JP4686852B2 - 非水電解液電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極と負極とがセパレータを介して巻回されてなる電極体を備える非水電解液電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型ビデオテープレコーダ、携帯電話、携帯用コンピュータ等のポータブル型電子機器が多く登場している。これら電子機器の小型軽量化が図られるのに伴い、上記電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求に対応した電池として、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極および負極と、非水溶媒に電解質塩を溶解してなる非水電解液とから構成され、高出力、高エネルギー密度などの利点を有している非水電解液電池、いわゆるリチウムイオン電池が開発され、実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、正極活物質として例えばLiCoO2を用いた非水電解液電池を例えば電池電圧0Vまで過放電した場合、負極電位は貴へと変化し、電池電圧0Vの時には正極電位と同じ3.8V(vs.Li/Li+)に到達する。これに対して、負極集電体として用いられているCu、Ni等の金属材料の溶出電位は、LiCoO2の放電電位である3.8V(vs.Li/Li+)よりも低い。このため、過放電により負極電位が正極の放電電位に到達した場合、CuやNi等の金属箔からなる負極集電体は腐食されてしまう。
【0005】
負極集電体が腐食された場合、負極活物質層が負極集電体から剥離してしまうため、充電時において、負極でのリチウムのインターカレートが妨げられてしまう。また、負極集電体から非水電解液中に溶けだした金属イオン、例えば銅イオンが充電時に負極活物質上に析出してしまうので、負極でのリチウムのインターカレートが妨げられてしまう。このため、負極が正常に機能しなくなり、電池性能が低下するという問題がある。
【0006】
また、上述のように負極集電体が腐食された非水電解液電池を充放電し続けると、負極集電体上で負極活物質が剥離した部分や負極活物質上で銅が析出した部分において、充電時に非水電解液が分解され、この分解反応によりガスが発生してしまう。電極体がラミネートフィルムで外装されてなる非水電解液電池では、非水電解液の分解反応により生じたガスがラミネートフィルム中に充満してしまうと、ラミネートフィルムは形状自在な材質であるため、ラミネートフィルムの膨れが生じて電池サイズが増大してしまい、電池形状を維持できないという問題がある。特に、ガス発生が激しい場合、ガスによりラミネートフィルムが開裂し、非水電解液が漏液するという問題がある。
【0007】
そこで、一般の非水電解液電池では、一定電圧に達すると放電を自動的に停止する保護回路を設けて、過放電を防止している。しかし、この保護回路は高価であり、非水電解液電池の製造コストが増大してしまう。製造コストの低減を図るうえでは非水電解液電池から保護回路を取り除くことが求められるが、過放電が防止されなくなるため、負極集電体が腐食されて上述した種々の問題が生じる可能性がある。
【0008】
したがって、本発明は、過放電により負極集電体が腐食されない非水電解液電池、すなわち、電池電圧0Vまでの過放電が可能である非水電解液電池を提供することを目的に提案されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る非水電解液電池は、正極活物質として、一般式LixFe1−yMyPO4(但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはMnである。)で表される化合物と、上記Li x Fe 1−y M y PO 4 で表される化合物よりも放電電位が貴であり、一般式Li x Co 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.01であり、MはNi、Alである。)で表される化合物、一般式Li x Ni 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはCoである。)で表される化合物、一般式Li x Mn 2−y M y O 4 (但し、式中、x=1、y0又は0.05であり、MはFeである。)で表される化合物のうち少なくとも1種以上を含有する正極合剤層を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を含有する負極合剤層が形成された負極と、非水電解液とを備え、正極と負極とがセパレータを介して巻回されてなる電極体が、ラミネートフィルムで外装されている。
【0010】
