JP2004228010A - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】負極表面に不働体皮膜を均一且つ十分に形成して、特性の劣化を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】この方法は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法である。この方法では、添加剤及び主溶媒として、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値V1から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態P1と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値V1よりも高い第2の電圧値V2から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態P2と、を生じるような材料系を選択し、第1の電圧値V1よりも高く、第2の電圧値V2よりも低い電圧値V3に電池電圧を維持して充電を行う初期充電工程を備える。
【選択図】 図6
【解決手段】この方法は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法である。この方法では、添加剤及び主溶媒として、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値V1から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態P1と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値V1よりも高い第2の電圧値V2から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態P2と、を生じるような材料系を選択し、第1の電圧値V1よりも高く、第2の電圧値V2よりも低い電圧値V3に電池電圧を維持して充電を行う初期充電工程を備える。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯機器の発展は目覚ましく、その原動力として高エネルギー電池によるところが大きい。特に、リチウムイオン二次電池は、次世代電池の主力として期待されている。このようなリチウムイオン二次電池の開発では、より高性能化を図るため、正極、負極、及び電解液等の構成要素の改良が進められている。特に、負極表面での電解質の分解による特性の劣化を抑制するため、種々の改良が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電解液溶媒としてエチレンカーボネート(EC)のような環状カーボネートを用いた電解液中に、添加剤として1,3−プロパンスルトンを含有させることにより、初期充電時のEC還元分解前に負極炭素材料表面にて1,3−プロパンスルトンを還元させ、炭素材料表面を不働体皮膜で被覆する技術が開示されている。ここで、不働体皮膜は、電解液中に添加された添加剤の分解に起因して、負極表面を被覆するように形成される膜であって、リチウムイオンの透過性が良好で、負極おける電解液の分解反応を抑制する作用を有する膜である。これにより、電解液の分解やこれに伴う負極の劣化を抑制しようとしている。
【0004】
また、例えば特許文献2や特許文献3には、電解液溶媒として低温特性を向上させるために好適なプロピレンカーボネート(PC)に、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を含有させることにより、初期充電時のPC還元分解前に負極炭素材料表面にてVCを還元分解させ、炭素材料表面を不働体皮膜で被覆する技術が開示されている。これにより、電解液の分解やこれ伴う負極の劣化を抑制しようとしている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に開示の技術では、炭素材料表面の不働体皮膜の形成が不十分であり、実際には炭素材料表面で環状カーボネートの分解が生じることで、特性劣化が生じるという問題があった。
【0006】
そこで、例えば特許文献4には、主溶媒である環状カーボネートに添加剤としてVCを含有させ、初期充電において環状カーボネートが分解する還元電位よりも高く、且つ、VCが分解する還元電位よりも低い電位に負極電位を保ちながら充電することで、炭素材料表面に不働体皮膜を均一、且つ十分に形成させようとする技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−3724号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−45545号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−167797号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−325988号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特許文献4に開示の技術においても、実際には炭素材料表面に不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができず、経時的な特性の劣化を招くことがあった。
【0012】
本発明は、上記した課題を解決するために為されたものであり、負極表面に不働体皮膜を均一且つ十分に形成して、特性の劣化を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、添加剤及び主溶媒として、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値よりも高い第2の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態と、を生じるような材料系を選択し、第1の電圧値よりも高く、第2の電圧値よりも低い電圧値に電池電圧を維持して充電を行う初期充電工程を備えることを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、負極表面において主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせて、負極表面に添加剤による不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができる。従って、負極における電解液分解やこれに伴う負極破壊などを生じるおそれが低減され、特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、添加剤の負極上での還元電位は、主溶媒の負極上での還元電位よりも0.5V以上高いことを特徴としてもよい。このような材料系を選択すれば、定電流充電を行ったとき、電池電圧の変化に添加剤の分解に起因する第1プラトー状態と、主溶媒の分解に起因する第2プラトー状態とを生じさせ得るため好ましい。
【0016】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、主溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)を含むことを特徴としてもよい。このようにすれば、低温特性に優れた電池を製造することができる。
【0017】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を含むことを特徴としてもよい。DTDはVCと比較して還元電位が高いため、主溶媒の還元電位との間で還元電位の差を大きくするのに好ましい。特に、PCとDTDとの組み合わせによれば、PCとDTDとの還元電位の差を1V程度にすることができるため好ましい。
【0018】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法において、初期充電工程では、維持される電圧値を定電圧値とする定電流定電圧充電により充電を行うことを特徴としてもよい。このようにすれば、効率よく初期充電を行うことが可能となる。
【0019】
