオロアルキル基]などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.6〜1.8mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.6mol/lとすることがより好ましい。
本発明の非水電解液二次電池に係る正極は、正極活物質、導電助剤および結着剤などを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものである。
本発明の電池に係る正極は、正極活物質の少なくとも一部に、下記一般式(1)で表される層状リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(A)[以下、単に化合物(A)という]を含有している。
LiNiCo(1−x−y−z)Mn (1)
[前記一般式(1)中、0.5≦x≦0.9、0.005≦y≦0.3、0.003≦z≦0.05であり、元素MはLi、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む。]
化合物(A)において、Niは容量向上に寄与する成分であり、前記一般式(1)におけるNiの量xは、Niによる容量向上効果を確保する観点から、0.5以上、好ましくは0.75以上とする。ただし、化合物(A)中のNiの量が多すぎると、他の元素の量が少なくなって、これらによる効果を良好に確保し得ないため、前記一般式(1)におけるNiの量xは、0.9以下、好ましくは0.88以下とする。
また、化合物(A)において、結晶格子中にMnを存在させることで、Niとともに層状の構造を安定化させ、化合物(A)の熱的安定性を向上させ得ることから、安全性の高い電池を構成可能な正極を得ることができる。前記一般式(1)におけるMnの量yは、前記の電池の安全性向上効果を確保する観点から、0.005以上、好ましくは0.01以上とする。化合物(A)中のMnの量が多すぎると、他の元素の量が少なくなって、これらによる効果を良好に確保し得ないため、前記一般式(1)におけるMnの量yは、0.3以下、好ましくは0.2以下とする。
更に、化合物(A)は、元素Mとして、Li、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでおり、これらの元素を含有することによっても、その安定性を高めて、安全性の高い電池を構成可能な正極を得ることができる。元素Mによるこのような効果を良好に確保する観点から、前記一般式(1)における元素Mの量zは、0.003以上、好ましくは0.01以上とする。ただし、化合物(A)中の元素Mの量が多すぎると、他の元素の量が少なくなって、これらによる効果を良好に確保し得ないため、前記一般式(1)における元素Mの量zは、0.05以下、好ましくは0.04以下とする。
また、化合物(A)はCoを含有しているが、その結晶格子中にCoを存在させると、電池の充放電でのLiの脱離および挿入による化合物(A)の相転移から起こる不可逆反応を緩和でき、化合物(A)の結晶構造の可逆性を高めることができるため、充放電サイクル寿命の長い電池を構成可能な正極を得ることができる。前記一般式(1)において、Coの量は「1−x−y−z」で表されるが、具体的には、0.07〜0.3であることが好ましい。
化合物(A)のようなNi量の多いリチウム含有複合酸化物は、前記の通り、合成時の不純物として多量のアルカリを含有していることが通常であるが、本発明の電池に係る正極では、前記の中和滴定法により求められる正極合剤層中のアルカリの中和に必要な塩酸の滴定量が14ml以下となるように、正極合剤層中のアルカリ量を制限し、シクロヘキシルベンゼンを特定量で含有する前記の非水電解液の使用と合わせて、充電状態の電池の高温下での膨れを抑制し、電池の高温貯蔵特性を高めている。前記の中和滴定法により求められる正極合剤層中のアルカリの中和に必要な塩酸の滴定量は、12ml以下であることがより好ましい。
正極合剤層中のアルカリは正極活物質に由来するものであるため、正極に使用する正極活物質中のアルカリ量を低減することで、正極合剤層中のアルカリ量を前記の値に調整することができる。
正極活物質中のアルカリ量は、例えば、正極活物質を水洗によって水酸化リチウムや炭酸リチウムといったアルカリを除去したり、アルカリ量の多い正極活物質[例えば化合物(A)]と、アルカリ量の少ない正極活物質とを混合したりして、低減することができる。
例えば、化合物(A)においても、Niの量が特に多いものでは、アルカリ量も多いため、水洗を行ってアルカリを除去することが好ましいが、この場合、水洗を複数回繰り返し行わないと、アルカリ量を十分に低減できない一方で、水洗の回数を増やすと化合物(A)が失活する虞がある。よって、Niの量が特に多い化合物(A)の場合[例えば、前記一般式(1)におけるNiの量xが、0.8〜0.9程度]には、1〜2回程度水洗を繰り返して、アルカリ量をある程度減らした上で、アルカリ量の少ない別の正極活物質(リチウム含有複合酸化物)と混合し、正極活物質全量中のアルカリ量を低減して使用することが好ましい。
他方、化合物(A)のうち、Niの量の少ないもの[例えば、前記一般式(1)におけるNiの量xが、0.5〜0.7程度]は、アルカリ量も比較的少ないため、1回程度の水洗によってアルカリ量を前記の値に調整でき、失活も抑制できるため、化合物(A)のみを正極活物質として使用してもよく、また、水洗を行うことなく、アルカリ量の少ない別の正極活物質(リチウム含有複合酸化物)と混合し、正極活物質全量中のアルカリ量を低減して使用してもよい。
化合物(A)と共に別の正極活物質を使用する場合、このような正極活物質には、従来から知られている非水電解液二次電池の正極活物質として利用されているリチウム含有複合酸化物のうち、アルカリ量が少ないものであれば、特に制限なく使用できるが、下記一般式(5)で表される層状リチウム・コバルト複合酸化物(B)[以下、「化合物(B)」という]を使用することが好ましい。
LiNiCo(1−a−b−c)Mn (2)
[前記一般式(2)中、0≦a≦0.03、0≦b≦0.02、0.002≦c≦0.02であり、元素MはLi、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む。]