以上のように構成される本発明に係る非水電解液電池では、正極活物質として、一般式LixFe1−yMyPO4 (但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはMnである。)で表される化合物を用いている。この一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物は、負極集電体を構成する金属材料の溶出電位よりも卑である放電電位を有している。更に、正極活物質として、Li x Fe 1−y M y PO 4 で表される化合物よりも放電電位が貴であり、一般式Li x Co 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.01であり、MはNi、Alである。)で表される化合物、一般式Li x Ni 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはCoである。)で表される化合物、一般式Li x Mn 2−y M y O 4 (但し、式中、x=1、y0又は0.05であり、MはFeである。)で表される化合物のうち少なくとも1種以上を含有する。本発明にかかる非水電解液電池では、Li x Fe 1−y M y PO 4 で表される化合物よりも放電電位が貴の化合物を含有することによって、正極活物質のうち、放電電位の高い正極活物質から放電反応に利用され、平均放電電圧を高くすることができる。このため、電池電圧0Vまでの過放電により、負極電位が正極活物質の放電電位に達した場合においても、CuやNi等の金属材料からなる負極集電体は腐食されない。したがって、過放電後に充電されても、非水電解液は分解されず、ラミネートフィルム中にガスが発生することはない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明を適用して製造される非水電解液電池1は、図1に示すように、ラミネートフィルム2により外装されている電極体3を備える。
【0013】
ラミネートフィルム2としては、例えばナイロン、アルミニウム、ポリプロピレンが最上層から順に積層されてなる層状のフィルムを用いる。
【0014】
ここで、図1に示す線分A−A’により切断した非水電解液電池1の断面を、図2に示す。この電極体3は、正極活物質を含有する帯状の正極4と、負極活物質を含有する帯状の負極5とがセパレータ6を介して長手方向に巻回されたものである。また、この電極体3には、非水電解液が含浸されている。つまり、正極活物質、負極活物質およびセパレータ6に非水電解液が含浸されている。
【0015】
負極5は、図3に示すように、負極集電体7の両面に負極活物質層8が形成されたものである。また、負極集電体7の一端には、負極端子9が接続されている。
【0016】
負極集電体7としては、例えば銅箔等の金属箔を使用できる。
【0017】
負極活物質層8は、負極活物質および結着剤を含有する負極合剤を、負極集電体7上に塗布して乾燥させることにより形成される。
【0018】
負極活物質としては、リチウムをドープ、脱ドープ可能な材料を使用できる。このような材料としては、熱分解炭素類、コークス類、アセチレンブラック等のカーボンブラック類、黒鉛、ガラス状炭素、活性炭、炭素繊維、有機高分子焼成体、コーヒー豆焼成体、セルロース焼成体、竹焼成体等の炭素材料、リチウム合金、ポリアセチレン等の導電性ポリマーを使用できる。
【0019】
負極活物質層8に含有される結着剤としては、この種の非水電解液電池において負極活物質層の結合剤として通常用いられている公知の樹脂材料等を使用できる。
【0020】
正極4は、図4に示すように、正極集電体10の両面に正極活物質層11が形成されたものである。また、正極集電体10の一端には、正極端子12が接続されている。
【0021】
正極集電体10としては、例えばアルミニウム箔等の金属箔を使用できる。
【0022】
正極活物質層11は、正極活物質および結着剤を含有する正極合剤を、正極集電体10上に塗布して乾燥されることにより形成される。
【0023】
そして、この正極活物質は、オリビン構造を有し、一般式LixFe1−yMyPO4(但し、式中、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.8であり、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbのうち少なくとも1種以上である。)で表される化合物を含有する。
【0024】
正極活物質として、例えばLiCoO2のみを用いた非水電解液電池を過放電させた場合、負極電位は貴へと変化し、電池電圧0Vの時には正極電位と同じ3.8V(vs.Li/Li+)に到達する。これに対して、負極集電体として用いられているCu、Ni等の溶出電位は、LiCoO2の放電電位である3.8V(vs.Li/Li+)よりも低い。このため、過放電により負極電位が正極の放電電位に到達した場合、CuやNi等の金属箔からなる負極集電体は腐食されてしまう。
【0025】
負極集電体が腐食されると、負極活物質層が負極集電体から剥離してしまい、充電時においてリチウムのインターカレートが妨げられてしまう。また、負極集電体から非水電解液中に溶けだした金属イオン、例えば銅イオンが充電時において負極活物質上に析出してしまうので、リチウムのインターカレートが妨げられてしまう。このため、負極が正常に機能しなくなり、電池性能が低下する。
【0026】