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、添加剤及び主溶媒として、添加剤の負極上での還元電位が、主溶媒の負極上での還元電位よりも0.5V以上高い材料系を選択し、添加剤の還元電位よりも低く、主溶媒の還元電位よりも高い所定電位に負極電位を維持して充電を行う初期充電工程を備えることを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、負極表面において主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせて、負極表面に添加剤による不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができる。その結果、負極における電解液分解やこれに伴う負極破壊などを生じるおそれが低減され、特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0021】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、主溶媒の還元電位よりも0.2V以上高い所定電位に負極電位を維持して充電を行うことを特徴としてもよい。このようにすれば、電池サイズや形状に起因する電流分布や、リチウムの濃度分極電解液分布等による負極電位の不均一性から生じ得る主溶媒の分解を抑制することができるため好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
まず、本発明を想到するに至った経緯について説明する。発明者は、主溶媒としての環状カーボネートと添加剤としてのビニレンカーボネート(VC)を使用するリチウムイオン二次電池について鋭意研究した。そして、主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせるような電池電圧を探るべく、定電流による初期充電実験を行った。
【0024】
図1は、3種類のリチウムイオン二次電池に対して定電流充電を行ったときの、電池電圧の変化を示すグラフである。ここで、電池容量は180mAhとし、充電レートを0.05Cの9mAとした。充電時の温度は25℃であった。なお、電池は積層型とし、正極は活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を含むものとし、負極は活物質として人造黒鉛を含むものとした。なお、詳細な構成は後述する実施例で説明するものと同様である。図1において、ラインL1は環状カーボネートとしてのエチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)(体積比1:1)に、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を添加(5重量%)した場合のグラフを示す。
【0025】
図1に示すように、ラインL1の場合は、PCの還元分解に起因して3V付近から電池電圧の上昇が緩やかになるプラトー領域が見られるものの、VCの還元分解に起因するプラトー領域が見られないことが分かった。これは、VCとPCの還元分解電位が近いため、電池内部での分極差等によりVCとPCの還元分解が競合して生じているためと考えた。従って、環状カーボネートを分解させず、添加剤だけを分解させるように電池電圧を制御することは極めて困難で、これが不働体皮膜の形成が不完全になる原因であることを見出した。
【0026】
そこで、発明者は主溶媒としての環状カーボネートの還元電位と添加剤の還元電位とを遠ざけることを考えた。そして、環状カーボネートと添加剤との組み合わせについて種々検討し、環状カーボネートの還元分解に起因して電池電圧の上昇が緩やかになるプラトー領域と、添加剤の還元分解に起因して電池電圧の上昇が緩やかになるプラトー領域とを生じさせる材料系を見出した。図1において、ラインL2は環状カーボネートとしてのEC及びPC(体積比1:1)に、添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を添加(5重量%)した場合のグラフを示す。図1に示すように、ラインL2の場合は、添加剤の還元分解に起因して2.5V程度の電池電圧から始まるプラトー領域と、環状カーボネートの還元分解に起因して3V程度の電池電圧から始まるプラトー領域とが見られる。従って、2.5Vから3Vの間に電池電圧を維持するようにして初期充電を行えば、環状カーボネートの分解は生じさせずに負極表面にDTDの不働体皮膜を均一かつ十分に形成することができることが分かった。
【0027】
なお、図1においてラインL3は、環状カーボネートとしてのEC及びPC(体積比1:1)に添加剤を添加しない場合のグラフを示す。ラインL3に示されるように、この場合は3V付近で環状カーボネートの分解が始まり、その分解にエネルギーが費やされて電池電圧がほとんど上昇しなくなる。これに対し、ラインL1の場合は負極表面に多少なりの不働体皮膜が形成されるため、添加剤を添加しないラインL3の場合と比べて3V付近から緩やかな電圧上昇が見られる。
【0028】
発明者は、環状カーボネートの還元分解に起因するプラトー領域と、添加剤の還元分解に起因するプラトー領域とを生じさせるための材料系の条件について更に考察を進めた。そして、DTDが負極表面で還元分解を始める還元電位が1.9V(vs Li/Li+)程度であり、PCが負極表面で還元分解を始める還元電位が0.9V(vs Li/Li+)程度であって、その差が1V程度であるのに対し、電池電圧で見たときには2つのプラトー領域の開始電圧の差が0.5V程度になることに着目した。これは、電池内での電流分布のバラツキや分極等から生じるものと考えた。このことから、2つのプラトー領域を生じさせるためには、主溶媒と添加剤との還元電位の差が0.5V以上必要であると考えた。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0029】
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、単に電池ともいう)の製造方法により製造される電池は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いて製造される。その構造は特に限定されず、例えば積層型であっても円筒型(捲回型)であってもよい。本実施形態では、積層型の電池の製造について説明する。
【0031】
まず、図2〜4に示すような構成の積層型の電池を作製する。図2は、電池の外観構成を示す斜視図である。また、図3は図2のIII−III線で切った断面を示す図である。この電池10は、図2及び図3に示すように、電池素体12と、電池素体12を収容する外装体14とを備え、外形が矩形状をなす。そして、正極及び負極から延ばされた一対の端子16が外装体14の一辺から引き出されている。
【0032】
電池素体12は、図4に示すように、正極18と負極20とがセパレータ22を介して交互に積層された積層構造を有する。この積層数は、所望の厚みに応じて任意に選択することができる。図4では、負極20、セパレータ22、正極18、セパレータ22、及び負極20が順次積層された2層構造の場合を示している。
【0033】
正極18は、集電体層24と集電体層24上に設けられた活物質含有層26とを有している。集電体層24は、アルミニウム箔等から形成されている。ただし、集電体層24は金属メッシュから形成してもよい。活物質含有層26は、正極活物質及び結着剤を含む正極材料から形成されている。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なLixMyOz(ただし、Mは1種以上の遷移金属元素を表し、xは0.1≦1.10である)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。具体的には、遷移金属元素は、Co、Mn、Ni、及びVから選択される1種または2種以上であり、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiV2O4等が挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。かかる正極活物質含有層26は、厚みが50〜400μm程度に形成される。なお、正極18の一部はリボン状に延長され、正極側の端子16が形成されている。
【0034】