化合物(B)において、NiおよびCoは容量向上に寄与する成分であるが、前記の通り、Niの量を多くしすぎると、例えば、不純物であるアルカリの量が多くなりすぎる虞があることから、前記一般式(2)におけるNiの量aは、0.03以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。また、化合物(B)はNiを含有していなくてもよい[すなわち、前記一般式(2)におけるNiの量aが0でもよい]。
また、化合物(B)において、結晶格子中にMnを存在させると、Niとともに層状の構造を安定化させ、化合物(B)の熱的安定性を向上させ得ることから、より安全性の高い電池を構成可能な正極を得ることができる。前記一般式(2)におけるMnの量bは、0.02以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。また、前記一般式(2)におけるMnの量bは、0であってもよいが、前記の効果を確保する観点からは、0.005以上であることが好ましい。
更に、化合物(B)は、元素Mとして、Li、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでおり、これらの元素を含有することによっても、その安定性を高めることができるため、化合物(B)も用いて構成される電池の安全性をより高めることが可能となる。元素Mによるこのような効果を良好に確保する観点から、前記一般式(2)における元素Mの量cは、0.002以上、好ましくは0.004以上とする。ただし、化合物(B)中の元素Mの量が多すぎると、他の元素の量が少なくなって、これらによる効果を良好に確保し得ないため、前記一般式(2)における元素Mの量cは、0.02以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。
また、前記の通り、化合物(B)においてCoは容量向上に寄与する成分であり、前記一般式(2)において、Coの量は「1−a−b−c」で表されるが、具体的には、0.980〜0.998であることが好ましい。
例えば、化合物(A)と化合物(B)とを併用する場合、それらの比率は、正極合剤層中のアルカリ量を前記の値に調整できる範囲で設定すればよいが、化合物(A)の使用による効果(特に高容量化の効果)を良好に確保する観点からは、正極活物質を100質量%としたときに、化合物(A)の量を、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上とすることがより好ましい。
また、前記の通り、正極活物質には、化合物(A)のみを使用してもよいが、化合物(A)と化合物(B)とを併用する場合には、正極活物質を100質量%としたときに、化合物(A)の量を、30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることがより好ましい。
本発明の電池に係る正極は、正極合剤層の結着剤の少なくとも一部に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)以外の、溶媒(正極合剤層を形成するためのスラリーに使用する溶媒。)に溶解可能なポリマー(以下、単に「溶媒に溶解可能なポリマー」と省略する場合がある。)を含有している。
前記溶媒に溶解可能なポリマーは、正極合剤層内において、正極活物質粒子の表面に皮膜を形成する。この皮膜によって、電池の通常の使用条件下(電池が通常使用される充放電条件下)における非水電解液中のシクロヘキシルベンゼンの分解反応が抑制される。その一方で、正極活物質粒子の表面に形成された溶媒に溶解可能なポリマーによる皮膜は、電池の高温貯蔵時や、安全性が求められるような条件下(電池内部が異常に高温となる条件下)において、シクロヘキシルベンゼンによる正極表面の皮膜形成は阻害しない。
よって、前記特定組成の化合物(A)を正極活物質に用い、更にシクロヘキシルベンゼンを特定量で含有する非水電解液を使用することに加えて、正極合剤層に係る結着剤に、PVDF以外の溶媒に溶解可能なポリマーを用いることで、通常の使用条件下における電池特性の低下を抑制しつつ、電池の高温貯蔵特性および安全性の向上を図ることができる。
なお、本発明において、結着剤として、PVDF以外の溶媒に溶解可能なポリマーを必須成分とするのは、PVDFは結着力が大きい一方で、正極合剤層を形成するための乾燥時(詳しくは後述する)に収縮して固まりやすく、正極活物質粒子の表面を被覆する作用が小さいことから、PVDFのみを結着剤に用いて正極活物質粒子の表面を良好に被覆しようとすると、多量のPVDFを使用する必要が生じ、電池容量の低下を招くからである。
本発明の電池に係る正極は、化合物(A)を含む正極活物質、導電助剤および溶媒に溶解可能なポリマーを含む結着剤を、溶媒に溶解または分散させて調製した正極合剤層形成用スラリーを使用し、これを集電体の表面に塗布する工程を経て製造することが一般的である。この場合、正極合剤層形成用スラリーに使用する溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような有機溶媒が好ましい。よって、溶媒に溶解可能なポリマーとしては、前記のような溶媒に溶解可能なもの、具体的には、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む2種以上のモノマーにより形成される共重合体;水素化ニトリルゴム;フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(VDF−CTFE);フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(VDF−TFE);フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(VDF−HFP−TFE);などが好ましい。