さらに、負極集電体が腐食された状態で非水電解液電池の使用を続けると、負極集電体上で負極活物質層が剥離した部分や、負極活物質層上で銅が析出した部分において、充電時に非水電解液が分解されてしまい、この分解反応によりガスが発生する。特に、電極体をラミネートフィルム中に密封してなる非水電解液電池では、非水電解液の分解反応により生じたガスがラミネートフィルム中に充満してしまうと、ラミネートフィルムは形状自在な材質であるため、ラミネートフィルムの膨れが生じて電池サイズが増大してしまい、電池形状を維持できないことがある。特に、ガス発生が激しい場合、ガスによるラミネートフィルムの開裂が懸念される。
【0027】
これに対して、正極活物質としてLixFe1−yMyPO4が含有されている場合、放電末期における正極電位は、LixFe1−yMyPO4の放電電位である3.4V(vs.Li/Li+)になる。つまり、電池電圧が0Vになるまで過放電されたとしても、負極電位は、負極集電体7として使用されているCuやNi等の溶出電位よりも必ず卑な電位となるので、CuやNi等の金属箔からなる負極集電体7が腐食されることはない。したがって、過放電後に充電されても、非水電解液は分解されず、ラミネートフィルム2中にガスが発生することはない。なお、上記LixFe1−yMyPO4は、LiFePO4であることが好ましい。
【0028】
また、正極4は、正極活物質として、一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物よりも、放電電位が貴である正極活物質を含有することが好ましい。非水電解液電池1の放電反応は、正極4に含有される正極活物質のうち、放電電位の高い正極活物質から利用して進行する。つまり、非水電解液電池1の電池電圧は、放電反応の初期では放電電位が貴である正極活物質の放電電位と負極電位との差を示し、放電末期に近づくと一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物の放電電位と負極電位との差を示す。したがって、非水電解液電池1は、一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物よりも、放電電位が貴である正極活物質を併用することにより、平均放電電圧を高くすることができる。
【0029】
一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物よりも、放電電位が貴である正極活物質としては、具体的には、一般式LixCo1−yMyO2(但し、式中、0<x<2、0≦y<1であり、MはNi、Fe、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mo、W、Mg、Ca、Sr、Hbのうち少なくとも1種以上である。)で表される化合物(以下、リチウムコバルト複合酸化物と称する。)、一般式LixNi1−yMyO2(但し、式中、0<x<2、0≦y<1であり、MはCo、Fe、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mo、W、Mg、Ca、Sr、Hbのうち少なくとも1種以上である。)で表される化合物(以下、リチウムニッケル複合酸化物と称する。)、一般式LixMn2−yMyO4(但し、式中、0<x<2、0≦y<2であり、MはNi、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mo、W、Mg、Ca、Sr、Hbのうち少なくとも1種以上である。)で表される化合物(以下、リチウムマンガン複合酸化物と称する。)を使用できる。これらのうち少なくとも1種以上を含有することが好ましい。
【0030】
正極活物質層11に含有される結着剤としては、この種の非水電解液電池において正極活物質層の結合剤として通常用いられている公知の樹脂材料等を用いることができる。
【0031】
セパレータ6としては、この種の非水電解液電池において通常用いられている公知の材料等、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0032】
非水電解液は、非水溶媒中に電解質塩を溶解して調製されたものである。
【0033】
電解質塩としては、例えばLiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC4F9SO3等を、単独または混合して使用できる。
【0034】
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、酪酸メチル、プロピオン酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等を使用できる。なお、非水溶媒として、これら非水溶媒のうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
上述の非水電解液電池1は、以下に示す製造方法に従って製造される。先ず、LixFe1−yMyPO4を含有する正極4を作製する正極作製工程を行う。次に、負極活物質を含有する負極5を作製する負極作製工程を行う。次に、正極4と負極5とをセパレータ6を介して巻回してなる電極体3を形成する電極体形成工程を行う。次に、電極体3に非水電解液を含浸させる含浸工程を行う。次に、非水電解液が含浸された電極体3を、ラミネートフィルム2で外装する外装工程を行う。
【0036】