負極20は、集電体層28と集電体層28上に設けられた活物質含有層30とを有している。集電体層28は、銅箔、ニッケル箔等から形成されている。ただし、集電体層28は金属メッシュから形成してもよい。活物質含有層30は、負極活物質及び結着剤を含む負極材料から形成されている。負極活物質としては、炭素材料、金属リチウム、リチウム合金あるいは酸化物等のリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンファイバ、コークス類、ガラス状炭素、有機化合物焼成体等が挙げられる。また、リチウム合金では、Li−Al、LiSi、LiSn等が挙げられる。酸化物としては、Nb2O5、SnO等が挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。かかる負極活物質含有層30は、厚みが50〜400μm程度に形成される。なお、負極20の一部はリボン状に延長され、負極側の端子16が形成されている。
【0035】
なお、正極活物質含有層26及び負極活物質含有層30には必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
【0036】
セパレータ22は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、セルロース類などからなる多孔膜フィルム、織布、不織布などから形成されている。かかるセパレータ22は、厚みが5〜50μm程度に形成される。
【0037】
外装体14は、金属層及び金属層を挟み込む樹脂層を含む金属ラミネートから形成されている。金属層は、アルミ等のガスバリア性の高い金属から形成すると好ましい。樹脂層は、電気絶縁性を有する樹脂から形成すると好ましい。特に、金属層を挟んで一方の樹脂層(電池素体と対面する内側の層)は、熱融着可能な熱接着性樹脂から形成すると好ましい。
【0038】
例えば、熱接着性樹脂であるポリプロピレン(PP)、アルミ、ナイロン(Ny)からなる三層構造のアルミラミネートは、外装体14を形成する材料として好適であり、これら三層の典型的な厚みはそれぞれ30μm、40μm、25μmである。
【0039】
この外装体14は、予め2枚のラミネートフィルムをそれらの3辺で熱接着して、1辺が開口した袋状に形成される。あるいは、一枚のラミネートフィルムを2つ折りにし、両側辺の端面を熱接着して1辺が開口した袋状に形成される。このような1辺が開口した袋状の外装体14内に、図5に示すように、前述した電池素体12を収容する。そして、不働体皮膜を形成するための添加剤を添加した非水電解液を外装体14内に注入する。この非水電解液がセパレータ22に含浸され、電解質層が形成される。
【0040】
非水電解液を構成する溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等が挙げられる。この中でも、PC及びEC等の環状カーボネートが好ましく、特に低温特性を向上させるためにはPCが好ましい。これら溶媒は単独でも、あるいは2種以上を混合して用いてもよいが、PCが50体積%以上、特に80体積%以上含有されると好ましい。ここで、本明細書では、2種以上の溶媒を混合して用いる場合は、負極20上で還元分解する還元電位が最も高い溶媒を主溶媒と言う。
【0041】
上記した溶媒に溶解されるリチウムイオンを含む支持塩としては、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiN(CF3CF2CO)2などの塩、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
不働体皮膜を形成するための添加剤としては、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)、4−メチル−1,3,2−ジオヘキサチオラン−2,2ジオヘキサイド(M−DTD)、4−エチル−1,3,2−ジオヘキサチオラン−2,2ジオヘキサイド(E−DTD)、1,3−プロパンスルホン、エチレンサルファイド(ES)等が挙げられる。添加剤の添加量は、非水電解液に対して0.05〜50重量%、好ましくは1〜10重量%、特に3〜7重量%である。なお、この添加剤は正極18あるいは負極20に混入させてもよく、その場合は正極18あるいは負極20材料に対して0.05〜50重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0043】
ここで、主溶媒と添加剤との組み合わせとしては、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値よりも高い第2の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態と、を生じるような材料系を選択する。そのためには、添加剤が負極20上で還元分解を始める還元電位が、主溶媒が負極20上で還元分解を始める還元電位よりも0.5V以上高くなるような材料系を選択すると好ましい。ここで、負極20上での還元電位は、リチウム基準(vs Li/Li+)とする。このような主溶媒と添加剤との組み合わせとしては、PC(還元電位が0.9V)とDTD(還元電位が1.9V)、PCとM−DTD(還元電位が2.0V)、PCとE−DTD(還元電位が2.0V)、PCとES(還元電位が1.9V)等が挙げられる。
【0044】
そして、上記した非水電解液が注入された外装体14の未封止の辺を熱接着する。この最後に熱接着された辺からは、正負両極18,20から延びる一対の端子16が引き出されることになる。この状態での電池10の典型的な厚みは、0.5mm〜10mm程度である。
【0045】
次に、このようにして作製した電池10に対し、初期充電を行う(初期充電工程)。初期充電においては、上記した第1の電圧値よりも高く、第2の電圧値よりも低い所定電圧値に電池電圧を維持して充電を行う。すなわち、図6においてラインL2に示すように、主溶媒と添加剤との組み合わせとして、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値V1から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態P1と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値V1よりも高い第2の電圧値V2から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態P2と、を生じるような材料系を選択したため、第1の電圧値V1よりも高く、第2の電圧値V2よりも低い所定電圧値V3に電池電圧を維持すれば、負極電位は、添加剤の還元電位よりも低く、主溶媒の還元電位よりも高い所定電位に確実に維持される。これにより、主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせて、負極表面に不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができる。この初期充電は、電池の容量に合わせて、不働体皮膜の形成に十分な時間をかけて行う。
【0046】
このときの電池電圧の制御の様子を、図6においてラインL1で示す。図6に示すように、この初期充電は、定電圧値を上記所定電圧値V3とする定電流定電圧(CCCV)充電により行うと好ましい。このようにすれば、比較的高速な充電が行われ、効率よく初期充電を行うことが可能となる。なお、図6においては、比較のために定電流充電を継続した場合の電池電圧の変化の様子を、ラインL2で示している。また、このように電池電圧を制御したときの負極電位の変化の様子を、図7においてラインL1で示す。なお、図7においては、比較のために定電流充電を継続した場合の負極電位の変化の様子を、ラインL2で示している。図7に示すように、負極電位は、添加剤の還元電位φ1よりも低く、主溶媒の還元電位φ2よりも高い所定電位φ3に確実に維持される(φ1はφ2より0.5V以上高い)。
【0047】
このような初期充電を行うことにより、負極表面には不働体皮膜が均一に、且つ十分に形成されるため、負極における電解液分解やこれに伴う負極破壊などを生じるおそれが低減され、特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0048】
なお、電池電圧は、主溶媒の還元電位よりも0.2V以上高い所定電位に負極電位を維持するような所定電圧値に維持すると好ましい。このようにすれば、電池サイズや形状に起因する電流分布や、リチウムの濃度分極電解液分布等による負極電位の不均一性から生じ得る主溶媒の分解を抑制することができる。
【0049】