溶媒に溶解可能なポリマーは、例えば前記の例示のもののうち1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む2種以上のモノマーにより形成される共重合体には、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのうちの2種または3種のモノマーにより形成される共重合体と、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのうちの1種以上と、他のモノマー[例えば、2クロロエチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、フッ化ビニリデン(VDF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン(TFE)など]との共重合体とが含まれる。これらのなかでも、アクリロニトリルとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体が更に好ましく、アクリロニトリルとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの組成比(質量比)を1:2:1や1:2:2として重合されたものが特に好ましい。
溶媒に溶解可能なポリマーによる前記の効果を良好に確保する観点から、溶媒に溶解可能なポリマーの量は、正極活物質100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上とする。ただし、溶媒に溶解可能なポリマーの量が多すぎると、例えば、正極活物質粒子の表面に形成される前記ポリマーの皮膜が厚くなりすぎて、却って、電池特性低下の原因となる虞がある。よって、溶媒に溶解可能なポリマーの量は、正極活物質100質量部に対して、0.5質量部以下、好ましくは0.35質量部以下とする。
また、結着剤には、先に例示した溶媒に溶解可能なポリマーとともに、他の結着剤を用いてもよい。なお、本発明の電池では、電池特性を高く維持する観点から、溶媒に溶解可能なポリマーの量を前記のように制限するが、この場合、正極合剤層中における各成分の結着が不十分となる虞もあることから、正極合剤層の結着剤には、溶媒に溶解可能なポリマーと、他の結着剤とを併用することが好ましく、溶媒に溶解可能なポリマーとPVDFとを併用することがより好ましい。
溶媒に溶解可能なポリマーと、他の結着剤とを併用する場合には、溶媒に溶解可能なポリマーの量が前記の値となるようにしつつ、正極合剤層における結着剤の量(溶媒に溶解可能なポリマーと他の結着剤との合計量)を、後述する量とすることが好ましい。
本発明の電池に係る正極に含有させる導電助剤には、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料を用いることが好ましく、また、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウムなどの金属粉末類;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることもできる。
電池に係る正極合剤層において、正極活物質の量は96.5〜98.1質量%であることが好ましく、結着剤の量は1.0〜1.5質量%であることが好ましく、導電助剤の量は0.9〜2.0質量%であることが好ましい。
正極集電体は、構成される電池において実質上化学的に安定な電子伝導体であれば特に制限はない。例えば、集電体を構成する材料としては、アルミニウムやその合金、ステンレス鋼、ニッケルやその合金、チタンやその合金、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムまたはステンレス鋼の表面にカーボンまたはチタンを処理させたものなどが用いられる。これらの中でも、アルミニウムおよびアルミニウム合金が特に好ましい。これらの材料は表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが好ましい。集電体の形状としては、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが挙げられる。正極集電体の厚みは特に限定されないが、例えば、5〜50μmであることが好ましい。
正極を製造するにあたっては、例えば、正極活物質、結着剤および導電助剤を溶媒に溶解または分散させた正極合剤層形成用スラリーを調製し、これを正極集電体の片面または両面に塗布し、例えば乾燥してスラリー中の溶媒を除去し、更に必要に応じてカレンダー成形などのプレス処理を施して正極合剤層を形成する方法が採用される。ただし、本発明の電池に係る正極は、他の方法により製造してもよい。
なお、正極合剤層形成用スラリーの調製に際しては、溶媒に溶解可能なゴムを前記溶媒(スラリーの溶媒)に溶解させた溶液を用いることが好ましい。すなわち、溶媒に溶解可能なポリマーの溶液を、正極活物質や導電助剤などと混合して、正極合剤層形成用スラリーを調製することが好ましい。この場合には、正極活物質粒子の表面に、溶媒に溶解可能なゴムの皮膜を、より良好に形成できるため、シクロヘキシルベンゼンによる電池特性の低下をより良好に抑制できる電池を製造することが可能となる。
正極合剤層形成用スラリーにおいて、正極活物質、結着剤および導電助剤を含めた固形分(溶媒以外の成分。以下同じ。)の濃度は、例えば、72〜86質量%であることが好ましい。
正極合剤層形成用スラリーを正極集電体の表面に塗布する方法については、特に制限はなく、従来から知られている各種の塗布方法を採用することができる。また、プレス処理時の条件としては、例えば、線圧を700〜2000kgf/cmとすることが好ましい。
正極合剤層の厚み(集電体の両面に正極合剤層が形成されている場合には、その片面あたりの厚み)は、30〜80μmであることが好ましい。
本発明の非水電解液二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を備えており、正極が前記の正極であり、かつ非水電解液が前記の非水電解液であればよく、その他の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られている非水電解液二次電池で採用されている構成および構造を適用することができる。