正極作製工程では、一般式LixFe1−yMyPO4(但し、式中、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.8であり、MはMn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nbのうち少なくとも1種以上である。)で表される化合物を含有する正極4を作製する。
【0037】
正極4を作製するには、まず、正極活物質としてLixFe1−yMyPO4、導電材および結着剤を均一に混合してなる正極合剤を溶剤中に分散させ、正極合剤スラリーを調製する。なお、正極合剤には、LixFe1−yMyPO4よりも放電電位が貴である正極活物質を含有させることが好ましい。LixFe1−yMyPO4よりも放電電位が貴である正極活物質としては、具体的には上述したリチウムコバルト複合酸化物(LixCo1−yMyO2)やリチウムニッケル複合酸化物(LixNi1−yMyO2)、リチウムマンガン複合酸化物(LixMn2−yMyO4)等を使用できる。
【0038】
ついで、この正極合剤スラリーを正極集電体10の両面上に均一に塗布し、塗膜を乾燥して正極活物質層11を形成した後、ロールプレス機でプレスして正極シートを作製する。ついで、この正極シートを所望の形状に切り出して、帯状の正極4を得る。なお、正極4の一端において正極活物質層11を削り取り、リード溶接部を設ける。そして、このリード溶接部に例えばアルミニウム製のリードを溶接して正極端子12とする。
【0039】
負極作製工程では、負極活物質を含有する負極5を作製する。負極5を作製するには、まず、上述した負極活物質および結着剤等を含有する負極合剤を負極集電体7の両面に均一に塗布し、塗膜を乾燥して負極活物質層8を形成した後、ロールプレス機でプレスして負極シートを作製する。
【0040】
ついで、この正極合剤スラリーを負極集電体7の両面上に均一に塗布し、塗膜を乾燥して負極活物質層8を形成した後、ロールプレス機でプレスして負極シートを作製する。ついで、この負極シートを所望の形状に切り出して、帯状の負極5を得る。なお、負極5の一端において負極活物質層8を削り取り、リード溶接部を設ける。そして、このリード溶接部に例えばニッケル製のリードを溶接して負極端子9とする。
【0041】
電極体形成工程では、正極4と負極5とをセパレータ6を介して巻回し、電極体3を形成する。
【0042】
含浸工程では、電極体3に非水電解液を含浸させる。これにより、正極活物質層11、負極活物質層8およびセパレータ6に、非水電解液が含浸される。
【0043】
外装工程では、非水電解液が含浸された電極体3を、ラミネートフィルム2で挟む。このとき、正極端子12および負極端子9がラミネートフィルム2の外部に導出されるようにする。ついで、ラミネートフィルム2の外部周縁部を、減圧下で熱融着することにより封口して封口部とする。このようにして、電極体3をラミネートフィルム2中に密封することで、非水電解液電池1を得る。
【0044】
また、非水電解液電池1の製造方法としては、上述した非水電解液電池1の製造方法に限定されず、例えば以下に示す製造方法であってもよい。
【0045】
まず、正極作製工程、負極作製工程および電極体形成工程を上述した非水電解液電池1の製造方法と同様にして行った後、非水電解液を含浸しない電極体3をラミネートフィルム2で外装する外装工程を行う。この外装工程では、正極端子12および負極端子9が導出される外部周縁部の一辺、およびこの一辺と隣接する両二辺を熱融着して封口し、残り一辺を封口せずに非水電解液の注入口とする。
【0046】
次に、電極体3に非水電解液を含浸させる含浸工程を行う。この含浸工程では、減圧下において、電極体3が収納されているラミネートフィルム2中に上記注入口から非水電解液を注入し、電極体3に非水電解液を含浸させる。
【0047】
次に、電極体3をラミネートフィルム2中に密封する密封工程を行う。この密封工程では、非水電解液の注入口を減圧下で熱融着する。これにより、非水電解液電池1を得る。
【0048】
以上のように構成される非水電解液電池1は、過放電等により電池電圧が0Vに達したり負極電位が正極活物質の放電電位に達した場合においても、CuやNi等の金属箔からなる負極集電体7が腐食されないので、過放電後に充電されても、非水電解液は分解されず、ラミネートフィルム2中にガスが発生することはない。したがって、非水電解液電池1は、電池電圧0Vまでの過放電をされても、電池特性が劣化せず、ラミネートフィルム2で外装された電池形状が維持される。つまり、この非水電解液電池1では、電池電圧0Vまで過放電させることが可能である。
【0049】
また、この非水電解液電池1は、電池電圧0Vまでの過放電が可能であるので、保護回路が設けられていなくても実用可能であり、ラミネートフィルム2が開裂することがないので漏液する虞がなく、安全性に優れる。
【0050】
なお、本実施の形態に係る非水電解液電池の形状は、円筒型、角型等、特に限定されることはなく、また、薄型、大型等の種々の大きさにすることができる。また、本発明は、一次電池および二次電池のいずれにも適用可能である。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実験結果に基づいて説明する。
【0052】
<サンプル1>
〔正極の作製〕