次に、上記の初期充電により負極表面に不働体皮膜が均一かつ十分に形成された電池10に対し、本充電を行う。この本充電では、通常は満充電とするが、必ずしも満充電としなくてもよい。また、この本充電は2段でも3段でも複数回に分けて行ってもよい。この本充電は、定電圧充電、定電流充電、定電流定電圧充電のいずれにより行ってもよいが、過充電の防止及び効率の観点から定電流定電圧充電が好ましい。なお、これら初期充電及び本充電を行う際の温度条件は、0℃〜80℃、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃である。
【0050】
このようにして、負極表面に不働体皮膜が均一且つ十分に形成された、特性の劣化を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池が製造される。
【0051】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
実施例1では、以下の手順でリチウムイオン二次電池を作製した。
【0053】
まず、正極を作製した。正極の作製では、正極活物質として90重量部のLiMn0.33Ni0.33Co0.34O2(但し、式中の数字は原子比を示す)と、導電助剤として6重量部のアセチレンブラックと、バインダーとして4重量部のポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、プラネタリーミキサによって混合分散した後、適量のNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を加えて粘度調整し、スラリー状の塗布液を得た。
【0054】
次に、得られた塗布液を集電体としてのアルミニウム箔(20μm)上にドクターブレード法により塗布して乾燥させた。このときの塗布量は、活物質担持量が26.5mg/cm2となるようにした。そして、活物質が塗布された集電体を空孔率が28%となるようにカレンダーロールによってプレスし、プレス後に83mm×102mmのサイズに打ち抜いた。このようにして、正極を作製した。そして、正極の一部をリボン状に延長して、正極側の端子を形成した。
【0055】
次に、負極を作製した。負極の作製では、負極活物質として92重量部の人造黒鉛と、バインダーとして8重量部のPVdFとを、プラネタリーミキサによって混合分散した後、適量のNMPを加えて粘度調整し、スラリー状の塗布液を得た。
【0056】
次に、得られた塗布液を集電体としての銅箔(15μm)上にドクターブレード法により塗布して乾燥させた。このときの塗布量は、活物質担持量が14.0mg/cm2となるようにした。そして、活物質が塗布された集電体を空孔率が30%となるようにカレンダーロールによってプレスし、プレス後に83mm×102mmのサイズに打ち抜いた。このようにして、負極を作製した。そして、負極の一部をリボン状に延長して、負極側の端子を形成した。
【0057】
次に、84mm×104mmのサイズに打ち抜いたポリオレフィンセパレータ(厚み25μm、ガーレ通気時間100秒)を、正極と負極の間に介在させるようにして正極と負極とを所定数だけ積層して行き、両端面を熱圧着して電池素体を作製した。
【0058】
次に、非水電解液を以下の手順で合成した。溶媒としては、非水電解質溶媒であるエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とを混合した混合溶媒を用いた。混合溶媒の混合比率はEC:PC=50:50(体積比)とした。また、電解質塩としてはLiPF6を用い、塩濃度は1.5Mとした。そして、上記非水電解質溶媒と電解質塩とを混合した溶液に、添加剤として5重量部の1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を溶解させて、非水電解液を得た。
【0059】
次に、アルミラミネートからなる三方封止の外装体を用意した。そして、減圧環境下で上記のようにして作製した電池素体を外装体に挿入し、更に外装体内に上記のようにして作製した非水電解液を注入して、電池素体に含浸させた。次いで、減圧状態のままで外装体の未シール部分を熱融着により封止した。
【0060】
このようにして電池素体を外装体内に封止した封止物に対し、500mA/2.8Vの条件でCCCV(定電流定電圧)法により初期充電を10時間行った。この2.8Vという電圧は、図1に示すように、DTDの還元分解に起因するプラトー状態が始まる2.5Vと、PCの還元分解に起因するプラトー状態が始まる3Vとの間で定めた。その後、500mA/4.2Vの条件でCCCV(定電流低電圧)法により本充電を8時間行った。そして、500mA/2.5VカットオフのCC(定電流)放電を1サイクル行い、容量が2500mAhで、外形が横89mm、縦115mm、厚さ3mmのリチウムイオン二次電池を得た。
(比較例1)
500mA/3.6Vの条件でCCCV法により初期充電(10時間)を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
添加剤としてDTDの替わりにビニレンカーボネート(VC)を添加し、500mA/2.9Vの条件でCCCV法により初期充電(10時間)を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
500mA/3.6Vの条件でCCCV法により初期充電(10時間)を行った以外は、比較例2と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0061】
上記実施例1及び比較例1〜3で製造したリチウムイオン二次電池の初期特性を評価した後、1C充放電にてサイクル特性を評価した。ここで、1Cとは電池を1時間で満充電から完全放電状態(あるいはその逆)にする電流値を指す。図8は、これら実施例1及び比較例1〜3に係る電池に対して行ったサイクル特性の評価の結果を示すグラフである。図8において、ラインL1は実施例1の結果を示し、ラインL2は比較例1の結果を示し、ラインL3は比較例2の結果を示し、ラインL4は比較例3の結果を示す。
【0062】
図8に示すように、比較例1では、初期充電での維持電圧を、PCの分解に起因するプラトー領域が始まる3Vよりも高い3.6Vに維持しているため、負極上に不働体皮膜が十分に形成される前にPCの分解が始まり、その結果、ラインL2に示すようにサイクル特性が劣化するものと考えられる。また、比較例2では、PCとVCとの還元電位の差が0.2〜0.4Vと小さく、電池内での電流分布や分極等により、実際にはPC分解電圧とVC分解電圧との間に電池電圧を維持することが困難であるため、比較例3と同様にPC分解とVC分解が混合して起きてしまい、その結果、ラインL3に示すようにラインL4とほぼ同程度にサイクル特性が劣化するものと考えられる。これに対し、図8においてラインL1で示すように、実施例1に係る電池では、比較例1〜3に係る電池に比べ、放電容量の経時的な劣化が抑制され、優れたサイクル特性を示している事が分かる。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記した実施形態では、初期充電を定電流定電圧充電により行ったが、定電圧充電により行ってもよい。ただし、電圧緻密で均一な皮膜形成の観点からは定電流定電圧充電が好ましい。
【0065】
また、上記した実施形態では積層型のリチウムイオン二次電池の製造について説明したが、これに限らず円筒型(捲回型)等、他の構造の電池の製造にも適用可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、負極表面に不働体皮膜が十分に形成され、特性の劣化が抑制されたリチウムイオン二次電池の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】3種類のリチウムイオン二次電池に対して定電流充電を行ったときの、電池電圧の変化を示すグラフである。
【図2】積層型のリチウムイオン二次電池の外観構成を示す図である。
【図3】図2のIII−III線で切った断面を示す図である。
【図4】外装体内に収容される電池素体の構成を示す図である。
【図5】外装体内に電池素体を収容する様子を示す図である。
【図6】初期充電において、電池電圧の制御の様子を示すグラフである。
【図7】初期充電において、負極電位の変化の様子を示すグラフである。