負極には、例えば、負極活物質や結着剤、更には必要に応じて導電助剤などを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものを使用することができる。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛)、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛材料;ピッチをか焼して得られるコークスなどの易黒鉛化性炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂(PFA)やポリパラフェニレン(PPP)およびフェノール樹脂を低温焼成して得られる非晶質炭素などの難黒鉛化性炭素質材料;などの炭素材料が挙げられる。また、炭素材料の他に、リチウムやリチウム含有化合物も負極活物質として用いることができる。リチウム含有化合物としては、Li−Alなどのリチウム合金や、Si、Snなどのリチウムとの合金化が可能な元素を含む合金が挙げられる。更にSn酸化物やSi酸化物などの酸化物系材料も用いることができる。負極合剤層における負極活物質の量は、例えば、97〜99質量%であることが好ましい。
導電助剤は、電子伝導性材料であれば特に限定されないし、使用しなくても構わない。導電助剤の具体例としては、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラックや炭素繊維が特に好ましい。ただし、負極に導電助剤を使用する場合には、高容量化のために、負極合剤層における導電助剤の量を10質量%以下とすることが望ましい。
負極合剤層に係る結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的には、例えば、正極用の結着剤として先に例示した各種結着剤や、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−アクリル酸共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体などが使用でき、それらの材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
前記の中でも、PVDF、SBR、エチレン−アクリル酸共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または該共重合体のNaイオン架橋体が特に好ましい。負極合剤層おける結着剤の量は、例えば、1〜5質量%であることが好ましい。
負極は、例えば、負極活物質や結着剤、更には必要に応じて導電助剤などを溶媒に溶解または分散させて負極合剤層形成用スラリーを調製し、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥してスラリー中の溶媒を除去し、更に必要に応じてカレンダー成形などのプレス処理を施して負極合剤層を形成する方法により製造することができる。ただし、本発明の電池に係る負極は、他の方法により製造してもよい。
負極合剤層の厚み(集電体の両面に負極合剤層が形成されている場合には、その片面あたりの厚み)は、30〜80μmであることが好ましい。
負極に用いる集電体としては、非水電解液二次電池内において、実質上、化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。かかる集電体を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルやその合金、銅やその合金、チタンやその合金、炭素、導電性樹脂などの他に、銅またはステンレス鋼の表面にカーボンまたはチタンを処理させたものなどが用いられる。これらの中でも、銅および銅合金が特に好ましい。これらの材料は表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが好ましい。集電体の形状としては、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが挙げられる。集電体の厚みは特に限定されないが、例えば、5〜50μmであることが好ましい。
本発明の電池では、前記の正極と前記の負極とを、セパレータを介在させつつ重ねて形成した積層電極体や、更にこれを渦巻状に巻回し、必要に応じて横断面を扁平状に成形して巻回電極体を用いることができる。
セパレータには、例えば、大きなイオン透過度および所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。また、一定温度以上(例えば100〜140℃)で構成材料の溶融によって孔が閉塞し、抵抗を上げる機能を有するもの(すなわち、シャットダウン機能を有するもの)が好ましい。このようなセパレータの具体例としては、耐有機溶剤性および疎水性を有するポリエチレン、ポリプロピレンなどポリオレフィン系ポリマー、またはガラス繊維などの材料で構成されるシート(多孔質シート)、不織布若しくは織布;前記例示のポリオレフィン系ポリマーの微粒子を接着剤で固着した多孔質体;などが挙げられる。セパレータの孔径は、正負極より脱離した正負極の活物質、導電助剤および結着剤などが通過しない程度であることが好ましく、例えば、0.01〜1μmであることが望ましい。セパレータの厚みは、8〜30μmとすることが一般的であるが、本発明では、10〜20μmとすることが好ましい。また、セパレータの空孔率は、構成材料や厚みに応じて決定されるが、30〜80%であることが一般的である。
電池の外装体には、スチール製やアルミニウム(アルミニウム合金)製の筒形(円筒形や角筒形など)の外装缶、金属を蒸着したラミネートフィルムからなるラミネート外装体などを用いることができる。例えば、電池の組み立てに際しては、このような外装体内に前記の電極体を収容し、外装体の有する端子と電極体に係る各電極とを常法に従って電気的に接続し、更に前記の非水電解液を外装体内に注入した後に、常法に従って外装体の封止すればよく、これにより、本発明の非水電解液二次電池を製造することができる。
本発明の電池では、これまでに説明してきた構成の採用によって、満充電状態での厚みをA(mm)、満充電状態で85℃の環境下に24時間貯蔵した後の厚みをB(mm)としたときに、BとAとの差B−Aを1mm以下とすることが可能であり、このように高温貯蔵時の膨れ量が小さく、良好な高温貯蔵特性を確保することができる。