まず、正極合剤の成分として、正極活物質としてLiFePO4を90重量部と、導電材としてグラファイトを6重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを4重量部とを秤取った。ついで、これら各成分をN−メチルピロリドン中に分散させて、スラリー状の正極合剤を調製した。
【0053】
ついで、上記正極合剤を、厚み20μmでありアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して正極活物質層を形成した。そして、湿潤状態にある正極活物質層を乾燥させた後、ロールプレス機でプレスして正極シートを作製した。
【0054】
ついで、上記正極シートを切り出して、縦50mm、横250mmである帯状の正極とした。なお、正極の一端において、正極集電体上から縦50mm、横5mmの範囲の正極活物質層を削り取り、リード溶接部とした。そして、このリード溶接部にアルミニウム製のリードを溶接して正極端子とした。
【0055】
〔負極の作製〕
まず、負極合剤の成分として、負極活物質として黒鉛を90重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを10重量部とを秤取った。ついで、これら各成分をN−メチルピロリドン中に分散させて、スラリー状の負極合剤を調製した。
【0056】
ついで、上記負極合剤を、厚み10μmであり銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して負極活物質層を形成した。そして、湿潤状態にある負極活物質層を乾燥させた後、ロールプレス機でプレスして負極シートを作製した。
【0057】
ついで、上記負極シートを切り出して、縦52mm、横300mmである帯状の負極とした。なお、負極の一端において、負極集電体上から縦52mm、横5mmの範囲の負極活物質層を削り取り、リード溶接部とした。そして、このリード溶接部にニッケル製のリードを溶接して負極端子とした。
【0058】
〔非水電解液の調製〕
まず、非水電解液の成分として、非水溶媒としてエチレンカーボネートを43重量部およびプロピレンカーボネートを43重量部と、電解質塩としてLiPF6を15重量部とを秤取った。ついで、これら各成分を混合し、非水電解液を調製した。
【0059】
〔非水電解液電池の作製〕
ついで、上述のようにして得た正極と負極とをセパレータを介して積層し、長手方向に巻回すことにより電極体を得た。そして、この電極体を非水電解液中に浸し、正極活物質層、負極活物質層およびセパレータに非水電解液を含浸させた。
【0060】
ついで、非水電解液が含浸された電極体を、ラミネートフィルムで挟み、ラミネートフィルムの外周縁部を減圧下において熱融着して封口し、電極体をラミネートフィルム中に密封した。なお、ラミネートフィルムとしては、最外層から順に、厚み25μmであるナイロンと、厚み40μmであるアルミニウムと、厚み30μmであるポリプロピレンとが積層されてなるアルミラミネートフィルムを用いた。
【0061】
以上のようにして、非水電解液電池を作製した。なお、正極端子および負極端子は、ラミネートフィルムの外部に導出されている。
【0062】
<サンプル2>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiFe0.9Mn0.1PO4:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0063】
<サンプル3>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiCoO2:63重量部およびLiFePO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0064】
<サンプル4>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiCoO2:63重量部およびLiFe0.9Mn0.1PO4:27重量部を添加する以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0065】
<サンプル5>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiCo0.98Al0.01Ni0.01O2:63重量部およびLiFePO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0066】
<サンプル6>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiCo0.98Al0.01Ni0.01O2:63重量部およびLiFe0.9Mn0.1PO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0067】
<サンプル7>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiNiO2:63重量部およびLiFePO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0068】
<サンプル8>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiNi0.9Co0.1O2:63重量部およびLiFePO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0069】