【図8】実施例1及び比較例1〜3に係る電池に対して行ったサイクル特性の評価の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10…リチウムイオン二次電池、12…電池素体、14…外装体、16…端子、18…正極、20…負極、V1…第1の電圧値、V2…第2の電圧値、P1…第1プラトー状態、P2…第2プラトー状態。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯機器の発展は目覚ましく、その原動力として高エネルギー電池によるところが大きい。特に、リチウムイオン二次電池は、次世代電池の主力として期待されている。このようなリチウムイオン二次電池の開発では、より高性能化を図るため、正極、負極、及び電解液等の構成要素の改良が進められている。特に、負極表面での電解質の分解による特性の劣化を抑制するため、種々の改良が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電解液溶媒としてエチレンカーボネート(EC)のような環状カーボネートを用いた電解液中に、添加剤として1,3−プロパンスルトンを含有させることにより、初期充電時のEC還元分解前に負極炭素材料表面にて1,3−プロパンスルトンを還元させ、炭素材料表面を不働体皮膜で被覆する技術が開示されている。ここで、不働体皮膜は、電解液中に添加された添加剤の分解に起因して、負極表面を被覆するように形成される膜であって、リチウムイオンの透過性が良好で、負極おける電解液の分解反応を抑制する作用を有する膜である。これにより、電解液の分解やこれに伴う負極の劣化を抑制しようとしている。
【0004】
また、例えば特許文献2や特許文献3には、電解液溶媒として低温特性を向上させるために好適なプロピレンカーボネート(PC)に、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を含有させることにより、初期充電時のPC還元分解前に負極炭素材料表面にてVCを還元分解させ、炭素材料表面を不働体皮膜で被覆する技術が開示されている。これにより、電解液の分解やこれ伴う負極の劣化を抑制しようとしている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に開示の技術では、炭素材料表面の不働体皮膜の形成が不十分であり、実際には炭素材料表面で環状カーボネートの分解が生じることで、特性劣化が生じるという問題があった。
【0006】
そこで、例えば特許文献4には、主溶媒である環状カーボネートに添加剤としてVCを含有させ、初期充電において環状カーボネートが分解する還元電位よりも高く、且つ、VCが分解する還元電位よりも低い電位に負極電位を保ちながら充電することで、炭素材料表面に不働体皮膜を均一、且つ十分に形成させようとする技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−3724号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−45545号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−167797号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−325988号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特許文献4に開示の技術においても、実際には炭素材料表面に不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができず、経時的な特性の劣化を招くことがあった。
【0012】
本発明は、上記した課題を解決するために為されたものであり、負極表面に不働体皮膜を均一且つ十分に形成して、特性の劣化を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、添加剤及び主溶媒として、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値よりも高い第2の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態と、を生じるような材料系を選択し、第1の電圧値よりも高く、第2の電圧値よりも低い電圧値に電池電圧を維持して充電を行う初期充電工程を備えることを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、負極表面において主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせて、負極表面に添加剤による不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができる。従って、負極における電解液分解やこれに伴う負極破壊などを生じるおそれが低減され、特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、添加剤の負極上での還元電位は、主溶媒の負極上での還元電位よりも0.5V以上高いことを特徴としてもよい。このような材料系を選択すれば、定電流充電を行ったとき、電池電圧の変化に添加剤の分解に起因する第1プラトー状態と、主溶媒の分解に起因する第2プラトー状態とを生じさせ得るため好ましい。
【0016】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、主溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)を含むことを特徴としてもよい。このようにすれば、低温特性に優れた電池を製造することができる。
【0017】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を含むことを特徴としてもよい。DTDはVCと比較して還元電位が高いため、主溶媒の還元電位との間で還元電位の差を大きくするのに好ましい。特に、PCとDTDとの組み合わせによれば、PCとDTDとの還元電位の差を1V程度にすることができるため好ましい。
【0018】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法において、初期充電工程では、維持される電圧値を定電圧値とする定電流定電圧充電により充電を行うことを特徴としてもよい。このようにすれば、効率よく初期充電を行うことが可能となる。
【0019】
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、添加剤及び主溶媒として、添加剤の負極上での還元電位が、主溶媒の負極上での還元電位よりも0.5V以上高い材料系を選択し、添加剤の還元電位よりも低く、主溶媒の還元電位よりも高い所定電位に負極電位を維持して充電を行う初期充電工程を備えることを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、負極表面において主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせて、負極表面に添加剤による不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができる。その結果、負極における電解液分解やこれに伴う負極破壊などを生じるおそれが低減され、特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0021】
また本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、主溶媒の還元電位よりも0.2V以上高い所定電位に負極電位を維持して充電を行うことを特徴としてもよい。このようにすれば、電池サイズや形状に起因する電流分布や、リチウムの濃度分極電解液分布等による負極電位の不均一性から生じ得る主溶媒の分解を抑制することができるため好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
まず、本発明を想到するに至った経緯について説明する。発明者は、主溶媒としての環状カーボネートと添加剤としてのビニレンカーボネート(VC)を使用するリチウムイオン二次電池について鋭意研究した。そして、主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせるような電池電圧を探るべく、定電流による初期充電実験を行った。
【0024】