本明細書でいう電池の「満充電状態」とは、4.2Vまで1.0Cの定電流で充電後、その後、充電時間が2.5時間になるまで定電圧充電した状態のことである。
本発明の非水電解液二次電池は、従来から知られている非水電解液二次電池と同様の用途に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極合剤層形成用スラリーの調製>
溶媒に溶解可能なポリマーである水素化ニトリルゴムをNMPに溶解して、水素化ニトリルゴムの濃度が3質量%のポリマー溶液を調製した。また、PVDFをNMPに溶解して、PVDFの濃度が12質量%のPVDF溶液を調製した。
正極合剤層形成用スラリーの調製には、二軸混練押出機(栗本鉄工所製「KRCニーダ」)を使用した。二軸混練押出機の吐出口側から、前記PVDF溶液を投入したホッパー、前記ポリマー溶液を投入したホッパー、定量フィーダの順に配置されており、二軸混練押出機内には、正極活物質および導電助剤、前記ポリマー溶液、前記PVDF溶液の順に投入できるようにした。正極活物質である化合物(A):LiNi0.5Co0.17Mn0.3Mg0.03と化合物(B):LiCo0.997Al0.003とを、化合物(A)/化合物(B)=30/70の質量割合で混合した混合物:97.4質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部とを、粉体供給装置である定量フィーダ内に投入し、また、前記ポリマー溶液:6.7質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中の溶媒に溶解可能なポリマーの比率が0.2質量%)と、前記PVDF溶液:7.5質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中のPVDFの比率が0.9質量%)とを、それぞれの定量ポンプ付きホッパーに投入した。なお、粉体と前記ポリマー溶液が混練されるときのスラリーの固形分濃度(溶媒を除く成分の濃度)が93.8質量%となるようにした。また、正極活物質100質量部に対する前記溶媒に溶解可能なポリマーの含有量は0.2質量部であった。
このような所定量比に調整した材料を、単位時間あたり所定の投入量となるように制御しつつ二軸混練押出機に投入し、回転数:100rpm、温度:32℃で混練を行って、ペースト状の混練物を得た。そして、得られた混練物をプラネタリーミキサー(特殊機化工業社製「TKハイビスディスパーミックス」)内に投入し、NMPを加えて混合し、塗布に適した粘度の正極合剤層形成用スラリー(溶媒を除く固形分濃度が83質量%)を調製した。
<正極の作製>
前記の正極合剤層形成用スラリーを、70メッシュの厚みを通過させて粗大なものを除去した後、厚みが12μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、更にプレス処理を行って、集電体の両面に、厚み(集電体の片面あたりの厚み)が56μmの正極合剤層を有する正極を作製した。得られた正極の正極合剤層について、前記の中和滴定法により求められた塩酸の滴定量は、10.6mlであった。
<負極の作製>
天然黒鉛:97.5質量%、SBR:1.5質量%、およびカルボキシメチルセルロース(増粘剤):1質量%を、水を用いて混合して負極合剤層形成用スラリーを調製した。この負極合剤層形成用スラリーを、集電体である銅箔(厚み:8μm)の両面に塗布し、120℃で12時間真空乾燥を施し、更にプレス処理を施して、集電体の両面に、厚み(集電体の片面あたりの厚み)が62μmの負極合剤層を有する負極を作製した。
<電極体の作製>
前記の正極と負極とをセパレータ(厚みが14μmで、透気度が300秒/100cmのポリエチレン製多孔膜)を介して重ね合わせ、渦巻状に巻回した後、横断面が扁平状になるように押しつぶして扁平状巻回電極体を作製した。
<非水電解液の調製>
メチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒(体積比 2:1:3)に、1.2mol/lの濃度でLiPFを溶解し、これにビニレンカーボネート(VC)2質量%とビニルエチレンカーボネート(V―EC)0.5質量%とシクロヘキシルベンゼン(CB)0.2質量%とを加えて非水電解液を調製した。
<電池の組み立て>
前記の電極体および非水電解液を用いて、角形非水電解液二次電池を組み立てた。まず、前記電極体の各端面に集電板を溶接により接合した。次に、集電板のリード部を蓋体に取り付けられている電極端子集電機構と接続した。その後、外装缶の内部に電極体を収容して、外装缶の開口部に蓋体を溶接固定した。最後に蓋体に設けられた注液孔から外装缶内に非水電解液を注入して、厚さ4.6mm、幅36mm、高さ51mmとし、図1に示す構造で、図2に示す外観の角形非水電解液二次電池を作製した。
ここで図1および図2に示す電池について説明すると、図1の(a)は平面図、(b)はその部分断面図であって、図1(b)に示すように、正極1と負極2は前記のようにセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回電極体6として、角筒形の外装缶4に電解液と共に収容されている。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。
外装缶4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶4は正極端子を兼ねている。そして、外装缶4の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、外装缶4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはポリプロピレン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
そして、この蓋板9は外装缶4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている(従って、図1および図2の電池では、実際には、非水電解液注入口14は、非水電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、非水電解液注入口14として示している)。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって外装缶4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、外装缶4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