<サンプル9>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiMn2O4:63重量部およびLiFePO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0070】
<サンプル10>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiMn1.95Fe0.05O4:63重量部およびLiFePO4:27重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0071】
<サンプル11>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiCoO2:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0072】
<サンプル12>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiCo0.98Al0.01Ni0.01O2:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0073】
<サンプル13>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiNiO2:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0074】
<サンプル14>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiNi0.9Co0.1O2:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0075】
<サンプル15>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiMn2O4:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0076】
<サンプル16>
正極合剤を調製する際に、正極活物質としてLiMn1.95Fe0.05O4:90重量部を添加すること以外はサンプル1と同様にして、非水電解液電池を作製した。
【0077】
以上のようにして作製したサンプル1〜サンプル16の非水電解液電池に対して充放電試験を行った。
【0078】
<充放電試験>
まず、ポテンシオガルバノスタットを用い、初回充放電を行った。90mAで定電流充電を開始し、閉回路電圧が4.2Vに到達した時点で定電圧充電に切り替えた。そして、充電開始から8時間経った時点で充電を終了した。ついで、90mAで定電流放電を行い、閉回路電圧が3Vに達した時点で放電を終了し、初回放電容量を測定した。
【0079】
ついで、初回充電と同条件で充電を行った後、90mAで定電流放電を行い、閉回路電圧が0Vに達した時点、つまり過放電させてから放電を終了し、25℃の環境下に240時間放置した。
【0080】
そして、再び初回充電と同条件で充電を行った後、90mAで定電流放電を行い、閉回路電圧が3Vに達した時点で放電を終了し、3サイクル目の放電容量、すなわち過放電後の放電容量を測定した。
【0081】
さらに、初回放電容量に対する過放電後の放電容量の割合を求め、この比率を放電容量維持率とした。さらにまた、上記充放電試験後において、ガス発生によるラミネートフィルムの膨れの有無を目視で観察した。
【0082】
以上の測定結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から、サンプル1〜サンプル10の非水電解液電池は、電池電圧0Vまでの過放電をされても高い放電容量維持率を示し、電池電圧0Vまでの過放電後においても、ラミネートフィルムの膨れが無いことがわかる。
【0085】
これに対して、サンプル11〜サンプル16の非水電解液電池は、過放電後の放電容量が非常に劣化しており、実用的でない。また、電池電圧0Vまでの過放電後の充電によりガスが発生したので、ラミネートフィルムが膨れた。つまり、サンプル11〜サンプル16の非水電解液電池は、過放電されると、過放電後の充電時に発生するガスにより、ラミネートフィルムで外装した電池形状を維持できない。なお、充放電試験前の電池厚みと比較すると、その厚みが1.5倍以上に膨れたことが、研究者等によって確認されている。
【0086】
また、上記充放電試験後のサンプル1〜サンプル16の非水電解液電池を解体し、電極体を取り出して観察した。サンプル1〜サンプル10の電極体では、特に変化が確認されなかった。これに対し、サンプル11〜サンプル16の電極体では、非水電解液が青緑色に着色しており、負極活物質上には銅の析出が確認された。
【0087】
したがって、非水電解液電池は、LixFe1−yMyPO4を含有する正極を備えることにより、負極集電体として用いる銅の腐食反応が防止されるので、例えば電池電圧0Vまでの過放電をされても良好な電池性能を有し、ラミネートフィルムで外装した電池形状を維持できることがわかる。
【0088】
