JP2006291994A - メンテナンス性向上テンショナレバー - Google Patents

Abstract

【課題】自動車エンジンなどのメンテナンス実施時に、チェーンを取り外す場合、チェーンにかかっている張力を取り除いて弛ませた状態に維持させることができ、チェーンの取り外し作業を容易に行うことができるメンテナンス性向上テンショナレバーを提供することを目的とする。
【解決手段】テンショナレバー７は、駆動側スプロケット３と従動側スプロケット４とに捲回されて循環走行するチェーン５に、テンショナ６のプランジャ６ａで押圧されて適切な張力を付与するように揺動可能に枢支軸８で軸支される。このテンショナレバー７は、チェーンに表面側が接触摺動するシュー９の裏面側に垂直に設けられたレバー１０を備え、レバー１０には、テンショナレバーの揺動を一時的に停止する固定用治具１４の先端が係合する係合部１１が形成されている。
【選択図】図１

Description

本発明は、駆動側スプロケット、従動側スプロケット及びこれらスプロケットに捲回されて循環走行するチェーンにより、駆動側から従動側へ動力を伝達する伝動装置に用いられるテンショナレバーに関し、特に、メンテナンス実施時に、チェーンを弛ませて取り外しが容易にできるように、テンショナレバーを付勢手段の付勢力に抗して最大限反転させた位置での揺動停止を可能としたメンテナンス性向上テンショナレバーに関する。

内燃機関、例えば自動車のエンジンは、ＳＯＨＣエンジン、ＤＯＨＣ（ツインカム）エンジンなどの場合、クランク軸とカム軸を同期伝動させるタイミングチェーンドライブシステムを備えている。駆動側から従動側へ動力を伝達する伝動装置の一種であるタイミングチェーンドライブシステムは、例えばＤＯＨＣエンジンの場合、図５に示すように、エンジン本体の一部を構成するチェーンケース２１で形成されたタイミングチェーン室２２に設けられている（例えば、特許文献１参照。）。

このタイミングチェーン室２２に設けられるタイミングチェーンドライブシステムは、カムシャフトに固定されたカムスプロケット（駆動側スプロケット）２３，２３と、クランクシャフトに固定されたクランクスプロケット（従動側スプロケット）２４と、これらスプロケット２３，２３，２４に捲回されて循環走行するチェーン２５とで構成されている。

循環走行するチェーン２５に適切な張力を付与するために、コイルスプリング、油圧等付勢手段を有するテンショナ２６により付勢、押圧されて、軸支部を支点として揺動するテンショナレバー２７が設けられている。テンショナレバー２７はタイミングチェーン室２２のケース２１内壁にショルダーボルト、段付きボルトなどの枢支軸２８により取り付けられる。テンショナレバー２７は、チェーン２５に表面側が接触摺動するシュー２９と、このシュー２９の裏面側に垂直に設けられたレバー３０とを備えている。このレバー３０の垂直部両面には、トラス構造の補強用リブ３０ａが形成されている。尚、図５における符号２６ａはプランジャ、２６ｂはテンショナボディ、２７ａはテンショナレバー２７に形成されているレバーパッド、３１はチェーンの走行軌道をガイド規制する固定ガイドである。
特開２００３ー２１４５０号公報

従来、タイミングチェーンドライブシステムを備えたエンジンのメンテナンスを実施する際、例えば、カムシャフトを取り外す際、エンジンを車体から下ろし、まず、チェーン２５を取り外してから、カムスプロケット２３をフリーにした上でカムシャフトを取り外していた。

このチェーン２５の取り外しには、テンショナ２６の機能により、付勢されたプランジャ２６ａがレバーパッド２７ａを押してチェーン２５に張力が加わっているため、この張力を取り除いてチェーン２５を緩ませる必要があり、そのためプランジャ２６ａをテンショナボディ２６ｂ内に押し込みチェーン２５を緩ませる必要がある。この場合、プランジャ２６ａをテンショナボディ２６ｂ内に押し込むと、プランジャ２６ａが押し込まれた量だけテンショナレバー２７を軸支部を中心にテンショナ２６側に反転移動させることが可能となり、チェーン２５にたるみが生じるので、そのたるみ分を利用して取り外しが可能となる。

しかし、テンショナボディ２６ｂ内にコイルスプリングが入っているため、プランジャ２６ａをテンショナボディ２６ｂ内に押し込んでいる力を除くとスプリングで付勢されているプランジャ２６ａが押し戻されて、元の状態に戻りチェーン２５にたるみが生じなくなる。そのため、チェーン２５の取り外しに際しては、一度エンジンを車体から下ろしてテンショナ２６を外したり、あるいはプランジャ２６ａ及びテンショナレバー２７をチェーン２５が緩むように手で押さえ続けてチェーン２５を取り外さなければならない、という問題があった。

そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決し、内燃機関、例えば自動車エンジンのメンテナンス実施時にチェーンを取り外す場合、エンジンを車体から下ろしてテンショナを外したり、プランジャ及びテンショナレバーをチェーンが緩むように手で押さえ続けるなどの作業を行わなくても、チェーンにかかっている張力を取り除いて弛ませた状態に維持させることができ、チェーンの取り外し作業を容易に行うことができるメンテナンス性向上テンショナレバーを提供することを目的とする。

請求項１に係る本発明は、チェーン室に設けられた駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに捲回されて循環走行するチェーンに、付勢手段により押圧されて適切な張力を付与するように揺動可能に枢支軸で軸支されるテンショナレバーであって、該テンショナレバーは、前記チェーンに表面側が接触摺動するシューの裏面側に垂直に設けられたレバーを備え、該レバーには、テンショナレバーの揺動を一時的に停止する固定用治具の先端が係合する係合部が形成されているメンテナンス性向上テンショナレバー、という構成とすることにより前記課題を解決したものである。

本発明のメンテナンス性向上テンショナレバーによれば、テンショナレバーは、チェーンに、付勢手段により押圧されて適切な張力を付与するように揺動可能に枢支軸で軸支され、前記チェーンに表面側が接触摺動するシューの裏面側に垂直に設けられたレバーを備え、このレバーには、テンショナレバーの揺動を一時的に停止する固定用治具の先端が係合する係合部が形成されているので、この係合部に、テンショナレバーが付勢手段に抗して最大限に反転揺動された位置で、チェーン室フロントカバーに穿設された貫通孔から挿入された固定用治具、例えば丸棒の先端が係合して、テンショナレバーが前記位置に維持され、駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに捲回されたチェーンにたるみを生じさせることができる。その結果、テンショナを外したり、プランジャ及びテンショナレバーをチェーンが緩むように手で押さえ続けるなどの作業を行わなくても、チェーンの取り外しを容易に行うことができ、チェーンの取り外し作業においても両手がフリーとなるため作業性の向上を図ることができる。

本発明の実施例を図１〜図４を参照して説明する。図１はタイミングチェーンドライブシステムの説明図、図２はテンショナレバーの側面図、図３は図２のＸ−Ｘ矢視方向断面図、図４はチェーン室フロントカバーの斜視図である。

図１に示すように、ＤＯＨＣエンジンの場合、タイミングチェーンドライブシステムは、エンジン本体の一部を構成するチェーンケース１で形成されたタイミングチェーン室、すなわちチェーン室２に設けられる。このタイミングチェーンドライブシステムは、カムシャフトに固定されたカムスプロケット（駆動側スプロケット）３，３と、クランクシャフトに固定されたクランクスプロケット（従動側スプロケット）４と、これらスプロケット３，３，４に捲回されて循環走行するチェーン５とで構成されている。

循環走行するチェーン５に適切な張力を付与するために、コイルスプリング、油圧等付勢手段を有するテンショナ６により押圧されて、軸支部を支点として揺動するテンショナレバー７がチェーン室２を形成するチェーンケース１の後方内壁、あるいはエンジン本体にショルダーボルト、段付きボルト、ピン部材などの枢支軸８により揺動可能に取り付けられる。尚、図１における符号６ａはプランジャ、６ｂはテンショナボディ、１２はチェーンの走行軌道をガイド規制する固定ガイドである。

テンショナレバー７は、チェーン５に表面側が接触摺動するシュー９と、シュー９の裏面側に垂直に設けられたレバー１０とを備え、レバー１０には、枢支軸８が挿入される取付孔７ｂ、及びテンショナ６のプランジャ６ａが当接するレバーパッド７ａが形成されている。尚、このテンショナレバー７は、シュー９及びレバー１０が一体成形された所謂エンジニアリングプラスチック製のものである。

前記レバー１０の基板部両面には、補強用リブ１０ａが形成され、図２に示すように、補強用リブ１０ａの一部を利用して固定用治具である丸棒１４の径（例えば、９ｍｍφ）より僅かに大きい曲率半径（例えば、Ｒ；４．５ｍｍ）の横向きの凹溝からなる係合部１１が形成されている。この係合部１１は、固定用治具である丸棒１４先端が横からでも入り易いように凹溝としている。尚、係合部１１は補強用リブ１０ａの一部を利用しないで別体として形成されていても構わない。