図2は前記図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図2では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図1においても、扁平状巻回電極体の内周側の部分は断面にしていない。
実施例2
CBの添加量を0.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
実施例3
CBの添加量を1.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
実施例4
水素化ニトリルゴムの濃度が7質量%となるようにポリマー溶液を調製し、正極活物質を、化合物(A):LiNi0.876Co0.1Mn0.012Mg0.01Ba0.002と化合物(B):LiCo0.997Al0.003を化合物(A)/化合物(B)=30/70の質量割合で混合した混合物とし、前記ポリマー溶液:6.7質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中の溶媒に溶解可能なポリマーの比率が0.4質量%)と、前記PVDF溶液:5.8質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中のPVDFの比率が0.7質量%)とを、それぞれ別の定量ポンプ付きホッパーに投入し、粉体と前記ポリマー溶液とが混練されるときのスラリーの固形分濃度(溶媒を除く成分の濃度)が94.0質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極合剤層形成用スラリーを調製した。前記正極合剤層形成用スラリーにおいて、正極活物質100質量部に対する前記溶媒に溶解可能なポリマーの含有量は0.4質量部であった。そして、この正極合剤層形成用スラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。
得られた正極の正極合剤層について、前記の中和滴定法により求められた塩酸の滴定量は、13.5mlであった。
また、CBの添加量を1.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
そして、前記の正極と前記の非水電解液とを用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
実施例5
溶媒に溶解可能なポリマーをVDF−TFE共重合体(各モノマーの組成比が、質量比で9:1)に変更した以外は、実施例4と同様にして正極合剤層形成用スラリーを調製し、この正極合剤層形成用スラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の正極合剤層について、前記の中和滴定法により求められた塩酸の滴定量は、11.0mlであった。
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例4と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
比較例1
CBを添加しなかった以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
比較例2
前記PVDF溶液:7.5質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中のPVDFの比率が0.9質量%)と、同じく前記PVDF溶液:1.7量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中のPVDFの比率が0.2質量%)とを、それぞれ別の定量ポンプ付きホッパーに投入し、粉体と最初に前記PVDF溶液を投入して混練されるときのスラリーの固形分濃度(溶媒を除く成分の濃度)が93.8質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極合剤層形成用スラリーを調製し、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の正極合剤層について、前記の中和滴定法により求められた塩酸の滴定量は、12.2mlであった。
また、CBの添加量を0.2質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
そして、前記の正極と前記の非水電解液とを用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
比較例3
水素化ニトリルゴムの濃度を9質量%にした以外は実施例1と同様にして調製したポリマー溶液:7.8質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中の前記溶解可能なポリマーの比率が0.7質量%)と、前記PVDF溶液:3.3質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中のPVDFの比率が0.4質量%)とを、それぞれ別の定量ポンプ付きホッパーに投入し、粉体と前記ポリマー溶液とが混練されるときのスラリーの固形分濃度(溶媒を除く成分の濃度)が93.3質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極合剤層形成用スラリーを調製した。前記正極合剤層形成用スラリーにおいて、正極活物質100質量部に対する前記溶媒に溶解可能なポリマーの含有量は0.7質量部であった。
また、この正極合剤層形成用スラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の正極合剤層について、前記の中和滴定法により得られた塩酸の滴定量は、9.0mlであった。
そして、前記の正極を用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