ここで、サンプル1〜サンプル10の非水電解液電池において、初回放電時の平均放電電圧を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2より、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物のうち少なくとも1種以上と、一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物とを含有する正極を備えるサンプル3〜サンプル10の非水電解液電池は、正極活物質として一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物のみを含有する正極を備えるサンプル1およびサンプル2の非水電解液電池と比較すると、初回放電時の平均放電電圧がより高いことがわかる。
【0091】
したがって、正極活物質として一般式LixFe1−yMyPO4で表される化合物を用い、このLixFe1−yMyPO4よりも放電電位が貴であるリチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物のうち少なくとも1種以上を併用すると、平均放電電圧がより高い非水電解液電池が得られ、例えば携帯電話の電源等のように高電圧を要求される場合にも最適な非水電解液電池となることがわかる。
【0092】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る非水電解液電池は、正極活物質として、一般式LixFe1−yMyPO4(但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはMnである。)で表される化合物と、上記Li x Fe 1−y M y PO 4 で表される化合物よりも放電電位が貴であり、一般式Li x Co 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.01であり、MはNi、Alである。)で表される化合物、一般式Li x Ni 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはCoである。)で表される化合物、一般式Li x Mn 2−y M y O 4 (但し、式中、x=1、y0又は0.05であり、MはFeである。)で表される化合物のうち少なくとも1種以上を含有する正極合剤層を有する正極を備えるので、電池電圧0Vまでの過放電にされても、CuやNi等の金属箔から負極集電体は腐食されず、電池特性が劣化しない。また、正極および負極が固体電解質を介して積層されてなる電極体をラミネートフィルムで外装しているが、電池電圧0Vまでの過放電をされても、CuやNi等の金属箔からなる負極集電体が腐食されないので、非水電解液の分解反応によるガス発生の虞がなく、ラミネートフィルムで外装された電池形状が維持される。つまり、本発明に係る非水電解液電池は、過放電しても負極集電体が腐食されず、電池電圧0Vまでの過放電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】非水電解液電池の一構成例を示す透視斜視図である。
【図2】図1に示す線分A−A’により切断した非水電解液電池の断面図である。
【図3】負極を示す模式図である。
【図4】正極を示す模式図である。
【符号の説明】
1 非水電解液電池、2 ラミネートフィルム、3 電極体、4 正極、5 負極、6 セパレータ、7 負極集電体、8 負極活物質層、9 負極端子、10 正極集電体、11 正極活物質層、12 正極端子
Claims (4)
- 正極活物質として、一般式LixFe1−yMyPO4(但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはMnである。)で表される化合物と、上記Li x Fe 1−y M y PO 4 で表される化合物よりも放電電位が貴であり、一般式Li x Co 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.01であり、MはNi、Alである。)で表される化合物、一般式Li x Ni 1−y M y O 2 (但し、式中、x=1、y=0又は0.1であり、MはCoである。)で表される化合物、一般式Li x Mn 2−y M y O 4 (但し、式中、x=1、y0又は0.05であり、MはFeである。)で表される化合物のうち少なくとも1種以上を含有する正極合剤層を有する正極と、
負極集電体上に負極活物質を含有する負極合剤層が形成された負極と、
非水電解液とを備え、
上記正極と上記負極とがセパレータを介して巻回されてなる電極体が、ラミネートフィルムで外装されている非水電解液電池。 - 上記一般式Li x Fe 1−y M y PO 4 で表される化合物と、この化合物よりも放電電位が貴である化合物とが、27:63の割合で正極合剤層に含有されている請求項1記載の非水電解液電池。
- 上記負極活物質は、黒鉛である請求項1又は請求項2記載の非水電解液電池。
- 上記ラミネートフィルムは、ナイロン、アルミニウム、ポリプロピレンが積層されてなる請求項1乃至請求項3のうち何れか1項記載の非水電解液電池。
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