図1は、3種類のリチウムイオン二次電池に対して定電流充電を行ったときの、電池電圧の変化を示すグラフである。ここで、電池容量は180mAhとし、充電レートを0.05Cの9mAとした。充電時の温度は25℃であった。なお、電池は積層型とし、正極は活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を含むものとし、負極は活物質として人造黒鉛を含むものとした。なお、詳細な構成は後述する実施例で説明するものと同様である。図1において、ラインL1は環状カーボネートとしてのエチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)(体積比1:1)に、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を添加(5重量%)した場合のグラフを示す。
【0025】
図1に示すように、ラインL1の場合は、PCの還元分解に起因して3V付近から電池電圧の上昇が緩やかになるプラトー領域が見られるものの、VCの還元分解に起因するプラトー領域が見られないことが分かった。これは、VCとPCの還元分解電位が近いため、電池内部での分極差等によりVCとPCの還元分解が競合して生じているためと考えた。従って、環状カーボネートを分解させず、添加剤だけを分解させるように電池電圧を制御することは極めて困難で、これが不働体皮膜の形成が不完全になる原因であることを見出した。
【0026】
そこで、発明者は主溶媒としての環状カーボネートの還元電位と添加剤の還元電位とを遠ざけることを考えた。そして、環状カーボネートと添加剤との組み合わせについて種々検討し、環状カーボネートの還元分解に起因して電池電圧の上昇が緩やかになるプラトー領域と、添加剤の還元分解に起因して電池電圧の上昇が緩やかになるプラトー領域とを生じさせる材料系を見出した。図1において、ラインL2は環状カーボネートとしてのEC及びPC(体積比1:1)に、添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を添加(5重量%)した場合のグラフを示す。図1に示すように、ラインL2の場合は、添加剤の還元分解に起因して2.5V程度の電池電圧から始まるプラトー領域と、環状カーボネートの還元分解に起因して3V程度の電池電圧から始まるプラトー領域とが見られる。従って、2.5Vから3Vの間に電池電圧を維持するようにして初期充電を行えば、環状カーボネートの分解は生じさせずに負極表面にDTDの不働体皮膜を均一かつ十分に形成することができることが分かった。
【0027】
なお、図1においてラインL3は、環状カーボネートとしてのEC及びPC(体積比1:1)に添加剤を添加しない場合のグラフを示す。ラインL3に示されるように、この場合は3V付近で環状カーボネートの分解が始まり、その分解にエネルギーが費やされて電池電圧がほとんど上昇しなくなる。これに対し、ラインL1の場合は負極表面に多少なりの不働体皮膜が形成されるため、添加剤を添加しないラインL3の場合と比べて3V付近から緩やかな電圧上昇が見られる。
【0028】
発明者は、環状カーボネートの還元分解に起因するプラトー領域と、添加剤の還元分解に起因するプラトー領域とを生じさせるための材料系の条件について更に考察を進めた。そして、DTDが負極表面で還元分解を始める還元電位が1.9V(vs Li/Li+)程度であり、PCが負極表面で還元分解を始める還元電位が0.9V(vs Li/Li+)程度であって、その差が1V程度であるのに対し、電池電圧で見たときには2つのプラトー領域の開始電圧の差が0.5V程度になることに着目した。これは、電池内での電流分布のバラツキや分極等から生じるものと考えた。このことから、2つのプラトー領域を生じさせるためには、主溶媒と添加剤との還元電位の差が0.5V以上必要であると考えた。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0029】
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、単に電池ともいう)の製造方法により製造される電池は、正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、正極、負極及び非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いて製造される。その構造は特に限定されず、例えば積層型であっても円筒型(捲回型)であってもよい。本実施形態では、積層型の電池の製造について説明する。
【0031】
まず、図2〜4に示すような構成の積層型の電池を作製する。図2は、電池の外観構成を示す斜視図である。また、図3は図2のIII−III線で切った断面を示す図である。この電池10は、図2及び図3に示すように、電池素体12と、電池素体12を収容する外装体14とを備え、外形が矩形状をなす。そして、正極及び負極から延ばされた一対の端子16が外装体14の一辺から引き出されている。
【0032】
電池素体12は、図4に示すように、正極18と負極20とがセパレータ22を介して交互に積層された積層構造を有する。この積層数は、所望の厚みに応じて任意に選択することができる。図4では、負極20、セパレータ22、正極18、セパレータ22、及び負極20が順次積層された2層構造の場合を示している。
【0033】
正極18は、集電体層24と集電体層24上に設けられた活物質含有層26とを有している。集電体層24は、アルミニウム箔等から形成されている。ただし、集電体層24は金属メッシュから形成してもよい。活物質含有層26は、正極活物質及び結着剤を含む正極材料から形成されている。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なLixMyOz(ただし、Mは1種以上の遷移金属元素を表し、xは0.1≦1.10である)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。具体的には、遷移金属元素は、Co、Mn、Ni、及びVから選択される1種または2種以上であり、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiV2O4等が挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。かかる正極活物質含有層26は、厚みが50〜400μm程度に形成される。なお、正極18の一部はリボン状に延長され、正極側の端子16が形成されている。
【0034】
負極20は、集電体層28と集電体層28上に設けられた活物質含有層30とを有している。集電体層28は、銅箔、ニッケル箔等から形成されている。ただし、集電体層28は金属メッシュから形成してもよい。活物質含有層30は、負極活物質及び結着剤を含む負極材料から形成されている。負極活物質としては、炭素材料、金属リチウム、リチウム合金あるいは酸化物等のリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンファイバ、コークス類、ガラス状炭素、有機化合物焼成体等が挙げられる。また、リチウム合金では、Li−Al、LiSi、LiSn等が挙げられる。酸化物としては、Nb2O5、SnO等が挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。かかる負極活物質含有層30は、厚みが50〜400μm程度に形成される。なお、負極20の一部はリボン状に延長され、負極側の端子16が形成されている。
【0035】
なお、正極活物質含有層26及び負極活物質含有層30には必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
【0036】
セパレータ22は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、セルロース類などからなる多孔膜フィルム、織布、不織布などから形成されている。かかるセパレータ22は、厚みが5〜50μm程度に形成される。
【0037】
外装体14は、金属層及び金属層を挟み込む樹脂層を含む金属ラミネートから形成されている。金属層は、アルミ等のガスバリア性の高い金属から形成すると好ましい。樹脂層は、電気絶縁性を有する樹脂から形成すると好ましい。特に、金属層を挟んで一方の樹脂層(電池素体と対面する内側の層)は、熱融着可能な熱接着性樹脂から形成すると好ましい。
【0038】
例えば、熱接着性樹脂であるポリプロピレン(PP)、アルミ、ナイロン(Ny)からなる三層構造のアルミラミネートは、外装体14を形成する材料として好適であり、これら三層の典型的な厚みはそれぞれ30μm、40μm、25μmである。