比較例4
CBの添加量を2.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は、実施例4と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
比較例5
水素化ニトリルゴムの濃度が7質量%となるようにポリマー溶液を調製し、正極活物質を、化合物(A):LiNi0.95Co0.038Mg0.01Ba0.002と化合物(B):LiCo0.997Al0.003とを化合物(A)/化合物(B)=30/70の質量割合で混合した混合物とし、前記ポリマー溶液:6.7質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中の溶媒に溶解可能なポリマーの比率が0.4質量%)と、前記PVDF溶液:5.8質量部(調製されるスラリーにおける溶媒を除く全成分の量100質量%中のPVDFの比率が0.7質量%)を、それぞれ別の定量ポンプ付きホッパーに投入し、粉体と前記溶媒に溶解可能なポリマー溶液とが混練されるときのスラリーの固形分濃度(溶媒を除く成分の濃度)が94.0質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極合剤層形成用組成物を調製した。前記正極合剤層形成用スラリーにおいて、正極活物質100質量部に対する前記溶媒に溶解可能なポリマーの含有量は0.4質量部であった。そして、この正極合剤層形成用スラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。
得られた正極の正極合剤層について、前記の中和滴定法により求められた塩酸の滴定量は、15.1mlであった。
また、CBの添加量を1.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
そして、前記の正極と前記の非水電解液とを用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を作製した。
実施例および比較例の電池に用いた正極活物質の構成を表1に、正極合剤層に係る結着剤の構成を表2に、正極合剤層に係るアルカリの中和に用いた塩酸の滴定量および非水電解液におけるCBの量を表3に、それぞれ示す。
Figure 0005734708
Figure 0005734708
Figure 0005734708
実施例1〜5および比較例1〜5の非水電解質二次電池について、下記の特性評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
<放電容量>
実施例1〜5および比較例1〜5の各電池について、4.2Vまで1.0Cの定電流で充電後、その後、充電時間が2.5時間になるまで定電圧充電し、続いて1.0Cで電池電圧が3.0Vまで定電流放電を行って、そのときの放電容量を求めた(なお、前記定電流充電時のリチウム基準の電池電圧は4.3Vを意味している)。表4では、各電池について得られた放電容量を、実施例1の放電容量を100としたときの相対値で示す。
<高温貯蔵後の電池膨れ測定>
実施例1〜5および比較例1〜5の各電池について、前記の放電容量測定と同じ条件で4.2Vまで定電流−定電圧充電を行った後に、85℃の環境下で24h貯蔵し、取り出した後の電池の厚み(B)を測定して、貯蔵前の電池の厚み(A)からの変化(膨れ;B−A)を求めた。
<釘刺し試験>
実施例1〜5および比較例1〜5の各電池について、4.25Vまで1.0Cの定電流で充電後、その後、充電時間が2.5時間になるまで定電圧充電を行った。充電後の各電池に、25℃の環境下で2.5mmφの釘を0.1mm/秒の速さで突き刺し、電池の電圧が4.1Vなった時点で釘を止めると同時に電池温度を測定し、電池の電圧が4.1Vになった時点から電池温度が150℃に達するまでの時間を調べた。
<充放電サイクル特性評価>
実施例1〜5および比較例1〜5の各電池について、4.2Vまで1.0Cの定電流で充電後、その後、充電時間が2.5時間になるまで定電圧充電し、続いて1.0Cで電池電圧が3.0Vまで定電流放電する一連の操作を1サイクルとして、これを繰り返し行った(なお、前記定電流充電時のリチウム基準の電池電圧は4.3Vを意味している。)。表4では、各電池について得られた500サイクル目の放電容量の、1サイクル目の放電容量に対する維持率(%)で示す。
Figure 0005734708
表4に示す結果から明らかなように、適正な構成の正極と、適正な量のCBを含有する非水電解液とを用いた実施例1〜5の電池は、高温貯蔵後の電池膨れが良好に抑制されており、また、釘刺し試験時の温度が150℃に達するまでの時間が長く、高い安全性が確保されていると共に、放電容量が大きく、充放電サイクル特性も良好である。
これに対し、CBを含有しない非水電解液を用いた比較例1の電池は、高温貯蔵時の電池膨れが大きく、釘刺し試験時においても電池温度が150℃に達するまでの時間が短い。実施例の電池において、高温貯蔵時の電池膨れの抑制効果や、釘刺し試験時の安全性が優れていた理由であるが、高温貯蔵時では非水電解液中のCBが正極側で分解して、その分解生成物が正極表面で皮膜を形成し、これにより正極合剤層中のアルカリの分解によるガス発生を抑制でき、電池の膨れを抑えることができたと考えられる。釘刺し試験時においても、高温貯蔵時同様、電池内部の温度上昇によりCBが正極側で分解して、その分解生成物が正極表面で皮膜を形成することで内部抵抗が増大して、非水電解液との反応を抑えることができたと考えられる。
CBの添加量を2.0質量%とした非水電解液を用いた比較例4の電池は、釘刺し試験時の温度が150℃に達するまでの時間が長く、安全性は良好であったものの、放電容量、高温貯蔵時の電池膨れ抑制効果および充放電サイクル特性が劣っている。これは電池内のCB量が多すぎたために、高温貯蔵時では正極のガス発生の抑制以上にCB自身の分解によるガス発生が多くなったことで、高温貯蔵時の膨れが悪化したものと考えられる。また、放電容量や充放電サイクル特性についても、電池内のCB量が多すぎたために、正極の抵抗が増大し、更に、充放電サイクルで生じたCBの分解生成物によってセパレータの目詰まりが起こり、これらによって放電容量や充放電サイクル特性を悪化したものと考えられる。