チェーン室２には、前面を覆うチェーン室フロントカバー１３が取付孔１３ｂを介してボルト孔１ａにボルト締めしてチェーンケース１に取り付けられる。このチェーン室フロントカバー１３には、テンショナレバー７の揺動を一時的に停止する固定用治具（例えば丸棒）１４が挿入される貫通孔１３ａが設けられている。

この貫通孔１３ａは、テンショナレバー７がテンショナ６の付勢手段に抗して最大限に反転揺動したとき、テンショナレバー７のレバー１０に形成された係合部１１と対峙する位置に穿設されている。尚、テンショナレバー７がテンショナ６の付勢手段に抗して最大限に反転揺動した状態は、図１に実線で示されている。また、貫通孔１３ａは、メンテナンスの実施時以外はメクラブタ（盲蓋）で閉じられている。

メンテナンス性向上テンショナレバーは、前記のテンショナレバー７からなり、その通常の使用時においては、テンショナ６の付勢手段により押圧されて枢支軸８を支点として揺動し、シュー９がチェーン５に接触摺動して適切な張力を付与する。この場合、テンショナレバー７は付勢手段により突出方向に付勢されているプランジャ６ａでチェーン５側に押圧され、チェーン５は、図１において、仮想線５’で示すように、内側に押し込まれている。

エンジンのメンテナンスに際して、例えば、カムシャフトを取り外す場合、チェーンケース１に取り付けられているチェーン室フロントカバー１３のボルトを緩めて隙間を形成し、この隙間からドライバーなどを差し込んで、テンショナレバー７をテンショナ６の付勢手段に抗して最大限に反転揺動させ、その位置で貫通孔１３ａから固定用治具１４を挿入し、その先端をテンショナレバー７の係合部１１に係合する。そうすると、チェーン５が緩んで弛みが生じるので、チェーン５を取り外すことができ、このチェーン５を取り外した後、チェーン室フロントカバー１３を外し、カムスプロケット、カムシャフト等の取り外しが可能となる。

以上、実施例において、レバーに固定用治具の先端が係合する係合部が補強用リブを利用して形成された凹溝のものについて説明したが、係合部は、レバーに穿設した貫通孔を係合部とし、固定用治具の先端がこの貫通孔に係合するようにしても構わない。要するに、本発明のメンテナンス性向上テンショナレバーは、レバーに固定用治具の先端が係合する係合部が形成されたものであればよく、テンショナレバー自体の構造は問わない。例えば、実施例のように、テンショナレバーが一体成形されたプラスチック製のものでも、シュー及びレバー（プラスチック製又は金属製）を別々に形成し、レバーにシューを取り付け、フックで固定したテンショナレバーでも構わない。

また、実施例として、ＤＯＨＣエンジンのタイミングチェーンドライブシステムに用いられるメンテナンス性向上テンショナレバーを対象として説明したが、ＳＯＨＣエンジンに用いられるものとしても構わない。さらに、本発明のメンテナンス性向上テンショナレバーは、一般にチェーン室に設けられている、駆動側から従動側へ動力を伝達するチェーン式伝動装置にも適用されるものである。

本発明の実施例を示し、タイミングチェーンドライブシステムの説明図である。 同上、テンショナレバーの側面図である。 同上、図２のＸ−Ｘ矢視方向断面図である。 同上、チェーン室フロントカバーの斜視図である。 従来例を示し、タイミングチェーンドライブシステムの説明図である。

符号の説明

１ チェーンケース ２ チェーン室
３，３ カムスプロケット（駆動側スプロケット）
４ クランクスプロケット（従動側スプロケット）
５ チェーン ６ テンショナ
６ａ プランジャ ６ｂ テンショナボディ
７ テンショナレバー ７ａ レバーパッド
７ｂ 取付孔 ８ 枢支軸
９ シュー １０ レバー
１０ａ 補強用リブ １１ 係合部
１２ 固定ガイド １３ チェーン室フロントカバー
１３ａ 貫通孔 １３ｂ 取付孔
１４ 固定用治具

Claims (1)

1. チェーン室に設けられた駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに捲回されて循環走行するチェーンに、付勢手段により押圧されて適切な張力を付与するように揺動可能に枢支軸で軸支されるテンショナレバーであって、
   前記テンショナレバーは、前記チェーンに表面側が接触摺動するシューの裏面側に垂直に設けられたレバーを備え、該レバーには、テンショナレバーの揺動を一時的に停止する固定用治具の先端が係合する係合部が形成されていることを特徴とするメンテナンス性向上テンショナレバー。

Images