【0039】
この外装体14は、予め2枚のラミネートフィルムをそれらの3辺で熱接着して、1辺が開口した袋状に形成される。あるいは、一枚のラミネートフィルムを2つ折りにし、両側辺の端面を熱接着して1辺が開口した袋状に形成される。このような1辺が開口した袋状の外装体14内に、図5に示すように、前述した電池素体12を収容する。そして、不働体皮膜を形成するための添加剤を添加した非水電解液を外装体14内に注入する。この非水電解液がセパレータ22に含浸され、電解質層が形成される。
【0040】
非水電解液を構成する溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等が挙げられる。この中でも、PC及びEC等の環状カーボネートが好ましく、特に低温特性を向上させるためにはPCが好ましい。これら溶媒は単独でも、あるいは2種以上を混合して用いてもよいが、PCが50体積%以上、特に80体積%以上含有されると好ましい。ここで、本明細書では、2種以上の溶媒を混合して用いる場合は、負極20上で還元分解する還元電位が最も高い溶媒を主溶媒と言う。
【0041】
上記した溶媒に溶解されるリチウムイオンを含む支持塩としては、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiN(CF3CF2CO)2などの塩、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
不働体皮膜を形成するための添加剤としては、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)、4−メチル−1,3,2−ジオヘキサチオラン−2,2ジオヘキサイド(M−DTD)、4−エチル−1,3,2−ジオヘキサチオラン−2,2ジオヘキサイド(E−DTD)、1,3−プロパンスルホン、エチレンサルファイド(ES)等が挙げられる。添加剤の添加量は、非水電解液に対して0.05〜50重量%、好ましくは1〜10重量%、特に3〜7重量%である。なお、この添加剤は正極18あるいは負極20に混入させてもよく、その場合は正極18あるいは負極20材料に対して0.05〜50重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0043】
ここで、主溶媒と添加剤との組み合わせとしては、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値よりも高い第2の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態と、を生じるような材料系を選択する。そのためには、添加剤が負極20上で還元分解を始める還元電位が、主溶媒が負極20上で還元分解を始める還元電位よりも0.5V以上高くなるような材料系を選択すると好ましい。ここで、負極20上での還元電位は、リチウム基準(vs Li/Li+)とする。このような主溶媒と添加剤との組み合わせとしては、PC(還元電位が0.9V)とDTD(還元電位が1.9V)、PCとM−DTD(還元電位が2.0V)、PCとE−DTD(還元電位が2.0V)、PCとES(還元電位が1.9V)等が挙げられる。
【0044】
そして、上記した非水電解液が注入された外装体14の未封止の辺を熱接着する。この最後に熱接着された辺からは、正負両極18,20から延びる一対の端子16が引き出されることになる。この状態での電池10の典型的な厚みは、0.5mm〜10mm程度である。
【0045】
次に、このようにして作製した電池10に対し、初期充電を行う(初期充電工程)。初期充電においては、上記した第1の電圧値よりも高く、第2の電圧値よりも低い所定電圧値に電池電圧を維持して充電を行う。すなわち、図6においてラインL2に示すように、主溶媒と添加剤との組み合わせとして、定電流充電を行ったとき、添加剤の分解に起因して第1の電圧値V1から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態P1と、主溶媒の分解に起因して第1の電圧値V1よりも高い第2の電圧値V2から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態P2と、を生じるような材料系を選択したため、第1の電圧値V1よりも高く、第2の電圧値V2よりも低い所定電圧値V3に電池電圧を維持すれば、負極電位は、添加剤の還元電位よりも低く、主溶媒の還元電位よりも高い所定電位に確実に維持される。これにより、主溶媒の分解を生じさせずに添加剤の分解を生じさせて、負極表面に不働体皮膜を均一に、且つ十分に形成することができる。この初期充電は、電池の容量に合わせて、不働体皮膜の形成に十分な時間をかけて行う。
【0046】
このときの電池電圧の制御の様子を、図6においてラインL1で示す。図6に示すように、この初期充電は、定電圧値を上記所定電圧値V3とする定電流定電圧(CCCV)充電により行うと好ましい。このようにすれば、比較的高速な充電が行われ、効率よく初期充電を行うことが可能となる。なお、図6においては、比較のために定電流充電を継続した場合の電池電圧の変化の様子を、ラインL2で示している。また、このように電池電圧を制御したときの負極電位の変化の様子を、図7においてラインL1で示す。なお、図7においては、比較のために定電流充電を継続した場合の負極電位の変化の様子を、ラインL2で示している。図7に示すように、負極電位は、添加剤の還元電位φ1よりも低く、主溶媒の還元電位φ2よりも高い所定電位φ3に確実に維持される(φ1はφ2より0.5V以上高い)。
【0047】
このような初期充電を行うことにより、負極表面には不働体皮膜が均一に、且つ十分に形成されるため、負極における電解液分解やこれに伴う負極破壊などを生じるおそれが低減され、特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0048】
なお、電池電圧は、主溶媒の還元電位よりも0.2V以上高い所定電位に負極電位を維持するような所定電圧値に維持すると好ましい。このようにすれば、電池サイズや形状に起因する電流分布や、リチウムの濃度分極電解液分布等による負極電位の不均一性から生じ得る主溶媒の分解を抑制することができる。
【0049】
次に、上記の初期充電により負極表面に不働体皮膜が均一かつ十分に形成された電池10に対し、本充電を行う。この本充電では、通常は満充電とするが、必ずしも満充電としなくてもよい。また、この本充電は2段でも3段でも複数回に分けて行ってもよい。この本充電は、定電圧充電、定電流充電、定電流定電圧充電のいずれにより行ってもよいが、過充電の防止及び効率の観点から定電流定電圧充電が好ましい。なお、これら初期充電及び本充電を行う際の温度条件は、0℃〜80℃、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃である。
【0050】
このようにして、負極表面に不働体皮膜が均一且つ十分に形成された、特性の劣化を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池が製造される。
【0051】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
実施例1では、以下の手順でリチウムイオン二次電池を作製した。
【0053】
まず、正極を作製した。正極の作製では、正極活物質として90重量部のLiMn0.33Ni0.33Co0.34O2(但し、式中の数字は原子比を示す)と、導電助剤として6重量部のアセチレンブラックと、バインダーとして4重量部のポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、プラネタリーミキサによって混合分散した後、適量のNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を加えて粘度調整し、スラリー状の塗布液を得た。
【0054】
次に、得られた塗布液を集電体としてのアルミニウム箔(20μm)上にドクターブレード法により塗布して乾燥させた。このときの塗布量は、活物質担持量が26.5mg/cm2となるようにした。そして、活物質が塗布された集電体を空孔率が28%となるようにカレンダーロールによってプレスし、プレス後に83mm×102mmのサイズに打ち抜いた。このようにして、正極を作製した。そして、正極の一部をリボン状に延長して、正極側の端子を形成した。