また、正極合剤層の結着剤にPVDFのみを用いた比較例2の電池は、高温貯蔵時の電池膨れ抑制効果や釘刺し試験の安全性が劣っている。よって、正極合剤層の結着剤に、PVDF以外の溶媒に溶解可能なポリマーを使用することで、CBを適正量で含有する非水電解液の使用と同様に、正極の反応性を抑制する効果があると考えられる。一方、正極活物質の量に対する前記溶媒に溶解可能なポリマーの使用量が多すぎる比較例3の電池は、放電容量が劣っている。
更に、層状型リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(A)に代えて、Mnを含まないLiNi0.95Co0.038Mg0.01Ba0.002を使用した比較例5の電池は、Ni比率の増加により放電容量が大きくなったものの、高温貯蔵時の電池膨れが大きく、また釘刺し試験の安全性についても悪化している。このうち、高温貯蔵時の電池膨れ抑制効果の低下は、正極合剤層の残存アルカリ量が多かったために、高温貯蔵時のガス発生が多くなったことによるものと考えられる。また、比較例5の電池における安全性の低下は、Ni量の多いリチウム含有複合酸化物は充電状態で構造的な不安定なために、短絡時の発熱が早くなったためであると考えられる。
1 正極
2 負極
3 セパレータ

Claims (6)

  1. 正極活物質、導電助剤および結着剤を含有する正極合剤層を集電体の片面または両面に有する正極と、負極と、セパレータと、非水電解液とを備えた非水電解液二次電池であって、
    前記正極活物質の少なくとも一部に、一般式LiNiCo(1−x−y−z)Mn (0.5≦x≦0.9、0.005≦y≦0.3、0.003≦z≦0.05であり、元素MはLi、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む)で表される層状リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(A)を含有しており、
    下記の中和滴定法により求められる前記正極合剤層中の、前記正極活物質が含有する不純物であるアルカリの中和に必要な塩酸の滴定量が14ml以下であり、
    前記結着剤の少なくとも一部に、ポリフッ化ビニリデン以外の溶媒に溶解可能なポリマーを含有しており、前記溶媒に溶解可能なポリマーの含有量が、正極活物質100質量部に対して0.1〜0.5質量部であり、
    前記非水電解液に、シクロヘキシルベンゼンを.2〜1.5質量%の量で含有するものを用いたことを特徴とする非水電解液二次電池。
    前記中和滴定法:
    正極から採取し、0.0gに計り取った正極合剤層と、イオン交換法によって精製されたpHが7で電気伝導度が2μS/cm以下の水100mlとを入れた容器内に窒素ガスを充満させてから、前記容器を密封し、マグネティックスターラで60分撹拌しながら前記容器内の水に前記正極合剤層を浸潰させる。その後、前記容器内の水と正極合剤層との混合物をろ過して得られる上澄み液25.0mlを計り取り、ここに0.1質量%濃度のメチルオレンジ溶液を数滴加えて試料溶液を調製し、マグネティックスターラで撹拌しながら前記試料溶液に0.02mol/lの塩酸を間欠滴定し、前記試料溶液の色が黄色から橙色に変わるまでに前記試料溶液に投入した塩酸の量を、前記正極合剤層中のアルカリの中和に必要な塩酸の滴定量とする。
  2. 正極活物質として、一般式LiNiCo(1−a−b−c)Mn (0≦a≦0.03、0≦b≦0.02、0.002≦c≦0.02であり、元素MはLi、Ni、CoおよびMn以外の金属元素であって、Mg、Al、Ti、Sr、Zr、Nb、AgおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む)で表される層状リチウム・コバルト複合酸化物(B)を、層状リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(A)とともに含有している請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. ポリフッ化ビニリデン以外の溶媒に溶解可能なポリマーが、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む2種以上のモノマーにより形成される共重合体、水素化ニトリルゴム、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、またはフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体である請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 結着剤として、ポリフッ化ビニリデンを、ポリフッ化ビニリデン以外の溶媒に溶解可能なポリマーとともに含有している請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
  5. 満充電状態での電池の厚みをA(mm)とし、満充電状態で85℃の環境下に24時間貯蔵した後の電池の厚みをB(mm)としたとき、BとAとの差B−Aが1mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液二次電池を製造する方法であって、
    正極活物質、導電助剤、結着剤および溶媒を含有する正極合剤層形成用スラリーを調製し、前記正極合剤層形成用スラリーを用いて、集電体の片面または両面に正極合剤層を有する正極を作製する工程と、
    シクロヘキシルベンゼンの含有量が.2〜1.5質量%の非水電解液を調製する工程と、
    前記正極、負極、セパレータおよび前記非水電解液を用いて電池を組み立てる工程とを少なくとも有しており、
    前記正極合剤層形成用スラリーの調製にあたり、結着剤であるポリフッ化ビニリデン以外の溶媒に溶解可能なポリマーを、正極合剤層形成用スラリーに用いる前記溶媒に溶解させた溶液を使用することを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
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