【0055】
次に、負極を作製した。負極の作製では、負極活物質として92重量部の人造黒鉛と、バインダーとして8重量部のPVdFとを、プラネタリーミキサによって混合分散した後、適量のNMPを加えて粘度調整し、スラリー状の塗布液を得た。
【0056】
次に、得られた塗布液を集電体としての銅箔(15μm)上にドクターブレード法により塗布して乾燥させた。このときの塗布量は、活物質担持量が14.0mg/cm2となるようにした。そして、活物質が塗布された集電体を空孔率が30%となるようにカレンダーロールによってプレスし、プレス後に83mm×102mmのサイズに打ち抜いた。このようにして、負極を作製した。そして、負極の一部をリボン状に延長して、負極側の端子を形成した。
【0057】
次に、84mm×104mmのサイズに打ち抜いたポリオレフィンセパレータ(厚み25μm、ガーレ通気時間100秒)を、正極と負極の間に介在させるようにして正極と負極とを所定数だけ積層して行き、両端面を熱圧着して電池素体を作製した。
【0058】
次に、非水電解液を以下の手順で合成した。溶媒としては、非水電解質溶媒であるエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とを混合した混合溶媒を用いた。混合溶媒の混合比率はEC:PC=50:50(体積比)とした。また、電解質塩としてはLiPF6を用い、塩濃度は1.5Mとした。そして、上記非水電解質溶媒と電解質塩とを混合した溶液に、添加剤として5重量部の1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を溶解させて、非水電解液を得た。
【0059】
次に、アルミラミネートからなる三方封止の外装体を用意した。そして、減圧環境下で上記のようにして作製した電池素体を外装体に挿入し、更に外装体内に上記のようにして作製した非水電解液を注入して、電池素体に含浸させた。次いで、減圧状態のままで外装体の未シール部分を熱融着により封止した。
【0060】
このようにして電池素体を外装体内に封止した封止物に対し、500mA/2.8Vの条件でCCCV(定電流定電圧)法により初期充電を10時間行った。この2.8Vという電圧は、図1に示すように、DTDの還元分解に起因するプラトー状態が始まる2.5Vと、PCの還元分解に起因するプラトー状態が始まる3Vとの間で定めた。その後、500mA/4.2Vの条件でCCCV(定電流低電圧)法により本充電を8時間行った。そして、500mA/2.5VカットオフのCC(定電流)放電を1サイクル行い、容量が2500mAhで、外形が横89mm、縦115mm、厚さ3mmのリチウムイオン二次電池を得た。
(比較例1)
500mA/3.6Vの条件でCCCV法により初期充電(10時間)を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
添加剤としてDTDの替わりにビニレンカーボネート(VC)を添加し、500mA/2.9Vの条件でCCCV法により初期充電(10時間)を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
500mA/3.6Vの条件でCCCV法により初期充電(10時間)を行った以外は、比較例2と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0061】
上記実施例1及び比較例1〜3で製造したリチウムイオン二次電池の初期特性を評価した後、1C充放電にてサイクル特性を評価した。ここで、1Cとは電池を1時間で満充電から完全放電状態(あるいはその逆)にする電流値を指す。図8は、これら実施例1及び比較例1〜3に係る電池に対して行ったサイクル特性の評価の結果を示すグラフである。図8において、ラインL1は実施例1の結果を示し、ラインL2は比較例1の結果を示し、ラインL3は比較例2の結果を示し、ラインL4は比較例3の結果を示す。
【0062】
図8に示すように、比較例1では、初期充電での維持電圧を、PCの分解に起因するプラトー領域が始まる3Vよりも高い3.6Vに維持しているため、負極上に不働体皮膜が十分に形成される前にPCの分解が始まり、その結果、ラインL2に示すようにサイクル特性が劣化するものと考えられる。また、比較例2では、PCとVCとの還元電位の差が0.2〜0.4Vと小さく、電池内での電流分布や分極等により、実際にはPC分解電圧とVC分解電圧との間に電池電圧を維持することが困難であるため、比較例3と同様にPC分解とVC分解が混合して起きてしまい、その結果、ラインL3に示すようにラインL4とほぼ同程度にサイクル特性が劣化するものと考えられる。これに対し、図8においてラインL1で示すように、実施例1に係る電池では、比較例1〜3に係る電池に比べ、放電容量の経時的な劣化が抑制され、優れたサイクル特性を示している事が分かる。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記した実施形態では、初期充電を定電流定電圧充電により行ったが、定電圧充電により行ってもよい。ただし、電圧緻密で均一な皮膜形成の観点からは定電流定電圧充電が好ましい。
【0065】
また、上記した実施形態では積層型のリチウムイオン二次電池の製造について説明したが、これに限らず円筒型(捲回型)等、他の構造の電池の製造にも適用可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、負極表面に不働体皮膜が十分に形成され、特性の劣化が抑制されたリチウムイオン二次電池の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】3種類のリチウムイオン二次電池に対して定電流充電を行ったときの、電池電圧の変化を示すグラフである。
【図2】積層型のリチウムイオン二次電池の外観構成を示す図である。
【図3】図2のIII−III線で切った断面を示す図である。
【図4】外装体内に収容される電池素体の構成を示す図である。
【図5】外装体内に電池素体を収容する様子を示す図である。
【図6】初期充電において、電池電圧の制御の様子を示すグラフである。
【図7】初期充電において、負極電位の変化の様子を示すグラフである。
【図8】実施例1及び比較例1〜3に係る電池に対して行ったサイクル特性の評価の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10…リチウムイオン二次電池、12…電池素体、14…外装体、16…端子、18…正極、20…負極、V1…第1の電圧値、V2…第2の電圧値、P1…第1プラトー状態、P2…第2プラトー状態。
Claims (5)
- 正極及び負極と、主溶媒を含む非水電解液と、該正極、該負極及び該非水電解液の少なくともいずれかに添加される不働体皮膜を形成するための添加剤と、を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、
前記添加剤及び前記主溶媒として、定電流充電を行ったとき、該添加剤の分解に起因して第1の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第1プラトー状態と、該主溶媒の分解に起因して該第1の電圧値よりも高い第2の電圧値から電池電圧の上昇が緩やかになる第2プラトー状態と、を生じるような材料系を選択し、
前記第1の電圧値よりも高く、前記第2の電圧値よりも低い電圧値に電池電圧を維持して充電を行う初期充電工程を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。 - 前記添加剤の前記負極上での還元電位は、前記主溶媒の該負極上での還元電位よりも0.5V以上高いことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
- 前記主溶媒としてプロピレンカーボネートを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
- 前記添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
- 前記初期充電工程では、維持される前記電圧値を定電圧値とする定電流定電圧充電により充電を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
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